FC2ブログ

記事一覧

(論)国会代表質問に関する論説(2020年10月29・30・31・11月1日)

国会代表質問 核心部分避けた首相答弁(2020年11月2日配信『琉球新報』-「社説」)

 臨時国会で菅内閣の初めての代表質問が終わった。首相の答弁が注目されたが、従来の発言に終始し、目指す国家の在り方を巡る議論は深まらず、国民の疑問に正面から向き合わず、物足りない内容だった。

 特に、所信表明で全く触れれなかった日本学術会議の6人の会員任命拒否の問題は、野党から質問が続いたが核心部分を避け続けた。

 首相は10月上旬のインタビューで、(学術会議による)推薦段階の名簿は見ていないと述べている。しかし、国会では「偏りが見られることも踏まえ、多様性を念頭に判断した」と答えた。多様性の説明として、東京大学など旧帝国大が45%、旧帝大以外の国立大17%、私立大24%と旧帝大への偏りに矛先を向けた。

 なぜ名簿を見ていないのに多様性を考え判断できたのか。それに今回任命拒否された6人中3人は、私立大である。会員が他にいない東京慈恵医大の教授や比率の低い女性の研究者も任命拒否している。

 多様性を持ち出した首相の説明は、明らかに論理破綻している。その点を突かれると「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」とはぐらかした。

 任命拒否された6人は、安倍前政権下での安保法制や辺野古新基地建設に反対している。政権の意向に反した研究者を排除し、学術会議を政府の意のままにしたいのではないかという疑問が、国民から上がっている。首相は疑問に答えなかったばかりか、任命拒否の判断変更は「考えていない」と明言した。理解に苦しむ。

 安倍前政権からの疑惑に向き合おうという姿勢もなかった。森友、加計学園問題や桜を見る会の問題についても菅首相は再調査要請を拒否。これまでの答弁を踏襲し、事実上の「無視」を決め込んだ。

 首相自身の国家観も見えなかった。「国民から信頼される政府」や「国民のために働く内閣」とは、内閣が国民に選ばれた議員らで構成される以上、当たり前の話だ。就任当初と同じフレーズには大局観は見られない。

 首相の掲げる「自助、共助、公助」に対しても質問が出た。日本は少子高齢化や過疎化、単身世帯の増加、格差の拡大など自分の力では変えようのない環境に置かれている人が増えている。国民は新型コロナウイルス感染症による景気後退で失業や給与削減などさらに苦しい状況に陥っている。

 この状況をどう考え「公助」の位置付けを首相はどう考えるのか。「まず自分でやってみる」という所信表明の言葉を繰り返すだけで、明確な考えは聞けなかった。

 論戦の舞台は2日からの衆参両院の予算委員会に移る。一問一答での討論となるだけに、資料の「棒読み」では通用しない。丁々発止の質疑応答で首相が国会答弁の基本姿勢と語った「丁寧な説明」と「建設的な議論」を待ちたい。



予算委「言えないことある」2人が質問者?(2020年11月2日配信『日刊スポーツ』-「政界地獄耳」)

★今日2日から国会は予算委員会がスタートする。期間は短いものの、首相・菅義偉が就任してから最初の予算委員会での論戦になる。この内閣は「国民のために働く」内閣だからよもや答弁拒否や「言えないことがある」などと、国民のためにならないことはなかろうと思っていたが、既に行われた首相の所信表明や代表質問の答弁を聞いていると、先が思いやられる。しかも自民党内も同様の見方をしている節がある。

★菅政権はいまだに党内で着実な認知を受けていないのではないかと心配になる。確かに前首相・安倍晋三が投げだした政権の後を担うのは、骨が折れることかもしれない。だが、それを承知で最高権力者になったのならば、スローガン通り国民のために働いてもらわなくてはならない。与党にいようが野党にいようが国民のためにならないことをただすのが議会の仕事ではないか。

★衆院予算委員会の自民党質問者は党政調会長・下村博文と元経産相・小渕優子という。首相にただすよりもこの2人に国民はただしたいことの方が多い。きちんと国民に説明すべきことがたくさんあるが、2人とも「言えないことがある」ようだ。質問者にこの2人を選んでいることに疑問を感じていないところに国民は「国民のために働く」と思えないのではないか。

★もう1つ。先週、国民民主党幹事長・榛葉賀津也は会見で、首相の学術会議会員候補6人の任命拒否について「予算委でただしていかなければならない」としながらも「生活に密着した問題でなく国民の反応が(国会の)議場ほどではない」と指摘した。野党はこの発言をどう受け止めるか。政治的な判断と胆力が問われる。





首相答弁 論議深める姿勢見えない(2020年10月31日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 衆参両院で30日までの3日間、菅義偉首相に対する各党の代表質問が行われた。首相就任から1カ月、6月の通常国会閉幕から4カ月という異例の長期空白を経ての菅政権初の国会論戦である。

 現下の課題や目指す社会像について、首相の答弁で明確な説明がなされることが期待されたが、従来の発言の繰り返しや抽象的な言い回しが目立った。これまでのところでは、「建設的な論議」を国会に求めた首相自身に、論議を深める姿勢が見えないと言わざるを得ない。

 具体的説明を回避する姿勢が特に際立ったのが、日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題に関する答弁だった。

 野党側は、任命拒否について「推薦に基づいて首相が任命する」と明記している日本学術会議法に反しているなどと指摘した上で、拒否の理由をただした。

 これに対し、首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない。これは政府の一貫した考えだ」と説明。6人の拒否の個別理由については「人事に関する」と説明を拒んだが、「総合的、俯瞰[ふかん]的観点」との国会前からの発言を繰り返した上で、「出身や大学などに大きな偏りがある」として「多様性を念頭に判断した」と述べた。

 だが、首相が「政府の一貫した考え」とした学術会議法の解釈は、従来の政府の答弁や公文書の記載と明らかに異なっている。さらに「多様性を念頭に判断」したのならなぜ、6人の中に会員のいない大学からの候補や女性が含まれているのか。これも矛盾する説明で納得し難い。

 目指す社会像についても首相は、「自助、共助、公助、そして絆」との自民党総裁選からのスローガンを掲げた上で、「まずは自分でやってみる。そして家族や地域で助け合う。その上で政府のセーフティーネットでお守りする」との持論を改めて主張した。

 当事者の努力による自助を第一に挙げる考えは、「たたき上げの政治家」を自任する首相の個人的信念でもあるのだろう。しかし今一番の課題は、首相自身が「国難」と表現する新型コロナウイルスの感染拡大に対して、野党側も指摘したように、国民の命と生活を政府がどう守っていくかではないのか。

 多くの国民が自力では乗り越えようもない苦境に置かれている中で、国民の自助、共助を重ねて説く首相の感覚には違和感を覚える。まずは、誰も置き去りにしない公助の姿勢とセーフティーネットの具体策を示して、国民の不安の解消に努めるべきだ。

 週明けには、一問一答形式の予算委員会が始まる。首相の答弁の姿勢や力量がさらに厳しく問われることになろう。医療の確保や持続化給付金、「Go To キャンペーン」など、既存のコロナ対策の効果も検証した上で、第3次補正予算の編成などに向け、国民の理解も深まるような論戦を改めて求めたい。



衆参代表質問(2020年10月31日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

答弁不能で居直る首相許せぬ

 菅義偉首相への各党代表質問が衆参の本会議で行われました。日本共産党の志位和夫委員長(衆院)と小池晃書記局長(参院)は、国政の重大焦点である日本学術会議への人事介入を中心に首相の認識をただしました。学術会議の会員6人の任命拒否は、法治主義の破壊であり、国民の基本的人権を侵害する前代未聞の暴挙です。志位氏らは任命拒否の違憲・違法性を条文などに基づき徹底的に明らかにしました。しかし、首相は従来と同じ答弁を繰り返すばかりで、まともに答えません。答弁不能に陥っても、任命拒否の撤回に応じない首相の姿勢は全く不当です。

違憲・違法いよいよ明白

 任命拒否は日本学術会議法に真っ向から違反します。志位氏は具体的に条文を挙げ、学術会議の政府からの独立性が同法全体で幾重にも保障され、実質的な人事権も全面的に学術会議にあることを示しました。首相が人事介入できる余地がないのは明白です。

 憲法15条1項の公務員選定・罷免権を根拠にした菅首相の「任命拒否合理化論」も成り立ちません。同項は、公務員の最終的な選定・罷免権が主権者・国民にあると規定したものです。それを個別の法律で具体化するのは国民を代表する国会であり、学術会議会員の選定・罷免権は学術会議法で定められています。その法律に違反した首相の任命拒否こそが15条違反です。同条を持ち出し任命拒否を正当化することは「天につばするもの」(志位氏)です。

 「一部の大学に偏っている」「多様性が大事」などと言うのも拒否理由になりません。ではなぜ50代前半の研究者や、その大学から1人だけの研究者らを排除したのか。首相が勝手に選考・推薦の基準をつくり、人事介入することは、それこそ学術会議の独立性の破壊です。だいたい学術会議が推薦した名簿を「見ていない」と言うなら、どうして「偏っている」などの特徴が分かるのか。語れば語るほど首相の答えは支離滅裂です。

 首相は学問の自由を理解しているのか―。学問の自由は、個々の科学者だけでなく大学や学会など科学者の自律的集団に保障される必要があり、その独立・自主性の保障なくして科学者の自由な研究もありません。理由を示さぬ任命拒否が、個々の科学者に萎縮をもたらし、学術会議の独立性を保障する要の人事権を侵害したのは明らかです。「首相の任命拒否は学問の自由を二重に侵害するものではないか」。志位氏の質問に首相は正面から答えず「侵害とは考えていない」と言い張るだけでした。

 憲法に学問の自由が明記されたのは、学問が弾圧され、科学者が戦争に動員された戦前の痛苦の反省の上にたったものです。歴史の教訓に学ばず、強権で異論を排斥する政治に未来はありません。

民意に反する政権倒そう

 再燃が懸念される新型コロナの対策で、志位氏と小池氏が検査・医療の強化や暮らしを支える施策を具体的に提案しても、首相は踏み込んだ答弁を一切しません。

 小池氏が来年1月発効の核兵器禁止条約に背を向ける姿勢を改めよと迫っても、首相は条約の署名・批准に応じません。戦争被爆国の首相にあるまじき態度です。

 国民の願いにことごとく反する菅政権を打倒し、野党連合政権を実現することが求められます。





衆参代表質問(2020年10月30日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

物足りない答弁だ

 菅義偉首相の所信表明演説に対する衆参両院の各党代表質問で、首相は日本学術会議の会員任命拒否問題など現下の課題や、目指す国家ビジョンについて従来の発言を繰り返し、議論は深まらなかった。

 就任後初めての論戦としてはあまりにも物足りない。一問一答形式の予算委員会では真正面から答弁するよう求めたい。

 与野党対立の最大の焦点となったのは学術会議が推薦した会員候補6人の任命拒否問題だ。

 立憲民主党の枝野幸男代表が「推薦に基づいて首相が任命する」と明記した日本学術会議法に反しており「違法だ」と指摘したのに対し、首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と答弁した。

 首相はさらに学術会議が「専門分野の枠にとらわれない総合的、俯瞰(ふかん)的な活動」を行うべきであることや「民間出身者や若手が少なく、出身や大学に偏りがある」などとして「多様性を念頭に判断した」と述べた。

 だが、6人の拒否の理由については「人事に関する」として説明を拒んだ。首相が挙げた判断事由は、社会科学分野に限って今回6人の任命を拒否した理由の説明にはなっていない。

 「推薦通りに任命しなければならないわけではないという点は、政府の一貫した考えだ」とも強調したが「政府が行うのは形式的任命にすぎない」とした従来の国会答弁と明らかに矛盾している。

 共産党の志位和夫委員長は「科学者の自律的集団に対しても保障される憲法23条の『学問の自由』への侵害だ」と指摘した。これに対して首相は「会員が個人として有する学問の自由や、学術会議の独立性を侵害するものとは考えていない」と述べただけだった。

 枝野氏の質問は、首相の見解をただすよりも、党の基本政策をアピールする内容だった。1年以内に行われる衆院選を意識した戦略だろう。

 「目先の効率化だけにとらわれず、政治が責任を持って支え合いの役割を果たす共生社会の実現」を強調。新型コロナウイルス対応で人手不足が露呈した保健所の増員や、医療機関への経営支援などを列挙。消費税の時限的な減免も主張した。

 予算配分の見直しだけで財源を賄えるのかなどの疑問はあるが、「まずは自助」を掲げる菅政権への対抗軸になる考え方だ。こうした議論を国会で尽くしてもらいたい。

 だが、「大局的なビジョン」を示すよう求める野党側に対し、首相は「国民から信頼される政治を目指す」と述べるにとどまった。「行政の縦割り、既得権益、あしき前例主義の打破」も強調したが、これは政治手法にすぎない。「国民のために働く内閣」は当然であり、聞きたいのはどういう社会を目指すのかだ。

 与野党の論戦のポイントはいくつか示された。首相は所信表明で宣言した「2050年の温室効果ガス排出の実質ゼロ」に関して、原発の依存度は低減させながらも今後も利用する考えを示した。原発ゼロを掲げる野党側との違いは明確だ。

 弾道ミサイル阻止の「敵基地攻撃能力」やカジノを含む統合型リゾート施設(IR)でも見解は対立する。森友学園を巡る決裁文書改ざん問題など前政権から続く疑惑について首相は再調査を拒否した。説明責任に後ろ向きでは国民の理解は得られないと自覚すべきだ。(共同通信・川上高志)



国会代表質問 際立つ首相のかたくなさ(2020年10月30日配信『新潟日報』-「社説」)

 従来の説明を集約して事務的に原稿を読み上げる。質問に誠実に答えるというより、自説を押し通そうとする強権的でかたくなな姿勢が際立つ。

 国会代表質問で、菅義偉首相が初の答弁に立っている。これまでに新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済支援や、2050年までの脱炭素社会の実現と原子力政策などが問われた。

 その中で焦点が当たったのは、日本学術会議会員の任命拒否を巡る問題だ。立憲民主党の枝野幸男代表が任命拒否を「明らかに違法だ」と指摘したのをはじめ、野党議員からの追及が続いている。

 発覚当初から政府側は「人事」を盾に説明を渋り、世論調査ではこの問題に対する首相の説明が不十分だとする回答が多い。質疑が集中するのは当然だ。

 だがこれまでの発言との整合性を欠く答弁などがあり、疑問はさらに深まっている。

 任命を巡っては、政府が会員の推薦方法を現行方式に変えた04年に「首相が任命を拒否することは想定されていない」との内部資料がまとめられていたことも明らかになっている。

 しかし首相は「必ずしも推薦通りに任命しなければならないわけではない」とこれまでの説明と同じ答弁を繰り返し、任命拒否の判断変更は「考えていない」とした。

 拒否する理由の詳細は語らなかったが、民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがあるとして「多様性が大事だということを念頭に私が判断した」と説明した。

 首相は、学術会議が提出した105人の推薦名簿について「詳しく見ていなかった」と話していたはずだ。それなのに多様性を念頭に判断したというのは矛盾しないか。

 学術会議法は、優れた研究や業績のある学者から会員を選ぶとしており、首相が指摘した年代や出身、大学などは触れていない。ここにも齟齬(そご)がある。

 多様性を理由とするのなら、首相が言う「偏り」と、任命を拒否された6人がどう関連するのかも説明が要る。

 「ゼロ回答」が目立ったが、代表質問ではあらかじめ答弁が用意されるため制約があるのも確かだ。一問一答の討論となる予算委員会で答弁を引き出し、疑問を解消できるか、野党の力量にも注目したい。

 会員の選定プロセスに関しては、杉田和博官房副長官が任命できない人が複数いると首相に報告していたことを政府関係者が明らかにし、選定に関与していたことが分かっている。

 政府与党は野党が求める杉田副長官の招致に応じるべきだ。

 気になるのは、政権が学術会議の在り方について、年内に結論を出せるように検証作業を加速させていることだ。論点をずらすために躍起になるような姿勢が透ける。

 首相は「国民に信頼される政治を目指す」と強調している。ならば、国民の目をそらすようなことをせず、疑問に真摯(しんし)に答えるべきだ。



代表質問と首相/説明避ける姿勢が鮮明に(2020年10月30日配信『神戸新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の所信に対する代表質問が衆参両院で始まった。菅内閣発足後初の本格的な国会論戦である。

 だが首相は、野党の問題提起に対し、従来の答弁を「棒読み」で繰り返すなど丁寧な説明を避けようとする姿勢が目についた。これでは議論は深まりようがない。

 「国民のために働く内閣」を自任するなら、首相は疑問に正面から答え、目指す社会や国家観を明確に示して理解を得るのが先決である。

 日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題では、特にかたくなさがあらわになった。

 野党側が任命拒否の違法性を指摘し撤回を求めたのに対し、「推薦通り任命する必要はないというのが、内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考えだ」との見解を示した。

 しかし、首相の任命権は「形式的」で、推薦候補の拒否は想定していないとした過去の政府答弁との整合性がとれない。国会審議を経ず法解釈を変えていたことになるが、それも認めようとしなかった。

 一方で首相は、学術会議の構成は会員の出身大学などに偏りがあり、民間人や若手、女性が少ないとして「多様性を考慮した」と強調した。

 これには学術会議の元会長が具体的なデータを示して反論している。6人の中に女性や、会員がいない大学の研究者がいたこととも矛盾しており、説得力に欠ける。

 誰が、なぜ6人の拒否を決めたのか。曖昧な説明に終始する限り、政権の意に沿わない学者を恣意(しい)的に排除したとの疑念はぬぐえない。

 首相は指摘を謙虚に受け止め、任命拒否を撤回すべきだ。

 首相が掲げる「自助、共助、公助」の社会像もテーマになった。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、人口減少や高齢化などの進展に伴い、自助努力だけでは生きていけず、共助も難しい地域や社会から孤立する人が増えているとし、自助ありきの発想は「時代遅れ」と批判した。

 これに代わる選択肢として、安心できる社会保障を基盤とした「共生社会」をつくるとも訴えた。合流を果たし、野党第1党として政権交代に挑む決意の表明と言える。

 これに対しても菅首相は、所信表明の文言をなぞるだけだった。目指す社会像を巡る論戦に消極的とも映る姿に、一国のリーダーとして物足りなさを抱かざるを得ない。

 エネルギー政策の大転換を迫る温室効果ガスの「2050年ゼロ宣言」や、新型コロナウイルス克服と経済再生など、今国会は新たな社会の姿を示す重要課題が山積する。

 1年以内に衆院選がある。与野党は政策を競い、国民の判断材料となる論戦を心がけてもらいたい。



国会代表質問 選択肢となる「対立軸」を(2020年10月30日配信『西日本新聞』-「社説」)

 今国会は菅義偉内閣が発足し初の本格的論戦の舞台だが、同時に政権交代を目指す新たな野党第1党が誕生して臨む国会でもある。建設的な政策論争を通じて有権者の選択肢となる対立軸を明らかにしてほしい。

 首相の所信表明に対する代表質問で、立憲民主党の枝野幸男代表は質問時間の半分近くを使って党の基本的な考え方を説明した。さながら野党党首の「所信表明」である。1年以内に実施される衆院解散・総選挙を意識したのは言うまでもない。

 「まず自分でやってみる自助、家族や地域の共助、そして政府のセーフティーネット(安全網)で守る公助」を理念に掲げる首相に対し、枝野氏は「自助・共助・公助を順番に並べる考えは昭和の成功体験にとらわれて時代遅れ」と批判した。

 その上で「目先の効率性だけを追い求めず、政治が責任を持って支え合いの役割を果たす共生社会の実現を目指す」と主張した。「まず自助」という政権側に「共生社会」を対置させた格好だが、問われるのは具体論であり現実的な道筋だろう。

 首相が所信表明で打ち出した「2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロにする」との政策目標を、枝野氏は評価しつつ「そのために原発への依存を強めることがあってはならない」とくぎを刺した。環境問題と原発を含むエネルギー政策は総選挙の重要な争点となる。与野党を問わず競い合ってほしい。

 政権を監視する立場から、枝野氏が日本学術会議の任命拒否問題を取り上げたのは当然だ。学術会議の「推薦に基づいて首相が任命する」と定めた日本学術会議法に違反する-と追及したが、首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と突っぱねた。きのうの参院代表質問でも法解釈の変更を否定し「一貫した政府の考え方だ」と繰り返した。

 また、首相は「会員の出身や大学に偏りがある」として「多様性を念頭に判断した」とも答弁したが、推薦リストの全体を「見ていない」のになぜ「多様性」を判断できるのか。疑問は膨らむばかりだ。納得のいく拒否理由の説明を求めたい。

 枝野氏は代表質問で「立憲主義に基づく透明でまっとうな政治を取り戻す」と誓った。野党勢力の合流で衆参計150人の規模を整え、政権交代への足がかりはできたと言えよう。

 とはいえ、共同通信社の世論調査(17、18日実施)によれば立民の支持率は6・4%で自民の45・8%に遠く及ばない。この現実を率直に受け止め、国会論戦で存在感を発揮するとともに、いずれ国民に問う理念と政策を磨き上げてもらいたい。



日米棒読み首脳会談を想像すると…(2020年10月30日配信『日刊スポーツ』ー「政治地獄耳」)

★政治家と時代は複雑だが極めて密接な相関関係があるといえる。1980年代、米国は元俳優のロナルド・レーガン、韓国は元国軍保安司令官、全斗煥が大統領。そして日本は先ごろ国を挙げての壮大な葬式を敢行した元海軍主計士官、中曽根康弘が首相だった。冷戦時代を3人の指導者は謳歌(おうか)したといえる。米国はソ連に対して「悪の帝国」と強硬路線を敷く。米国はスターウォーズ計画でミサイル防衛を固め、3首脳はいわば太平洋マッチョ連合の様相だった。

★これらは時代の要請だったように受け取られるが、実際は彼らの生きた世代の思いが政治に反映されたのではないか。その意味では米大統領のドナルド・トランプと前首相・安倍晋三も「気が合う」とお互いを評価し合い、似たビジョンを掲げた。さてそのトランプは民主党のジョセフ・バイデンと激しい選挙戦を繰り広げているが、米国でのバイデン評は「原稿を読むだけのつまらない演説」といわれる。今でも前大統領のバラク・オバマの機知に富んだスピーチの方が人気があるという。

★そこで我が国の国会である。低調で既出の内容を並べた首相・菅義偉の所信表明演説に対して28日、野党の代表質問が始まったが、それを扱った産経新聞は「首相は日本学術会議が推薦した6人の会員候補の任命見送りをめぐる質問でも冷静沈着な答弁に努め『実務型』を印象付けた」とある。読み違いを含めビジョンを示さず、棒読みに徹した所信表明や代表質問の答弁を「実務型を印象付ける」と感じた人がどのくらいいたかはさておき、国民に訴えかける演説や答弁だったかどうかといえば、前首相のように国会のヤジに感情的に反応したほうが、こちらもほめられたことではないものの、まだ論評のしようがあった。米国の選挙の行方は分からないが、バイデンと菅の棒読みコンビの首脳会談を想像すると、心配になる。



学匪(2020年10月30日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

「学匪(がくひ)」という中国から伝わった蔑称があります。学問や知識で民心を惑わし、社会に悪影響をおよぼす学者や学生を指します。その屈辱の言葉を国の議会で投げつけられた学者がいました

▼戦前に憲法学の最高峰といわれた美濃部達吉です。国家を法人とみなし天皇は法人たる国家の最高機関という学説が国体を揺るがす危険思想だとして弾圧されました。ときの政府は全著作を発禁とし、公職からも追放。不敬罪での告発、右翼による襲撃へと進んでいきました

▼この排撃の嵐のなかで言論や学問の自由も奪われ、立憲主義は停止し、歯止めを失った権力の暴走が日本を破局的な戦争に引きずり込んでいった。『「天皇機関説」事件』の著者、山崎雅弘さんは今に重なる警鐘を鳴らしています

▼戦後、憲法に明記された学問の自由の保障。それが、こうした歴史の反省のうえに刻まれたものだという認識はあるのか―。学術会議の人事に介入した菅首相に対し志位委員長が国会でただしました

▼理由も明らかにしないまま任命を拒む侮辱。これまでの政府答弁さえすべて覆す横暴。これは全国民にとっての大問題で、強権をもって異論を排斥する政治に未来はないと

▼美濃部は当時、国民一丸となって国防の強化にまい進するよう求めた軍部の小冊子にこう反論していました。「国民を奴隷的な服従生活の中に拘束して、いかにしてこのような急速な文化の発達を実現することができようか。個人的な自由こそ、実に創造の父であり、文化の母である」





国会代表質問 説明せぬ首相の不誠実(2020年10月29日配信『北海道新聞』-「社説」)

 国会は各党の代表質問に入り、立憲民主党の枝野幸男代表らが菅義偉首相の政治姿勢をただした。

 長期政権を担った安倍晋三前首相が退陣した後、与野党のトップが国会で初めて相まみえた。

 1年以内に行われる衆院選に向けて課題や争点を明確にする機会とすべきだ。

 しかし、菅首相の初日の答弁は、日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題をはじめ、木で鼻をくくったような回答に終始し、疑問点に正面から答えようとしない不誠実な姿勢があらわになった。

 首相が標榜(ひょうぼう)する「国民のために働く内閣」も、国民への説明責任を果たさなければ、看板倒れに終わるだろう。

 学術会議の任命拒否に関し、首相は「推薦通りに任命しなければならないわけではない、という点は内閣法制局の了解を得た政府の一貫した考えだ」と、法的に問題はないとの見解を改めて示した。

 首相の任命権を「形式的」とした過去の国会答弁との整合性がとれず、納得できない。都合良く法解釈を変更した疑いがある。

 拒否理由の説明を拒む一方で、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られる」と学術会議側に人選の見直しを求めたのも理解しがたい。

 任命を拒否された6人の中には他に会員候補がいない大学に所属する人がおり、説明に無理がある。拒否を撤回すべきだ。

 森友学園や加計学園、桜を見る会の疑惑についても決着済みとの認識を示し、再調査に否定的な立場を崩さなかった。

 枝野氏は新型コロナウイルスで女性や若者が苦しい生活を強いられているとして、競争を重視する新自由主義的な社会のあり方が本当に正しいのかと指摘した。

 その上で首相の掲げる「自助・共助・公助」を、競争で成長を追い求めた「昭和の成功体験にとらわれた時代遅れのもの」と断じ、長期ビジョンの提示を求めた。

 首相は「まず自分でやってみる。そして家族や地域で助け合う。その上で政府がセーフティーネットで助ける」と所信表明演説の文言をなぞるだけだった。

 目指す社会像の競い合いが期待されたが、肩透かしに終わった。

 ただ枝野氏も手厚い公的支援による「共生社会」の実現を訴える自身の主張を力説するあまり、言い放しとなった感がある。

 国会審議を通じて、政府の政策の問題点を浮き彫りにする野党の役割を忘れないでもらいたい。



代表質問への首相答弁 議論を恐れているのでは(2020年10月29日配信『毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉内閣発足後、初の各党代表質問がきのう、衆院本会議で始まった。

 残念ながら、首相は従来の発言を繰り返すだけで、さらに踏み込むことはなかった。これでは国会の議論は成り立たない。首相は審議を恐れているのではないかとさえ感じさせる答弁ぶりだった。

 日本学術会議の新会員候補のうち6人を任命しなかった問題が典型的だ。

 所信表明演説で一切、触れなかっただけに、立憲民主党の枝野幸男代表と泉健太政調会長が追及したのは当然だ。

 これに対して首相は、今回の措置に違法性はなく任命拒否を撤回する考えはないと明言し、組織見直しの必要性を重ねて強調した。

 しかし、焦点の「なぜ6人を任命しなかったか」に関しては「人事に関することで答えは差し控える」と繰り返した。

 6人はかつて政府方針に反対したり慎重論を唱えたりした経緯がある。任命しないのは、異論を排除し、会議を政府の都合のいいように利用するためではないか。この疑念が問題の核心だ。それに答えない限り、不信は募る一方だ。

 森友・加計問題の再調査を改めて否定したのも理解できない。

 首相が目指す社会像として所信表明演説で語った「まず自分でやってみる。そして家族、地域で互いに助け合う。その上で政府がセーフティーネットでお守りする」との考え方もテーマとなった。

 枝野、泉両氏は、「自助」で切り抜けたいと思っても、そうはできない人が増えている厳しい現実を指摘し、「公助」が最後になっている点を批判した。

 まさに深めるべき議論のはずだが、首相はここでも所信表明の言葉をなぞるだけだった。

 自民党からは野田聖子幹事長代行が代表質問に立ち、女性の社会進出の遅れなどをただした。

 自民党も変化しつつあることを示す人選だった。それでも首相は、例えば長い間の懸案である選択的夫婦別姓の導入について「国会の議論を注視しながら検討する」とかわした。求められているのは自らの考えだ。

 建設的な議論を野党に求めた首相だが、まずそれを自戒すべきは首相自身である。



代表質問 国の針路を大局的に論じよ(2020年10月29日配信『読売新聞』-「社説」)

 感染症への対応や財政健全化など重要な課題について、議論が深まったとは言えない。政府と与野党は、大所高所から論じる必要がある。

 菅首相の所信表明演説に対する各党の代表質問が始まった。菅内閣の発足後、初めての本格的な国会論戦である。

 立憲民主党の枝野代表は、社会保障や雇用などの予算を充実させ、「命と暮らしを守る上で欠かせないベーシックサービスをすべての皆さんに保障する」と述べた。保育士の賃上げや、保健所などの職員増を具体策に挙げた。

 首相が「自助、共助、公助」を掲げ、自助努力の重要性を唱えていることに対し、政府の役割を拡大する立憲民主党の基本政策を強調したかったのだろう。

 新型コロナウイルスの流行を踏まえた経済対策に関しては、枝野氏は時限的な措置として、年収1000万円以下の所得税免除や、消費税の減免などを訴えた。

 感染症が収束せず、事業の継続を不安視する企業は多い。困窮した人への支援を含め、社会の安全網を強化することは大切だ。だが、財源を示さず、大規模な減税まで主張するのは安易に過ぎる。

 公共サービスを充実するためには、多大な費用がかかる。枝野氏が言う予算配分の変更だけでは、財源を捻出できまい。

 税収を増やすには、経済成長が不可欠だ。責任政党を標榜ひょうぼうするならば、枝野氏は説得力のある構想を示してもらいたい。

 首相は「所得税の免除は低所得者に効果が及ばず、消費税は社会保障のために必要な財源だ」と枝野氏に反論した。

 政府は、感染症の抑止と経済の両立を図り、国民の不安の解消に努めなければならない。

 日本学術会議が推薦した会員候補の任命を拒否した理由について、首相は「人事に関することで、答えは差し控える」と述べた。学術会議に関し、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りがみられる」とも語った。

 組織の問題点を指摘し、人事の妥当性を訴えたかったのだろうが、「政府が行うのは形式的任命」という過去の政府答弁と整合性が取れてはいまい。分かりやすく説明することが重要だ。

 自民党の野田聖子氏は、憲法改正手続きを定めた国民投票法改正案の早期成立を求めた。

 投票の利便性を高める内容で、野党にも異論は少ないはずだ。衆参の憲法審査会で議論し、速やかに成立させるべきである。



[代表質問] 国民に熱意伝わったか(2020年10月29日配信『南日本新聞』-「社説」)

 菅義偉首相の所信表明演説に対する各党の代表質問がきのう、衆院本会議で始まった。9月の菅内閣発足後初の国会論戦である。

 立憲民主党の枝野幸男代表は、日本学術会議の会員任命拒否について違法だと追及した。これに対し、首相は「必ずしも推薦通りに任命しなければならないわけではない」としたうえで、「個々人の人事に関する答えは控える」と詳しい説明を避けた。

 政権発足後ほどなくして明らかになり、多くの国民が不透明感を抱いている問題である。首相に丁寧に説明する姿勢が見えなかったのは残念だ。

 枝野氏は、日本学術会議法の「会員は会議の推薦に基づき首相が任命する」という規定を示し、誰がどんな理由で任命拒否を判断したのかとただした。そのうえで「一刻も早く6人を任命し、違法状態を解消する以外、この問題は解決しない」と迫った。

 首相は、推薦通りに任命する必要がないというのは政府としての一貫した考えだと答弁。しかし、「推薦を受けた者は拒否しない。形だけの任命をしていく」とした1983年の政府答弁との整合性について、明確な説明はなかった。

 さらに、会員の任命に当たっては「民間出身者や若手が少なく、出身や大学にも偏りが見られることも踏まえて判断した」と説明したが、会員構成に偏りがあると批判するのなら、具体的に根拠を示すのが筋だろう。このことと任命拒否された6人がどう関係しているのかも不明だ。

 「国の予算を投じる機関として国民に理解される存在であるべきだ」とも述べた。会議の側に問題があるかのような議論を提起するのは、論点のすり替えと言わざるを得ない。

 首相は「今回の任命について変更することは考えていない」と任命拒否撤回を否定したが、強権的で不透明な政治手法は政権への信頼を損なおう。説明軽視の姿勢を改めてほしい。

 所信表明演説で打ち出した2050年までに脱炭素社会実現を目指す方針については、「再生可能エネルギーのみならず、原子力を含めたあらゆる選択肢を追求していく」と語った。

 将来の日本のエネルギー政策に大転換を迫る問題である。国民的議論を高める中で進めることが欠かせない。

 新型コロナウイルス感染症の影響で経済や社会生活が大きな打撃を受ける中、新たな社会の在り方を探るべき国会である。不妊治療の保険適用、携帯電話料金の引き下げなどさまざまな看板政策も打ち出している。

 だが、菅首相の答弁は原稿の棒読みに終始し、国民に理解を求めようとする熱意が伝わってこなかった。国民の暮らしを最優先した真摯(しんし)で活発な論戦を期待したい。



薄っぺらい所信表明と「論外」な野党幹部(2020年10月29日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★いよいよ国会論戦がスタートした。菅政権が発足してから間もなく1カ月半になるが、所信表明でやっと首相・菅義偉の国家ビジョンが示されるのかと思えば、就任以来話してきたことの焼き直し。御用メディアは来年の施政方針演説で語るのだと妙な理解を示すが首相になって以来、まともな会見もせず問題が山積した中で、なお大事なことは次の国会で言うという首相の態度に納得がいく国民がどのくらいいるだろうか。所信表明の薄っぺらさは自民党内でも評判が悪い。

★そこで攻勢をかけるのが150人規模の大所帯になった立憲民主党を中心とする野党陣営だが26日、立憲民主党国対委員長・安住淳が党会合で、衆院の野党統一会派からの国民民主党離脱に言及する中で、党分裂に直面している社民党を念頭に「もう1つ消えれば本格的にわが党の時代が来るんじゃないか」と発言。昨年秋の臨時国会で結成した統一会派名が「立憲民主・国民・社保・無所属フォーラム」だったことを挙げ「ものすごく長い名前だった」「ようやく立憲民主党・無所属の会ぐらいになる」と述べ、直後に「余計なこと言ってすみません」と謝罪した。

★解党・分裂騒動で複雑な社民党でなくとも、公党幹部の失礼な発言には不快感を持つ。ある野党幹部は「調子に乗っている」と怒りを示す。安住は野党の中でも力のある議員だ。だが野党共闘は制覇して出来上がるものではなく、それぞれを尊重しながら信頼し合うものだ。今年2月、同党の衆議院会派の控室ドアの廊下側に新聞各社の4日付紙面のコピーが張り出された。コピーには蛍光ペンの書き込みがあり、東京新聞は「100点」、朝日新聞と毎日新聞は「花丸」、日本経済新聞は「出入り禁止、くず」、産経新聞は「論外」と書き込まれて掲示された。安住の仕業だった。今回の出来事は党幹事長・福山哲郎が謝罪して納めたが「くず」で安住を幹事長に推す声もあるが「論外」だ。(K)※敬称略



学術会議 首相答弁(2020年10月29日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

開き直りとすり替え許されぬ

 菅義偉首相の所信表明演説に対する各党代表質問が衆院本会議で始まりました。所信表明で日本学術会議への人事介入について一切説明しなかった首相は、答弁の中で任命拒否に触れました。しかし、総合的・俯瞰(ふかん)的な活動を確保するためなどと繰り返し、国民が求めている任命拒否の経過や理由の説明は拒みました。さらに、学術会議の推薦通りに任命しなかった日本学術会議法に反した行為を正当化し、任命拒否を撤回する意思はないことを表明しました。開き直りという他ありません。違法・違憲の暴挙に全く反省のない菅政権の姿勢は重大です。

勝手な基準を持ち出して

 学術会議の会員6人を任命しなかった問題で、菅首相が国会で言及したのは初めてです。ところが、6人を排除した理由については「人事に関することであり、お答えは差し控える」としか言いませんでした。国民の圧倒的多数が「説明が不十分」と世論調査で回答しているのに、その声に耳を貸そうとしない許し難い態度です。

 同時に首相は、「広い視野に立って、バランスのとれた活動」のためとか、「民間出身者や若手が少なく、出身や大学に偏りが見られる」などと、学術会議のあり方を踏まえて判断したと主張しました。とんでもない問題のすり替えであり、任命されなかった6人に対する侮辱です。6人を会員に任命したら、なぜ「バランス」が失われるのか―。そのことを一切語らず、一方的に非難の言葉を投げつける首相の姿勢は大問題です。

 学術会議の梶田隆章会長は16日、首相との面会で、現在の会員選考方式だからこそジェンダーや地域のバランスを考慮し、多様な意見をくみ上げることができる構成になっていると伝えています。その点でも首相の言い分はとても通用するものではありません。

 日本学術会議法は会員推薦の基準を「優れた研究又は業績がある科学者」(17条)と定めています。そして会議の「推薦に基づいて、内閣総理大臣が任命する」と明記しています。首相の任命は「形式的なもの」というのは、1983年の中曽根康弘元首相の国会答弁などで確定された政府解釈です。どんな理由を持ち出そうとも、菅首相の任命拒否が法律を踏みにじり、国会答弁を覆した違法行為である事実はごまかせません。

 ましてや、首相が「バランス」とか「民間」だとか勝手な基準を自分でつくって法律を無視して人事に手を突っ込んできたら、「法による支配」は崩壊し、「人による支配」の国になってしまいます。国の最高権力者が理由もなく、意に沿わない人物を排除する事態は、まさに独裁国家へとつながります。絶対に許してはなりません。

任命拒否は撤回しかない

 法律にも憲法にも反する任命拒否をあくまで「変更しない」と言い張る菅首相の強権ぶりは、安倍政権以上の危険性をいよいよ際立たせています。この政権を一日も早く終わらせることが必要です。

 憲法が基本的人権の大きな柱として保障する学問の自由への攻撃は、科学者・研究者にとどまらず、国民全体への攻撃です。

 違法・違憲の任命拒否をなんとしても撤回させるために、幅広い国民が立場の違いを超えて力を合わせることが重要です。








スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ