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「コロナは自己責任だと思っていた」国会議員初の感染者・高鳥修一氏が語る差別解消法への思い(2020年11月1日配信『AERA.com』)

「これまで、新型コロナウイルスにかかるのは感染者の『自己責任』だと思っていました。けれど、自分が感染してみて初めて、その認識は誤りだったと気付きました」

 こう語るのは自民党の高鳥修一・衆院農林水産委員長だ。現職の国会議員として初めて新型コロナウイルスへの感染を公表。9月18日に入院、10月2日に医師の判断のもと退院した。

 感染経験を機に、現在はコロナ感染者・医療従事者と家族を偏見や差別から守るための法案を議員立法で今国会に提出する準備を進めている。感染を通し気づいた“誤り”とは何だったのか。

──コロナに感染する前はどのような仕事をしていたのでしょうか。

 自民党筆頭副幹事長兼総裁特別補佐という立場で、給付金など新型コロナウイルス関連の経済対策について、安倍前首相に官邸で説明をする立場にいました。
 
 仕事を通じ日々コロナ関連の話題には接していましたが、自分が当事者になるとはまったく思ってもいませんでした。感染症対策に非常に気を配っていて、マスク着用は当たり前、ポケットには常に自分用の消毒液を持っていて、消毒や手洗いをこまめにやっていました。

 多人数で飲み会をしたり、夜の街に出入りする中で感染が広がっているという話を聞く中で、感染は「自己責任」だと思っていました。

──コロナには十分注意していたのに、感染してしまったんですね。

 飲み会や夜の街には行っていないし感染症対策もしていました。それでも自分はうつってしまった。どんなに気を付けていても、感染が起こる時は起こる。全てが「自己責任」では済まされないのだと思い至りました。

──感染が判明する前に、兆候はありましたか。

 それがまったくなかったんです。コロナ感染の前兆として「咳が出る」「味覚・嗅覚がおかしくなる」といった症状が報告されていますが、そうしたことはなかった。発症(発熱)する日まで特に異常を覚えることもありませんでした。

──感染がわかった日はどのような状況だったのですか。

最初に考えたことは「感染の事実を隠したい」


 毎朝、50回腕立て伏せすることを習慣にしていますが、20回ほどやったところで力が入らなくなった。その時点で初めて、「何か変だな」と思いました。朝に体温を測った時は37度でしたが、1時間後には37度5分、病院に行って再度測定を行ったところ38度4分になっていて。その場で医師から検査を薦められました。PCR検査は翌日以降にならないと結果がわかりませんが、抗原検査は10分後に「陽性」と判定され、そのまま入院することになりました。

 幸いだったのは、国会で近くの席に座っていた議員の方や秘書がみんな陰性だったことです。異変を感じてすぐに病院に行ったので、結果的に誰かにうつさなくてすんだのかもしれません。

──感染を知った時、何を思いましたか。

 非常にショックでした。次に起こったのは「感染の事実をできれば隠したい」という気持ちです。「第1号」というのは何でも派手に取り上げられる。感染を公表し大量の脅迫電話がかかってきた、子どもが学校でいじめられて引越しを余儀なくされたといった話も耳に入っていました。なので、自分もバッシングを受けるだろうと思いました。

 当時は9月半ばで、10月の国会解散の可能性もささやかれていた時期です。ともすれば、次の選挙に出られなくなるのではないかという考えも頭をよぎりました。けれど、私が隠すことでもし国会で感染が広がることがあれば申し訳がない。それで、公表を決意しました。

──感染した人がバッシングを受ける状況は現在でも続いています。

 私自身、公表後に職員のお子さんがスポーツクラブの利用を控えてほしいと言われることがありました。理不尽な差別やバッシングは相当数起こっていることを認識しました。

 7月末には、愛媛県今治市の飲食店で「この顔に、ピンと来たらコロナ注意!」といった言葉とともに、感染者の顔と名前が入ったチラシがばらまかれる事件が起こり、現在まで3人が逮捕されています。本人たちはいい事をしているつもりでも、感染すれば明日は自分が同じ行為を受ける側になってしまう。このような状況が続けば社会の分断が深まるだけで、何もいいことはありません。

差別の原因は正しい情報・知識の不足

また、大きな懸念は、このままでは感染を隠そうとする人が増えるのではないかということです。

 一括りにされがちですが、「コロナに感染する」ことと「検査で陽性判定を受ける」ことは、本来別の話です。たとえ具合が悪くても、検査を受けなければ「陽性」とは判断されません。陽性が判明して初めて、公的な意味での「コロナ感染者」にカウントされる。

 けれども、公表されるとバッシングを受けてしまう可能性がある場合、たとえ咳や熱が出ても解熱剤を飲んで我慢する人が増えてしまう。結果として、水面下で感染を拡大させるリスクが広がっていくと思っています。

──差別やバッシングが生まれるのはなぜでしょうか。

 一つには、正しい知識・情報の不足があると思っています。例えば、すでにコロナから回復しているのに、仕事上の取引先から「コロナが怖いから来ないでくれ」と言われてしまったケースがあります。もし取引先に足を運べないのであれば、その方の社会復帰は難しくなってしまう。
 
 台湾でコロナ感染者100名とその濃厚接触者2761人を対象とした調査が行われています。その結果によれば、新型コロナが他人にうつるのは本人のコロナ発症日の2日前から発症して5日目まで。6日目以降にうつされた人はいなかったそうです。日本でも同様の傾向が見られると、医師から話を聞きました。

 また、回復者や退院者には抗体があり、3~4カ月は機能すると言われています。こうしたことから考えれば、回復した人が取引先から「仕事に来るな」というのは不合理な話。でも現実的には、多くの人が「怖いから」と何となく感染者を避けてしまっています。

──現在、「新型コロナウイルス感染症関連差別解消法」(仮称)を準備しているそうですね。どのような内容を考えておられますか。

 社会全体で差別を止めるための、理念法を考えています。行政による相談支援体制の充実を図ることも狙いとしています。

 主な対象は感染者本人とその家族ですが、医療関係者とその家族の人権を守る内容も盛り込む予定です。これまでに医療従事者の家族が会社で父親の仕事について話したところ、会社から「職場に来ないでくれ」と言われたケースなどについて報告を受けています。そのような取り扱いについても不合理な差別と考えています。

コロナ差別禁止法の中身は?

──ある行為が「差別」と呼べるか否か、どのように線引きを行うのですか。

 詳細はこれから詰める予定ですが、重視しているのは、行為自体に「合理性がある」と言えるかどうかです。現状想定している、いくつかのケースを挙げてみます。

 たとえば、感染前の行動について。コロナウイルスの潜伏期間中、多くの方は感染に気づかず百貨店・飲食店・ホテルなどを利用しています。中には感染が明らかになると、後日、事業者側が「風評被害を受けた」と謝罪と損害賠償を求めるケースもあるようです。

 民法709条では「不法行為」が定められていて、故意または過失がなければ損害賠償を請求されないとなっている。本人からしても、自分が知らないことは避けようがないわけですから、これは不合理だと考えています。

 私自身、発症する前日まで本会議に出席していたので、そのことを記事で批判的に書かれることもありました。けれど現職の国会議員で体調も普段通りならば、本会議に出ることは何らとがめられるようなことではありません。

 あるいは、タクシー業界の乗車拒否について。今、感染症対策ということでほとんどの人がマスクをしていますが、中にはしない人もいる。そのような客を運転手が拒否した場合はどうか。運転手側が身を守る権利もあるので、私個人は一定の合理性はある行為だと考えています。他の法令との関係もあり、これから詳細を詰めていく必要があります。

──今後法成立に向けて、どのように準備を進めて行かれる予定ですか。


 呼びかけ人は私を含めて6名いて、これから協力者を募っていく予定です。勉強会を通し、どのような差別の事例があるのか各省から聞き取りを行った上で今国会での成立を目指します。

 与野党が対決するような内容ではありませんので、野党のみなさんからもご指導とご理解をいただきたいと思っています。

──今回の法案に、当事者が感染の事実を公表しやすい世の中を目指すという狙いは含まれていますか。

コロナ感染の経験はプラスになったのか?

当事者が公表するか否かは、基本的には本人の問題だと思っています。同じ感染でも国会議員には公表の義務がありますが、事務所のスタッフが感染した場合は個人特定を防ぐため、名前も性別も公表しないことになっている。それよりは、感染者や家族への差別・偏見をなくし、社会復帰上の障害を減らすことに重点を置く考えです。

──現時点で新型コロナへの感染は、ご自身にとってプラスの経験として受け止められていますか。

 それはどうでしょうね。かかってしまったものは取り消せませんから。ただ、今回の法案が自身の経験に根差していることは紛れもない事実です。国会というのはそもそも立法機関。当事者としてやれることはある。その意味では、「感染経験を無駄にしたくない」という気持ちは大きいです。

(構成/本誌・松岡瑛理)

※週刊朝日オンライン限定



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