FC2ブログ

記事一覧

「大阪都構想」再否決、「若者が市存続を決断した」という重大な事実(2020年11月4日配信『現代ビジネス』)

大阪市民は「大阪市存続」を望んだ

 大阪市廃止を問う住民投票で、大阪市民は大阪市の廃止を拒否しました。

 ここで何よりも大切なことは、この大阪市民の決断は、「大阪を都にして発展させる前向きな構想」を拒否するというネガティブな、後ろ向きな決断ではなかったという点です。

 それはあくまでも、自治共同体を解体することを拒否し、自らの自治共同体、大阪市を存続させ、自分たちが互いに協力しあいながら前に進んでいくのだという、「大阪市存続の可決」というポジティブで前向きな選択だという点です。

 それはさながら、離婚の危機に直面した夫婦が散々議論した挙げ句、間一髪離婚届に判を押す直前までいきながら、二人で力を合わせてやっていこうということを決めたのと同じ。離婚する方がその二人にとってはむしろ後ろ向きのネガティブな決断だったのです。

 その証拠が、今回の投票の大きな特徴は、若者が積極的に反対を投じたという事実。

 例えば、NHKの出口調査から、30歳未満の方々は、40歳前後の方々と異なって大阪市廃止を必ずしも支持してなどいなかったということが示されています。

 前回の住民投票終了後、高齢者ほど反対する人が多かったという結果を踏まえて、都構想賛成派の方々から「これはシルバーデモクラシーだ!」「若者の夢が、老人達に潰された!」などと、様々な批判が巻き起こったのと大いに異なる傾向です。

「シルバーデモクラシー批判」があるが…

 例えば、今回の住民投票でも、投票日当日にはネット上にこんなことが普通に呟かれていました。

 「余裕で可決かと思ってた。大阪の未来決めるんだから、未来のない老人には投票させないとか、工夫が必要だったね。若い世代は○、いろいろしがらみと既得権もっちゃってる60代以上は×が多そう。」

 高齢者には投票権など不要であり、剥奪すれば良いという主張です。

 こうしたつぶやきがSNS上で普通に垂れ流されていたことからも分かるように、どうやら日本人の一定程度の人々は、「シルバーデモクラシー」での結果なんて軽視しても、無視しても良いじゃないかと公然と口にする人々もおられたわけです。

 そしてもちろん、前回の住民投票ではこんなことが、再び平然とネット上に書かれ続けたのです。

 「国民投票制度もジジババの意見しか反映されない。それで良いのか。」

 「シルバーデモクラシーに敗れた大阪都構想に、それでも私は希望の灯を見たい」

 こうした声が「火種」となり、徐々に二度目の住民投票をやってもいいんじゃないかという空気が醸成され、幾度かの選挙を経て令和2年の11月1日という日を迎えるに至ったわけです。

若者が「大阪市存続」を望んだ

 当方は、シルバーデモクラシーそのものが悪しきものだとは決して思いません。老人の知恵こそが活かされるべきときは当然あり得るからです。

 しかし、今回に限っては、シルバーデモクラシーとは到底言えない状況であったことが、調査結果から、ハッキリと示されています。

 こちらのグラフをご覧下さい。

キャプチャ

 これは、京都大学レジリエンス実践ユニットが大阪市内の男女1200人を対象に、2020年10月21日~25日にかけて行ったウェブ調査からの集計値の一つです。

 この調査では、各個人に賛成か反対か分からないかを聞いています。

 そして、「分からない」を除いて賛成か反対かの意見を表明していた人だけに着目し、各年代毎にその内の「反対」を答えた人の割合を求めたところ、次のようになりました。

----------
(年代別「反対」率)
30歳未満 57%
30代 54%
40代 51%
50代 49%
60代 49%
70代以上 52%
----------

 そしてこれをグラフ化したのが、先の図なのですが、このデータからハッキリと分かるのは、若い世代が、最も反対率が高いのです。

 そして、年代を経るにつれて徐々に反対率が下がっていき、高齢層になって少し反対率がまた上がる、という格好となっているのです。

 この結果を見る限り、今回のデモクラシーは、「シルバー」とはほど遠い、若者の声を反映したものと言わざるを得ないと考えます。

 つまり、大阪市の若者が、自分達の未来を、大阪市を解体してつくられる特別区ではなく、「大阪市共同体」を基本として築きあげたいと希求したことの結果として、大阪市廃止が否決され、大阪市の存続が選択されたのです。

 こうした傾向がある以上、都構想推進派はさすがに「シルバーデモクラシーだから、今回の結果も軽視して良い」とは言い難いものと思います。

住民投票の否決、その最大の意義

 もちろん、こういう若者の反対傾向を目にした一部の方は、「これは最近の若者の活力のなさが原因だ、だからこの結果は不当なのだ」と主張するかも知れません。

 しかしそれでは、前回の住民投票後の「シルバーデモクラシー批判」は一体何だったんだということになるでしょう。

 つまり、どのような結果であろうと、「いちゃもん」を付けて、その結果を不当だと言って否定し、再挑戦を画策し始めてみせることは可能なのです。

 今回もマスコミの不当な報道があったために否決になったのだ、という言説が一部で流布されているようです。しかし、そういう言説の正当性それ自身に重大な疑義があることをさておいても(例えば、詳細はこちらのツイッター、ならびにそこで引用している文書をご参照ください)、「賛成に誘導する偏向報道」が深刻に存在していたことは、多くの関係者が合意するところです。

 そもそも、今回の住民投票は、大阪市廃止を巡るものである一方、マスコミ各社は常に、賛成派が賛成を誘導するために作り出した、大阪市廃止という事実を隠蔽し、前向きに大阪が発展するイメージを惹起する「大阪都構想」という言葉を使い続けたのです。

 そして何より、今回の住民投票の否決という結果が意味する最大の意義は、「大阪市民が大阪市廃止を拒否した、つまり、大阪市存続を望んだ」という一点なのです。実際、NHKの出口調査からも、今回の反対した方の反対理由の中で、圧倒的多数を占めたのが大阪市を廃止させないことだったことが明らかにされています。

 自分たちの共同体を解体しないということを決めた決断を重く受け止めれば、その結果は不当だと印象づけ、その結果を反故にしようとする工作は、極めて不当な画策だと言わざるを得ないでしょう。

 そもそも今回松井市長は、「大阪のかたちを決める最後のチャンスだ。新しいかたちをつくらせてください」と市民に訴え続けてこられました(参照「賛成・反対、訴え最終盤 1日に住民投票―大阪都構想」)。

 したがって、今回の住民投票は「最後」のものであり、三度目は無いという前提で行われたものなのであり、その結果は、極めて重大な意味を持つものとして執り行われたのです。

 そうした重大な住民投票に際して、賛成派反対派、様々な議論が展開されましたが、その結果は松井市長もおっしゃっている通り、「賛成反対、それぞれ悩みに悩み抜いた結果」です。

 大阪市民は、老いも若きも、様々な情報に触れ、侃々諤々の議論を経て、最終的には一人ひとりが大阪市を廃止すべきか存続すべきかを考え、それぞれに答えを出して投票所に足を運んだのです。

 そしてその結果、一度ならず二度までも、全く同じ結論を下されたという事実は途轍もなく重大な意義があると言わざるを得ません。

 そうした、戦後日本人がほとんど経験したことのない、壮大な政治的議論を二度も経て最終的に決断を下された大阪市民の皆様に、心からの敬意を表したいと思います。

 あわせて、同じく松井市長が「結果が出ましたんで、この結果をうけまして、新たにここから」とおっしゃったように、これからは分断、対立することなく大阪市民一体となって(同じく松井市長がおっしゃった)「大阪を愛」する気持ちを共有しながら、大阪市、そして大阪府、さらには日本全体の発展への貢献に向けた様々な取り組みをなされていくという大阪市民の決断に、心からの祝福と敬意を改めて申し上げたいと思います。

藤井 聡(京都大学大学院教授)




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ