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押印廃止を弱点克服の好機に変えよう(2020年10月28日配信『日本経済新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が全省庁に押印や書面の廃止など行政手続きの見直しを指示した。デジタル化の遅れという日本の弱点を克服する好機だ。官と民が一緒になって、IT競争力を高める取り組みを広げたい。

 少子高齢化で労働力不足が深刻化し、人海戦術に頼る社会や経済のままでは、早晩立ちゆかなくなる。ハンコや対面での確認といった人手のかかる作業はデジタル技術で省力化し、生産性を高めるしかない。

 行政がデジタル化の音頭をとる。その決意を示した菅首相の方針は評価できる。河野太郎規制改革相によると、1万5千種類の行政手続きで求める押印のうち、99%を廃止できるという。改革の手を緩めないでほしい。

 やるべきことは脱ハンコだけではない。書面主義、対面原則といった慣習は本当に必要か、総点検が必要だろう。電子契約の簡素化も同時に進めるべきだ。

 押印や書面の撤廃について、政府は2021年の通常国会で一括法案を提出する考えだ。具体的な法制度にすれば実効性はあがろう。ただ懸念も残る。昨年施行した「デジタル手続き法」というあしき前例があるからだ。

 同法は行政手続きを電子申請に統一するために成立した。手続きは書面ではなく原則ネット経由にし、1度提出した情報を2度出す必要もなくす。実現すれば日本のデジタル化が一気に進むが、これまで目に見えた進展は乏しい。

 要因は行政のサボタージュにあるといっていい。例えば、同法では対面や原本書類での確認が必要な場合は、行政の裁量でそれを続けても構わないという例外規定を設けた。自治体のデジタル化対応も努力義務にとどめている。

 法の目的は評価できる一方、運用でつまずくのは、実質的な骨抜きとなっているからだ。各省庁や印鑑業界の反発もあったとされる。菅政権は指導力が問われる。

 課題は民間も同様だ。承認や決裁の電子化、電子署名の活用、株主総会のネット化など、テレワーク以外にも課題は多い。

 中小企業は対応が難しいという声もある。だが従来型システムに莫大な投資をかけてきた大企業に比べ、新技術導入のハードルは低いはずだ。この機会を逃せば、日本は世界から取り残される。危機感を原動力にすべきである。




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Author:gogotamu2019
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