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わいせつ処分の教員が過去最多も「氷山の一角」 児童生徒への被害が後を絶たない背景(2020年10月28日配信『AERA.com』)

 安全なはずの教室で、教員による児童生徒への性暴力が増えている。圧倒的な支配関係の下、被害に遭った子どもたちの心身は傷つけられている。AERA 2020年11月2日号から。

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「被害に遭う前の私に戻りたい」

 都内在住の石田郁子さん(43)は、静かにそう言った。

 中学3年(15)の時から大学2年(19)までの約4年間、通っていた札幌市内の中学校で美術の男性教員から性暴力を受けていた。

 中学の卒業式前日。石田さんは男性教員に誘われ市内の美術館に行った。当時、この教員は28歳。美術館で石田さんが腹痛を覚えると、車で教員の自宅に連れて行かれた。そこでくつろいでいると、教員は「実は好きだったんだ」と言い、キスをしてきた。身体も触られたが何が起きたのかわからず、頭が真っ白のままだったという。

 教員への恋愛感情は一切なかった。ただ教員が言うことは正しいと信じ込み、交際とはこういうものかと思っていた。こうして関係は、教員が別の恋人をつくる19歳まで続いた。

■除斥期間が壁になる

 性暴力を受けていたと認識したのは37歳の時。ある児童養護施設に通う16歳の少女が職員から性的被害を受けた事件の裁判を偶然傍聴すると、加害者の職員は性的な行為は恋愛上の同意があったと主張していた。自分の体験と酷似していた。

 私が受けていたのも性暴力だったんだ──。

 次第に精神状態が不安定になり、2016年に心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症した。フラッシュバックに苦しめられながら昨年2月、男性教員と札幌市教育委員会に性被害を起因とするPTSDへの約3千万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴。同時に、顔と実名も公表し性被害を告発する。石田さんは言う。

「その教員は、今も札幌市内の中学校で教壇に立ち生徒と接しています。札幌市の教育委員会に訴えても教員が否認しているという理由で何もしてくれませんでした。このまま私が黙っていると同じような被害者が出てしまいます。それが耐えられなかった」

 しかし、民法上は20年を経過すると損害賠償請求権を失う。昨年8月に出た一審判決は、その「除斥(じょせき)期間」が壁となった。16年のPTSD発症時ではなく、19歳の性被害を受けた最後の時期を除斥期間の起点とされ、敗訴。石田さんは控訴し、12月に出る判決を待っている。

 長い間、石田さんは加害教員と年齢の近い男性を見ただけで警戒し、男性と親密な関係を持つことができないという。石田さんは言う。

「被害に遭わなかったら、もっと普通に生きていたと思います。金銭的な補償以上に、加害者が心から謝ってくれることが救いなんです」

■処分は「氷山の一角」

 安全なはずの学校の教室で何が起きているのか。文部科学省によれば、全国の公立小中高などでわいせつなどを理由に処分を受けた教員は年々増加傾向にあり、18年度は前年度比72人増の282人と、過去最多となった。 

 教員による児童生徒へのわいせつ被害が後を絶たない背景にあるのが、圧倒的な支配関係だ。学校では、児童生徒にとって教員は絶対的存在。「逆らえない」立場を利用し、自らの欲望の赴くまま行動する問題教員が増えている。子どもから被害を訴えるのは難しく、わいせつ教員の処分数は「氷山の一角」との指摘もある。(編集部・野村昌二)

※AERA 2020年11月2日号より抜粋




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