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(論)皇位継承論議に関する論説(2020年11月6・7・8・11・16日・2021年3月24・26・27・29・30・31日・4月1・3・4・5・7・22日・5月5日)

皇位継承の議論 平行線のままでいいのか(2021年5月5日配信『毎日新聞』-「社説」)

 安定的な皇位継承を巡る議論が政府の有識者会議で始まった。専門家からの意見聴取を行っているが、女性・女系天皇を認めるかどうかで意見が割れ、議論は平行線をたどっている。

 今回の議論は4年前、天皇退位を認める特例法の付帯決議に、安定的な皇位継承の課題について「法施行後速やかに検討」と記されたことを受けたものだ。

 現制度では皇位継承資格を持つのは男系男子に限られている。天皇陛下より若い資格者は、継承順位1位の秋篠宮さまと長男悠仁さま(14)だけしかいない。

 にもかかわらず議論が進まないのは、天皇像を巡る意見の隔たりが大きいからだ。保守派は、天皇の本質は祭祀(さいし)をつかさどることだと主張している。祭主の地位が男系で継承されてきた伝統を重んじている。

 だが現行憲法は1条で、天皇を「日本国民統合の象徴」と定める。被災地や地方の訪問など国民と交流する公的行為は、憲法に規定はないが、象徴としての役割を果たすうえで重要だ。

 2年前の退位礼正殿の儀で、上皇さまは「象徴としての私を受け入れ、支えてくれた国民に、心から感謝します」とおことばを述べられた。天皇陛下もこうした姿勢を継承され、国民との交流を深めている。

 新型コロナウイルス禍で人との接触が限られ、天皇としての活動にも影響が及んでいる。陛下はオンラインも活用するなど時代に合った公務を続けている。

 今年の新年一般参賀は中止になったが、皇后雅子さまと一緒にビデオメッセージを発表し、新しい交流の形を示した。

 小泉政権が2005年に女性・女系天皇を容認する報告書を出してから、既に15年が過ぎた。世論調査では女性天皇を容認する意見が7割前後にのぼるが、この間、自民党政権は議論を避けてきた。

 女性皇族は結婚で皇室を離れるため、今後、悠仁さまと同世代の皇族がいなくなる可能性がある。公務の担い手が減れば、国民が皇室と接する機会も少なくなる。

 象徴としての天皇像は、国民と共に作り上げるものだろう。将来にわたって継承していくには、国民に開かれた議論が求められる。





皇位継承の議論/先送りはもう許されない(2021年4月23日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府の有識者会議が皇位継承策に関する本格的な検討に着手した。秋までの集約を目指すという。

 皇室典範が定める皇位継承者は現在、55歳の秋篠宮さまと14歳の長男悠仁さま、上皇さまの弟で85歳の常陸宮さまの3人だけだ。女性皇族は結婚後、皇籍を離れるため、皇位継承の重責も公務の負担も若い悠仁さまに集中しかねない。

 憲法1条が定める「象徴天皇制」をどう維持するかは国の根幹にかかわる。もう先送りは許されない。

 焦点は、現行制度では父方が天皇の血筋を引く男系の男子に限られる継承資格を、女性天皇や、父方に天皇の血筋がない「女系天皇」に広げるかどうかである。

 昨年の世論調査では、女性・女系天皇への支持はそれぞれ約80%に達した。多くの国民が現行制度の行き詰まりを理解しているからだろう。

 政権内には、女性皇族が結婚後も皇室に残って公務を担う「女性宮家」の創設を求める声もある。

 一方、自民党などの保守派は、男系維持の伝統を壊すとして女性・女系に拒否反応を示し、女性宮家にも慎重論が根強い。

 ヒアリングに応じた専門家からは、継承資格を男系男子に限定することに十分な根拠はなく、女性・女系の容認が国民の意識に沿う、との意見も複数出ている。

 集約は容易ではないが、だからこそ、開かれた議論を通して合意を形成する過程が重要だ。

 2017年6月に成立した天皇退位特例法は付帯決議で、速やかな検討と国会への報告を求めた。ところが当時の安倍晋三首相は、「いざとなったら神風が吹く」などという非現実的な楽観論で先送りした。歴代最長の政権を担いながら難題を放置した責任は重い。

 引き継いだ菅義偉首相も見直しに慎重とされ、政府内には有識者会議の結論提示は見送るべきだとの声すらある。衆院解散を前に保守層の反発を避ける意図だとすれば、政治の責任放棄と言わざるを得ない。

 小泉政権の有識者会議は05年、女性・女系天皇を容認する報告書を出した。民主党の野田政権は、「女性宮家」の創設を柱とする論点整理を公表した。論点は既に出尽くしていると言っていい。

 上皇さまの退位から2年。結論を先送りし続ければ皇族は減り、継承策の選択肢も狭まる一方だ。いま政治に求められるのは、これまでの議論を土台に国民の共感を得られる打開策を示すことである。

 有識者会議は女性や若い世代の意見も採り入れ、新時代にふさわしい皇室の将来像について議論を尽くしてもらいたい。





男女格差報告 「変わらぬ日本」変えたい(2021年4月7日配信『山陽新聞』-「社説」)

 日本の男女格差の是正に向けた取り組みが諸外国から大きく遅れている実態が、改めて浮き彫りになった。

 男女平等がどれほど実現できているかを国ごとに数値化した「男女格差報告」(ジェンダー・ギャップ指数)が公表され、日本は156カ国中、120位だった。過去最低となった前回2019年の121位と同水準で、先進7カ国(G7)では他国に遠く及ばず最下位だ。

 同報告は世界経済フォーラムが06年から政治、経済、教育、健康の4分野を対象に女性の地位を評価している。日本は政治参画の遅れや男性との賃金格差が大きいことがかねて指摘されてきたものの、改善は大幅に遅れ、今回は全分野でさらに順位を下げた。

 長らく女性活躍を掲げながらなぜ、日本社会は一向に変われないのか。政府や企業の幹部は結果を真摯(しんし)に受け止め、具体的な対策を急がなければならない。

 最も深刻なのが政治分野である。現在、衆院議員のうち女性は9・9%にすぎず、閣僚も20人中2人。順位は147位と沈んだ。前後にイスラム教の国などが並ぶ世界最低レベルと言わざるを得ない。

 3年前には選挙の候補者数の男女均等を目指す法律ができた。しかし政党の努力義務のため、その後の参院選でも自民党が約15%にとどまるなど効果は十分でない。政府は国政、地方の各選挙で女性候補者を25年までに35%に増やす目標を掲げる。年内には衆院選が実施されるが、掛け声倒れにならぬよう各党には決意を示してもらいたい。

 候補者の一定比率を女性に割り当てる「クオータ制」の導入も検討するときではないか。より速いスピードで格差を埋めるため、既に130以上の国・地域が取り入れ、例えば日本と同じ水準だったフランスは2000年の導入後に飛躍的に改善させた。韓国や台湾も意欲的な手を打ち、成果を上げている。

 有権者側もこうした動向を自分たちの問題に引きつけて考え理解を深めることで、変化を促すことが欠かせない。

 経済分野では役員や管理職に占める割合が低調だったため順位を下げた。専門職・技術職での割合も頭打ちとなっている。教育分野の低迷も懸念材料だ。政経分野で活躍する女性を育てる出発点ともいえる高校や大学への就学率が男子より低く、年齢が上がるにつれて格差が広がる実態が明らかになった。

 男女平等が求められるのは単に理念としてではなく、少子高齢化社会では女性を含め多様な人を登用しなければ人材を確保できないからでもある。格差は地方でより顕著とされ、その解消が若い女性の定住につながり地域を活性化させるとして大胆な施策を打ち出す自治体も出てきた。

 誰もが平等な社会をどう実現していくか。常に議論し、取り組み続けていくことが社会全体に求められている。



[皇位継承策] 速やかに道筋付けたい(2021年4月7日配信『南日本新聞』-「社説」)

 政府は安定的な皇位継承策に関する有識者会議を立ち上げ、本格的な検討に着手した。数カ月かけて論点を整理し国会に報告、秋までの意見集約を目指す。

 現在、次世代の皇位継承資格者は秋篠宮さまの長男悠仁さまだけで、国民には「女性・女系天皇」や、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設への支持が広がっている。政府は国民の理解が得られるよう安定継承策に道筋を付けなければならない。

 皇室典範は「皇位は、皇統に属する男系の男子が、これを継承する」と規定する。女性・女系天皇の容認論が広がるのは、多くの国民が皇統維持が深刻になっている現状を理解しているからにほかなるまい。

 だが、意見の集約は容易ではない。保守派は女性天皇、とりわけ母方に天皇の血筋を引く女系天皇の容認は「日本の伝統を破壊する」として異論が強い。現行制度の意義などについて専門家から意見を聴取する有識者会議での激しい論争は必至だろう。

 有識者会議では皇室活動の担い手確保も焦点になる。活動の範囲は幅広く、宮内庁は天皇代替わりを機に主要公務の分担を図ってきたが、皇族の減少は今後も想定される。

 打開策の一つが女性宮家の創設だ。皇室典範は「皇族女子は、天皇および皇族以外の者と婚姻したときは、皇族の身分を離れる」と定める。天皇陛下の長女愛子さまや秋篠宮さまの長女眞子さま、次女佳子さまは近い将来、結婚し皇族でなくなる可能性がある。

 そうなれば、悠仁さまに皇位継承と皇室活動の重責が集中してしまう。だが、保守派は女系天皇につながりかねないとして女性宮家創設に反対する。

 自民党などで有力視されているのが、結婚後の女性皇族に「皇女」の尊称を贈り、皇籍離脱後も皇室活動への協力を委嘱する案だ。担い手不足はある程度解消するだろうが、皇位の安定継承にはならない。

 さらに、終戦直後に皇籍を離脱した旧宮家(旧皇族)から男系男子の子孫を皇室に迎える案も出ている。だが、長年民間にいた人を国民は皇族として受け入れられるのか疑問だ。

 女性宮家創設の速やかな検討は、上皇さまの天皇退位を実現する特例法が2017年6月に成立した際の国会の付帯決議に盛り込まれた。しかし、安倍前政権の動きは鈍く、菅義偉首相も「男系継承が古来、例外なく維持されてきた重み」を踏まえるとして慎重な姿勢を崩していない。

 秋までに実施される総選挙を意識し、保守派の反発を避けたいに違いない。だが、憲法1条が規定する「象徴天皇制」が維持されるかどうかは国の根幹に関わるだけに本腰を入れて取り組むべきである。先送りは許されない。





皇位継承論議 新しい皇室像を視野に(2021年4月5日配信『東京新聞』-「社説」)

 安定的な皇位継承策を議論する有識者会議が始まった。女性・女系天皇や旧宮家(旧皇族)の皇籍復帰など十項目がテーマとなる。国民の意識や時代の流れを踏まえ、新しい皇室像を探ってほしい。

 最大の論点は皇位継承の資格を女性に認めるか、さらに女系天皇へと拡大することの是非であろう。仮に天皇陛下の長女愛子さまが即位するならば、父が天皇だから女性天皇となる。一般男性と結婚し、生まれた男子が天皇になれば、母親の血筋のみ天皇だから「女系の男性天皇」となる。

 歴史上では推古天皇や持統天皇など8人の女性天皇がいたが、女系天皇はいない。だから、女性、とりわけ女系の容認は「日本の伝統を破壊する」などとして保守派の強い反対論がある。いわゆる男系男子主義である。

 もっとも次世代の継承資格者は、秋篠宮さまの長男悠仁さま一人だけという現状では、男系主義の手法も限られる。終戦直後に皇籍を離れた旧宮家を復帰させる案があるが、実は小泉政権当時の有識者会議では「皇籍復帰は困難」と結論づけられていた。

 旧宮家は天皇陛下との男系の共通先祖は約600年前までさかのぼる。かつ戦後ずっと民間人だった人が突然、皇族になることに国民の理解が得られるだろうか。共同通信が昨年春に実施した世論調査では、皇籍復帰への賛成は28%にとどまっている。

 それに対し、女性天皇への賛成派は85%、女系天皇への賛成派も79%に上っているのである。男女共同参画という時代の流れや、男女平等の憲法の精神にかなっていることは言うまでもない。

 そもそ2017年に成立した天皇退位特例法の付帯決議は、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」創設などについて速やかな検討を求めていた。

 有識者会議が旧宮家の復帰を両論併記型にせよ取り込めば、論議は平行線で今後も延々と続きかねない。

 愛子さまも、秋篠宮さまの長女眞子さまも、次女佳子さまも近い将来、皇族でなくなる可能性がある。皇族数の減少がさらに切迫感を帯びる中で、皇位継承の結論は待ったなしである。

 小泉政権時の有識者会議では、女性・女系に皇位継承資格を拡大する報告書をまとめている。論点は出尽くしているはずである。天皇の地位は「国民の総意」に基づくから世論を踏まえるのは当然として、迅速な結論も望みたい。





皇位継承議論 国民が納得する方向性を(2021年4月4日配信『新潟日報』-「社説」)

 国の根幹に関わる象徴天皇制維持に向け、重い責任がある。国民が納得する明確な方向性を示してもらいたい。

 安定的な皇位継承策を巡る有識者会議の議論が始まった。今後、専門家から意見聴取する。政府は論点を整理し、各党の意向も踏まえて秋までの意見集約を目指す。

 2017年6月に与野党が合意して成立した天皇退位特例法に伴う国会の付帯決議は、皇位継承策を速やかに検討することを求めている。

 だが、特例法成立から4年、上皇さまの天皇退位から2年近くも議論は棚上げされてきた。それだけに、ようやくの感が否めない。

 有識者会議は、専門家から聴取する項目として10点を確認した。最大の論点は父方が天皇の血筋を引く男系の男子に限られる天皇の継承資格を女性・女系に広げるかどうかだ。

 現状では、次世代の継承資格者といえるのは、秋篠宮さまの長男悠仁さま1人だ。

 このままでは悠仁さまに皇位継承の重責と皇室活動の負担が集中しかねない。

 打開策として世論の支持が高いのが、女性・女系への資格拡大だ。共同通信が1年前に実施した世論調査では、女性天皇賛成派が85%、女系天皇賛成派が79%に上る。

 これに対し自民党内などの保守派には、女性・女系の容認は「日本の伝統を破壊する」との意見が根強い。

 特例法成立時の安倍政権は、支持層の保守派を意識して議論に慎重姿勢を見せ、さらに新型コロナウイルスの感染拡大で議論は先送りされた。

 菅義偉首相も「男系継承が古来、例外なく維持されてきた重み」を踏まえるとしている。

 聴取項目には、従来から焦点となっていた女性皇族が婚姻後も皇族身分を保持する是非に加え、保守派の要望が強かった旧皇族男系男子子孫の皇籍復帰の是非も盛り込まれた。

 女性皇族の結婚後の身分保持は、いわゆる「女性宮家」を創設し、皇室活動の担い手確保につなげる狙いがある。

 皇室典範は、天皇、皇族以外と結婚した女性皇族は皇籍を離れると定めている。

 気になるのは、有識者会議の役割が論点整理にとどまり、具体的な結論は先送りされるとの見方が強いことだ。

 秋までにある衆院解散・総選挙をにらみ、国論を二分する課題に一定の方向性を出せば菅政権が縛られることになり、得策でないとの事情がある。

 政治的な思惑から、いたずらに議論を先延ばしすることには強い違和感を覚える。

 皇位継承策に関しては、小泉政権の有識者会議が05年に女性天皇と女系天皇を容認する報告書を提出した。野田政権も12年に女性宮家創出を柱とする論点整理を公表しており、論点は出尽くしている。

 国民の思いを踏まえ、皇位継承の安定を最優先に結論を出すべきだ。





皇位継承策/もはや先送りは許されない(2021年4月3日配信『河北新報』-「社説」)

 もっと早く手を着けなければならなかった課題だ。政府、与党の腰は重いが、これ以上の先送りは許されない。
 安定的な皇位継承策に関する政府の有識者会議がようやく始動した。数カ月かけて論点を整理した上で国会に報告し、各党の意向を踏まえて秋までの意見集約を目指す。

 皇室典範は父方が天皇につながる男系男子が皇位を継承すると定める。だが、次世代の有資格者は秋篠宮さまの長男、悠仁さま(14)だけだ。皇位継承が危うい状況にあるのは明らかだ。

 上皇さまの天皇退位を可能にするため2017年6月に成立した皇室典範特例法には、天皇代替わり後、政府が安定的な皇位継承策を速やかに検討し、国会に報告することを求める付帯決議が盛り込まれていた。

 政府は非公式に有識者へのヒアリングを重ねてきたが、協議は後回しにしてきた。「天皇即位に伴う一連の儀式が済んでから」が表向きの理由だが、議論を避けてきたというのが実態に近い。

 論点となる「女性・女系天皇」や、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設などに踏み込めば、自民党内などの保守派から反発を招くからだ。

 継承策の決定時期について、安倍晋三前首相は4年前、天皇退位を巡る有識者会議メンバーとの会食で、当面は悠仁さまがいる上、男系維持と女系容認の意見は交わらないとして「40年先でいいんじゃないか」と発言。「いざとなったら、この国は神風が吹く」とまで言ってのけた。危機感のなさも極まれり、と言う他ない。

 世論の多くは皇位継承資格者を女性・女系へ広げることを支持する。共同通信社が20年3、4月に実施した世論調査で、女性天皇に85%、女系天皇には79%が賛成した。

 女性天皇は10代8人いるが、全て父方が天皇の血筋につながる男系だ。母方でつながる女系天皇はいない。

 保守派は女性、とりわけ女系の容認は「日本の伝統を破壊する」と異論を唱える。女性宮家も女性・女系天皇につながると反対する。

 終戦直後に廃止された旧宮家(旧皇族)の男系男子の皇籍復帰を求める意見がある。ただ、戦後70年以上も民間にあった旧宮家から人を招くことに国民の理解を得るのは難しい。

 結婚後の女性皇族に「皇女」の尊称を贈り、皇室離脱後も皇室活動への協力を委嘱する案も自民党内に浮上している。これとて負担軽減にはつながるが、皇位の安定継承の抜本策にはならない。

 意見集約は極めて難航することが予想される。しかし、女性皇族は近い将来、結婚して皇族でなくなる可能性があり、残された時間は決して多くない。政府には逃げることなく、正面から議論することを求めたい。





皇位継承 将来を見据え国民的議論が必要(2021年4月1日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 安定的な皇位継承策を議論する政府の有識者会議の初会合が開かれた。2017年6月に成立した天皇退位特例法に伴う国会の付帯決議は、上皇さまの退位後速やかに安定的な皇位継承策と、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設を検討し、結果を国会に報告するよう政府に求めていた。

 付帯決議から4年、上皇さまの退位から2年近く先送りされてきた議論が、ようやく始まった。皇位継承者は秋篠宮さまと長男悠仁さま、上皇さまの弟の常陸宮さまの3人しかいない。憲法1条が規定する「象徴天皇制」の維持には欠かせない議論である。国民に開かれた丁寧な議論が求められる。

 有識者会議は専門家から意見聴取する項目として10点を確認した。政府は論点を整理した上で国会に報告し、各党の意向も踏まえて意見集約を目指す。

 皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く男系男子が皇位を継ぐと定める。女性と、母方に血筋がある女系は認めていない。歴史上8人の女性天皇はいずれも男系。皇位継承策を巡っては女性・女系天皇に広げる考えと、自民党内などの保守派に根強い男系維持の意見の隔たりは大きい。昨年の共同通信社世論調査で女性天皇賛成は85%、女系天皇賛成は79%に上るなど世論の支持が広がっている。

 05年の小泉政権時、有識者会議が女性天皇と女系天皇を容認する報告書を提出していた。秋篠宮妃紀子さまの懐妊が判明し皇室典範改正案提出は見送られた。民主党の野田政権でも女性宮家創設を柱とする論点整理が公表された経緯がある。安倍政権で支持基盤の反発を避ける形で棚上げ状態になった。議論を避けてきた政治の責任は重い。

 有識者会議で検討する10項目に旧宮家(旧皇族)の男系男子子孫の皇籍復帰が含まれた。男系を守るため保守派が長く求めてきた宿願とされる。旧宮家は終戦後に皇籍を離れて70年以上たっている。現在の国民になじみが薄く、皇族として受け入れられるハードルは高いだろう。

 皇位継承策の意見集約は難航が必至で、政府内では現在の継承順位を維持した上で明確な結論提示は見送るべきだとの声が出ている。女性皇族が皇族以外と結婚すれば皇籍を離脱する。皇族数が減少すれば、皇位継承の重責も皇室活動の負担も悠仁さまに集中しかねない。強い危機意識を持って議論を尽くしていく必要がある。

 女性皇族が結婚後も皇族として残る女性宮家創設は女性・女系天皇につながるとして保守派は反発している。結婚後の女性皇族に「皇女」として皇室活動への協力を委嘱する案もあるが根本的な解決にはならない。

 天皇の地位は「主権の存する日本国民の総意に基づく」と憲法に明記されている。議論を重ね、国民の理解が得られる結論を出していかねばならない。国民一人一人も象徴天皇制の将来の在り方を考えたい。



皇位継承有識者会議(2021年4月1日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆選択肢細る前に議論尽くせ◆

 皇位の安定継承を巡って、政府の有識者会議で議論が始まった。世論調査では「女性・女系天皇」や、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設に賛成する声が広がりを見せる。一方、保守派は「男系維持」を訴え、女系天皇につながる可能性のある女性宮家に反対。意見集約は難航しそうだ。

 上皇さまの天皇退位から2年近くがたつ。ようやく検討に着手したが、あまりに遅い。

 安倍晋三前首相は4年前、有識者会議のメンバーらと会食した際、継承策を決める時期について「40年先でいいんじゃないか」と発言。悠仁さまがいるし、男系維持と女系天皇容認の意見は交わらないからと語り、あきれられたという。

 憲法1条は「象徴天皇制」を定める。その存続は国の根幹に関わる。検討に費やせる時間はそれほど残っていない。政府はこれ以上議論を先送りせず、今度こそ具体的な皇位継承策にめどを付けるべきだ。

 皇室典範は、天皇や皇族以外と結婚した女性皇族は皇籍を離れると規定。公務などを報じられることの多い天皇陛下の長女愛子さまや秋篠宮さまの長女眞子さま、次女佳子さまは近い将来、結婚して皇族ではなくなる可能性があり、悠仁さまに皇位継承と皇室活動の重責が集中しかねない。

 2005年、当時の小泉純一郎首相の下で有識者会議は女性・女系天皇容認を打ち出し、政府は皇室典範改正に動いたが、翌年の悠仁さま誕生で立ち消えになった。12年には民主党政権が女性宮家創設を示したものの、直後の衆院選で大敗。安倍前政権の登場以降、いずれの議論も進んでいない。

 歴史上、女性天皇は10代8人いる。全て父方が天皇の血筋につながる男系。母方で天皇につながる女系天皇はいない。

 皇室典範には「男系の男子」が皇位を継承するとあり、保守派は男系男子による皇位継承が原則と強調。女性・女系天皇につながるとして女性宮家に反対し、とりわけ女系天皇については「日本の伝統を破壊する」と強く異論を唱えている。

 自民党などで有力視されるのが、結婚後の女性皇族に「皇女」の尊称を贈り、皇籍離脱後も皇室活動への協力を委嘱する案だ。だが公務の担い手不足をある程度解消できても、皇位の安定継承にはつながらない。

 政府にとっては皇女制度の創設が最も無難と映るかもしれないが、その場しのぎの策にしかならない。20年の共同通信世論調査では女性天皇賛成が85%、女系天皇賛成は79%に上った。女性皇族の結婚が相次げば選択肢は細っていく。それを踏まえ、議論を尽くす必要がある。





皇位継承有識者会議 具体策にめどを付けよ(2021年3月31日配信『茨城・佐賀新聞・山陰中央新報』-「論説」)

皇位の安定継承を巡って、政府の有識者会議で議論が始まった。報道各社の世論調査では「女性・女系天皇」や、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設に賛成する声が広がりを見せている。一方、自民党内などの保守派は「男系維持」を訴え、女系天皇につながる可能性のある女性宮家に反対。意見集約は難航しそうだ。

 上皇さまの天皇退位から2年近くがたつ。現在、次世代の皇位継承資格者は秋篠宮さまの長男悠仁さま1人のみで、皇統維持が危ぶまれる状況にある。しかし政府は皇位継承策の本格的な検討を先送りしてきた。女性宮家などの議論に踏み込めば、保守派から反発を招く恐れがあるからだ。

 ようやく検討に着手したが、あまりに遅い。安倍晋三前首相は4年前に天皇退位を巡る有識者会議のメンバーらと会食した際、継承策を決める時期について「40年先でいいんじゃないか」と発言。悠仁さまがいるし、男系維持と女系天皇容認の意見は交わらないからと語り、あきれられたという。危機感がなさすぎると言わざるを得ない。

 憲法1条は「象徴天皇制」を定める。その存続は国の根幹に関わる。検討に費やせる時間はそれほど残っていないと考えた方がいい。たとえ、国論を二分する論争になっても、政府はこれ以上議論を先送りせず、今度こそ具体的な皇位継承策にめどを付けるべきだ。

 皇室典範は、天皇や皇族以外と結婚した女性皇族は皇籍を離れると規定。公務などを報じられることの多い天皇陛下の長女愛子さまや秋篠宮さまの長女眞子さま、次女佳子さまは近い将来、結婚して皇族ではなくなる可能性があり、悠仁さまに皇位継承と皇室活動の重責が集中しかねない。

 2005年、当時の小泉純一郎首相の下で有識者会議は女性・女系天皇容認を打ち出し、政府は皇室典範改正に動いたが、翌年の悠仁さま誕生で立ち消えになった。12年には民主党政権が女性宮家創設を皇族減少対策として示したものの、直後の衆院選で大敗。安倍前政権の登場以降、いずれの議論も進んでいない。

 歴史上、女性天皇は10代8人いる。全て父方が天皇の血筋につながる男系。母方で天皇につながる女系天皇はいない。皇室典範には「男系の男子」が皇位を継承するとあり、保守派は男系男子による皇位継承が原則と強調。女性・女系天皇につながるとして女性宮家に反対し、とりわけ女系天皇については「日本の伝統を破壊する」と強く異論を唱えている。

 自民党などで有力視されているのが、結婚後の女性皇族に「皇女」の尊称を贈り、皇籍離脱後も皇室活動への協力を委嘱する案だ。だが公務の担い手不足をある程度解消できても、皇位の安定継承にはつながらない。

 終戦後に皇籍を離脱した旧宮家から男系男子の子孫を皇室に迎える案もあるが、70年以上も民間にいる旧宮家から人を招いたとしても、国民に皇族として受け入れられるか、疑問を拭えない。

 政府にとっては皇女制度の創設が最も無難と映るかもしれないが、その場しのぎの策にしかならない。20年の共同通信世論調査では女性天皇賛成が85%、女系天皇賛成は79%に上っている。ただし女性皇族の結婚が相次げば、選択肢は細っていく。それを踏まえ、議論を尽くす必要がある。





皇位継承策 国民に開かれた議論必要(2021年3月30日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 安定的な皇位継承の在り方を議論する政府の有識者会議の初会合が開かれた。皇族の数が減少する中で象徴天皇制をどう維持していくのか。国民の総意を導き出すには、開かれた議論を進める必要があろう。幅広い意見を基に論点を整理し、これからの時代にふさわしい皇室制度を追求してもらいたい。

 有識者会議は学者や経済人ら6人で構成。さまざまな専門分野や経歴を持つ男女3人ずつで、年齢も40~60代と多様な顔触れとなった。今後、20人ほどの専門家から意見を聴取し、議論をまとめる。

 現行の皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く男系の男子が皇位を継承する、と定める。現在、資格があるのは、秋篠宮さま(55)と長男悠仁さま(14)、上皇さまの弟の常陸宮さま(85)の3人。このままでは、皇統の維持が難しくなる。

 会議では、女性天皇や、父方に天皇の血を引かない女系天皇の是非が主な論点となる。共同通信社が昨年実施した世論調査では、女性天皇賛成派が85%、女系天皇賛成派も79%に上った。多くの世論が支持していると言えよう。

 ただ、自民党内などの保守派には「女系天皇の容認は、日本の伝統を破壊する」として、男系維持を求める声が根強い。終戦直後に皇籍を離れた旧宮家の男系男子子孫の復帰を望む声もある。

 未婚の女性皇族6人の、結婚後の身分についても議論する。皇室典範は皇族以外の者と結婚したときは皇籍を離れると定めており、近い将来、公務の担い手が不足しかねない。

 引き続き皇室にとどまる「女性宮家」の創設が案に上がるが、保守派は女性・女系天皇につながるとして拒否反応を示す。結婚後の女性皇族に「皇女」の尊称を贈り、皇籍離脱後も公務への協力を委嘱する案もあるが、野党には「その場しのぎだ」といった否定的な意見が多い。

 明確に対立する意見を集約させるのは容易ではない。だからこそオープンな場での議論が欠かせないが、初会合では会議を非公開とし、2週間後をめどに要点をまとめた議事記録を発言者名を付けずに公開すると決めた。国民一人一人が象徴天皇制に向き合い、皇室の在り方を考える機会にするためにも、議論の過程まで明らかにすべきではないか。

 今回の有識者会議は、2017年に安倍政権下で成立した天皇退位特例法に伴う国会の付帯決議を受けて設置された。決議から4年近くを経ての設置はあまりに遅いと言わざるを得ない。

 保守派の反発を警戒し議論に消極的だった安倍政権の姿勢は、菅政権にも継承されているようだ。政府内には明確な結論提示を見送るべきだとの声もある。

 だが、無策をこれ以上続ければ、女性・女系天皇を認めようにも対象者がいない、という事態にもなりかねない。秋までに総選挙も実施されるが、政治とは切り離し、積極的かつ冷静な議論を重ねてほしい。





【皇位継承策】将来見据え議論を進めよ(2021年3月29日配信『高知新聞』-「社説」)

 安定的な皇位継承策を検討する政府の有識者会議の初会合が開かれた。早急な検討を求めた国会の付帯決議から4年、上皇さまの天皇退位から2年近く。先送りされてきた議論がようやく始まった。

 皇位継承の次世代の有資格者は秋篠宮さまの長男、悠仁さま(14)のみで、危機的な状況とされる。

 象徴天皇制をどう維持していくかは、日本という国のあり方の根幹に関わる。皇位継承策は立場によって意見が割れるが、国民が納得できる結論を目指して、議論を進める必要がある。

 有識者会議は男女同数の6人で構成され、皇室制度の専門家から意見聴取する10項目を確認した。政府は数カ月かけて論点を整理した上で国会に報告し、各党の意向も踏まえて意見集約を目指す考えだ。

 皇室典範では、父方に天皇の血を引く男系の男子のみが皇位につくと定めている。皇族の女性が皇位につく「女性天皇」や、父方に天皇の血を引かない「女系天皇」は認めていない。現行制度を見直すかどうかが大きな論点になる。

 「男系維持」は自民党内などの保守派が強く主張している。菅義偉首相も「男系継承が古来、例外なく維持されてきた重み」として、見直しに慎重な姿勢を崩していない。


 ただ、国民の間では女性・女系天皇への支持が広がっている。共同通信社が2020年春に実施した世論調査では、女性天皇賛成派が85%、女系天皇賛成派は79%に上った。

 立場によって意見は割れており、集約は難航が予想される。既に政府内では、現在の継承順位を維持した上で、明確な結論提示は見送るべきだとの声が出ている。

 しかし、それでは問題のさらなる先送りになろう。皇室制度の危機的状況を長引かせることにつながる。

 皇族が減るなか、公務をどう分担し、皇室活動を維持するか。この点も喫緊の課題になっている。

 皇室典範は天皇、皇族以外と結婚した女性皇族は皇籍を離れると定める。天皇陛下の長女、愛子さま(19)、秋篠宮さまの長女、眞子さま(29)、次女の佳子さま(26)も皇族でなくなる可能性がある。

 このままでは、皇位継承の重責も皇室活動の負担も悠仁さまに集中しかねない状況が懸念される。公務の担い手を確保する方策が急がれる。

 国会の付帯決議では、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」創設を検討するよう求めている。

 ただ、保守派は将来の女性・女系天皇につながるとして、女性宮家創設にも拒否反応が強い。

 一方、有識者会議では旧宮家(旧皇族)男系男子子孫の皇籍復帰の是非も意見聴取の項目に含まれた。保守派の「宿願」といわれるが、共同通信社の世論調査では、旧宮家の皇籍復帰への賛成は28%にとどまる。

 論点はさまざまあり、開かれた形で議論を深める必要がある。菅首相は強い危機感を持って取り組み、多くの国民に支持される皇室制度の将来像を示す責任を負っている。





皇位継承問題 先送りせず議論進めよ(2021年3月27日配信『中国新聞』-「社説」)

 政府はどこまで本気で取り組むつもりなのだろうか。

 安定的な皇位継承の議論へ向け、政府は有識者会議の初会合を開いた。次世代に限れば皇位継承者が悠仁さましかいない上、皇族が確実に先細る危機的な現状を踏まえて論点を整理、意見集約を目指すという。

 だが、有識者会議で議論する内容は、以前から課題と指摘されてきたものばかりだ。

 2005年11月には当時の小泉純一郎政権の有識者会議が女性、女系天皇を容認する報告書をまとめた。旧民主党政権も12年に女性宮家の創設を柱とする論点整理を公表している。

 皇位継承権を女性や女系にも拡大することや女性宮家創設、皇族数減少への対応などはこれまでも政権や専門家による一定の解釈ができている。

 単純な論点整理に終始するなら屋上屋を重ねるに等しい。有識者会議は、政府が提示する結論に対して、国民合意をどう得ていくかなどの手法も議論していくべきではないか。

 共同通信が昨春実施した世論調査では、皇室に対し「大いに関心がある」「ある程度関心がある」が75%に上っている。

 天皇は憲法で定められた国民統合の象徴である。その地位は主権の存する国民の総意に基づくとされる。

 政府は国民がもっと関心を深めるよう努めるべきだろう。制度を改める場合には国民が違和感なく受け入れられるよう議論を尽くさなくてはならない。

 にもかかわらず、加藤勝信官房長官は結論をまとめる時期さえも明言していない。政権として腰が引けていると言われても仕方あるまい。

 安定的な皇室の在り方を模索できる時間はあまり残されていない。現在の皇室は18人。皇位継承者は秋篠宮さまと長男悠仁さま、ご高齢の常陸宮さまの3人だけだ。30代以下の未婚の皇族は7人いるが、悠仁さまを除けばいずれも女性で、結婚すれば皇籍を離脱する。

 天皇陛下の外国訪問の場合などは今は秋篠宮さまが臨時代行を務める決まりだ。だが、将来は代行する皇族さえいなくなっていることも想定される。

 公務は閣議決定の署名だけでも年千件ほどある。大使への面会や外国要人との親交など皇室は多忙だ。女性宮家の創設、旧宮家の皇族復帰、国事行為を含めたご公務を大幅に減らすなどの結論も急ぐべきだ。

 王室同士の結婚も多かった欧州は王位継承時に外国から干渉されることも多く、古くは男子継承が一般的だった。しかし、男女同権の発想から今は長子継承が主流になっている。

 日本の皇室とも親しい英国のチャールズ皇太子は即位すれば母のエリザベス女王から生まれた典型的な女系国王になる。

 平成の天皇陛下が退位を実現するために制定された特例法の付帯決議は、「安定的な皇位継承策などを速やかに検討するよう」に政府に求めていた。

 それから4年近く議論が進まなかったのは、当時の安倍晋三政権が継承策を決めるのは「40年先でいい」と意見集約を放置してきたからだ。

 安倍政権を支えてきた菅義偉首相は明確な結論を取りまとめて国民の総意を得る責任がある。これ以上、結論を先延ばしにはできない。





皇位の継承策 国民に開かれた議論を(2021年3月26日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 安定的な皇位継承策について話し合う政府の有識者会議の議論が始まった。

 上皇さまの天皇退位を実現した特例法の付帯決議は、皇位継承策を速やかに検討し、国会に報告するよう政府に求めていた。それから4年、退位から2年近い。議論の先送りであり、国会の軽視だ。

 皇位継承者は、秋篠宮さまと長男悠仁さま、上皇さまの弟である常陸宮さまの3人だけである。次世代の資格者は悠仁さま1人だ。憲法1条が規定する「象徴天皇制」を維持していくのなら、継承論議は避けられない。

 有識者会議は幅広く外部の意見を採り入れる姿勢が必要だ。初会合では会議を非公開とし、要点をまとめた議事記録のみを公開していくことを決めた。発言者名もつけない。これでは不十分だ。

 憲法は「(天皇の)地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく」と規定する。国民が皇室のあり方について考えていく必要がある。議論を全て国民に公開することを求める。

 大きな論点は、現在は男系男子に限られている継承資格を、女系・女性に広げるかどうかだ。

 2005年に皇位継承策を議論した小泉純一郎政権の有識者会議は、女性天皇と女系天皇を容認する報告書を提出した。その後、秋篠宮妃紀子さまの懐妊が判明し、皇室典範改正案の国会提出が見送られた経緯がある。悠仁さまが誕生して危機感が薄れ、議論そのものが放置されてきた。

 世論は女系・女性への資格拡大を支持している。共同通信社の昨年の調査では女性天皇賛成が85%、女系は79%に上っている。

 自民党の保守派には「女系天皇は日本の伝統を破壊する」として、男系の維持を求める意見が根強い。戦後に皇籍を離れた旧皇族の男系男子子孫の皇籍復帰を求める声もある。国民の理解を得られるのか、慎重に見極めていく必要があるだろう。

 政府内には保守派に配慮し、現在の継承順位を維持した上で、結論の提示を見送るべきだとの声も出ている。結論を出さないなら政府の責任放棄だ。

 天皇・皇族以外と結婚した女性皇族は、皇籍を離れると定められている。政府の無策が今後も続けば、十数年後には、女性・女系を認めようとしても対象者がいなくなる可能性がある。

 時間は多く残されていない。政府と会議だけでなく、国民一人一人が象徴天皇制の意味と役割に向き合い、考えていきたい。





有識者初会合 安定的な皇位継承へ議論急げ(2021年3月24日配信『読売新聞』-「社説」)

 皇位継承や公務の分担は今後どうあるべきか。皇族の数が減少する中、具体的な方策の検討を急がねばならない。

 安定的な皇位継承策を話し合う有識者会議の初会合が開かれた。学者や経済人ら6人が皇室制度や歴史の専門家から聞き取りを重ね、議論をまとめる。

 座長には、日本私立学校振興・共済事業団理事長の清家篤氏が選ばれた。幅広い意見を反映させる狙いから、メンバーは女性が3人と半数を占めており、40歳代の若い世代も含まれている。

 菅首相は、会議冒頭のあいさつで「国家の基本に関わる極めて重要な事柄だ。政府として、議論を踏まえてしっかり対応する」と述べた。国民の理解を得られるよう、議論を深めてもらいたい。

 皇室典範は、父方が天皇につながる男系男子が皇位を継承する、と定めている。平成から令和への代替わりで、継承権を持つのは秋篠宮さまと悠仁さま、常陸宮さまの3人にまで減った。

 会議では、女性皇族が結婚した後も皇室にとどまる「女性宮家」の創設や、公務の負担軽減策などが議論されるとみられる。

 皇室は、天皇陛下や上皇さま、他の皇族方の計18人からなる。このうち未婚の女性皇族は6人で、結婚すると皇籍を離脱する定めだ。このまま皇族が減少すれば、近い将来、皇室の活動に差し障りが出るのは間違いないだろう。

 平成の天皇陛下の退位を実現するために制定された特例法の付帯決議は、安定的な皇位継承策や女性宮家の創設などの検討を政府に求めている。代替わりに伴う一連の行事が終了した今、議論をこれ以上、先延ばしにはできまい。

 女性宮家については、「将来の女性・女系天皇に道を開く」として慎重な意見も根強い。歴史上8人の女性天皇がいるが、いずれも男系で、女系天皇は例がない。

 女性宮家として認める皇族女子の対象をどこまで広げるか、その夫や子を皇族とするかどうか、といった論点もある。いずれも賛否の対立が鋭く、一つの結論を出すのは容易ではない。

 男系男子による皇位継承を重んじる保守派からは、戦後に皇籍を離れた旧宮家の男系男子の復帰を望む声もある。いずれにしても皇室典範の改正などが必要になるため、議論は難航が予想される。

 しかし、結論を先送りしているうちに皇族の先細りが続けば、天皇制の存続自体が危ぶまれる。将来を見越して、今から冷静に議論を重ねることが大切である。



時代に合った皇室へ議論を(2021年3月24日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 安定的な皇位の継承のあり方を検討する有識者会議の初会合が開かれた。皇族数が減るなかで、皇室制度をどう維持するか。菅義偉首相が述べた通り「国家の基本に関わる極めて重要な事柄」だ。

 安定的な皇位継承策を話し合う有識者会議の初会合であいさつする菅首相(23日午後、首相官邸)
幅広く意見を集めて、論点を整理し、多くの国民が納得する内容へ導いてもらいたい。

 有識者会議ではまず、父方に天皇の血を引く男系の男子のみが皇位につく今の制度を保つのかどうかが大きな論点になろう。

 現在、皇位継承の資格のある皇族は55歳の秋篠宮さま、14歳の悠仁さま、85歳の常陸宮さまの3人。このままでは、遠からぬ将来、皇統の維持がかなり難しくなることも予想される。

 各種の世論調査では、国民の多くが皇族の女性が皇位につく女性天皇や、父方に天皇の血を引かない女系天皇を肯定的に受け止めている。一方で、女系天皇には保守層から強い反発があり、戦後に皇籍を離れた旧宮家の男系男子の復帰を求める声も根強い。

 意見の隔たりから取りまとめは難航が予想される。開かれた議論で、国民の総意をまとめる姿勢が大切だろう。

 有識者会議では、現在6人いる未婚の女性皇族の結婚後の身分についても話し合われる。現行では皇室を離れねばならず、それに伴い公務の担い手が減るおそれが指摘されている。

 引き続き皇室に残ることができるよう「女性宮家」を創設する案のほか、特別な資格や肩書で活動を続ける制度などが検討されるとみられる。国民と皇室との距離が広がらないような仕組みづくりが求められている。

 今回の有識者会議は2017年に成立した皇室典範特例法の付帯決議を受けて設置されたものだ。4年近くが過ぎ、この間、日本社会もさまざまな面で多様性を重んじる流れが強まっている。

 伝統を十分に踏まえつつ、皇室と国民の将来を見据えた、新たな時代にふさわしい制度をめざしてほしい。





皇位継承問題/議論を先延ばしにするな(2020年11月16日配信『神戸新聞』-「社説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順で1位の皇嗣(こうし)の地位に就いたことを内外に示す「立皇嗣の礼」が、皇居・宮殿で催された。昨年4月からの代替わり儀式はこれですべて終了した。

 政府は今後、安定的な皇位継承策の検討を本格的に始めることになる。上皇さまの生前退位を可能にした特例法の付帯決議で、衆参両院が速やかな検討と報告を求めたが、既に3年以上が経過しており、とりまとめを急がねばならない。

 ところが、政府内では結論提示を見送る考えが拡大しているという。議論の焦点となる女性・女系天皇容認や女性宮家創設に、自民党の保守派などの反対が根強いためだ。

 菅義偉首相は「先延ばしできない重要な課題」と述べている。それなら、自ら先頭に立って議論を前に進めるべきである。

 皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く男系男子が皇位を継ぐと定めている。現在、資格を持つのは秋篠宮さまと長男悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの3人だけだ。

 立皇嗣の礼の中心儀式に立ち会った成年皇族のうち、男性は84歳の常陸宮さま1人だった。皇室では秋篠宮さまから悠仁さままで41年間も男子が誕生しておらず、改めて危機的な状況をあらわにしたといえる。

 事態を打開するために提起されたのが、女性・女系天皇に道を開く考え方である。小泉政権時の2005年、「皇位の安定的な継承を維持するためには不可欠」とする報告書を有識者会議がまとめた。

 さらに野田政権は、女性皇族が結婚後も皇室に残れる「女性宮家」の創設によって、当面の皇族の減少に対応する方策を打ち出した。

 国民の理解も広がってきた。

 共同通信が今年3~4月に実施した世論調査では、85%が女性天皇に賛成し、母方に天皇の血筋がある女系天皇への賛成も79%に上った。

 女性宮家創設にも、多くの人が前向きの受け止め方をしている。

 しかし、保守層を支持基盤とした安倍晋三前首相は女性・女系に否定的とされ、約8年の在任中、ほとんど議論が進まなかった。

 確かに天皇制は男系で継承されてきた。ただ、保守派が重視する男系の「伝統」とは異なる研究成果もある。過去に母親も天皇だった例が複数あり、河西秀哉名古屋大大学院准教授は、男系・女系にこだわらない「双系」だったとの見方を示す。

 求められるのは、今の時代にふさわしい皇室像を描く、国民的な議論だろう。「慎重かつ丁寧に行う必要がある」(菅首相)のは当然だが、いたずらに時間をかければ、今後の女性皇族の結婚離脱などで、さらに厳しい状況を招く恐れがある。





皇位継承の今後 議論を前に進めるべきだ(2020年11月12日配信『新潟日報』-「社説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)の地位に就いたことを国内外に示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」が8日、催された。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響で4月の開催予定が延期されていた。平成から令和への代替わりとなる儀式が、これで無事幕を閉じた。心から祝福したい。

 秋篠宮さまは中心儀式の「立皇嗣宣明の儀」で、「皇嗣としての責務に深く思いを致し、務めを果たしてまいりたく存じます」と天皇、皇后両陛下を前に決意を述べられた。

 皇嗣としての重責を担う覚悟を改めて示したものだろう。兄の天皇陛下とともに新たな時代の皇室を築くことを願う。

 天皇陛下は昨年の即位に当たり、国民に寄り添い、地方の人々や社会的弱者にも丁寧に目配りしてきた上皇さまを範とし、国民統合の象徴としての責務を果たすことを誓われた。

 秋篠宮さまも国民に寄り添う姿勢を大切にしてきた。

 ウイルス禍により各種行事の出席など皇室の活動は制限されている。

 こうした中でも、秋篠宮さまは紀子さまとともに、オンラインを積極的に活用し、新型ウイルスの社会的影響を識者から聞いたり、リモートでの「地方訪問」を行ったりしてきた。

 困難な状況にあっても、国民とのつながりを保とうとの強い意志がうかがえる。

 代替わり行事を終え、気掛かりなのは皇室の今後である。

 皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く男系男子が皇位を継ぐと規定している。

 現状では陛下より若い皇位継承資格者は、弟の秋篠宮さまと、秋篠宮さまの長男で14歳の悠仁さまの2人だけだ。

 このままでは悠仁さまに皇室の存続がかかる。結婚、出産に関わる大変な重圧を背負うことになろう。

 上皇さま一代限りの退位を認めた2017年の皇室典範特例法の付帯決議は、皇位継承策の速やかな検討を政府に求める。

 政府は立皇嗣の礼が終わった段階で検討するとしてきたが、ここに来て結論提示の見送り論が強まっている。

 国論が分かれ、明確な案をまとめるのは時期尚早との判断に傾いているという。

 結婚後も女性皇族が皇室に残る「女性宮家」の創設など、皇族数の減少対策についても展望が見えない。

 自民党内などの保守派から異論が強いという事情もあるようだが、共同通信の世論調査では皇位継承で女性・女系を容認する声は約8割にも上る。

 女性宮家創設についても7割近くが賛成している。

 皇位継承策の焦点は、男系を維持するのか、それとも女性・女系天皇を容認するかに絞られている。

 議論を棚上げしては、皇統の維持が不安定な状況は変わらず、無責任に過ぎよう。

 新たな時代にふさわしい皇室の在り方を導き出すため、議論を前に進めねばならない。





立皇嗣の礼 皇位継承考える契機に(2020年11月11日配信『中国新聞』-「社説」)

 コロナ禍で半年余り先送りされていた「立皇嗣(りっこうし)の礼」が、皇居で行われた。秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣に就いたことを内外に示す儀式で、昨年から続く国事行為としての天皇代替わり行事は幕を閉じた。

 これを受けて、政府はようやく安定的な皇位継承策の本格検討に乗り出す。2017年6月に成立した退位特例法の付帯決議で、皇族の年齢から考えて「先延ばしすることはできない重要な課題」だと、くぎを刺されていた。加えて速やかな検討と結果の国会報告が求められた。にもかかわらず、政府は3年余り事実上放置していた。

 憲法で定められた国民統合の象徴である天皇に関する大事な問題だ。しかも象徴天皇の地位は主権の存する国民の総意に基づく、と定められている。つまり私たちこそ象徴天皇の望ましい姿を選択できると言えよう。そう意識した上で、皇位継承の在り方を考えるきっかけにしなければならない。

 菅義偉首相は国会で「決議の趣旨を尊重して対応したい」と答弁した。しかし、この期に及んでも政府は及び腰のようだ。男系天皇を維持するのか、それとも女性・女系天皇を容認するのか。意見が対立するとみて、結論提示を見送る考えが政府内で強まっているという。

 皇位継承は今、危機的状況にある。皇室典範では、男系男子が継ぐことになっているが、若い世代は、秋篠宮さまの長男の悠仁(ひさひと)さましかいないからだ。

 皇族の先細りも気になる。皇室典範は、女性皇族が天皇、皇族以外と結婚したら皇籍を離れると定めている。近い将来、天皇陛下の長女愛子さまや、秋篠宮さまの長女眞子さま、次女佳子さまが皇籍を離れる可能性がある。皇室として公務が十分果たせなくなるのではないか。

 先細りを防ぎつつ、皇位継承の選択肢を増やすことにもなる策として、女性宮家の創設も、付帯決議に盛り込まれている。

 しかし強い反対がある。女性宮家は、女性・女系天皇容認につながりかねないというのだ。男系維持を掲げ、旧宮家(旧皇族)の男子に皇籍を与える案を主張する自民党の保守系議員である。前の安倍政権はそうした議員を支持基盤としていたため、議論を先送りしてきた。

 しかし旧宮家は戦後70年以上、皇籍を離れて民間人として生活してきた。今になっての皇籍復帰に、国民の理解が得られるだろうか。

 共同通信が今春実施した世論調査では、復帰反対は70%と、賛成の28%を大きく上回った。

 逆に女性天皇と、母方に血筋のある女系天皇への理解は進んでいる。女性天皇容認に「賛成」「どちらかといえば賛成」は85%に達した。女系天皇には79%が賛成の意向を示した。

 そんな考えは自民党からも聞こえてくる。二階俊博幹事長は4年前「女性尊重の時代に天皇陛下だけ女性は適当ではないというのはおかしい」と指摘。今年8月には、河野太郎防衛相(当時)が「男系維持はかなりのリスクがある」と女系天皇を容認する考えを示している。

 伝統を尊重しつつも、時代の流れに合わせて、どう変化させていくべきか。もう先送りは許されない。政府は国民の理解が得られるよう、開かれた議論を重ねなければならない。



皇位継承論議(2020年11月11日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆国民的な議論喚起すべきだ◆

 秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)になられたことを内外に示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」が皇居で行われた。昨年4月末の天皇退位から続く代替わり儀式の締めくくりで、政府はこれを受け安定的な皇位継承のために方策の検討に着手するとしている。

 皇室典範は、父方が天皇の血筋である男系男子が皇位を継承すると定め、女性や母方が血筋の女系は認めていない。しかし現在の有資格者は秋篠宮さま、秋篠宮さまの長男悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの3人。男系維持は厳しい状況にある。

 報道各社の世論調査では、女性・女系天皇を容認する声が広がりを見せる。一方、自民党内の保守派は男系維持を前面に掲げ、旧宮家の男子が現皇族の養子になれるよう立法措置を求める動きも出ている。女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設を巡っても、女系天皇につながると警戒する。

 安倍晋三前首相に続いて、菅義偉首相も「男系継承の重み」を強調する。時の政権、与党の意向が影響するのは避けられないだろう。そうした中で「天皇の地位は国民の総意に基づく」とする憲法を踏まえ、世論をしっかりと反映できるかが問われることになるだろう。

 皇位継承を巡る論点はほぼ出尽くしている。2005年11月、当時の小泉純一郎首相の下で有識者会議が女性・女系天皇を容認し、男女を問わず長子を優先するとの報告書をまとめた。政府は皇室典範改正に動きだしたが、06年2月に秋篠宮妃紀子さまの懐妊が明らかになり、改正論議はあっという間にしぼんだ。

 12年10月に民主党政権は女性宮家を創設する案を柱に論点整理を公表。典範改正を目指したが、直後の衆院選で民主党は大敗。議論は進んでいない。

 17年6月に成立し、上皇さまの退位を実現させた退位特例法の付帯決議で、国会は政府に対して、安定的な皇位継承や女性宮家について退位後速やかに検討して報告するよう求めた。しかし、退位から既に1年半余りが過ぎている。

 河野太郎行政改革担当相は以前に「男系を維持していくにはかなりリスクがある」とし、女系天皇についても検討すべきだとの考えを示した。自民党の二階俊博幹事長も「男女平等、民主主義の社会を念頭に置いて考えていけば、おのずから結論は出る」とするなど党内にもさまざまな意見がある。議論をこれ以上先送りすべきではない。

 政府は安定的な皇位継承や女性宮家創設などについて昨秋以降、10人以上の有識者から非公式にヒアリングをした。その結果も含め論点整理を公表し、国民的な議論を喚起すべきだ。



[皇位継承論議] 国民の声を尊重したい(2020年11月11日配信『南日本新聞』-「社説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)の地位に就いたことを内外に示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」が皇居で行われ、秋篠宮さまは「皇嗣としての責務に深く思いを致し、務めを果たしてまいりたく存じます」と述べられた。

 昨年4月の上皇さまの「退位礼正殿の儀」から続く国事行為としての代替わり儀式は全て終わった。これを受けて政府は安定的な皇位継承に向けた本格的な検討に着手する。

 女性を含め皇族数は減り、皇室活動の維持も危ぶまれている。政府は「天皇の地位は国民の総意に基づく」とする憲法を踏まえ、国民の意向を尊重した皇室像を示してほしい。

 皇室典範は、父方が天皇の血筋を引く男系男子が皇位を継ぐと定め、女性と、母方に血筋のある女系は認めていない。現在の有資格者は継承順に秋篠宮さま、秋篠宮さまの長男悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの3人だけである。次世代に限れば、悠仁さま1人だけになり、男系の維持は厳しい。

 皇位継承を巡っては2005年11月、小泉純一郎首相の下で有識者会議が女性・女系天皇を容認するとの報告書をまとめた。だが、06年2月、秋篠宮妃紀子さまの懐妊が明らかになり、皇室典範改正論議は立ち消えになった。

 さらに17年6月、国会は上皇さまの天皇退位を実現させた特例法の付帯決議で皇位継承策の速やかな検討と報告を政府に求めた。だが、その後、目立った進展は見られない。

 今年3~4月に実施された共同通信社の世論調査では女性天皇に85%が賛成の立場で、女系天皇にも79%が賛成の意思を示した。女性の活躍が進む時代を反映した結果と言えるだろう。

 一方、自民党内などの保守派には男系維持を求める声が根強く、戦後、皇室を離れた旧宮家の男子を皇族に復帰させる案も挙がる。

 ただ、同党内にもさまざまな意見がある。河野太郎行政改革担当相や甘利明党税制調査会長は以前、女系天皇について検討、または容認すべきだとの考え方を明らかにしている。意見集約が難しいからといって、結論の提示を見送ってはなるまい。

 皇族減少対策でも12年10月、当時の民主党政権は、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる女性宮家の創設案を柱に論点整理した。しかし、直後の衆院選で大敗し、議論は進んでいない。

 先の世論調査では女性宮家の創設に66%が賛成だった。菅義偉首相も官房長官時代の今年2月、皇族数減少について「先延ばしできない重要な課題」と、前向きな姿勢を示している。

 政府は昨秋から10人以上の識者から非公式にヒアリングを実施した。その結果を含めて論点を公表して国民の関心を喚起し、皇室の在り方に道筋を付けていかなければならない。





皇位継承問題 議論への着手速やかに(2020年11月8日配信『北海道新聞』-「社説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣(こうし)になったことを国内外に示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」がきょう、皇居・宮殿で行われる。

 政府は天皇代替わりの儀式の締めくくりと位置づける。終了後は先送りしてきた安定的な皇位継承策の議論に着手する方針だ。

 皇室典範は皇位継承資格者を男系男子に限る。天皇陛下より若いのは54歳の秋篠宮さまと14歳の長男悠仁(ひさひと)さまの2人だけだ。安定的な継承を考えれば、議論をこれ以上先送りすることはできない。

 憲法の規定では、天皇の地位は国民の総意に基づく。皇位継承策の議論は国民の幅広い理解と合意のうえに、丁寧に積み重ねていくことが必要だ。

 2017年に天皇退位特例法が成立した際、国会は付帯決議で皇位継承などの議論を退位後速やかに行うよう政府に求めた。皇室の今後に強い危機感を持ったからに他ならない。

 だが、保守層を支持基盤とした安倍晋三政権のもとで、議論は棚上げされ進まなかった。

 ただ菅義偉首相は4日の衆院予算委員会で「決議の趣旨を尊重し対応したい」と述べた。議論に前向きだととらえたい。

 各種世論調査をみると、国民の多くは議論の進展を望んでいる。積極的に取り組み、方向性を迅速に出すことは政治の責務だ。

 皇位継承を巡っては、女性天皇や、父方が天皇の血筋につながらない女系天皇に広げる考えと、男系男子にこだわる保守層の意見との隔たりは大きい。

 政府は女性皇族が結婚後も皇室に残る女性宮家の創設の是非を軸に検討する方向だという。

 これでは皇位継承問題の抜本的な解決策にはならないと指摘する専門家もいる。国民の意向をくんでいるとも言えない。

 政権・与党内からも、女性・女系天皇を容認するような考え方が出てきている。

 河野太郎行政改革担当相は「現皇室で男系を維持していくには、かなりのリスクがある」と述べた。自民党の二階俊博幹事長も女性・女系天皇の容認に前向きな姿勢をにじませる。

 議論を進める土壌はできつつあるのではないか。

 現在の皇室は皇位の継承に加え、皇族減少で公務の担い手不足が深刻になってきている。議論すべき課題は山積している。

 政府は有識者ばかりでなく、国民の声にも十分に耳を傾け、開かれた議論を展開してほしい。



皇嗣の覚悟(2020年11月8日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

秋篠宮夫妻が結婚生活を始めた新居は木造モルタル平屋建て延べ床面積105平方メートル。築約60年のたたずまいだった

▼「子供たちが小さい頃に遊び回っていたことを想い起こし懐かしく感じました」、「またあちらの家で住みたい、と娘たちが話していたこともありましたね」。結婚25年で発表した文書には夫妻のつつましやかな生活への郷愁の思いもにじむ(「天皇交代 平成皇室8つの秘話」講談社)

▼皇太子時代の天皇陛下とは対照的に、秋篠宮さまが天皇観などについて積極的に発言する機会は多くはなかった。研究などに励むことで「長男の領域」に踏み込まない「次男の節度」を守ったと、同著の執筆者の1人、江森敬治さんは推し量る

▼秋篠宮さまが皇嗣になったことを宣言する「立皇嗣の礼」がきょう皇居で行われる。次の天皇となる皇太子ではなく、あくまで皇位継承順位が1位の皇嗣となることを示す異例の儀式は秋篠宮さまの意向も踏まえた

▼上皇さまの生前退位や41年ぶりの皇室男子となる悠仁さま誕生で秋篠宮家はいや応なく「長男の領域」に関わることになった。皇位継承制度では当事者意見を聞く過程も必要と踏み込み、大嘗祭(だいじょうさい)は「宗教色が強いものを国費で賄うことが適当か」と疑問を投げかけた

▼しっかりと議論を深めようということだろう。その覚悟に政府や国会は向き合っているのか。国民の意識も問われる。



皇位継承論議 憲法踏まえ世論反映を(2020年11月8日配信『茨城新聞』-「論説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順1位の皇嗣(こうし)になられたことを内外に示す「立皇嗣(りっこうし)の礼」が8日、皇居で行われる。4月の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大により延期された。昨年4月末の天皇退位から続く代替わり儀式の締めくくりとなり、政府はこれを受けて安定的な皇位継承のために方策の検討に着手するとしている。

 皇室典範は、父方が天皇の血筋である男系男子が皇位を継承すると定め、女性や母方が血筋の女系は認めていない。しかし現在の有資格者は秋篠宮さま、秋篠宮さまの長男悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの3人。次世代に限れば悠仁さま1人だけとなり、男系維持は厳しい状況にある。報道各社の世論調査では、女性・女系天皇を容認する声が広がりを見せている。一方、自民党内の保守派は男系維持を前面に掲げ、旧宮家の男子が現皇族の養子になれるよう立法措置を求める動きも出ている。皇族の減少に対応するため、女性皇族が結婚後も皇室にとどまる「女性宮家」創設を巡っても、女系天皇につながると警戒する。

 安倍晋三前首相に続いて、菅義偉首相も「男系継承の重み」を強調している。時の政権、与党の意向が影響するのは避けられないだろう。そうした中で「天皇の地位は国民の総意に基づく」とする憲法を踏まえ、オープンな議論により世論をしっかり反映できるかが問われることになろう。

 皇位継承を巡る論点はほぼ出尽くしている。2005年11月、当時の小泉純一郎首相の下で有識者会議が女性・女系天皇を容認し、男女を問わず長子を優先するとの報告書をまとめた。政府は皇室典範改正に動きだしたが、06年2月に秋篠宮妃紀子さまの懐妊が明らかになり、改正論議はあっという間にしぼんだ。

 皇族減少対策も課題となり、12年10月に民主党政権は女性宮家を創設する案を柱に論点整理を公表した。典範改正を目指したが、直後の衆院選で民主党は大敗。安倍政権になって以降、いずれの議論も進んでいない。

 17年6月に成立し、上皇さまの退位を実現させた退位特例法の付帯決議で国会は政府に対し、安定的な皇位継承や女性宮家について退位後速やかに検討して報告するよう求めたが、退位から既に1年半余りが過ぎた。

 安倍前首相は一時、戦後に皇籍を離脱した旧宮家の皇族復帰を選択肢に挙げたが、女性宮家の議論に深入りせず、先送りしてきた。旧宮家復帰については、70年以上も民間にいた人を国民が皇族として受け入れられるのかという疑問もあるが、きちんと検討が加えられたことは一度もない。

 河野太郎行政改革担当相は以前に「男系を維持していくには、かなりリスクがある」とし、女系天皇についても検討すべきだとの考えを示した。自民党の二階俊博幹事長も「男女平等、民主主義の社会を念頭に置いて考えていけば、おのずから結論は出る」とするなど党内にもさまざまな意見があり、議論をこれ以上先送りすべきではない。

 政府は安定的な皇位継承や女性宮家創設などについて昨秋以降、10人以上の有識者から非公式にヒアリングをした。その結果も含め、早急に論点整理を公表し、国民的な議論を喚起すべきだ。その上で、国民の総意を見極め、反映させていく道筋を示す必要がある。



立皇嗣の礼 天皇陛下支える大切な役割(2020年11月8日配信『読売新聞』-「社説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣であることを示す「立皇嗣の礼」が今日、皇居・宮殿で行われる。代替わりの一連の行事を締めくくる儀式である。心からお祝いしたい。

 憲法上の国事行為であり、天皇陛下が皇嗣の地位を内外に宣言される「立皇嗣宣明の儀」、秋篠宮さまが陛下にあいさつされる「朝見の儀」からなる。

 本来は4月の予定だったが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、延期されていた。

 参列者を絞り、国内外の要人らを招く「宮中饗宴きょうえんの儀」は行わない。感染防止に努めながらの実施は適切な判断と言えよう。

 天皇陛下は、平成時代の皇太子となった際、その地位を公にする「立太子の礼」で役割への自覚がより強くなった、と振り返られている。皇嗣の秋篠宮さまも同様の思いを抱かれるのではないか。

 これまでも秋篠宮家の当主として、数々の公務を果たされてきた。コロナ禍についても、オンラインで多くの識者の話を聞き、国民に心を寄せてこられたという。生物学に精通され、「ナマズの殿下」としても親しまれている。

 令和の皇室では、皇嗣として兄の陛下を支える役割を担われる。継承順位2位の悠仁さまの父でもある。教育のあり方など、考えを深められる場面も少なくあるまい。重責に思いを巡らしたい。

 皇室典範は男系男子による皇位継承を定めており、継承権を持つのは秋篠宮さま、悠仁さま、常陸宮さまの3人にとどまる。皇位継承を巡る議論は、立皇嗣の礼の延期に伴い、先送りされてきたが、真摯しんしに取り組むべき課題だ。

 国会は、退位特例法の成立時、安定的な皇位継承策、皇族女子が結婚した後も皇室に残れる「女性宮家」の創設などを速やかに検討するよう、政府に求めた。

 菅首相は官房長官時代から「男系継承が古来例外なく維持されてきた重み」を踏まえながら、対応する考え方を示している。丁寧な論議が必要になろう。

 今後、皇族女子が結婚すると、皇族数がさらに減少する事態が懸念される。女性宮家の創設については、将来の女系天皇につながるとの議論もあるが、公務分担の観点から、なるべく早期に結論を出すべきではないか。

 将来にわたり、敬意が保たれる皇室像を考えなければならない。小泉内閣時代から幾つかの具体案が検討され、すでに論点は整理されている。国民の理解が得られる方向性を示してもらいたい。



皇室めぐる課題に早く着手を(2020年11月1日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 秋篠宮さまが皇位継承順位1位の皇嗣となられたことを内外に示す「立皇嗣の礼」が8日、行われる。当初は4月の予定だったが、コロナ禍で延期されていた。皇嗣としての活動を通じ、皇室と国民の絆がさらに強まることを祈念し、心から祝意を表したい。

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「立皇嗣の礼」が行われる皇居・宮殿

 天皇の代替わりに伴う一連の行事は、これで区切りを迎える。政府は皇室をめぐる諸課題について本格的な検討に入る時である。

 振り返れば、天皇だった今の上皇さまの退位に関わる2017年の皇室典範特例法には付帯決議があった。皇族方の減少を背景に、安定的な皇位継承や、女性皇族が結婚後も皇室に残る「女性宮家」の創設に関し、政府に速やかな検討を求める内容である。

 政府はかねて、代替わりの儀式の終了後に議論を本格化させる旨を表明。菅義偉首相も今月、国会で「決議の趣旨を尊重し対応したい」と言及し「先延ばしできない重要な課題」との認識も示した。

 従来の方針に則して、政府は早急に有識者会議を立ち上げるなどして論点の整理を進め、幅広く意見を集約し、結論を導く必要があろう。

 一方で菅首相は同じ日の答弁で皇位の継承に関し「男系継承が古来例外なく維持されてきた重みを踏まえる」などとも述べた。

 父方に天皇を持つ女性天皇は歴史上で8人いたが、母方だけに天皇の血筋を引く女系天皇は例がないとされる。発言は議論の方向性を示唆したともとれる。

 しかし、すでに2005年には小泉内閣の有識者会議が、女性・女系天皇を容認する報告書をまとめた経緯がある。また、各種の世論調査でも女性・女系天皇を認める回答は過半数に及ぶ。現在の制度の下での危機感は、国民が広く共有していると言えまいか。

 コロナ禍の中、天皇・皇后両陛下をはじめ皇族方は、医療従事者を励まされたりオンラインで様々な団体と交流されたりしている。皇室への国民の親しみがより深まる形での課題解決を望みたい。



立皇嗣の礼 「男系継承」の流れ明確に(2020年11月8日配信『産経新聞』-「主張」)

 秋篠宮殿下が皇位継承順位1位の皇嗣になられたことを内外に示す立皇嗣(りっこうし)の礼が、8日に皇居で執り行われる。

 皇嗣になられたことに改めて心からの感謝とお祝いを申し上げたい。

 令和の皇位継承に伴う一連の行事の最後を飾る大切な式典である。

 天皇陛下が、皇太子相伝の壺切御剣(つぼきりのぎょけん)をお授けになる。「立皇嗣宣明の儀」では、菅義偉首相ら三権の長をはじめとする内外の代表が皇嗣になられたことを寿(ことほ)ぐ。

 立皇嗣の礼の後には大切な課題を解かねばならない。皇位の安定的な継承の方策を整えることである。秋篠宮殿下より若い皇位継承権を持つ男性皇族は長男の悠仁親王殿下しかおられないからだ。

 踏まえておきたいのは、天皇陛下の次に即位される資格があるのは皇嗣の秋篠宮殿下であり、その次は悠仁親王殿下である、という継承の流れが、立皇嗣の礼で改めて明確になるという点だ。

 これは皇位継承の大原則である男系(父系)継承と合致する。譲位特例法第5条は皇嗣について、「皇室典範に定める事項については、皇太子の例による」と規定している。

 継承順が定まっている当然の事実を忘れたのか、安易に「女系天皇」を求める議論があるのは極めて残念だ。「女系天皇」は別の王朝をつくるに等しく、126代にわたり一度の例外もなかった皇位継承の伝統を壊してしまう。

 男系継承の原則が非皇族による皇位の簒奪(さんだつ)を防ぎ、皇統と国家、社会の安定を守ってきた。君主の位がどのように受け継がれるかは、その正統性、永続性に関わるため、伝統を踏まえることが最も大切である。

 菅首相は4日の衆院予算委員会で、安定継承策の検討について「皇位の継承の維持は国家の基本にかかわる重要な問題だ。男系継承が古来例外なく維持されてきた重みを踏まえながら慎重かつ丁寧に行う必要がある」と述べた。

 菅首相が男系継承の重みに言及したことを歓迎する。

 その大切さを国民に分かりやすく伝えるためにも、秋篠宮殿下、悠仁親王殿下へとつながる継承の流れを守ると菅首相が表明することが望ましい。その上で、今も親族として皇室と交流する旧宮家男子の皇籍復帰を本格的に検討してもらいたい。



「ナマズの宮さま」(2020年11月8日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 秋篠宮殿下の愛車は黄色のフォルクスワーゲンだった。夏の静養で軽井沢をお訪ねになったときは、ホテルからテニスコートまで運転して通われた。危なげないハンドルさばきは、報道陣の間で評判だったという。

 ▼「安全運転ですね」と水を向けられ「前に(警備の)車がいますでしょ。スピードが出せないんですよ」。当意即妙のお答えで周囲に笑顔の花が咲いたと『天皇家のユーモア』(光文社)にある。実生活でもアクセルとブレーキの踏み分けに腐心されたようである。

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 ▼「ナマズの宮さま」と呼ばれるほど淡水魚研究に熱心で、ニワトリ研究にも精を出された。そうかと思えば、天皇の「定年制」についても発言なさっている。スピード超過を慎みつつもアクセルを踏むときは踏み、警笛も鳴らす。皇室の中で異彩を放ってこられた。

 ▼秋篠宮殿下はきょう、「立皇嗣(りっこうし)の礼」に臨み、皇位継承順位1位の「皇嗣」となったことを内外にお披露目される。平成から令和への、代替わり儀式の締めくくりである。予定された祝宴はコロナ禍で中止となったものの、佳(よ)き日をお迎えになったことは喜ばしい。

 ▼一連の儀式を通じて、皇室の置かれた現実を正しく理解した人も多かったろう。皇太子の空位は昭和初期以来で、皇位継承権を持つ男性皇族もかぎられている。126代にわたる「男系継承」を守るためにも、旧宮家男子の皇籍復帰などの議論は急がねばならない。

 ▼独身時代に理想の女性を問われた秋篠宮殿下は、女優の新珠三千代とお答えになった。時代を問わず、いいものはいい。「新しくなければいけないということはないと思います」。変化の激しい現代に守るべきものは何か。殿下のハンドルさばきが改めて注目されるゆえんである。





皇位継承者の先細り(2020年11月7日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 古代の中国では、諸侯が国の統治を受け継ぐ際には、文書をつかさどる官吏が王の意向を示した「冊命(さくめい)」を読み上げた。そこから「冊」と「口」で国を継承する意志を示し、同じように意志を表す「司」と組み合わせて「嗣」という字が生まれた

▼三条市出身の諸橋轍次が編さんした「大漢和辞典」は、このように解説する。この字を用いた「皇嗣(こうし)」は皇位継承順1位の立場を意味する称号だ。あすの立皇嗣(りっこうし)の礼では、秋篠宮さまが皇嗣になられたことを内外に宣言する

▼秋篠宮さまは兄である天皇陛下と皇室を支える重責を担う。佐渡市でのトキ放鳥や各種の式典出席などのため、たびたび来県してきた。ひげを蓄えた口元に浮かぶほほ笑みに親しみを感じる県民も多いだろう

▼立皇嗣の礼の節目に、あらためて浮かぶのは皇位継承者の先細りである。現在の有資格者は継承順に秋篠宮さま、秋篠宮さまの長男悠仁さま、上皇さまの弟常陸宮さまの3人のみだ。次世代に限ると悠仁さま1人。安定的な継承を考えれば、まさに危機的な状況と言える

▼世間では、女性・女系天皇を容認する声が一定程度ある。一方で保守派を中心に、旧宮家(旧皇族)の皇籍復帰で男系を維持すべきだという声もある。答えは安易に出せないが、悠長に構えてもいられない

▼大漢和辞典には「嗣興(しこう)」という言葉が載っている。跡を継いで盛んになるという意味らしい。嗣興とまでは言わずとも、継承の道はどこにあるのか。それを探すのはわれわれ国民である。





皇位継承論議 世論にも耳を傾けて(2020年11月6日配信『東京新聞』-「社説」)

 秋篠宮さまが皇嗣(こうし)になることを内外に示す「立皇嗣の礼」が八日に行われる。先送りしてきた安定的な皇位継承策の議論に政府は着手する方針だが、国民の声にも十分に耳を傾けてほしい。

 「立皇嗣の礼」は当初、四月に予定されていた。新型コロナウイルスの影響で延期されたが、感染状況が一定程度落ち着いたと判断した。中心儀式である「立皇嗣宣明の儀」、秋篠宮さまが両陛下にあいさつする「朝見の儀」が皇居・宮殿で行われる。賓客との祝宴は中止となった。

 問題は皇位継承が事実上、秋篠宮さまと長男の悠仁さまに限られてしまうことだ。天皇陛下と秋篠宮さまは同年代であるから、次の世代となると悠仁さまのみである。安定的な皇位継承を望むならば不安が残ろう。

 憲法では「皇位は、世襲」と定められているだけだが、皇室典範では戦前の男系・男子主義の規定が残っているためである。

 だが、皇位を男子に限っているのは明治以降の歴史にすぎず、江戸時代までには八人の女性天皇がいた。いわゆる「中継ぎ」などではなく、人物本位で選ばれた女性天皇もいる。

 性別にこだわらない考え方に立てば「直系長子(第一子)優先制」が採られる。西欧諸国の王室などはその典型例であり、英国のエリザベス女王など有名な女王も珍しくない。

 世論も女性天皇の容認が圧倒的である。共同通信が今年四月に実施した世論調査では、女性天皇を認めることに関し「賛成」「どちらかといえば賛成」のいずれかを選んだのは計85%に上った。母方に天皇の血筋がある女系天皇も計79%が賛成だった。

 男女平等、さらに女性の社会進出の時代にふさわしいという意識の反映なのかもしれない。小泉政権下の二〇〇五年には、有識者会議も女性・女系天皇を認める報告書を出している。

 むろん保守派は「男系・男子の皇位継承は皇室の二千年近い伝統」とし、戦後に皇籍離脱した旧宮家の血筋の男子に皇籍を取得させる案をいう。

 だが、旧宮家と天皇との男系の共通先祖は約六百年もさかのぼり、かつ戦後はずっと民間人だった人々でもある。国民の納得が得られるだろうか。

 憲法の規定では、天皇の地位は国民の総意に基づく。専門家ばかりでなく、世論にも耳を澄ませ、開かれた議論をすべきである。




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