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取材される側の「消耗」経験した伊藤詩織さん 「後悔はない」と言える今(2020年11月5日配信『毎日新聞』)

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インタビューに答えるジャーナリストの伊藤詩織さん=東京都千代田区で2020年10月23日、内藤絵美撮影

 性暴力を巡る国内外の動きを追ってきた伊藤詩織さん。インタビュー後編は、その中で見えた日本社会の課題や、ジャーナリストとしての仕事について語った。【明珍美紀/編集編成局、塩田彩/統合デジタル取材センター】

海外に目を向けて気づいた日本の課題

 ――これまで海外の性暴力被害者の話を聞いたり、各国の性暴力被害者支援について取材されたりしてきましたね。その経験は伊藤さんにとってどんな意味を持ちましたか。

 ◆当事者にならなければ分からなかった気持ちの変化や制度の課題があったので、他の人の経験を聞いたり各国の制度を取材したりすることは、ジグソーパズルをあてはめていくような感覚でした。自分でも理解できなかった行動について、他の人の話を聞く中で性暴力を受けた人の心理を理解し、新しい見方ができるようになりました。

 取材に関して言えば、自分が取材される側になってみて、取材をされることがどれほど消耗することなのかということを実感したんです。起きていることをきちんと言語化したり映像化したりして問題解決を目指すことは、取材する側もされる側も同じだと思いますが、取材を受ける側の負担を経験できたのは、ジャーナリストとして仕事をする上で良かったと思っています。

 ――海外での取り組みを知る中で、改めて日本の制度や社会の意識について感じる課題はありますか。

 ◆たくさんの方がすでに話していますが、2017年に性犯罪に関する刑法が大幅改正されたものの、やはりすごく重要なところが抜けたままになっていると思います。それは、相手がその行為を許しているのか、その行為に同意があるのかないのか、という点です。同意がなければ相手の尊厳を踏みにじった行為になってしまうにもかかわらず、改正刑法でもいまだ、暴行・脅迫要件(※3)がつけられています。私は20代になってからの被害でしたが、性的同意年齢が13歳という規定も、各国と比べて低く、課題が大きいと感じます。

 刑法だけではなく、教育の問題も大きいと感じています。自分の体のプライベートゾーンや、相手との境界、同意とは何かということをきちんと教える必要がありますが、日本の公教育ではいまだセックスについて正面から教えられていないのが現状です。セックスについて知らなければ、避妊についても分からないのに。

 ――考えるべき課題はたくさんありますね。

 ◆そうですね。「#MeToo」のように被害を可視化することはファーストステップです。でも、いつもいつも当事者が声を上げなければ可視化されない、助けてもらえないということではいけないと思うんです。だからまず、性暴力は構造的な問題なのだと多くの人が認識する。見知らぬ相手から突然受けるものだけでなく、相手との関係性の中で起きるということや、スティグマによって性暴力を受けた人が沈黙せざるを得ない状況があるということを多くの人が知ることが大切だと思います。

 性教育や性暴力に関わる法律改正など、取り組むべきことを挙げればきりがないのですが、私ができるのは、問題を伝え続けること。加害者にとって、私の場合は一晩の出来事だったかもしれないけれど、私にとっては一生抱えていくことになる。それくらい、誰かの人生に影響するのだということを、もっと知ってほしいと思っています。

 自分の体験を話してみて分かったのは、同じような経験をしている人が周りにたくさんいたということです。だから、本当にいつ自分自身や自分の大切な人に起こるか分からない問題だと考えてほしい。大切な人が傷つく前に、理解や想像力を広げてほしいと思います。

「ファイト」ではなく、「ブラックボックスを開ける」

 ――性暴力に関する日本社会の認識は、近年変わりつつあるように思います。伊藤さんが声を上げたことは、その大きなきっかけとなりました。一方で、伊藤さんが象徴的な存在となり、一人で重荷を背負っているのではと感じるときもあります。

 ◆そうですね……。…



今も、毎日を生き抜いている 「世界の100人」選出の伊藤詩織さんに見えている景色(2020年11月4日配信『毎日新聞』)

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インタビューに答えるジャーナリストの伊藤詩織さん=東京都千代田区で2020年10月23日、内藤絵美撮影

 ジャーナリストの伊藤詩織さん(31)が、2020年9月、米国タイム誌の「世界で最も影響力のある100人」に選ばれた。伊藤さんは17年に元TBS記者から性暴力を受けたと公表して訴訟(※1)を起こし、誹謗(ひぼう)中傷による2次被害についても問題提起を続けている。伊藤さんの目に今、どんな景色が見えているのだろうか。インタビューを前編、後編に分けてお伝えする。【明珍美紀/編集編成局、塩田彩/統合デジタル取材センター】

「堂々と生きていていい」というエール
 10月下旬、小雨がぱらつく肌寒い日の午後、伊藤さんは東京都内の取材場所に赤いニットと白いジーンズ姿で現れた。「歯磨き粉つけちゃって。大丈夫ですかね」と、笑いながらズボンの染みをカメラマンに見せる。その表情は、これまでの記者会見での張り詰めた雰囲気と異なり、柔らかだ。

 ――9月22日、アメリカのタイム誌の「2020年 世界で最も影響力のある100人」に選ばれました。一報はどのように入ってきたのでしょうか。


 ◆1週間ほど前に、タイム誌の担当者からEメールで連絡を頂きました。ただ、文面が非常にシンプルだったので、その時は半信半疑でした。今年はコロナ禍で、米国ABCテレビの生放送で選出を発表すると聞き、友人たちと見守ることにしました。選出が始まると出てくるのが有名な方たちばかりで、もし私が出てこなかったらごめんなさいって言っていたんです(笑い)。だから、画面に自分の顔が映って名前が呼ばれたときは、驚きました。

 ――ご自身が選ばれた理由をどのように考えていますか。

 ◆去年の12月に東京地裁で勝訴した時、日本の一つの民事訴訟だったにもかかわらず、海外の友人から「詩織がテレビに出ていたよ」と連絡が来ました。各国のメディアがこの訴訟を報道していたことを知り、性暴力を受けた体験を話すことがどれだけ大変かが、世界的に共感されることなのだと感じました。




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Author:gogotamu2019
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