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大川小判決確定1年/学校防災に不断の努力を(2020年11月1日配信『河北新報』-「社説」)

 東日本大震災で児童74人と教職員10人が犠牲となった石巻市大川小の津波事故訴訟で、学校側の事前防災の不備を認めた仙台高裁判決が確定して1年が過ぎた。学校管理下で戦後最悪とされる事故の教訓を安全な学校づくりにどう生かしていくか。司法が求める内容と現実との隔たりを埋める不断の努力を望みたい。

 河北新報社が8~9月に岩手、宮城、福島3県の沿岸部の小中学校に実施した津波防災アンケート(回答215校)。判決の影響に関し、約8割が学校防災や教育活動の見直しにつながったと答えた。安全を目指す環境整備を推し進めたのは確かだ。

 最高裁が石巻市と宮城県の上告を棄却し、昨年10月10日に確定した高裁判決は、学校保健安全法を論拠に学校と市教委が組織で負う安全確保義務を初めて定義。住民より高水準の防災知識、児童の命を守る事前の備えを求めた。

 この1年で学校側の意識は確実に高まったが、アンケートでは幾つかの改善点が浮き彫りになった。

 例えば各校が用意する津波防災マニュアル。「学校以外とは点検していない」が31.2%に上った。大川小では引き渡しルールを保護者に周知せず、情報共有の不十分さが指摘された。マニュアルの実効性を高める意味でも保護者らに示し、議論を重ねる姿勢が求められる。

 判決確定後、文部科学省は地域との連携を図り、学校防災マニュアルの見直しを求める通知を出した。だがアンケートによると、住民と合同の避難訓練をしている学校は41.9%にとどまった。

 地域連携上の課題では「業務が多忙で余裕がない」が最も多かった。子どもを集団で預かる立場として、生命を守る取り組みを最優先に据えなければならない。連携することで違う視点から新たな修正点が浮かび、地域防災力の一層の向上に結び付く。確定判決の趣旨を踏まえ、行動に乗り出してほしい。

 防災教育を進める学校側には体制面の悩みがある。震災を経験した教員の定年退職者、未経験の児童生徒が年々増えていく。教員間に加え、記憶を持たない年代への伝承活動が重要な鍵を握る。

 風化を防ぐには体験型研修の充実が有効だろう。朝の会の前に防災学習の時間を設けたり、マップを作ったりと工夫を凝らす学校もあり、好例を広く分かち合いたい。

 宮城県教委は11月4日、新任校長の防災研修会を初めて大川小で開く。来年度以降は新規採用した全ての教職員に対象を広げる考えという。学校が担う重い責務を改めて確かめてもらいたい。

 新型コロナウイルスへの対応も加わり、学校の安全を取り巻く状況は複雑化している。「防災教育に答えなし」との心構えを出発点に、各校は検証と対策を重ねてほしい。




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