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(論)押印廃止に関する論説((2020年9月・10月・9・20・28日・11月6・7・11・18日)

押印の廃止/効率化で利便性の向上図れ(2020年11月18日配信『福島民友新聞』-「社説」)
 
 社会情勢の変化、技術の進展で不要となった行政の制度や慣行は不断に見直していくべきだ。

 菅義偉首相が行政手続きの見直しを全府省に指示したことを受け、国や都道府県などで「脱はんこ」の動きが加速している。河野太郎行革担当相は行政手続きの押印を99%以上で廃止する方向に決定したと発表した。婚姻や離婚届、自動車検査証、住民票の写しの交付請求など1万4909種類の手続きで押印が廃止される見通しだ。

 関連法の改正案が来年1月召集の通常国会で成立すれば、都道府県や市町村を窓口とした各種手続きで、現在、国の法令に基づき押印が義務付けされているものは廃止できる。

 国は、法令に基づかない押印について、都道府県や市町村に見直しを促している。県は、県民や事業者が申請する書類、庁内の内部手続きのうち、押印の根拠となる規定がない約300件について廃止の方向で調整している。

 押印の廃止は、事務作業の簡素化、住民の利便性向上などにつながる。県や市町村は、廃止の効果を見極めながら、必要性が乏しい手続きや慣行を改めてほしい。

 河野氏は全国の自治体で押印廃止の取り組みを推進させるため、先進的な自治体を例にマニュアルの作成を急ぐ意向を示している。

 国は、各自治体の廃止に向けた事務作業が円滑に進むよう、支援策を講じてもらいたい。

 行政手続きの押印廃止は行政のデジタル化の一環だ。政府は官民を問わず、「書面、押印、対面」を原則とする制度や商慣行を抜本的に見直し、デジタル技術を活用した書面の電子化、オンライン化を推進するとしている。

 オンライン化は、事務コストの低減、テレワークなど職員の働き方改革に有効とされる。住民にとってもオンライン申請が可能な手続きが増えることで、役所に出向く手間や時間が減るだろう。

 住民サービスの向上を図るためにも、県や市町村は、押印の廃止にとどまらず、行政のデジタル化を着実に進める必要がある。

 ただ、パソコンなどの使用に不慣れな高齢者などには心配りしなければならない。デジタル化にすぐに対応できない事業者への配慮も大切だ。行政サービスの公平性を保つためにも、住民目線で柔軟に対応することが求められる。

 電子契約の導入が進む民間企業では押印に代わり、電子署名などの電子認証が活用されている。各自治体は、民間の導入例なども参考に、新たな本人確認の方法などを検討してほしい。





押印の慣習廃止/前例主義の一掃とセットだ(2020年11月11日配信『河北新報』-「社説」)

 河野太郎行政改革担当相が9月下旬、行政手続きの押印廃止を各省庁に要請して以降、はんこ不要の流れが一気に加速した。閣僚らが相次いで賛意を表明した背景には、押印を必要とする膨大な数の行政文書の存在がある。

 河野氏は早速、自身の公式サイトで「民間から行政機関に対して行う申請などの手続きのうち、押印を求めているものが全部で1万1049種類ある」と紹介した。

 押印が必要な手続きの中には年間100万件以上の申請があったもの、1件もなかったものなど偏りがある。100万件以上の手続きは、給与所得者の扶養控除申告書など。1万件以上は、車検や児童手当の受給資格・所得に関する現況届が挙げられる。

 共同通信社による10月の調査で、全都道府県と道府県庁所在市の計93自治体中、住民の負担軽減や事務の効率化を理由に8割近くが廃止方針を決めたり、検討したりしている。仙台市は市民が提出する書類の一部の押印廃止を表明。宮城県も「脱はんこ」に向けて検討する方針を示した。

 手続きする側はどう見ているか。同社の全国電話世論調査で河野氏が掲げた方針を「評価する」「ある程度評価する」は7割近くに達し、「評価しない」「あまり評価しない」は3割に満たなかった。

 前例主義で押印を求める慣習は、デジタル化推進の大きな障壁になる。各種手続きで押印が必要かどうか、しっかりと仕分けすべきだ。

 一部の閣僚は、人事異動の同意書や育児休業の申請書といった内部文書の押印不要も打ち出した。幾人分もの決裁欄を設け、内容を確かめもせずに判を押すあしき慣習や無駄が行政機関から一掃されるなら大いに歓迎する。押印と当該文書の回覧に割いていた時間を本来の業務に充てれば、働き方も変わるはずだ。

 経団連など経済4団体も書面やはんこ、対面規制の見直しを国に要望した。内閣府の規制改革推進会議は7月の答申に盛り込み、安倍晋三首相(当時)に提出した。

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、在宅勤務が推奨されており、はんこを押すため出勤することも減らせよう。デジタルトランスフォーメーション(DX)の推進は欠かせない。

 行政手続きで誤解してはならないのは、印鑑証明や銀行印が必要な案件、契約書までも押印廃止を求めているわけではない点だ。目的はデジタル化や行革だ。印章業界や職人の不要論ではない。

 明治初期、個人や法人を証明する制度として印鑑登録が誕生し、印の種類や用途が確立されてきた。発祥は今から数千年前にさかのぼり、メソポタミア地方に起源があるとされる。印章は他国で廃れたが、日本では生活に深く根付いている。新たな認証制度を模索し、伝統ある印章文化を守らなければならない。





「やってる感」ハンコでわかる時代遅れ(2020年11月7日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★ハンコ廃止をぶち上げた行革相・河野太郎が今度は「押印がいらなくなったものについてはペーパーレスでやれると思っていますし、行政の手続きにかかる経費、人手が小さくなっていくことを期待していきたい」と言い出した。無論、事の流れはそうだが今、政府が行っている改革は既に民間企業ではバブル経済崩壊後に直ちに行った業務。ハンコがなかなか廃止されず、簡略化されなかったのは役所がそれを錦の御旗にし続け、民間や国民に求めていたからだ。

★改革をうたうのは結構。無駄を廃止していくことも誰も反対しない。国民は歓迎どころか今更と思っているだけだ。ところが政府はすんなりいかない。5日、官房長官・加藤勝信は河野が「押印廃止」と彫ったハンコの写真をツイッターに投稿したことについて「行政手続きにおける不要な押印の廃止を進めているところだ。ハンコ自体を廃止するとの誤解があれば、それは真意ではない。実印や銀行印など必要不可欠な印章は今後とも残していく。関係業界にも丁寧な説明を行っていきたい」とトーンダウンした。

★それを聞いて政治家を番組に出演させているテレビ番組関係者がぼやく。「政治家の事務所への出演依頼は大体『ファクスで内容をくれ』と要求される。それを秘書がコピーして議員に渡す。メールでもそれをプリントアウトして出演依頼がスタートするという具合だ」。結局、永田町と霞が関がまず変わらなければ、民間や国民の感覚に追いつかなくては改革などにならない。政府のデジタル化の進捗(しんちょく)に合わせて国民はデジタル化に推移するはずだが、実態は国民の方が先んじていることを、今更ながら極端な例から着手して“やってる感”を出すのはそろそろやめたらどうか。まだ河野が言い出した「収入印紙の意味」を問う方がずっと意味がある。なぜならば最初から民間には不要な仕組みで行政に押し付けられてきたルールだからだ。優先順位の整理とまずは霞が関の遅れとデジタル化から正せ。(K)※敬称略





花丸二重丸(2020年11月6日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 夜も更けた役所の当直室。披露宴を終えた新郎新婦や事情があって急を要する2人が婚姻届を提出する。そんなドラマで見たような光景も過去のものになるか、と思いきやそうでもないらしい

▼政府が戸籍手続き全般を見直し、押印廃止の方向で法改正の検討に入った。菅政権の脱ハンコ方針の皮切りとなったものだが、署名は残るため書面が不要になるとも限らない。そもそも一部手続きは2004年からオンライン化が認められており、象徴的な意味合いも強そうだ

▼政府が1万を超える手続きで廃止を検討する公文書の押印は、明治期の法制定にさかのぼる。署名では読み書きができない人が困るという理由だったとされる。では、実際どうだったのだろうか

▼寺子屋教育で世界に冠たる識字率を誇ったという江戸時代。しかし、実証データは残されておらず、当時の史料などから推察するほかない

▼おもしろい事例がある。静岡県裾野市に残されていた村役人の入札(いれふだ)の投票用紙をみると、9割を超える票が判読可能な人名を記していたそうだ(「江戸の教育力」ちくま新書)

▼この一例をもって識字率を論ずることはできないが、一定の人々が読み書きできていたのは間違いなさそうである。特筆すべきは名主や百姓代を投票で選んだという事実。異例のこととはいえ、村人の声に耳を傾けようという姿勢には花丸二重丸のハンコをあげたい。



押印廃止を弱点克服の好機に変えよう(2020年10月28日配信『日本経済新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が全省庁に押印や書面の廃止など行政手続きの見直しを指示した。デジタル化の遅れという日本の弱点を克服する好機だ。官と民が一緒になって、IT競争力を高める取り組みを広げたい。

 少子高齢化で労働力不足が深刻化し、人海戦術に頼る社会や経済のままでは、早晩立ちゆかなくなる。ハンコや対面での確認といった人手のかかる作業はデジタル技術で省力化し、生産性を高めるしかない。

 行政がデジタル化の音頭をとる。その決意を示した菅首相の方針は評価できる。河野太郎規制改革相によると、1万5千種類の行政手続きで求める押印のうち、99%を廃止できるという。改革の手を緩めないでほしい。

 やるべきことは脱ハンコだけではない。書面主義、対面原則といった慣習は本当に必要か、総点検が必要だろう。電子契約の簡素化も同時に進めるべきだ。

 押印や書面の撤廃について、政府は2021年の通常国会で一括法案を提出する考えだ。具体的な法制度にすれば実効性はあがろう。ただ懸念も残る。昨年施行した「デジタル手続き法」というあしき前例があるからだ。

 同法は行政手続きを電子申請に統一するために成立した。手続きは書面ではなく原則ネット経由にし、1度提出した情報を2度出す必要もなくす。実現すれば日本のデジタル化が一気に進むが、これまで目に見えた進展は乏しい。

 要因は行政のサボタージュにあるといっていい。例えば、同法では対面や原本書類での確認が必要な場合は、行政の裁量でそれを続けても構わないという例外規定を設けた。自治体のデジタル化対応も努力義務にとどめている。

 法の目的は評価できる一方、運用でつまずくのは、実質的な骨抜きとなっているからだ。各省庁や印鑑業界の反発もあったとされる。菅政権は指導力が問われる。

 課題は民間も同様だ。承認や決裁の電子化、電子署名の活用、株主総会のネット化など、テレワーク以外にも課題は多い。

 中小企業は対応が難しいという声もある。だが従来型システムに莫大な投資をかけてきた大企業に比べ、新技術導入のハードルは低いはずだ。この機会を逃せば、日本は世界から取り残される。危機感を原動力にすべきである。



行政と押印 廃止ありきでいいのか(2020年10月20日配信『東京新聞』-「社説」)

 国がハンコの原則廃止方針を打ち出している。行政効率化が最大の狙いだが、ハンコは日本社会に古くから根付く文化でもある。生産者や小売りへの配慮も含め公平で慎重な姿勢を求めたい。

 コロナ禍で在宅勤務が増える中、押印のためだけに出勤せざるを得ないケースがあったという。これがハンコ廃止のきっかけをつくったことは間違いないだろう。

 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は「(ハンコを)美術品として残せばいい」と発言。河野太郎行政改革担当相が行政手続きにおける原則廃止を各省庁に要請し流れが加速した。

 ただ国が廃止の号令をかけた場合、その影響力は絶大だ。地方自治体や民間の各事業所などで、一気にハンコが消えていく可能性がある。

 ハンコという特定の製品の存廃について、国が方針を掲げることにも疑問を呈せざるを得ない。行政の効率化に異論はない。だが、どの程度行政の妨げになっているのか国民による十分な合意形成がないまま「廃止ありき」という考えであるのなら看過できない。

 ハンコは主に山梨県で生産され、取り扱う小売業者は全国にある。急激な廃止政策はハンコの生産・販売を仕事としてきた人々の生活手段の一部を奪う。廃止を進めるのなら、暮らしを保護するための施策は必須である。

 さらにハンコの廃止は国が進めるデジタル化推進の一環である。デジタル技術の活用をめぐっては、個人情報の取り扱いについてさまざまな議論がある。

 電子化された個人情報を国が把握することに抵抗感を持つ国民は多い。ハンコ廃止についてもデジタル推進をめぐる議論の流れの中で慎重に行うべきだ。

 ハンコは8世紀の大宝律令以降、国内で本格的に使われるようになったとされる。明治時代には、欧米にならってハンコをやめて署名に統一すべきだとの意見も出た。しかしハンコ文化は生き残った。

 今後、技術の進歩と共にハンコの形態も変わらざるを得ないだろう。印章大手のシヤチハタ(本社・名古屋市)は早くから「電子印鑑」を開発し商品化してきた。電子認証が広まる中、評価できる取り組みだ。

 最新技術を取り入れ仕事を効率化することは官民を問わず必要だ。ただその流れの中で置き去りにされる中小零細事業者への配慮を忘れてはならない。



[脱はんこ] 新様式を定着できるか(2020年10月9日配信『南日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス対策で、行政手続きなどでの押印をなくす動きが全国的に広がっている。

 感染が拡大する中、書類作成のため出勤を余儀なくされるなど非合理性が顕在化したためだ。菅義偉首相も看板政策の行政のデジタル化実現に向け強力に推進している。

 日本では、はんこ決裁に代表される企業文化が根強く残っている。コロナ禍があけた風穴を、生活やビジネスの新たな様式として根付かせられるか。政府をはじめ行政、民間企業は、「脱はんこ」に対する社会の理解と納得を得ながら進めてもらいたい。

 コロナ下にあっても外部と交わす契約書に押印が必要とされ、職場から離れて働くテレワーク定着を阻む壁となっていた。

 特に財務・経理、総務・人事の両部門で、テレワークに踏み切れない要因となっているようだ。

 事態を打開しようと、政府は7月、経団連や経済同友会などの経済団体と共同で、「書面、押印、対面」を原則とした制度や慣行を、デジタル技術の活用で抜本的に見直すと宣言した。

 宣言には、各省庁が全ての行政手続きの原則デジタル化に向けて年内に業務見直しと法令の改正を検討することが盛り込まれた。地方公共団体には国に準じた必要な対応を求め、民間は経営者が率先して押印廃止や書面の電子化を推進するとした。

 こうした変更を進めるのは、感染リスクを下げながら業務の効率化、住民サービスの向上を図っていく上で必要なことだろう。
 旗振り役の河野太郎行政改革担当相は印鑑使用の原則廃止を全府省に文書で求めた。これに続いて首相も規制改革推進会議で押印廃止へ向けた対応を各省庁に指示、見直しに本腰を入れる姿勢を鮮明にした。来年の通常国会への関連改正法案提出を目指すという。

 経済産業省、環境省などは既に押印廃止に動いている。自治体の取り組みも進んでおり、福岡市は9月末、市に提出する申請書類などへの押印義務を全て廃止した。鹿児島県は一部を廃止した上で、押印が必要な申請事務の洗い出しを行っている。

 民間ではIT企業などで印鑑の要らない電子契約への切り替えが広がる。損害保険ジャパンは企業向け保険の非対面販売を恒久化し、押印や署名を不要とすると打ち出した。

 ただ、不動産取引など高い信用が求められる契約では、信用を担保する印鑑証明書付きの実印が欠かせないという声がある。押印をなくすかどうかの判断は分野ごとに慎重に行うべきだろう。

 デジタル化へまだ対応できていない中小企業などへの目配りも大切だ。丁寧な取り組みが求められる。





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