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(論)大阪都構想再否決に関する論説(2020年112・月3・4日)

都構想再び否決 改革の不安拭えなかった(2020年11月4日配信『新潟日報』-「社説」)

 今回も改革への不安や疑問を払拭(ふっしょく)するに足る説明が、不十分だったということだろう。

 大阪市を廃止し4特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票は、反対が賛成を僅差で上回り否決となった。2015年の住民投票に続いて2度目だ。

 結果を受け、都構想を推進してきた日本維新の会代表の松井一郎市長は23年春までの任期を終えた後に政界を引退する意向を示した。大阪府の吉村洋文知事も「否決という判断を尊重する」と述べた。

 市民を二分してきた議論は、これでピリオドが打たれることになる。

 都構想の狙いは、府と市の業務が重なり合う「二重行政」を解消し、効率的な行政や税収増を通して都市の成長につなげることにあった。

 府と市の間では対立によって道路や鉄道の整備が遅れたり、似たような超高層ビルを別々に建設したりする例があった。

 東京一極集中が続く中で、大阪の経済は低迷し、かつてのような勢いはない。

 こうした状況に多くの府民が危機感を募らせてきた。

 ただ、都構想という手法については根強い批判があった。

 構想に反対の自民党や共産党などは、市を四つに分けると人件費などが余計かかって財政が悪化し、住民サービスの継続ができなくなると批判した。

 これに対し、松井代表ら維新側は、反対派の指摘を「デマ」などとはねつけた。双方とも批判合戦に終始した感が強く、議論は深まらなかった。

 前回都構想に反対した公明党が賛成に転じるなど、情勢に変化もあったが、同党の支持者も一枚岩になりきれなかった。

 ウイルス禍で「効果の不明な政策が進むのは不安がある」との見方も根強かった。

 都構想は受け入れられなかったものの、課題は依然として残る。府と市は、より適切な役割分担など住民本位の行政を徹底するため、議論を継続し知恵を出してもらいたい。

 二重行政の解消などは他の地方にとっても共通の課題だ。

 ただし、それを改善するのに大阪都構想のようなやり方が妥当なのかどうか、慎重に判断していく必要があろう。

 本県では11年に県と新潟市で「新潟州構想」が持ち上がったが、立ち消えになった。

 愛知県と名古屋市でも「中京都構想」が打ち出されたが、知事と市長の関係悪化で協議は止まっている。

 そうした中で、政府は14年成立の改正地方自治法で、道府県と政令市が重複する仕事を整理する「調整会議」の設置を義務付けた。20政令市のうち半数で開催実績がない一方で、新潟市などは回数を重ねている。

 重要なのは、県と市の現状をきちんと見つめ、その関係や在り方を不断に見直していくことではないか。

 「改革ありき」の強引さではなく、行政がどう連携することが住民生活の向上になるのか丁寧に考えていかねばならない。



大阪都構想否決 大都市論議へつなげたい(2020年11月4日配信『西日本新聞』-「社説」)

 大阪市を廃止し、東京23区をモデルとする4特別区に再編する「大阪都構想」は住民投票の結果、反対が賛成を上回り、否決された。5年前に続き再び、大阪市民は政令指定都市としての市政存続を選択した。

 僅差とはいえ、まさに大阪市民の民意である。都構想を推進してきた大阪市長で日本維新の会の松井一郎代表は「否決という判断を尊重したい」と述べ、市長の任期を全うした上で政界を引退すると敗北宣言した。

 大阪都構想とは、大阪府と大阪市の役割分担を抜本的に見直す制度改革だ。市が担ってきた都市開発や産業政策などの広域行政を府に一元化する。他方で教育や福祉など住民に身近な行政サービスは、大阪市を解体して設ける基礎自治体である特別区が担当し、特別区には公選の区長と区議会を置く。

 法的拘束力を持つ住民投票は大都市地域特別区設置法(大都市法)に基づき実施された。

 維新の会など賛成派は「府と市が同じような公共施設を造るといった二重行政を制度的に解消させ、府に一元化する広域行政で成長戦略を強力に進めることができる」と訴えた。

 これに対し、自民党などの反対派は「知事と市長のトップが協力すれば二重行政は防げる。大阪市を解体して特別区に再編しても財政事情は厳しく、住民サービスも向上するとは限らない」と反論してきた。

 大阪市民も大いに迷ったに違いない。それは僅差の投票結果が雄弁に物語る。成否を分けた要因を指摘するならば、賛成派が都構想のメリットを強調するだけでなく、反対派の懸念や不安に十分な説明を尽くしたか-という点である。

 大掛かりな制度改革の客観的な長所と短所が市民に周知されなかったとすれば、長年慣れ親しんだ大阪市が消滅することへ少なからぬ市民が心情的に反発したとしても不思議ではない。

 昨年4月の大阪府知事・市長ダブル選で、ともに維新の吉村洋文知事と松井市長が当選し、府政と市政は協調できた。皮肉にも、その実績が都構想の眼目である「二重行政の解消」を進め、現状の問題点を見えにくくした面もあったのではないか。

 大阪都構想が提起した問題は大阪に限ったものではない。福岡県と福岡、北九州両市、熊本県と熊本市など道府県と政令市の役割分担と連携は現状のままでいいか。無駄な事業や広域行政を進める上で障害はないか。実情に即して再点検すべきだ。

 大都市制度の在り方は東京一極集中を是正し、各地方に拠点都市を育てる意味でも重要である。地方自治と制度改革の議論を深める契機としたい。



大阪都構想否決(2020年11月4日配信『佐賀新聞』-「論説」)

真の活性化策を進めよ

 大阪市で「大阪都構想」を巡る2度目の住民投票があり再び反対多数で否決された。大阪維新の会が10年にわたり推し進めてきた大阪市の廃止を伴う行政改革は、最後まで市民の理解を得られなかった。大阪維新、さらには国政政党である日本維新の会の求心力の低下は必至と言えそうだ。

 都構想は大阪維新の金看板だった。5年前には当時の橋下徹大阪市長が「否決されれば政界から引退する」と政治生命を懸けた取り組みとまでアピールしたが、僅差で否決された経緯がある。

 今回の投票に向けては、松井一郎大阪市長が否決されれば政治家を引退する意向を示し、吉村洋文大阪府知事も「ぼくが都構想に挑戦するのはこれが最後」としていた。2人ともこの約束を守るのは当然である。

 否決された要因は何か。維新との対決を避け、衆院の議席を守りたい公明党が賛成に回り、山口那津男代表が大阪に入り賛成を呼び掛けた。新型コロナウイルス感染症の対策で吉村知事が常に前面に立って評価されたこともあって、今回は賛成多数で可決されるという観測も一時広がった。

 だが、大阪市を廃止して4特別区を設置し市が持っていた成長戦略や都市計画などの広域行政は新たに知事が担うという制度が複雑すぎる。さらに必要とされる初期コストが241億円と多い。これらがネックになったと分析できる。

 確かに都構想が実現すれば、府と市の二重行政がなくなり、府と市の意見が対立して協力しない「府市あわせ(不幸せ)」は制度的には起きなくなる。だが、昔のような無駄な投資ができる余裕は府と市にはない。

 府と市のトップをこの9年は大阪維新が独占し、既に「バーチャル大阪都」と称し一元的な行政を進めてきた。にもかかわらず他の地域よりも力強く経済成長していると言えない。つまりこの実験的な改革で大阪の経済が回復する保証はない。

 東京に次ぐ副首都にすると大阪維新は意気込むが、政府の協力がなければ実現しない。「約130年の歴史ある大阪市を廃止するだけの価値があるのか」という疑問を振り払うほどの説得力がなかったのだ。

 今後、コロナ禍からの世界経済の回復など見通せない課題が大きい。訪日外国人に頼らない新しい観光の振興策も求められる。5年後には大阪・関西万博が開かれる。

 大阪維新の会は、党勢拡大を目指す政治的な思惑を優先して都構想のような市民の分断を生む改革を目指すのではなく、真に大阪の活性化につながる政策を実現してほしい。

 都構想が問題提起した政令指定都市と道府県の関係見直しは、地方行政の大きな課題である。大阪市以外の19市では、維新が全国的に勢いがある時期には首長らの思惑から新潟州、中京都のように県と県庁所在市の連携強化を図る動きはあったが立ち消えになった。

 一方、横浜市などは、道府県から仕事や財源の移譲を受けて独立する「特別自治市」の制度導入を求めている。直面する高齢者の急増とそれに伴う財政負担は、市行政の効率化だけでは賄えず、道府県から財源を得る必要があるからだ。

 高齢社会に対応するためにも、国レベルで政令指定都市と道府県の関係見直しの議論を続けることは重要である。(共同通信・諏訪雄三)





大阪都構想否決 地域戦略考える契機に(2020年11月3日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政令指定都市の大阪市を廃止して4特別区に再編する大阪都構想は住民投票が行われ、僅差で反対が賛成を上回った。2015年に続いて大阪維新の会の看板政策は再び否決された。

 維新の訴えてきた二重行政解消への期待より、再編に伴う住民サービス低下への不安が上回ったと言える。

 推進派は、行政体制を簡素にするとともに、地域の成長戦略を練る体制を築くと呼び掛けた。

 この考えは地方税や地方交付税が先細りする中、各自治体で参考になる。都構想を契機にして、北海道でも自治体運営の将来像について、議論を深めてもらいたい。

 都構想は、インフラ整備や観光振興策などの広域行政を府に一元化し、教育や福祉といった住民に近いサービスは特別区で行う案だった。

 二重行政の解消は、府と市の重複した事業を見直し、無駄の削減が期待できる。他の自治体でも積極的に取り組むべきだ。

 特別区のサービスについては現行の市の水準を維持できるかが焦点だった。再編後の財政見通しを巡り、反対派の自民党が大幅なコスト増を示した。いずれも推進派は明確な見解を示せなかった。

 前回反対の公明党は、国政選挙での協力をにらみ賛成に転じたが結果は変わらなかった。

 松井一郎大阪市長は否決判明後、23年の任期満了での政界引退を表明し、吉村洋文大阪府知事は、都構想に再挑戦しないと述べた。

 2度の住民投票が出した結果は重い。維新はこの民意を尊重しなければならない。

 菅義偉首相はきのう、今回の否決について「大都市制度の議論において一石を投じることだったのではないか」と述べた。

 大都市制度を巡っては、政令市の廃止を目指した都構想とは逆の動きもある。

 横浜市や神戸市は、権限と財源を拡大して道府県の役割を市が担う「特別自治市」構想の実現を目指している。

 札幌市も市内の税収を現行より自由に使えるようになれば、大胆な政策展開に踏み切りやすくなるだろう。

 道と札幌市は連携強化を目的に、知事と市長による行政懇談会を年1回程度開いている。

 北海道のけん引役として両自治体の役割は大きい。コロナ禍で冷え込んだ道内経済の打開策や二重行政解消などで協力関係を一層深めることが求められる。



補完する行政(2020年11月3日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

「府が2分の1補助を負担すれば学童保育は続けられるんだね」。「憲法知事さん」の愛称で親しまれた大阪府の黒田了一さんは、そう言って市町村に対する補助の復活を決めた

▼1971年からの2期8年の任期中、高齢者の医療費無料化や私学助成の拡充などを実施。憲法が保障する生存権に基づく「住民が主役」の府政は、市町村に対する府の補完機能が充実した時代でもあった(『橋下「大阪維新」と国・自治体のかたち』自治体研究社)

キャプチャ

▼その役割が失われるかもしれない。そんな不安がわずかに上回ったのだろうか。大阪市を廃止し、四つの特別区に再編する「大阪都構想」は住民投票の結果、僅差で否決された

▼福祉や教育など生活に身近な政策を特別区が担い、インフラ整備など広域的な施策は府が行う都構想。実現を目指した大阪維新の会などは二重行政の無駄を一掃し、効率的行政が可能になると訴えたが、財源の見通しや住民サービスの低下を懸念する声も根強かった。成長より生活の維持が優先されたようだ

▼とはいえ、賛成票が67万票余りを集めたことも特筆に値する。現在の行政にこれだけの市民が「ノー」を突きつけたのだ。見直しは急務だろう

▼規模の大小を問わず、全国の自治体が人口減少や財政悪化に直面している。都道府県の補完機能を生かしつつ、行政の無駄を省くことはできないか。議論は待ったなしだ。



分断生まない活性化策を/大阪都構想 再び否決(2020年11月3日配信『東奥日報』-「時論」)

 大阪市で「大阪都構想」を巡る2度目の住民投票があり再び反対多数で否決された。大阪維新の会が10年にわたり推し進めてきた大阪市の廃止を伴う行政改革は、最後まで市民の理解を得られなかった。大阪維新、さらには国政政党である日本維新の会の求心力の低下は必至と言えそうだ。

 都構想は大阪維新の金看板だった。5年前には当時の橋下徹大阪市長が「否決されれば政界から引退する」と政治生命を懸けた取り組みとまでアピールしたが、僅差で否決された経緯がある。

 今回の投票に向けては、松井一郎大阪市長が否決されれば政治家を引退する意向を示し、吉村洋文大阪府知事も「ぼくが都構想に挑戦するのはこれが最後」としていた。2人ともこの約束を守るのは当然である。

 維新との対決を避け、衆院の議席を守りたい公明党は賛成に回り、山口那津男代表が大阪に入り賛成を呼び掛けた。新型コロナウイルス対策で吉村知事が常に前面に立って評価されたこともあって、今回は賛成多数で可決されるという観測も一時広がった。

 否決された要因は何か。大阪市を廃止して4特別区を設置し市が持っていた成長戦略や都市計画などの広域行政は新たに知事が担うという制度が複雑すぎる。さらに必要とされる初期コストが241億円と多い。これらがネックになったと分析できる。

 確かに都構想が実現すれば、府と市の二重行政がなくなり、府と市の意見が対立して協力しない「府市あわせ(不幸せ)」は制度的には起きなくなる。だが、昔のような無駄な投資ができる余裕は府と市にはない。

 府と市のトップをこの9年は大阪維新が独占し、既に「バーチャル大阪都」と称し一元的な行政を進めてきた。にもかかわらず他の地域よりも力強く経済成長していると言えない。つまりこの実験的な改革で大阪の経済が回復する保証はない。

 東京に次ぐ副首都にすると大阪維新は意気込むが、政府の協力がなければ実現しない。「約130年の歴史ある大阪市を廃止するだけの価値があるのか」という疑問を振り払うほどの説得力がなかったのだ。

 今後、コロナ禍からの世界経済の回復など見通せない課題が大きい。訪日外国人に頼らない新しい観光の振興策も求められる。5年後には大阪・関西万博が開かれる。

 大阪維新の会は、党勢拡大を目指す政治的な思惑を優先して都構想のような市民の分断を生む改革を目指すのではなく、真に大阪の活性化につながる政策を実現してほしい。

 都構想が問題提起した政令指定都市と道府県の関係見直しは、地方行政の大きな課題である。大阪市以外の19市では、維新が全国的に勢いがある時期には首長らの思惑から新潟州、中京都のように県と県庁所在市の連携強化を図る動きはあったが立ち消えになった。

 一方、横浜市などは、道府県から仕事や財源の移譲を受けて独立する「特別自治市」の制度導入を求めている。高齢者の急増とそれに伴う財政負担は、市行政の効率化だけでは賄えず、道府県から財源を得る必要があるからだ。

 高齢社会に対応するためにも、国レベルで政令指定都市と道府県の関係見直しの議論を続けることは重要である。



大阪都構想否決 真の活性化策を進めよ(2020年11月3日配信『茨城新聞』-「論説」)

 大阪市で「大阪都構想」を巡る2度目の住民投票があり再び反対多数で否決された。大阪維新の会が10年にわたり推し進めてきた大阪市の廃止を伴う行政改革は、最後まで市民の理解を得られなかった。大阪維新、さらには国政政党である日本維新の会の求心力の低下は必至と言えそうだ。

 都構想は大阪維新の金看板だった。5年前には当時の橋下徹大阪市長が「否決されれば政界から引退する」と政治生命を懸けた取り組みとまでアピールしたが、僅差で否決された経緯がある。

 今回の投票に向けては、松井一郎大阪市長が否決されれば政治家を引退する意向を示し、吉村洋文大阪府知事も「ぼくが都構想に挑戦するのはこれが最後」としていた。2人ともこの約束を守るのは当然である。

 否決された要因は何か。維新との対決を避け、衆院の議席を守りたい公明党が賛成に回り、山口那津男代表が大阪に入り賛成を呼び掛けた。新型コロナウイルス感染症の対策で吉村知事が常に前面に立って評価されたこともあって、今回は賛成多数で可決されるという観測も一時広がった。だが、大阪市を廃止して4特別区を設置し市が持っていた成長戦略や都市計画などの広域行政は新たに知事が担うという制度が複雑すぎる。さらに必要とされる初期コストが241億円と多い。これらがネックになったと分析できる。

 確かに都構想が実現すれば、府と市の二重行政がなくなり、府と市の意見が対立して協力しない「府市あわせ(不幸せ)」は制度的には起きなくなる。だが、昔のような無駄な投資ができる余裕は府と市にはない。

 府と市のトップをこの9年は大阪維新が独占し、既に「バーチャル大阪都」と称し一元的な行政を進めてきた。にもかかわらず他の地域よりも力強く経済成長していると言えない。つまりこの実験的な改革で大阪の経済が回復する保証はない。

 東京に次ぐ副首都にすると大阪維新は意気込むが、政府の協力がなければ実現しない。「約130年の歴史ある大阪市を廃止するだけの価値があるのか」という疑問を振り払うほどの説得力がなかったのだ。今後、コロナ禍からの世界経済の回復など見通せない課題が大きい。訪日外国人に頼らない新しい観光の振興策も求められる。5年後には大阪・関西万博が開かれる。

 大阪維新の会は、党勢拡大を目指す政治的な思惑を優先して都構想のような市民の分断を生む改革を目指すのではなく、真に大阪の活性化につながる政策を実現してほしい。

 都構想が問題提起した政令指定都市と道府県の関係見直しは、地方行政の大きな課題である。大阪市以外の19市では、維新が全国的に勢いがある時期には首長らの思惑から新潟州、中京都のように県と県庁所在市の連携強化を図る動きはあったが立ち消えになった。

 一方、横浜市などは、道府県から仕事や財源の移譲を受けて独立する「特別自治市」の制度導入を求めている。直面する高齢者の急増とそれに伴う財政負担は市行政の効率化だけでは賄えず、道府県から財源を得る必要があるからだ。

 高齢社会に対応するためにも、国レベルで政令指定都市と道府県の関係見直しの議論を続けることは重要である。



大阪都構想再び否決 維新の手法が退けられた(2020年11月3日配信『毎日新聞』-「社説」)

 「大阪都構想」の是非を問う2度目の住民投票が実施され、大阪市民は再び「ノー」の判断を下した。5年前と今回の2度にわたり否決された以上、終止符が打たれたと考えるべきだ。

 都構想を推進してきた地域政党「大阪維新の会」は、大阪市を解体し四つの特別区に再編するメリットとデメリットを明確に示せなかった。その責任は重い。

 都構想は大阪府と市の二重行政を制度的に解消し、大阪の成長を実現することが狙いだった。

 だが毎日新聞が投票直前に行った世論調査では、「メリットが分からない」が反対の理由として最も多かった。

 「住民サービスの低下」を危惧する声は強かった。新型コロナウイルスの影響で税収の落ち込みが予想されるのに、維新は特別区になってもサービスは維持されると説明した。税収減などを考慮した試算を最後まで出さず、市民の不信感を払拭(ふっしょく)できなかった。

 成長戦略そのものも疑問視された。万博の誘致や統合型リゾート(IR)整備など大型開発で経済成長を促す方法は、コロナ下の今、見直しは避けられない。

 だが広域行政の司令塔を府に一本化し、成長戦略を推進するという都構想の基本方針が再検討されることはなかった。結党時からの看板政策を維持することを優先させたと批判されても仕方がない。

 維新が2011年以降、知事と市長のポストを独占した結果、府市が一体となり、港湾部局の統合などが進んだ。そのため、市民が二重行政の弊害を実感できなかったことも一因だろう。

 維新は都構想に再挑戦することを掲げ、2度にわたる知事・市長のダブル選で勝利し、公明党の協力も得た。それでも市民の賛成多数を得ることはできなかった。維新代表の松井一郎市長が23年4月の任期満了後に政治家を引退すると明言したのは当然だろう。

 東京一極集中が進む中、大阪市に限らず大都市は人口減や高齢化などの課題に直面している。政令指定都市では道府県との二重行政が問題になり、財源と権限のあり方が問われている。

 都構想が一石を投じたのは間違いない。その経験を生かし抜本的な対策の議論につなげるべきだ。



「大坂三郷」とは…(2020年11月3日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「大坂三郷(おおさかさんごう)」とは江戸時代の大坂城下の北組、南組、天満組の三つの町組の総称である。三郷に属する町は計620町、それぞれの組には町人から選ばれた惣年寄(そうとしより)が置かれ、各町の町年寄とともに町政にあたった

▲こちらは今日の政令指定都市・大阪市を廃止して“大阪四郷”、いや4特別区に再編しようという「大阪都構想」である。その賛否を問う住民投票での市民の選択は、5年前の投票の票差を上回る1万7000票差での「否」だった

▲大阪維新の会が結党時から掲げ、以来10年間に及ぶ維新旋風の目となってきた都構想の重ねての頓挫(とんざ)である。維新代表の松井一郎(まつい・いちろう)大阪市長が任期満了後の政界引退を表明し、吉村洋文(よしむら・ひろふみ)府知事も再挑戦断念を明言するその終幕となった

▲府市の二重行政を排する都構想だが、この間の維新による市政・府政間の連携が構想の無用を市民に示すかたちになったのが皮肉である。加えて都構想への疑問や不安について反対派を説得できる説明が乏しかったのも否定できない

▲大正時代に東京市長を務めた後藤新平(ごとう・しんぺい)は、東京よりもはるかに優れた大阪市民の自治能力をたたえた。「それは大阪市民が議論家ではなく実行家であって都市の改善発達に熱心なるがためである」。これも大坂三郷以来の伝統なのか

▲都構想なる「議論」に振り回された近年の大阪の市政だが、府市連携の「実行」が議論の堂々めぐりを終わらせたのならば別に悪いことではない。市民誰の目にも見える大阪の明日を描き直す時である。



大阪都構想否決 将来展望が見えにくかった(2020年11月3日配信『読売新聞』-「社説」)

 行政の枠組みを大きく変える改革が、地域の発展にどう結びつくのか。構想は、そうした効果や将来像を十分に示せなかったと言えよう。

 地域政党・大阪維新の会が推進してきた大阪都構想の賛否を問う2度目の住民投票は、再び反対が賛成を上回った。政令指定都市の大阪市を4特別区に分割して廃止し、広域行政は大阪府に移すという案は廃案となった。

 5年前の前回と同様に、市を二分する論戦が展開された。投票率は62・35%に上り、賛否は約1万7000票の僅差だった。

 大阪維新代表の松井一郎・大阪市長は記者会見で「私の力不足。十分に説明しきれなかった」と敗因を語った。市長の任期満了後、政界を引退する、と表明した。

 看板施策とリーダーを失う維新が今後、厳しい党運営を迫られることは間違いない。前回と異なり、自民、公明も反対と賛成に分かれて戦った。選挙協力など、国政への影響も注視する必要がある。

 維新は2011年以降、府知事と市長のポストを独占し、二重行政の解消に努めてきた。そのため「現状でも行政の効率化は可能ではないか」との声が聞かれた。

 新型コロナウイルスの流行で住民向け説明会は開催が限られた。産業の振興策や近隣府県との連携強化など、大阪の青写真が具体的に語られる機会は少なかった。市民は、都構想の必要性が理解しにくかったのではないか。

 それでも住民投票では、半数近くが賛成票を投じた。関西の地盤沈下が続く現状に変化を求めたのだろう。観光や飲食、中小の製造業など大阪の地場産業は、コロナ禍で大きな打撃を被っている。

 厳しい財政運営が見込まれる中で、5年後に迫った大阪・関西万博への準備も本格化する。

 府と市は、これまでにも増して連携を深め、効果的な施策を打ち出さねばならない。

 今回の投票結果を受けて、菅首相は「大都市制度の議論に一石を投じた。いろいろな議論をしていくことは大事だ」と述べた。

 1956年に制度化された政令市は、道府県との間で明確な役割分担ができていないという見方がある。読売新聞が実施した調査では、政令市を抱える道府県の知事と政令市長のうち、3割が「二重行政がある」と回答した。

 地域を牽引けんいんする大都市の活性化は、東京一極集中の打開にもつながる課題だろう。今回の論戦も踏まえ、行政や都市のあるべき姿を前向きに検討してもらいたい。



「ややこしいなあ」(2020年11月3日配信『(2020年11月3日配信『日本経済新聞』-「春秋」)

「ややこしいなあ」。大阪に住んでいるころ、なにか面倒な話になると、浪速っ子がこんなつぶやきを漏らすのをよく聞いた。なかば標準語化した言葉だが、大阪の人の「ややこしい」には微妙なニュアンスがある。たとえば思春期を「ややこしい年ごろ」などと言う。

▼複雑で、厄介で、繊細で、どうにも手にあまる――。たぶん「ややこしい」にはこんな意味がつまっていよう。2度目の住民投票で再び否決された大阪都構想もその典型かもしれない。「都構想」と言いながらすぐに「都」が生まれるわけではない、メリットとデメリットが見極めにくい、政治的思惑も見え隠れする……。

▼そんな具合だから前回の投票でも賛否は拮抗し、こんども溝は埋まらぬままだった。こういう案件に、さあ決着をと迫られて市民は戸惑ったに違いない。投票日が近づくと両派が相手の主張をデマだフェイクだとののしり合い、普通の有権者をうんざりさせた。住民投票はときに世論の分断を加速させ、しこりを残すのだ。

▼「みなさんが悩みに悩むような問題提起をできたことは、政治家冥利に尽きる」。記者会見で松井一郎大阪市長はこう語っていた。しかし自己満足のきらいがあろう。「政治家冥利」を持ち出すのは、熟議によって大方の人々に納得してもらったときではないか。ひどくややこしい仕事だが、それこそ為政者の務めである。



大阪都構想否決 大都市巡る議論続く(2020年11月3日配信『東京新聞』-「社説」)

 大阪市の存続が問われた「大阪都構想」の住民投票は5年前に続き、否決された。松井一郎代表が政治生命を懸けた日本維新の会には大打撃となったが、大都市制度のあり方は今後も模索が続く。

 大阪都構想は、府と市の「二重行政」を解消するため、大阪市を廃止して四つの特別区に再編することが柱。政令指定都市制度ができた1956年以降、5市から20市に増えこそすれ、消滅例はない。賛成派は「行政コストの削減」を、反対派は「住民サービス低下」の恐れを訴えた。

 府・市で首長と議会の第一会派を握る維新と、2015年の前回住民投票時の反対派から賛成派に転じた公明党が、自民、共産両党や連合などと相対した。各社の世論調査によると、反対派が徐々に巻き返した。維新の求心力や自公関係など国政にも影響が及ぶ可能性がある。

 新型コロナウイルスがまん延する中、住民投票を決行したことや、都構想の中身を十分に伝えきれなかったことへの反省も維新にはあろう。しかし、皮肉だが、維新の実績そのものが敗因になった可能性もある。

 11年以降、3度に及ぶ知事と市長のダブル選で、維新は全勝。府・市の連携も奏功し、地下鉄やバス民営化などの行財政改革を進め、25年の万博開催や大阪駅前の再開発に道筋を付けた。こうした二重行政を感じさせない行政運営が逆に、有権者をして、市の消滅を逡巡(しゅんじゅん)させたのではないか。

 人やモノが集中する大都市は交通網やインフラの充実が不可欠。行政コストがかかり、権限や財源の拡大を求めがちだ。大阪を含む5大都市は戦後すぐ、「二重行政の弊害」を訴え、府県からの独立を模索した。府県は「完全独立」は許さず、8割ほどの権限移譲による政令市制度に落ち着いた。

 少子高齢化は今後、都市部も襲う。富の再分配を期待される大都市のジレンマは解消されない。団塊ジュニア世代が65歳以上となる2040年を見据えた総務省の「自治体戦略2040構想研究会」は18年、都市圏が維持できるサービスや施設の縮減は不可避と指摘している。

 大阪都構想に「三度目の挑戦」はないという。愛知・名古屋や新潟、静岡の県市を一元化させる構想や、道州制も今や立ち消え状態だが、横浜市など「特別自治市」として“独立”を模索する政令市もある。大都市行政を巡る議論は終わらない。



<江戸っ子は五月(さつき)の鯉(こい)の吹き流し/口先ばか…(2020年11月3日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 <江戸っ子は五月(さつき)の鯉(こい)の吹き流し/口先ばかりではらわたはなし>。かつての江戸っ子のきっぷを表した文句で、口では荒っぽいことを言っていても腹の中はさっぱりしているという意味だろう。半面、粘りや土性っ骨には欠ける江戸っ子の弱さも浮かんでくる

▼大阪の人の気性はどうだろう。こんな川柳があった。<気張らんとまあぼちぼちにいきまひょか>。どなたの川柳かといえば、大阪出身の作家、田辺聖子さん。焦らず、着実に一歩一歩という人が多いのか。物事の判断に慎重で大きな変化を好まぬ大阪人も少し見えてくる

▼投票結果は荒療治より<まあぼちぼちにいきまひょか>という判断なのだろう。大阪市を廃止し四特別区に再編する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票。反対が賛成を上回り、否決された

▼2015年の住民投票に続く二度目のノーではさすがに都構想も店じまいか。その僅差は大阪市民が賛否を悩み抜いた末の結果にちがいない

▼都構想で府と市の二重行政による弊害や財政の無駄を取り除く。その理想は分かるが、コストはむしろ増えないか。やってみなければ分からぬ都構想への期待より「ほんまでっか」の疑問が最後は上回ったのかもしれぬ

▼大阪を二分した闘いのしこりが心配である。決着はついた。大阪人にはシャクだろうが、ぜひとも江戸っ子の「はらわたはなし」でいきまひょか。

大阪人の合理主義精神(2020年11月3日配信『中日新聞』-中日春秋」)

 喫茶店で4人がけのテーブルを2人連れが占めている。残った席に座る人はふつういない。<ところが、大阪では、おうおう、平然とそのシートにすわりこむオッサンがあらわれる>。大阪で生まれ、生きた司馬遼太郎さんが昭和30年代の随筆に書いている

▼昔はそんな人がいたのかもしれない。たしかに空席ではある。大阪の長所、欠点を書いている司馬さんだが、ここでは大阪人の合理主義精神が、節度のなさになって表れた例として嘆いている

▼ただ筆致はどこか温かい。後の講演で、大阪人の合理主義が、活力を取り戻すために必要だとも語っている。司馬さんは、「八百八橋」といわれる大阪の橋の大半が、民間の力でできたという話を何度か披露している。大阪人の古くからの独立心を表す挿話である
▼独立心を刺激する「大阪都」の構想と、本当に合理的なのかという疑問。その間で、大阪の人たちが悩み抜いたことを物語っているだろう。わずかな差となった都構想をめぐる住民投票の結果である

▼大阪市をなくしてしまえば、取り返しの付かないことになるだろうというのが、今回の民意のようだ。民間の人が判断するには酷な難しい投票であったはずだが、二度続けて下された同様の結果は重い

▼住民の二分が気がかりである。都構想はもう終わりだろう。合理的な精神と独立心を向けるのは別の方向のようだ。



大阪都構想否決 枠組み論では描けぬ未来(2020年11月3日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 「大阪都構想」が住民投票で否決された。

 2015年の住民投票に続き、否決は2度目になる。選挙で圧倒的な支持を得てきた維新の会は、結党以来の最重要政策を地域に浸透させることができなかった。

 効率化を旗印とする行政運営には限界があったとも受け取れる。

 政令市の大阪市を廃止して四つの特別区に再編する構想だ。区が住民に身近なサービスを担い、成長戦略や都市計画を大阪府に一元化する。維新は「二重行政を解消し、経済再生と成長につなげる」と主張してきた。

 15年の否決後も維新は市長と府知事を独占し、公明党の協力も取り付けて再挑戦にこぎ着けた。

 構想を先取りするように大阪市立大と府立大の統合を決め、公営住宅や港湾行政の一元化を図っている。幼児教育や私立高校の無償化、中学への給食導入は、子育て世代の評価を得た。

 半面、市営地下鉄やバス、公園の運営を民営化し、文楽をはじめ文化・芸能への補助金を削った。公園には有料施設が並ぶ。不採算のバス路線は消えて高齢者の利用負担が生じている。

 公立病院や公衆衛生施設の統廃合が、今度のコロナ禍で事態悪化を招いたと指摘される。保健所も市内に1カ所しかなく、検査依頼や問い合わせが殺到した。

 行政サービスの低下を懸念する声が強かったのも無理はない。維新は「改革で財源を確保し、サービスは維持する」と反論したけれど、根拠は薄弱だった。

 大阪では高齢化が進み、経済も低落傾向にある。改革を望む現役世代に対し、維新はデメリットを語らず、再編すれば全てうまくいくかのように吹聴してきた。訪日外国人が激減する中、カジノ誘致や万博開催のような外需頼みの方策を、成長戦略に位置付けたことにも無理があった。

 政令市と道府県には、重なる仕事を整理する調整会議の設置が義務付けられている。二重行政の解消を言うなら、会議の実効性を高めればいい。政令市の行政区の権限を強化し「総合区」にできる規定もある。身近なサービスを目指すなら活用してはどうか。

 効率化の観点だけで枠組み論を先行させても、住民の満足が高まらないことは「平成の大合併」が物語っている。超高齢社会を見据えた大阪府の中心市としての将来像を、市民とともに練り直さなくてはならない。分断を招くことなく、建設的な議論へとけん引する責任が維新にある。



大阪都構想否決(2020年11月3日配信『福井新聞』-「論説」)

新たな活性化策を進めよ

 大阪市で「大阪都構想」を巡る2度目の住民投票があり、市民は再び否決し政令指定都市の継続を選択した。大阪維新の会が首都圏よりも高齢化が進み、経済も低落傾向が予想されるため、起死回生の一手として10年にわたり構想を掲げてきたものの、市民の理解は最後まで得られなかった。

 否決された要因には、大阪市を廃止して4特別区を設置した上で、市が持っていた成長戦略や都市計画などの広域行政は府知事が担うという仕組みが複雑で分かりにくかったことが挙げられよう。さらに必要となる初期コストが240億円余と多額だ。新型コロナウイルス対策で疲弊する財政を前に不安を募らせる市民が少なくなかったようだ。

 今回は、コロナ禍対応で吉村洋文府知事が評価されたり、公明党が選挙絡みで維新との対決を避けたいとの思惑から賛成に回り、山口那津男代表が街頭演説に立って賛成を呼び掛けたりするなど、一時は賛成多数で可決されるとの観測もあった。だが、公明支持層の過半が支持をしなかったとされるなど、約130年の歴史ある大阪市を廃止するだけの価値があるかとの疑問を振り払うほどの説得力がなかったのが現実だ。

 都構想が実現すれば、府と市の二重行政が解消され「府市あわせ(不幸せ)」な状態はなくなるとの触れ込みだが、この9年間、府と市のトップを大阪維新が独占し、既に「バーチャル大阪都」を進めてきた。トップ2人がその気になれば済む話であることを市民は見てきたはずだ。

 一方で、この9年間、大阪は他の地域よりも力強く経済成長を遂げてきたとは言い難い。たとえ、都構想が可決されても回復する保証はなかったといえる。大阪維新は2025年の大阪・関西万博や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を好材料とし、訪日外国人客(インバウンド)拡大を柱とする成長戦略を打ち出してきたが、コロナ禍の影響で先行き不透明感が増している。

 万博の準備などは着実に進めなければならないが、それまで経済が持つのか。インバウンドに頼らない観光振興策など、新たな活性化策を模索し実行する必要がある。真に大阪の復権につながる政策を求めたい。

 人口減少や少子高齢化といった課題は、全国の各都市が直面している。都構想が否決された大阪の行方を各都市が注視するだろう。住民投票の期間中は賛成、反対派が批判合戦に終始した印象だったが、大都市の課題に不断に向き合い、市民の求めに応えられるよう、真摯(しんし)な議論を続ける必要がある。23年春の政界引退を表明した松井一郎市長は残る任期、その先頭に立って職責を果たすべきだ。



間接民主主義は有権者の白紙委任を意味するわけではないと(2020年11月3日配信『新潟日報』-「日報抄」)

〈あんた あたしの たったひとつの青春やった〉。上田正樹さんが大阪弁で歌った「悲しい色やね」の一節だ。大阪都構想の住民投票は反対が僅差で上回り、構想を推進した松井一郎大阪市長は敗北を認めた。記者会見の映像を眺めていると、くだんのフレーズが浮かんできた

▼「あんた」が都構想で、「あたし」は大阪維新の会。府と政令市の「二重行政」解消を訴えた都構想は、当初から維新の看板政策だった。しかし有権者の審判は5年前に続いてノー。維新を率いる松井市長は任期終了後の政界引退を表明した

▼地元での維新の存在感は大きい。選挙に強く、府知事と大阪市長のポストを独占する。その行政には一定の評価を得ていたようだ。それでも、こだわりの政策は頓挫を余儀なくされた

▼よく指摘されることがある。間接民主主義は有権者の白紙委任を意味するわけではないと。新潟市西蒲区となった旧巻町での原発立地を巡る住民投票を思い出す。関係する町長や議員の多くが推進した計画だったが、反対多数となった

▼選挙で信任された為政者の主張が全て有権者の理解を得られるとは限らない。都構想の住民投票も、そんなことを改めて教えてくれたのではないか

▼「悲しい色やね」はみんなが「さよなら」を大阪の海に捨てに来ると歌う。都構想とはお別れだが、気にかかるのは有権者の分断である。身近な行政課題への賛否が真っ二つに割れ、都市再生に向けた議論も残された。課題と向き合う日々はこれからだ。



「大阪都構想」否決 二重行政解消の努力なお(2020年11月3日配信『北国新聞』-「社説」)

 「大阪都構想」が2度目の住民投票でも否決された。大阪市を廃止し4特別区に再編する大阪維新の会の画期的な制度改革案は実らなかったが、松井一郎大阪市長と吉村洋文大阪府知事の維新の会コンビによる府・市政自体が否定されたわけではない。両首長が目指す「二重行政」の弊害解消と大阪再生の努力が今後も求められる。

 大阪都構想の大きな狙いは、広域行政の権限を府に一元化して、成長戦略やインフラ整備を強力に推進し、都市の成長につなげることにあった。東京一極集中が進む中で大阪の経済は低迷し、少子高齢化の歯止めも掛からない現状への危機感が背景にある。

 昨年4月の統一地方選では、松井、吉村両氏が圧勝し、大阪都構想の実現が民意であるように思われた。しかし、いざ住民投票となると、大阪市分割で住民サービスが低下する、しないといった論争に終始し、大阪をどう再生させるかという大きな論点がわきに置かれた印象である。

 大阪維新の会は、身を切る改革で医療や教育などの住民サービスを充実させてきた。が、その成果は皮肉にも、現在の府市一体の取り組みでよしとし、大阪都構想の必要を感じない市民を増やす結果になった側面も否めない。

 互いに強い権限を持つ道府県と政令指定都市は対立しがちで、二重行政の無駄をなくすことは大阪だけの課題ではない。大阪市より人口の多い横浜市は、県から独立した「特別自治市」を目指している。大阪市も現在のような府と一体の市政がいつまでも続く保証はなく、大都市制度の在り方は今後も問われ続けよう。

 松井市長は23年春の任期で政界を引退するという。政治信念なのだろうが、地方政党から国政政党に成長した日本維新の会を育てる責任を引き続き負う必要があるのではないか。維新の会はまだ全国的な広がりに欠けるが、憲法改正や行革、規制改革などを掲げて従来の野党と異なる存在感を発揮している。大阪都構想の挫折で党勢まで衰えては、政党政治にとってマイナスとなろう。



大阪都構想否決/大都市制度に一石投じた(2020年11月3日配信『神戸新聞』-「社説」)

 大阪市を廃止し、特別区に再編する大阪都構想は住民投票で再び否決された。この10年、関西最大の政令指定都市を揺るがしてきた論争に、市民の選択によって終止符が打たれた。推進、反対両派は結果にきちんと向き合わねばならない。

 大阪維新の会代表として構想を推進した松井一郎大阪市長は「民意を受け止める」と敗北を認め、任期満了をもって政界を引退する意向を表明した。代表代行としてともに旗を振った吉村洋文大阪府知事も「挑戦することはもうない」と明言した。

 新型コロナウイルス対策をはじめ大阪の再生に向けた課題は山積している。両氏は首長の座にある限り、現行制度の中で府市が連携し関西をけん引するまちづくりの責務を全うしなければならない。

 投票率は5年前の前回をやや下回ったものの、60%を超えた。反対と賛成の票差は前回同様わずかだった。市の存廃という難問を再び突き付けられた市民が、コロナ禍にもかかわらず足を運び、迷いつつも1票を投じた姿が浮かび上がる。

 しかし、選択の重大さに見合った判断材料が示されたかは疑問だ。

 推進派の維新と公明党は、府市の二重行政を解消し、権限と財源を府に集中させることで大阪を東京と並ぶ「副首都」に成長させると訴えた。だがメリット一色で、住民サービスの低下や特別区間の格差拡大などへの懸念に対する説明は十分でなかった。コロナ禍にあえて住民投票を強行する手法も反発を招いた。

 投票結果を見ると、ビジネス街や現役世代が多い市北部で賛成が優勢となる一方、高齢者が多く中小企業が集まる地域で反対が上回る構図は前回と変わらない。都構想への根強い不安は、制度案を多少修正しても払拭(ふっしょく)されなかったことが分かる。

 一方、反対する自民党、共産党などは独自の財政試算などで問題点を指摘した。だが、「大阪市がなくなる」と危機感をあおるばかりでそれに代わる道を示したとは言えない。

 大阪市を残したいという思いと同じくらい、停滞する大阪の現状を憂い、都構想に改革の期待をかけた市民がいる。その事実を忘れてはならない。対立を乗り越え、課題解決に取り組む責任を改めて負ったと肝に銘じるべきだ。

 都構想が投げかけたのは、大阪だけの問題ではない。人口減少と高齢化が進む中、政令市と道府県の機能分担のあり方が問われている。都構想とは逆に、政令市の権限を強化し、道府県の役割を担う「特別自治市」の議論も再燃しそうだ。

 都構想が浮かび上がらせた課題を、大都市制度を問い直す議論へと深めていくことが重要だ。



「八百八橋」(2020年11月3日配信『神戸新聞』-「正平調」)

“千年の都”京都は「八百八寺」と呼ばれ、お寺さんがひしめき合う。川や運河が多い“水の都”大阪はというと「八百八橋」。淀屋橋、肥後橋、天満橋…数えだしたら、きりがない

◆この橋を渡るか、渡るまいか。向こう岸には「大阪市は廃止。大阪都になれば東京に対抗できまっせ」と手招きする人がいる。後ろからは「大阪市がのうなると、住民サービスが悪うなる」と呼び戻す声がする

◆反対50・6%、賛成49・4%。この僅差からも、橋の上で行きつ戻りつした大阪市民の心情がうかがえる。いわゆる「大阪都構想」は2度目となる住民投票がなされ、またも否決に終わった。大阪市は存続する

◆はじめのうちは賛成が優勢だと伝えられた。旗振り役である吉村府知事の人気も高い。ところが、である。いいことずくめであるかのような宣伝と結論を急ぐ姿勢に、市民は危うさを感じとったのかもしれない

◆松井市長は「力不足」と語っていたが、何より足りなかったのはさまざまにわき起こった不安をぬぐう納得のいく説明でなかったか。霧の向こうに夢があるとささやかれても、多数がおいそれとは橋を渡れない

◆ともあれ民意が決した今、政治がすべきことは一つだろう。市民を真っ二つに分けて折れた橋の修復である。



「大阪都」再否決 政令市巡る議論は継続を(2020年11月3日配信『山陽新聞』-「社説」)

 大阪市を廃止し4特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票が実施され、反対がわずかに賛成を上回り否決となった。2015年の住民投票に続いて2度目で、構想を推進してきた日本維新の会代表の松井一郎市長は23年春までの任期を全うした上で政界を引退する考えを表明した。

 府と市の「二重行政」を解消して、大阪の経済再生や成長につながると主張し、前回反対した公明党も賛成に転じた。だが、「政令指定都市を廃止すると元に戻せない」と決断の重みを強調した自民、共産党など反対派の訴えの方が市民に響いたと言える。

 成長戦略やインフラ整備を府に一元化し、特別区は保育や教育といった基礎自治体の仕事に専念する構想である。財源は、市が徴収してきた固定資産税などを、移管する業務量に応じて、おおむね8対2の割合で4区と府で配分することになっていた。

 当初は賛成派が優位とみられたものの、特別区に財源不足が生じることによるサービス低下などの懸念が次第に広まったとみられる。ビジネス街や繁華街が集まる市北部は賛成が優勢だったのに対し、高齢者の多い湾岸部や南部で反対が上回った。

 大阪で“1強”を誇ってきた維新は、看板政策の是非を問う住民投票でまたも敗れ、漂流は避けられない。既得権益の打破といった似通った理念を掲げる維新と連携を図ってきた菅義偉首相の政権運営に、一定の影響を与えるとの指摘もあり、注目したい。

 とはいえ、都市をどう活性化するのか、反対派も十分な対案を示したわけではない。議論の継続は欠かせない。

 大阪維新の会は25年の大阪・関西万博や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)を起爆剤として、訪日外国人客の拡大を経済成長の柱とする戦略を打ち出してきた。新型コロナウイルスの感染拡大の影響で先行き不透明感は増している。

 活性化の方策を探る他の都市も大阪の論戦に注目していたろう。それだけに、住民投票の期間中、賛成、反対両派が批判合戦に終始した印象が拭えないことは残念だ。

 都道府県と政令指定都市の仕事や権限が重なる二重行政の解消は無論、大阪だけの課題ではない。大都市制度の改革は、政府内でも継続的に議論されてきた。

 首相の諮問機関である地方制度調査会は13年、大都市制度の改革を答申し、政府は翌年成立の改正地方自治法で、道府県と政令市が重複する仕事を整理する「調整会議」の設置を義務付けた。政令市の区が持つ権限を強化した「総合区」に衣替えできる規定も設けた。

 ところが、調整会議は活発に開催されているとは言い難く、総合区を設置した政令市もない。現場の動きは鈍いのが実態だ。大都市の課題を掘り下げる議論は政府、自治体でさらに必要である。



大阪都構想、再び否決 都市再生の宿題残った(2020年11月3日配信『中国新聞』-「社説」)

 大阪市を廃止して東京都のような特別区を四つ新設する「大阪都構想」は、住民投票で再び反対多数となり、否決された。

 地方政党である大阪維新の会が結党以来10年にわたって掲げ続けてきた公約だが、5年前の前回に続き、市民から2度目の「ノー」を突きつけられた。

 大阪が発展して活気づくことは願っても、不透明な制度改革には乗り切れなかったということだろう。130年以上も続く由緒ある大阪市をなくすまでもないという市民の判断は変わらなかった。

 都構想はもともと高齢化が首都圏よりも先に進み、経済の地盤沈下が懸念される状況を打破する手段として、大阪維新前代表の橋下徹氏が府知事時代に打ち出した。

 大阪府と大阪市の役割分担を見直し、2重行政の解消を図ることを狙った。大阪市の持つ都市整備や産業政策など成長分野に関わる広大な権限と財源を大阪府に一元化する。教育や福祉といった身近な住民サービスは特別区が担うことなどが柱だ。

 2015年の住民投票で否決されたが、知事と市長が入れ替わる昨年春の「クロスダブル選」で圧勝したことで、2度目の投票にこぎ着けた。反対していた公明党も賛成に転じ、前回から構図も一変していた。

 当初は賛成派が有利とみられていたが、結局は否決された。

 特別区に移行した後、住民サービスがどう変わり、どれだけ負担を求められるのか。さまざまな疑問や不安を感じる市民がいるのは当然だ。しかし、自治体の形を変えることのメリットとデメリットについて十分な説明を行ったとは言い難い。

 再編後の特別区の財政見通しが甘く、コロナ禍の影響を考慮していないとの批判も出た。特別区の間で格差が生じても、調整は難しくなる。反対派による「財源が不足すれば、サービスが低下する」との訴えが徐々に浸透していった。

 大阪維新は、5年後に開催される大阪・関西万博や、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致を起爆剤にして、訪日外国人客の拡大につなげる成長戦略を描いていた。

 だがコロナ禍の影響で、思惑通りに地域活性化につなげられるかどうかは見通せなくなっている。成長への期待感よりも、変化に対する市民の不安感が上回った結果だろう。

 都道府県と政令市の関係はどうあるべきか。地方行政の課題を直接投票で住民自ら選ぶ機会が2度も設けられたことは評価できる。大都市行政の問題は広島県と広島市の関係にも通じよう。地域の実情に応じ、都市を再生、強化していく制度について議論を深める契機にしたい。

 10年にも及び、大阪市民を二分してきた論争にようやく終止符が打たれる。分断と対立を深めてきた責任も重い。

 橋下氏から大阪維新を引き継いだ松井一郎・大阪市長は任期いっぱいで退任し、政治家を引退する意向を示している。吉村洋文大阪府知事も「都構想に挑戦するのはこれが最後」と公言している。

 約束を守るのは当然だが、コロナ対応など喫緊の課題は山積している。まず反対派との分断を修復し、幅広い理解を得ながら、真に大阪のためになる政策の実現に努めるべきだ。 



【大阪都構想否決】民意から何を酌むか(2020年11月3日配信『高知新聞』-「社説」)

 大阪市を廃止して、四つの特別区を新設する「大阪都構想」の賛否を問う住民投票は、反対が賛成をわずかに上回り、5年前に続いて再び否決された。

 前回と投票結果を比べると、投票率は今回が62・35%で前回の66・83%を下回った。ただ、賛成と反対の差に関しては、今回が約1万7千と前回の約1万700より票差が開く結果となった。

 とはいえ、前回同様の僅差の決着については、「大阪都構想」という政策の中身が、住民の間に浸透していたのかどうか疑問が拭いきれない。必要性を考えることのできる十分な判断材料やメリット、デメリットについて説得力のある説明はあったのだろうか。

 看板政策として「都構想」を推進してきた日本維新の会代表の松井一郎大阪市長、大阪維新の会代表代行の吉村洋文大阪府知事は、「府市合わせ(不幸せ)」とやゆされてきた府と市の二重行政の無駄の解消につなげる点を強調してきた。

 一方、反対の自民党などは特別区は赤字になる、公務員が増える一方で住民サービスが低下するなどと、懸念を訴えた。

 大阪の将来像を具体的に語ることで、住民が抱く疑問の解消に努めるよりも、双方による主張、批判合戦に終わった感もある。

 大阪府と大阪市の首長の座はいずれも維新の会が占める。両トップが力を合わせて取り組めば、今のままでも無駄を省けはしないか。これまで慣れ親しんだ行政の仕組みを大幅に変えなければ活性化は図れないものだろうか。

 そうした疑問が消えないままの市民もいるはずだ。

 府と市の連合など、新しい大都市の自治システムとして「大阪都構想」はもともと2001年に浮上していた。それが橋下徹府知事時代の10年から、東京都に対抗する形の構想として打ち出されたことで大きな注目を集めた。

 その後これまで、住民が自分たちの問題として捉えるはずの「自治の在り方」が、「大阪都構想」によって政治問題の一つとして語られてきたといってよい。住民投票を通じて政党間の論争はあったとしても、大阪の将来についての議論は深まっただろうか。

 前回は否決を受け当時の橋下大阪市長が政界を引退した。今回も、松井市長が23年までの任期を務めて政界を引退するという。住民を巻き込み、予算と多大なエネルギーを注いだにしては、残された結果をどうみればいいか。

 2回にわたって示された「大阪都構想」否決の民意は当然ながら極めて重い。複雑なようにも思えるが、確かな結果である。さまざまな読み取り方ができよう。

 民意から酌むべきは何か。住民の意思に向き合い、民主的、能率的な組織で健全な発達を目指す―。地方自治の基本に立ち返り、大阪の在り方を真剣に考えてもらいたい。



大阪都構想否決 大都市の活性化へ議論の継続を(2020年11月3日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 大阪市を廃止し、4特別区に再編する「大阪都構想」の住民投票は、僅差で反対が賛成を上回り否決となった。大阪維新の会が看板政策として掲げた都構想は、2015年の住民投票に続き、市民が再び「ノー」を選ぶ結果となった。

 民意を得て、政令指定都市である大阪市は維持されることになった。しかし、首都圏より進む高齢化や経済の低落傾向といった課題は変わらない。従来の地方自治の形のまま、どう大阪の活性化へつなげていくか。府や市などは、議論を続けていく必要がある。

 都構想は、二重行政による税金の無駄をなくそうと、インフラ整備などの広域行政を府に一元化し、特別区が教育や福祉といった住民サービスに専念するというものだった。大阪維新は2度の市長、府知事の大阪ダブル選を制して住民投票の再挑戦にこぎ着けたが、今回も市民の都構想への理解は深まらないままだった。

 賛成派が、市より規模が小さい特別区を設置することで住民に目配りができ、サービスが向上するとアピールする一方、反対派は、市を分割すると、部局の新設などで人件費がかさみ、財政が悪化して住民サービスが低下すると訴えた。生活に身近な分野で両派が正反対の主張を展開したことで、市民が混乱した面は否めない。

 新型コロナウイルス禍の影響も大きかった。大阪維新は、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)の誘致などによる訪日外国人客の拡大を経済成長の柱とする戦略だったが、新型コロナの収束が見通せない中では実現性に疑問が拭えなかった。

 感染症防止のため、大規模な集会などの活動が大幅に制限される中、行政の広報の手法も問題視された。府と市が作成した資料は、メリットを強調する内容ばかりで、公平性を欠いていた。市民が冷静な判断をできる環境にあったとは言い難い。

 ただ、今回も賛成と反対の票差はわずかだった。二重行政の解消や税金の無駄遣いをなくすことへの期待が一定あることは確かだ。今後の府や市の在り方に関する議論では、こうした声に耳を傾けることも大切だ。

 従来の府と市のままでも、合理的に役割を分担する方策を練る必要がある。より良い行政サービスの提供や経済の活性化を実現できるよう、府と市は一層緊密に連携することが欠かせない。都構想を巡り、賛成、反対両派は批判合戦に終始した印象もあるが、2度の住民投票で大阪の将来に真剣に向き合った市民の要求に応える責任がある。

 結果を受け、大阪維新の代表の松井一郎市長は、23年春までの任期を全うした上で政界を引退する意向を表明した。吉村洋文知事は、今後都構想に挑む考えがないことを明言している。看板政策の行き詰まりで、求心力の低下は免れまい。府政や市政に混乱を招かぬよう、適切な対応を求めたい。



1927年公開のモノクロ無声映画「メトロポリス」は初期SF映画の傑作…(2020年11月3日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 1927年公開のモノクロ無声映画「メトロポリス」は初期SF映画の傑作と名高い。舞台は科学文明が発展した100年後の理想世界だ

▼高層ビルがそびえる大都市(メトロポリス)。その繁栄の陰に「脳」(知識指導者階級)と、抑圧された「手」(労働者階級)に二極化された格差社会があった。双方をつなぐ「心」(調停者)の出現を人々は待望する

▼東京都は英語で「トウキョウ・メトロポリス」。大阪が第2の「メトロポリス」を目指した「大阪都構想」の是非を問う住民投票は、5年前に続き否決された

▼都構想は大阪府知事と市長が主導。市を廃止して4特別区に再編し、府と市の二重行政をなくす、と訴えた。だが、上からの改革は市民にあと一歩届かなかった。大阪市の名が消えることに不満はあったろう。住民サービスが低下するのでは、との懸念も

▼何より、大阪都になってどんな利点があるのかよく分からない、と戸惑った市民が多かった。政治指導者と市民をつなぐのは、心を込めた丁寧な説明だ。知事、市長の支持率は高く、公明党の賛成も得たけれど、市民に語り掛ける「心」は少し足りなかったのではないだろうか

▼2度の否決で「浪速のことも夢のまた夢」になるかもしれない。ただ、大阪に限らず、行政は放っておけば肥大し続けるものだ。そのあり方を常に検証し、100年先を見据えた改革の努力は怠ってはならない。



「大阪都」再び否決 針路決めた「直接の民意」(2020年11月3日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 政令指定都市の大阪市を廃止して4特別区に再編する「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が1日実施され、僅差で否決された。

 2015年5月の住民投票に続く2度目の否決である。投票率は前回を4・48ポイント下回る62・35%にとどまった。多くの予算と手間を必要とする住民投票を繰り返したことに批判もあろう。とはいえ、市の歩むべき針路を住民自らが再度考え、投票によって直接意思表示した意味は、やはり重い。

 都構想を推進してきた日本維新の会代表の松井一郎大阪市長は、任期を全うした上で政界を引退する意向を示した。吉村洋文大阪府知事も「僕自身が都構想に挑戦することはもうない」と述べた。2人の決断も、民意の重さを受け止めたからにほかなるまい。

 民意をどうくみ取るかは、全ての首長が思い悩む課題である。住民投票という直接的な手法を選択した大阪市の取り組みは、さまざまな難題を抱える自治体の行政運営に一石を投じたのではないか。

 京都市や横浜市など、政令市の権限をさらに強化した「特別自治市」の創設を訴える都市もある。大阪都構想は、そうした動きと逆行するものだった。今回の投票結果は、大都市の統治機構改革を巡る今後の議論にも影響することになるだろう。

 大阪都構想には、府と市の二重行政の弊害を解消して運営を効率化する狙いがあった。市の財源を府全体の成長戦略に回すことで、停滞した大阪の経済を活性化させるという効果も見込んでいた。

 しかし、府と市が目指した「ばら色の未来」は新型コロナ禍によって先行き不透明になっている。25年に開催される関西・大阪万博や、万博会場の隣接地に誘致を目指すカジノを含む統合型リゾート施設(IR)も、コロナ禍が収まれば、という条件付きの青写真となってしまった。

 都構想は、大阪市が担っている業務のうち広域行政を府に一元化し、特別区は教育・福祉といった住民サービスに専念する、との内容でもあった。だが、住民サービスの維持に必要な経費がどう変化するのか、説明は不明確だった。

 地方自治の観点から言えば、政令市よりも住民に近い特別区ごとに首長や議会を置く、との考え方は理にかなっている面もあった。東京一極集中の是正を図るという意味においても、西日本に「副首都」を設けることには一定の意義があったはずだ。しかし、そうした点についても市民に十分に伝わったとは言い難く、「大阪市を廃止するだけの価値があるのか」との疑問を振り払えなかった。

 大阪市は政令市として存続することになった。現在は府と市の首長を維新の2人が務め、運営方針も一致しているが、長い目で見れば二重行政の弊害がいつ表面化してもおかしくない。連携を一層緊密にし、役割のすみ分けを進めることは都構想に拘泥しなくても可能なはずだ。住民投票では反対派に回った各党とも協調し、活性化を実現してもらいたい。



[大阪都構想否決] 地方行政再考の契機に(2020年11月3日配信『南日本新聞』-「社説」)

 政令指定都市の大阪市を廃止して4特別区に再編する「大阪都構想」は2度目の住民投票の結果、反対多数で否決され、市の存続が決まった。

 大阪衰退の要因は府と市の二重行政にあるとして、成長戦略やインフラ整備といった広域機能を府に一元化する構想だった。地域政党「大阪維新の会」がこの10年間主張してきた政治的目標だが、市民には最後まで受け入れられなかった。

 ただ、賛成の票と僅差だった結果を見ると、現状に不満を感じている人は少なくないと言えよう。それは大阪に限ったことではあるまい。地方行政の在り方を再考する契機としたい。

 都構想は橋下徹元大阪市長が政治生命を賭けた取り組みとアピールして実現を目指した。だが2015年の住民投票によって僅差で否決された。

 推進派は今回、構想が実現した後も市の特色ある住民サービスを維持すると理解を求めた。その上で、広域行政の意思決定が一本化されることでトータルな都市戦略が作れ、経済再生や成長につながると強調した。

 これに対し、反対派は政令指定都市としての財源を手放すデメリットを指摘し、住民サービスは低下すると主張した。広域行政の決定権が市外の議員が多い府議会に移り、市民の意思が反映されにくくなるとも訴えた。

 衆院選で維新側との対決を避け、議席を守りたい公明党が賛成に回ったこともあって、賛成多数で可決されるという観測も一時広がった。それでも実現しなかったのはなぜか。

 移行後の制度が複雑な上、241億円と膨大な初期コストが必要になる。さらに府と市のトップはこの9年にわたって大阪維新が独占し、実質的に一元的行政の状態ながら、他地域より著しく経済成長しているとは言えない。

 こうしたことが賛成の広がりを欠いた要因とみられる。とはいえ、府と市にはこれまでの論議を踏まえ、大阪の真の活性化に向けた政策を断行していくことが求められる。

 非効率的な役割分担を生む二重行政の解消は長年の課題である。だが、都構想が問題提起した政令指定都市と道府県との関係見直しは進んでいない。

 大阪市以外の19市でも愛知県と名古屋市の「中京都構想」のように県と県庁所在市の連携を強化する動きがあったが、立ち消えになっている。

 一方、横浜市は市を廃止する都構想とは逆の発想で、道府県から業務と財源を得て独立する特別自治市の制度導入を求めている。高齢者の急増に伴う財政負担は行政の効率化だけでは賄うのが難しいためだ。

 人口減少と東京一極集中が続く中、地域社会を維持していくために地方行政はどうあるべきか。国レベルで議論を深めていくことが不可欠である。



大阪都構想 民意は政令市存続求めた(2020年11月3日配信『琉球新報』-「社説」)

 政令指定都市の大阪市を廃止し、4特別区に再編する「大阪都構想」の是非を問う住民投票で、反対が多数を占め否決となった。否決は2015年の住民投票に続き2度目。大阪市の民意は再び政令市の存続を求めた。

 「大阪都構想」は、府政と市政の両方を担う「大阪維新の会」が10年の結党以来掲げてきた看板政策である。それが2度の住民投票でノーの審判を受けた。維新はこの構想以外の手法で行政の効率化を目指すべきだ。

 大阪都構想の狙いは二重行政の解消にあった。市を廃止して東京23区と同様の特別区を設置し、府とともに行政機能を再編する改革である。成長戦略やインフラ整備は府に一元化し、特別区は教育、福祉などの住民サービスに徹するというのが維新の説明だ。

 しかし、大阪市廃止による市民の不安は大きかった。特別区が担う教育、福祉はいずれも市民生活に直結する分野である。特別区で住民サービスの質が保たれるのか、市民の目には不透明に映った。4特別区が財政難に陥る可能性を指摘する声もあった。維新は構想を掲げて10年になるが、市民の不安や懸念を払拭(ふっしょく)することができなかった。

 今回の住民投票でも再編後の財政見通しや住民サービスの質的水準、府が担う成長戦略の効果が争点となった。コロナ禍の中での住民投票となったこともあり、5年前の住民投票に比べても論戦は低調で、投票率も前回を4・48ポイント下回る62・35%にとどまった。

 そもそも維新が府政と市政を独占する中で二重行政の無駄が一定程度解消されたとの評価があった。あえて政令市廃止に踏み切る必要があるのか。大改革よりも現状の体制の中で着実に行政改革を進めることを市民は選択したのである。その意味で維新の大阪都構想は市民感覚から浮き上がっていた。

 大阪都構想の実現を目指し、大阪府と大阪市は13年、共同部署の「大都市局」を設置している。都構想の関連経費として投入された公金は100億円を超える。住民投票で2度も構想が否決された今、これだけの巨額を投入する必要があったのか維新府政と市政は説明する必要がある。

 それでも、大阪都構想を巡る論議が無駄だったとは言えない。大阪以外でも政令指定都市と道府県の二重行政は指摘されており、課題は残されているからだ。構想の中で東京一極集中への批判が議論された意義も見逃してはならない。豊かな地方を約束する日本の将来像を描く中で東京一極集中は是正されなければならない。

 大阪都賛成、反対で二分した市民の間には疲れもあったはずだ。しかし、この経験を無駄にしてはならない。権限、予算をどのように使い、住みよい街づくりを進めるかという分権・自治の観点からも大阪都構想を巡る論議は生かしていきたい。



課題と禍根を残した維新の「都構想(2020年11月3日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★いわゆる都構想という名の「大阪市を廃止し、特別区を設置することについての住民投票」は賛否を決するだけではなく、いくつかの課題を残した。1つはこの政策を軸に生まれた維新の会に政策的支柱がなくなることと、1度否決されてもなお、5年後にその政策をほぼ同じもので繰り返したこと。維新にとっては大きな社会実験かもしれないが、その間に失われた時間とカネは住民に説明がつくものなのか。1票でも勝った方が、総取りしていくような行政の判断は正しかったのか。また、資金力にものを言わせた維新のCMが大阪に流れ続けたことは今後の住民投票や国民投票に禍根を残した。

★維新は保守系の政党として躍進した。ところが中央政界の維新の議員に対しては自民党から野党各党まで「行儀が悪い」「秩序を乱すのは維新の議員が多い」など評判が悪い。すべては都構想実現のためで党勢拡大も成功したかもしれないが、さまざまなルールや秩序も壊れたのではないか。賛成派と反対派の対立が激しくなり、住民の分断を抜き差しならぬところまで引き上げてしまったこと。市民分断につながる都構想ファーストはなかったか。

★一方、公明党は5年前には反対だったものの今回は賛成に回り、党代表・山口那津男が大阪まで出向き維新の街宣車に乗って賛成を呼びかけた。これについて元大阪市長・橋下徹が1日のテレビで興味深い発言をしている。橋下は「公明党と握ったわけですよ、衆議院選のイスを維新は公明党に譲る代わりに賛成になってもらった。衆議院選の後に投票だとこの約束がどうなるかわからない。その前にやらないといけない」と公明党との密約があったことを暴露したが、公明党の賛成は選挙対策だったことがわかる。結果、自民党との関係になにがしかの分断、亀裂が生じるだろう。地元では公明党大阪府本部代表・佐藤茂樹の辞任など突き上げが始まっているが、山口の責任論が党内でくすぶる可能性が残る。政権がぐらつくのも当然だろう。



「市廃止」再び否決(2020年11月3日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

市民の力で大阪市守り抜いた

 大阪市の廃止・分割の是非を問う住民投票は、反対が多数となり、大阪市の存続が決まりました。「大阪維新の会」が推進する「市廃止=都構想」案が否決されたのは、2015年の住民投票に続き2回目です。「大阪市をなくすな。守り生かそう」という市民の声が再び示されたことは、大きな意義があります。政令市として大阪が持つ力を存分に生かし、住民の福祉と暮らし向上に向けた取り組みを進める転機にする時です。

維新の野望を打ち破る

 「都構想」は、維新の会が結党以来、中心政策に掲げてきました。大阪市を解体し、権限も財源も大阪府に吸い上げ、強い力を府知事に集中させ、やりたい放題の体制をつくろうという狙いでした。維新の野望を打ち破り、大阪市の未来を守り抜いたことは、市民の良識による歴史的な勝利です。

 15年に否決の審判が下されていることに加え、新型コロナウイルスの感染拡大のもとで、市民の健康と暮らしを守るために党派を超えて力を合わせなければならない時に、市民を二分する市廃止を持ち出し、住民投票を実施した維新のやり方も問われました。

 130年の歴史のある大阪市を廃止するか、存続するかは、住民のサービス水準にかかわる問題として、大きな議論になりました。多くの財源が府に持っていかれるため特別区の財政基盤は弱まります。大阪市が独自に実施していた「子ども医療費助成」「敬老パス」などの住民サービス切り捨ての危険が浮き彫りになりました。さらに、大阪市を分割した場合の行政コストが増大することを市財政局が試算していたことも報道され、大問題になりました。

 これに対し維新は、反対の意見などを「デマ」「誤報」などと決めつける攻撃を繰り返しました。それが新たな批判を招いて、防戦に追い込まれました。維新にとって都合の良い情報しか出さない姿勢には、市民から不信と不安が続出しました。「百害あって一利なし」の市廃止を強引に推し進めた維新の責任は重大です。

 「明るい民主大阪府政をつくる会」、「大阪市をよくする会」、日本共産党をはじめとする真実を伝える宣伝は反響を呼び、市民の共同も急速に広がりました。

 前回は反対した公明党は、維新に抱き込まれて、今回賛成に回りました。しかし、開票日のメディアの出口調査では、同党支持者の5割が反対に投票した結果も示されました。無党派層では反対が多数です。当初は「賛成が優勢」と伝わる中、短期間で追い上げ、逆転勝利を果たしたことは、大阪の明日を開く貴重な成果です。

 維新代表の松井一郎大阪市長は否決結果を受け、2年半後の政界引退を表明し、もう「都構想」には挑戦しないと述べました。菅義偉政権の最悪の補完勢力として「自己責任」の政治を進める維新に痛打を与えたことは、全国を大きく励ましています。

力合わせ明日をひらこう

 大阪市の課題は山積しています。廃止に反対した人も賛成した人も大阪を良くしたいという願いは共通しています。維新が市民に持ち込んだ分断を乗り越え、政令市として残してよかったと思える大阪にしていくために、多くの市民が手をとり、力を合わせることがなにより重要になっています。



めっちゃうれしい―(2020年11月3日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 大阪の地をたどると都市としての性格が貫かれているといいます。古代・難波宮(なにわのみや)をはじめ、中世の寺内(じない)町や城下町、天下の台所と呼ばれた近世、そして国際的な大都市に発展した現代と

▼めっちゃうれしい―。古くから商業や流通の要になってきた伝統都市の存続が決まりました。ふたたび打ち破った「維新」の廃止論。5年前につづく否決は、彼らがもちだした二重行政の解消や住民サービスの充実が、いかにまやかしだったかを改めて示しました

▼市民の間には喜びとともに複雑な胸中もあります。この住民投票自体が、自分たちがよって立つ地盤をより良くしたいという願いに対立と分断をもちこんだからです。大阪市の権限や財源を手に入れるために掲げた「都」構想。それは住民を二重に裏切る偽りの看板でした

▼それを旗印に10年も叫びつづけ、巨額の税金を投入し、府・市政と住民を混迷させてきた「維新」の責任は大きい。“一丁目一番地”としてきた政策を失ったいま、その存在意義も問われます。自党の議席のために態度を翻し、大阪市を売った公明党の罪も重い

▼東京一極集中が進むなか、大阪をふくめ各地の都市は疲弊しています。地域社会が横並びしていくことで特性を失い、喪失感を抱く人も。しかもコロナ禍で社会は縮み、人びとはくらしに不安や悩みを抱えています

▼積み上げてきた歴史や伝統に住民が愛着や誇りをもち、あすへの希望にどうつなげるか。それをつくりあげていくのは、対立ではなく共同の力です。





大阪都構想「反対」 改革議論を今後に生かせ(2020年11月2日配信『産経新聞』-「主張」)

 大阪市を残す選択を市民は選んだ。同市を廃止して4つの特別区に再編する大阪都構想の住民投票は、「反対」という結果になった。

 平成27年の前回に続く否定である。大阪市民の結論は示されたと受け止めるべきだ。

 都構想は大阪維新の会が主導し、大阪の自民党などが反対してきた。賛成派と反対派の言い分は正面から対立し、都構想の長所と短所は分かりにくかった。

 住み慣れた市をなくすことへの抵抗は強かったとみられる。大きな権限を持つ政令指定都市であればなおさらだ。住民サービスや財政面での先行き不透明感もふくらんだのだろう。

 結果は出たといっても、反対派はこれでよしとしてはならない。投票運動では市がなくなることへの不安を強調してきたが、ならば市を残してどうするかという前向きな議論こそもっと必要だ。

 賛成票も相当数が投じられた。全体を見れば単なる現状維持でよいということにはなるまい。地盤沈下が言われてきた大阪を改革せよという声が強いことを、反対派も直視しなければならない。

 維新は大阪府市の二重行政をなくし、成長戦略を一元化して大阪を東京に並ぶ大都市にすると訴えてきた。訴えが及ばなかった理由を虚心に考える必要がある。

 都構想の分かりにくさに加え、維新の強引ともいえる手法も反発を招いたのではないか。構想実現の一手として、昨春には維新幹部による大阪府知事と大阪市長の入れ替えダブル選という奇策にも打って出た。

 そしてこぎつけたのが今回の住民投票である。新型コロナウイルス禍のもとでの投票には賛否があった。自分たちの街のあり方をじっくり考えたいと思っても、こうした経緯を見ていれば反感を抱く市民もいただろう。

 都構想を看板政策としてきた維新にとっては大打撃である。しかし都構想は別としても、大阪の改革への発言で気後れする必要はない。二重行政の無駄も確かにあるだろう。是正のための建設的な提言を続けるべきである。

 反対派、賛成派の対立が今後にしこりを残すようなことがあってはならない。双方がノーサイドの精神で、都構想を機に起こった改革議論を今後の大阪に生かしていくべきだ。



民意とは(2020年11月2日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

「大統領選、私も投票したんですよ」と、本紙に「わたしを語る オールド・ゼンの物語」を連載中の米国人アラン・ローゼンさん。在熊46年だが、郵便で1票を投じた。米国はあす3日が大統領選の投開票日

▼ただ未曽有のコロナ禍で、米国内でも期日前投票や郵便投票が激増した。このため開票にかなりの時間がかかる可能性も。この4年、分断が進んだと言われる米国で、最後に笑うのはトランプ氏かバイデン氏か

▼大阪市ではきのう「大阪都構想」の住民投票があった。市を廃止して四つの特別区に再編、大阪府と市の二重行政のムダを解消しよう-大阪維新の会の主張をめぐり激しい論戦が交わされ、民意の行方は最後までもつれた

▼県内で注目を集めるのは、球磨川流域の人々の民意である。国や県は、水害後の治水の選択肢に川辺川ダム建設を含めて検討、近く新方針をまとめる。12年前に中止になったはずのダムだが、蒲島郁夫知事は「今の民意」を問いたいと言っている

▼民意とは、川の表流水のようにくるくる移り変わるものなのか。そうかもしれない。だが球磨川には瀬もある。淵もある。深みに潜った民意はないか。上澄みだけをすくい取って、地域に新たな混乱や分断をもたらすことはないだろうか

▼〈瀬をはやみ岩にせかるる滝川の〉。百人一首にある崇徳院の歌を思い出した。本来は離れ離れになった恋人たちの歌。けれど球磨川の流れを前にすれば、流域全体の願いをうたうようでもある。〈われても末にあはんとぞ思ふ〉





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