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(論)河井夫妻裁判に関する論説(2020年11月7・12・15・12月2・3・5日・2021年1月21・22・23・24・25・26・2月4・5・・7・8・9・18日・3月23・24・25・・26・27・28・31日・4月8日)

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自分を「盛る」人(2021年4月8日配信『中国新聞』-「天風録」)

 話を「盛る」―。誇張するとか大げさにすると言った意味で最近よく使われる。広辞苑にも4年前、新たな語義として追加された。SNSでは写真を加工し、瞳を大きくするなど見栄えを良くすることは当たり前だ

▲自分に注目してもらおうと、平気でうそをついたり悲劇の主人公を演じたりして「盛る」人が増えている―。精神科医の和田秀樹さんが著書「世界一騙(だま)されやすい日本人」で指摘する。確かに、周りにもいる気がする

▲巨額の選挙買収で公判中の河井克行元法相はどうだろう。無罪主張を一転させ、起訴内容の大半を認めた。地元議員らにカネを配った心の内を仰々しく〈遺言〉と称し、法廷で語っている

▲有権者の〈信頼を裏切ったことは万死に値する〉と言いながら買収は〈主たる目的ではない〉と。自民党から提供された1億5千万円は〈一円たりとも買収には使っていない〉と強弁した。手元にある別の金なら構わないとでも言いたいのだろうか

▲自らに都合のいいよう発言を編集したり振る舞ったりするのはままあることと、和田さん。盛られた情報を見抜くことが大事だと説く。買収の舞台となった参院選広島選挙区の再選挙がきょう告示となる。





河井氏議員辞職へ 買収原資、解明が不可欠(2021年3月31日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相の河井克行被告(自民離党)が衆院議員辞職を表明した。無罪主張から一転して地元議員らへの買収を認め、責任を取った。

 逮捕から9カ月以上たっており、あまりに遅過ぎると言うほかない。この事件には依然不透明な点がある。主導的な立場にあったとされる克行被告は、事実関係を余すところなく明らかにしなければならない。

 克行被告は妻の案里前参院議員(同)を当選させるため、地元議員ら100人に現金計約2900万円を配ったとされる。案里前議員はこのうち、4人への計160万円について共謀したとして有罪判決を受けた。

 東京地裁の判決が出る前に克行被告が買収を認めたのは、無罪主張を貫くのが難しくなったからだろう。案里前議員の有罪が確定したほか、自身の公判では100人中、94人が買収されたことを認めている。

 ただし案里前議員との共謀は否定。地元議員らへの「買収罪の事実は争わない」とした。今後の焦点は買収の原資についてどれだけの事実が明らかにされるかだ。3千万円近い資金を一体、どこから調達したのか。

 参院選公示前、自民党本部は夫妻側に資金1億5千万円を入金した。案里前議員と同じ広島選挙区に立候補して落選した現職側はこの10分の1だった。

 自民党広島県連は当時、現職を支援。党本部は県連の反対を押し切って新人の案里前議員を擁立し、保守分裂となった。

 県連との軋轢(あつれき)については克行被告も公判で認め、嫌がらせや妨害があったと指摘。県連の支援が全くなかったことが事件の背景にあるとした。

 こうも述べた。無派閥だったことなどから県連で長年孤立、当選7回でも県連の会長になれず疎外感があった―。そうした状況下、支持基盤の弱い妻を当選させようと必死になっていたところに巨額の資金が投入されたとみることができる。

 こうした当時の状況を見ると、巨額資金が事件の引き金になった疑いは依然払拭(ふっしょく)できない。公判で新たな供述が明らかになったことも注目すべきだ。

 陣営スタッフへの違法性が疑われる現金供与は「党本部からの入金が原資」とする元会計担当者の調書だ。資金の一部が買収に使われた可能性を示す重要な供述ということができる。

 資金の8割に当たる1億2千万円は元が税金である政党交付金だ。買収に使われたとなれば交付金の在り方が問われる。買収に資金が使われたのか否か。その事実解明は不可欠だ。

 買収を認めた克行被告は原資についても真実を語るべきだ。案里前議員を強力に支援した安倍晋三前首相や菅義偉首相もどう関わったかについて説明する必要がある。菅首相には党総裁として資金と買収原資との関係を早急に調査する責務がある。



懺悔(ざんげ)で始まる第2幕(2021年3月28日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 巨大財閥の御曹司が人をあやめた。なぜ? 映画「フォックスキャッチャー」は米国で起きた衝撃的な事件を描いている。こんな場面が印象深い

◆レスリングチームを持つ御曹司が、ある男にコーチ就任を持ちかける。好待遇なのに断られ、「要求額はいくらなんだ」。お金の問題ではないと言われても、分からない。お金で動かない人間がいることに

◆参院選での買収などの罪に問われた元法相河井克行被告が、無罪の主張を一転させ、議員辞職願を出した。発表したコメントに「お金で人の心を『買える』と考えた自らの品性の下劣さに恥じ入る」とあった

◆大事なものをお金で売り渡さない。そう思う秤(はかり)が誰の胸にもある。秤を持たない御曹司は破滅の森へと迷いこんだ。元法相の心の秤がどう揺れたか想像するしかないが、被告席に身を置いて気づいたということか

◆公判で説明責任を果たす、という。その言葉が法廷戦術でないのなら、買収の原資についても洗いざらい語ってもらいたい。自民党本部は陣営に1億5千万円も投入している。政党交付金がほとんどというそのお金が使われたのか。異様なまでの肩入れの背景はなにか。納税者として知りたい

◆無罪を訴えた第1幕。懺悔(ざんげ)で始まる第2幕。法廷から目が離せない。





河井元法相が辞職表明 大規模買収党も説明責任(2021年3月27日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われている元法相で衆院議員の河井克行被告が無罪主張から一転し、東京地裁の公判で起訴内容の大半を認めた。責任を取るとして衆院議長に議員辞職願を提出した。

 妻の案里前参院議員を当選させるため、地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。うち94人が「集票依頼だと思った」などと違法性を認めていた。有罪が確定し辞職した案里前議員の1月の東京地裁判決では、克行被告が主導したと認定していた。追い込まれて無罪主張の撤回を余儀なくされたと言えよう。

 選挙の公正性をゆがめる前代未聞の大規模買収事件である。全容は明らかになっておらず、このまま幕引きすることは許されない。克行被告は「国政選挙の信頼を損なった」と謝罪したが、疑惑が発覚する19年10月まで法務行政のトップも務めていた。国民の信頼を失った責任は極めて重い。自ら買収の経緯や実態をつまびらかにしなければならない。

 今になっての辞職表明は遅きに失したと言わざるを得ない。疑惑発覚後、議員の職責をまともに果たしていないが歳費など計約2600万円が支払われている。量刑の減軽を図るとともに、補欠選挙を避ける狙いも透ける。事件の舞台となった参院選広島選挙区の再選挙が4月25日に実施される。克行被告が3月15日までに辞職していれば公選法の規定で再選挙と同日に衆院補選が行われていた。自民党への打撃を軽減する思惑が取り沙汰されるのも当然だろう。

 一昨年の参院選では党本部が広島県連の反対を押し切って、現職ベテラン候補に加えて新人の案里前議員を擁立。夫妻の政党支部に現職候補の10倍に当たる1億5千万円を投入、官房長官だった菅義偉首相らが全面支援するなど肩入れしていた。現職候補は落選し案里前議員が当選した。

 1億5千万円のうち1億2千万円は税金が元手の政党交付金である。夫妻側は関係書類が捜査機関に押収されたことを理由に19年分の政治資金報告書収支を全て「不明」と記載しているが、公判で陣営スタッフへの現金供与について、ここから支払われたとする元会計担当者の供述調書がある。買収の原資になった可能性を示している。自民も提供した資金の使途を明らかにする責任がある。

 それにもかかわらず、二階俊博幹事長は「党としても他山の石としなければならない」とコメントした。当事者意識が全く欠落している。菅首相は資料が押収されているとして「返還され次第、党として監査したい」と述べるにとどまっている。自民党の「政治とカネ」の問題による議員辞職は菅政権で3人目となる。菅首相は真摯(しんし)に受けとめ、全容解明を主導すべきだ。真相を明らかにしなければ政治への信頼回復はあり得ない。





河井被告辞職へ これが「他山の石」なのか(2021年3月26日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 参院選広島選挙区をめぐる公選法違反罪で公判中の、衆院議員で元法相の河井克行被告が議員辞職願を提出した。無罪主張を一転させ、地元議員らへの現金供与を買収と認めたものだ。

 すでに議員としての活動実態はなく、辞職は当然であり、むしろ遅すぎた判断といえる。

 耳を疑ったのは、自民党の二階俊博幹事長が一連の経緯に「党もこうしたことを他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と述べたことだ。

 「他山の石」どころか、これは自民党議員の公選法違反事件であり、同党が河井被告夫妻に提供した破格の1億5千万円が原資として疑われる不祥事である。

 どこからどうみても、人ごとではありえない。二階氏の発言は、よほど語彙力に欠けるか、さもなくば、党の反省のなさを象徴するものだ。河井被告がすでに離党していることが発言の理由なら、あまりに無責任である。

 二階氏は特に発言を撤回することもなく、党内からも発言を諫(いさ)める声が聞こえてこない。

 幹事長は党務の責任者だが、その上に総裁がいるはずだ。菅義偉首相が二階氏に発言の真意を質(ただ)してはどうか。誤用の放置は子供の教育上もよくない。

 「他山の石」は中国の「詩経」にある「他山の石、以(もっ)て玉を攻(おさ)むべし」に由来する。

 意味は「よその山から出た粗悪な石でも、自分の宝石を磨く役には立つ」といったもので、転じて「自分の人格を磨くのに役立つ他人のよくない言行や出来事」(広辞苑)を指す。

 事件はまぎれもなく自民党の山から出たものである。だが河井被告も自民党も、事件についての詳細な説明を避け続けている。

 河井被告が公判の被告人質問に答えた「民主主義の根幹である選挙の信頼を損なった」の反省が真実のものであるなら、買収資金の原資を含む事件の全容について、政治家としての説明責任を果たすべきである。

 10月21日に任期満了となる衆院は、公選法の規定により今月16日以降に生じた欠員のための補選は行われない。遅すぎる辞職判断で党が望まない補選を避け、何らかの見返りが望めるのだとすれば本末転倒も甚だしい。こうした臆測を封じるには、自ら事件の背景について口を開くことだ。



河井議員辞職へ 自民党も責任を自覚せよ(2021年3月26日配信『西日本新聞』-「社説」)

 これで一件落着にできるはずがない。大掛かりな買収の資金は自民党本部が提供した多額の活動費で賄われた疑いがある。真相の解明はこれからだ。

 2019年の参院選広島選挙区の買収事件で、自民党を離党した元法相の河井克行被告が公選法違反の罪を認め、衆院議員の辞職願を議長に提出した。

 河井被告は妻の案里前参院議員=同違反罪で有罪確定=の当選目的だったとされた買収行為について一貫して否認し、無罪を主張していた。それが一転、東京地裁の公判で「全般的には買収罪の事実は争わない」と態度を翻した。

 妻との共謀は否定し、全てが買収目的だったわけではない、とも述べたが、一連の審理で外堀が埋まり、身の処し方に窮した結果ではないのか。議員辞職も遅きに失した感が否めない。

 河井被告は地元の議員や首長ら100人に集票依頼などの目的で総額2900万円を渡したとして公判中だ。100人の多くは捜査段階や公判でこの事実関係を認め、陣中見舞いだったなどとする被告側の主張はもはや維持が難しい状況にある。

 問題は、ここに至るまで公の場での説明を拒んできた河井被告の不誠実さだけにとどまらない。前例のない事件の背景や金の流れについて自民党が詳細な説明や調査に後ろ向きな姿勢を続けていることは、政権党として極めて無責任である。その点は改めて厳しく指摘したい。

 19年の参院選で党本部は広島県連の反対を押し切って現職候補に加えて案里氏を擁立した。この際、河井夫妻の政党支部に活動費として破格の1億5千万円が提供され、当時官房長官だった菅義偉首相が案里氏の当選を後押しした経緯もある。

 二階俊博幹事長は河井被告が罪状を認めたことに関し「他山の石としたい」と述べた。これには耳を疑う。離党しているとはいえ、党の責任がそれで免責されるわけではない。人ごとのような発言は許されない。

 首相は、党の財務資料が押収されている現状では調査が困難との説明を繰り返す。これも理解に苦しむ。党内の関係者から事情を聴けば基本的な調査は可能なはずだ。党総裁としてそれを主導し、結果を国民に公表することが責務ではないか。

 「『政治は国民のもの』との初心を肝に銘じ、常に自らの政治行動を省みながら襟を正していく」。政治とカネにまつわる不祥事が相次ぐ中、先日の自民党大会では、こんな決意が運動方針の前文に盛り込まれた。

 これは単なる掛け声なのか。今回の事件を巡り、自民党もまた被告席に立たされていることを首相は自覚すべきだ。





河井元法相公判 議員の辞職は遅きに失する(2021年3月25日配信『読売新聞』-「社説」)

 今頃になって議員辞職を表明するのは、遅きに失したと言えよう。今後は説明責任を果たし、大規模な選挙買収事件の全容を自ら語るべきだ。

 2019年の参院選を巡り、公職選挙法違反に問われた河井克行・元法相が、東京地裁の公判で、従来の無罪主張から一転し、大筋で起訴事実を認めた。事件の責任をとって、衆院議員を辞職する意向も表明した。

 克行被告は、妻の案里氏を参院選広島選挙区で当選させるため、地元議員ら100人に計2900万円を配ったとして起訴された。渡した現金は統一地方選の当選祝いや陣中見舞いだったと主張し、買収の意図を否定してきた。

 だが、これまでの公判に証人として出廷した地元議員らの大半は「買収の意図があると感じた」と証言している。外堀を埋められた克行被告は、否認を続けるのが難しいと判断したのだろう。

 案里氏も自身の裁判で買収の意図を認定され、有罪判決が確定している。追い込まれた末の方針転換だと言わざるを得ない。

 ただ、この時期の進退の決断には、不自然さが残る。克行被告が3月15日までに辞職していれば、4月に補欠選挙が行われる予定だった。自民党にとって厳しい戦いが予想される補選を回避する意図があったのではないか。

 克行被告は「妻を当選させたい気持ちがあった」と述べた。事件の背景には、保守分裂となった激しい選挙戦があったとされる。

 選挙前、案里氏側には自民党本部から1億5000万円の活動資金が提供された。公判では、陣営のスタッフ3人に提供された220万円には「党本部からの資金が含まれていた」とする元会計担当者の調書が読み上げられた。

 買収資金は、どこから捻出されたのか。克行被告は、有権者が納得できる説明をすべきだ。

 事件に対する自民党の対応は鈍い。二階幹事長は記者会見で「党としても他山の石としてしっかり対応していく」と述べた。克行被告が党在籍時の事件であり、人ごとのような発言は許されない。

 菅首相は、党が提供した資金について「党勢拡大のために広報紙を配布する費用などに充てられた」と語り、買収には使われていないとの認識を示している。

 1億5000万円もの使途として、この説明に納得できる人は少ないのではないか。自民党は資金の流れを改めて調査し、公表すべきだ。真相解明の努力を怠れば、政治不信は一層強まるだろう。



河井議員辞職へ 説明責任きちんと果たせ(2021年3月25日配信『新潟日報』-「社説」)

 多額のカネを投じた買収によって選挙の公正を害し、有権者や国民の政治不信を招いた。辞職は当然であり、むしろ遅きに失したといえる。

 ただし、辞めれば終わりとはいかない。買収の原資がどこから来たのかも含め、事件の全容についてきちんと説明責任を果たさなければならない。

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡り、公選法違反の罪に問われた元法相の衆院議員河井克行被告が、23日の東京地裁での被告人質問で地元議員らへの買収を認め、責任を取って議員辞職すると表明した。

 起訴状によると、元法相は19年3~8月、地元議員や後援会関係者ら100人に、妻の案里前参院議員への投票や票の取りまとめなどを依頼し、計約2900万円を配ったとされる。

 元法相は一貫して無罪を訴えていた。主張を一転させたことになる。「認めるべきは認めることが、長年にわたり支持していただいた後援者に対する政治家としての責任の取り方」などと語ったが、実態はどうか。

 公判では現金を受領した100人のうち94人までが「違法なカネ」などと証言した。買収事件で有罪が確定した案里前参院議員の1月の東京地裁判決も、元法相が主導したと認めた。

 そうした中で追い込まれ、無罪主張の撤回を余儀なくされたように映る。有罪になりそうだったため、減軽狙いに切り替えたとの見方も出ている。

 議員辞職を表明したタイミングを巡っても、気掛かりな指摘がある。

 4月25日には、衆院北海道2区、参院長野選挙区の両補欠選挙と、買収事件の舞台となった参院広島選挙区の再選挙が控えている。元法相が今月15日までに辞職していれば、広島3区補選も同日のはずだった。

 野党は「与党に厳しい審判を下されることを避けた」などと批判している。事実ならば、本気で反省しているのか疑いを抱かざるを得ない。

 今後の公判で元法相に求めたいのは、事件の全容解明に向けて、説明責任をしっかり果たすことだ。

 買収の原資を巡っては、自民党本部が夫妻側に提供した1億5千万円がその原資の一部になったとの疑念がある。

 提供された資金の大半は国民の税金から出ている政党交付金であり、解明が不可欠だ。

 元法相は初当選同期の菅義偉首相に近く、案里前参院議員の参院広島選挙区への擁立も当時官房長官だった首相が主導したとされる。

 政権中枢も無関係とはいえないはずなのに、自民党の二階俊博幹事長は記者会見で元法相の辞職表明を巡り「他山の石にしないといけない」と述べた。

 全く人ごとのような発言であり、見当違いも甚だしい。あきれるばかりだ。

 自民党の責任も問われていることを改めて肝に銘じ、1億5千万円を提供した理由や使途について党としても真摯(しんし)に説明責任を果たすべきだ。



河井議員辞職表明/真相語る責任は免れない(2021年3月25日配信『神戸新聞』-「社説」)


 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る公選法違反罪で起訴された元法相の衆院議員河井克行被告が、無罪主張から一転して買収を認め、法廷で議員辞職を表明した。

 元法相は新人候補だった妻の案里氏を当選させるため、地方議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。前代未聞の大がかりな買収事件の構図が明確になった。

 カネの力で投票行動を左右しようとする買収行為は、民主主義の根幹を揺るがす重大な犯罪だ。法秩序を守るべき法相経験者として、政治不信を高めた責任は極めて重い。

 疑惑発覚後、元法相夫妻は公の場での説明を避け、逮捕、起訴されても国会議員にとどまった。この間、国会活動はないに等しいが、議員報酬を受け取り続けた。

 一部の買収で共謀したとして有罪判決を受けた案里氏は、先に議員辞職した。確定した判決は、元法相が買収を主導したと認定している。辞職は当然であり、遅きに失したと言わざるを得ない。

 元法相は初公判から一貫して買収の意図を否定していた。だが、受け取った議員のうち94人が違法性を証言し、言い逃れできない状況に追い込まれたというのが正直なところだろう。

 「認めるべきは認めることが、長年の支持者に対する政治家としての責任の取り方だと考えるに至った」との言葉が本心なら、法廷だけでなく国会や記者会見などでも真実を語り、全容を明らかにするべきだ。

 残された最大の疑惑は、巨額買収を可能にした原資である。

 広島選挙区では自民党本部が広島県連の反対を押し切り、現職に加えて案里氏を擁立した。夫妻側には、落選した現職の10倍に当たる1億5千万円が党本部から提供され、うち1億2千万円は税金が基になる政党交付金と判明している。

 公判では、党本部からの入金が原資だったとする元会計担当者の証言が明らかにされた。税金が買収に使われたとすれば、問題はより深刻だ。提供した資金の使い道を明らかにする責任は自民党にもある。

 ところが、二階俊博幹事長は「他山の石として、しっかり対応しなくては」と語った。人ごとのような態度にあきれるほかない。

 元法相は菅義偉首相とも近い関係にあった。首相は資料が検察に押収されたとして、資金提供の経緯などを究明する姿勢を見せていない。

 菅内閣発足半年で「政治とカネ」の問題による議員辞職は3人目となる。根底に身内に甘い政権の体質があるのではないか。疑念を払拭(ふっしょく)するため、首相自ら党に徹底調査を指示し、全容解明に努めるべきだ。



【河井元法相公判】全容解明はこれからだ(2021年3月25日配信『高知新聞』-「社説」)

 2019年の参院選広島選挙区を巡り、公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた元法相の衆院議員、河井克行被告が無罪主張から一転して、地元議員らへの買収を認め、議員辞職を表明した。

 辞職は当然で、遅すぎる。何より、辞職で幕引きとはならないことを自覚することだ。これまで無視してきた説明責任と向き合い、全容を明らかにする必要がある。

 元法相は、妻の案里前議員の当選を目指し、地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。これに対し元法相側は、有望な政治家への寄付などと説明して、全面無罪を訴えてきた。

 しかし、地元議員らは証人尋問で94人が違法性を認めていた。背広のポケットに現金入り封筒をねじ込まれた、受領に難色を示しても押し返された。そんな証言が出ている。

 県議4人に計160万円を渡したとして有罪が確定した案里前議員の1月の東京地裁判決も、元法相との共謀を認定している。無罪主張が受け入れられる余地が狭まっていることを当人も自覚していたはずだ。

 この参院選では、自民党本部は改選2議席の広島選挙区の独占を掲げ、現職ベテラン候補に加えて、広島県連の反対を押し切って新人の案里前議員を擁立した。

 県連の支援を受けられずに厳しい選挙情勢だったことが選挙買収につながったとみられる。案里前議員の判決は、票の取りまとめの報酬として、現金を渡したと認定した。

 自民党本部は夫妻の政党支部に、現職の10倍の1億5千万円を投入している。これが買収資金の原資になったかどうかは注目点だ。この資金には、国民の税金で賄われる政党交付金が含まれる。使途を曖昧にはできない。

 また、当時の安倍晋三首相や官房長官だった菅義偉首相らが支援してきた。「政治とカネ」の問題は政治不信に直結する。首相らがどう関わったのか、説明する必要がある。

 自民党の二階俊博幹事長は、今回の事態に、「他山の石にしないといけない」と言う。人ごとの受け止めのようだが、離党したから関係ないとはならない。

 ここへきて元法相が買収を認めたのは、事件の舞台となった参院広島選挙区との同日選を避けることができたためとの見方がある。衆院議員の任期満了が近くなり、広島3区補欠選挙は行われないためだ。

 選挙戦への打撃を軽減したいという思惑なら、有権者軽視も甚だしい。元法相は参院選を巡る疑惑が浮上した19年10月末以降、国会をたびたび欠席した一方、歳費などが支払われてきたことともつながる。

 元法相は、逃げることなく認めるべきは認めることが政治家としての責任の取り方だと、法廷で述べた。徹底抗戦の構えを改めて選挙買収をおおむね認めたとはいえ、資金の流れをはじめ、まだ明らかになっていないことがある。責任を語る以上、全容解明につながる姿勢を示すことが不可欠だ。



他山の石(2021年3月25日配信『高知新聞』-「小社会」)

 当欄を担当していると、読者からさまざまなご意見が届く。先日も「忸怩(じくじ)たる思い」という表現を「悔しい」「もどかしい」「複雑な」心境という意味で使ったところ、「誤用ではないか」とのご指摘をいただいた。
 
 確かに、手元の辞書には「恥じ入る様子」としか書かれていない。誤用が歳月とともに定着するケースは多々ある。これもその一つだろうか。時代とともに変わる言葉は生きもの。日本語は難しい。とはいえそれを扱う者として、もっと神経を使わねば。そう自戒した次第。
 
 こちらは明らかな誤用である。河井克行元法相が2019年の参院選広島選挙区での買収を認めて、衆院議員辞職を表明した。それを受け、自民党の二階俊博幹事長は「他山の石にしないといけない」と言ってのけた。
 
 同選挙区で当選した妻の河井案里氏側には、党本部から1億5千万円が提供されている。これが買収の原資となったのではないか。疑惑という名の石は他山どころか、自分の家の持ち山に転がったままである。二階氏には忸怩たる思いを抱いてもらわなければならない。
 
 克行氏は離党しているが、人ごとでは済まされない。党として資金の流れを説明する責任がある。
 
 「他山の石 以(もっ)て玉を攻(みが)くべし」。他の山の石でも自分の玉を磨くことはできる。転じて他人の言行でも自らを戒める材料になるという意味。自民党は自らの玉をどう磨くつもりなのか。



河井被告が辞職表明 買収の全容を究明せよ(2021年3月25日配信『琉球新報』-「社説」)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡り、公選法違反の罪に問われた元法相の衆院議員河井克行被告が、従来の無罪主張から一転して地元議員らへの買収を認め、議員辞職を表明した。

 選挙という民主主義の根幹を揺るがす前代未聞の事件である。遅すぎたと言わざるを得ない。辞任で幕引きにしてはならない。

 陣営には自民党本部から1億5千万円という巨額の選挙資金が提供された。党の選挙資金が買収に使われたとすれば自民党の責任も問われる。買収資金の出どころを含め、買収の全容を徹底究明する必要がある。

 起訴状によると、元法相は地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとしている。元法相側は昨年8月の初公判で「有望な政治家への寄付」などと説明した。

 しかし、2月までの公判で現金を受領した地元議員ら100人のうち94人が「違法な金」などと証言した。有罪が確定した妻案里前参院議員の1月の東京地裁判決も、元法相が主導したと認めている。

 克行被告は言い逃れできない立場に追い込まれていた。それならなぜもっと早く議員辞職しなかったのか。疑問が残る。

 克行被告が今月15日までに辞職していたら、衆院広島3区の補欠選挙は4月25日に実施された。そうなると妻案里氏の失職に伴う参院の再選挙と、収賄罪で起訴された吉川貴盛元農相の辞職に伴う衆院北海道2区の補選と同日になる。ところが15日以降なら秋までにある次期衆院選に吸収される。

 総務相の接待問題などで菅内閣の支持率が下がっている中で、逆風を和らげるためにタイミングを見計らったとすれば、有権者を愚弄する判断である。

 買収に使った現金は「自民党本部からの入金が原資となった」とする元会計担当者の供述調書が明らかになっている。自民党は1億5千万円の選挙資金を提供していて、うち1億2千万円は政党交付金である。

 政党交付金は、企業や労働組合、団体などから政治献金を受けることを制限する代わりに、税金で政党の活動を助成し、健全な政治を目指すことを目的としている。

 今回は「健全な政治」どころか買収に使われた可能性がある。それにもかかわらず事件について二階俊博幹事長は「本人(克行被告)は大いに反省しているだろう。党としても他山の石として対応しなければならない」と語った。まったく当事者意識のない発言である。自民党は提供した資金について説明責任を果たさなければならない。

 一昨年の参院選に立候補した妻案里氏は当時の安倍晋三首相、菅義偉官房長官の強い支援を受け、自民現職を抑え初当選した。克行被告をはじめ、安倍、菅両氏や自民党執行部を国会招致すべきだ。



自民党は自己検証せず「他山の石」(2021年3月25日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★公職選挙法違反に問われている元法相・河井克行被告について自民党幹事長・二階俊博が「党としても他山の石として、しっかり対応していかなければ」と話したことについて、波紋が広がっている。「他山の石」とは、人の振り見てわが振り直せの意味。他人のことでも自分の戒めにして自らを律していくさまのことではないか。仲間に対しては使わない。河井が公選法に問われているのは一昨年の参院選広島選挙区で妻の元被告・河井案里を当選させるため、地元議員ら100人に現金2900万円を渡し買収した罪。まして選挙資金としては破格の1億5000万円は自民党本部からの振り込みということになれば、他山の石どころか、二階は党幹事長として中枢の総責任者の1人ということになる。

★立憲民主党代表・枝野幸男はこの発言に「日本語を理解されていないのか、ちょっと意味不明の発言であり、(事件は)自民党のど真ん中で起こった」と指摘している。共産党書記局長・小池晃も「他人と自分の区別もつかなくなったのか。他山ではなく、紛れもない『自山』だ」。二階は「いやしくも政治は国民のみなさんにいろんな協力を求める立場。後ろ指をさされるようなことは厳に慎むべきものだ」とも発言している。既に十分、後ろ指をさされることではないだろうか。

★自民党参院幹事長・世耕弘成は23日の会見で「党本部から党支部に交付されたお金が買収に使われることは一般論であり得ない」と言ったが、感想ではなく事実を調べて報告すべきだ。枝野は「事件が発覚した時に自民党が対応しなかったことが、こうした状況を招いている」とも発言したが、その通り。二階と世耕は両院幹事長の立場で1億5000万円の振り込みの経緯、官邸や幹事長の関与など、司法とは別の政治的検証を自ら行われたらいかがか。「しっかり対応する」などと公党の幹事長が吐いた言葉を、自身で重く受け止めるべきだ。



河井議員辞職表明(2021年3月25日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」

自民党の責任逃れ許されない

 2019年の参院選広島選挙区の大規模買収事件で、公職選挙法違反に問われた河井克行元法相が公判で起訴事実の大半を認め、衆院議員を辞職すると表明しました。妻の案里氏は有罪が確定し、2月に参院議員を辞職しています。同事件では、自民党本部から送金された巨額の選挙資金が買収の原資になった疑いが強まっています。元法相夫妻の事件を「他山の石」(自民党の二階俊博幹事長)とまるで人ごとのように言うことは、当事者としての責任も自覚も欠いた開き直りに他なりません。河井夫妻の議員辞職で幕引きを図ることは許されません。

買収資金の原資の解明を

 元法相は、案里氏への投票の取りまとめの趣旨で、地方議員や首長ら100人に総額約2900万円の現金を配った公選法違反の罪で逮捕・起訴されました。元法相は無罪を主張してきましたが、大多数の地方議員らは買収意図を認識していたなどと証言しました。

 元法相は23日の公判で、現金の提供について「妻の当選を得たいという気持ちが全くなかったとは言えない」と一転して買収だったと認めました。議員を辞めるとも述べました。昨年6月の逮捕以降、辞職を拒み続けた居直りが通用しなくなったことは明白です。河井夫妻はこれまで国民に一切説明してこなかったことを猛省し、洗いざらい事実を語る責任があります。国会招致は不可欠です。

 徹底解明が必要なのは、大規模な買収に使われた資金の出どころです。案里氏の選挙の際、自民党本部は1億5000万円もの資金を提供しました。広島選挙区のもう1人の自民党現職候補の10倍にのぼる破格の額です。その8割にあたる1億2000万円は国民の税金である政党助成金です。

 今年2月の公判では、選挙運動員買収をめぐる現金について「自民党本部から提供された資金が原資だった」と述べた河井陣営の元会計担当者の調書が読み上げられました。疑惑は深まるばかりです。菅義偉首相は書類が検察に押収されていることなどを理由に説明を拒否する不当な態度を改めるべきです。

 当時の安倍晋三政権の関与についての究明も重要です。案里氏の擁立は、安倍氏や官房長官だった菅氏の強力な後押しによるものです。元法相を側近として要職に取り立てたのも「安倍官邸」でした。党本部からの送金前後に安倍氏と元法相が面会を重ねていたことも明らかになっています。安倍氏や菅氏が案里氏の応援演説に入っただけでなく、安倍氏の秘書が選挙の支援活動を行うなど異例のテコ入れをしています。安倍氏、菅氏はもちろん自民党として説明責任を果たさなければなりません。

政権を担う資格問われる

 買収は、民主主義の根幹である選挙を金でゆがめる重大な犯罪行為です。法務行政をつかさどる法相経験者が買収で刑事責任を問われるのは前代未聞です。ことの重大性を認識できない菅首相や自民党は、政権を担う資格そのものが問われます。菅首相に近い吉川貴盛元農林水産相が500万円の現金を受け取り起訴された鶏卵生産会社アキタフーズをめぐる収賄事件も解明されていません。

 疑惑まみれの政治をただすとともに、汚れた政治に代わる新しい政治の実現が急がれます。





河井議員辞職へ 買収の実態全て説明を(2021年3月24日配信『北海道新聞』-「社説」)

 参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相の衆院議員河井克行被告は東京地裁の被告人質問に対し、これまでの無罪主張を一転させ、地元議員らへの買収を認めた。

 併せて議員辞職も表明した。

 100人に計約2900万円を配ったとされる前代未聞の買収事件である。民主主義の根幹を支える選挙の公正性をゆがめ、政治への信頼を失墜させた責任は重い。

 妻の河井案里前参院議員は一部の買収で共謀したとして有罪判決が下った。河井被告は共謀を否定するが、案里前議員は辞職して有罪が確定している。

 議員辞職は免罪符にならない。2人とも法廷だけでなく、国会や記者会見で有権者に真実を語るべきだ。それが選挙で負託を受けた者の最低限の責務である。

 自民党は参院選に際し、案里前議員の陣営に通常の10倍に当たる1億5千万円を投入した。党としても巨額の資金を提供した目的や使途を調べ、事件との関連性の有無を明らかにする必要がある。

 河井被告は「認めるべきは認めることが、長年にわたり支持していただいた後援者に対する政治家としての責任の取り方だと考えるに至った」と述べた。

 被告側は昨年8月の初公判で「有望な政治家への寄付」などと説明した。しかし、現金を受け取った地元議員らの多くは「集票依頼だと思った」「違法な金」と証言してきた。

 被告側の主張が説得力を欠くことが浮き彫りになったといえる。

 自民党の二階俊博幹事長は記者会見で「党も他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と語った。人ごとのような態度にあきれるばかりだ。

 河井被告は菅義偉首相や安倍晋三前首相と近く、裁判では陣営スタッフへの現金供与について「自民党本部からの入金が原資になった」とする元会計担当者の供述調書も明らかになっている。

 二階氏ら党幹部が率先して真相究明に尽くすのが筋ではないか。

 政治とカネの問題は他に、吉川貴盛元農水相の収賄事件や安倍氏の桜を見る会、検察審査会が「起訴相当」と議決した菅原一秀前経済産業相の香典提供問題がある。国民の不信は募っている。

 来月には案里前議員が辞職した広島選挙区の再選挙や、吉川元農水相の辞職に伴う衆院道2区補欠選挙など衆参三つの選挙がある。

 自民党に自浄作用はあるか。厳しく問われることになろう。



自民は責任を明確にせよ/河井元法相議員辞職へ(2021年3月24日配信『東奥日報』-「時論」)

 2019年7月の参院選を巡る買収事件で公選法違反の罪に問われ、無罪を主張していた元法相の衆院議員河井克行被告が東京地裁での被告人質問で一転、起訴内容の大半を認め、議員辞職の意向を表明した。広島選挙区から立候補した妻の案里前参院議員を当選させるため、地元議員ら100人に現金計2900万円を渡したとされる。

 公判で「有望な政治家への寄付」などと反論したが、案里前参院議員は4人の買収について共犯として一審東京地裁で有罪判決を受け今年2月に辞職。この判決で克行被告は買収全体を計画し主導的な立場にあったと認定された。また一連の証人尋問では94人が買収を受けたと認めた。

 克行被告は辞職について「認めるべきは認めることが、長年にわたり支持していただいた後援者に対する政治家としての責任の取り方と考えるに至った」と述べたが、あまりにも遅すぎたと言わざるを得ない。できるだけ早く、買収事件により混乱を極めた地元に対し案里前議員とともに説明責任を果たし、きちんと謝罪する必要がある。

 さらに収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相も含め、昨年9月の菅政権発足以降、自民党で「政治とカネ」の問題に絡む3人目の議員辞職となり政治不信の深まりは深刻だ。自民党は案里前議員側に巨額資金を提供し全面支援した経緯などを公にし、党としての責任を明確にすべきだ。

 被告人質問で克行被告は「2議席を獲得する党の大方針を実現するため、案里の当選を得たいという気持ちが全くなかったとは言えない」と述べた。自民党本部は地元県連の反対を押し切り、改選2議席の広島選挙区で現職候補に加え、案里前議員を擁立。安倍晋三前首相の秘書らが前議員の陣営スタッフとともに地元議員や企業などを回り、支援を呼び掛けた。

 そうした中、党本部は前議員が支部長の政党支部や克行被告の政党支部に合わせて1億5千万円を振り込んだ。現職側への入金とは10倍もの開きがあり、後に自民党内から「あまりに不公平」と批判の声が上がった。

 この1億5千万円のうち1億2千万円は税金が原資の政党交付金で使途の報告が義務付けられている。しかし夫妻の政党支部は、いずれも検察当局によって関係書類を押収されたことを理由に使途を記載せず報告書を県選挙管理委員会などに提出。買収に使われた疑いが指摘されている。

 克行被告は否定しているが、自身の公判で、党本部からの資金を受領する口座を開設した元会計担当者が陣営スタッフへの現金提供について「党本部からの入金が原資となった」とした供述調書が読み上げられた。資金の一部が買収に使われた可能性を示す供述だ。

 菅義偉首相は「検察当局に押収された関係書類が返還され次第、党の内規に照らして監査を行う」と答弁した。だがそれでは遅い。河井夫妻はもちろん当時の陣営スタッフらから幅広く事情を聴き、使途を確定させる必要がある。

 併せて案里前議員側への尋常ではない肩入れを巡り、克行被告と近い関係にあった安倍氏や官房長官だった菅氏がどのように関わったかも調査し公表するのが党の責務といえよう。疑惑解明に真剣に取り組まず、幕引きを急ぐばかりでは信頼回復は望むべくもない。



河井議員が辞職表明 買収の全容説明すべきだ(2021年3月24日配信『毎日新聞』-「社説」)

 公職選挙法の買収の罪に問われた元法相の河井克行衆院議員が、裁判で一転して買収を認め、議員を辞職する意向を表明した。

 遅きに失した対応だ。

 民主主義の根幹を揺るがす巨額買収事件である。法の秩序を維持する法務省のトップを務めた経験もある。それが、起訴されても国会議員の座に居座るのは、国民の理解が得られない。

 疑惑発覚後、国会議員としての仕事をほとんどしていないのに歳費を受け取ってきたのも問題だ。

 妻の案里元参院議員は既に議員を辞職し、有罪が確定している。

 克行議員は案里元議員が初当選した一昨年の参院選で、地方議員や首長ら100人に総額2900万円を渡したとして起訴された。初公判では、選挙運動の報酬ではないと無罪を主張していた。

 なぜ、ここに来て主張を一転させたのか。

 裁判では、現金を受け取ったとされる100人のほとんどが、買収の趣旨だと思ったと証言した。

 案里元議員への判決では、克行議員が一連の現金提供を主導したと認定されている。

 克行議員は追い込まれた状況だった。きのうの被告人質問で「妻の当選を得たい気持ちが全くなかったとは言えない」と述べた。

 補欠選挙の回避を狙ったのではないかとの指摘も出ている。今月15日までに辞職しなければ、補選は実施されないという公選法の規定を利用したように映るからだ。

 克行議員は今月、保釈されている。買収を認めた以上、裁判だけでなく、国会や記者会見でも経緯を詳しく説明する必要がある。

 陣営には自民党本部から、1億5000万円もの選挙資金が提供されていた。一部の現金提供については、党の資金が原資だったとの証言が裁判で出ている。

 自民党にも真相を解明する責任がある。だが、総裁の菅義偉首相は「検察に押収された書類が返還され次第、党の公認会計士が監査する」と述べるにとどまり、真摯(しんし)に取り組む姿勢を見せない。

 二階俊博幹事長は「他山の石として、しっかり対応していかなくてはならない」と語り、まるで無関係だと言わんばかりだ。

 夫妻の議員辞職で幕引きにはならない。



河井被告辞職へ 買収の原資に迫らねば(2021年3月24日配信『東京新聞』-「社説」)

 元法相、河井克行被告が2019年参院選での買収を認め、衆院議員の辞職を表明した。河井氏側には自民党本部から1億5000万円が提供された。買収の原資になったのではないか、解明が必要だ。

 妻の案里前参院議員=有罪確定=が立候補、当選した参院選広島選挙区での買収事件。公職選挙法違反(買収、事前運動)の罪に問われた克行被告は無罪を主張していたが、被告人質問で一転「選挙買収罪の事実については争わない」と買収を認めた。
 妻との共謀は「全く事実と異なる」と否定し、「全ての責任は私にある」と議員辞職を表明した。

 国民の代表である議席を、買収によって得ようとしたことは、民主主義の根幹を損ねる、看過できない犯罪だ。罪を犯した意識があるのなら、なぜもっと早く議員辞職しなかったのか。

 3月15日までに辞職すれば、4月25日に補欠選挙となる。離党したとはいえ自民党にとって厳しい戦いが加わるのを避ける意図があったのではないか。「遅いくらいだ」(山口那津男公明党代表)と批判が出るのも当然だ。

 この事件で明かされるべきは案里前議員に肩入れした菅義偉首相(当時官房長官)や党本部は選挙違反に無関係と言えるのか、参院選公示前の19年4〜6月、夫妻の政党支部に党本部から支出された1億5000万円が買収に充てられたのではないか、という問題だ。

 克行被告のこれまでの公判では1億5000万円の一部が、案里陣営の運動員に提供された資金の原資になったとする元陣営会計担当者の供述調書が明らかにされた。

 首相は党の提供資金が「党勢拡大のために広報紙を全県に複数回配布した費用などに充てられた」と買収原資との見方を否定しているが、にわかには信じ難い。

 1億5000万円は通常の10倍ともされる破格の金額。うち1億2000万円は政党交付金で、国民の税金が買収に使われたと疑われて当然だ。克行被告ら関係者を国会に招致するなどして、買収資金の全貌を徹底的に究明する必要がある。

 自民党の二階俊博幹事長は記者会見で、克行被告について「本人も大いに反省しているようだが、党もこうしたことを他山の石として、しっかり対応していかねばならない」と述べた。

 「他山の石」などではなく、自民党自身の問題だ。不都合な事実と向き合わない身勝手な政治姿勢こそが、大型買収事件を招いたのではないか。猛省を求めたい。



祖父が莫大(ばくだい)な遺産を残してくれたのだが、すべて受…(2021年3月24日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 祖父が莫大(ばくだい)な遺産を残してくれたのだが、すべて受け取るには条件がある。今のお金で約25億円を1年の間に使い果たすこと。1920年の米国小説「ブリュスターズ・ミリオンズ」。何度も映画化されているのは設定の面白さのおかげだろう

▼1年で25億円を使うのは簡単なようだが、さらに条件がある。不動産や株など資産を残してはならぬ。寄付やギャンブルに使えるのは5%だけ。使用人らに支払えるのは正当な報酬額のみ。うーんとなるだろう。困った主人公は負けるために市長選に出馬するが…という筋書きである

▼同情する気はないが、この人もやはり使わねばならぬ大金を背負わされていたのではないか。元法相の河井克行被告。参院選で妻の案里前参院議員を当選させるため、買収目的で地元議員に金を配ったことを一転して認めた

▼議員辞職するそうだが、当然である。法相まで務めた者が金で票を集めた。それは民主主義の根幹につばを吐く行為であり、議員バッジを着ける資格はない

▼「罪」は自民党本部から夫妻に送金された1億5000万円の選挙資金にはないのかと考え込む。党から当選のためにと出た金。夫妻にはどうあっても使わねばならない金に見えたかもしれない

▼その金がでたらめな買収のきっかけになったとすれば、民主主義につばを吐いたのは決して夫妻2人だけではなかろうて。



河井氏辞職表明 買収の経緯を説明せよ(2021年3月24日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 話すべきことを全て説明する必要がある。

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件である。公選法違反の罪に問われた元法相の衆院議員河井克行被告がきのう、東京地裁で開かれた公判で買収を認めた。

 起訴状によると、克行氏は地元議員ら100人に計2900万円を配り、妻の案里前参院議員への集票を依頼したとされる。

 克行氏は「選挙買収罪の事実については争わない」と述べ、議員辞職も表明した。これまでは「有望な政治家への寄付」などとして無罪を主張していた。

 説明が一転した理由はさまざまだろう。地元議員らが証人尋問で「集票依頼だと思った」などと証言し、供述調書を含めて100人中94人が買収を認めていた。

 先行した案里前議員の判決では、克行氏が主導的立場と認定されている。追い込まれた末の判断なのだろう。法相辞任から約1年半だ。遅きに失したといえる。

 買収は政治への民意の反映を妨げる。額も大きく、配布先も多い。克行氏の責任は極めて重い。自らの行為を反省するのなら、買収の経緯を詳細に語るべきだ。国会に対する説明責任も問われる。

 まず買収の動機だ。広島選挙区は、現職候補を推す自民党県連の反対を押し切り、党本部が案里氏を公認した。現職は安倍晋三前首相との確執が取り沙汰されていた。官邸主導だったといえる。

 安倍前首相が応援に入り、複数の首相秘書も広島入りした。官房長官だった菅義偉首相も現地で演説している。克行氏は安倍氏や菅氏からどんな指示を受けたのか。詳細に明らかにするべきだ。

 自民党は選挙資金として破格の1億5千万円を夫妻に入金した。うち1億2千万円は税金を基にする政党助成金だ。公判では陣営の元会計担当者が買収原資を「自民党本部からの入金」と証言した。税金が買収に使われたのなら言語道断だ。克行氏は買収原資も明らかにしなければならない。

 自民党はこれまで、資料が検察に押収されたことなどを理由に、巨額資金を入金した詳しい経緯や使途などの説明をしてこなかった。公認候補の選挙で行われた不正なのに責任を果たしてない。

 菅首相は21日の党大会で、河井夫妻の事件や、吉川貴盛元農相が収賄罪で在宅起訴された鶏卵汚職事件に触れなかった。離党した議員だから関係ないという姿勢なのか。「政治とカネ」の問題に対する首相と党の認識は、倫理や規範と懸け離れている。



河井元法相 議員辞職へ(2021年3月24日配信『福井新聞』-「論説」)

資金の解明は党の責務だ


 2019年7月の参院選挙を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた元法相で衆院議員の河井克行被告が東京地裁の被告人質問で、これまでの無罪主張から一転して起訴内容の大半を認め、議員辞職の意向を表明した。

 公判で「有望な政治家への寄付」などと徹底抗戦の構えを見せていた。だが、被告人質問では「認めるべきは認めることが、長年にわたり支持していただいた後援者に対する政治家としての責任の取り方と考えるに至った」と述べた。

 買収事件の舞台となった広島選挙区で初当選した妻の案里前参院議員が4人の買収について共犯として有罪判決を受け、今年2月に議員辞職。さらには自身の公判では一連の証人尋問で94人が買収を受けたと認めるなど外堀を埋められ、罪を認める以外に選択肢はなかったようだ。

 ただ、あまりにも遅すぎる決断だったと言わざるを得ない。この事件により地元は混乱を極め、いまだに尾を引いているという。逮捕後に河井夫妻に支払われた歳費や期末手当は約5千万円に上るとされ、新型コロナウイルス禍にあえぐ国民には不信を通り越し、怒りさえ覚える人も少なくないはずだ。夫妻はきちんと説明責任を果たし、謝罪する必要がある。

 この選挙で自民党本部は地元県連の反対を押し切り現職候補に加え、案里前議員を擁立。安倍晋三前首相の秘書らが地元を回り支援を呼び掛けたほか、当時官房長官だった菅義偉首相も応援に駆けつけている。

 問題は、党本部が克行被告の政党支部らに振り込んだ計1億5千万円の選挙資金が、2900万円もの買収資金になったのに加え、買収を企図する引き金になった可能性を否定できないことだ。現職側への入金とは10倍もの差がある。うち1億2千万円は税金が原資の政党交付金で使途の報告が義務付けられている。

 しかし、夫妻の政党支部は検察に押収されたことを理由に使途を記載しない報告書を県選管などに提出。菅首相も「返還され次第、党の内規に照らし監査を行う」と述べているが、前向きとは言い難い。克行被告は否定しているが、公判では元会計担当者がスタッフへの現金供与に関して「党本部からの入金が原資となった」という供述調書が読み上げられている。

 克行被告の辞職意向について、自民党の二階俊博幹事長は「党としても他山の石としてしっかり対応していかなければならない」と述べた。多額の選挙資金の決定権者は総裁である首相や幹事長ら党執行部以外にない。ならば、夫妻は無論、関係者から事情を聴くなど党を挙げて調査し公表するのが責務といえよう。



克行被告辞職表明 買収の全容、説明尽くせ(2021年3月24日配信『中国新聞』-「社説」)

 徹底抗戦の構えから一転、選挙買収を認め、ようやく議員辞職の意向も表明した。

 一昨年の参院選を巡る大規模買収事件で公選法違反罪に問われている元法相の衆院議員河井克行被告がきのう始まった被告人質問で、起訴内容の大半を認めた。

 広島選挙区から立候補した妻の案里氏を当選させるため、地元議員ら100人に計2900万円余りを配ったとされる。

 克行被告は辞職について「逃げることなく認めるべきは認めることが、長年にわたり支持していただいた後援者に対する政治家としての責任の取り方だ」と述べたが、遅きに失したと言わざるを得ない。

 ただ昨年8月の初公判以来続けてきた無罪主張を翻し、なぜこのタイミングで議員を辞めるのか疑問点も多い。

 案里氏とともに記者会見を開き、地元有権者はもちろん、国民に対する説明責任を果たすべきだ。そしてきちんと謝罪することこそ政治家としての最低限の責任の取り方だろう。

 一昨年の参院選では、自民党本部が地元県連の反対を押し切って、改選2議席の広島選挙区で現職ベテラン候補に加え、案里氏を擁立し、激戦となった。

 克行被告は被告人質問で、「2議席を獲得する党の方針を実現するため、妻の当選を得たいという気持ちが全くなかったとはいえない」と述べた。

 県連が現職候補を全面的に応援する一方で、案里氏への支援が全くなかったことが事件の背景にあるとし、「県連が嫌がらせをしたり、妨害をしたりもした」と恨み節を連ねた。

 自民党本部から1億5千万円もの資金が河井夫妻側に提供されたことも見逃せない。この資金提供が買収事件を誘引した疑念が拭えないからだ。

 1億5千万円のうち1億2千万円は、税金が原資の政党交付金で、使途の報告が義務付けられている。夫妻の政党支部はしかし、いずれも関係書類を検察当局に押収されていることを理由に、使途を記載せずに報告書を県選管に提出している。

 ことし2月の公判では、その一部が運動員買収の原資に充てられたとする案里氏陣営の会計担当者の供述調書も明らかになっている。

 菅義偉首相は「押収された関係書類が返還され次第、党の内規に照らして監査を行う」と繰り返し述べている。だが、それでは遅い。一刻も早く河井夫妻らから事情を聞き、使途を明らかにしなければ、国民は納得すまい。

 大規模買収事件は、吉川貴盛元農相が議員辞職した鶏卵生産大手アキタフーズの贈収賄事件にも飛び火した。菅政権発足以降、自民党で「政治とカネ」の問題に絡む議員辞職は、克行被告で3人目となる。

 政治不信の深まりは深刻だ。自民党が案里氏側に巨額資金を提供し、参院選で全面支援をした経緯や理由を公にするのが党としての責務といえよう。

 お金を受け取った側の責任も重い。広島県議会は政治倫理審査会を設け、被買収者とされる県議13人について「公正を疑われるような金品の授受」があったかどうか調査を始めている。まず県議会が自浄能力を示さなければ、「金権政治」との決別への一歩は踏み出せまい。



他山の石(2021年3月24日配信『中国新聞』-「天風録」)

 良心に照らし、やましい政治行動をしたことはない―。逮捕直前、そう強調していたのは何だったのだろう。参院選での公選法違反罪で公判中の河井克行元法相。きのう始まった被告人質問で従来の無罪の主張を一転させ、買収を認めた

▲けじめのつもりか、衆院議員を辞職するとも述べた。「当然」との声が与党からも出る中、聞き捨てならぬ言葉が自民党の二階俊博幹事長から飛び出した。「他山の石としてしっかり対応していく」。離党したら、もう他人だとでも言うのだろうか

▲本来、よその山から出た石でも自分の宝石を磨くのに役立つというのが他山の石。買収事件の時は自民党の現職で、その後、大臣にまで登用したのだから、よそではなく自分の山では? そう批判されても仕方なかろう

▲党本部は、この選挙で元法相の妻の陣営に1億5千万円もの金をつぎ込んでいた。落選した当時の現職に渡した額の10倍である。しかもその大半は税金とくれば党も責任は免れられない

▲元法相も自民党も、金の流れを明らかにしない限り責任は果たせまい。けじめをつけることにもならない。もちろん金を受け取ったのに、居座り続けている地方議員も同じである。



河井元法相が議員辞職へ(2021年3月24日配信『佐賀新聞』-「論説」)

党の責任を明確にせよ

 2019年7月の参院選を巡る買収事件で公選法違反の罪に問われ、無罪を主張していた元法相の衆院議員河井克行被告が東京地裁での被告人質問で一転、起訴内容の大半を認め、議員辞職の意向を表明した。広島選挙区から立候補した妻の案里前参院議員を当選させるため、地元議員ら100人に現金計2900万円を渡したとされる。

 公判で「有望な政治家への寄付」などと反論したが、案里前参院議員は4人の買収について共犯として一審東京地裁で有罪判決を受け、今年2月に辞職。この判決で克行被告は買収全体を計画し、主導的な立場にあったと認定された。また一連の証人尋問では94人が買収を受けたと認めた。

 克行被告は辞職について「認めるべきは認めることが、長年にわたり支持していただいた後援者に対する政治家としての責任の取り方と考えるに至った」と述べたが、あまりにも遅すぎたと言わざるを得ない。できるだけ早く、買収事件により混乱を極めた地元に対し案里前議員とともに説明責任を果たし、きちんと謝罪する必要がある。

 さらに収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相も含め、昨年9月の菅政権発足以降、自民党で「政治とカネ」の問題に絡む3人目の議員辞職となり、政治不信の深まりは深刻だ。自民党は案里前議員側に巨額資金を提供し全面支援した経緯などを公にし、党としての責任を明確にすべきだ。

 被告人質問で克行被告は「2議席を獲得する党の大方針を実現するため、案里の当選を得たいという気持ちが全くなかったとは言えない」と述べた。自民党本部は地元県連の反対を押し切り、改選2議席の広島選挙区で現職候補に加え、案里前議員を擁立。安倍晋三前首相の秘書らが前議員の陣営スタッフとともに地元議員や企業などを回り、支援を呼び掛けた。

 そうした中、党本部は前議員が支部長の政党支部や克行被告の政党支部に合わせて1億5千万円を振り込んだ。現職側への入金とは10倍もの開きがあり、後に自民党内から「あまりに不公平」と批判の声が上がった。

 この1億5千万円のうち1億2千万円は税金が原資の政党交付金で使途の報告が義務付けられている。しかし夫妻の政党支部は、いずれも検察当局によって関係書類を押収されたことを理由に使途を記載せず、報告書を県選挙管理委員会などに提出。買収に使われた疑いが指摘されている。

 克行被告は否定しているが、自身の公判で、党本部からの資金を受領する口座を開設した元会計担当者が陣営スタッフへの現金提供について「党本部からの入金が原資となった」とした供述調書が読み上げられた。資金の一部が買収に使われた可能性を示す供述だ。

 菅義偉首相は「検察当局に押収された関係書類が返還され次第、党の内規に照らして監査を行う」と答弁した。だが、それでは遅い。河井夫妻はもちろん、当時の陣営スタッフらから幅広く事情を聴き、早急に使途を確定させる必要がある。

 併せて案里前議員側への尋常ではない肩入れを巡り、克行被告と近い関係にあった安倍氏や官房長官だった菅氏がどのように関わったかも調査し公表するのが党の責務といえよう。疑惑解明に真剣に取り組まず、幕引きを急ぐばかりでは信頼回復は望むべくもない。(共同通信・堤秀司)



河井議員辞職表明 党の責任明確にすべきだ(2021年3月24日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 一昨年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われ無罪を主張していた元法相で衆院議員の河井克行被告が23日、一転して起訴内容の大半を認め、議員を辞職する意向を表明した。

 遅きに失した感は否めない。補欠選挙の実施を避けるためにこのタイミングでの辞職を選択したとみることもできよう。ただ、いずれにしても、法務行政のトップまで務めた政治家として、民主主義の土台をゆがめた責任は重く受け止めるべきだ。今後は真実を包み隠さずに語ってもらいたい。

 この選挙では、自民党本部が広島県連の反対を押し切り、ベテランの現職候補に加えて元法相の妻の案里前議員を新人候補として擁立。陣営に1億5千万円を投入し、当時官房長官だった菅義偉首相らが全面支援した。その結果、案里前議員は当選したもののベテラン候補は落選した。

 元法相は、選挙で党がどのような役割を果たしたのかも洗いざらい説明する必要がある。党も巨額の選挙支援の経緯などを公表し、責任を明確にすべきだ。

 起訴状によると、元法相は地元議員ら100人に計約2900万円を配ったとされる。

 23日の被告人質問で元法相は、自民党が2議席獲得を狙い案里前議員を擁立した経緯を踏まえ、「2議席を獲得する党の大方針を実現するため、案里の当選を得たいという気持ちが全くなかったとは言えない」と説明。「有望な政治家への寄付」などとしてきた従来の主張を翻した。

 案里前議員に執行猶予付きの有罪判決が言い渡された際、東京地裁は元法相が現金供与の全体を計画したと認定。一連の証人尋問では94人が買収を受けたと認めた。だが、買収資金がどこから出たかは分かっていない。党が投入した1億5千万円の使途も確定していない。党は河井夫妻や当時の陣営スタッフから事情を聴き、金の流れをはっきりさせるべきだ。

 菅政権が発足してわずか半年で、自民党の関係議員から3人目の辞職者が出ることになる。いずれも「政治とカネ」絡みの問題でだ。こうした不公正な政治姿勢を改めない限り、国民の信頼を回復することは難しかろう。





河井買収事件 自民にも責任(2021年3月23日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 元法相の河井克行被告が東京地裁の公判で2019年7月の参院選での買収行為を認め、衆院議員を辞職する意向を表明した。

 候補者だった妻の案里前参院議員はすでに有罪が確定し、2月に当選無効となった。政治不信を高めた責任は極めて重い。多額の活動費を提供して陣営を後押しした自民党は、資金の流れを改めて詳細に調査して公表すべきだ。

 克行被告は23日の被告人質問で「選挙買収罪を争うことはしない」と述べ、起訴内容のうち地元議員らへの買収行為の大半を認めた。これまでは地元議員らへの現金提供を認める一方、「選挙運動を依頼する趣旨ではない」と無罪を主張してきた。

 公判の証人尋問や供述調書の読み上げでは、計約2900万円の現金を受け取ったとされる100人のうち、94人が投票の取りまとめの趣旨だと認めた。

 案里前議員は今年1月に東京地裁で懲役1年4月、執行猶予5年の判決を受け、控訴せずに有罪が確定した。克行被告も自身の公判で買収行為を大筋で認めたことで、一連の事件の裁判は大きな山を越えた。

 案里前議員は自民党執行部の肝煎りで参院広島選挙区から出馬し、党本部が陣営に計1億5千万円もの活動費を振り込んだ。党側は資金は買収とは無関係と説明しているが、大がかりな買収事件の背景や資金の出どころをさらに調査してきちんと説明すべきだ。

 安倍前政権では河井夫妻の買収事件のほか、元経済産業相の菅原一秀衆院議員による有権者への香典などの提供が判明した。告発を受けた東京地検特捜部は不起訴処分(起訴猶予)としたものの、東京第4検察審査会の「起訴相当」の議決を受けて再捜査する。

 この数年だけをみても、自民党の所属議員の選挙違反や贈収賄などの事件や疑惑、不祥事が次々に明るみに出た。党執行部は離党や議員辞職をただ傍観するのでなく、不正の実態解明と再発防止に本気で取り組む責任がある。





クリーン選挙(2021年2月18日配信『福島民友新聞』-「あぶくま抄」)

 公選法違反事件で有罪が確定した前参院議員の広島選挙区で4月25日に行われる選挙は「補欠選挙(補選)」ではなく「再選挙」になるという。2つの選挙は、何が違うのだろうか。

 公選法によると、補選は議員の死亡や辞職があった場合に行う。一方、必要な数の当選人が決まらなかったり、当選が無効になったりした場合は再選挙になる。広島の前議員は有罪確定前に辞職したが、公選法違反が確定し、そもそも当選がなかったことになるため選挙をやり直すそうだ。

 総務省によると、国政選挙では1950(昭和25)年以降、衆院で3件、参院では2件あっただけで、かなり珍しいケースといえるだろう。広島の前議員には歳費や期末手当などが支払われた。歳費などの返納を求める規定はないため、前議員は返す必要はないという。どこか矛盾を感じる。

 任期満了に伴う郡山市長選は告示まで2カ月を切った。現職と四人の新人が名乗りを上げている。流動的な面もあるが、五人による戦いとなれば、市町村合併で現在の郡山市になった一九六五年以降で最も多い。過熱せず、クリーンで活発な議論に期待したい。万一にも再選挙などは御免被る。





本当の悪(2021年2月9日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 参院議員の河井案里被告が辞職して、参院選を巡る公選法違反の罪での有罪判決も確定した。夫で元法相の衆院議員克行被告と共謀し、広島県議4人に計160万円を渡した買収事件である

▼辞職は当然だが、説明責任を果たさなかったことは許されまい。案里氏には、当時の安倍晋三首相や菅義偉官房長官らによる強力なてこ入れがあった。自民党本部から1億5千万円もの選挙資金が、夫妻側に提供されていたことも忘れてはならない

▼選挙違反や贈収賄などの汚職事件は、「被害者なき犯罪」などと言われることもある。だが、今回の買収の原資は、税金から支出された政党交付金が疑われている。曲げられた選挙や政治の真の被害者は国民である

▼熊本県警は今春の組織改正で、選挙違反や贈収賄事件の捜査態勢を強化すると発表した。担当の捜査2課員を12人増強し、事件の掘り起こしと徹底的な摘発を目指す方針だ

▼その報を聞けば、どんな顔をしただろうか。かつて、同課の特捜班長として、数々の事件捜査を指揮した名刑事が先月、亡くなった。県内ではこの十数年、汚職事件の摘発は年に1件あるかないかだが、元班長は1年間に県内の3町長を次々に収賄容疑で摘発したこともある。「巨悪は眠らせない」の名言で知られたのは、伊藤栄樹・第32代検事総長だが、それを体現した人でもあった

▼彼は口癖のように言っていた。「汚職や選挙違反はネクタイを締めた人間が堂々とやる犯罪。本当の悪だ」。悪いやつを眠らせてはならない。





案里議員辞職 説明責任放棄納得できぬ(2021年2月8日配信『新潟日報』-「社説」)

 自らの選挙に関わる買収事件で地元を大きく混乱させ、有権者や国民の不信を招いた。多額の歳費など受け取りながら国会議員としての職責も果たしていなかった。辞職は当然だ。

 だが、失職直前の議員辞職であり遅きに失したと言うほかない。国民への説明責任を放棄し続けていることも厳しく問われなければならない。

 2019年の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件で一審有罪判決を受けた河井案里被告が、参院議員を辞職した。控訴もせず、有罪が確定した。

 案里前参院議員は有罪が確定すれば当選自体が無効となり、失職することになっていた。辞職は3日、有罪確定は5日だ。

 判決によると、案里前参院議員は夫で元法相の衆院議員克行被告=公選法違反罪で公判中=と共謀し、19年3~5月に県議4人に計160万円を渡した。

 辞職を決めたとはいえ、公判で無罪を主張した案里前参院議員は判決に不満だったようだ。

 「金員で人の心を買うことはできないというのは私の信念であり、有権者を裏切るようなことは決してしていない」。書面で発表したコメントでは、こう反論した。

 一方で「たとえ一審でも信頼を回復できなかったことは政治家として情けなく、政治的責任を引き受けるべきだと考えた」とした。

 悪いことはしていないが、責任を取って身を引く-そう言いたいのだろう。自らに都合のいい言い分を並べ立てている印象が強い。

 案里前参院議員は法廷で語りはしたが、事件に関し自身が国民や有権者に真摯(しんし)に説明しようとする態度は見えなかった。

 「捜査の区切りが付いたところで説明したい」と話したことはあるものの、約束は一向に守られず、夫妻で不誠実な言い逃れや雲隠れを続けた。

 辞職に際しても事件について直接の説明を避けた格好だ。

 こうした対応については、所属していた自民党内からも批判の声が上がっている。

 野党は「国会での説明責任を一切果たしていない」と厳しく批判、国会招致も求めた。当然だろう。

 自民党の責任も問われる。

 党本部は選挙で案里前参院議員側に異例のてこ入れをした。破格の1億5千万円を提供、当時の安倍晋三首相が全面支援をした。官房長官時代の菅義偉首相も応援で現地入りしている。

 ところが辞職を受けて菅首相は「国民の批判が広がっていることは重く受け止める」とし、政治家は疑念を抱かれないようにするべきだと一般論を述べた程度だ。

 二階俊博幹事長も「国民の信頼回復に努める」などとするコメントを出すにとどまった。事の重大さに比して、あまりに軽いと思わざるを得ない。

 1億5千万円を提供した理由やその使途など、他の「政治とカネ」の問題とともに国会論戦などを通じ、今後も厳しくただしていかなければならない。





案里参院議員辞職 事件の構図、徹底究明を(2021年2月7日配信『琉球新報』-「社説」)

 公職選挙法違反で東京地裁から有罪判決を受けた河井案里参院議員が議員辞職した。有罪確定なら当選無効となる前日の辞職だった。失職となる前に自ら辞職を選んだのは遅かったとはいえ当然だ。

 しかし、自ら起こした大規模買収事件に関するまともな説明を一切せず、国民の政治不信を増幅させた責任は大きい。巨額の党費を投じ、案里氏当選を支援した菅義偉首相をはじめ、自民党の責任もあいまいなままだ。公選法違反で逮捕、起訴された夫の河井克行元法相の裁判はまだ続いている。事件の構図と党費の使い道について、徹底究明が必要だ。

 案里氏は2019年、参院選広島選挙区から立候補した。同選挙区では自民現職と野党系候補が2議席を分け合っていたが、案里氏は当時の安倍晋三首相、菅官房長官の強い支援を受け、自民現職を抑え初当選した。その際、自民党本部から現職の10倍に当たる1億5千万円の活動資金が提供された。

 克行被告は地元の議員や首長計100人に計2900万円を配ったとして公判が進む。案里氏はそのうち、選挙前の同年3~5月に克行被告と共謀して広島県議4人に計160万円を渡したと認定した判決が確定した。

 自民党も河井夫妻も捜査で書類を押収されたことを理由に活動資金の明細を明らかにしていない。菅首相は判決後も「広報紙の配布などに使われたと報告を受けている」と述べただけで使途は不明だ。買収の資金だったとの疑念はぬぐえない。そのうち1億2千万円は税金から支出される政党交付金であり、国民として納得できない。

 案里氏には昨年6月に東京地検特捜部に逮捕されてからも歳費と2回の期末手当、文書通信交通滞在費など含め約2100万円が支払われた。疑惑が浮上した19年10月以降、たびたび国会を欠席し、10月の保釈後も本会議を全て欠席した。法を犯したり、職務を果たせなかったりすれば返還させる仕組みが必要だ。

 菅政権発足後、与党議員の辞職は3人目だ。体調不良を理由に昨年末に議員辞職した吉川貴盛元農相は鶏卵生産業者からの現金受領で在宅起訴された。公明党の幹事長代理だった遠山清彦衆院議員は緊急事態宣言下の深夜に銀座のクラブを訪れた上、資金管理団体がキャバクラなどへ支出していたことも明るみに出て辞職した。規律の緩みはいかんともしがたい。

 菅首相も自民党も、安倍前首相の桜を見る会前夜の夕食会費補塡(ほてん)など、安倍長期政権から続く「政治とカネ」の問題について、説明責任を果たそうとはしない。こうした姿勢で国民の信頼を得られるだろうか。

 辞職が幕引きとはならない。菅首相自らの説明が必要なことはもちろんだが、国会は国政調査権を発動して全容を明らかにするべきだ。





河井案里氏辞職 説明なしで幕引きを図るのか(2021年2月5日配信『読売新聞』-「社説」)

 大規模な買収事件によって、政治の信頼を失墜させた事実は重い。議員辞職は当然である。

 2019年の参院選を巡る公職選挙法違反事件で、有罪判決を受けた河井案里被告が参院議員を辞職した。期限を目前に控え、控訴の断念を表明した。有罪が確定して失職する前に、自ら退いた形だ。

 車上運動員に対する違法報酬事件では、案里被告の秘書の有罪が確定している。当選無効を求める連座制訴訟を起こされており、失職の可能性は濃厚だった。追い詰められた末の進退判断は、遅きに失したと言えよう。

 東京地裁判決は、案里被告が夫の河井克行・元法相と共謀し、票の取りまとめなどの報酬として、地元・広島の県議4人に計160万円を提供したと認定した。そのうえで、懲役1年4月、執行猶予5年を言い渡した。

 克行被告は、地元議員ら100人を買収した罪で起訴された。案里被告は、夫の裁判が進行中だとして、金銭授受の背景などを明らかにしないままとなった。

 夫妻はこれまでも、捜査や公判を理由に説明を拒んできた。何ら疑問に答えず、幕引きを図ることは許されない。案里被告は説明責任を果たすべきだ。

 すでに自民党を離党したとはいえ、案里被告の出馬を後押しした党の対応も問題である。

 案里被告は国会を長く欠席し、職責を果たしてこなかった。早期の辞職を促し、政治の信頼回復に努めるのが、政権政党の役割ではなかったのか。案里被告側に多額の資金を支出した経緯や理由も、うやむやにしている。

 最近の自民党内では、議員の倫理観の欠如ぶりが目につく。

 吉川貴盛・元農相は健康問題を理由に辞職したが、大臣室などで業者から現金を受け取ったとして収賄罪で起訴された。統合型リゾートを巡る汚職事件でも衆院議員が起訴された。離党はしたが、今も議員の職にとどまっている。

 菅首相は自民党総裁として、党内の引き締めを迫られよう。

 最近も、新型コロナウイルスの緊急事態宣言下で、自民、公明両党の議員が深夜まで東京・銀座のクラブを利用し、離党や議員辞職に追い込まれたばかりである。

 案里被告の辞職に伴い、4月には参院広島選挙区で補欠選挙が行われる。衆院北海道2区、参院長野選挙区の補選もある。

 有権者から厳しい視線を向けられていることを、与党は認識しなければならない。



案里議員が辞職 金権選挙一掃へ力尽くせ(2021年2月5日配信『山陽新聞』-「社説」)

 一昨年夏の参院選広島選挙区での公職選挙法違反事件で、東京地裁から買収の罪で有罪判決を受けた河井案里氏が参院議員を辞職した。控訴期限前日のことだ。控訴も断念したため有罪が確定。当選は無効となった。

 新型コロナウイルスにより国民生活が脅かされ、政治の役割が増している中で、国会議員の役割は果たせなかった。それなのに逮捕後にも歳費などとして2100万円以上を受け取った。辞職は当然だが、遅すぎたと言えよう。

 夫で元法相の克行被告は、案里氏の当選のために、地元の首長や議員ら100人に計2900万円を配った疑いで、別に裁判が進んでいる。案里氏はこのうち4人に計160万円を渡したと認められ、懲役1年4月、執行猶予5年が言い渡された。

 案里氏は、この判決に納得してはいないものの、信頼を回復できなかった政治的責任をとって辞職したという。「これ以上争いを長引かせ、混乱を生じさせるのは本意でない」などと控訴しない考えも明らかにした。

 ただ、会見には応じないまま、報道陣にコメントを発表しただけだ。夫の裁判が進行中との理由のようだが、仮にも有権者に選ばれて当選した議員だったのだから、自身の対応について、丁寧に説明する必要があろう。

 夫の克行氏は、引き続き裁判で争う構えだと言うが、法相まで務めた経歴を考えても、国民に不信感を招いた政治責任を認め、まず議員を辞職すべきだろう。

 案里氏を擁立した自民党の対応も政治不信を増幅させている。もともと安倍晋三前首相と、現首相の菅義偉氏が官房長官時代の選挙である。改選2議席の独占を狙い、党本部主導で地元県連の反対も押し切って擁立したという。

 党本部は1億5千万円もの巨額な資金を陣営に提供した。国民の税金で賄われる政党交付金も含まれている。この資金の一部が買収に使われた疑念も残っている。

 河井夫妻はすでに離党しているが、自民党総裁でもある菅首相は、国民の批判を「重く受け止めている」としたものの、「政治家は疑念を抱かれないようにすべきだ」との発言を続けている。党が無責任体質のままでは、国民の信頼回復を成し遂げられるはずがあるまい。

 参院選地方区の選挙活動は、個人後援会では賄い切れず、首長や地方議員が地区ごとに担う。6年に1度の改選でもあり、候補者との関係には濃淡がある。応援に力を入れてもらうため領収書不要の金銭を渡すケースは、広島県に限らないのではないか。

 今回は自民党候補同士が激しく争ったことで、金権選挙を浮かび上がらせたと言えよう。断罪された議員が辞職しただけでは意味がない。事件をきっかけに、選挙とカネのあり方に踏み込んで、改革しなければならない。



河井案里議員が辞職/党としての責任果たせ(2021年2月5日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 2019年7月の参院選を巡り公選法違反の買収などの罪に問われ、一審東京地裁で有罪判決を受けた参院議員河井案里被告が議員辞職した。全面無罪を主張したが、判決では夫で元法相の衆院議員克行被告が買収を主導して地元議員ら100人に計2900万円余りを配り、うち4人に対する160万円について共謀したと認定された。

 河井前議員はコメントを発表。「これ以上争いを長引かせ、混乱を生じさせるのは本意ではない」とし、控訴しない考えを示した。自身の有罪確定などで失職する前に自ら進退を決した形になったが、検察側主張を覆せる見込みはほぼないとみられ、日に日に批判も厳しさを増す中、ほかに選択肢はなかったろう。

 辞職は当然だが、最後まで公の場で説明責任を果たさなかったのは、国民を代表する国会議員として許されない。さらに買収事件の背景に当時の安倍晋三首相や菅義偉官房長官による強力なてこ入れがあり、その中で夫妻側に自民党本部から提供された1億5千万円もの選挙資金の使途すら明らかになっていないことを忘れてはならない。

 その大部分は国民の税金から支出された政党交付金だった。これが金権選挙の引き金になったという疑念が拭えない。自民党は安倍氏や菅首相の関わりも含め資金提供の経緯や使途を明らかにするなど、党としての責任を果たす必要がある。

 克行被告は首相補佐官などを務め、安倍氏とは近い関係にあった。改選2議席の広島選挙区で自民党本部が19年3月、地元県連の反対を押し切り、現職に続いて2人目の候補として河井前議員を公認した後、安倍氏の秘書らが広島入り。河井前議員の陣営スタッフと行動を共にし、地元議員や有力者、企業などを回って支援を呼び掛けた。

 また克行被告は安倍氏秘書らのスケジュールや、広報誌の費用、陣営スタッフの人件費などを記した資料を作り、安倍氏に持参したとされる。

 その年4月から6月にかけて、河井前議員が支部長の政党支部や克行被告の政党支部に合わせて1億5千万円が党本部から振り込まれた。現職側への入金と10倍もの開きがあった。選挙戦では安倍氏や菅氏が河井前議員の応援演説に駆け付け、支援を訴えた。克行被告は菅氏にも近かった。

 結果、現職は落選し、河井前議員は初当選したが、党本部からの1億5千万円のうち、1億2千万円に上る政党交付金の使途が今もって分からない。税金が原資の交付金は使途の報告が義務付けられているが、夫妻の両政党支部は検察当局に資料を押収されたことを理由に使途を記載せず、報告書を広島県選挙管理委員会などに提出した。

 自民党も、二階俊博幹事長が「党としては細かく追究しておらず、承知していない」とした。しかし離党したとはいえ、党に所属していた時期に買収に使われた疑いが指摘されている以上、きちんと調査し解明、公表する責任が党にはある。

 「政治とカネ」の問題で、菅氏は説明を政治家任せにしてきた。放送事業会社に勤める長男が所管官庁の総務省幹部に法に抵触する可能性のある接待をしたとされる問題でも「長男には確認していない」などと人ごとのような答弁に終始した。このままでは政治への国民の信頼回復が一層遠のくことになりそうだ。



【案里議員辞職】説明なしでは済まない(2021年2月5日配信『高知新聞』-「社説」)

 公選法違反罪で有罪の一審判決を受けた河井案里参院議員が議員辞職した。
 辞職は当然であり、遅すぎる。

 案里前議員は2019年参院選広島選挙区を巡り、公選法違反(買収、事前運動)罪に問われた。東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。「民主主義の根幹である選挙の公正を害した」と厳しく指摘した。

 控訴期限が迫る中での進退決定だ。争いを長引かせ混乱を生じさせるのは本意ではないと、控訴しない考えを明らかにした。有罪が確定すれば当選無効で失職となる。その前に辞職を選んだことになる。

 案里前議員は、一審判決を不服としながら、信頼を回復できなかった政治的責任はとるべきだとするコメントを発表した。

 だが、どのような言葉を並べても、有権者は納得しないだろう。議員職にとどまり続ける一方で、捜査中を理由に説明責任には背を向けるなど、解明と信頼回復に取り組んできたとは思えない。

 地裁判決は、夫で元法務相の衆院議員、克行被告が共謀し、現金供与の全体を計画したと認定した。案里前議員の有罪の確定は、無罪主張をしている元法相にとっても厳しいものになる。

 この選挙を巡り、自民党本部は改選2議席の広島選挙区の独占を狙い、党県連が反対する中、現職と新人の案里前議員を擁立した。当時の安倍晋三首相らが支援したほか、党本部は案里前議員側に現職の10倍の1億5千万円を投入した。

 これが地元議員や首長らの買収資金の原資になったかどうかは注目点だ。この資金には国民の税金で賄われる政党交付金が含まれている。組織を挙げて支援した自民党も説明責任を免れない。

 自民党の二階俊博幹事長は案里前議員の辞職に「私たちも改めて自らを律し、国民の信頼回復に努める」とのコメントを出した。その第一歩は、党の主体的な調査で経緯を明らかにすることだ。

 昨年末には、鶏卵生産業者から現金を受領したとして収賄事件で在宅起訴された吉川貴盛元農相が議員辞職している。「政治とカネ」の問題の根深さを見せつける。

 また、新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下の深夜、与党幹部らが東京・銀座のクラブで飲食したことが発覚した。激しい批判が向けられ、離党や議員辞職に追い込まれた。政治が緊張感を失っていては失望と不信感を招くだけだ。

 菅政権に対する世論の見方は厳しくなっている。指導力へ向けられる不満は、コロナへの対応が主だろう。また、説明して理解を求める姿勢も関わっているように思える。

 政治とカネでは、安倍氏の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会費用補填(ほてん)を巡り、安倍氏の対応を不十分とする世論は多い。ホテル側が作成した明細書などがあれば解明は大きく進むはずだ。疑念を曖昧にしていては信頼は得られない。



案里議員辞職 政治の責任で疑惑解明を(2021年2月5日配信『西日本新聞』-「社説」)

 まさに遅きに失したと言うべきだろう。参院議員を辞職した河井案里氏=自民党離党=のことだ。しかも、コメントを発表しただけで記者会見も開かなかった。最後まで説明責任に背を向けた態度は「政治家失格」と批判されても仕方あるまい。

 案里氏は、2019年参院選広島選挙区を巡る買収事件で公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われ、東京地裁から懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡された。

 判決によると、案里氏は夫で元法相の克行被告=同=と共謀し、地元県議4人に計160万円を渡した。無罪主張だった案里氏はこの判決について「納得しかねる」と反論していた。ならば控訴すればよい。なぜ議員辞職し控訴も断念したのか。「これ以上争いを長引かせ、混乱を生じさせるのは本意ではない」からだという。

 あきれた弁明というほかはない。「金員で人の心を買うことはできないというのは私の信念」との言葉もうつろに響く。

 辞職せずに有罪が確定すれば当選無効となり、失職する。公判が続く克行氏の事件など別の関連裁判の結果によっても連座制が適用され、失職する可能性がある。だからここはやむを得ず議員辞職を選択した-というのが実相なのではないか。

 まともな説明責任を果たさないまま議員バッジを外した案里氏に対し、逮捕後も歳費や諸手当などで2千万円を超す公費が支払われてきた。釈然としない有権者は少なくないはずだ。刑事被告人となった国会議員の歳費などの取り扱いは国会でもっと議論していい。

 改めて強調したいのは、案里氏の議員辞職で幕引きにしてはならないということだ。刑事裁判で明らかにならなかった疑惑を解明するのは、国会など政治の責任である。むしろ、政治の出番がきたと捉えるべきだ。

 河井夫妻側には選挙資金として自民党本部から1億5千万円もの巨費が投入されていた。通常の10倍に相当するという。これが大規模な買収事件の背景にあるのではないか、という指摘は当初からあった。しかし、買収資金の原資について案里氏の裁判では解明されていない。

 案里氏は改選定数2の広島選挙区で2人目の党候補として追加公認された。地元県連の反対を押し切る党本部主導であり、巨額の資金投入は当時の安倍晋三政権が案里氏のてこ入れにいかに熱心だったかを物語る。

 その政権中枢で官房長官だったのが菅義偉首相だ。「離党した」「議員を辞めた」という言い訳は通用しない。自民党と党総裁である首相は疑惑の全容解明へ政治責任を果たすべきだ。





案里議員辞職 説明放棄は許されない(2021年2月4日配信『北海道新聞』-「社説」)

 参院選広島選挙区を巡る買収事件で先月に有罪判決を受けた河井案里被告が参院議員を辞職した。

 判決では夫で元法相の河井克行衆院議員と共謀し、地元議員らに現金を配って票の取りまとめを依頼したと認定された。

 民主主義の土台である選挙の公正性をゆがめる罪に問われた重みを考えれば、議員辞職は当然だ。

 案里被告は逮捕後、保釈されても国会を欠席し、記者会見を開いて説明することもなかった。

 有罪が確定して失職する前に自ら辞職したとはいえ、説明責任は免れない。

 記者会見や国会で真実を明らかにするのが選挙で有権者の負託を受けた者の取るべき態度だろう。

 東京地裁は、広島県議4人に渡した計160万円が買収目的だったとして有罪判決を言い渡した。

 案里被告は公判で「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と主張して無罪を訴えた。ところが、現金を受領した県議らが違法性を認める証言を次々に行い、案里被告の主張は退けられた。

 案里被告は辞職に当たってコメントを出し「政治的責任を引き受ける」として、控訴せずに判決を受け入れる考えを示した。

 ただ、有権者への説明については、元法相の刑事裁判が続いていることを理由に「現段階ではできない」と理解を求めた。

 100人に計2900万円余りを配ったとして、国会議員の夫婦がそろって買収の罪に問われた前代未聞の事件である。深刻な政治不信を招いたのは間違いない。

 選挙で選ばれたのは案里被告自身であり、夫の裁判を言い訳にするのは認められない。

 元法相は菅義偉首相や安倍晋三前首相と近く、政権を挙げて案里被告を支援した。

 陣営には自民党本部から通常の10倍に当たる1億5千万円の資金が提供された。これが買収の原資になったのではとの指摘もある。

 菅首相は昨年9月の自民党総裁選で、資金提供の経緯や使途について「首相になったら責任を持って対応したい」と述べていた。

 しかし、就任後は「党勢拡大のための費用だったと報告を受けている」と繰り返している。約束をほごにするつもりなのか。

 菅政権発足後、政治とカネの問題による自民党議員の辞職は収賄事件で起訴された吉川貴盛元農水相に続き2人目だ。

 本人の証人喚問も含め、疑惑解明に全力を尽くすのが立法府の責務である。



河井案里議員が辞職 説明なき退場許されない(2021年2月4日配信『毎日新聞』-「社説」)

 公職選挙法の買収の罪で、東京地裁から有罪判決を受けた河井案里参院議員が辞職した。控訴期限の前日だった。

 裁判では、無罪を主張していたものの、控訴しない意向も表明した。判決には「納得しかねる」とした上で「政治的責任を引き受ける」とのコメントを出した。

 辞職は当然だが、遅すぎる。陣営の運動員買収が発覚してから1年以上、自身が逮捕されてからでも7カ月が経過している。

 この間、国会議員としての仕事をほとんどしていない。にもかかわらず、昨年は1974万円の歳費が支払われた。

 東京地裁判決は、初当選した一昨年の参院選を巡り、選挙運動の報酬として地元の広島県議4人に計160万円を渡したと認めた。

 案里議員は法廷で現金提供について、直前の統一地方選の当選祝いや陣中見舞いだと述べ、買収目的を否定していた。

 疑惑の渦中にあった時は、捜査を理由に説明を拒んだ。国会でも事件に関して語っていない。

 コメントでは、夫で元法相の克行衆院議員が裁判中のため、詳しい説明はできないと記した。

 しかし、国民を代表する国会議員として、公の場で疑問に答える説明をしないまま、退場することは許されない。

 克行議員も無罪を主張している。だが、案里議員の判決では、一連の現金提供を主導したと指摘されている。案里議員が辞職した以上、選挙運動を取り仕切った克行議員も直ちに辞職すべきだ。

 自民党本部からは、陣営に1億5000万円もの選挙資金が提供されていた。大半は、税金から支出される政党交付金だった。

 買収の原資は不明のままだ。党からの巨額資金が事件につながった疑念は拭えない。

 ところが、菅義偉首相は「所定の手続きを経て交付されている」と繰り返すだけだ。検察に押収された関係書類が返還され次第、党の公認会計士が監査すると述べるにとどまっている。

 案里議員の辞職に伴って、4月に参院広島選挙区の再選挙が、他の補選とともに実施される。

 辞職したからといって幕引きにはならない。自民党には実態を調査して説明する責任がある。



案里議員辞職 克行被告にも進退を迫れ(2021年2月4日配信『産経新聞』-「主張」)

 参院選広島選挙区をめぐる公職選挙法違反事件で、東京地裁で有罪判決を受けた参院議員、河井案里被告が辞職した。控訴を断念し、有罪確定で当選無効、失職となる前に自ら退いた格好だ。

 辞職は当然である。

 選挙区の広島も新型コロナウイルス禍に苦しんでいる。この非常時に何ら国会議員としての職責を果たさず、地方の政治をずたずたにした罪は大きい。それは同じ公選法違反罪に問われて公判中の、夫で元法相の河井克行被告も同様だ。

 案里被告の公判で明らかになったのは、広範囲に現金を配る露骨な金権選挙だった。判決は克行被告との共謀も認定し、「現金交付は克行元法相が全体を計画し、取り仕切った」と指摘した。主犯は克行被告との見立てである。

 克行被告の公判は案里被告とは別に審理が続いている。担当するのは同じ裁判長で、事件の構図が大きく変わることはないとみられる。ただしこちらの判決期日は未定で、刑の確定までは議員資格を失わない。

 案里被告の議員辞職の意向を受けて加藤勝信官房長官は会見で「政治家の出処進退は自ら判断することだ」と述べ、「政治を行う上においては、何より国民の信頼が不可欠だ」と言及した。

 克行被告は安倍晋三政権の法相で、案里陣営の参院選をめぐっては自民党が破格の1億5千万円を投入した。当時官房長官だった菅義偉首相は複数回、応援のために選挙区入りした。

 河井夫妻が国民の怒りを買っているばかりではない。自民党は信頼を損ねている。加藤長官の発言にはその自覚と反省がない。

 安倍政権の閣僚では、元農林水産相の吉川貴盛被告が収賄罪で東京地検特捜部に起訴されたばかりだ。吉川被告は起訴前に「健康問題」を理由に議員辞職した。

 菅政権下では、新型コロナウイルスをめぐる緊急事態宣言中の深夜に、自民、公明両党の幹部らが東京・銀座のクラブで飲食するなどして離党や議員辞職に追い込まれた。

 新型コロナの感染収束を目指すために必要なのは首相のリーダーシップであり、政権への信用、信頼である。これらを抜きに感染症との戦いに国民を団結させることはできない。まず政府・与党の綱紀粛正が必要であり、克行被告には辞職を勧告すべきである。



案里議員辞職 政権の関与も究明せよ(2021年2月4日配信『東京新聞』-「社説」)

 河井案里参院議員(47)が辞職した。2019年参院選での選挙違反で有罪判決を受けたためだが、河井議員に巨費を投じた自民党本部や政権中枢は選挙違反に無関係といえるのか。徹底究明が必要だ。

 河井議員は参院広島選挙区で自民党公認で初当選したが、公職選挙法違反(買収)容疑で昨年6月、夫の克行被告とともに逮捕され、自民党を離党していた。今年1月、東京地裁で懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を受け、4日の期限前に控訴を断念した。

 失職が決まる前に、自ら議員辞職の道を選んだのだろう。遅きに失したとはいえ当然である。

 ただ、案里議員の議員辞職をもって、今回の選挙違反事件の幕を引くわけにはいかない。

 案里議員自身や選挙運動を主導したとされる克行被告は国会で説明責任を果たしておらず、案里議員の当選に尽力した自民党本部や政権中枢が選挙にどう関わったのか、明らかにされていないからだ。

 改選数2の参院広島選挙区は自民党と旧民主党系が議席を分け合い、当初、現職の溝手顕正元国家公安委員長を公認していた自民党は、党本部主導で案里議員を2人目の候補として擁立した。

 党本部の案里議員への肩入れは表向き2議席独占が狙いだが、当時首相だった安倍晋三氏に批判的な溝手氏の追い落としが真の目的ではなかったか。安倍氏に加え、当時官房長官だった菅義偉首相も案里議員の応援に入っており、肩入れは政権中枢の意向でもあろう。

 案里陣営には党本部から、他の候補の10倍に当たる1億5千万円が渡った。案里議員は「違法性はない」としたが、こうした資金が地元議員らの買収に使われた可能性はないのか。疑いは晴れない。

 選挙違反事件の背景に、政敵を強引に退ける安倍前政権中枢の手法や、自民党本部からの巨額の資金提供が影響しているとしたら見過ごすわけにはいかない。

 国会は国政調査権を駆使し、真相を明らかにすべきだ。関係者の国会招致も躊躇(ちゅうちょ)してはならない。

 案里議員辞職に伴う補選は4月25日に行われる。衆院北海道2区、参院長野選挙区と同日程だ。初の国政選挙となる菅政権にはコロナ対策を巡る不手際と合わせ、厳しい戦いとなるだろう。

 緊急事態宣言下の与党議員による深夜のクラブ通いなど、政治への信頼が著しく損なわれる事態が続く。一連の選挙では菅内閣への審判に加え、政治の在り方そのものが問われることになる。



案里被告の議員辞職 金権政治決別の一歩に(2021年2月4日配信『中国新聞』-「社説」)

 政界を揺るがしてきた河井案里被告がついに参院議員を辞職した。一昨年7月の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件で一審東京地裁で有罪判決を言い渡されていた。

 民主主義の根幹である選挙を夫で元法相の克行被告とともに大規模買収で汚したとして追及されてきた。控訴期限のきょう控訴しなければ有罪が確定し、当選無効となるはずだった。判決は不服らしいが、辞職するのは有罪を認めるということだろう。しかしこれでは済まない。

 保釈後、判決後ともに案里被告は記者会見せず、一切説明していないからだ。

 公認候補として擁立した自民党も説明責任を果たさず、安倍晋三前首相や現在の菅義偉首相は「捜査中」「公判中」などと理由をつけて、これまで言及を避けてきた。

 だが、巨費を提供して当選させた人物に、離党したものの公選法違反で有罪判決が出たのである。国民の政治不信を深めたのは間違いない。金権政治を許さない決意ならば、党総裁として説明から逃げてはなるまい。

 迷惑を掛けてすみません―。きのう案里被告は自民党幹部らに電話でそう謝罪したという。

 「買収の意図はない」などと主張してきたが、控訴断念によって大がかりなカネまみれ選挙だったことが確定する。

 判決は夫婦の共謀を認定し、克行被告が事件を主導した構図を指摘している。克行被告の裁判はまだ続いてはいるものの、罪を認めて潔く辞職すべきだ。

 案里被告の選挙戦を後押しするため、当時の安倍首相や菅官房長官が広島を訪れて、街頭で演説している。さらに自民党本部は1億5千万円もの巨額資金を陣営に提供している。うち1億2千万円は政党交付金、つまり税金である。その一部が買収に使われた疑念もある。

 その使途の解明について、菅首相は昨秋の党総裁選で「総裁になったら責任を持って対応したい」と語った。ところが首相になるや、消極姿勢を取る。有罪判決が出て、与党内で案里被告の議員辞職を求める声が強まっても、「出処進退は自ら判断するべきだ」とはぐらかした。国民の政治不信を払拭(ふっしょく)する気はないのだろうか。

 やはり税金から、案里被告には多額の歳費や手当が支払われてきた。買収によって当選したにもかかわらずである。昨年6月の逮捕後だけで2100万円以上に上る。コロナ対策の議論など重要な仕事が議員に負託されていたのに、10月の保釈後は国会に一度も出席していない。不正を働き、職務も果たさない議員には歳費などを返還させる仕組みや法整備が必要だ。

 一方、河井夫妻側から現金を受け取っていた地元の政治家の責任も問わねばならない。検察は立件を検討すべきだ。

 「県民として恥ずかしい」。地元でよく聞かれる声である。全国から厳しい目が注がれてきた。広島県の政界には、金権選挙の体質や土壌がはびこっていたのが現実だろう。この機に、あしき慣習を一掃することが求められる。

 4月25日の参院広島選挙区補選へ向け、与野党とも候補者選びに入ったようだ。金権政治を絶てるか。選挙戦の行方とともに私たち有権者の意識が問われ、注目される。





案里被告に有罪 疑惑はまだ残っている(2021年1月26日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 「民主主義の根幹である選挙の公正を害した」―。判決の指摘は当然だ。

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反に問われた参院議員の河井案里被告である。東京地裁が懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 判決は、案里被告が夫で元法相の衆院議員克行被告と共謀し、県議4人に計160万円を渡したと認定した。案里被告は現金は「県議選の当選祝いや陣中見舞い」として賄賂性を否定したものの、認められなかった。

 党広島県連の反対を押し切り、自民党が案里被告を公認したのは19年3月。案里被告が現金を渡したのは19年3~5月だ。額は30万~50万円になる。判決は地元県連が現職候補を支援する中、案里被告が県議の強い影響力を頼ったとした。納得できる判断だ。

 買収は政治への民意の反映を妨げる。責任は重い。野党だけでなく、与党の公明党からも辞職を促す声が出ている。案里被告は真正面から受け止めるべきだ。

 裁判では解明されなかったことも多い。まず買収の原資だ。

 判決で「主導的役割」とされた克行被告は、計100人に計2900万円余を配ったとされ、東京地裁で審理が続いている。

 自民党は選挙資金として破格の計1億5千万円を夫妻に入金している。うち1億2千万円は税金を基にする政党助成金だ。税金が買収に使われたのなら言語道断だ。

 公判では原資は争点にならなかった。菅義偉首相は判決後、「党で所定の手続きを経た上で、ルールに基づいて交付された」としか述べず、原資の解明に触れなかった。党の責任として資金の使途を解明すべきだ。

 動機も不明だ。現職候補は安倍晋三前首相との確執が取り沙汰されていた。克行被告は安倍氏や菅首相にも近い。強引な選挙戦を進めた背景に首相官邸の思惑はなかったのか。克行被告は選挙後に初入閣しており、論功行賞の意味合いも否定できない。国会は買収の背景も解明していくべきだ。

 政治とカネを巡っては、吉川貴盛元農相が収賄容疑で在宅起訴された。安倍前首相の後援会による「桜を見る会」夕食会の問題も、疑惑が全て解明されていない。

 当事者らは説明を十分にせず、国民の疑念は晴れていない。政府と与党は「政治とカネ」の問題を中途半端に放置すると、政治不信がさらに高まることを肝に銘じるべきである。



河井夫妻ショックの最悪な後始末(2021年2月4日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★19年7月の参院選をめぐる大型買収事件で、公職選挙法違反で有罪判決を受け自民党を離党した参院議員・河井案里被告が3日、議員を辞職した。広島をはじめ多くの政界関係者は、遅すぎた決断に安堵(あんど)の表情を見せる。ただこれは連座制で失職するのを恐れた結果だというのが政界の冷静な見方。公選法違反で失職となれば当選無効と扱われ、国会議員であったことが歴史から葬られ「元参議院議員」という肩書でもなくなるという寸法だ。

★また同日の報道では、衆院広島3区で出馬を表明している公明党副代表・斎藤鉄夫(比例代表中国ブロック)の候補者一本化が自民党・山口泰明、公明党・西田実仁両選対委員長の会談で合意されたという。自民党広島県連が推し、既に出馬表明している広島県議・石橋林太郎は比例に回る。官邸が公明党との関係を優先した結果といえる。広島3区は公職選挙法違反事件をめぐり自民党を離党した元法相・河井克行被告の地盤だ。

★これが自民党としてのけじめなのかどうかは、有権者が決めることになるが、広島県連レベルでは河井夫妻ショックの後の処理としては適切だったろうか。「石橋は河井夫妻とは距離があり県内保守層の結集には適任だった。無所属で出馬すれば斎藤は当選できなかったかもしれず、比例に移ってもらう必要があったのだろう。今後広島3区に自民党は候補者を立てないということになる。最悪の結果だ」(広島政界関係者)。

★そうなると、自公政権の批判を集めて立憲民主党の新人、ライアン真由美が注目されることになる。では河井案里辞職に伴う4月の参院広島補選はどうなるのか。立憲は、既に候補者の最終調整に入っているようだ。





案里議員に有罪判決/控訴より議員辞職が先だ(2021年1月25日配信『河北新報』-「社説」)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた参院議員の河井案里被告に、東京地裁が懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 案里被告は夫で元法相の衆院議員、克行被告とともに広島県議や地元首長ら100人に計2900万円を配り、うち5人への170万円について共謀したとして逮捕・起訴された。

 判決は、克行被告と共謀して県議4人に計160万円を渡したと認定した。

 案里被告は「票をお金で買う発想自体がない。県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」などと主張したが、退けられた。

 広島選挙区は自民党現職と野党系現職との三つどもえの激戦だった。新人の案里被告は自民党から追加公認されたものの党広島県連の支援を受けられず、厳しい選挙情勢にあった。地裁は、買収を認めた県議らの証言なども総合的に考慮して「選挙買収だった」と判断した。

 案里被告は公選法の規定で罰金刑以上の有罪が確定すれば当選無効になる。

 これとは別に、車上運動員に違法な報酬を渡したとして公選法違反で公設秘書の有罪が確定している。検察は連座制で当選無効の行政訴訟を起こしている。検察側の勝訴が確定した場合も、今回の裁判の行方にかかわらず失職する。

 同じく公選法違反罪に問われた克行被告は、陣営トップで連座制対象の「総括責任者」として起訴された。有罪が確定すると、克行被告が失職するほか、案里被告も当選無効となる。

 克行被告は案里被告の裁判で現金供与の全体を計画したと認定されており、継続中の自身の公判に大きく影響しそうだ。
 案里被告は現職国会議員の夫妻による前代未聞の現金買収事件に問われている。その趣旨はともかく、多額の現金をばらまいた事実は認めている。

 今回の裁判で控訴したり、行政訴訟で上告したりして徹底的に争うとみられる。事ここに至っても地元や国民に説明責任を果たしていない。上級審で無罪を主張する権利は当然あるが、有権者の理解は得られないだろう。控訴の前に議員辞職するべきだ。

 両被告は逮捕前に自民党を離党しているが、党の責任も重い。党本部は広島選挙区で2議席独占を狙い、選挙前に両被告側に破格の1億5000万円を入金した。当時の安倍晋三首相や官房長官だった菅義偉首相も現地入りし、全面支援した。

 巨額の資金は買収の原資になった可能性もあるのに、党はその経緯や使途を一向に調査しようとしない。政治不信を招いた責任を自覚するならば、早急に検証し公表するべきだ。



案里議員に有罪判決 選挙ゆがめた背景 解明は途上だ(2021年1月25日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 2019年の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた参院議員河井案里被告に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 判決は、夫で元法相の衆院議員克行被告と共謀し、買収目的で県議に現金を渡したと認定した。国会議員夫妻が「票を金で買う」違法行為に手を染めた前代未聞の事件である。公正さが担保されるべき国政選挙をゆがめた責任は極めて重いという、当然の判断といえよう。

 現金供与の全体を計画した元法相は計100人に計2900万円余りを配ったとされ、東京地裁で別の審理が続いている。今回の判決では、案里議員が地元議員5人のうち、県議4人に計160万円を配ったと認定された。

 公判で案里議員は、現金を渡した目的について「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と主張した。しかし判決は、自民党広島県連の支援を受けられず厳しい選挙情勢にあったことや授受の時期などを総合考慮して「選挙買収だった」と退けた。

 案里議員は有罪が確定すれば失職する。公設秘書が車上運動員買収で有罪となっており、行政訴訟で連座制の適用が認められても失職する。事件後は議員活動ができず、職責を果たせない状況も続く。今回の自身の有罪判決を受け止め、出処進退を速やかに示すべきだ。

 訴訟とは別に、事件の全容解明を進める必要もある。

 19年の参院選では、自民党本部から夫妻側に1億5千万円という破格の資金が提供された。一部が買収の原資となった疑いがあるが、夫妻の政治資金収支報告書などでは、書類を押収されていることを理由に使い道が明らかになっていない。

 自民側も納得のいく説明をしないままだ。菅義偉首相は、資金提供に関する再調査の必要性について「党で所定の手続きを経た上で、ルールに基づいて交付された」と述べるだけで、全容解明への積極的な姿勢はみられない。これでは信頼回復など望むべくもなかろう。

 また、現金の受領側の責任がうやむやになっていることも見過ごせない。東京地裁は今回の判決で、検察側が現金を受け取った側の議員ら100人の刑事処分をしていないことに触れなかった。公選法は受領側も被買収として処罰されると規定するが、これまで検察は不起訴処分にすらしていない。

 買収に関わった地元議員らの多くは口をつぐんでいるが、自らの政治責任に向き合い、説明を尽くすべきだ。広島県議会では政治倫理条例に基づく審査会の必要性が指摘されている。公の場で経緯を明らかにし、再発防止につなげねばならない。

 事件で浮き彫りとなったのは旧態依然とした「政治とカネ」問題の根深さだ。まずはうみを出し切ることが、不正の根を断つ第一歩であることを政治に携わる者は自覚する必要がある。



案里議員有罪判決(2021年1月25日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

菅首相の責任逃れ許されない

 2019年7月の参院選をめぐる大型買収事件で公職選挙法違反(買収)に問われた河井案里参院議員(自民党離党)に東京地裁は、懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。判決が確定すれば案里議員は失職します。案里議員とともに買収で起訴された夫の克行元法相・衆院議員(自民党離党)は別の公判が続いています。案里議員陣営には自民党本部が巨額の資金を提供しました。異常なてこ入れをした当時の安倍晋三政権の姿勢も厳しく問われます。官房長官として案里議員を後押しした菅義偉首相は責任を免れることはできません。

選挙の公正を害する犯行

 河井夫妻による大型買収事件は、広島選挙区で案里議員当選のため、地方議員や首長ら100人に計約2900万円を提供し、票の取りまとめを依頼したものです。選挙を実質的に取り仕切ったのは克行議員だったとされます。

 東京地裁は、案里議員は克行議員と共謀し地方議員4人に現金160万円を提供したことを買収と認定しました。案里議員は、現金提供は4月の統一地方選の陣中見舞いや当選祝いで買収ではない、と無罪を主張しましたが、退けられました。判決は「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行」「被告人が負うべき刑事責任は重い」と厳しく指摘しました。

 案里議員陣営の公選法違反では、車上運動員に法定額を超える報酬を支払い買収に問われた公設秘書の有罪が別の裁判で確定しています。これを受けて検察は昨年末、案里議員に連座制の適用を求める裁判を起こしています。同訴訟で検察の勝訴が確定した場合も案里議員は失職します。

 票をカネで買うのは極めて悪質な行為です。多額の現金をばらまいた金権選挙に対して反省のない河井夫妻に国会議員の資格はありません。裁判結果を待つことなく、2人は国会の証人喚問などで事件の全容を明らかにし、速やかに議員を辞職すべきです。

 案里議員の参院選出馬は、地元の意向を無視して安倍前首相ら当時の官邸が強引にすすめたとされます。選挙に際し河井夫妻陣営には自民党本部から1億5000万円もの資金が提供されました。広島選挙区に出馬したもう一人の自民党候補者の10倍という桁違いの金額です。しかも、その8割は税金で賄う政党助成金です。大規模買収の原資について自民党は国民に説明する責任があります。

 選挙の応援には安倍氏や菅氏が駆け付け、安倍氏の秘書が支援に入ったことも明らかになっています。政権中枢と河井夫妻との深い関係の解明は欠かせません。菅首相は案里議員の有罪判決後、「襟を正して行動していくことが大事」などと人ごとのようなコメントですませ、自民党本部からの巨額資金提供についても「所定の手続きをへた上で交付された」とごまかし続けています。無責任で不誠実な姿勢は許されません。

金まみれの政治終わりに

 通常国会の論戦では、安倍氏の「桜を見る会」疑惑や吉川貴盛元農林水産相の汚職事件などをめぐっても菅首相の真相隠しの姿勢があらわになっています。前政権から続く“腐敗の連鎖”をうやむやにはできません。金にまみれた政治を一掃し、国民から信頼される新しい政治の実現が急がれます。





河井議員有罪 政治とカネにけじめを(2021年1月24日配信『北海道新聞』-「社説」)

 参院選広島選挙区を巡る買収事件で、東京地裁は河井案里参院議員に有罪判決を言い渡した。

 夫で元法相の河井克行衆院議員が現金配布を計画し、案里議員と共謀したと認定した。

 判決は「民主主義の根幹である選挙の公正を害した」と厳しく指弾した。夫妻は深刻な政治不信を招いた事態を重く受け止め、議員辞職すべきだ。

 元法相は菅義偉首相や安倍晋三前首相と近く、案里議員は政権の全面支援を受けた。陣営には自民党本部から通常の10倍の1億5千万円もの資金が提供された。

 これが買収の原資になったのではとの指摘もあるが、自民党は納得のいく説明をしていない。

 首相は資金提供の経緯や使途を調べ有権者に説明するよう、総裁として党に指示する責務がある。

 政治とカネでは、吉川貴盛元農水相が収賄事件で在宅起訴された。安倍氏の後援会が「桜を見る会」前日の夕食会の費用を補填(ほてん)した問題も解明が進んでいない。

 国会はあすから予算委員会が始まる。立法府が自ら問題の真相究明を尽くさなければならない。

 判決によると案里議員は元法相と共謀し2019年3~5月、県議4人に計160万円を渡した。

 元法相も案里議員とは別に刑事裁判が続く。夫妻は失職の可能性があるが、その前に自らけじめをつけるのが筋である。

 菅首相は判決後、「政治家は国民から疑念を抱かれないよう、襟を正して活動していくことが大事だ」と人ごとのように述べた。

 しかし、当時の安倍政権が案里議員の選挙にどう関与したかが問われており、官房長官だった菅首相も無関係では済まない。

 吉川元農水相の収賄事件も、夫妻の事件で贈賄側が代表を務めた鶏卵生産大手を検察が家宅捜索し、押収資料などから浮上した。

 元農水相と元代表らの会合に農水省の現事務次官を含む幹部が同席していたことも判明している。

 政官業の癒着による古い「金権政治」の復活と見られても仕方がない。政府として元代表との関係を解き明かさなければならない。

 安倍氏の疑惑では、野党が求めるホテルの明細書や領収書の提出を安倍事務所が拒み続けている。

 明細書や領収書がなければ、会場費として支払ったから公選法が禁じる寄付には当たらないとする安倍氏の説明は根拠を欠く。

 やはり国会の証人喚問による実態解明が欠かせない。与党は野党の喚問要求に応じる必要がある。



案里議員に有罪判決 反省なき自民の無責任さ(2021年1月24日配信『毎日新聞』-「社説」)

 自民党を離党した河井案里参院議員が、公職選挙法の買収の罪で東京地裁に有罪判決を言い渡された。夫で元法相の克行衆院議員も買収の共謀が認定された。

 判決が確定すれば案里議員は失職する。秘書が運動員買収で有罪となっており、行政訴訟で連座制の適用が認められても失職する。

 夫妻はともに無罪を主張しているが、こうした司法判断が出た以上、直ちに議員辞職すべきだ。

 長らく国会議員としての仕事をしていないにもかかわらず、歳費は支払われ続けている。

 案里議員は、初当選した一昨年の参院選を巡り、広島県議4人に計160万円を渡したという。

 裁判では、3カ月前にあった統一地方選の当選祝いや陣中見舞いだったと主張していた。

 判決は受け取った県議の証言を踏まえ、当時の立場や現金授受の状況などから買収目的を認めた。

 検察側が押収したリストや地方議員の名簿をもとに、一連の現金提供は克行議員が主導していたとも指摘した。

 克行議員は案里議員との共謀分も含め、100人に計2900万円を渡した罪に問われている。裁判は分離され、長期化している。

 案里議員の陣営には、自民党本部から1億5000万円もの選挙資金が提供されていた。うち1億2000万円は、国民の税金から支出される政党交付金だ。

 河井夫妻の政治資金収支報告書などでは、関係書類が押収されたことを理由に使途は不明とされている。党からの巨額資金が買収事件につながった疑念は拭えない。

 買収の原資について、検察側は裁判で主張をしなかったため、判決も言及していない。

 案里議員は安倍晋三前首相や、官房長官だった菅義偉首相の主導で擁立された。当選後は二階俊博幹事長の派閥に入った。克行議員も菅氏の後押しで法相になった。

 にもかかわらず、菅氏は党の資金提供について「総裁になって、所定の手続きを経て交付されているとの報告を受けた」と述べるだけだ。二階氏も事件内容へのコメントを避けている。

 党として事件への反省がうかがえず、責任を果たしていない。選挙の実態を調査して説明しなければ、政治不信は払拭(ふっしょく)されない。



案里被告に有罪 議員辞職を強く勧告せよ(2021年1月24日配信『産経新聞』-「主張」)

 「政治家の出処進退は自ら決断を」。聞き飽きたせりふである。

 令和元年の参院選広島選挙区をめぐる公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた参院議員、河井案里被告に、東京地裁は「民主主義の根幹である選挙の公正を害した」として懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 冒頭の言葉は、案里被告の判決について会見で問われた岡田直樹官房副長官のものだ。菅義偉首相は「政治家は一人一人国民の負託を受けて、国民から疑念を抱かれないよう、襟を正して活動していくことが大事だ」と述べた。自民党の二階俊博幹事長は「党としては常に襟を正し、引き続き緊張感を持って国民の信頼回復に努めていく」とコメントを発表した。

 いずれも一般論であり、人ごとのようにしか聞こえない。

 案里被告はすでに自民党を離党しているが、それで知らぬ存ぜぬは通らない。問題の参院選で自民党が案里被告の陣営に1億5千万円を投入した破格の扱いや、当時官房長官だった菅首相が複数回応援に入った事実は消えない。

 被告の議員辞職に向けて、その影響力を行使すべきである。

 罰金刑以上の有罪判決が確定すれば案里被告は当選無効となる。すでに車上運動員の報酬をめぐる公選法違反罪で公設秘書の有罪が確定し、当選無効を求める連座制訴訟が提起されている。こちらで敗訴が確定しても議員資格を失うが、上告すれば確定までの間、議員にとどまり、歳費を受け続けることができる。

 判決は、夫で元法相の河井克行被告との共謀も認定し、「現金交付は克行元法相が全体を計画し、取り仕切った」と指摘した。

 克行被告の公判は案里被告とは別に審理が続いており判決期日は未定だが、審理を担当するのは同じ裁判長だ。公選法違反罪の構図が大きく変わることはないとみられる。ただ、こちらも判決の確定までは議員資格を失わない。

 政治家の出処進退は自身の損得ではなく、国民の役に立てるか否かで判断すべきだ。新型コロナ禍の非常時に、この国会議員夫妻は何か有益な働きを残したのか。国が一丸とならなくてはならない時に、その阻害要因となっているだけではないのか。自らまっとうな決断ができないのであれば、勧告すべきは自民党である。



政治とカネ 手厚い公助は何のためか(2021年1月24日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 年間300億円を超える政党交付金について、総務省は8政党が2021年分の受け取りを届け出たと発表した。共同通信の試算による21年の交付金総額は317億7300万円で、このうち自民党への配分は9年連続トップの170億2100万円に上る。

 実際の配分額は、ことしの衆院選の結果を受けて確定する。政党助成法に基づく交付金は、全国民が毎年、1人当たり250円を負担して税金で賄われる。いわば、政治家に対する究極の「公助」である。

 にもかかわらず、長年にわたり高額交付を受けてきた自民党に絡み、「政治とカネ」の問題が絶えない。手厚い公助にあぐらをかく一方で、その目的である「政治とカネ」の浄化、透明化へ向けた「自助」努力を欠く現状は看過しがたい。交付金を受けている各党は改めて自らを省み、政治活動の在り方を再確認してもらいたい。

 19年7月の参院選広島選挙区を巡り、参院議員河井案里被告=自民離党=と夫で元法相の衆院議員克行被告=同=が共謀したとされる広範な買収事件では、東京地裁が案里被告に公選法違反(買収、事前運動)の有罪判決を出した。

 案里被告と公判中の克行被告はそれぞれ法廷で、地元議員らに渡した現金は当選祝いや陣中見舞いであり、買収ではないと主張する。刑事裁判である以上、法に抵触したかどうかを争うのは、被告の当然の権利である。

 しかし、その主張から、政治家同士が水面下で現金授受していたことに対する倫理的な規範意識は一切感じ取れない。当選するためなりふり構わず、違法でなければ何でもありという姿勢なら、政治家の名に値しない。政治屋の所業だ。

 鶏卵生産大手の元代表から現金500万円を受け取ったとして、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相=自民離党、衆院議員辞職=も、現金授受は認めたものの、賄賂性は否定した。その真偽は法廷で明らかになろうが、驚くべきことに現金は大臣室でも受け渡しされていた。ここでも刑事事件以前に、多数の国民が共有する倫理観は踏みつけにされた格好だ。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡[ほてん]も、根底には「政治とカネ」がある。安倍氏の公設第1秘書は政治資金規正法違反罪で罰金100万円の略式命令を受けた。安倍氏自身は起訴猶予となったが、国政運営や国会答弁のつじつまを優先させたモラルハザード(倫理観の欠如)の結果が、100回以上に及ぶ事実と異なる国会答弁につながったと捉えていい。

 「政治家は責任を自覚し、常に襟を正すべきだ」。21日の参院代表質問で「政治とカネ」について問われた菅義偉首相は答弁したが、不十分である。年間300億円超の政党交付金は、政治家の既得権益そのものだ。菅内閣が既得権益の打破を目指すのならば、まず「政治とカネ」の問題で具体的な行動を起こす必要があろう。



河井案里議員に有罪 「政治とカネ」不信拭えず(2021年1月24日配信『琉球新報』-「社説」)

 地元議員に「陣中見舞い」などと称して現金を配った行為は、選挙買収だったと認定された。2019年7月の参院選を巡り公選法違反の罪に問われた参院議員河井案里被告に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 案里被告側は夫の元法相で衆院議員の克行被告が地元の県議や首長ら計100人に現金計2900万円を配ったとされる。判決では、そのうち地元議員4人に配った計160万円について案里被告が克行被告と共謀して票の取りまとめなどの報酬として提供したと認定した。

 民主主義の根幹である国政選挙をゆがめたとして、元法相である夫と共に国会議員夫妻が逮捕されるという前代未聞の事件だ。
 夫妻は自民党を離党したが、今も現職で月額100万円超の歳費や年2回の期末手当など多額の国費が支払われている。事件後は国会を長く欠席し、議員の職責を果たしているとは言えない。

 案里被告は国会議員を辞職すべきだ。案里氏を支援してきた安倍晋三前首相や菅義偉首相の責任も問われる。丁寧な説明なくして「政治とカネ」への不信は拭えない。

 同選挙は自民と野党系の2人の現職との三つどもえで争われた。自民県連が現職を支援し、情勢が厳しい中、当時の安倍首相、菅官房長官は案里氏擁立を決め、自ら複数回応援に入った。党本部は現職の10倍もの計1億5千万円の資金を案里氏側に提供した。

 公判で案里被告側は現金は陣中見舞いや当選祝いだったと主張した。しかし地元議員らは「票集めを求められたと思った。表に出せない金で違法だ」などと述べ、案里氏側が領収書の受け取りを拒んだり、事後に口裏合わせを持ちかけたりしたと証言した。

 案里氏は、車上運動員に違法な報酬を渡した公選法違反で公設秘書の有罪がすでに確定している。広島高検が連座制適用による当選無効の訴えを起こしている。いずれかの訴訟で検察勝訴が確定すれば案里氏は失職するが、控訴・上告している間は国会議員の地位は保たれる。

 案里氏擁立の立役者だった菅首相から詳しい説明はほぼない。河合夫妻のほか鶏卵生産業者からの現金受領で吉川貴盛元農相が、IR汚職で秋元司元衆院議員が起訴され、4国会議員が起訴される事態となった。安倍首相の桜を見る会前夜の夕食会費補塡(ほてん)など「政治とカネ」の問題について首相と党が説明責任を果たす必要がある。

 一方で、現金を受け取ったと認め、授受を生々しく証言した地元議員らに刑事処分が今も出ていない。処分がうやむやでは議員らが刑事処分を免れるために検察に有利な証言をしたのではないかとの疑念も生まれる。捜査への信頼が揺らぐことのないよう検察側は事件の全容解明と関係者の処分を行うべきだ。





出処進退 決断すべきだ/河井案里議員に有罪判決(2021年1月23日配信『東奥日報』-「時論」・『山陰中央新報」-「論説)

 2019年7月の参院選を巡る買収事件で公選法違反の罪に問われた参院議員の河井案里被告に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。夫の元法相で衆院議員の克行被告と共謀し地元議員らに渡したとされる現金について、案里被告は「票をお金で買う発想自体がない」と買収の意図を否定し、無罪を主張していた。

 案里被告は、自民党現職と野党系無所属との三つどもえの激戦となった参院選広島選挙区で初当選。だが、克行被告が100人に計2900万円余りを配り、うち5人への170万円について共謀したとして逮捕・起訴された。公選法の規定で罰金刑以上の有罪が確定すれば、当選無効となる。

 これとは別に、車上運動員に違法な報酬を渡したとして公選法違反で公設秘書の有罪が確定。検察は連座制を適用し、案里被告の当選を無効とするよう求める行政訴訟を広島高裁に起こしている。案里被告陣営を仕切った克行被告の有罪が確定しても、同じ手続きに移行。いずれかで検察側勝訴が確定したら、案里被告はやはり失職する。

 もちろん、公判で控訴したり、行政訴訟で上告したりすることはできる。ただ検察側主張を覆すのは難しいとみられ、地元有権者や国民への説明責任も果たしていない。なお争い、国会議員であり続けることに理解は得られない。出処進退を明確にすべきだ。

 案里被告は一貫して買収の意図を否定。県議や市議ら地元議員5人に渡したとされる現金計170万円について「当選祝い」や「陣中見舞い」と主張した。だが5人のうち4人は「参院選の応援を依頼する趣旨」「票集めを求められたと思った」などと述べ、受領の模様も詳しく証言した。もう1人は「当選祝い」としたが、克行被告から受け取った県議らからも「応援依頼」との証言が相次いだ。食い違いを追及されると、案里被告は「記憶にない」「知らない」と繰り返した。

 また買収を主導し、陣営を束ねる「総括主宰者」として起訴された克行被告の役割などを尋ねられても「分からない」「記憶にない」などと、かわす場面が目立った。

 最終陳述では「皆さまを裏切るようなことはしていない。どうか私を信じていただきたい」と訴えたが、東京地裁は現金供与先の5人のうち4人について克行被告との共謀を認定。一人ずつ、選挙情勢や現金授受の時期と状況、金額などを総合的にみて、買収目的だったとの判断を示した。残る1人については無罪とし、その上で「自ら実行行為に及び、刑事責任は重い」と述べた。

 現職国会議員の夫婦が逮捕・起訴されるという前代未聞の公選法違反事件を巡っては、当時の安倍晋三首相や自民党本部も責任を免れない。党本部は広島県連の反発を押し切り、2人目の候補として案里被告を擁立。安倍氏や官房長官だった菅義偉首相らが現地入りし、全面支援した。

 案里氏側には、党本部から現職側と10倍の開きがある1億5千万円が入金された。それが金権選挙の土壌を生み出し、民主主義の根幹である選挙の公正性を大きくゆがめる結果につながった。克行被告は前首相に近かったといわれるが、1億5千万円支出が決まった経緯や使途を、きちんと検証し、明らかにすることが求められよう。



案里議員有罪判決 潔く引責辞任すべきだ(2021年1月23日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件で、参院議員の河井案里被告(自民離党)が有罪判決を言い渡された。東京地裁は夫で元法相の衆院議員克行被告(同)との共謀を認定、買収などの罪で懲役1年4月、執行猶予5年とした。

 国会議員の夫妻が逮捕、起訴された前代未聞の大規模買収事件であり、政治への国民の信頼を損なった責任は重大だ。民主主義の根幹を成し公正であるべき選挙制度を、カネをばらまいてゆがめた行為は許されない。

 驚くべきは夫妻で現金を供与していたことだ。克行被告は地元議員ら100人に計2900万円余を配ったとされる公選法違反の罪で公判中。案里被告はうち4人への計160万円に関して共謀したとされる。

 事件の背景には保守分裂となった選挙情勢がある。自民党広島県連は現職を支援。これに対し支持基盤の弱い新人の案里被告を当選させようと克行被告が主導し、現金供与に突っ走った。それが判決が描き出した買収の構図だ。

 判決を受け、地元で議員辞職を求める声が出ているのは当然だろう。昨年の逮捕、起訴以降、案里被告が満足に議員活動をしてきたとは言い難い。判決は確定していないとはいえ、潔く引責辞任するのが政治家としての身の処し方ではないのか。

 自民党の責任も問われねばならない。参院選公示前、夫妻側には党本部から1億5千万円が入金された。落選した現職側の10倍に当たる。巨額資金が金権選挙の土壌になったのではないかとの疑念が依然拭えない。

 有罪判決に対し、党総裁でもある菅義偉首相は「個別事件の裁判所の判断について所感を申し上げるべきではない」と述べた。巨額資金に関しては「党で所定の手続きを経た上でルールに基づいて交付された」と従来の見解を繰り返した。

 これほどの大事件にもかかわらず、「政治とカネ」の問題に積極的に取り組む姿勢が見られないのは残念だ。このままでは政治への国民の信頼回復はますます遠のかざるを得ない。

 この事件が吉川貴盛元農相(自民離党)の汚職事件の端緒となったことも看過できない。河井夫妻買収事件に絡み、検察が広島県内の鶏卵生産大手を家宅捜索。押収資料などから現金授受疑惑が浮上し、収賄罪での在宅起訴につながったからだ。

 便宜を図ってもらいたいとの趣旨を知りながら、農相在任中に鶏卵生産大手のグループ元代表から現金計500万円を大臣室などで受け取ったとされる。立件はされなかったが他に計1300万円授受の疑いもある。

 吉川元農相は菅首相と衆院初当選同期であり、菅政権樹立を後押ししてきた。克行被告も首相と親しかったとされる。自身に近い政治家の事件だからこそ、菅首相は決然とした態度で「政治とカネ」の問題に取り組むべきなのではないか。



参院選買収有罪 問われる河井案里議員の進退(2021年1月23日配信『読売新聞』-「社説」)

 多額の現金を地元議員らに配った目的は、自分が当選するためだったと認定された。民主主義の根幹を揺るがす犯罪であり、現職の国会議員として責任は重い。

 2019年の参院選を巡る大規模買収事件で、東京地裁が公職選挙法違反に問われた河井案里・参院議員に懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 判決は、案里被告が19年3~5月、夫の河井克行・元法相と共謀し、票の取りまとめなどの報酬として、地元議員4人に計160万円を提供したと認めた。

 案里被告は、「当選祝いや陣中見舞いだ」と訴えたが、判決はこの主張を退けた。保守分裂の激しい選挙情勢や現金授受の時期を踏まえれば、当然の判断である。

 公判では、地元議員らが授受の状況などを生々しく証言した。案里被告は、領収書の受け取りを拒んだり、事後に口裏合わせを持ちかけたりしたという。なりふり構わぬやり方に驚くほかない。

 案里被告は、有罪判決が確定すれば当選無効となり、失職する。車上運動員に対する違法報酬事件でも、秘書の有罪が確定し、広島高検が当選無効を求める連座制訴訟を起こしている。

 案里被告には、今も月額100万円超の歳費や年2回の期末手当など、多額の国費が支払われている。しかし、事件後は長く国会を欠席し、議員としての職責を果たしているとは言い難い。

 与党や地元の広島からは辞職を求める声が上がっている。まだ1審判決の段階だが、自ら出処進退を判断すべきではないか。

 すでに離党したとはいえ、出馬を後押しした自民党の責任も大きい。多額の党資金を支出した経緯を説明する必要がある。

 判決は、克行被告について「現金供与の全体を計画し、取り仕切っていた」と結論づけた。

 克行被告は、案里被告が現金を渡した4人を含めた100人を計2900万円で買収した罪に問われ、公判が続いている。案里被告と同様、買収の意図を否定し、無罪を主張しているが、苦しい立場に追い込まれたと言えよう。

 一方、現金を受け取った地元議員らの刑事処分が今も出ていないのは、理解に苦しむ。

 処分がうやむやでは、有権者の政治不信が高まる一方だ。受け取った議員らが刑事責任を免れるため、検察に有利な証言をしたのではないかとの疑念すら生じかねない。検察は速やかに処分を決め、結果を明らかにすべきだ。



案里議員に有罪 選挙の公正破る罪深さ(2021年1月23日配信『東京新聞』-「社説」)

 参院議員の河井案里被告に有罪判決が出た。一昨年夏の参院選での買収事件。確定すれば議員失職だ。選挙の公正を踏みにじった代償は大きいし、金権選挙がまかり通る政治に失望せざるを得ない。

 「民主主義の根幹を害した」と東京地裁は断罪した。案里被告には懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決だった。激戦の広島で地元議員らを買収した行為は、選挙の公正さに対する国民の信頼を失墜させたといえる。重く受け止めるべきである。

 もっとも案里被告自身は買収の意図を否定し、無罪主張だった。確かに統一地方選があった年で、以前から陣中見舞いや当選祝いの慣行はあったかもしれない。案里被告も初公判で「自民党の党勢拡大のための政治活動や、選挙運動の準備行為を行っていただけ」と主張していた。

 選挙活動か、政治活動か−。それが最大の争点でもあった。一昨年3月から5月にかけての現金の供与は、政治家が行う地盤培養の政治活動と区別がつきにくい側面もあったろう。3

 だが、現金を受け取った広島県議らが法廷に立ち、「票とりまとめの趣旨だった」などと証言をした事実は重かった。県議の一人に「なかったことでいいよね」と口裏合わせの電話をした事実も法廷で暴かれている。

 秘書は昨年11月に懲役刑が確定し、連座制の適用を求めて高裁に提訴されている。案里被告自身の有罪確定でも議員の座は失職する。その可能性はいよいよ高くなったといえよう。

 裁判が続く夫の河井克行被告は計100人に計約2千9百万円、案里被告は共謀し、この一部を担ったと起訴された。投票を前に選挙区内でカネが飛び交ったのは事実だ。カネまみれだと国民から非難されて当然である。

 背景事情にももっと注目すべきである。自民党からは1億5千万円もの巨額資金が流れたとされたが、買収の原資は不明のままだ。
 かつ現職候補がいるのに、同じ選挙区で案里被告を擁立したのは自民党本部である。

 自民同士が票を奪い合う激戦の構図になった。当初は案里被告の情勢が厳しかったゆえに買収に至る一因となった。そう判決でも認定された。

 選挙の公正を乱した者は誰か−。大きな視座に立てば、党幹部らの道義的・政治的な責任はもっと追及されるべきである。政治家は襟を正さねばならない。



案里被告有罪 議員辞職しけじめつけよ(2021年1月23日配信『新潟日報』-「社説」)

 司法は、初当選するため地元議員らを買収したと認定し、「民主主義の根幹である選挙の公正を害した」と断罪した。

 自身の選挙を巡って地元を混乱させ、有権者の不信を招いた責任は極めて重い。有罪が確定すれば失職するが、けじめをつけて議員辞職すべきだ。

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、地元議員に現金を配ったとして公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた参院議員河井案里被告に、東京地裁は有罪判決を言い渡した。

 案里議員は渡した現金について「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」などとして全面無罪を主張した。

 だが、地元議員らは公判で買収を認め、授受の時期や状況などを具体的に述べた。

 東京地裁は、議員らの証言などを踏まえ、案里議員は夫で元法相の衆院議員克行被告と共謀し、県議4人に計160万円を渡したとして「選挙買収」と認定した。選挙をカネでゆがめるとは言語道断だ。

 案里議員を巡っては、車上運動員に違法な報酬を支払ったとする公設秘書の有罪が昨年12月に確定し、広島高検が連座制で当選無効を求める行政訴訟を起こしている。

 検察の勝訴が確定した場合、案里議員は自身の刑事裁判の行方にかかわらず失職する。

 案里議員の選挙を巡る買収事件では、克行議員の裁判も現在審理が進められている。

 夫妻が現金を配ったとされる地元議員らは約100人で、計2900万円余りに上る。前代未聞の事件だ。

 選挙買収は受領側も罪に問われる。だが、検察側は刑事処分せず、今回の判決もそれには触れなかった。公平性に欠ける。

 事件を巡っては菅義偉首相や自民党も無関係というわけにはいくまい。

 自民党は党本部主導で案里議員を追加公認し、夫妻側に破格の計1億5千万円を提供した。

 これが買収の原資になったのかどうかは不明だが、選挙戦では当時官房長官だった菅首相が何度も案里議員の応援に入るなど、何としても当選させようという姿勢が際立った。

 与党公明党からも案里議員辞職を求める声が出る中、菅首相は「政治家は国民から疑惑を抱かれないよう、襟を正していくことが大事だ」とするにとどまり、案里議員の進退や自らと党の責任には触れなかった。

 案里議員は昨年6月の逮捕直前に自民党を離党したものの、いまも二階派に所属している。

 二階派会長でもある二階俊博幹事長も「国民の信頼回復に努める」などとしたコメントを発表した程度だ。

 安倍晋三前首相後援会による「桜を見る会」夕食会費問題や、二階派幹部だった吉川貴盛元農相の収賄事件など「政治とカネ」の問題が相次ぐ。

 にもかかわらず、政権トップや幹部から納得のいく説明はない。これでは政治不信が深まるばかりだ。



案里議員有罪判決/議員辞職を決断すべきだ(2021年1月23日配信『神戸新聞』-「社説」)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた参院議員、河井案里被告に東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 同じ事件で公判中の夫、元法相の衆院議員克行被告が全体を取り仕切っていたとして共謀も認定した。

 初当選を目指す妻の厳しい選挙情勢を打開するため、現職国会議員の夫が買収を主導し、多額の現金を地元議員らにばらまいた-。判決が明らかにしたのは、民主主義の根幹である選挙の公正を、金の力でゆがめようとする下劣な行為である。

 司法判断が示された今、両被告は自ら議員辞職し、国民や地元有権者へのけじめをつけるべきだ。

 判決によると、案里被告は自ら地元議員4人にそれぞれ30万~50万円、計1600万円を渡していた。公判で「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と無罪を主張したが、受け取った県議らは「違法な金だった」と次々証言した。判決はこれを重視し、別の1人を除いて「買収の意図があった」と結論付けた。

 検察の捜査では、克行被告は地元議員ら100人に現金を配り、最大300万円を受け取った者もいるとされる。過去に例のない大がかりな買収の実態に驚き、あきれる。

 案里被告は有罪が確定すれば当選無効で失職する。同じ選挙で車上運動員に違法な報酬を支払ったとして公設秘書の有罪が確定しており、連座制が適用された場合も同じだ。

 被告夫妻は昨年1月の疑惑発覚後、「捜査中」「裁判中」を理由に説明を避けてきた。約1年にわたって国会の欠席を繰り返しながら、歳費や期末手当は受け取っている。このまま議員の職にとどまり、法廷闘争を続けるのは、コロナ禍で苦しむ国民の理解を得られないだろう。

 地元では買収事件に関与したとして複数の首長や県議が引責辞職した。地方政治を混乱させ、有権者を失望させた責任も極めて重い。

 一方、時効でもないのに検察側は買収された地元議員らの刑事処分をせず、判決もこの点に触れなかった。弁護側が「公平性に欠ける」と主張したように、受領側はおとがめなしの結末には首をかしげる。

 ほかにも大きな疑問が残った。

 案里被告は同選挙区で2議席目を狙った自民党本部の主導で追加公認され、選挙前に党本部から夫妻側に破格の計1億5千万円が提供された。安倍晋三前首相や当時官房長官だった菅義偉首相が何度も選挙応援に入る肩入れぶりだった。

 この資金が買収の原資となったとすれば自民党の責任は免れない。党として資金の流れを明らかにし、国民への説明責任を果たすべきだ。



案里被告に有罪 政治不信は増すばかりだ(2021年1月23日配信『山陽新聞』-「社説」)

 2019年の参院選で、広島選挙区の地元議員らを買収したとして公選法違反の罪に問われた参院議員河井案里被告に、東京地裁が懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 夫で元法相の衆院議員克行被告と共に、現職の国会議員夫妻が起訴された前代未聞の事件である。民主主義の根幹である選挙の公正を損ない、政治への信頼を失墜させた罪はあまりにも重い。

 検察側は、元法相が選挙運動を仕切り、広島県議、市議、元首長ら100人に現金を配ったとする大規模な買収事件の構図を描いた。案里議員は、うち5人への供与で共謀したとして起訴された。

 争点となったのは、地元議員らに渡した現金の趣旨だった。検察側は地元議員らの証言を基に「票の取りまとめの報酬だった」とし、案里議員は「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」として無罪を主張した。

 だが、金の配布は参院選の直前が多く、県議選など同年4月の統一地方選と無関係の議員にも提供されていた。判決がそうした状況を踏まえて、買収だったと判断したのは妥当だろう。

 一方、検察の捜査手法に対しては疑問の声もある。買収と知りつつ金を受け取る行為は禁じられているが、地元議員らの立件は見送られた。クリーンな選挙を求める有権者には割り切れなさも残ろう。

 判決は、克行元法相に関して現金供与の全体を計画したと認定した。案里被告とは別に続けられている元法相の審理にも影響しそうだ。

 夫妻は、疑惑浮上後も有権者にきちんと説明することのないまま議員の座に座り続けてきた。判決を受け、野党のみならず、与党の公明党からも案里議員に辞職を求める声が上がっている。有罪が確定すれば失職するが、それを待つまでもなく、自ら身を処すべきである。

 自民党の責任も重い。参院選では党本部主導で新人の案里議員を擁立した。陣営には党本部から1億5千万円の資金が渡されたが、同じ選挙区の自民現職陣営の10倍という破格の支援だった。

 潤沢な資金の存在が、大規模な買収につながった可能性もあろう。党として頬かむりをしたまま済ませるのでなく、資金の流れなどを調査し、明らかにするのが筋だ。

 政治とカネを巡る不祥事は依然として後を絶たない。先週は、鶏卵生産大手グループの元代表から500万円を受領したとして吉川貴盛元農相が収賄罪で在宅起訴された。河井夫妻の買収事件の捜査で押収された資料などが端緒となったものだ。

 今回の判決を受け、菅義偉首相は「政治家は疑念を抱かれないよう、襟を正して活動していくことが大事だ」と述べたが、危機感は伝わってこない。一政治家の責任にのみ帰して済ませるような姿勢では国民の不信感は拭えない。



河井案里被告判決/議員辞職しか道はない(2021年1月23日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 2019年7月の参院選を巡る買収事件で公選法違反の罪に問われた参院議員の河井案里被告に東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。夫の元法相で衆院議員の克行被告と共謀し地元議員らに渡したとされる現金について案里被告は「票をお金で買う発想自体がない」と買収の意図を否定し、無罪を主張していた。

 案里被告は参院選広島選挙区で自民党現職と野党系無所属との三つどもえの激戦となり、初当選。だが克行被告が100人に計2900万円余りを配り、うち5人への170万円について共謀したとして逮捕・起訴された。公選法の規定で罰金刑以上の有罪が確定すれば、当選無効となる。

 これとは別に車上運動員に違法な報酬を渡したとして公選法違反で公設秘書の有罪が確定。検察は連座制を適用し、案里被告の当選を無効とするよう求める行政訴訟を広島高裁に起こしている。案里被告陣営を仕切った克行被告の有罪が確定しても、同じ手続きに移行。いずれかで検察側勝訴が確定したら、案里被告はやはり失職する。

 もちろん買収事件の裁判で控訴したり、行政訴訟で上告したりすることはできる。ただ検察側主張を覆すのは難しいとみられ、地元有権者や国民への説明責任も果たしていない。なお争い、国会議員であり続けることに理解は得られない。議員辞職しか道はない。

 案里被告は一貫して買収の意図を否定。県議や市議ら地元議員5人に渡したとされる現金計170万円について「当選祝い」や「陣中見舞い」と主張した。だが5人のうち4人は「参院選の応援を依頼する趣旨」「票集めを求められたと思った」などと述べ、受領の模様も詳しく証言した。

 もう1人は「当選祝い」としたが、克行被告から受け取った県議らからも「応援依頼」との証言が相次いだ。食い違いを追及されると、案里被告は「記憶にない」「知らない」と繰り返した。また買収を主導し、陣営を束ねる「総括主宰者」として起訴された克行被告の役割などを尋ねられても「分からない」「記憶にない」などと、かわす場面が目立った。

 最終陳述では「皆さまを裏切るようなことはしていない。どうか私を信じていただきたい」と訴えたが、東京地裁は現金供与先の5人のうち4人について克行被告との共謀を認定。一人ずつ、選挙情勢や現金授受の時期と状況、金額などを総合的にみて、買収目的だったとの判断を示した。残る1人については無罪とし、その上で「自ら実行行為に及び、刑事責任は重い」と述べた。

 現職国会議員の夫婦が逮捕・起訴される前代未聞の公選法違反事件を巡っては、当時の安倍晋三首相や自民党本部も責任を免れない。党本部は広島県連の反発を押し切り、2人目の候補として案里被告を擁立。安倍氏や官房長官だった菅義偉首相らが現地入りし、全面支援した。

 案里氏側には、党本部から現職側と10倍の開きがある1億5千万円が入金された。それが金権選挙の土壌を生み出し、民主主義の根幹である選挙の公正性を大きくゆがめる結果につながった。

 克行被告は前首相に近かったといわれるが、1億5千万円支出が決まった経緯や使途を、きちんと検証し、明らかにすることが求められよう。




2021.01.23 05:00
【案里議員判決】辞職し責任を明確にせよ(2021年1月23日配信『高知新聞』-「社説」)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反の罪に問われた参院議員、河井案里被告に対して、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 判決は「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行だ。刑事責任は重い」と厳しく指摘した。案里議員は判決を重大に受け止め、辞職するべきだ。責任を明確にしなければならない。

 案里議員は、衆院議員で元法相の夫、克行被告と共謀し地元議員ら計100人に計2900万円余りを配ったとされる。公判で案里議員は配った現金の趣旨は「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」と、買収目的を否定した。だが判決は退けた。

 市議1人への現金10万円は、案里議員の積極的な関与などが認められないとして無罪としたが、県議4人に30万~50万円渡した計160万円に関しては選挙買収と認めた。

 現金を渡したのは参院選公示日が迫る時期であり、選挙で期待された役割や立場などから案里議員への投票や票の取りまとめの報酬として相応だったとしている。

 一審であるとはいえ、票を金で買ったと認定された。案里議員は逃げることなく自らの行為を説明する必要がある。

 事件発覚は、選挙カーでアナウンスをする車上運動員に法定上限を超える日当を渡した問題が糸口となった。これが表面化して以来、河井夫妻はそろって国会出席の職務を果たさず議員を続け、「捜査中」を理由に説明することもなかった。議員の職をおとしめたに等しい。

 現職の国会議員夫妻が逮捕された前代未聞の事件は、特異な展開をたどったといえる。

 自民党本部が改選2議席の広島選挙区の独占を狙い、党広島県連が反対する中、現職の溝手顕正氏と新人の案里議員の2人を擁立した。党本部は案里議員側に溝手氏側の10倍に当たる1億5千万円を投じた上、当時の安倍晋三首相らが演説に駆け付け応援に力を注いだ。

 巨額の資金が買収に充てられたのか明確ではないとしても、政治不信を増幅させたのは確かだ。地元政界も混乱が続いた。それにしては、中央政界が深刻に捉えているようには受け取れない。

 官房長官当時に案里議員の応援演説をした菅義偉首相、巨額の資金を投入した自民党の二階俊博幹事長は判決を受け、共に「襟を正す」とコメントした。この言葉に国民がどれほど真剣味を感じただろう。

 案里議員は、連座制で当選無効を求める行政訴訟も起こされている。100日以内に判決を出すようにする「百日裁判」で審理し、春ごろ結論が出る見通しだという。また、今回の判決を不服として控訴すれば、刑事裁判と行政訴訟が同時に進み、いずれかが確定するまで議員資格を維持できるという。

 買収事件であるのに誰一人責任を取らないようでは、国民の不信がさらに膨らむのは間違いない。



案里被告に有罪 「金権選挙」が断罪された(2021年1月23日配信『西日本新聞』-「社説」)

 票をカネで買う。そんな行為がまかり通れば、民主主義も議会政治も成り立たない。あってはならない「金権腐敗選挙」が断罪されたと言えよう。

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る買収事件で、公選法違反(買収、事前運動)の罪に問われた参院議員河井案里被告=自民党離党=に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 判決によると、案里議員は夫で元法相の衆院議員河井克行被告と共謀し、19年3~5月、広島県議4人に計160万円を手渡した。地元議員1人への買収は無罪となった。

 改選定数2の広島選挙区で自民党は現職候補に加え、新人だった案里議員を2人目の党公認候補として擁立した。「2議席独占を狙う」と言えば聞こえはいいが、党本部主導の強引な追加公認で、現職を抱える党広島県連は反発する。激しい保守分裂選挙の結果、案里議員が当選し、現職候補は落選した。

 判決はこうした経緯に触れ、案里議員は党広島県連の支援を受けられず、厳しい選挙情勢を認識していたと述べた。

 その上で、買収を認めた県議らの証言に基づき「票の取りまとめの報酬として現金を渡した」と認定した。「県議選の当選祝いや陣中見舞いだった」とする案里議員の主張は退けた。

 また判決は克行元法相が主導的に関与したとも認定した。元法相は計100人に計2900万円余りを配ったとされ、案里議員とは別に審理が続く。

 案里議員が元法相と共謀し配ったとされる現金はそのほんの一部にすぎない。有罪確定したわけでもないが、常識では考えられない現金を配った末に当選した事実は否定しようがない。ここは議員辞職し、けじめをつけることを考えるべきだ。

 そもそもなぜ、こんな前代未聞の買収工作が起こったのか。事件の中心とされる元法相の裁判のみに、全容解明と責任の追及を委ねるわけにはいかない。

 まずは、案里議員を党本部主導で擁立した自民党の責任である。選挙前に破格の計1億5千万円を夫妻側へ入金している。これが買収原資となったかどうかは不明だが、なりふり構わぬ巨額の資金投入が事件の温床となった疑念は晴れていない。

 参院選当時、官房長官として案里議員の選挙を応援した菅義偉首相の責任も問いたい。

 首相は判決を受け「政治家は国民の負託を受け、疑念を抱かれないよう襟を正して活動することが大事だ」と述べたが、まるで人ごとのように聞こえる。当たり障りのない一般論に逃げ込まず、「政治とカネ」の問題に率先して取り組むべきだ。



[河井案里被告に有罪]議員辞職するのが筋だ(2021年1月23日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 2019年7月の参院選を巡り、公選法違反(買収、事前運動)に問われた参院議員の河井案里被告に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の判決を言い渡した。

 自民現職と野党系無所属との三つどもえとなった広島選挙区で、案里被告当選のため夫の元法相で衆院議員の克行被告が地元県議や首長ら計100人に現金計2900万円を配ったとされる前代未聞の事件だ。案里被告はこのうち5人について共謀したとして起訴され、判決は4人への現金供与計160万円を買収と認定した。判決が確定すれば、失職する。

 同選挙を巡っては、これと別に車上運動員に違法な報酬を渡した公選法違反で公設秘書の有罪が既に確定している。広島高検が連座制適用による当選無効の訴えを起こしている。さらに選挙運動の「総括主宰者」とされ公判中の克行被告が有罪となっても、連座制適用を求める行政訴訟となる見込みだ。

 いずれかの訴訟で検察勝訴が確定した場合案里被告は失職するが、控訴・上告の余地があり、その間は国会議員の地位が保たれる。

 国民が選んだ議員の地位を失わせるのは本来慎重であるべきだ。しかし公選法違反疑惑が浮上した19年秋以降、野党は国会での説明を求めるなどしたが、案里被告はいまだ責任を果たしていない。

 コロナ禍で多くの人が苦境にあえいでいる。必要な説明もせず歳費や手当を受け続けることに国民の理解は得られまい。自ら議員辞職するのが筋である。

■    ■

 問題の参院選では、自民党本部が広島県連の反対を押し切り、現職に加えて案里被告の擁立を決定した。党本部は選挙前、現職の10倍に及ぶ計1億5千万円の資金を案里被告側に提供した。当時の安倍晋三首相や官房長官だった菅義偉首相も現地入りし、案里被告を全面支援している。

 党資金1億5千万円が買収の原資になったとの指摘があり、うち1億2千万円は政党交付金からの支出という。

 判決で「民主主義の根幹である選挙の公正を害する犯行」と指弾された選挙買収事件である。自民党の説明責任も免れない。あらためて事実関係の調査を求めたい。

 調査について菅首相は記者団に「党で所定の手続きを経た上で、ルールに基づいて交付された」と述べるにとどめたが、問題は使い道だ。なぜ巨額の資金が必要だったのか、実際に何に使われたのかを明らかにすべきである。

■    ■

 河井夫妻による買収、安倍氏の後援会による「桜を見る会」夕食会費補填(ほてん)問題や吉川貴盛元農相の収賄事件など、「政治とカネ」を巡る問題が相次いでいる。いずれも政権幹部が関わったり、政策決定に重大な影響を与えたりした可能性が指摘されている。

 その一方で当事者たちは満足に説明を行っていない。地裁判決を受け菅首相は「政治家は襟を正して活動していくことが大事だ」と述べた。人ごとのようであり、被告の進退にも触れなかった。説明責任は首相自身にもあることを忘れてはならない。





案里被告に有罪判決 「金権」断ち切る契機に(2021年1月22日配信『中国新聞』-「社説」)

 2019年7月の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件で公選法違反の罪に問われた参院議員の河井案里被告に、東京地裁は懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

 検察が描いた全体の構図は、夫で元法相の衆院議員克行被告が選挙運動を仕切り、当選を得るため広島県内の県議や首長ら100人に計2900万円余りの現金を配ったというものだ。候補者本人だった案里被告はうち5人への170万円について共謀したとして起訴された。

 過去に例がないほど、大がかりなカネまみれ選挙が行われていたことに驚いた。法相経験者の起訴も、現職国会議員夫妻そろっての起訴も聞いたことがない。政治への信頼を深く傷つけた点で、夫妻の罪は既に重い。

 選挙は民主主義の根幹であり、公正さが保たれて初めて成り立つ。それを害する行為は厳しく罰せられなければならない。今回の判決を「金権政治」と決別する出発点にしなければならない。

 裁判は昨年8月に始まり、審理を迅速に進める「百日裁判」で行われていたが、克行被告が9月に弁護団を解任し、審理が中断したことを受けて二つの裁判に分離された。

 両被告とも現金の受け渡しについてはおおむね認めた。しかし、票の取りまとめを頼むなど買収の趣旨はなかったと真っ向から否定し、無罪を主張した。

 案里被告も被告人質問で「県議選の当選祝いや陣中見舞いであり、票をお金で買う発想自体がない」と反論した。しかし趣旨が地盤づくりであったとしても、これほど多額の現金を地方議員らにばらまく行為を正当化する言い訳にはできまい。

 案里被告から金を受け取った県議らは「参院選で応援してほしいのだと思った」「選挙違反の金だ」などと述べた。地裁はこうした受領側の証言を重視し、買収目的だったとの判断を示したのだろう。

 判決は、夫妻の共謀が成立することも認定した。克行被告の公判は現金を受け取った「被買収者」が100人と多く、判決言い渡しは春以降にずれ込む可能性が強いが、その判断に影響するのは間違いない。

 夫妻は逮捕から今日まで、国会議員としての職責を全く果たしていない。コロナ禍で苦境に陥る人々が増える中、現在も多額の歳費や手当が支給されていることに世論の批判は強い。

 地元の有権者や国民に対し説明責任を果たさないまま、法廷で争い続けていくことは、もはや誰の理解も得られまい。有罪が確定すれば、夫妻は失職するが、判決が出た以上、一刻も早く議員の職を辞するべきだ。

 公判を通じてカネにまみれた選挙の一端が明るみに出たが、その原因となった資金の流れの解明は進まなかった。

 参院選を前に自民党本部から夫妻側に1億5千万円もの政治活動費が提供されていたことが分かっている。うち1億2千万円は税金で賄う政党交付金だった。その一部が買収の原資になっていた疑念は残ったままだ。

 昨年の自民党総裁選の際、党の資金の流れの調査や再発防止について、菅義偉首相は「私が総裁になったら責任を持って対応したい」と述べた。総裁に就いてから4カ月余りたつ。いつ責任を果たすのか。



河井案里被告に有罪判決(2021年1月22日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 日本最初の衆院選は明治23(1890)年7月に実施された。定数は300。選挙権は国税15円以上を納める25歳以上の男子、被選挙権は15円以上納税の30歳以上男子で、有権者は総人口の1%にすぎず、しかも投票用紙に自分の氏名を記す記名投票だった

◆当時、国会議員の歳費は800円。これに対し、選挙にかかった費用は平均2千円。しかも、選挙民を集めての「飲ませ食わせ、それにつかませ」だったという(『日本国会事始(ことはじめ)』)。憲法制定から国会創設という未経験の事情を考慮してもお粗末に映るが、それを笑えるだろうか

◆一昨年夏の参院選広島選挙区を巡る買収事件で公選法違反の罪に問われた参院議員河井案里(かわい・あんり)被告(47)に対し、東京地裁はきのう21日、懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を下した

◆地元県議らに渡した現金の趣旨が争点だったが、司法は票の取りまとめの依頼にとれると判断した。渡す側が陣中見舞いやお祝い金のつもりだったとしても、受け取る側はそう思わない。お金で人の心は買えないという意味でもあろう

◆今年は任期が切れる秋までに、49回目となる衆院選が実施される。初の国政選から130年を経て、さまざまな制限はなくなったが、理想の選挙に近づけないのはなぜだろう。有権者の一人として、その理由と1票の意味を今から考えていきたい。





進退問われる参院選有罪判決(2021年1月21日配信『日本経済新聞』―「社説」)

2019年7月の参院選広島選挙区をめぐる買収事件で、公職選挙法違反の罪に問われた参院議員、河井案里被告に対し、東京地裁が懲役1年4月、執行猶予5年の有罪判決を言い渡した。

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有罪判決を受け、東京地裁を出る参院議員の河井案里被告=21日

まだ一審判決が出た段階であり、有罪が確定したわけではない。だが案里議員は自らの政治責任の重さを考え、出処進退を判断すべきではないか。

判決によると、案里議員は夫で元法相の克行衆院議員と共謀し、票の取りまとめの依頼などの目的で地元議員4人に現金計160万円を手渡したという。

裁判で案里議員側は、配った現金は陣中見舞いや当選祝いなどで違法性はないと主張したが、東京地裁は当選に向けた買収だったと認定した。

検察の捜査では、この選挙では克行議員が中心となって地元議員や首長ら100人に現金を配るという大がかりな買収行為が繰り広げられたとされる。案里議員の事件はその一部にすぎない。

克行議員も同じく買収の罪で起訴され、裁判中だ。河井夫妻のそれぞれの秘書も、車上運動員に違法な報酬を支払った別の事件で刑事訴追された。案里議員の選挙は「丸ごと」違反の疑いが持たれる異例の構図だったといえる。

被告夫妻は問題が発覚した後、「捜査中」「裁判中」などを理由に、事件の経緯などについて詳しい説明を避けてきた。司法の判断が示されたいま、納得のいく説明を行ってはどうか。

案里議員は自民党執行部の後押しで出馬し、党本部が計1億5千万円もの活動費を振り込み、支援した。党側は買収事件とは無関係としているが、こうした資金と選挙活動との関係について改めて詳細に調査し、開示すべきだ。

今回の事件では捜査にも疑問が残る。検察が現金を受け取った側の刑事処分を行わずに裁判を進めたからだ。「地元議員らは自らの刑事責任を免れるため、検察に有利な証言をしたのではないか」との疑念を抱かせかねない。





「5S」(2020年12月6日配信『日本経済新聞』ー「春秋」)

 産業界では「5S」という活動がおなじみだ。整理、整頓、清掃、清潔、しつけ。ローマ字にしたときの頭文字がすべてSなのでこの名がある。5Sを標語に、仕事が非効率になっていたり、規律が緩んでいたりしないかあぶり出す。政治や行政の世界でも使えそうだ。

▼まず、いらないものを排除する「整理」。約1万5千の行政手続きの99%は押印が不要なことがわかった。抱えていた無駄は壮大だ。必要なものをすぐに出せるようにしておく「整頓」も、「桜を見る会」をめぐり招待者名簿が廃棄されていたり、廃棄済みとしていた資料が後で見つかったりした件を考えれば落第だろう。

▼きれいにする「清掃」や汚れのない状態を保つ「清潔」は問題が深刻だ。元法相、河井克行被告夫妻による参院選の買収事件もあれば、吉川貴盛元農相が不透明な現金を受け取っていた疑惑もある。桜を見る会も前夜祭の収支を政治資金収支報告書に記載していなかった疑いが持たれている。クリーンな政治は今や死語か。

▼怖いのは、異常なことを異常と思う気持ちが薄れていくことである。ルール順守を習慣づける「しつけ」の劣化は著しい。5S活動の本質は、5つを徹底して実践することで組織の何を変えるべきか考え抜くことにある。政府・自民党も始めてはどうか。菅義偉首相らの発言から危機感があまり伝わってこないのが心配だ。





川越しのご法度(2020年12月3日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川。江戸幕府の防衛のため橋はもとより船も禁じた東海道の難所、大井川の「川越し」の苦労をうたった馬子唄だ

▼庶民はおろか参勤交代の大名に至るまで、馬や人足の輿(こし)や肩車を利用するほかなかった。増水すれば長逗留(とうりゅう)を強いられる。「川越してから宿を取れ」という言葉が生まれたゆえんである

▼国の観光支援事業「GoToトラベル」は菅首相が先月見直しを表明したものの、札幌と大阪を目的地とする旅行の一時停止を決めたのは連休明けのこと。感染が広がった場合の準備は十分だったのか。川を渡る前に宿の予約を奨励したような印象が拭えない

▼感染拡大の懸念はコロナ禍に限らない。西日本の養鶏場で鳥インフルエンザの感染確認が相次いでいる。宮崎県でも陽性が出るなど関係者の心配は尽きないが、迅速な消毒作業の実施に準備の大切さを痛感する

▼そんな鶏卵業界を揺さぶるような疑惑が浮上した。広島県の鶏卵生産大手グループの元代表が、吉川貴盛元農水相に現金を渡した疑いがあるという。昨年の参院選広島選挙区を巡る買収事件の家宅捜索で、国会議員への現金提供を示す資料が見つかったそうだ

▼不正な資金の授受はあったのだろうか。政治腐敗の感染拡大を防ぐには徹底した疑惑の究明と説明が必須である。こっそりと隠れて川を渡るようなことがあってはならぬ。





河井事件秘書有罪(2020年12月2日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

自民党の説明責任は免れない

 昨年夏の参院選広島選挙区で初当選した河井案里議員(自民党を離党)陣営の公職選挙法違反(買収)事件で、逮捕された案里議員の公設秘書について、最高裁は上告を棄却し、有罪が確定しました。検察は近く、案里議員の当選無効などを求めて行政訴訟を起こします。検察が勝訴すれば、案里議員は失職します。案里議員と夫の克行元法相・衆院議員は、地方議員らへの大規模買収事件で、ともに逮捕され公判中です。買収の原資には自民党本部から送金された巨額の資金があてられた疑惑が深まっています。自民党は説明責任を免れることはできません。

1・5億円の使途不明

 公設秘書は、車上運動員に規定を超える報酬(計200万円余)を支払った公選法違反が問われました。上告棄却に伴い執行猶予付きの懲役刑が確定しました。検察側は同秘書を連座制の対象となる「組織的選挙運動管理者」と位置付けています。広島高検は有罪確定から30日以内に広島高裁に連座制の適用を求める行政訴訟を起こします。この裁判で、公設秘書が「組織的選挙運動管理者」と認定されれば、案里氏は議員の資格を失い、5年間は同一選挙区から立候補できません。

 河井夫妻が票の取りまとめを求めて地方議員や首長ら100人に計約2900万円を提供した大規模買収事件の裁判は、案里議員の公判が年内に結審し、年明けに判決が出る見通しです。克行元法相の裁判は、地方議員らの証人調べが行われています。これらの裁判でも有罪が確定すれば、案里氏は失職します。

 選挙運動員や地方議員の買収は、票をカネで買う重大犯罪です。案里議員も克行議員も、議員の資格がないのは明白です。とりわけ法をつかさどる法相だった克行議員の責任は重大です。夫妻は、買収事件について記者会見などをしていません。裁判結果を待つまでもなく、夫妻は説明責任を果たし、議員を辞職すべきです。

 案里議員の選挙の際、1億5000万円にも上る破格の資金を提供した自民党本部の責任は重大です。案里氏の出馬は、克行元法相を要職に登用してきた安倍晋三前首相や当時官房長官の菅義偉現首相らの強い意向といわれます。他の参院選候補とはケタ違いの資金を提供しただけでなく、安倍氏や菅氏が応援に駆け付けました。安倍氏の秘書らも地元を回るなどして、選挙を支えました。

 投じられた資金の大半、1億2000万円は税金で賄われる政党助成金です。にもかかわらず、先日公開された政治資金収支報告書などでも、資金の使われ方は明らかになっていません。自民党本部の資金が買収の原資になった疑いは消えません。自民党本部には“政治的連座制”が問われます。頬かむりすることは許されません。

「桜」のウソは許されない

 安倍前首相の「桜を見る会」前夜祭でも、安倍氏側による費用の肩代わりが明らかになるなど、新たな疑惑が浮上しています。安倍氏が1年にわたって国会でウソを言い続け、菅氏もそれをおうむ返ししてきたことは大問題です。

 「桜」や河井夫妻による大規模買収事件を含め、「政治とカネ」をめぐる疑惑の徹底究明が急務です。菅政権は、解明に背を向け続ける姿勢を改めるべきです。





ワイロ今昔(2020年11月15日配信『高知新聞』-「小社会」)

 江戸時代の豪商、河村瑞賢と儒学者の新井白石。2人にこんな接点があったとは知らなかった。まだ修業中だった白石の将来を見込んだ瑞賢が、孫娘を白石の妻にと申し入れた。広い敷地に大きな家を建て資金援助も惜しまない、と。

 白石は一つの例え話をして断る。心ない人間が小さな蛇に傷をつけた。蛇は成長したが、傷も大きくなり目立つようになった。私も今は小さな蛇だが必ず大成するつもりでいる。その時、あなたの申し入れを受けたことが大きな傷にならないとは限らない…。

 作家、童門冬二さんの「江戸のワイロ」にある。瑞賢の申し出は賄賂というより、ほれ込んだ人物への「投資」であろう。それをも潔しとしない白石の人間性がよく出ている。

 現代政治の舞台裏も「潔し」には程遠い。昨年参院選で買収などに問われた参院議員、河井案里被告の公判。収賄側の広島県議の多くが「集票依頼と思った」とするのに対し、案里被告は「県議選の当選祝いや陣中見舞い」。

 証言の食い違いは徹底審理によって解明するほかない。一つ言えるのは現金を渡した方ももらった方も、最初は小さいと思っていたのが「大きな傷」となり、進退窮まったことであろう。

 江戸時代も贈収賄は横行した。それでも「不文律として、贈収賄は悪いことだという考え方は存在していた」と童門さん。白石の言動からもそれはうかがえる。今の世はどうなのだろう。



キャプチャ

内容(「MARC」データベースより)
盆暮のあいさつはワイロといえるか。ワイロはけっして肯定されるものではなく、なければないに越したことはない。にもかかわらずなぜ絶えないのか。日本人の性情から生まれた一種の文化を、江戸の風俗から考察する。





Go To選挙応援(2020年11月12日配信『中国新聞』-「天風録」)

 和歌には、上の句がどれほど上品ぶった調子でも狂歌に変える下の句がある。〈それにつけても金の欲しさよ〉。本紙がきのう報じたニュースにも悲しいかな、ぴったりだった

▲参院選のあった昨年、広島選挙区の自民党公認候補の側から同党の重鎮県議の側へ金が流れたという。互いが代表を務める党支部を通じて、である。その見返りはさて、当の県議が認める通り、選挙応援なのだろうか

▲同じ選挙では、元法相夫妻が絡むとされる大規模買収事件も明るみに出ている。票集めをすると、お得ですよ―。観光旅行や飲み食いの一部代金を政府が肩代わりする「Go To」キャンペーンとそっくりの構図に映る。まるで「Go To」選挙応援

▲一方、「バーター」と呼ばれる見返りもある。衆院選の選挙区で他党を応援する代わり、比例代表で協力を得る。元法相のお膝元の広島3区も連立与党の自民、公明の間でその関係にあったが、きしみが聞こえ始めた

▲「Go To」では、来年春の大型連休まで引っ張る案が与党に持ち上がっている。恩典にありつけば、有権者には「与党さまさま」と映る…とでも踏んでいるのだろう。それにつけても票の欲しさよ。





河井夫妻裁判 現金配布の真実を語れ載(2020年11月7日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 公選法違反の罪で起訴された現職国会議員夫妻の公判で、現金授受を巡る重要な証言が次々と明らかになっている。そのほとんどが買収の趣旨を裏付ける内容だ。

 事件の舞台となったのは、参院議員の河井案里被告が初当選した昨夏の広島選挙区だ。証言が事実ならば、案里被告側はカネにまみれていたことになる。

 夫の衆院議員克行被告は、案里被告とともに起訴された。案里被告への票の取りまとめを依頼、地元議員ら100人に計約2900万円余りを配ったなどとされる。

 公判で夫妻は現金配布をおおむね認めた。しかし買収の趣旨については否定し、一貫して無罪を主張している。

 これに対して検察は地元議員らを証人尋問、現金配布の生々しいやりとりが判明した。検察が冒頭陳述で指摘した通り、「なりふり構わず」買収に走っていた疑いが濃くなった。

 現金計200万円を受け取った元広島県議会議長は、集票の依頼だと思ったと証言。県議は議会棟で現金を差し出され、買収と認識したと述べた。「これ総理から」「二階幹事長から」と言われた市議らもいた。

 これらが事実であれば、公正であるべき選挙を踏みにじる許されない行為だ。民主主義の根幹を支えるのが選挙との認識が欠如していたのではないか。

 克行被告は初公判後、間もなく弁護士全員を解任。このため公判が継続できなくなり、案里被告の審理を分離していた。その後、新たな弁護士を選任して先日、約1カ月半ぶりに公判が再開されたばかりだ。

 法相を務めた現職国会議員である克行被告については、「あらゆる活動での最終責任者」との証言も出ている。「真実を語ってほしい」との地元議員らの声を夫妻は重く受け止め、自らの口で真実を語るべきだ。

 公判でさらに注目されるのは、参院選公示前に自民党本部から夫妻側に入金された1億5千万円について、初の証言があったことだ。選挙費用に関する報告書に全額を記載すると「違反になる」と、克行被告の元秘書が話したという内容だ。

 現金買収の原資について検察は立証しない見通しだが、この巨額資金が事件の引き金になったことはなかったのか。その8割に当たる1億2千万円は、税金で負担した政党交付金だった疑いもあることから、ますます疑念が募る。

 菅義偉首相は就任前、自民党総裁選の会見で「総裁になったら責任を持って対応していきたい」と述べた。だが総裁になっても本人から説明はない。

 官房長官当時には案里被告の選挙応援演説に駆け付けており、菅首相に克行被告は近いとされる。夫妻は自民を離党しているとはいえ、こうした関係からも、菅首相は党の最高責任者として、資金について誠実に説明しなければならない。




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