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(論)3次補正の編成に関する論説(2020年11月11・12・13・14・15日)

コロナと3次補正 配分の重点は生活支援に(2020年11月15日配信『毎日新聞』-「社説」)

 政府は、今年度の第3次補正予算案の編成に着手した。新型コロナウイルスの影響で大幅に悪化した経済を支える狙いという。

 景気は依然厳しい。あす発表される7~9月期の国内総生産(GDP)は、戦後最悪だった4~6月期の落ち込みから半分程度しか回復しないとの予測が多い。

 待遇の不安定な非正規労働者は昨年に比べて100万人以上も減っている。休廃業を余儀なくされた中小企業も過去最大のペースで増えている。経済の基盤である雇用が失われると、景気の本格回復もおぼつかない。

 今急ぐべきなのは、困窮している人や企業への支援だ。

 政府は、雇用を維持する企業への助成金を上乗せしたり、資金繰りを支える持続化給付金を支給したりしてきたが、行き渡っていない。年末年始で期限は切れる。延長が必要だ。

 経済の状況は地域で異なる。きめ細かな支援が欠かせない。自治体への交付金拡充も急務だ。

 問題は、与党で規模の話ばかりが先行していることだ。10兆円超の大型予算を求める声が相次ぎ、30兆円を主張する幹部もいる。

 来年秋までには衆院選が行われる。菅政権で初の予算をアピールしたいとの思惑があるのだろう。

 だが規模が優先されると事業のチェックが甘くなる恐れがある。

 政府は、来年1月末が期限の旅行喚起策「GoToトラベル」延長を目玉にする方針だ。ただ、感染が急速に再拡大している。支援の必要性が高い中小旅館やホテルには恩恵が少ないとも言われる。制度の点検が先決だ。

 国土強靱(きょうじん)化の推進も柱に据えた。与党は、防災などの公共事業に今後5年で新たに総額15兆円を投じるよう求めている。大規模災害への備えは必要だとしても、これだけ巨額の費用をつぎ込むことは適切なのか。景気対策としてばらまくのなら論外だ。

 政府は既にコロナ対策の補正を2回編成し、計60兆円近い財源は全て国債に頼った。今回も追加発行を検討している。借金を野放図に膨張させると、将来世代の負担がますます重くなる。

 無駄の排除は政権の看板のはずである。事業を厳選し、生活の支援に重点配分すべきだ。





3次補正編成 緊急度で施策絞り込め(2020年11月14日配信『中国新聞』-「社説」)

 菅義偉政権が、追加経済対策の策定と、3次補正予算案の編成に乗り出した。

 重点項目は、(1)新型コロナウイルスの感染拡大防止(2)ポストコロナへの経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靱(きょうじん)化―の三つ。年明けの通常国会に出し、2021年度予算案と一体的な「15カ月予算」として、早めの成立・執行を目指すという。

 景気回復に向け、切れ目のない対応は確かに重要だ。しかし本年度は税収が当初見込みより大幅に落ち込み、借金に当たる赤字国債を大量発行した。補正にかこつけた便乗はないか。中身を厳しくチェックし、緊急度重視で施策を絞り込むべきだ。

 例えば国土強靱化。本年度まで3年間の緊急対策の延長が検討されているが、盛り込むのは優先度の高い施策に限る必要がある。それ以外は21年度に回すなど、めりはりが欠かせない。

 コロナ対策では、1次、2次補正で喫緊の施策、いわば「止血」策が強く求められた。57兆円を投じたものの、雇用危機は深まっている。解雇や雇い止めは7万人に達した。製造業、飲食業、小売業で目立ち、半数以上は非正規だという。

 ひとり親家庭の苦境や自殺者の増加にも歯止めがかかっていない。中小企業の倒産も相次いでいる。そうした困窮者に「公助」の手がきちんと差し伸べられているのか。1、2次補正の効果や残された課題について十分な検証が求められる。

 休業手当の一部を国が補填(ほてん)する雇用調整助成金の特例措置は12月末で期限切れとなる。政府は3次補正で、1月以降も続けるという。雇用情勢の悪化を考えれば当然である。

 医療や福祉、介護現場で働く人への支援の拡充も必要ではないか。通常業務でさえ過酷とされる上、感染症対策で肉体的・精神的な負担は増している。私たちの命や健康の支え手であることを忘れないようにしたい。

 3次補正では消費喚起も重視するという。「Go To」キャンペーンの延長などである。経済再生は必要だが、感染の「第3波」到来が懸念される現状を考えると、不安は拭い切れない。実施する際には、専門家の意見を聴き、状況を慎重に見極めなければなるまい。

 気になるのは、与党の前のめり姿勢だ。自民、公明両党の幹部は10兆~15兆円の規模を念頭に置いている。しかし「30兆円ぐらいあってもよい」との意見が自民党内から漏れる。来年秋までの衆院選を前にアピールしたい思惑があるのだろうか。

 しかし中身より規模を優先するあまり、安易な「ばらまき」を繰り返してはならない。1次、2次補正では過去最大の事業規模にするため、不要不急の事業が盛り込まれ、批判された。忘れてはなるまい。

 3次補正の財源にも疑問が残る。1次、2次で積んだ予備費の残りを充てるという。国会論議を経なくても政府の裁量で使える予備費は緊急用で一定額は要るだろう。しかし2次で積んだ10兆円は多すぎた。7兆円余り残ったこと自体、妥当ではなかった証しと言えよう。

 財政状況の悪化で基礎的財政収支の黒字化は、さらに遅れそうだ。断念した25年度に代わる目標の提示が急がれる。コロナ禍であっても、財政規律を捨て去ることは許されない。 





第3次補正予算 必要で効果的な施策の見極めを(2020年11月13日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 菅義偉首相は追加経済対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の編成を指示した。新型コロナウイルスの感染拡大防止策や雇用対策、消費喚起策のほか国土強靱(きょうじん)化も含まれる。予算規模は10兆円を大きく超える可能性がある。

 コロナの感染が拡大する中、雇用や事業者を守る施策は不可欠だ。しかし政府は1次補正で25兆円、2次補正では補正予算としては過去最大となる31兆円の予算を組み、本年度の一般会計予算は既に空前の160兆円に膨らんでいる。編成に当たっては、真に必要で効果的な施策を見極めなければならない。

 本年度の税収はコロナの影響で、当初見積もりから数兆円規模の大幅な下方修正が見込まれている。1次、2次補正合わせて積んだ予備費の残りは7兆円超。政府は3次補正に活用する方針だが、追加の赤字国債発行は避けられない見通しだ。国債の新規発行額は既に、過去最高だったリーマン・ショック後の09年度の1・7倍となる90兆円を上回っている。財政健全化は遠のく。

 そんな中、与党内からは10兆円を大きく上回り、30兆円規模の補正予算を求める発言が相次いでいる。予算は規模ありきではなく、施策を精査し積み上げていくべきものだ。施策の中身よりも規模が先行している感が拭えず、来年秋までに行われる衆院選をにらんだ思惑を指摘されても仕方あるまい。

 3次補正では、企業が従業員に支払う休業手当の一部を国が補塡(ほてん)する「雇用調整助成金」の上限を引き上げた特例措置を来年1月以降も継続する方針。12月末が期限だった。引き上げた助成率や上限額を維持するか、段階的に引き下げるかどうかは直近の雇用情勢を踏まえ今月中に判断する。従業員を他社に出向させる企業への助成を手厚くし、柔軟な労働移動を促進するという。コロナ関連の解雇や雇い止めは7万人を超える。雇用支援は引き続き重要な課題だ。

 来年1月末までの観光支援事業「Go To トラベル」の延長も検討している。高価格帯の宿泊施設への利用集中や、無断キャンセルして買い物に使えるクーポンを不正取得するといった問題が続出した。急ごしらえの「Go To キャンペーン」では恩恵が偏っている不公平感や運用面の不備で混乱が目立つなどしており、制度設計の見直しや、感染が急拡大する局面での適用についても議論しておく必要があろう。

 菅首相は3次補正を12月に編成し21年度予算案と一体的に使う「15カ月予算」として、マイナンバーカード普及促進や地方自治体のデジタル基盤改革を後押しする支援策なども盛り込む考えだ。しかし本格的な冬場を前に、感染が急拡大している。今後の感染状況次第では、さらなる対策が必要にもなろう。感染拡大の深刻化も視野に入れ、3次補正は急を要する施策を優先すべきだ。



第3次補正予算(2020年11月13日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆精査し最小限に絞り込め◆


 菅義偉首相は、追加経済対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の編成を関係閣僚へ指示した。新型コロナウイルスの感染が広がる中で、事業者や雇用を守るための対策は引き続き重要である。だが本年度は2度の補正による予算が残っている上、年末の21年度当初予算案の編成とも重なる。3次補正は新型コロナ対策など必要最小限の予算に絞り込むべきだ。

 政府は本年度、新型コロナ対策として既に2度の補正予算を編成。予算規模25・7兆円の1次補正では、1人一律10万円の給付金や観光・飲食喚起事業「Go To キャンペーン」の予算を手当て。同じく31・9兆円の2次では、雇用調整助成金の拡充や家賃支援の資金を確保した。

 3次補正は、与党の要望を反映して(1)新型コロナ感染の拡大防止(2)ポストコロナへ経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靱(きょうじん)化に向けた安全、安心―の3本柱で構成される見込みという。

 しかし、このような総花的な編成は補正予算の性質から好ましくない。政府、与党からは早くも「10兆円、15兆円どころか30兆円ぐらいあってもいい」(世耕弘成自民党参院幹事長)と規模を巡る発言まで出ている。これでは来年秋までに見込まれる衆院解散・総選挙を意識して規模を優先し、中身をなおざりにしていると言われても仕方あるまい。

 このタイミングで補正を組むのであれば、やはり重視すべきは雇用であろう。企業が支払った休業手当の一部を国が補う雇用調整助成金は、コロナ禍による助成拡充の特例措置が12月末に期限を迎える。

 政府は来年1月以降も継続する方向だが、特例措置の段階的な縮小を検討しているという。コロナ不況の長期化により今後の雇用悪化が懸念される。雇用調整助成金は重要なセーフティーネットであり、縮小は慎重に議論してもらいたい。

 菅首相は、3次補正を来年度当初予算と合わせた「15カ月予算」として編成し、目玉政策であるデジタル化の関連施策も盛り込む考えとされる。

 このように補正を本予算の「抜け穴」として使う手法は安倍前政権で毎年度のように繰り返され、歳出と債務残高の膨張につながってきた。

 20年度は当初予算と2度の補正を合わせて歳出総額が160兆円を突破し、財源を賄うための新規国債の発行は90兆円を上回る。その上、コロナ不況が響き税収は、当初見積もりより数兆円規模で下振れすると見込まれている。この極めて厳しい財政状況を考えても、3次補正に「冗費」と受け取られる支出を入れる余裕はないはずだ。



[3次補正編成] 規模が膨らむだけでは(2020年11月13日配信『南日本新聞』-「社説」)

 菅義偉首相は追加経済対策の策定と、その裏付けとなる2020年度第3次補正予算案の編成を指示した。12月に編成して21年度予算案と一体的に使う「15カ月予算」とし、切れ目のない財政出動で景気回復を目指す。

 新型コロナウイルスの新規感染が全国的に広がり、「第3波」との見方もある。事業者や雇用を守るための対策に万全を期すのは当然である。

 だが、与党内からは政策の内容を伴わないまま予算規模の拡大を求める声が上がっている。コロナ対策に必要かつ有効な政策が打ち出せるよう、まずは中身の議論を深めるべきである。

 3次補正は(1)コロナ感染の拡大防止(2)ポストコロナへ経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靭化(きょうじんか)に向けた安全、安心-を柱に編成される見込みだ。

 コロナ対策関連では、ワクチンの確保や接種の体制整備などに関する費用を確保する。雇用対策では、企業が従業員に支払う休業手当の一部を国が補填(ほてん)する「雇用調整助成金」の上限を引き上げた特例措置を来年1月以降も継続するための財源を盛り込む。

 ただ、助成率や上限額をそのまま維持するのか、段階的に引き下げるのかは決まっていない。コロナ不況は長期化し雇用情勢は今後も厳しさが予想される。特例措置の継続は歓迎できるとしても、助成の縮小は状況を見極めて慎重に判断してもらいたい。

 消費喚起策としては、来年1月末までとしている観光業の支援事業「Go To トラベル」の実施期間延長を検討しており、費用を計上する方針だ。政府は感染が広がる北海道の除外を「検討する状況にはない」とするが、各地で1日当たりの新規感染者数が最多を更新している。

 このまま高止まりし、季節性インフルエンザも同時に流行すれば、医療体制が逼迫(ひっぱく)し「医療崩壊」を招きかねない。感染拡大の状況に応じて柔軟に見直すべきだろう。

 予算規模は当初、10兆円程度の見通しだったが、自民党の世耕弘成参院幹事長が「30兆円ぐらいの規模があってもいい」と述べたように、与党の要求額は日々積み上がっている。来秋までに見込まれる解散総選挙が念頭にあるのではと勘ぐられても仕方あるまい。

 だが、政府は1次補正で25兆円、2次補正で31兆円の国費を投じ、新規国債発行額は当初予算を含め90兆円と空前の規模に膨れ上がっている。一方、税収は当初見積もりより数兆円規模で下振れすると見込まれ、財政がより厳しさを増すのは必至だ。

 これまでのコロナ対策事業では不正受給が相次いだ持続化給付金をはじめ、制度設計の不備が目立った。政策の中身を詰めて予算を絞り込むのはもちろん、適正な予算執行のために運用面の改善も不可欠である。





3次補正編成 「賢い支出」で経済支えよ(2020年11月12日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止や景気回復を後押しするため、菅義偉首相が追加経済対策と令和2年度第3次補正予算の編成を指示した。

 今春の1次、2次補正は、コロナ禍で打撃を受けた経済・社会活動に対する緊急の「止血」が主眼だったが、今回は、コロナ後を見据えて経済を動かすことにも重きを置く。

 3次補正と3年度当初予算を一体で編成し、切れ目のない政策対応で、経済を民需主導の成長軌道に乗せたいという狙いである。

 景気は4~6月に底を打ち回復に向かいつつある。それでも戻りは遅く、コロナ前の水準に至るには時間を要しよう。官民のデジタル対応や働き方改革などの構造転換を根付かせ、経済を確実に再生する必要がある。これに資する実効性のある対策を求めたい。

 前提としてコロナ感染の広がりに目を配るべきは当然だ。北海道や東京などでは感染者増が顕著である。冬場にかけて、さらに増大する事態にならないか。この点を十分に見極めつつ、経済を動かす適切な対策を講じてほしい。

 対策は感染拡大防止策と経済構造転換、国土強靱(きょうじん)化の3本柱である。中小企業のデジタル投資への補助金やグリーン投資を促す制度といった首相の看板施策関連のほか、雇用調整助成金の上限引き上げの特例延長なども検討する。

 首相は効果的・効率的で即効性のある施策に重点化する「ワイズスペンディング(賢い支出)」を進めるという。そのためにも、まずは従来実施した企業支援や消費拡大策の効果を検証すべきだ。コロナ対策の予備費は7兆円以上残っているが、中小企業や個人事業主などに必要な資金が行き渡っているのかなども再点検したい。

 首相の看板施策に便乗し不要不急の予算を潜り込ませることがあってはならない。国土強靱化の公共事業は、予算を積み上げるだけではなく人手の確保を含めて円滑に執行できるかどうかを吟味すべきだ。補正で何を優先するのかを適切に判断することが大事だ。

 気がかりなのは、与党から30兆円の財政支出が必要などと金額ありきの意見が相次いでいることである。これまでの政策的な知見を踏まえずに予算規模ばかりを追求すると、効果の薄いばらまきを誘発しかねない。これでは到底、ワイズスペンディングとはならないことを銘記すべきだ。



3次補正の編成 規模拡大に走る危うさ(2020年11月12日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が第3次補正予算案の編成を指示した。

 新型コロナウイルスの拡大防止策と追加経済対策を中心とする方針で、国土強靱化(きょうじんか)の推進も掲げている。

 政府は1次補正で25兆円、2次で31兆円を投じた。使途が決まっていない2次の予備費も7兆円以上残ったままである。

 新規国債発行額は当初予算を含め90兆円を超え、過去最高だ。税収の落ち込みも避けられない。3次補正はさらなる赤字国債発行につながる。編成は慎重であるべきだ。政策の必要性を議論し、使途を限定することが欠かせない。

 与党内からは政策の必要性の議論ではなく、予算規模拡大を優先する声が相次ぐ。当初見通しは10兆円規模だったのに30兆円規模が必要とする幹部もいる。次期衆院選を意識しているのは明らかだ。効果が不透明な政策を積み上げるのは、財政規律を逸脱する。

 いま必要なのは二つだ。支援が必要な人たちを把握し、手を差し伸べること。もう一つは第3波の様相を見せる感染の拡大を食い止めることだ。

 3次補正では「雇用調整助成金」を拡充した特例措置の期限を延長することなどが検討されている。企業が払った休業手当の一部を国が補う制度だ。雇用維持のためには必要な措置といえる。

 問題はコロナ禍で解雇や雇い止めにあった人たちを支援する視点が抜け落ちていることだ。厚生労働省のまとめだと既に7万人を超え、1カ月から1カ月半で1万人増えるペースだ。

 その6割程度が非正規雇用者で、雇用の調整弁になっている実態が改めて浮き彫りになっている。新たな雇用先もなく、生活に困窮している人が少なくない。

 深刻なのが非正規で働く人が多いひとり親世帯だ。一般社団法人「ひとり親支援協会」の調査だと、7割近くがコロナ禍で生活が苦しくなっていた。生活困窮者の支援を優先する必要がある。

 拡大防止策も手薄だ。検査態勢や病院支援の充実なども必要なのに、ワクチンの費用確保や体制整備費が検討されている程度だ。

 政府は観光支援の「GoToトラベル」の延長や、地方自治体のデジタル基盤の改革後押し、温室効果ガス削減に向けた技術支援などを盛り込むことを検討している。経済優先は明白だ。

 「自助」を優先し「公助」を後回しにする政策では国民生活は維持できない。財源は限りがある。優先順位を誤ってはならない。



3次補正/規模ありきを繰り返すな(2020年11月12日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府は2020年度第3次補正予算案の編成作業に着手した。新型コロナウイルス対策や雇用支援、消費喚起策が柱となる。

 与党幹部からは、15兆円超だ、30兆円だと巨額支出を求める発言が相次ぐ。衆議院議員の任期が来年10月に近づく中、解散総選挙をにらみ支持率上昇につなげる思惑が見える。

 国民のニーズとずれた「アベノマスク」や、不正受給が相次ぐ持続化給付金など、同じくコロナ対策を旗印とした過去2回の補正予算では中身を十分に煮詰めない施策が目立った。規模ありきの予算編成で財政規律は緩み切っている。

 税収が伸びない中、財源は今回も国債に頼らざるを得ない。すでに90兆円を超す本年度の新規国債の発行額がさらに膨れ上がるのは確実だ。政府は中身を精査し、コロナ禍で苦しむ国民や企業に適切に届く施策を講じねばならない。

 3次補正では、企業が支払う休業手当の一部を国が補う雇用調整助成金の特例拡大が検討されている。観光支援の「Go To トラベル」も期間が延長される見通しだ。

 助成金の特例拡大は、従業員を他社に出向させる企業が主な対象になる。だが、契約条件が不明瞭なため現行の助成金や持続化給付金の対象外となっている人も少なくない。コロナ禍による解雇・雇い止めは7万人を超え、雇用危機は深刻だ。政府は企業だけでなく働く人への支援も手厚くしてもらいたい。

 「Go To トラベル」では高価格帯の宿泊施設への利用集中や、宿泊をキャンセルして買い物に使えるクーポン券だけを入手する悪用例が表面化している。延長するなら制度設計の見直しが欠かせない。

 北海道や東京などでは感染者数が急増し、「第3波」の可能性も指摘される。こうした状況で、感染拡大の誘因となる都道府県間の移動を政府が促してよいのかも、十分に議論するべきだ。

 デジタル化の推進や国内のサプライチェーン(調達・供給網)強化、国土強靱(きょうじん)化など、コロナ後を見据えた施策も3次補正には計上される。これまでの補正予算にもコロナとの関連が薄い項目が散見されたが、同じ轍(てつ)を踏む恐れがある。

 本年度は補正予算分も含め、政府の裁量で使える予備費がコロナ対策を名目に11・5兆円計上され、まだ7・2兆円残っている。政府はこれを3次補正の財源にする方針だが、巨額の使い残しがあるのに、さらに大型補正を組む是非も問われる。

 官邸主導を掲げるなら菅政権は各省庁の要求に厳しく目を光らせ、財政健全化とコロナ対策を両立させる姿勢を示さねばならない。



第3次補正予算 真に必要な対策見極めて(2020年11月12日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相は10日、追加経済対策の策定を関係閣僚に指示した。その裏付けとなる2020年度第3次補正予算案は、21年度当初予算案と一体的な「15カ月予算」として12月に編成される。

 国内における新型コロナウイルスの新規感染者は、11月に入って増加に転じており、日本経済は再び縮小しかねない状況だ。疲弊した経済を早期に成長軌道に乗せ、国民一人一人の暮らしを再び安定させるためには、実効性のある対策を間断なく講じる必要がある。

 とはいえ、2度の補正で新規国債の発行は90兆円を上回った。財源となる税収は落ち込みが避けられず、今度も国債の追加発行は必至だ。厳しい財政状況を念頭に置き、真に必要な対策を見極めてもらいたい。

 追加対策は、(1)新型コロナ感染の拡大防止(2)ポストコロナへ経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靱化[きょうじんか]に向けた安全、安心の確保-の3本柱となる方向だ。

 言うまでもなく、肝心なのは対策の中身だ。現行のコロナ対策を十分検証し、支援が行き届かず取り残される人が出ないような対策をまとめる必要がある。

 しかし、与党内では「最低でも10兆~15兆円」「30兆円ぐらいあってもいい」といった声が先行。国土強靱化についても「5カ年で15兆円」などといった規模ありきの議論が進んでいるようだ。来年秋までに実施される衆院選を意識した振る舞いとみられても仕方あるまい。

 一方で、企業の雇用維持を支える雇用調整助成金は、特例措置を21年1月以降も継続するが、段階的に縮小するという。コロナ関連の解雇や雇い止めは7万人を超え、落ち着く気配はない。厳しい状況下でも、雇用対策の縮小には慎重であるべきだ。

 コロナ後の成長に向けた戦略も打ち出す必要があろう。菅首相は地球環境に配慮した「グリーン成長」を起爆剤とする考えを示している。温室効果ガス排出量の「50年実質ゼロ」を10月に宣言しており、その達成と企業活動の相乗効果を狙うとみられる。

 環境分野の需要は、国内だけにとどまらない。世界各国が脱炭素化を表明しており、米大統領選で勝利宣言したバイデン氏も日本と同様の目標を掲げている。環境投資は今後、米欧を中心に拡大するとみられる。日本企業がその受け皿となるよう、技術開発やコスト改善を後押しすべきだ。

 コロナ禍で遅れが浮き彫りになったデジタル改革も加速させる。内閣府がまとめた20年度の経済財政白書は、デジタル化への投資を通じて「新たな日常」を定着させながら内需を喚起することを提言した。働き方改革と生産性向上を両立させる上でも欠かせない視点と言える。

 白書は、デジタル化に必要なIT人材の7割超がIT産業に集中する現状も指摘した。特に地方の中小企業がデジタル化の波に乗り遅れないよう、人材のさらなる確保・育成にも注力してほしい。





3次補正の編成 必要施策に集中投入を(2020年11月11日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉首相はきのう、追加経済対策とそれに対応する本年度第3次補正予算案の編成を指示した。

 コロナ禍の長期化で景気回復の足取りは重い。道内で日別の新規感染者が200人台を記録するなど全国で感染が再び急拡大し、医療現場の危機感が高まっている。

 感染対策や医療態勢を強化するとともに、疲弊した経済と家計の支援に万全を期すのは当然だ。

 ただ対策の中身や実効性が置き去りで、金額ばかりが先行している印象が拭えない。与党幹部からは10兆~15兆円規模の巨額な財政出動を求める声が相次ぐ。

 予算編成は必要な施策を精査し、経費を積み上げるのが筋だ。規模ありきでは不要不急の事業が紛れ込みかねない。本当に必要な中身となるよう吟味すべきだ。

 政府は補正予算案を来年度当初予算案と一体編成し、切れ目のない支援をうたう。だが次期衆院選をにらみ与党の歳出増圧力が増す中、財政規律が働きにくい補正がばらまき予算となりかねない。

 経済はテレワーク需要などで持ち直す業種もある一方、飲食・宿泊業を中心に回復の勢いが弱い。

 企業が持ちこたえられず解雇や雇い止めが増えれば、雇用や所得の悪化を通じ経済全体を下押しする恐れがある。悪循環を断つにはばらまき型でなく、打撃が大きい分野に確実に届く支援が必要だ。

 感染者の急増を受け、最優先すべきは医療・検査態勢の拡充である。無症状・軽症者向けの宿泊療養施設を含め、患者の受け入れ態勢を十分に整えるべきだ。

 コロナ禍で経営が悪化した医療機関の支援も欠かせない。時短要請に応じた飲食店への協力金など独自対策を講じる自治体への交付金増額も検討する必要がある。

 追加対策では雇用調整助成金の特例措置や「Go To キャンペーン」の延長のほか、防災減災のための公共事業も積み増すという。全てが今、必要かは疑わしい。

 「Go To」は飲食や観光需要を喚起する効果が一定程度あっても、感染拡大の恐れがある上、不正使用や恩恵が広く行き渡らないといった制度の粗さも目立つ。延長は制度見直しが大前提だ。

 政府は、異例の10兆円を計上した2次補正の予備費の一部を今回の追加対策の財源に充てることも検討している。

 政府の裁量で使える予備費の巨額計上は、国会の議決を基に予算を動かす「財政民主主義」の観点からも看過できず、3次補正の財源に極力回すのが妥当だろう。



第3次補正予算 事業の選択と集中図れ(2020年11月11日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 菅義偉首相は2020年度第3次補正予算案の編成を関係閣僚に指示した。新型コロナウイルスが経済に及ぼす悪影響が長期化していることを受け、追加の経済対策を実施する方針だ。

 新型コロナの収束が依然見通せない中で、企業経営や雇用を守るための対策が必要であることは論をまたない。しかし20年度は既に2度の補正があって、予算が残っている。3次補正では真にこの時期に必要な事業の「選択と集中」を図るべきだ。

 20年度一般会計の1次、2次補正予算は新型コロナ対策名目で約58兆円が計上されている。その結果、予算総額は空前の160兆円超に膨らんだ。

 新規国債発行額は90兆円超。一方で政府は20年度税収を数兆円規模で大幅に下方修正する方向だ。3次補正について与党からは10兆円を大きく上回る規模を求める声が出ているが、財源は無尽蔵ではない。

 追加経済対策は▽新型コロナ感染の拡大防止▽コロナ後に向けた経済構造の転換▽防災、減災、国土強靱(きょうじん)化の推進による安全、安心の確保―を3本柱とする。並行して21年度予算編成も進められている。菅首相は目玉政策であるデジタル化の関連施策も盛り込む考えを示したが、3次補正で急ぎ予算化すべき施策は絞り込むべきだ。

 雇用対策では、企業が従業員に支払う休業手当の一部を国が補う「雇用調整助成金」を拡充する特例措置に関し、12月末とされた期限を延長する。新型コロナは感染拡大の第3波の到来や、インフルエンザとの同時流行が懸念されている。経済活動への悪影響を抑えるため、支援を続ける必要がある。

 観光支援事業「Go To トラベル」は来年1月末までの実施期間の延長を検討する。観光庁によると、事業を利用した宿泊者は9月末時点で少なくとも延べ2518万人で、割引支援額は計1099億円だった。

 だが、事業の関連予算は1兆3500億円だ。10月以降、それまで除外されていた東京発着の旅も支援対象に加わったが、利用状況をしっかり検証すべきだ。事業費が不足になったとしても、20年度予算は予備費が7兆円超残っている。3次補正には予備費を充当し、できるだけ国債の追加発行は避けたい。

 トラベル事業は、低価格の宿泊施設や中小の旅行会社に恩恵が十分に及んでいないとの指摘もある。旅行先の店舗で使える電子クーポンを不正取得する動きも問題になっている。恩恵が一部業者に偏ったり、不正が生じたりしないよう制度設計を随時見直すことも重要だ。

 巨額の財政赤字を放置して歳出を拡大し続ければ、最終的には国債や通貨の信認が揺らぎ、かえって経済に悪影響を及ぼしかねない。事業の緊急性と効果をしっかり見極め、コロナ後の財政再建も考慮して国債の膨張をできる限り抑えることを求めたい。



第3次補正予算(2020年11月11日配信『佐賀新聞』-「論説」)

中身を絞り込め

 菅義偉首相は、追加経済対策を盛り込んだ2020年度第3次補正予算案の編成を関係閣僚へ指示した。

 新型コロナウイルスの感染が依然広がる中で、事業者や雇用を守るための対策は引き続き重要である。だが本年度は2度の補正による予算が残っている上、年末の21年度当初予算案の編成とも重なる。3次補正は新型コロナ対策など急ぎ必要な予算に絞り込むべきだ。

 政府は本年度、新型コロナ対策として既に2度の補正予算を編成。予算規模25・7兆円の1次補正では、1人一律10万円の給付金や観光・飲食喚起事業「Go To キャンペーン」の予算を手当て。同じく31・9兆円の2次では、雇用調整助成金の拡充や家賃支援の資金を確保した。

 3次補正は、与党の要望を反映して(1)新型コロナ感染の拡大防止(2)ポストコロナへ経済構造の転換(3)防災、減災、国土強靱化(きょうじんか)に向けた安全、安心―の3本柱で構成される見込みという。

 しかし、このような総花的な編成は補正予算の性質から好ましくない。政府、与党からは早くも「10兆円、15兆円どころか30兆円ぐらいあってもいい」(世耕弘成自民党参院幹事長)と規模を巡る発言まで出ている。

 これでは来年秋までに見込まれる衆院解散・総選挙を意識して規模を優先し、中身をなおざりにしていると言われても仕方あるまい。

 このタイミングで補正を組むのであれば、やはり重視すべきは雇用であろう。企業が支払った休業手当の一部を国が補う雇用調整助成金は、コロナ禍による助成拡充の特例措置が12月末に期限を迎える。

 政府は来年1月以降も継続する方向だが、特例措置の段階的な縮小を検討しているという。コロナ不況の長期化により今後の雇用悪化が懸念される。雇用調整助成金は重要なセーフティーネットであり、縮小は慎重に議論してもらいたい。

 一方、消費の喚起策では来年1月末までとしている観光業の支援事業「Go To トラベル」の期間延長へ調整しており、必要な費用を盛り込む方向だ。延長に当たっては利用が週末や特定の地域に偏らないように平日利用の促進策を打ち出すなど、運用面の改善を検討する見通しである。

 一連のGoTo事業を巡っては、旅行や飲食代の割引手続きを事業者のサイトでする必要があるなどの点に、インターネットに不慣れな高齢者を中心に不満の声が強い。支払時に割引が完了するなど簡便で、不正まがいの行為を許さない仕組みに改めるべきだろう。

 菅首相は、3次補正を来年度当初予算と合わせた「15カ月予算」として編成し、目玉政策であるデジタル化の関連施策も盛り込む考えとされる。

 このように補正を本予算の「抜け穴」として使う手法は安倍前政権で毎年度のように繰り返され、歳出と債務残高の膨張につながってきた。

 20年度は当初予算と2度の補正を合わせて歳出総額が160兆円を突破し、財源を賄うための新規国債の発行は90兆円を上回る。その上、コロナ不況が響き税収は、当初見積もりより数兆円規模で下振れすると見込まれている。

 この極めて厳しい財政状況を考えても、3次補正に「冗費」と受け取られる支出を入れる余裕はないはずだ。(共同通信・高橋潤)




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