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(論)NHK関する論説(2020年10月20・21日・11月4・7/12月23日・2021年1月16・17・24・3月3・8日)

NHK値下げ/公共放送の役割の議論も(2021年3月8日配信『神戸新聞』-「社説」)

 NHKが受信料を値下げする方針を表明した。受信料収入の約1割に当たる700億円を原資に2023年度の引き下げを目指すという。

 受信料は諸外国の公共放送などと比べ高水準とされる。コロナ禍で家計が圧迫される中、視聴者の負担軽減を図る姿勢は評価したい。

 ただ、NHKは消費税増税時に受信料を据え置き、昨年秋に月数十円ほどの値下げを行ったが、「さらなる値下げはしない」としていた。

 方向転換の背景には、携帯電話料金と並びNHK受信料の引き下げを「最重要課題」とする菅義偉首相の意向と、武田良太総務相の度重なる要請があった。

 公共放送のあり方の議論を深めず「政治案件」を優先した印象で、違和感を禁じ得ない。番組制作の自由まで損なわないか気がかりだ。

 年間予算7千億円規模のNHKは国内最大のメディアだが、コロナ禍で受信契約が減少するなど影響も出ている。21年度予算案は受信料収入を3・7%のマイナスと見込み、3年連続の赤字予算となった。

 とはいえ剰余金残高は、19年度末で1280億円に上る。視聴者への還元措置を考えるのは当然だ。

 東京の放送センター建て替え費用を約1700億円と見込み、ほぼ同額の積立金も保有する。総務省などは事業費の削減も促していた。

 このほど発表した中期経営計画によると、同センターの建設計画見直しなどで値下げの原資を捻出する。一般の意見公募でも「受信料が高すぎる」との声が多く寄せられ、世論にも押し切られた形となった。

 ただ、前田晃伸会長は「具体的な還元方法は2年間の推移を見た上で」としており、値下げ実現には時間がかかるとする。国民の理解を得るには報道や番組制作、サービスの充実にも力を注がねばならない。

 ところが、NHKは衛星放送のチャンネル削減やAMのラジオ第1、第2放送の統合も打ち出した。これでは視聴者や聴取者が置き去りにされる懸念が募るばかりだ。

 不当に受信契約を結ばない視聴者に割増金を課す放送法改正案も浮上している。強権的な対応では視聴者の反発を買い、若い世代で進む「テレビ離れ」を加速させないか。

 放送事業会社からの高額接待問題で辞職した山田真貴子前内閣広報官が在任中、首相が出演した番組でなされた質問を巡り、NHKに抗議した疑いも取りざたされている。NHKは人事や予算審議で政府や国会の関与を受けるだけに、政治との距離をしっかり取る必要がある。

 時の政権への忖度(そんたく)より、国民の「知る権利」にどう応えるか、公共放送の役割を真剣に考えるべきだ。





NHK受信料 徴収強化より先に値下げを(2021年3月3日配信『読売新聞』-「社説」)

 受信料の徴収を徹底するより、大幅な値下げと組織の大胆なスリム化が先ではないか。公平な受信料制度を構築していくには、視聴者の理解を得ることが何より大事だ。

 政府は、放送法改正案を閣議決定し、通常国会に提出した。NHKの受信料引き下げに向けた原資を確保するため、「積立金」を創設することが柱となる。

 積立金は、中期経営計画の期間である3年ごとに、内部留保にあたる繰越剰余金の一部と毎年度の黒字の一定額を蓄えるものだ。

 NHKの今年度末の剰余金は約1450億円になるとみられる。その一部を使うほか、新放送センター建設計画の見直しで資金を捻出するなどし、約700億円を値下げにあてるとしている。2023年度に約1割下げるという。

 ただ、その原資として、1450億円の剰余金をどれだけ取り崩すのかは不明確だ。本来、特殊法人のNHKが内部留保をため込むこと自体、適切ではない。

 衛星放送契約の料金引き下げを優先し、地上波は当面下げない考えだ。値下げの時期も遅い。視聴者が評価する抜本的な料金の改革とは言えないだろう。

 改正案に、テレビを設置しながら受信契約を結ばない世帯に対し、割増金を課す仕組みが盛り込まれたことも懸念される。

 NHKは昨年、テレビ受信機を持つ人に届け出を義務づけるよう要望したが、国民から強い反発が出たため、その代替案となる。

 NHKが定めた受信料の規約に現在でも割増金の条項があるが、適用例はないという。法律に明記して、支払いを促す効果を期待しているのだろう。

 受信料を払っていない世帯の割合は、19年度に全体の2割近くに上っている。不公平感の是正を図る狙いは理解できる。

 だが、徴収を強化するなら、視聴者に納得してもらうことが前提となる。国民に「罰金」と受け止められれば、逆に不信感が高まりかねない。割増金の是非は、国会で論議を尽くしてもらいたい。

 改正案は、NHKがイベント企画や物販などの子会社を束ねる「中間持ち株会社」を設置できるようにするという。各社が抱える管理部門の効率化や、役員の削減などが目的だと説明している。

 それよりも、民間と競合する子会社の必要性を検証し、肥大化した事業を縮小していくことこそが重要である。その上で、国民が恩恵を実感できるよう、もう一段の値下げを目指すべきだ。





NHK議事録 未公表は放送法に反する(2021年2月24日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 公共放送であるNHKの運営に幅広い権限を持ち、最高意思決定機関と位置づけられるのが経営委員会だ。その議論と判断には、何よりも透明性が確保されなければならない。

 放送法は、経営委の議事録を遅滞なく公表することを義務づけている。ところが、かんぽ生命保険の不正販売を報じた番組をめぐり会長を厳重注意した際の議事録は2年余りも公表されていない。

 NHKの第三者委員会は今月、全面開示すべきだとあらためて答申した。昨年5月に全面開示の答申を出したにもかかわらず、公表に応じない経営委の姿勢を厳しく批判している。

 議事録を要約した文書は開示したものの、発言者の名前を伏せた断片的な内容で、議事概要の域を出ない。対象の文書にNHKが手を加えて開示したことに対し、第三者委は、改ざんのそしりを受けかねないと指摘している。

 経営委は、公表しないことが前提の会合だったと説明する。内輪の決めごとを盾に公開を拒むのは放送法の趣旨にそぐわない。重い役目を担う委員が自らの言動に責任を負うのは当然だ。

 まして、番組制作の現場への介入にあたる重大な問題である。経営委が個別の番組に干渉することを放送法は禁じている。公共放送の独立と自由を確保するため、制作現場の自律性は最大限尊重されなければならない。

 番組をめぐっては、日本郵政グループの抗議を受けた経営委が会長を厳重注意し、続編の放送が大幅に延期された。抗議を主導した日本郵政の幹部は、かつて総務省で事務次官を務め、官邸とも近い。その意に沿う動きだった。

 森下俊三・委員長代行(現委員長)が先頭に立ち、「取材が極めて稚拙」などと会合で発言したことが分かっている。森下氏は国会で、番組編集の自由を損なう事実はないと述べたが、それは確かか。NHKは議事録を公開し、自ら検証し直す責任がある。答申を軽んじることは許されない。

 森下氏を経営委員に再任する人事が、与党などの賛成多数で国会で承認された。引き続き委員長に就く可能性が高い。かんぽの問題や議事録への対応を踏まえれば、納得がいかない人事である。

 NHKが来年度からの中期経営計画で示した受信料の値下げも、自律的な判断とは言いがたい。政府の圧力に押されたことは明らかだ。公共放送の根幹である自主自律がぐらついたままでは、信頼の回復はおぼつかない。





NHK経営計画 公共放送の役割再認識を(2021年1月20日配信『山陽新聞』-「社説」)

 NHKは2021~23年度の中期経営計画を発表した。昨夏公表した計画案では「現状維持」とした受信料について、23年度に値下げする方針を盛り込んだ。視聴者本位の改革に進むよう求めたい。

 若者を中心にしたテレビ離れや、インターネットの普及などメディア環境の変化は著しい。一方で、新型コロナウイルスの感染拡大や、多発する自然災害への対応など公共放送として担うべき役割も増している。

 今回の経営計画は、そうした大きな転換期に公共放送としてどう向き合うかを示すものでもあろう。計画案段階から一転して値下げに踏み切ったことは評価できる。

 ただ、そこにNHKの積極的な意図は感じにくい。コロナ禍の影響を受ける家計の負担軽減を理由にした菅政権の強い要求に、世論の風当たりも加わって修正を余儀なくされた印象が否めない。値下げの原資は剰余金の取り崩しや業務コストの削減、新放送センター建設費の見直しなどで、年間受信料収入の1割に当たる約700億円を捻出するという。

 NHKの繰越剰余金は19年度末で1280億円まで膨らんだ。放送法に基づく「特殊法人」であり、過大な剰余金をためる必要はない。余れば、視聴者に還元するのは当然のことだ。

 だが、本来はNHKが自主的に決めるべきものだろう。民放では代替できない公共放送として何をやるべきかを考え、国民の理解が得られる受信料を検討するのが筋ではないか。どこまで議論を深めたか疑問が残る。

 受信料ではまた、別々に徴収している地上波と衛星波を一本化する総合的な受信料制度の検討も盛り込まれた。

 経営計画では、事業規模のスリム化などで3年間に550億円の支出削減を打ち出した。BS放送はBS1とBSプレミアムを23年度に統合。AMラジオの第1、第2は25年度に一本化の方向で検討すると明記した。

 これまで肥大化による民業圧迫を批判されてきたNHKが、遅ればせながら大幅な規模縮小へ一歩を踏み出す。ただ、スリム化やチャンネル削減が、視聴者サービスの低下にならぬよう注意が必要だ。

 評価が高いドキュメンタリーやラジオで人気の語学講座など、それこそ経営計画が掲げる「NHKらしさ」の一端だろう。こうした魅力あるものを大切にしながら改革を前に進めてほしい。

 民間と競合する子会社の整理や人件費などの課題を解消することも急がれる。経営計画ではグループの規模縮小や企業数の削減などを挙げているが、全体像や具体策は明示されていない。

 今後、経営計画をいかに具体化して信頼される公共放送の実現につなげられるか。その将来像を示し、視聴者の多様な声に耳を傾けながら取り組むよう求めたい。





NHK受信料 値下げの具体策を早期に示せ(2021年1月18日配信『読売新聞』-「社説」)

 身を切る改革を急ぎ、受信料を大幅に引き下げることが重要だ。その具体策を、国民に早期に示してもらいたい。

 NHKは2021~23年度の中期経営計画をまとめ、23年度中に受信料を値下げすると表明した。年間受信料収入の1割にあたる約700億円をその原資に充てる意向で、引き下げの方法は今後、検討するとしている。

 内部留保にあたる剰余金は20年度末に1450億円と、15年度の2倍近くに膨らむ見込みだ。値下げのため、その一部などを積み立てる仕組みを設けるという。

 昨年8月に計画案を発表した時には、受信料は据え置く方針を示していた。9月に就任した武田総務相が、携帯電話料金とともに受信料の値下げを強く求めたことで、今回の計画に盛り込まざるを得なかったのだろう。

 そもそもNHKは放送法に基づく特殊法人であり、利益を上げる必要はない。内部留保をため込むこと自体、不適切であり、視聴者に還元するのは当然だ。

 NHKの前田晃伸会長は記者会見で、値下げの具体的な中身について、「22年度が終わった後にめどが立つ」と述べた。受信料収入の増減も見極めると説明しているが、対応が遅すぎる。

 武田総務相が要請した、新型コロナウイルスの流行で苦しむ家計の支援には間に合わない。

 さらに、今後の収支の動向などによって、料金引き下げが1年限りになる可能性があるという。一時的な値下げでは、視聴者の理解は到底、得られまい。

 剰余金の扱いにとどまらず、事業を抜本的に見直して、多くの国民が納得できる料金体系を実現していく必要がある。

 イベント企画や物販など、民間と競合する子会社のリストラを急ぐべきだ。計画では、グループの規模縮小や企業数の削減を掲げたが、具体策は示していない。

 見直し作業をスピードアップしつつ、そもそも必要な業務なのかを一から検証してほしい。

 計画は、BS放送やラジオのチャンネル統廃合も打ち出した。これには、ラジオの語学といった教養番組が打ち切られるのではないかと懸念する声がある。良質な番組の提供という本業のサービス低下は避けねばならない。

 民放と似た手法の娯楽番組も目立っている。ネットの普及でテレビ離れが進む中、公共放送に求められる本来の役割を再確認することが不可欠だ。受信料を下げるだけで終わる話ではない。





NHKの値下げ 組織統治の改革を怠るな(2021年1月16日配信『産経新聞』-「主張」」)

 NHKが令和3~5年度の次期経営計画を発表し、受信料値下げの方針を明らかにした。

 値下げは当然としても安定した受信料収入にあぐらをかいたコスト意識の甘さを見直し、組織統治の改革を断行してもらいたい。

 受信料収入は年間約7千億円に上る。値下げの原資は、事業規模の約1割にあたる700億円程度を確保する。

 財政安定化のための繰越金(剰余金)が2年度末に1450億円に上る見通しで、これを取り崩すほか、業務コストや新放送センター建設費の削減などで捻出する仕組みだ。

 値下げは5年度に実施するが、具体的な下げ幅などは、受信料の徴収状況など今後を見て詰めるという。新型コロナウイルス禍など先行きが不透明な事情はあろうが、公共放送としての性格から、多額の繰越金をため込む必要はない。視聴者への還元に腰が重かったと言わざるを得ない。

 別々に徴収している地上波と衛星放送(BS)を統合した総合的な料金制度の検討も、経営計画に盛り込まれた。適正な受信料について結論を得ることは急務だ。

 BS1とBSプレミアムの統合やラジオ波の削減も示された。業務効率化を進めるとしても、視聴者本位で編成などを工夫してもらいたい。

 昨年8月に公表した経営計画案をめぐっては、昨年からインターネット同時配信を始めるなど業務肥大化に対する懸念が指摘されていた。総務省などからは、受信料の値下げや、公共放送としての適正な事業規模を求める意見が出ていた。

 経営計画は、「スリムで強靱(きょうじん)な『新しいNHK』」を目指すと、うたった。そのためにも、関連会社を含めた組織肥大化の見直しなど改革が欠かせない。

 最高裁は平成29年、「公共の福祉」をかなえるNHKの放送目的を重視し、受信料制度を合憲とした。しかし視聴者から集めたカネを使い放題というのでは公共放送の名に値しない。

 NHKは受信料に甘え、あるだけ予算を使ってしまうコスト意識の欠如が批判されてきた。その緩みのままでは、受信料値下げも一時的なものとなってしまう。

 外部から会長が起用され、改革は途上であることを忘れてもらっては困る。





NHKの受信料 割増金より改革が先だ(2020年12月23日配信『北海道新聞』-「社説」)

 NHKのあり方について今春から議論を進めてきた総務省の有識者会議が、受信料の不払い世帯への割増金制度の導入を柱とする提言をまとめた。政府は来年の通常国会での法改正を目指すという。

 NHKは議論の中で、受信料の公平負担と、未契約者への対応にかかる年間300億円を超える営業経費の削減には、徴収対象の実態把握が不可欠と訴えた。

 これを受け、有識者会議は未契約者へのペナルティーを認めた。

 しかし、半年以上にわたる議論から見えてくるのは、収入増に固執し、本質的な改革に積極さが見えないNHKの姿だ。取り組む方向がずれている。これでは国民の理解など得られまい。

 対処すべきなのは、先進国の中で高い水準にある受信料の引き下げや、拡大した子会社の再編を含む業務のスリム化である。忘れてはならない。

 NHKは、テレビの設置・未設置の届け出義務化や、未契約住居の居住者に関する情報を自治体などに照会できる制度の創設も求めたが、有識者会議は却下した。

 個人情報保護に対する配慮を欠く要請であり、当然の判断だ。

 提言では、膨らむ繰越剰余金が一定水準を超えた場合に、受信料引き下げの原資に充当することを義務付ける制度も促している。

 剰余金は2019年度に1280億円に達した。健全経営を目指しつつ、余剰分は視聴者に還元するのが筋だ。積極的に進めたい。

 問題なのは、歯止めがかかっていない事業の肥大化だ。

 4月にテレビ番組を放送と同時にインターネットに流し始めた。ネット事業費は、上限を受信料収入の2・5%から200億円に事実上引き上げる見通しだ。ネット事業者への圧迫が懸念される。

 イベント企画や物販事業などの子会社は業務の重複や人員増などでコスト削減が課題だ。だがリストラはほとんど進んでいない。

 経営改革に本気で取り組む姿勢があるのか疑わざるを得ない。

 肝心なのは公共放送としての役割を再認識することだ。

 菅義偉首相は自著でNHK改革に後ろ向きな総務省の課長を更迭した経緯を紹介するなど、人事を通した圧力を強めてきた。こうした政治の介入を排除し、中立を保つ姿勢を明確にすべきだ。

 かんぽ生命保険の不正販売報道では組織統治も問われた。コロナ禍で苦しむ国民に負担を求めるのであれば、まず自らのえりを正す必要があろう。





受信料不払いに割増金 経営改革と値下げが先だ(2020年11月28日配信『毎日新聞』-「社説」)

 NHK受信料の不払い世帯に対する割増金制度の導入が、総務省の有識者会議のとりまとめ案に盛り込まれた。

 総務省が提案していた受信料支払いの義務化や、NHKが要望したテレビ設置の届け出義務化、未契約者の情報照会制度は導入が見送られた。

 割増金制度は、今の「契約制」を維持しつつ、テレビなどがあるにもかかわらず受信契約を結ばず、理由なく料金を払っていない世帯が対象となる。

 心理的な圧力をかけ、自発的な契約と受信料支払いを促すのが狙いだ。8割強にとどまる支払率の上昇につなげ、負担の公平化を図るという。

 年間305億円かかっている受信契約のための戸別訪問コストを、削減したいとの思惑もある。

 来年の通常国会で放送法改正を目指すという。割増金の額や対象者の把握方法などは今後、検討していくと説明している。

 しかし、「義務化」ほどではないにせよ、割増金にはペナルティーの側面がある。果たして国民や視聴者の理解が得られるのだろうか。実効性にも疑問がある。

 子会社の整理やチャンネル数の削減を含め、業務の見直しなど経営の一層の効率化を進めていくことが先決だ。

 今回のとりまとめ案には、受信料の値下げについて、繰越剰余金が一定水準を超えた場合に原資とする制度の導入が盛り込まれた。

 剰余金は年々増加傾向にある。2015年度の約800億円から、19年度は1280億円にまで膨らんでいる。

 NHKの前田晃伸会長は参院総務委員会で、剰余金の視聴者への還元について「国民の皆様に見えるような形にしたい」と答弁した。だが、時期や規模など具体的な内容は示されていない。

 来年度からの中期経営計画案では、受信料の水準は据え置きになっている。引き下げに向けて見直しを続ける必要がある。

 NHKがやるべきことは、不払い対策だけではないはずだ。公共放送としてのあるべき姿を示さないままでは、「テレビ離れ」に拍車がかかるだろう。放送文化を守っていく責任があることを自覚すべきだ。





【テレビ届け出】NHKの信頼向上こそ(2020年11月7日配信『高知新聞』-「社説」)

 NHKに受信料を支払う世帯と支払わない世帯があるのは不公平と考えるのは当然だろう。しかし、不払いに対し、強制的な徴収で応じようとしても理解は得られはしない。公共放送として、国民からの信頼を高めることが基本だ。

 テレビを設置した家庭や事業所に届け出を義務化するよう、NHKが要望した。総務省が検討する。

 また、住んでいる人が分からず、テレビを設置しているかどうか確認できない場合もある。そのときは住所を基に、自治体や電気・ガス会社などにその人の氏名を照会する仕組みを導入することも求めている。本人を特定したら郵送などで届け出を促し、返答がないと訴訟を起こすことも想定している。

 日本では受信料はテレビを設置する世帯の「契約義務」のため、徴収率は8割にとどまる。届け出ないことへの罰則は否定しているが、受信契約の対象者を把握することで、9割を超える海外の徴収率と比べて低い数値の引き上げをもくろむ。

 確かに、テレビ設置の届け出義務は英国やドイツ、韓国などにあり、住民登録や電気料金支払いの情報が使われている。しかし、だから日本でも、とはならない。個人情報が本人の同意なしに吸い上げられることには乱用の懸念もある。

 受信料を巡り、その高さは非効率や業務運営に起因するとの見方は強い。NHKは総務省から、高止まりする営業経費の圧縮を求められている。そうしたことへの切り込みが不十分なままで強硬な仕組みを作っていては反発を強めるだけだ。

 そうしたこともあって、今回の届け出義務化についてNHKは、不払い対策ではなく経費削減策との立場のようだ。未契約者を戸別訪問して契約を促す現行の営業でかかっている経費を大幅に減らせるとみる。

 経費を圧縮するのは当然だ。その上で、合理的な受信料であると納得してもらう説明が欠かせない。

 2019年度決算は、受信料支払率は82・8%と過去最高だった。収入は受信料制度を合憲と判断した最高裁判決もあり、番組制作費の横領などで落ち込んだころからは回復している。

 ただ、若い世代を中心にテレビ離れが進み、世帯数の減少も避けられない。そうした中で、公共放送としての経営と番組の質向上を探り続けるしかない。次期経営計画案はAMラジオと衛星放送の削減と支出圧縮を盛った。チャンネル削減はこれまでの拡大路線からの方針転換だが、優良な番組がはじかれては放送の多様性が失われかねない。また、受信料引き下げは明記されていない。

 一方、NHKがインターネット活用業務費の上限目安の撤廃方針を示したことに、肥大化を招くと反発も強い。公共放送のネット進出では、海外ではスマホやパソコンでの視聴に受信料を取るケースもある。日本でも論議は必至だ。

 経営の効率化と透明性を高めることが信頼の基盤となる。





テレビ届け出 NHK自身の改革が本筋だ(2020年11月4日配信『読売新聞』-「社説」)

 取り組むべきは、業務のスリム化と受信料の引き下げである。改革を先送りして、料金徴収の効率化を訴えても、国民の理解は得られまい。

 NHKは、総務省の有識者会議で、家庭や会社などに対して、テレビを設置しているかどうかを、NHKに届け出ることを義務化するよう要望した。

 契約していない人の氏名を、公益企業などに照会できるようにする制度の導入も求めた。ガスや電力の事業者から情報を得ることを想定しているとみられる。

 受信料徴収のための個別訪問にかかっている年約300億円の経費の削減が狙いだという。

 不払い世帯を減らして不公平感を是正するのは大切だが、届け出の義務化は唐突に過ぎる。国民から反発の声が出るのも、無理はない。真摯しんしに耳を傾けるべきだ。

 届け出を強制すれば、テレビの購入をためらう人が出かねない。若者に広がる「テレビ離れ」が加速し、結果として言論の多様性を損なうことにならないか。

 未契約者の氏名を特定する制度の導入にも問題がある。個人情報保護法では原則、本人の同意なしに第三者に情報提供はできない。不安を抱く国民は多かろう。

 民放は広告収入減に苦しむが、NHKは年約7000億円の安定した受信料収入を得ている。

 2017年の最高裁判決で、受信料制度が「合憲」とされたこともあり、受信料を支払う世帯の割合は16年度の79%から19年度には83%まで高まっている。

 その中で、強権的な徴収ばかりを急ぐ姿勢は認められない。NHKに求められているのは、公共放送の役割を明確化し、業務や組織をスリム化する改革である。

 イベント企画や物販などの子会社を抱え、グループ内に剰余金をため込んでいる。子会社のリストラは、ほとんど進んでいない。

 4月には、テレビ番組を放送と同時にインターネットに流す「NHKプラス」を本格的に始めた。さらに、ネット事業の費用を受信料収入の2・5%以内とする自主ルールの撤廃を提案している。

 肥大化路線であり、改革の方向性が間違っている。

 子会社再編などで、受信料の大幅な値下げを実現し、国民に利益を還元することが重要となる。その上で、受信料支払いの必要性を丁寧に説明するのが筋だ。

 民放に似た手法の娯楽番組より公共放送らしい良質な番組の提供に注力し、視聴者の信頼を高めていく努力も不可欠である。



NHK届け出義務化 自己点検と改革が先だ(2020年11月4日配信『中国新聞』-「社説」)

 テレビを持っているかどうかを家庭や事業所はNHKに届け出なければならず、テレビがあるのに届け出ないと「罰金」も―。そんな新制度をNHKが総務省の有識者会議に要望した。

 受信契約をしていない世帯の居住者の名前や、転居した場合は転居先などの個人情報を、公的機関などに照会できる仕組みの導入まで求めた。未契約者の居住地を把握する狙いだ。受信料の徴収にかかる経費を減らせるとNHKは説明する。

 だが公共放送は国民の信頼があってこそのものだ。これまで視聴者の理解の上に支払いを求めてきたが、「強制」へ変質させるのが果たして適切なのか。

 NHKが求める新制度について、有識者からは早速、異論が出た。「テレビを未設置なら契約義務がないのに、届け出の義務化は整合性が取れない」と。個人情報の照会についてはプライバシーに関わり、乱用を懸念する声が上がったのも当然だ。

 受信料支払率は83%で、残る17%は支払っていないという。不公平感が指摘されてきた。

 最高裁は2017年に受信料制度を合憲と認めた。しかし業務内容などの説明によって「契約締結に理解が得られるよう努めること」を求めてもいる。

 受信契約を結ぶことに十分な理解が得られていないのは、NHKの経営や報道の姿勢などに、疑問や不信感が抱かれているからではないのか。「強制」の前に、まずは自らの問題点を洗い出し、改めるべきだ。

 放送法はテレビ設置者に受信契約締結を定めているが、契約強制の規定はなく罰則もない。公共放送として責務を果たしていると認める視聴者が契約を結ぶことを想定したものだろう。

 では、NHKの何が問われているのか。一つには、政権との距離である。「政府が右と言うものを、左とは言えない」。14年にNHK会長に就任した籾井(もみい)勝人氏はそう述べた。報道機関としての根幹が揺らぐ発言だ。





NHK受信料 取り立てにはやる危うさ(2020年10月21日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 公共放送を受信料で支える仕組みは、視聴者、国民の支持と信頼の上に成り立つ。徴収が強制の色合いを強めれば、その基盤を崩すことになりかねない。

 テレビを設置した人に届け出を義務づける受信料制度の改定を、NHKが総務省の有識者会議で要望した。テレビがない場合にも届け出を求めている。

 加えて、受信契約を結んでいない世帯について、居住者の名前や転居先を公共機関などに照会できる制度の導入も要望した。未契約者を把握しやすくすることで不払いを減らし、徴収に関わる経費を削減できると説明している。

 NHK会長の諮問機関が2017年に出した答申を踏まえての提案だろう。テレビの設置状況を確認できる制度を設けることや、電気、ガスなどの事業者から居住者の情報を得て受信料の徴収に使う案を示していた。

 NHKは今回、法制度の改定による届け出の義務化にまで踏み込んでいる。そうなれば、強制の色合いを帯びるのは明らかだ。また、テレビを持たず、受信契約の義務がない人に届け出を義務づけるのはそもそも無理がある。

 居住者情報の照会制度も、強引さが否めない。事業者が持つ個人情報は本来、本人の同意なしに第三者に提供できない。受信料の徴収に利用できるのか疑問だ。

 放送法は、テレビを設置した人に受信契約を結ぶよう定めている。最高裁は17年、この規定を合憲と判断した。受信料制度を、特定の個人や団体、国家機関の影響が及ばないよう、広く公平な負担によって公共放送を維持する仕組みと位置づけている。

 一方で放送法は、契約を強制する規定を置かず、不払いへの罰則もない。それは、番組や組織運営が視聴者に支持されなければ、制度が立ちゆかないことを意味する。受信料で成り立つ公共放送としてNHKはそれだけ重い責任を負っているということだ。

 しかし、実情は危うい。報道が政権寄りだとの批判は絶えず、背骨である自主自律がぐらつく事態も相次ぐ。かんぽ生命保険の不正販売を追及した番組をめぐっては、日本郵政の幹部による介入を許した。政府、与党の圧力にも毅然(きぜん)と向き合えていない。

 主権者の知る権利に応える公共放送として足場を立て直し、受信料の負担に理解を求めていくことこそが欠かせない。経営上、都合がいいように法制度を変え、取り立てにはやるのは、受信料制度の根本をはき違えている。



みんなNHKを見ていた時代は遠いのだ(2020年10月20日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

 NHKは「みなさま」が好きだ。ホームページを拝見すると「月刊みなさまの声」というのがある。「視聴者のみなさまと語る会」も開いているようだ。「みなさまに支えられて」「みなさまとのつながり」……。さすが「みなさまのNHK」を標榜してきた局である。

▼低姿勢の一方で、ときどきコワモテをちらつかせるのもNHKだろう。先週末、総務省の有識者会議に臨んだ幹部が唐突な主張をした。いわく「家庭や事業所にテレビを設置したら届け出を義務づけるように制度改正を」「テレビがない場合でも届け出を」。そしてもう一つ「未契約者の氏名を照会できる制度の導入を」。

▼NHKのバラエティー番組などでは、いささか「寒い」ギャグが飛ぶことがある。これもそのたぐいかと思ったが、どうやら本気らしい。受信料徴収を効率的に進め、不払いを減らしたい一心のようだ。しかし、こんな策が世の「みなさま」に受け入れられるものかどうか。氏名照会の権限まで手にしたいとは心臓が強い。

▼かねて肥大化を指摘され、突っ込みどころの多いNHKである。性急な要望を出す前に、経営改革と受信料引き下げに力を注いだらいかがだろう。そもそも、テレビはいまやテレビにあらず。ネット配信の動画やゲームなど多様なコンテンツを映すモニターである。「みなさま」がみんなNHKを見ていた時代は遠いのだ。




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