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(論)自殺に関する論説(2020年11月8・19・20・29・12月1・5・17・28日)

それでも生きてほしい(2020年12月28日配信『神戸新聞』-「正平調」)

〈生きている不潔とむすぶたびに切れついに何本の手はなくすとも〉。福崎町出身の歌人岸上大作が逝って60年が過ぎた。姫路文学館で開催中の回顧展では他の有名な歌でなく、この1首をチラシやポスターに掲げる

◆国学院大学に在学中、安保闘争に身を投じた岸上は、学生歌人として一躍注目された。一方で自らの全存在を賭けた恋に破れ、21歳の若さでその命を絶った

◆会場には、いまわの際まで書き続けた「ぼくのためのノート」全53枚が並ぶ。短歌作品以上に鮮烈で、岸上の最高傑作とされる絶筆だ。「おのれの純情に殉じるのだぞ」。その純粋すぎる死によって、彼は文学史に名を刻んだといえる

◆教職への希望も持っていたというから、あるいは故郷で教壇に立ち、平穏な人生を送っていたかもしれない。「先生も昔は名のある歌人やったんや」なんて生徒に自慢しながら

◆コロナ禍で若者の自殺が増えていると聞く。深刻な悩みを抱えた人に軽々しい慰めは言えないが、それでも生きてほしい。死ぬほどつらい時に誰かを頼ることは、決して「不潔」ではな

い◆青くさいままの岸上の遺影を前に思う。伝説の夭折歌人じゃなく、平凡な81歳のあなたに会いたかった。もちろん握手の前には、アルコールで手を清潔にして。






なぜ自殺がいけないのか(2020年12月17日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 なぜ自殺をしてはいけないのか。問われると、意外と答えるのが難しい問いかもしれない。解剖学者の養老孟司さんは、著書「死の壁」(新潮新書)で、この問いに答えている

▼一つは自殺は殺人の一種であること。もう一つは自殺は周囲の人に大きな影響を与えてしまう「二人称の死」であるとする

▼息子を自殺で失った私の知人は、10年以上たった今でも、なぜ止められなかったのかと、自身を責め続けている。残された者が心に負う傷は深い

▼7月以降、自殺者の数が大幅に増えている。自殺者数は過去10年減少を続けてきたが、今年は前年同月比で7月以降5カ月連続の増加。特に女性は10月は82.8%増、8月は44.2%増と深刻である

▼コロナ禍では多くの非正規雇用の女性が仕事を失っている。「いのち支える自殺対策推進センター」は「無職の女性」「同居人がいる女性」が自殺死亡率を押し上げ、感染拡大による経済面や家庭での悩みが影響している可能性があるとみている

▼まずは生計の安定である。政府の緊急小口資金や住居確保給付金の支援が年内で途切れる人もいる。延長を検討すべきではないか。SOSの声を上げやすくするのも重要だ。自殺は、その多くが追い込まれた末の死である。生きることを阻害する要因は何か。取り返しがつかない命を救うため、私たちの社会ができることはある。





「公助」の拡充(2020年12月5日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 芥川龍之介が子ども向けに書いた短編小説『蜘蛛(くも)の糸』を読んだことがある人は多いだろう。地獄に落ちた泥棒の男が一度だけクモを助けたことから、釈迦(しゃか)が1本のクモの糸を垂らして手を差し伸べる

▼「この糸は俺のもの。下りろ」。眼下の罪人たちがクモの糸に群がるのを見た男がわめくと、糸は切れる。いかなる境遇の者であろうと、もし助かるならば、目の前の細い糸に思わずすがりつきたくなるだろう

▼そんな一筋の光明すらも、今の日本にはないのだろうか。今年に入って自殺者が増えている。特に女性の増加が顕著で、10月は前年の約1.8倍。40歳未満は約2.3倍にも達した

▼この異常事態は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が大きい。女性は非正規雇用が多いとされ、失業や休業で生活苦にあえぐ。休校により、子育てや家事、育児、仕事の負担がのしかかり、追い詰められた人もいるとみられる。どの理由もやりきれない

▼クモの糸は引っ張り張力に優れ、2.6ミリの太さがあれば600キロまで耐えられるという。「第3波」の到来で、菅義偉首相が強調する「自助」では限界に来ているだけに、窮状をしのぐことができる丈夫なクモの糸のような「公助」の拡充を。ぐずぐずしていると、この国は本当に大変なことになる。



コロナ禍 女性支援(2020年12月1日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

深刻な実態を直視し対策急げ

 新型コロナウイルス感染拡大が多くの女性たちを直撃しています。経済情勢の悪化や日常生活の激変による矛盾が女性に集中しています。女性の自殺者が急増していることは大問題です。感染急拡大の中で、暮らしと命を守る対策は一刻の猶予もできません。内閣府に設置された「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」も11月、支援や相談体制の強化などを政府に求める緊急提言を出しました。コロナに対しジェンダーの視点で解決をはかることが一層重要になっています。

見過ごせない自殺者急増

 コロナ禍での女性の苦境を端的に表しているのは雇用です。4月の雇用者数は男女とも激減しましたが、減少幅が大きいのは女性です。男性32万人減に対し、女性は2倍以上、74万人減です(緊急提言の資料)。雇用形態では、非正規雇用労働者の減少が顕著に示されました。女性の非正規の就業者が多い観光・宿泊・飲食業などが大打撃を受けたことの影響です。提言は「女性不況」と指摘します。

 「第1波」「第2波」がもたらした深い傷が続く中で「第3波」が到来し、営業自粛要請などが繰り返されていることは、女性にとっても極めて過酷です。雇用と営業を守るため、政府が現在行っている枠組みにとどまらず支援をさらに強めなければなりません。自粛要請と一体での補償を行うことは待ったなしです。ひとり親家庭の支援強化も急がれます。

 見過ごせないのが、自殺者の急増です。厚生労働省によれば、10月の女性の自殺者は852人と前年同月比で8割も増加しました。同時期の男性の増加率約2割を大きく上回ります。40代では2倍以上も増え、30代も9割以上増えました。東京都医師会は10月の記者会見で、女性自殺者の増加の背景として、生活苦や経済的不安の高まりとともに、対面での交流機会を失い、悩みを抱え込む自粛生活、リモートワークや休校による夫や子どもの在宅生活の広がりなどを挙げました。食事の用意をはじめ家事の負担が急増したり、気の休まる時間や居場所がなくなったりして、女性が精神的に追い込まれていることを示しています。

 日本では、普段から女性に家事や育児、介護の負担がのしかかっています。コロナがそれに拍車をかけ、女性が心身ともに疲弊し、命を絶つような事態にまでなっていることは放置できません。命を守るための相談体制の拡充・強化が緊急に求められます。同時に、女性に重圧がかかる日本社会の現状を変えるために政治が積極的な役割を果たすことが必要です。

 先の内閣府研究会の提言は、外出自粛がDVや虐待につながり、女性が被害を受けている実態の一端を浮き彫りにしています。5~6月のDVの相談件数は前年同月比の約1・6倍で、4~9月の性犯罪・性暴力の相談件数も前年同期比の約1・2倍です。従来の延長にとどまらない相談体制やシェルターの整備などは急務です。

社会の全構成員にも重要

 コロナ対策で女性が取り残されることがあってはなりません。今春、国連女性機関は、ジェンダー視点の対策は「女性のみならず社会のすべての構成員に良い結果をもたらす」と強調しました。菅義偉政権は、この指摘を真剣に受け止め、具体化を急ぐ時です。





10月の自殺者急増 失業増やさぬ対策も急務(2020年11月29日配信『北国新聞』-「社説」)

 警察庁の速報値によると、10月に全国で自殺した人の数が2000人を超えて今年の月別で最多となり、前年同月比で4割増えた。石川県は15人(前年同月比4人増)だったが、富山県は27人(同20人増)と同様の急増ぶりを示し、増加率で全国トップとなった。

 統計上、自殺者は社会が大きく動き出す春先に多く、秋冬にかけて少なくなる傾向にある。今年は6月まで前年を下回る低水準にあったが、7月以降4カ月連続で増加している。逆行するような動きを示す中で、年末に向けての急増傾向は憂慮すべき事態であり、歯止めをかけねばならない。行政や民間団体の支援機関は連携を強化するなどして命を救う安全網の拡充に努めてほしい。

 10月の全国状況で顕著だったのは女性の増加だ。前年同月比82%増の851人を数えた。厚生労働省は新型コロナウイルスの影響が長引き、仕事や育児などの悩みが深刻化している可能性があると指摘している。女性の非正規労働が多い観光、飲食、サービスなどの業種で相次ぐ休業、減収による経済的な負担もあるとみられる。自殺要因はさまざまな問題が複雑に関連している場合が多いが、少なくともコロナがもたらした社会変化が職場や家庭でストレスを高め、立場の弱い人にしわ寄せが及んでいるのは間違いなかろう。

 経済的基盤がぜい弱な人が追い詰められる傾向は、失業率と自殺率が密接な相関関係にあることからもいえる。夏場以降、持ち直しの兆しを見せる日本経済だが、雇用情勢は依然として厳しい。解雇や雇い止めは11月に入って7万1千人を超え、増加基調が続く。石川、富山両県とも同様で、11月13日時点でそれぞれ837人、729人と6月の2倍近くに上る。

 再拡大の懸念があるコロナの防止対策が欠かせないのは言うまでもないが、経済を回す対策を継続し、失業を増やさない手だてを講じていくことも急務であると再認識したい。国はコロナと経済の両面の対策を押し進める第3次補正の予算編成に財政出動を惜しまず取り組んでもらいたい。





「1947人」と「2153人」(2020年11月20日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 命の軽重を比べることなどできない。ただ、国内を対象にした二つの調査の数字を見て考えてしまった。「1947人」と「2153人」。前者は新型ウイルス感染者の累計死者数(18日夜時点)、後者はこの10月1カ月間の自殺者である

▼感染拡大が止まらない。ワクチン開発進展の朗報も、再拡大への恐れと悲しみにかき消されてしまいそうだ。本県でも大型のクラスターが相次いで発生し、緊張の日々が続く

▼一方、自殺も10月は空前の増え方だった。昨年同月と比べ4割増えた。女性に限れば8割以上、ほぼ倍増といえる。ことしは累計で1万7千人を超え、10年連続の減少が途絶えそうだ。民間シンクタンクは先日、自殺急増の背景にウイルス禍があると緊急アピールをした

▼解雇や雇い止めがやまない。就職が決まらず、ふさぎ込む学生も多い。感染者だけでなく、家族や同僚に対する中傷や差別、いじめも増えている。生活苦や将来に絶望して自らを追い詰める。そんな“関連死”が感染の再拡大で膨張している

▼「新潟いのちの電話」には途切れなく相談が寄せられている。その広報誌「聴く」で、江戸中期の禅僧、白隠の詩句が紹介されていた。「君看(み)よ双眼の色、語らざれば憂い無きに似たり」

▼悩みや悲しみがないのではない。語れないほど深い憂いに、じっと耐えているのだ-。疫病と一人苦闘を続ける人がいるはず。マスク越しに助けを求めるまなざしに気付きたい。ぬくもりある声を、一言でも届けられたらいい。





[女性の自殺増] 安全網整備を急がねば(2020年11月19日配信『南日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大で雇用や暮らしに影響が広がる中、特に女性の自殺が増えている。

 コロナ禍で家族が家にいる時間が増え、家事や育児、介護など女性の負担が増し、ドメスティックバイオレンス(DV)のリスクにもさらされているとの見方がある。

 感染収束の兆しはまだ見えず、自治体や民間団体などの相談窓口には「眠れない」「死にたい」といった悲痛な声が続々と届いている。幅広く目配りして支援を積み上げ、相談に対応する体制や経済的支援などセーフティーネット(安全網)を早急に整えなければならない。

 警察庁によると、10月の自殺者数(速報値)は2153人(鹿児島県23人)で、前年同月の1.4倍に上った。全国では4カ月連続で前年の同じ月を上回っており、女性に限ると10月は851人で、1.8倍に増えている。

 一般社団法人いのち支える自殺対策推進センターは緊急リポートで、7、8月の女性の自殺者は「同居人がいる」「無職」のケースが多かったと報告した。その上で、DVや育児の悩みなどがコロナ禍で深刻化している可能性がある、と指摘した。

 女性を取り巻く状況は厳しさを増すばかりだ。総務省の8月の労働力調査で非正規雇用は前年同月から120万人減った。うち女性は84万人を占め、経済的に厳しい状況に追い込まれている人が少なくないことがうかがえる。

 当面の経済的な支援としては、雇用継続を図る雇用調整助成金の拡充や現金給付が考えられる。真に必要としている人に届くよう、対象を絞り込むことも必要だろう。中長期的には、非正規と正社員や男女間での待遇格差の是正に向けた粘り強い取り組みが求められる。

 一方、内閣府の調べでは、DV相談は5、6月、前年同月の約1.6倍に増加している。

 政府はコロナ禍がもたらす女性への影響などを検証する有識者研究会を9月に設置し、近く実態調査にも着手するという。自殺や解雇・雇い止め、DV被害などの現状と課題をしっかり把握し、実効性のある対策を講じてもらいたい。

 自殺の背景には、過労、生活困窮、育児、介護疲れ、いじめ、孤立といったさまざまな要因があると考えられる。追い込まれて取り返しがつかなくなる前に、こうした要因を速やかに取り除かなければならない。

 厚生労働省は8月、電話や会員制交流サイト(SNS)による相談窓口などをまとめたサイト「まもろうよ こころ」をホームページ上に開設した。対面に抵抗のある人も気軽に相談できる。活用してもらうよう周知に努めたい。





女性の自殺増 要因分析し支援策急げ(2020年11月8日配信『中国新聞』-「社説」)

 長引く新型コロナウイルス感染拡大で雇用や日々の暮らしへの影響が長引く中、女性の自殺が増加している。

 政府は有識者による「コロナ下の女性への影響と課題に関する研究会」を設置した。今月から自殺や解雇、ドメスティックバイオレンス(DV)被害などの実態調査に乗り出す方針である。増える自殺の背景や要因を速やかに分析し、相談態勢や支援策に生かさねばならない。

 警察庁によると、2019年までの全国の自殺者は10年連続減少し、ことしに入ってからも6月までの自殺者数は前年同期に比べ減っていた。ところが7月には大幅に増えて1800人台となり、8月には過去最多の1854人に上った。

 9月の自殺者数は1805人で8月よりはやや減ったものの前年同月比では8・6%増である。男女とも増えているが、とりわけ女性の増え方が目立つ。9月の自殺者のうち女性は639人。男性は前年同月比で0・4%増だったのに対し、女性は27・5%と大幅に増えている。

 雇用状況が大きく影響しているのだろう。女性はパートや派遣社員など非正規雇用で働く人が多い。そのためコロナ禍による景気の悪化で、解雇や雇い止めなどの影響を受けやすいと、かねて指摘されてきた。特に外出自粛などで影響を受けた対面サービス業や観光業などは、女性の雇用者が6割前後を占めているという。

 厚生労働省が発表した10月30日時点のコロナ関連の解雇・雇い止めは、見込みも含めて6万9130人でその約半数を非正規雇用が占める。研究会で提出された資料でも、女性の就業率が3月以降、大きく低下していることが明らかになった。

 橋本聖子・男女共同参画担当相は「新型コロナの影響は女性に特に強く表れている」と認め、実態調査で自殺につながる要因などを詳しく検証し、今後の対策につなげる方針だ。今まさに困窮している人が救える支援を急がねばならない。

 女性の自殺が増える背景は、雇用問題に限るまい。働いているかどうかにかかわらず、ことしの春以降は感染を避けるため家族が家にいる時間が増えている。現状で家事や子育て、介護などを担うのは大半が女性だ。先の見えないコロナ禍で負担増は続いている。家にいることでDVや虐待のリスクが高まることにも目を向ける必要がある。

 性暴力被害の相談も増えているという。橋本氏はおととい、性暴力に関する全国のワンストップ支援センターに寄せられた相談件数が4~9月に前年同期比15・5%増だったと明らかにした。出会い系サイトなどで知り合った人から受けた被害相談が増えており、コロナ禍が影響している可能性が高いという。被害者が孤立し追い詰められることのないよう目配りが要る。

 コロナの影響が長期化すれば心理的抑圧はさらに深刻化する。相談窓口を万全に整えるほか、雇用継続を図る雇用調整助成金の拡充や、本当に必要としている人に届く現金給付など、あらゆる手を尽くしてほしい。

 コロナ感染による死者を抑えることができても、コロナ関連で自殺に追い込まれる人が増えては元も子もない。困難に直面している人を一日も早く救える施策を丹念に重ねるべきだ。 




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