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同性婚、改憲の呼び水にするな  視標「波紋広げる下村氏発言」(2020年10月25日配信『47オピニオン』)

九州大教授 南野森

 臨時国会が始まった。安倍晋三首相は所信表明演説の最後で「日本がどのような国を目指すのか、その理想を議論すべき場こそ憲法審査会」であるとして、改めて憲法論議を促した。

 憲法は国の理想を書き込むものでは必ずしもないし、また行政府の長である首相が立法府の特定の委員会における特定論点での議論を促すことにも疑問があり得る。

 ただかねて改憲に熱心な安倍首相の自民党総裁任期が残り2年を切り、首相在任中の改憲を実現するためにはさほど余裕がないこともあり、首相とその周辺が何とか憲法審査会での議論を前に進めようと躍起になるのも理解はできる。

 そのような中で、唐突に改憲の論点に浮上した感のあるテーマが「同性婚」である。

 首相の側近で、自民党の前の憲法改正推進本部長でもある下村博文衆院議員が9月21日、自民党のいわゆる「改憲4項目」に加え、同性婚実現のため、「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」すると定める憲法24条1項の改正検討などを新たな可能性として提案したのである。

 憲法審査会での議論に消極的な野党に対し、同性婚という、野党の賛成する政策課題を掲げ、いわば憲法審査会の場に野党を誘いだそうとする戦法との見方もあるが、そもそも同性婚を実現するために憲法を改正する必要があるのだろうか。

 新しい論点でもあり、憲法学において十分な議論が蓄積されているとまでは言えないが、最近の主要な学説は、その多くが同性婚実現のために改憲までは必要ではなく、法律を整備すれば十分であると考えている。

 確かに24条1項の「両性の合意」との言い方は異性カップルを前提としているように読める。実際、約70年前の憲法制定時に同性婚など想定されてはいなかったであろう。

 しかし、下村発言の3日前、9月18日に宇都宮地裁真岡支部が同性カップルに関する一つの判決で「憲法24条1項が『婚姻は、両性の合意のみに基いて成立し』としているのも、憲法制定当時は同性婚が想定されていなかったからにすぎず、およそ同性婚を否定する趣旨とまでは解されない」と述べたように、24条1項で同性婚が禁止されているとまでは言えない。

 さらに、24条1項が同性婚を否定していない一方で、異性愛者と同性愛者とを差別することは憲法14条1項の平等原則(法の下の平等)に違反する可能性がある。

 また同性愛者のライフスタイルが過度に抑圧されたものであることは、憲法13条の個人の尊厳を侵害するおそれもあることを考えると、国会は、同性婚の実現に向け速やかに議論を開始すべきであるとも言えるだろう。

 憲法を改正することなく実現できる政策と、憲法を改正しなければ実現できない政策との区別は重要である。

 改憲4項目に入っている教育の充実もそうであるが、必ずしも憲法改正を必要としない政策については、立法で実現すれば良い。それをせずに改憲の呼び水にするのは、本当にその政策の実現を目指してはいないことを物語っている。



自民・下村氏「同性婚も改憲議論の対象に」発言。同性愛公表の議員「これまでに差別発言あり、悪意すら感じる」と反論(2020年9月27日配信『ハフポスト』)

石川氏は、野党らが6月に提出した同性婚を実現する法案「婚姻平等法案」が速やかに審議されるよう求めた。

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9月27日、日本外国特派員協会で会見を開いた石川大我議員

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9月21日に「同性婚も改憲議論の対象に」の趣旨を述べた自民党の下村博文選対委員長。

「同性婚も改憲議論の対象になる」とする与党側に、同性愛者であることを公表している石川大我議員が9月27日、記者会見で反論した。

共同通信によると下村議員は富山市の講演で、国会で議論する憲法改正の項目の一つに同性婚をあげた。議論が進まない憲法審査会に、野党の参加を促すのが狙いとみられる。

石川議員は、憲法改正の議論は自民党が改憲草案に挙げる憲法9条の改正や緊急事態条項の導入などを含めた「パッケージ」として考えなければならないと指摘。立憲民主党など野党が6月に提出した同性婚を実現する法案「婚姻平等法案」が速やかに審議されるよう求めた。

これまでに自民党議員による「LGBTは生産性がない」「同性愛は趣味みたいなもの」などの差別的な発言があったこともあげ、そうした中での同性婚に関する改憲議論は「大きな違和感もあり、悪意すら感じる」とした。

石川議員は6月に参院議員選挙の全国比例区で初当選。レズビアンであることを公表している尾辻かな子衆院議員に続き、LGBTQを公表している二人目の国会議員になった。

現行の憲法で同性婚はできるのか?

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2月に婚姻の平等を求めて東京地裁で提訴した原告団(当時)

憲法24条には「婚姻は、両性の合意のみに基いて成立」と書かれている。

首都大学東京教授で憲法学者の木村草太氏は、憲法24条は、異性間での「婚姻」をする場合には、男女両当事者の合意があれば足り、父母の同意などは必要ないとした規定で、同性カップルに法律婚の効果を認めることは禁じていないという。

野党らが提出した婚姻平等法案は民法の一部改正で同性婚の実現を目指す一方で、下村氏は21日の講演で、憲法の「両性の合意」を「両者の合意」に書き換える案を議論する項目の例としてあげた。

2019年2月に同性カップルの結婚を認めないのは憲法違反として全国13組の同性カップルが国を相手どり一斉提訴した。国側は「憲法は、当事者が同性である場合の婚姻を想定していない」と主張している。





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