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(論)ストーカー(GPS)に関する論説(2020年2月17日・8月2・3・9・30日・9月8日・11月5・6・8・12・2612月1・9日)

ストーカー対策 取り締まりと予防の両輪で(2020年12月9日配信『読売新聞』-「社説」)

 ストーカー被害の相談は、年間約2万件で高止まりしている。取り締まりの強化に加えて、加害者対策も拡充し、被害を食い止めたい。

 埼玉県桶川市で女子大生が殺害された事件を契機に、ストーカー規制法が施行されてから20年が過ぎた。つきまといや待ち伏せなどを繰り返す加害者に、警察が警告や禁止命令を出し、悪質な場合は摘発できる仕組みだ。

 加害者は8割が男性で、交際相手や元交際相手が全体の4割を占めている。警察による警告などで、ストーカー行為がやむことも多いという。規制法が、一定の抑止効果を発揮していると言えよう。

 一方で、ストーカーの手口は巧妙化し、被害者が殺害されるなど深刻な事件も後を絶たない。2度の法改正で、大量のメール送信やSNSへの執拗しつような書き込みが規制の対象に加えられたが、対策は追いついていないのが現状だ。

 近年、相手の車に全地球測位システム(GPS)の端末を無断でつけて、居場所を探る手口が目立っている。被害者が感じる恐怖や不安は大きく、プライバシー侵害の面でも看過できない。

 GPSによる監視について、7月の最高裁判決は、現行法が禁じる「見張り」にあたらないと判断し、違法性を認めなかった。

 そのため、警察庁はGPSを使って相手を監視する行為を取り締まれるよう、法改正などを検討している。どのような機器やアプリが悪用されているのか、被害実態を早急に把握し、時代の変化に合った規制を急がねばならない。

 被害者を守るためには、加害者へのアプローチも大切だ。

 警察は近年、加害者に対し、医療機関で治療を受けるよう、積極的に勧めている。相手への執着心や支配欲を弱め、行為を繰り返させないためには、医学的な措置が有効とされているからだ。

 ただ、受診は強制できず、治療費も原則として自己負担のため、治療を拒否する人や、途中でやめる人が多い。昨年は過去最多の824人に治療を促したが、受診者は15%にとどまったという。

 医療機関と連携して無料でカウンセリングを受けさせたり、精神保健福祉士が警察に出向いて面談したりする自治体もある。こうした取り組みを広げ、取り締まりと治療の両輪で対策を進めたい。

 被害者の相談を親身に受け止め、必要なら速やかに保護する態勢を整える必要がある。深刻な事態を招かぬよう、関係機関が連携して対応することが重要だ。





ストーカー治療/早期の受診で被害防止を(2020年12月1日配信『河北新報』-「社説」)

 年間2万件を超える相談が寄せられるストーカー被害について、加害者へのカウンセリングなど、医学的なアプローチの有効性が指摘されている。

 各地の警察も加害者に医療機関での治療を促すようになったが、強制力はなく、実際に受診につながる例はまだ少ないのが実情だ。加害行為がエスカレートする前に、確実に医療に結び付けていく取り組みを求めたい。

 ストーカー規制法は今月で施行から20年。度重なる法改正で厳罰化と規制対象となる行為の拡大を進めてきたが、次々に新たな手口が生まれ、悲惨な事件も後を絶たない。

 規制法は「恋愛感情や好意の感情、それらが満たされなかったことへの怨恨(えんこん)の感情を充足させる目的」での付きまといや待ち伏せ、面会の要求などをストーカー行為と規定。警察は加害者に警告や禁止命令を出し、悪質な場合は摘発して被害者を守る。

 警察庁によると、規制法施行後、被害相談は年々増加している。2000年は2280件だったが、13年に2万件を超え、昨年は2万912件。警告は昨年2052件、禁止命令は1375件、摘発も2355件に上っている。

 再発防止のため、各地の警察は16年4月から、ストーカー行為を繰り返す恐れがある加害者に受診を働き掛けている。昨年は全国で過去最多の824人が対象となったものの、実際に受診したのは124人で、7割以上に当たる635人は受診を拒否した。

 20年以上にわたり被害者や加害者、その家族の相談支援活動を続けるNPO法人「ヒューマニティ」(東京)の小早川明子理事長によると、加害者の危険度は3段階でエスカレートしていくケースが多い。「殺すぞ」などと言って恨みの気持ちを行為で示そうとするのが最も危険な第3段階で、こうなると更生はかなり難しい。

 医療との接点は、つらい気持ちを訴えて執拗(しつよう)に復縁を懇願する第1段階か、「約束を守れ」「死んでやる」などと一方的に被害を訴えて攻撃に転じる第2段階のうちに作っておく必要がある。加害者は内面に孤独や不安を抱えていることが多く、カウンセリングなどで、行為を客観的に見られるようになると衝動は収まるという。

 近年は加害者がメールや会員制交流サイト(SNS)を使うケースが増えており、小早川理事長は「対面よりも距離を縮めやすく、加害者が第3段階までエスカレートしていく速度が増している印象がある」とも指摘する。取り返しのつかない被害の発生を防ぐため、早期の受診がいっそう重要になろう。

 加害者が「法に触れても構わない」と思うほど強い衝動に駆られていれば、厳罰も抑止力にはならない。取り締まりと並んで、加害者への医療措置の充実を急ぎたい。





ストーカー規制法 実態に即し対策見直しを(2020年11月26日配信『山陽新聞』-「社説」)

 ストーカー規制法が2000年に施行されてから今月で20年を迎えた。恋愛感情などに基づく付きまといや待ち伏せ、交際要求などを繰り返すストーカー行為に罰則や防止策を定めたものだが、新たな手口が次々と現れ、規制が追いついていない実態も浮かび上がっている。不断の対策見直しが求められる。

 法律は、1999年に埼玉県桶川市で起きた女子大学生刺殺事件を機に制定された。該当する行為をした加害者に対して警察は警告や禁止命令を出し、悪質な場合は摘発して被害者を守る。施行後もインターネットの普及に伴い、執拗(しつよう)なメールや会員制交流サイト(SNS)への連続送信を禁止事項に加えるなど2度の改正が行われた。

 付きまといなどの行為が「犯罪である」という認識が定着した一方で、被害相談は昨年まで7年連続で年間2万件超に上り、今なお深刻だ。

 現在、問題となっているのは衛星利用測位システム(GPS)の悪用である。最高裁は7月、他人の自動車に無断でGPS機器を取り付けて位置情報を得ても、同法が禁じる「見張り」には当たらないとする初の司法判断を示して波紋を広げた。規制法の条文に明確な規定がないためだ。

 これを受け、警察庁はGPSを用いた監視や尾行が野放しになるとして対応を検討している。機器が取り付けられるのを監視するため、来年度から被害者にドライブレコーダーを貸し出す事業を予定している。先月設置された有識者検討会でも法改正について話し合いを始めた。新たな被害を生まないよう必要な見直しを急ぐべきである。

 とはいえ、罰則強化頼みには限界があろう。再発防止に向けては、加害者の更生を促す仕組みづくりとの両輪で対策を進めることが大切だ。

 警察は2016年から、相手への執着心や支配意識を薄めるため、ストーカー行為をした者に精神科医による治療などを勧めている。昨年は全国で過去最多の824人に働き掛けた。受診した124人のうち再び付きまといなどの行為をしたのは10人だった。

 強制力がなくカウンセリングにつながらない加害者が多いことや、受診費用がかかる点が課題だが、一定の抑止効果が見込めるとして費用負担に乗り出した警察もある。

 ストーカー行為は被害者を精神的に追い込むうえ、殺人や性犯罪など重大事件に至るケースも少なくない。長年にわたって心的外傷後ストレス障害(PTSD)に苦しむ人もいる。相談体制の充実に加え、一時保護や心のケアなどの支援についても検討を重ねなければならない。

 対面での行為に比べ、ネット上では加害者側がエスカレートしやすいともされる。近年は、ネットなどで知っただけの面識のない人から脅される例も増えているという。被害実態に即した取り締まり環境を構築してもらいたい。



[ストーカー対策] 加害者の更生も必要だ(2020年11月26日配信『南日本新聞』-「社説」)

 ストーカー規制法施行から11月で20年になる。2回の法改正で厳罰化が進み、警察の取り締まりも強化された。

 だが、殺人など重大事件にもつながるストーカー行為は後を絶たない。全国の警察への相談件数は2019年まで7年連続で2万件を超えている。

 被害を未然に防ぐには、今後も実態に即した法改正を重ねていく必要がある。加害者がストーカー行為を繰り返さないための対策も急ぐべきだ。

 付きまといや待ち伏せ、交際の要求、無言電話といった警察への相談は19年、全国で2万912件だった。その約9割は女性で20~30代が多く、加害者は交際相手と元交際相手が計4割を占めている。

 規制法は00年に施行されたが、その後デジタル機器を悪用した手口が続出するようになった。13年に「執拗(しつよう)なメール送信」、17年には「会員制交流サイト(SNS)のメッセージの連続送信」も規制対象に追加された。

 さらに、衛星利用測位システム(GPS)機器を相手の車に無断で取り付けて位置情報を把握するといった行為も相次ぎ摘発された。だが、最高裁は今年7月、規制法が禁じる「見張り」には当たらないとの初判断を示した。

 規制法は見張りを「住居や勤務先など通常所在する場所の付近で」と規定するが、GPS監視は離れた場所で動静を確認しているので該当しないとの判断だ。とはいえ、GPS機器の悪用を放っておくわけにはいかない。

 警察庁はGPS監視規制の必要性などを話し合う検討会を設置した。デジタル技術は日々進歩し、誰でも小型のGPS機器を容易に入手できる。法改正を急ぎ、被害者を守る“盾”をより強固にしなければならない。

 19年に全国で摘発された2355件のうち、ストーカー規制法が適用されたのは全体の4割弱で、そのほかは脅迫や住居侵入など刑法・特別法が適用された。警察が被害者の安全確保を最優先に、法令を使い分けて取り締まっている実態がうかがえる。

 ただ、法規制だけでは限界がある。高止まりする相談件数を見れば明らかだろう。新たな被害を生まないためには加害者対策が重要になる。

 その一つとして各地の警察は16年4月から、再発の恐れのある加害者に医療機関での治療を働き掛ける取り組みを進める。

 被害者への執着心や支配意識をなくすのが目的で、受診した人の9割は再発が抑えられたという。

 精神科医らのカウンセリングを受ければ、自分の行為が相手を傷つけていることを認識できるのだろう。ただ、19年に全国で824人に受診を働き掛けたものの、応じた人は15%程度にとどまった。受診費用を軽減するなど加害者の更生を支援し、ストーカー被害の防止につなげたい。





ストーカー規制法20年 被害防止へ加害者の更生が必要(2020年11月12日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 ストーカー規制法が施行されて今月で20年。度重なる法改正で厳罰化が進み、警察の取り締まりも強化された。しかし、付きまといや嫌がらせを繰り返すストーカー行為は依然やまず、殺人や性犯罪など重大事件に至るケースも相次ぐ。

 ストーカー被害防止は厳罰化だけでは難しい。加害者が自分の行為の問題点に気付くことが必要で、そのためには専門家による治療的アプローチが有効とされる。加害者の更生は再犯を防ぎ、被害者の救済にもつながっていく。更生支援の取り組みを進めることが重要だ。

 ストーカー規制法は、1999年に埼玉県桶川市で起きた女子大学生刺殺事件をきっかけに制定された。これまでに2回改正され、メールや会員制交流サイト(SNS)への連続送信を規制対象に加えている。

 ただ、事態はなかなか改善されない。昨年、全国の警察に寄せられたストーカー被害の相談は2万912件に上り、7年連続で2万件を超えた。被害者の約9割は女性で、加害者は交際相手と元交際相手が計4割を占めている。

 加害者の多くは警察から警告や禁止命令を受けるとストーカー行為をやめるが、やめられずに逮捕に至るケースも少なくない。警察沙汰になっても「自分は悪くない」と思い、再び付きまとう人も多いという。こうしたケースでは医療機関で適切な治療やカウンセリングを行い、被害者への執着心をなくす必要があるのは明らかだ。

 警察は2016年から、再発の恐れがある加害者に受診を働き掛ける取り組みを始めた。19年には全国で824人に働き掛け、124人が受診。受診したうち再発したのは1割未満で、一定の抑止効果が見られる。

 一方、強制力がなく受診費用もかかるため、受診率は低い。京都府警や福岡県警のように費用を負担し治療を促す動きもあるが、加害者に治療を拒まれれば手を出しにくいのが課題だ。裁判所の判決段階で受診を義務付ける、といった仕組みを提案する専門家もいる。関係機関で実効性のある方策を議論することが求められよう。

 近年はインターネット上での嫌がらせや、進化したデジタル機器の悪用など新たな手口も続出している。衛星利用測位システム(GPS)機器を悪用し離れた場所から相手の動向を監視する行為について、最高裁は今年7月、ストーカー規制法が禁じる「見張り」に当たらないとの判断を下した。

 規制法にGPSに関する規定はなく、法に規定のない処罰は科さない「罪刑法定主義」の原則を踏まえると当然の判断なのだろう。一方、無断で人の動向を監視する行為が野放しにされるのは許されない。技術の発達に法律が追いついていない現状がある。警察が関係法令を駆使して摘発に努めるだけでなく、国会は速やかに実態に即した法改正を検討すべきだ。





【ストーカー対策】加害者の更生で再発防げ(2020年11月8日配信『高知新聞』-「社説」)

 ストーカー規制法が施行されて今月で20年になる。厳罰化が進み、警察の取り締まりも強化されてきた。

 それでもストーカーに関する警察への被害相談は、昨年まで7年連続で2万件を超えている。本人や家族が殺害される事件も後を絶たない。

 そんな中、警察が加害者に対し、医療機関での治療を働き掛けるケースが増えている。カウンセリングなどを受けて、被害者への執着心や支配意識をなくすことが目的という。

 再犯を防ぐ取り組みを進めたい。加害者の確かな更生は、被害者の不安解消につながるだろう。

 昨年摘発されたストーカー事件は前年比109件減の2355件だった。

 同規制法に基づく警告は2052件、行為をやめさせる禁止命令は過去最多の1375件に上った。

 被害者は約9割が女性で、20~30代が多い。加害者は交際相手と元交際相手が計4割を占めている。一方的な感情でストーカー行為に及ぶ「面識なし」は7・2%だった。

 ストーカー事件では、警告や禁止命令を受けても行為をやめず、逮捕される加害者が少なくない。

 厳罰化だけでは問題解決が難しい場合がある。そこで医療的アプローチにより、行為の再発を防ぐ加害者対策が重視されるようになった。

 警察が治療を働き掛けたケースは昨年、全国で824人と過去最多になっている。

 働き掛けに応じた人に同意を得た上で、精神科医やカウンセラーに経緯や状況を説明。「診察が必要」と判断された場合に受診する。

 専門家との対話形式で、加害者が自らの行為を客観視していく。「相手が悪い」「自分こそ被害者」といった思い込みや、自分の身勝手さに本人が気付くことが重要という。受診した約9割で再発を防ぐことができた。

 課題は、受診につながらない加害者が多いことだ。警察が働き掛けた人のうち7割強が拒否している。

 専門家からはカウンセリングの義務付けを求める声もある。受診費の本人負担もハードルになっている。

 治療を促そうと、費用補助を始めた警察もある。ストーカーの更生支援の仕組みをつくらねばならない。

 またストーカーの手口として、衛星利用測位システム(GPS)の悪用が問題になっている。

 機器を相手の車に無断で付けて居場所を突き止める。今年7月、最高裁で判決が出た事件では、この手口で元交際相手の位置情報を約10カ月間、600回以上確認していた。

 しかし、最高裁は遠隔で居場所を把握するこの行為を「見張りに当たらない」とした。現行の同規制法では、自宅近くなどで見張る行為を禁止する条文になっているためだ。

 現状では、被害が野放しの状態になっている。早急に条文の不備を改める必要がある。

 情報機器の普及によって、ストーカー行為はデジタル化している。新たな手口に対策を打ち、法改正も重ねていかなければならない。





ストーカー防止 精神医学の適切な活用を(2020年11月6日配信『西日本新聞』-「社説」)

 ストーカー規制法の施行から今月、20年を迎えた。この間、法改正による厳罰化などがあったにもかかわらず、問題が解消に向かっているとは言い難い。執拗(しつよう)な付きまとい行為が時として悲惨な殺人事件にエスカレートする現実を、私たちは見せつけられてきた。

 被害者救済は当然だが、ストーカー行為を未然に防ぐ対策こそ重要だ。そのために加害者への精神医学を用いた手法が有効とされる。適切に活用したい。

 ストーカーに関連する警察への相談は毎年2万件を超える。被害者の約9割は女性だ。加害者は元交際相手などが4割を占め、多くは警察の警告や禁止命令で付きまとい行為を一度はやめるものの、やがて再発し逮捕されるケースが少なくない。

 心の歯止めが大切だ。ストーカー行為をした者に全国の警察が昨年、医療機関での治療を働き掛けたのは824人に上る。この取り組みを始めた2016年以降で最多という。

 再発の恐れがある加害者の同意を得た上で、精神科医に経緯や現状を説明し、診察の必要性が認められれば治療に入る。ケースごとに原因を分析し、被害者側への執着心や支配意識をなくすことが目的だ。

 昨年受診した124人のうち再びストーカー行為をしたのは10人にとどまった。一昨年も同じ傾向にあり、気持ちを解きほぐしていく手法が一定の対策となり得ることが分かる。

 精神医学の再犯防止への活用は近年、性犯罪にも導入され、成果が報告されている。

 ただ、課題もある。ストーカーの場合「悪いのは自分を裏切った相手だ」といった思い込みが目立ち、再び付きまとうケースも少なくない。強迫性精神障害など症状が重い人は、治療の継続が必要という。

 さらに、診療費が重い負担となる人も多い。福岡県警はストーカーの加害者が3回まで無料で精神保健福祉士と面談できる仕組みを導入した。京都府警も同様の支援策を設けた。警察はかつて、男女間の感情のもつれなどに伴う付きまとい行為には「民事不介入」の原則を守ってきたが、大きな変化だ。

 2000年施行のストーカー規制法は、前年に埼玉県で起きた桶川ストーカー殺人事件が制定の引き金となった。九州でも11年、長崎県西海市でストーカーの男に女性2人が殺害される事件が起きた。

 新たな課題として衛星利用測位システム(GPS)機器の悪用がある。車などに取り付けて離れた場所から相手を監視する行為を取り締まるため、警察庁が規制法の改正を検討中だ。時代に即した対応が求められる。





危険な男(2020年11月5日配信『中国新聞』-「天風録」)

 片思いの手紙を30通以上送り続けたという話を聞いたことがある。情熱や粘り強さを自慢したかったらしい。今ならストーカー扱いされても不思議ではない

▲「男なら諦めちゃ駄目」と思い込み、断られてもやめられなかった―。同僚女性に付きまとい、ストーカー規制法違反で有罪になった男性の声が本紙に紹介されていた。驚くのは付きまといの認識が彼になかったこと

▲専門家によれば、加害者は執着心や支配欲が強くて、相手の気持ちを察せないことが多いそうだ。規制法が施行されて20年。警察は近年、加害者に医療機関での治療を働き掛けている。「認知のゆがみ」とも言われる思考の癖を直すことで再犯を防げるという

▲「ゆがみ」はストーカーに限るまい。デートの誘いを断られた途端、相手を口汚くののしる一国の長もいる。トランプ米大統領のめいが著した「世界で最も危険な男」を読んで仰天した

▲臨床心理士でもある著者は家族史や生育歴をたどり、トランプ氏が育まれた背景に迫る。父親がきょうだいを競わせ、敗者を容赦なくおとしめることで従えてきたと。そんな手法をまねて権力を握る「危険な男」に、世界はいつまで振り回されるのか。



起訴状の匿名化 被害者保護を図りつつ(2020年9月8日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 法務省が、性犯罪やストーカー事件の被害者について、起訴状や逮捕状で匿名にできるようにする法改正を検討している。

 性犯罪などでは、加害者と被害者に面識がないことが多い。氏名を知られて報復を受けたり、仕返しを恐れて告訴を諦めたりする事例が起きている。刑事手続きの中で被害者保護をどう図るかは大きな課題だ。

 刑事訴訟法は、逮捕状に容疑事実の要旨を記載し、起訴状にできる限り日時や場所、方法などを特定するよう求めている。

 被害者名についての規定はないが、誰がどんな被害に遭ったのかを明確にするため一般には氏名を記載している。加害者とされる側には、逮捕状の読み上げや起訴状謄本の送達の際に容易に知られてしまう状態にある。

 2012年に起きた神奈川県逗子市のストーカー殺人事件では、前年に県警が元交際相手の男を脅迫容疑で逮捕した際、被害者の結婚後の姓や住所の一部を読み上げたことが判明、問題になった。

 以降、警察や検察は、性犯罪などの被害者について、匿名にしながら特徴を表記するといった工夫を重ねている。一方で、冤罪(えんざい)防止の観点から氏名の記載を求める裁判官もいる。

 運用面でばらつきが生じているのが現状だ。起訴状や逮捕状で匿名にしても、署名と押印が必要な供述調書の扱いをどうするかなどの問題がある。

 被害者が再び被害に遭うリスクをなくすためには統一したルールづくりが必要だろう。

 同時に、刑事裁判には「疑わしきは被告人の利益に」の原則がある。冤罪を防ぐために被告の権利は守らねばならない。

 容疑や起訴事実を否認する場合、氏名を含めた被害者の情報は無罪を証明する重要な糸口になる。被害者が誰かを把握できないと、弁護人が正当な主張をできなくなる恐れがある。

 氏名の記載がなくても弁護人が問題なく主張でき、裁判官が正しく審理を進めていくにはどうすればいいか。検察官は、表記の工夫だけでなく、弁護人の証拠開示の求めに応じていくべきだ。

 被害者の匿名化は、16年成立の改正刑訴法の付則で検討が盛り込まれた。翌年の刑法改正で、性犯罪被害者の再被害への恐れに配慮すべきとの指摘を踏まえることと、国会が付帯決議している。

 被害者保護を図りつつ匿名化の流れが安易に広がらぬよう、慎重な検討を求めたい。



GPS監視と規制法/被害の実態踏まえ改正急げ(2020年8月30日配信『河北新報』-「社説」)

 著しくプライバシーを侵害する行為である以上、速やかに規制対象に加えなければ、ストーカー被害に苦しむ当事者の不安は募るばかりだ。

 衛星利用測位システム(GPS)機器を相手の車に無断で付けて位置情報を把握する行為が、ストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるかどうかが争われた二つの事件の上告審で、最高裁が「見張りには当たらない」とする初の判断を示した。

 見張り行為の場所を規定した条文を「罪刑法定主義」の原則に沿って適用する限り、GPSによる監視を現行法で規制することはできない。

 最高裁が判決で法改正を促したとも受けとれる。こうした変質的な行為が野放しにされている現状は、早急に改めなくてはなるまい。

 二つの事件のうち1件は、レンタルした機器で元交際相手の位置情報を約10カ月間、600回以上確認。バッテリーが切れるたびにひそかに回収しては充電し、付け直していたとされる。

 多くの人が悪質かつ執拗(しつよう)なプライバシーの侵害と感じるはずだが、現行の規制法は、相手の住まいや勤務先・通学先など「通常所在する場所の付近」での見張り行為を禁じているだけで、具体的な手法についての定めもない。

 二つの事件とも一審はGPSによる監視が「見張り」に当たると認定した。しかし、二審の高裁は「見張り」を視覚などで相手の動静を観察する行為と定義した上で、離れた場所からGPSで相手の車の位置情報を確認することは「見張り」に該当しないと判断。最高裁もこれを支持し、検察側の上告を棄却した。現行法の条文の不備がまさに露呈したと言わざるを得ない。

 ストーカー規制法は、GPSがまだ広く普及していなかった1992年に埼玉県桶川市で起きた女性刺殺事件を契機に制定された。

 機器はその後、容易に入手できるようになり、2014年に群馬県館林市で当時26歳の女性が元交際相手の殺害された事件では、家族の車に取り付けられたGPSで居場所が特定されるなど、ストーカー事件でGPSが悪用される例が後を絶たない。

 警察庁によると、GPSによる監視を見張り行為として規制法違反容疑で摘発した例は、7月末までに全国で59件に上る。最高裁の判断が捜査に影響し、同様の行為について全く抑止力が働かなくなる恐れもある。

 情報技術の進歩に伴い、ストーカーの手口は多様化している。スマートフォンの遠隔監視機能を悪用した事件も発生している。

 ストーカー行為は一つひとつを取ってみればささいなことに見えても、連続、重複することで、時に取り返しのつかない事件に発展するのが特徴だ。政府、国会には一刻も早く被害実態を把握した法改正を求めたい。



GPSとストーカー 被害実態踏まえ法改正を(2020年8月9日配信『毎日新聞』-「社説」)

 全地球測位システム(GPS)を悪用し、離れたところから居場所を把握することは、ストーカー規制法違反には当たらない。そんな判断を最高裁が示した。

 規制法は、住居や勤務先などの付近で相手の様子を見張り、不安を覚えさせることを禁じている。繰り返し違反すれば罰則がある。

 最高裁判決は、GPS機器を使う場合であっても、相手の近くで動静を観察していなければ、この規定は適用されないと判断した。

 法令で定めたことしか処罰できない「罪刑法定主義」にのっとって法律を厳密に解釈したものだ。

 しかし、GPSを無断で使用され、どこにいるかを知られることは、プライバシーの侵害である。その不安や恐怖も大きい。

 判決が出た2件の事件では、いずれも被害者の車にこっそりと機器が取り付けられていた。うち1人は約10カ月にわたって、元交際相手から600回以上、位置情報を調べられていた。

 GPSは性能が向上し、入手もしやすくなり、悪用例が相次いでいる。相手の居場所を突き止め、殺害する事件も発生している。

 2014年からの約4年間で、GPSによる監視が見張りに当たるとして37件の有罪が確定している。だが、判決で法の不備が浮き彫りになり、今後は取り締まりが難しくなる。法改正が急務だ。

 ストーカー規制法は00年、桶川ストーカー殺人事件を機に制定された。その後も重大な結果に至るケースは後を絶たず、事件の度に法の不備が指摘されてきた。

 これまでに2回の法改正が行われ、メールの大量送信やネット交流サービス(SNS)への執拗(しつよう)な投稿、自宅周辺をうろつくことが規制対象に追加された。

 情報技術の進歩に伴い、ストーカーの手口は多様化している。スマートフォンの遠隔監視機能を悪用した事件も起きている。国は早急に被害の実態を把握して、法律に反映させなければならない。

 警察に寄せられたストーカーの相談は、昨年まで7年連続で2万件を超えており、深刻な状況だ。

 迅速に対応して被害者を守り、重大な事態を招かないため、体制の充実が欠かせない。新たな手口に即応できるような仕組みの検討も必要だろう。



GPSと規制法 実態踏まえ改正議論を(2020年8月3日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 被害の実態に沿って法が改められなければ当事者の不安は解消されないだろう。

 衛星利用測位システム(GPS)の機器を相手の車に無断で付けて位置情報を得る。それがストーカー規制法の禁じる「見張り」に当たるかが争われた2事件の上告審で、最高裁は「見張りに当たらない」との初判断を示した。

 規制法は、恋愛感情が満たされない恨みなどから、相手の住まいや勤務・通学先など通常いる場所の近くから見張ることを禁じている。ただし具体的な手法については定めがない。

 刑事裁判には法が明確に規定しない行為を処罰しない罪刑法定主義の原則がある。拡大解釈が許されれば処罰の範囲が恣意(しい)的に広がりかねない。最高裁はその原則を踏まえ要件を厳格に解釈した。

 実際に起きている事件に照らせば現行法は実情に即していない。現状は看過できない。

 2事件の被告は、別居中の妻や元交際相手の車にGPSを取り付け、パソコンや携帯電話で位置情報を確かめていた。

 1審はいずれも見張りに当たると認定した。2審の高裁は、見張りを視覚などで対象の動静を観察する行為と定義し、離れた場所から相手の位置情報をGPSで得る行為は該当しないと判断。最高裁はこれを支持し、見張りの要件を満たさないと結論づけた。

 警察庁によると、全国でGPSによる相手の動静把握を「見張り行為」として規制法違反容疑で摘発した事例は、これまで59件に上る。今回の最高裁判断は捜査にも影響しそうだ。

 2014年に群馬県館林市で当時26歳の女性が元交際相手に殺害された事件では、家族の車に付けられたGPSから居場所が知られた。11年に兵庫で女子大学生が元交際相手に刺された事件でもGPSが使われたとされる。

 ストーカー規制法は1999年に埼玉県桶川市で起きた女性刺殺事件を機に制定された。当時はGPSが普及する前で、手段として想定されていなかった。これまで裁判所の判断も割れていた。

 機器が容易に入手でき、想定外だった事件の増加が懸念される。情報技術が進み、ストーカー行為が多様化する中、法の専門家からは現行法による対処の限界を指摘する声が出ている。

 機器の悪用によって深刻な被害につながる恐れがある。事件を未然に防ぐため、政府、国会は実態に見合った法改正を早急に検討していくべきである。



ストーカー規制 時代に見合う法改正が必要だ(2020年8月2日配信『読売新聞』-「社説」)

 通信機器の普及に伴いストーカーの手口は巧妙化している。現行法で対処しきれない行為を規制するため、法整備の検討を進める必要がある。


 相手の車に全地球測位システム(GPS)をつけて位置情報を得ることが、ストーカー規制法の禁じる見張りにあたるかどうかが問われた刑事裁判で、最高裁が「見張りにあたらず、罪に問えない」との初判断を示した。

 規制法は、自宅近くなどでの見張り行為を禁じている。判決は見張りについて「一定の場所で被害者の動静を観察する行為」と判断し、GPSを使って遠隔で位置情報を得るだけではストーカー行為に当たらないと結論づけた。

 法律に明記された行為のみを犯罪とする「罪刑法定主義」の原則に沿った判断だ。恣意しい的な処罰を防ぐためにも、拡大解釈は認められないということだろう。

 捜査当局はこれまで、GPSによる行動監視を規制法違反で摘発し、有罪が確定した事件も多い。最高裁の判断が示されたことで、捜査は見直しを迫られる。

 留意すべきは、罪に問われないからといって、こうした行為が許容されるわけではないことだ。

 被告の男らは、元交際相手や別居中の妻の車に無断でGPSをつけ、得た位置情報を基に居場所を突き止めるなどしていた。被害者が感じる不安や恐怖は大きく、プライバシーを侵害する悪質な行為であることは間違いない。

 GPSは近年、飛躍的に精度が向上している。加害者は高性能の機器を入手し、被害者の居場所を詳細に把握できるようになった。2000年の法施行当時は、想定していなかった事態である。

 ストーカーを巡っては、被害者が殺害されるなどの深刻な事件が後を絶たない。事件のたびに法の不備が指摘され、2度の改正で大量のメール送信やSNSへの執拗しつような書き込みが規制対象に加えられ、罰則も強化された。

 GPSによる行動監視は、エスカレートすれば凶悪犯罪につながりかねない。事件を未然に防ぐため、行為自体を規制できるよう法改正すべきではないか。

 昨年摘発されたストーカー事件は約2300件で、被害の相談や通報は7年連続で年間2万件を超えている。警察による積極的な捜査はもちろん、被害者の保護と相談体制の充実が欠かせない。

 医療機関と連携し、加害者にカウンセリングを受けさせる県警もある。こうした根本的な防止策にも力を入れてもらいたい。



ストーカー禁止令増 対策推進し被害の根絶を(2020年2月17日配信『琉球新報』-「社説」)

 ストーカー行為などによる被害が後を絶たない。弱い立場にある人たちが安心して相談できるような環境を整えていかなければならない。

 沖縄県警がストーカー行為の加害者に対し、被害者への接近や連絡を禁じるなど強制力のある「禁止命令」を2019年に出した事例は17件に上った。14~18年の5年間は計7件で、急増している。

 19年に県警に寄せられた付きまとい行為などストーカー関連の相談件数は前年比35件増の152件となった。このうちストーカー規制法違反などで摘発されたのは同6件増の23件だった。

 増加の背景について県警は「軽微な事案でも急展開を見せることがある。緊急性のある事案では逮捕権が行使できる禁止命令を積極的に運用した」と説明している。

 ストーカーなどに対する対策の強化と比例して実態の把握が進み、相談も増加傾向にあるという側面も確かにあろう。だがストーカーなどの問題が長年議論されているにもかかわらず、一向に被害がなくならないという現実をまず直視する必要がある。

 ストーカー被害では、警察から警告を受けた加害者の大半は付きまとい行為をやめるというが、凶悪事件に発展する場合も少なくない。訴えがありながら、被害を止められなかったケースもある。

 19年4月に北谷町のアパートで米兵の男が住人の女性を殺害した事件では、県警が米憲兵隊(MP)から通報を受け、女性をドメスティックバイオレンス(DV)やストーカー事案の保護対象者に指定していた。こうした痛恨事を忘れてはならない。

 埼玉県桶川市で1999年10月、女子大学生猪野詩織さんがストーカー被害の末に刺殺される痛ましい事件が起きた。警察の対応が問題となり、翌年成立したストーカー規制法のきっかけになった。

 事件から20年余。再発防止を訴え、全国で講演を続ける父憲一さんは「ストーカーを『男女の痴話げんか』と矮小(わいしょう)化してはいけない。みんなで助け合い、安心の輪をつくるべきだ」と指摘する。

 被害の訴えに対して警察の対応が後手に回ることがあってはならず、被害者に寄り添った姿勢が何よりも求められている。一方で、警察任せとせず、関係機関や専門家など社会全体で関与を深めていくことも重要だ。

 把握できた被害はあくまで一部であり、再発や報復を恐れて誰にも相談できずにいる人たちも多いはずだ。会員制交流サイト(SNS)などを通じた「ネットストーカー」被害も拡大している。被害者が声を上げやすいような相談・支援態勢づくりに改めて知恵を絞りたい。

 新たな被害を生まないような加害者対策ももちろん不可欠だ。刑罰に頼らず、カウンセリングによる治療や更生など実効性のある取り組みを進めなければならない。










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