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(論)児童虐待((2020年10月28日・11月4・21・22・28・12月1・3・4・7・9・12・19・30日・2021年2月14・25・3月2日)

子供の前で夫婦げんかはするな(2021年3月2日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 子供の前で夫婦げんかはするな。昔から子育ての常識だった。小児精神科医の友田明美さんによれば、夫婦間のいさかいを頻繁に目にした子供の脳は、深刻なダメージを受けることがわかっている。児童虐待防止法では、児童虐待の定義の中に「児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力」も含めている(『子どもの脳を傷つける親たち』NHK出版新書)。

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 ▼東京都国立市の都営アパートで1歳の娘と暮らす会社員の高張潤容疑者(44)と麻夏さん(41)は、夫婦げんかを繰り返していたという。麻夏さんは昨年11月、9階の自宅ベランダから転落死する。高張容疑者は自殺だと説明していたが、麻夏さんは事件直前、母親にメールでこう訴えていた。「怖いよ」。

 ▼「子育てを楽しんでいた娘が、絶対に自殺するわけがない」。母親は疑念を抱き続けた。果たして高張容疑者は先月末、殺人の疑いで警視庁に逮捕された。捜査1課は、高張容疑者が麻夏さんの首を絞めた後、突き落としたとみている。高張容疑者の犯行とすれば、父親として母親を奪われる娘の不憫(ふびん)に思いが至らなかったのだろうか。

 ▼昨日の社会面では、福岡、鹿児島で子供3人の遺体が見つかった事件の記事にも目が留まった。ホテルから飛び降り重傷を負った父親が殺害に関与したとみられる。

 ▼残虐な殺人事件が起こるたびに「心の闇」という言葉が使われてきた。前にも書いたが、出所は紫式部の曽祖父、藤原兼輔の歌である。「人の親の 心は闇に あらねども 子を思ふ道に まどひぬるかな」。親が子を思うあまり、分別がつかなくなるというのだ。

 ▼2つの事件の当事者が分別を失った理由はわからない。ただ、子を思うがゆえでないことだけは確かである。





「懲戒権」(2021年2月25日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 アニメ「サザエさん」一家のあるじである波平は典型的な昭和の雷おやじとして描かれてきた。長男カツオにげんこつを食らわすこともしばしばで、お仕置きとして物置小屋に閉じ込めることもあった

▼しつけのために親が子を戒める。その根拠は民法が定める「懲戒権」だ。2011年の法改正で、行使には「子の利益のため」「監護及び教育に必要な範囲内」という条件が付けられた

▼児童虐待が社会問題になっている。親による体罰禁止は昨年施行された改正児童虐待防止法などに明記された。一方で民法の懲戒権がある限り、しつけを隠れみのにした体罰や虐待はなくならないとの指摘は根強い

▼法相の諮問機関の部会が今月、懲戒権の見直しを盛り込んだ新たな民法改正の中間試案をまとめた。懲戒権を認める条文の削除、「懲戒」の文言変更、体罰禁止の明記―の3案が軸。どの案であれ、げんこつやお仕置きは「アウト」だろう

▼懲戒権の削除を巡っては、11年の民法改正時にも議論されたが「必要なしつけができなくなる」との懸念から見送られた。いつの時代もしつけは簡単ではない。見直しに伴う問題にも留意したい

▼原作漫画「サザエさん」は終戦翌年に連載が始まった。波平は明治28年生まれという設定。家父長制の色濃い明治民法の施行3年前に当たる。アニメの波平は以前ほど雷を落とさなくなったようだ。時代の変化に適応しながら、わんぱく盛りの息子と上手に向き合ってきたのだろう。





児童虐待最多 見守りの方法に工夫が必要だ(2021年2月14日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行で、児童虐待への対応が難しくなっている。家庭訪問を拒まれるケースが目立っており、見守りに工夫が必要だ。

 全国の警察が昨年、児童虐待の疑いがあるとして児童相談所に通告した子供は、前年比9%増の約10万7000人にのぼった。10万人を超えるのは初めてだ。

 暴行や傷害など、刑事事件として摘発したケースも過去最多の2131件だった。5年間で倍増しており、深刻な事態である。

 背景には、虐待への意識が高まって通報が増え、警察が積極的に事件として取り上げるようになったこともあるのだろう。

 コロナ禍で家族の在宅時間が延びた影響だとの指摘もある。外出自粛などによるストレスや経済的な困窮など、虐待を引き起こす家庭のリスクが増している。

 感染の収束は見通せない。被害が深刻化しないよう、引き続き注意深く見ていく必要がある。

 埼玉県美里町で昨年9月、生後3か月の女児が衰弱死した事件では、両親が保護責任者遺棄致死容疑で逮捕された。町の担当者は、両親に30回以上、電話で連絡を試みたが、感染への懸念などを理由に訪問を拒否されたという。

 近隣住民からは「大きな泣き声がする」との通報が寄せられていた。幼い命を救えなかったことを重く受け止め、関係機関で何が足りなかったのか検証すべきだ。

 家庭訪問が困難になっている状況を踏まえ、対応策を練っている自治体もある。東京都江戸川区の児童相談所では、無料通信アプリ「LINE」のビデオ機能を使い、親や子供と話しながら様子を見守る取り組みを進めている。

 親に電話をかけて子供に代わってもらい、安全が危ぶまれる場合には、直接会いに行く運用をしている児相もある。様々な方法で子供の安全を確認してほしい。

 児相の態勢強化が急務である。厚生労働省は2018年度から、児童福祉司を5年間で2000人増やす計画を進めており、達成目標を1年前倒しするという。

 増員は歓迎すべきだが、経験の浅い児童福祉司が増えているのが気になる。福祉司全体の半数は、勤務が3年未満の人たちだ。

 虐待の対応には、配偶者への暴力や生活困窮に関する幅広い知識が求められるようになった。

 厚労省は、家庭福祉を専門とする資格「子ども家庭福祉士」(仮称)の創設を検討している。こうした人材を活用し、広い視点から虐待防止に努めてもらいたい。





【児童虐待】被害の潜在化を防ぎたい(2020年12月30日配信『高知新聞』-「社説」)

 児童虐待防止法の施行から20年。依然として、子どもへの虐待は深刻な状況が続いている。

 児童相談所が対応する件数は一貫して増えており、昨年度は全国で19万3千件を超えた。県内も458件(前年度比38件増)と過去最多だった。

 新型コロナウイルスの感染拡大で家庭環境に変化が起き、児童虐待が増える危険性も指摘されている。

 子どもの変化に周りの大人が敏感になり、関係機関が連携して早めに虐待の芽を摘む必要がある。長期化と潜在化を防がねばならない。

 児童虐待は身体、ネグレクト(育児放棄)、性的、心理的の4類型に分けられる。

 心理的虐待が最も多く、件数の5割以上を占める。子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」もこれに当たり、警察から児相への通告が年々増えている。

 児童虐待は、配偶者間のDVと絡み合っているケースが多い。

 過去の虐待死事件では、夫のDVで精神的な支配下に置かれた妻が子どもへの虐待に加担していた。

 個別に対応するのではなく、家庭内の暴力として一体的に解決していく必要がある。児相と関係機関が情報を密に共有し、それぞれの専門性を生かすことが鍵になろう。

 中でも配偶者暴力相談支援センターやDV被害者を支援している民間団体との連携を強めねばならない。

 また児相などが介入しても、加害者が虐待の事実を認めない場合もある。体の傷やあざを科学的に分析する法医学者との連携も欠かせない。

 幅広い分野の知見を活用する態勢を整え、加害者が隠そうとする虐待行為を見逃さず、子どもの心身を守る安全網をつくりたい。

 特に被害が潜在化しやすい性的虐待への対応も強化する時だ。

 昨年度は全国で2077件(1・1%)だが、専門家は「氷山の一角」と指摘する。厚労省は今年、実態把握に向けた調査に乗り出した。

 性的虐待を受けた子どもは加害者から口止めされたり、自分のせいで家族がばらばらになりたくないと被害を訴えなかったりする。

 そうした心理状態を理解し、被害を適切に聞き取ることが肝心という。児相や警察などの職員が専門性を高めるのはもちろん、学校や保育所でも性被害を受けた疑いのある子どもへの対応を知る必要がある。

 低年齢で被害を受け、長期間繰り返されているケースも少なくない。被害の端緒をつかみ、早期の介入と支援につなげなければならない。

 児童虐待防止法は虐待の通報を国民の義務としている。この20年で社会に意識は一定広まった。その大前提は「通報者の秘匿」だ。

 しかし今月、高知署員が児童虐待の疑いで保護者宅を訪れた際、虐待情報の通報者を保護者に漏らしていたことが分かった。
 こうした失態は通報控えを招こう。関係機関は改めて、通報者保護を徹底しなければならない。





児相の体制拡充(2020年12月19日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆虐待対応の「質」高めよ◆

 全国の児童相談所で対応する虐待相談件数が過去最多を更新し続けている。2019年度は19万3780件で、1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新した。最も多いのは、子どもの目の前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」などの心理的虐待。警察からの通告が年々増えており、全体の半数を占める。これに身体的虐待、ネグレクト、性的虐待が続く。

 そんな中、児相の現場では人が足りない。政府は2年前、児童福祉司を22年度までに2千人増やす目標を掲げ、今年4月の時点で、ほぼ半分を達成した。だが相談件数急増に振り回され、1人当たりの対応件数を減らす計画は遅々として進まず、人材育成が追いつかないとの懸念も広がる。

 実父が「加害者」となる割合が増えているのも見逃せない。過去の事例を見ると、DVを受ける母親が口をつぐむなどし、虐待の実態をつかむのは難しい。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により外出機会が減り、感染リスクを口実に児相職員の訪問を断る家庭も少なくないとされ、専門家は被害の潜在化につながる恐れを指摘する。

 児相の体制拡充を急がなければならない。ただし、人を増やすだけでは間に合わない。研修やベテラン職員の効率的な配置、数年で職場が変わる人事の見直しなど、あらゆる手を尽くし、虐待対応の「質」を高める必要がある。自治体との役割分担も課題となろう。

 一方、警察庁の統計によると、全国の警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は1972件に上り、被害に遭った18歳未満の子どもは1991人と過去最多。うち54人が亡くなっている。摘発を受けたのは2024人で、うち45%に当たる913人が実父だった。

 中でも千葉県野田市の小4女児虐待死事件では、児相などの機能不全があらわになり、批判を浴びた。傷害致死罪などに問われ、一審千葉地裁で懲役16年の判決を受けた父親は、女児が学校アンケートで被害を告白したため一時保護した児相に激しく抗議し虐待を否定し続けた。

 ところが児相側は父親が問題解決に取り組もうとしていると評価するようになり、一時保護中に女児が性的虐待を打ち明けても軽度と判断し、17年末に保護を解除。19年1月に亡くなるまで特段の対応はしなかった。

 児童虐待の深刻化に対応し、児童福祉司ら職員を増やすことに異論はないが、それは対症療法でしかない。職員の専門性や緊急時の判断力を高めるため、待遇面も含めて環境を整えることに一層力を注いでいくことが求められよう。





【児童虐待防止】DV対策と連携を(2020年12月13日配信『福島民報』-「論説」)

 県内の児童相談所(児相)が二〇一九年度に対応した児童虐待の相談件数は統計を取り始めた一九九〇(平成二)年度以降で最多となった。今年度も新型コロナウイルス感染拡大に伴う外出自粛や景気悪化による家庭内でのストレスの高まりなどで、児童虐待の増加が懸念される。県と県警、学校、市町村は連携し、幼い命を守る取り組みを強めるべきだ。

 二〇一九年度の相談件数は二千二十四件で前年度より四百七十五件増えた。内訳では、子どもの前で配偶者に暴力を振るう面前DV(ドメスティックバイオレンス)などの心理的虐待が千三百七十二件で前年度より三百五十件増え、全体の七割近くを占めた。

 二〇一八年に東京都目黒区、二〇一九年に千葉県野田市で起きた女児虐待死事件では、いずれも母親が父親からDVを受け抵抗できない状況下で子どもへの虐待がエスカレートした。これらの事件を機に、警察がDVを心理的虐待として児相に通告するようになった。二〇一九年度からは福島、郡山、会津若松、いわきの四市にある児相に警察官や少年警察補導員、警察官OBのいずれか一人が配置され、警察の迅速な対応につながっている。相談件数の増加は県警との連携が進んだ成果とも言える。

 県内ではDVの相談窓口として県と郡山市が配偶者暴力相談支援センターを設けているほか、福島、会津若松、いわき、喜多方の四市は相談員を置いている。虐待の芽を早めに摘むために、児相と支援センターの情報共有が重要性を増している。DVが確認された家庭に対しては、子どものケアと保護者の支援に包括的に取り組む必要がある。

 県内には四市の児相のほか、白河市、南相馬市、南会津町に児相の相談室がある。児相に配置される児童福祉司は子どもの面談や保護者の指導に当たる。家庭環境の把握や親との関係づくり、警察や学校との調整など職務は多岐にわたり、急な呼び出しにも対応しなければならない。判断ミスが子どもの生死を分けることもある。相談件数の増加を踏まえ、県は速やかに児童福祉司を増員すべきだ。

 ただ、児童虐待に対応する児童福祉司が現場で経験を積むには相当の時間がかかる。ベテラン職員が研修で若手に経験を伝える機会を増やすなど、人材育成や資質向上にもさらに力を入れてほしい。

 子どもの変化をいかに早く察知するか。組織の縦割りを排し、社会全体で子どもを見守る環境づくりが事件を防ぐ第一歩となる。(斎藤靖)





虐待防止策強化(2020年12月9日配信『福井新聞』-「論説」)

子どもの権利 皆で守ろう

 児童虐待防止法施行から20年になるが、対応件数は増加の一途で毎年最多を更新している。行政だけで解決できるものではなく、子どもの権利を守るという意識の下、社会全体で考えなければならない問題だ。

 1989年に国連で採択された「児童の権利に関する条約」を日本が批准したのは94年4月。99年度には全国の児童相談所が受けた虐待の相談・通報件数が初めて1万件を超え、2000年11月に防止法がスタート。今春には親による体罰禁止を盛り込んだ改正児童虐待防止法が施行された。

 厚生労働省のまとめでは、19年度に全国の児相が児童虐待として対応したのは19万3780件(速報値)。前年度比21・2%増で、統計開始以来29年連続で最多を更新した。福井も884件と前年度より246件増えた。

 警察との連携強化や、国民の意識の高まりで通報が増加した可能性が指摘されているが、児相への負荷が増す一方であるなど課題は多い。「子どもたちの命を守ることを最優先に」(加藤勝信官房長官)の言葉通り、政府は児相や地域の見守り体制強化を着実に進めてほしい。

 その政府の取り組みが不十分との国連委員会の指摘もあり、日本財団が設置した有識者会議は「子ども基本法」の試案を作成。子どものSOSを受け止める国レベルの組織を設けることなどを提案している。政府は「(児童福祉法など現行法で)必要な法整備はできている」と反論してきたが、国際的には遅れているとの認識を持ち、新たな施策を考えるべきだ。

 もちろん、国任せでいいわけではない。福井県と県警はこのほど、家庭への立ち入り調査を想定した合同訓練を行い、父母が立ち入りを拒む際の説得や、児童保護までの流れを実践形式で確認した。児童虐待防止を呼び掛けるオレンジ色のリボンを配ったり、自治体に啓発チラシを寄贈したりする県内企業・団体もあった。民間でできることは限られているかもしれないが、地道な活動で県民の意識が高まることは大切だ。

 新型コロナウイルスの流行で、家庭時間が長くなったことによる虐待見過ごしやストレスによる親の暴力が懸念されるなど新たな問題も生じた。政府も「新型コロナの影響も注視する必要がある」との認識を示している。

 難しい時代ではあるが、今こそ子どもが虐待を受けず、命を守られて生きる権利を定めた国連条約の理念を地域社会の一人一人が受け止めることが肝要だ。





児相の体制拡充/虐待対応の質高めたい(2020年12月7日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 全国の児童相談所で対応する虐待相談件数が過去最多を更新し続けている。2019年度は19万件を超えた。最も多いのは、子どもの目の前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」などの心理的虐待。警察からの通告が年々増えており、全体の半数を占める。これに身体的虐待、ネグレクト、性的虐待が続く。

 そんな中、児相の現場では人が足りない。政府は2年前、児童福祉司を22年度までに2千人増やす目標を掲げ、今年4月の時点で、ほぼ半分を達成した。だが相談件数急増に振り回され、1人当たりの対応件数を減らす計画は遅々として進まず、人材育成が追いつかないとの懸念も広がる。

 実父が「加害者」となる割合が増えているのも見逃せない。過去の事例を見ると、DVを受ける母親が口をつぐむなどし、虐待の実態をつかむのは難しい。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により外出機会が減り、感染リスクを口実に児相職員の訪問を断る家庭も少なくないとされ、専門家は被害の潜在化につながる恐れを指摘する。

 児相の体制拡充を急がなければならない。ただし、人を増やすだけでは間に合わない。研修やベテラン職員の効率的な配置、数年で職場が変わる人事の見直しなど、あらゆる手を尽くし、虐待対応の「質」を高める必要がある。自治体との役割分担も課題となろう。

 19年度の虐待相談件数は19万3780件。1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新した。前年度からの増加数も3万3942件で、最多だった。このうち、面前DVのほかに暴言なども含む心理的虐待が10万9118件に上り、全体の56.3%を占めた。

 一方、警察庁の統計によると、全国の警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は1972件に上り、被害に遭った18歳未満の子どもは1991人と過去最多。うち54人が亡くなっている。摘発を受けたのは2024人で、うち45%に当たる913人が実父だった。

 中でも千葉県野田市の小4女児虐待死事件では、児相などの「機能不全」が厳しい批判を浴びた。傷害致死罪などに問われ、一審千葉地裁で懲役16年の判決を受けた父親は、女児が学校アンケートで被害を告白したため一時保護した児相に激しく抗議し虐待を否定し続けた。

 ところが児相側は父親が問題解決に取り組もうとしていると評価するようになり、一時保護中に女児が性的虐待を打ち明けても軽度と判断し、2017年末に保護を解除。昨年1月に亡くなるまで特段の対応はしなかった。

 市や学校も含め、父親への対応にてこずり、虐待の実態を見抜けなかった。16年の児童福祉法改正では経験豊富なスーパーバイザー(SV)を育成し、児童福祉司5人につき1人を配置することにしたが、この児相では児童福祉司43人のうちSVは4人だけだった。

 児相は人気のある職場ではない。メンタルの問題で休んだり、配置されても異動願をすぐに出したりする職員も少なくないという。児童虐待の深刻化に対応し、児童福祉司ら職員を増やすことに異論はないが、それは対症療法でしかない。職員の専門性や緊急時の判断力を高めるため、待遇面も含めて環境を整えることに一層力を注いでいくことが求められよう。





環境整え対応の質向上を/児相の虐待相談 過去最多(2020年12月4日配信『東奥日報』-「時論」)

 全国の児童相談所で対応する虐待相談件数が過去最多を更新し続けている。2019年度は19万件を超えた。最も多いのは、子どもの目の前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」などの心理的虐待。警察からの通告が年々増えており、全体の半数を占める。これに身体的虐待、ネグレクト、性的虐待が続く。

 実父が「加害者」となる割合が増えているのも見逃せない。過去の事例を見ると、DVを受ける母親が口をつぐむなどし、虐待の実態をつかむのは難しい。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により外出機会が減り、感染リスクを口実に児相職員の訪問を断る家庭も少なくないとされ、専門家は被害の潜在化につながる恐れを指摘する。

 そんな中、児相の現場では人が足りない。政府は2年前、児童福祉司を22年度までに2千人増やす目標を掲げ、今年4月の時点で、ほぼ半分を達成した。だが相談件数急増に振り回され、1人当たりの対応件数を減らす計画は遅々として進まず、人材育成が追いつかないとの懸念も広がる。

 ただし、人を増やすだけでは間に合わない。研修やベテラン職員の効率的な配置、数年で職場が変わる人事の見直しなど、あらゆる手を尽くし、虐待対応の「質」を高める必要がある。自治体との役割分担も課題だ。

 19年度の虐待相談件数は19万3780件。1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新した。前年度からの増加数も3万3942件で、最多だった。このうち、面前DVのほかに暴言なども含む心理的虐待が10万9118件に上り、全体の56.3%を占めた。本県の虐待対応件数は1620件で、前年度に比べ207件増えた。

 警察庁の統計によると、全国の警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は1972件に上り、被害に遭った18歳未満の子どもは1991人と過去最多。うち54人が亡くなった。摘発を受けたのは2024人で、うち45%に当たる913人が実父だった。本県での摘発件数は24件で、虐待の疑いがあるとして児相に通告した子どもは582人。

 千葉県野田市の小4女児虐待死事件では、児相などの「機能不全」があらわになり、厳しい批判を浴びた。父親は、女児が学校アンケートで被害を告白したため一時保護した児相に激しく抗議し虐待を否定し続けた。児相側は父親が問題解決に取り組もうとしていると評価するようになり、一時保護中に女児が性的虐待を打ち明けても軽度と判断し、17年末に保護を解除。昨年1月に亡くなるまで特段の対応はしなかった。

 市や学校も含め、父親への対応にてこずり、実態を見抜けなかった。16年の児童福祉法改正では経験豊富なスーパーバイザー(SV)を育成し、児童福祉司5人につき1人を配置することにしたが、この児相では児童福祉司43人のうちSVは4人だけだった。

 児相は人気のある職場ではない。メンタルの問題で休んだり、配置されても異動願をすぐに出したりする職員が少なくないという。児童虐待の深刻化に対応し、児童福祉司ら職員を増やすことに異論はないが、それは対症療法でしかない。職員の専門性や緊急時の判断力を高めるため、待遇面も含めて環境を整えることに一層力を注いでいくことが求められよう。





児童虐待最多 相談所の体制や連携強化が急務(2020年12月3日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 全国の児童相談所(児相)が2019年度に児童虐待として対応した件数が19万3780件(速報値)に上った。前年度に比べ21.2%増え、1990年度の統計開始以来29年連続で過去最多を更新した。県内でも、県児相と市町による相談対応件数は前年度比254件増の2046件となり過去最多だった。

 厚生労働省のまとめで、経路では警察の通告による対応が年々増え、全体の半数を占める。次に多いのは近隣知人で、社会的関心の高まりが背景にあるとみられる。対応が必要な件数の増加に伴い、児相などの体制強化を急がねばならない。

 ネグレクト(育児放棄)、身体、性的、心理的の虐待4類型のうち、子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」を含む心理的虐待は全体の56.3%に及び、父親が加害者の割合が年々増えている。2018年に東京都目黒区で当時5歳の船戸結愛ちゃん、19年に千葉県野田市で当時10歳の栗原心愛さんが死亡した事件でも父親から母親へ物理的、心理的暴力があったことが公判で明らかになっている。

 07年1月~18年3月に発生・発覚した検証可能な児童虐待死亡事例270人のうち、約2割で実母がDVを受けており、虐待とDVの関連性や地域社会からの孤立が浮き彫りになっている。一方で児相と配偶者暴力相談支援センターに18年度の連携状況を尋ねた調査で児相の4割超、センターの3割超が連携した事案はないと報告。情報共有など連携を強化し、包括的支援を進めていく必要がある。

 児相の業務が増大する中、政府は児童福祉司を22年度までの5年間で2千人増やし5260人にする計画を掲げる。今年4月時点で4234人まで増えたが、対応件数の急増で1人当たりの担当件数を減らす計画は困難さを増す。急激な増員で勤務年数1年未満が2割を占め、育成の負担が現場にのしかかっている。専門性を高める研修や待遇改善などとともに、医師や弁護士など専門職の登用を進めることが求められている。

 新型コロナウイルスの影響で親のストレスが子どもに向かったり、虐待が見えにくくなったりすることが懸念される。福岡県中間市で8月に死亡した当時3歳の末益愛翔ちゃんは保育園などに通っておらず市の訪問調査対象になるはずだったが、コロナ禍で見送りになっていた。緊急事態宣言下の4、5月の児相の虐待対応件数(速報値)は前年同月と比べて微増・微減だった。厚労省は外部の目が届かず、虐待が潜在化した恐れもあると分析している。

 先月、児童虐待防止法施行から20年を迎えた。法改正などが重ねられ、社会の意識も高まってきたが痛ましい事件が後を絶たない。妊娠期からの支援充実など虐待を未然に防ぐ取り組みを強化し、地域全体で子どもを守っていかねばならない。



児相の体制拡充(2020年12月3日配信『佐賀新聞』-「論説」)

虐待対応の質高めたい

 全国の児童相談所で対応する虐待相談件数が過去最多を更新し続けている。2019年度は19万件を超えた。最も多いのは、子どもの目の前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」などの心理的虐待。警察からの通告が年々増えており、全体の半数を占める。これに身体的虐待、ネグレクト、性的虐待が続く。

 そんな中、児相の現場では人が足りない。政府は2年前、児童福祉司を22年度までに2千人増やす目標を掲げ、今年4月の時点で、ほぼ半分を達成した。だが相談件数急増に振り回され、1人当たりの対応件数を減らす計画は遅々として進まず、人材育成が追いつかないとの懸念も広がる。

 実父が「加害者」となる割合が増えているのも見逃せない。過去の事例を見ると、DVを受ける母親が口をつぐむなどし、虐待の実態をつかむのは難しい。さらに新型コロナウイルスの感染拡大により外出機会が減り、感染リスクを口実に児相職員の訪問を断る家庭も少なくないとされ、専門家は被害の潜在化につながる恐れを指摘する。

 児相の体制拡充を急がなければならない。ただし、人を増やすだけでは間に合わない。研修やベテラン職員の効率的な配置、数年で職場が変わる人事の見直しなど、あらゆる手を尽くし、虐待対応の「質」を高める必要がある。自治体との役割分担も課題となろう。

 19年度の虐待相談件数は19万3780件。1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新した。前年度からの増加数も3万3942件で、最多だった。このうち、面前DVのほかに暴言なども含む心理的虐待が10万9118件に上り、全体の56・3%を占めた。

 一方、警察庁の統計によると、全国の警察が昨年1年間に摘発した児童虐待事件は1972件に上り、被害に遭った18歳未満の子どもは1991人と過去最多。うち54人が亡くなっている。摘発を受けたのは2024人で、うち45%に当たる913人が実父だった。

 中でも千葉県野田市の小4女児虐待死事件では、児相などの「機能不全」があらわになり、厳しい批判を浴びた。傷害致死罪などに問われ、一審千葉地裁で懲役16年の判決を受けた父親は、女児が学校アンケートで被害を告白したため一時保護した児相に激しく抗議し虐待を否定し続けた。

 ところが児相側は父親が問題解決に取り組もうとしていると評価するようになり、一時保護中に女児が性的虐待を打ち明けても軽度と判断し、17年末に保護を解除。昨年1月に亡くなるまで特段の対応はしなかった。

 市や学校も含め、父親への対応にてこずり、虐待の実態を見抜けなかった。16年の児童福祉法改正では経験豊富なスーパーバイザー(SV)を育成し、児童福祉司5人につき1人を配置することにしたが、この児相では児童福祉司43人のうちSVは4人だけだった。

 児相は人気のある職場ではない。メンタルの問題で休んだり、配置されても異動願をすぐに出したりする職員も少なくないという。児童虐待の深刻化に対応し、児童福祉司ら職員を増やすことに異論はないが、それは対症療法でしかない。職員の専門性や緊急時の判断力を高めるため、待遇面も含めて環境を整えることに一層力を注いでいくことが求められよう。(共同通信・堤秀司)





児童虐待/見守り強化で潜在化を防げ(2020年12月1日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 県内四つの児童相談所が2019年度に対応した児童虐待件数が前年度から3割増加し、過去最多の2024件に上った。

 心理的虐待が最も多く、全体の7割近くを占めた。近年、配偶者からの暴力(DV)が発生した家庭に子どもがいる場合、警察が子どもに対する面前DVとみなして通告するケースが増えているのが影響している。次いで身体的虐待が2割、育児放棄が1割だった。

 心理的虐待は、子どもが保護者との信頼関係がつくれなくなったり、心的外傷後ストレス障害などとして残ったりするなどの影響があるとされる。子どもへの暴力や育児放棄は命の危険に直結する。各児相は一つ一つの事案に適切に対応し、子どもたちの安全を確保してほしい。

 児相の対応件数は年々増加する傾向にあるが、本県の4月以降の対応件数は、7月に前年同月の半分以下になるなど減少がみられる。虐待が減っているのではなく、潜在化している可能性があるとみるべきだろう。

 県は本年度、各児相に児童福祉司を1人ずつ新たに配置し、子どもが虐待される恐れのある家庭への訪問活動を強化している。助けを必要としている子どもを見逃さないことが求められる。

 虐待が起きるリスクが高い家庭に対する見守りも重要だ。厚生労働省は、支援が必要な家庭の把握などを行う「子ども家庭総合支援拠点」を全市町村に整備する方針を示しているが、県内で整備されたのは郡山、福島など5市町村にとどまっている。

 整備が進まない背景には、虐待などに対応する専門知識を持つ人材の確保の難しさに加え、国の補助率が低く、各市町村が財源を捻出しなければならないことがある。厚労省には人材育成への支援や補助の充実を通じ、各市町村の対応を後押しするよう求めたい。

 本県では東日本大震災以降、子どもを暴力から守るための人権教育プログラム「CAP」が盛んになっている。研修を通じ、子どもには暴力を受けたら助けを求めていいとのメッセージを伝え、大人には子どもの気持ちをじっくりと聞くことを促すものだ。

 県CAPグループ連絡会の田中明子会長は「虐待を受けると自分が悪いと思ってしまう子どももいる。子どもに一人一人が大切な存在であることを知ってもらうことが重要だ」と話す。プログラムなどを活用し、子どもが助けを求めることができ、大人がそのサインをしっかりと受け止められる社会をつくっていくことが大切だ。



児童虐待の増加 孤立防ぐ手だて続けよ(2020年12月1日配信『東京新聞』-「社説」)

 児童虐待の件数が増え続けている。子どもたちをどう守るかは子育て中の家庭だけでなく、社会全体に問われている。地域のあらゆる資源を投入して親子を孤立させない取り組みが欠かせない。

 19万3780件。全国の児童相談所が2019年度に児童虐待として対応した件数だ。

 前年度比21・2%の増、1990年度の統計開始以来29年連続で最多を更新した。

 警察の通告による対応が年々増え、全体の半数を占める。10年前の約15倍に増えた。虐待への社会の関心が高まったことが背景にあるのだろう。

 虐待の種類にも変化が見られる。10年ほど前は身体的な虐待、ネグレクト(育児放棄)が多かったが、最近は心理的虐待が半数を超えている。

 子どもの前で家族に暴力を振るい恐怖心を与える「面前ドメスティックバイオレンス(DV)」が目立ちだした。

 父親が加害者になる割合も上昇している。一昨年に東京都目黒区で船戸結愛(ゆあ)ちゃん=当時(5つ)、昨年は千葉県野田市で栗原心愛(みあ)さん=当時(10)=の死亡事件でも父親から母親への暴力があったことが公判で明らかになっている。

 支援は母親だけでなく父親が抱える問題へのケアも課題だろう。

 コロナ禍で自宅で過ごす時間が増え、親が抱えたストレスのはけ口が立場の弱い子どもに向かいやすい環境だ。しかも、外出機会が減ったことで地域からは見えにくくなっている。実際、今年1月以降の対応件数は増加傾向だ。

 養育に困難を抱える家庭が地域から孤立しSOSを発せられない状況が虐待の背景にある場合が多い。地域の見守りを広げたい。
 厚生労働省は児童相談所で活動する児童福祉司を5年で2000人増員し2022年度に5260人の人員確保を目指している。

 現場からは育成が追いつかないとの懸念がでている。人員確保は必要だが、虐待事案に的確に対応できなければ支援につながらない。自治体は人材育成にも知恵を絞ってほしい。

 専門職の手を借りる取り組みも始まっている。虐待を見つける医師や、子育て相談ができる保健師、法的な助言が期待される弁護士などだ。こうした他職種との連携を深める必要がある。

 市民からの通報が増え、警察の役割も増した。虐待を疑われる子どもの保護に自治体との連携強化が不可欠だ。さらに進めたい。





児童虐待の相談最多/「いち早く」察知して対策を(2020年11月28日配信『河北新報』-「社説」)

 児童虐待の相談件数が増加の一途をたどっている。子どもの命が奪われる深刻な事件も後を絶たない。法令や制度の度重なる改正で幅広い防止策は講じられているが、子どもの発するサインを早期に察知し、切れ目のない支援につなげるよう、改めて関係機関に求めたい。

 厚生労働省がまとめた速報値によると、全国215の児童相談所が2019年度に処理した児童虐待の相談対応件数は19万3780件に上った。前年度と比べて21.2%アップし、統計開始以来29年連続で過去最多を更新した。

 虐待4類型の割合は、「身体」が25.4%、「ネグレクト(育児放棄)」が17.2%、「性的」が1.1%、「心理的」が56.3%だった。

 大幅増加の主な要因は、心理的虐待の対応件数が23.4%増の10万9118件に上ったこと、警察などからの通告が21.9%増の9万6473件あったことが挙げられる。

 相談経路は約半数を占める警察以外では、近隣知人(2万5285件)や家族・親戚(1万5799件)、幼稚園・学校・教育委員会(1万4828件)の順で多い。

 子どもの体にできた外傷や痩せ過ぎなどの顕著な判断材料に加え、家族形態の変化や社会からの孤立、子どもが不自然な理由で学校を休むといった小さな異変に、周囲が気付いた結果とも言える。

 それでも痛ましい事例はなくならない。社会保障審議会児童部会は04年10月、専門委員会を設け、要保護事例や死亡事例を毎年検証してきた。

 直近の18年度に発生または表面化した児童虐待による死亡事例(心中による虐待死を含む)は64件で、73人が命を落とした。特徴として、子どもの年齢は0歳が28例・28人と際立っており、主たる加害者は実母が33例・38人と最も多かった。

 ここからうかがえるのは、母親が妊娠期に十分な支援を受けずに出産し、養育能力に不安を抱えたまま「死」を選ぶケースが少なくないことだ。

 適さない環境で出産し、産後の肥立ちも悪ければ大きな健康のリスクになる。犯す必要のない罪から母親を守るためにも、対策の拡充は急ぐべきだろう。相談しやすい会員制交流サイト(SNS)などの活用も視野に入れた支援環境の整備は欠かせない。

 心中以外で死亡した51例・54人中、ネグレクトが25例・25人、身体的虐待は22例・23人を数えた。専門委のこれまでの調査で、ネグレクトが身体的虐待の人数や割合を初めて上回った。

 統計上、命に関わる児童虐待の把握は難しくなっている。行政は、積極的に情報を提供して手を差し伸べるアウトリーチ型の支援を強化してほしい。周囲は子どもや保護者の様子に違和感を覚えたら、誤りを恐れずにいち早く関係機関に連絡することが痛ましい事態を防ぐ第一歩になる。



児童虐待が過去最多 質量ともに体制の強化を(2020年11月28日配信『毎日新聞』-「社説」)

 児童相談所(児相)への虐待相談件数が、過去最多を更新し続けている。昨年度は19万件を超え、前年度より2割増加した。

 子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」の増加が目立つ。身体的虐待や、ネグレクト(育児放棄)なども増えている。

 虐待への対応で中心的な役割を果たす児相の体制強化が必要だ。

 政府は、児童福祉司を2022年度までに約2000人増やし、5000人強に拡充する計画だ。

 ただ、児相の新設が進む東京23区などでは、職員確保に苦労している。相談の増加ペースが加速していることも踏まえ、国は人材育成にさらに力を入れてほしい。

 勤務年数が3年未満の児童福祉司が増えており、今年4月時点で半数を占める。経験不足が原因で、保護者との意思疎通に支障が出ることも懸念される。職員の増員だけでなく、虐待対応の「質」を上げることも重要だ。

 指導役のベテラン職員を偏りなく配置することや、研修の充実が欠かせない。数年で職場が変わる人事を見直し、経験が積みやすい環境の整備を急ぐべきだ。

 ストレスが大きい仕事だけに、職員のメンタルケアの仕組みも求められる。

 18年度には、心中事件を除く虐待で54人が亡くなった。死因はネグレクトが最も多い。背景には望まない妊娠や、子育て家庭の孤立化がある。

 このうち、事前に児相が関与できていたのは3割にとどまる。市区町村は妊娠期から相談できる窓口の周知や、乳幼児健診を受診していない家庭への働きかけを強化すべきだ。

 今年は新型コロナウイルスの感染拡大による影響も懸念される。在宅勤務中の親に暴力を振るわれたケースが出ている。支援が必要な家庭でも、感染が不安だという理由で、児相職員の訪問を断る例があるという。虐待が埋もれてしまっていないか注意が必要だ。

 児相や市区町村は、学校や保育所、子ども食堂などの民間団体と連携し子どもを見守ってほしい。

 保護者でなくとも連絡できる虐待の相談ダイヤル「189」がある。社会全体で地域の子どもに目を配ることも大切だ。



児童虐待最多 体制強化待ったなしだ(2020年11月28日配信『中国新聞』-「社説」)

 全国の児童相談所が昨年度、児童虐待として対応した件数が前年度比21・2%増の19万3780件に上った。1990年度の統計開始以来最も多く、前年度からの増加数も過去最多となったことを憂慮する。

 警察や近隣住民からの通告・相談が増えている。虐待についての関心の高まりが増加の背景にあると、データをまとめた厚生労働省はみている。しかし顕在化するのは氷山の一角ではないか。増加の一途をたどる事態を、もっと深刻に捉えるべきだ。虐待の兆候をいち早くつかむため、児相の体制強化は待ったなしだ。

 虐待の形態で最も多いのが、「心理的虐待」だ。全体の56%余りを占めている。とりわけ、子どもの前で親が配偶者に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」の通告増加が目立っている。

 2018年に東京都目黒区の船戸結愛ちゃん=当時(5)=、19年に千葉県野田市の栗原心愛さん=当時(10)=が死亡した虐待事件を覚えている人も多かろう。いずれも母親が夫からのDVに遭い、逆らうことが難しい状況で、両親による虐待が深刻化したことが分かっている。

 先月、茨城県ひたちなか市で生後1カ月の小沼舞香ちゃんを死なせたとして父親が逮捕された事件でも、母親が夫への恐怖心から虐待を制止しきれなかったという。自治体の母子保健担当者が母親とこまめに面談し相談にも乗っていたが、父親とは1度面会したきりで家庭の事情を十分把握できず、児相につなぐ判断には至らなかった。

 子育てを母子だけの問題と捉える発想から変えていく必要があるのではないか。児相とDV被害者支援団体との情報共有や連携など、包括的な仕組みづくりも急がねばなるまい。

 今年は新型コロナウイルスの感染拡大で、家族が家で一緒に過ごす時間が増えたことから、かねてDVの増加が懸念されている。外出機会が減り、虐待のサインを見逃してしまう懸念もある。ストレスや収入減少など親の不安が、虐待やDVにつながるリスクも指摘されている。危機感を持って目を光らせなくてはならない。

 政府は虐待への対応に当たる児童福祉司を、18~22年度の5年間に2千人増やし、5200人余りにするという計画を掲げている。しかし虐待への対応件数は計画を立てた18年当時を大きく上回るペースで増えている。計画の前倒しやさらなる人員増も検討すべきではないか。

 もちろん人員を増やすだけでは解決できない問題もある。心理的、身体的な負担が大きい職務でもある。待遇を改善し、専門性や対応力を強化する対策も求められる。

 児童虐待防止法の施行から今月で20年を迎えた。それまで家庭内の問題だと片付けられていた、保護者による暴力や育児放棄などを「虐待」と定義し、被害防止に向けた社会の責務を明記した意義は大きい。

 親の体罰を禁じる改正児童虐待防止法も今年4月に施行された。体罰は子どもの心身に深い傷を残す暴力であることをあらためて認識したい。

 悩みを抱え、助けを必要としている家庭が必要な支援にたどり着けるよう、社会全体で手を携えなくてはならない。 





虐待防止へ体制強化を急げ(2020年11月221日配信『日本経済新聞』-「社説」)

 深刻な被害から子どもたちを守ろうと、児童虐待防止法が施行されてから20年がたった。しかし虐待はいまなお後を絶たない。

 2019年度に全国の児童相談所が児童虐待として対応した件数は、過去最多の19万3780件に上った。前年よりも21.2%も増えている。

 虐待の被害には、身体的虐待、性的虐待、心理的虐待、ネグレクト(育児放棄)の4類型がある。なかでも多かったのは心理的虐待で、全体の56%を占めた。子どもがいる場所で配偶者に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」がここに含まれることが影響している。

 いま強く懸念されるのは、新型コロナウイルスの感染拡大による影響だ。収入減や失業などへの不安・ストレスが弱い人に向かってしまい、児童虐待やDVが増えかねない。DVが起きている家庭で、子どもが死亡するケースもある。DVの相談・支援機関や警察など幅広い機関と連携し、子どもを守らなければならない。

 中核をなす児童相談所の強化は急務だ。政府は児童福祉司を22年度までに5260人にまで増やす計画だ。17年度に比べ約2000人増となるが、数と同時に専門性を高めることも欠かせない。

 児童福祉司のうち、勤務年数1年未満の人が23%、1~3年未満が28%を占める。難しいケースにしっかり対応できるよう、研修や指導体制を充実させる必要があろう。状況を分析し、計画を不断に見直す必要もある。

 コロナ禍で人との接触が減り、家庭が社会と隔絶しやすくなっている。学校など地域ぐるみでの子どもの現状把握、SNSなど相談受け付けのルート拡充など、やれることは多くある。自治体が妊娠・出産時から不安をかかえた親に寄り添うことも、未然防止に役立つだろう。

 わたしたちひとりの見守りの目も大切になる。子どもは社会の宝だ。虐待を許さない社会にするために、あらゆる知恵を絞りたい。





児童虐待が最多 児相の対応能力高めたい(2020年11月22日配信『北国新聞』-「社説」)

 昨年、全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数が過去最多の19万件余りに上った。石川、富山両県も1000件を超え、右肩上がりで推移している。

 増加要因として相談体制の拡充や社会的関心の高まりなどが挙げられているが、少子化が進む中で増加の一途にある現状を重く受け止めねばならない。

 厚生労働省は、児相の対応件数が最多となったのは警察との連携強化が進んだのも一因としている。児相への情報経路で警察からの通告が年々増え、昨年は全体の半数近くを占めた。富山県でも顕著で、全体1097件のうち416件が警察からの通報だった。虐待を最小限に食い止めるには早期対応が欠かせず、迅速な情報伝達が肝要となる。児相と警察は無論、保育所や学校、行政も垣根を低くし協力関係を強めてほしい。

 問題は増える事案に対応する児相の体制整備だ。国は専門職の児童福祉司を全国で2000人増やし、2022年度までに5260人にする方針を掲げたが、18年の計画策定時より事案は急増ペースにあり、増員が追いついていない児相も多い。石川、富山両県では今年度3人ずつ増やし、それぞれ24人、31人を配置している。22年までに目標とする27人、39人を確保するとともに対応能力の底上げに努めてもらいたい。複雑で多様な家庭問題に対処する児童福祉司は高い専門性が求められ、人材育成の取り組み強化も必要だ。

 新型コロナウイルス禍による生活不安などでストレスが高まり、はけ口が弱い立場の子どもたちに向かう傾向が指摘されている。周囲でSOSを発している子どもたちがいないか見過ごさないよう留意したい。

 昨年の虐待内容で目立ったのは、子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV」を含む心理的虐待で、全体の約7割を占めた。石川県でも1187件のうち半数が心理的虐待だった。4月に施行した改正児童虐待防止法では虐待とDVの対応機関が連携する



[児童虐待最多]DV対策と連携強化を(2020年11月22日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 全国の児童相談所(児相)が2019年度に対応した児童虐待の件数が19万3780件(速報値)に上った。前年度に比べて21・2%増加し、厚生労働省が統計を取り始めた1990年度から29年連続で最多を更新した。

 警察の通告や近隣知人、家族・親戚らの連絡で児相につながった。対応件数の増加は、児童虐待に対する社会の関心の高まりが反映されている。

 それでも顕在化するのは一部にすぎない。事態はさらに深刻だととらえるべきだ。

 身体、ネグレクト(育児放棄)、性的、心理的の虐待4類型のうち、最も多かったのは心理的虐待で5割を超えた。子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」や無視、暴言などが含まれる。

 虐待で心に傷を負い、その影響が成長後も残る事例は少なくないという。子どもたちが感じた恐怖を思うと胸が痛み怒りを覚える。

 被害に遭った子どもを保護する児相の役割は増す一方だ。厚労省は、児童福祉司を2022年度までの5年間で2千人増やし5260人とする計画を進めている。

 専門的な立場で保護を担う児童福祉司の増員は歓迎すべきことだ。だが、現場では急激な増員で育成が追い付いていない面もあるという。

 千葉県野田市の小4虐待死事件では、加害者である父親が児相職員に威圧的な態度を取るなどして救いの手を排除したことが指摘されている。

 児相の体制強化には、マンパワーの質の充実が欠かせない。国は研修などにさらに力を入れてほしい。

■    ■

 家庭という「密室」で起きる児童虐待。DVも根は同じであり、その関連性が指摘されている。

 厚労省の専門委員会が07年1月~18年3月に発生・発覚した児童虐待死を分析した結果、検証可能な事例270人のうち2割弱で実母がDVを受けていたことが分かった。

 母親が夫のDVに遭い精神的に支配される中で、子どもへの虐待がエスカレートする。そんな状況が浮かぶ。

 一方、厚労省が全国の児相と配偶者暴力相談支援センターに18年度の連携状況を尋ねた調査では、児相の4割超、センターの3割超が連携した事案はないと報告していた。双方の連携を強化し包括的に母子を支援する必要がある。

 コロナ禍の今年は家族で自宅にいる時間が長く、生活不安のストレスのはけ口が子どもや母親へ向かう恐れがある。学校は子どもの小さな変化を見逃さぬよう気を配ってもらいたい。

■    ■

 県内でも児相が対応した虐待件数は増えている。19年度は1607件で前年度に比べ46%増え、2年連続で最多を更新した。全国と同様に面前DVを含む心理的虐待が増加し全体の7割近くを占めた。

 ことし4月、県の子どもの権利を尊重し虐待から守る社会づくり条例が施行された。罰則規定はないものの体罰禁止も明記されている。

 子どもの権利を全力で守る。条例の理念の実現のため、児相と県警や市町村とのさらなる連携が欠かせない





子どもの虐待 社会が連帯し防ぎたい(2020年11月21日配信『北海道新聞』-「社説」)

 札幌市中央区で昨年6月に池田詩梨(ことり)ちゃん=当時(2)=が死亡した事件できのう、札幌地裁は母親の池田莉菜(りな)被告(22)に懲役9年の判決を言い渡した。

 交際相手の男は先月実刑判決を受け控訴している。関係機関の連携不足があらわになり社会に衝撃を与えた事件は、保護する立場の両被告の一審判決がそろった。

 きのうは児童虐待防止法施行から20年の節目でもあった。

 虐待は許されないとの認識を社会に広げた法律であり、改正も重ねられてきた。だが乳幼児の犠牲は後を絶たないのが実態だ。

 母子保健と児童福祉が抱える課題を直視し、社会全体で子どもを守る意識を新たにする―。判決をその契機としたい。

 裁判は詩梨ちゃんの死因が争点だった。衰弱死を主張する検察側に、弁護側は食べ物を詰まらせた窒息死で無罪だと反論した。

 判決は司法解剖を担当した医師の見解をおおむね信用し、「必要な食事を与えず、衰弱死させた」として、保護責任者遺棄致死罪の成立を認めた。

 詩梨ちゃんの健康を顧みなかった池田被告を、「あまりに無責任」と厳しく非難もした。裁判員が犯行内容を極めて悪質ととらえた結果と言えよう。

 両被告が起訴内容を全面否認したため、二つの裁判を通しても詩梨ちゃんへの暴行や放置の動機は明らかにならず、事件の全容が解明されたとは言い難い。

 それでも、住民通報や自宅訪問の際に、適切に対処していれば、悲劇は防げた可能性があったことも改めて浮き彫りとなった。

 機会を再び見逃さないよう、児童相談所や警察は公判記録を職員の技能向上に役立ててほしい。

 札幌市は市内の全ての子どもの健診情報などを一元管理し、虐待リスクを点数化するシステムの運用を来夏から始める予定だ。

 ただ、健診や予防接種ができなかった子の保護者を疑念の目で見るのは避けなければならない。子育てに悩んでいるのではないか。そんな姿勢で保護者に接し、必要な支援につなげるべきだろう。

 市が新設を計画している第2児童相談所を巡っては、専門職員の確保と育成が重要だ。

 児童虐待防止法は、子どもの健全な成長には「近隣社会の連帯」が必要と定めている。

 長引くコロナ禍で虐待がさらに潜在化している恐れがある。地域ぐるみで子どもを守り、子育てを支える必要性が増している。



児童虐待の増加 父親への目配りが要る(2020年11月21日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 家庭内で親の暴力にさらされる子どもの増加が止まらない。

 全国の児童相談所が対応した児童虐待の件数が昨年度、19万3780件に達した。前年度から2割以上増え、過去最多を更新した。長野県内も最多を8年続けて更新している。

 実父による加害が増えている。最近は全体の4割を超える。虐待の一つで、子どもの前で家族に暴力を振るう「面前DV(ドメスティックバイオレンス)」が全体の件数を押し上げている。

 母親は育児に疲れ、外から帰った父親は泣き声などでイライラが募る。はけ口が家族への暴力となり、やがて矛先が小さな子に向かう。そんな悪循環に陥ってしまうケースが多いのではないか。

 10月に茨城県ひたちなか市で生後1カ月の女児を暴行で死なせたとして28歳の父親が逮捕された。妻が夫に対する恐怖から暴行を制止できずにいたとされる。

 自治体の母子保健担当者が父親と面会したのは1回だけ。家庭の実情が把握されず、母親は孤立感を深めていた様子が浮かぶ。

 一般に、母親は行政の担当者ら外部の人と定期的に接する機会があるのに比べ、父親は少ない。

 看護の専門家は、父親も育児の影響でストレスをためて鬱(うつ)になり得るとして、育児相談の機会を増やす必要性を指摘する。

 虐待する親には、幼少期に親から暴力を受けた「虐待の連鎖」にいる人が少なくない。加害の自覚がないのも特徴という。専門家や民間の更生支援団体の指摘だ。

 生活への不安が暴力の引き金になる場合も考えられる。問題が深刻化する前に、父親を心理カウンセラーや民間の専門機関、行政の窓口などにつなげる仕組みを考えていく必要がある。

 大阪では民間のネットワークが「虐待死ゼロ」を目標に、市民に「聞き役」への参加を呼び掛けている。参考にしたい取り組みだ。

 件数増加について、厚生労働省は相次ぐ虐待死事件を背景に警察や学校、近隣住民からの連絡が増えてきたことが一因とみる。

 本年度は月ごとに増減がある。新型コロナ下で、虐待の潜在化も懸念される。悲惨な事件が繰り返されないよう、児童相談所の体制強化とともに、問題を抱える家族の実情に即した支援体制づくりを進めなくてはならない。

 親の体罰を禁じる改正児童虐待防止法も4月に施行した。虐待を放置しないために、子どもや母親だけでなく父親にも目を配る。地域全体の課題と捉え直したい。





児童虐待防止 命を守る対策の強化を(2020年11月4日配信『茨城新聞』-「論説」)

 虐待で命を落とす子どもたちが後を絶たない。ひたちなか市でまた、父親から暴行を受けた生後1カ月の乳児が亡くなった。警察の調べに父親は「殺すつもりはなかった」と殺意を否認。「泣きやまず、ストレスがたまって犯行に及んだ」と暴行を認める供述をしている。市は両親以外に育児に協力してくれる人がいないため電話や面接での支援をし、出産後も家庭訪問をしていたが、乳児に暴行の痕がなかったため児童相談所への通告もなったとされる。

 生まれてからわずか1カ月の命が奪われたことに胸が引き裂かれる思いだ。児童虐待の防止に長年取り組む、認定特定非営利活動法人「いばらき子どもの虐待防止ネットワークあい」理事長の坂本博之弁護士は「関係機関がどこかで救える機会があったかを検証する必要がある」とし、「将来に教訓をどう生かすかという観点の検証をした方がいい」と説く。

 死という最悪の事態を繰り返さぬためには事件の検証が必要だ。検証を踏まえ、子どもの命を守る取り組みをさらに強化したい。

 同市での虐待による死亡事件は2018年にも起き、生後約10カ月の乳児が父親の暴行で亡くなっている。ほかにも県内では16年に神栖市で生後2カ月の乳児が死亡し、15年には水戸市で3歳児が亡くなるなど虐待死は後を絶たない。特に、ゼロ歳児が命を落とすケースが少なくないことから、坂本弁護士は「妊娠中から何らかのケアが必要。関係機関が手助けをしないと間に合わない」と危惧する。

 児童虐待の相談対応件数は全国的に急増している。県内でも16年度は2038件だったが、年々増加し、19年度は3181件にまで増えた。虐待というと殴る蹴るといった身体的虐待が多いように思うが、最も多いのが子どもに暴言を浴びせたり、子どもの目の前で配偶者に暴言を浴びせたり、暴力を振るったりする心理的虐待だ。子どもたちの心に深い傷を残す。

 増え続ける子どもたちへの虐待を防止するため、国は親権者による「しつけ」と称する体罰を禁止する改正児童虐待防止法を施行して、児童相談所の体制強化を打ち出した。子どもの安全確保を最優先として命の危険性が高い事案については立ち入り調査や一時保護を躊躇(ちゅうちょ)なく実施し、必要に応じて警察への援助要請を行うことを県や市町村に求めている。

 しかし虐待から子どもを守るための法的な整備が進んでも、家庭という密室で行われる虐待を防ぐことは容易ではない。将来にわたる親子関係を考えれば虐待する側の親の心にまで踏み込んだ対策を講じる必要がある。

 子どもたちを守るため県も児童福祉司や児童心理司を増員し、現在1カ所の一時保護専用施設も民間の児童養護施設を活用して計5カ所設ける計画だ。増員は歓迎したいが、同時に職員の資質向上も図りたい。坂本弁護士は「家庭にどのくらいリスクがあるかを把握するスキルアップ、虐待を発見するスキルアップを図らねばならない」と語る。一方で増え続ける虐待相談に対応する児童相談所職員の負担も重くなっている。職員の心と体のケアにも心を配りたい。

 今月は児童虐待防止推進月間でもある。未来を担う子どもたちの命、心と体を守ることは大人の役割である。悲劇を繰り返してはならない。





[児童虐待増加] 社会全体で孤立防ごう(2020年10月28日配信『南日本新聞』-「社説」)

 全国の児童相談所で児童虐待に関する相談が増える中、鹿児島県内で虐待と認定されるケースが急増している。

 県内の児相と市町村は2019年度、2194件を児童虐待と認定した。09年度の343件から6倍以上に増え、過去最多となった。

 少子化が進み、ひとり親世帯も増加傾向にあるなど、子育てを取り巻く環境は変化している。こうした社会情勢や経済状況が影響し、虐待を引き起こしているとみられる。

 児童虐待を未然に防ぐには、行政機関が連携するのはもちろん、子どもや保護者を孤立させないよう、社会全体で支援していくことが必要だ。

 県内の児相が19年度に虐待認定した1696件のうち、心理的虐待が最も多く7割を占めた。その大半は子どもの目の前で配偶者らに暴力を振るい、心理的外傷を与える「面前DV」である。DV加害者が子どもを虐待する例は少なくないだけに対策が急がれる。

 また、親から暴力を受けた子どもが親になったとき、わが子に対して虐待を再現してしまう世代間連鎖も社会問題となっている。カウンセリングを通して親に立ち直ってもらい、連鎖を断つという視点も重要だろう。

 子どもの命を守るためには、虐待の早期発見と適切な保護が欠かせない。そのために児相や自治体、警察を含む関係機関が果たす役割は大きいが、十分とは言えないのが現状だ。

 出水市で19年8月、ネグレクト(育児放棄)と虐待認定された4歳女児が死亡した事案で、県が設置した社会福祉審議会児童福祉専門分科会相談部会はこのほど検証報告書をまとめた。

 それによると、児相はリスク判断が不十分だった。組織としてのチェック機能も働かず、必要な情報が共有されなかった。さらに関係機関の間では、責任の所在が曖昧になっていた。

 報告書は再発防止策として、児相内の情報伝達方法をルール化することや、緊急性が高い事案の情報は警察と全件共有するなど、関係機関の連携強化を求めた。教訓を生かし、子どもの安全確保につなげなければならない。

 ただ、行政組織が連携するだけで虐待を防げるわけではない。保護者が子育てをする上で、悩みを相談できる場や、地域による見守りが不可欠だ。

 例えば子どもが無表情になり、家に帰りたがらない場合は、異変が起きている可能性がある。保護者も社会的に孤立していると、精神的に追い詰められる恐れがある。

 社会や地域の目が、こうした予兆に気付くことが虐待防止につながる。厚生労働省は、児相が通報や相談を電話で24時間受け付ける虐待対応ダイヤル「189(いちはやく)」を運用している。幼い命を救えるチャンスを見逃してはならない。




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