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(論)女川原発再稼働に関する論説2020年11月12・13・14・16・17・18日)

女川原発再稼働/不安残した同意には疑問(2020年11月18日配信『神戸新聞』-「社説」)

 宮城県の村井嘉浩知事が、東北電力女川原発2号機の再稼働に同意すると表明した。原発が立地する女川町長、石巻市長と3者会談した上での判断で、必要な地元同意手続きはこれで完了した。東北電力は2022年度以降の再稼働を目指す。

 村井知事は苦渋の決断としながらも「安全性はしっかり確認できた。地域経済の発展にも寄与する」と述べた。だが自ら認めるように、地元には安全性への不安が根強く残る。住民の心情を置き去りにした同意には疑問を抱かざるを得ない。

 女川原発は東日本大震災で3基の原子炉が全て自動停止した。津波で建屋の地下が浸水し、壁に千カ所以上のひびも見つかった。

 国内には、沸騰水型軽水炉と加圧水型軽水炉がある。女川原発は沸騰水型だ。原子炉内で水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回して発電する。加圧水型は、原子炉で熱した水を蒸気発生器に送り、別の発電用の水を沸騰させる。

 東京電力福島第1原発事故後、西日本の5原発9基が再稼働したが、いずれも加圧水型だった。沸騰水型は女川原発が初めてとなる。重大な事故を起こした福島原発と同じ型式であり、再稼働にはより厳しい目が向けられていた。

 女川町は1965年に約1万8千人だった人口が約6300人に減少するなど、過疎化に悩む。立地に伴う交付金はこれまでに約270億円あり、昨年度の固定資産税のうち9割は東北電力関連だった。地域の維持のために再稼働を求める意見が出てくることは理解できる。

 ただ一方で、震災後、原発に依存しない町づくりを始めるべきだとの声も地元にはある。議論が尽くされない中で、知事は結論を急ぎすぎたのではないか。

 地元紙・河北新報が今年、宮城県内の有権者に行った世論調査では、再稼働に「反対」「どちらかといえば反対」とする回答が合わせて61・5%だった。地元全体の理解が得られているとは到底いえない。

 最も懸念されるのは、女川原発が事故を起こしたとき、近隣住民の避難に長い時間がかかることだ。原発がある牡鹿(おしか)半島は道路が限られ、交通渋滞が起きる恐れがある。住民は「事故があれば逃げようがない」と不安を口にする。

 仙台高裁も10月、再稼働への同意差し止めを求める仮処分を認めなかったものの、避難については「現状では相当の課題が残されていると認めざるを得ない」と指摘した。

 重要なのは住民の安全だ。同意した地元自治体は、最悪の事態を想定した避難対策を講じる責務を認識しなければならない。





女川原発再稼動へ 将来見据えた議論が先だ(2020年11月17日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 宮城県の村井嘉浩知事が、東北電力女川原発2号機の再稼動に同意すると表明した。東日本大震災で被災した原発に再稼動の道が開くのは初めてのことだ。重大事故を起こした福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉が対象となるのも初となる。

 村井知事は同意した理由について「原発には優れた電力の安定供給性があり、地域経済の発展にも寄与する」と説明した。だが、原発は放射能汚染のリスクを常に背負っており、微細なトラブルでも大量の電力供給が瞬時に止まる恐れがある。地元には避難計画の実効性への不安の声も根強い。地域経済発展への寄与についても、明確な根拠は示されていない。

 「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする」との目標を掲げた菅義偉首相は、達成に向け「原子力を含めたあらゆる選択肢を追求していく」とした。政府内には、女川原発の再稼動を「原子力ありき」の温暖化政策の弾みとする思惑もあるようだ。

 しかし、再稼動の手続きをなぜ急がなければならないのか、との議論は不十分だ。他の原発も順調に再稼動しているとは言い難く、新増設も見通せない中、優先すべきなのは原発の将来も見据えた包括的なエネルギー政策の議論ではないか。

 女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発で、津波によって原子炉建屋地下が浸水するなど重大事故寸前の事態に陥った。安全対策を進めた結果、今年2月に検査に合格。東北電力は、安全対策工事が完了する見込みの22年度以降の再稼動を目指している。

 とはいえ、大震災から10年近くがたった今、世界と日本のエネルギーを巡る状況は激変している。重大事故の教訓を踏まえて原発の安全対策費は増大。コストの上昇傾向が続き、原子力政策は多くの先進国で停滞している。

 国内でも、震災後に再稼動した9基ではテロ対策施設の設置遅れや司法判断、機器トラブルなどで計画外の停止が続発。今後は法律上の運転期限を迎える原発が徐々に増えるため、50年に何基残っているかも見通せない。

 一方、再生可能エネルギーは大量導入とコスト低下の好循環が進み、各国で開発が進んでいる。事故や災害時のリスクも低く、大規模集中型の原発と違い分散立地もできる。

 原発の再稼動を判断する際、周辺自治体や隣県の住民の意見を聞かず、「立地自治体」の議会や首長の合意で決めることも時代の変化に沿っていない。福島の事故が示した教訓の一つは、原発に関する意思決定権を一部の関係者が握り、リスクは住民に押しつける手法の罪深さではなかったか。

 より多くの民意に耳を傾ける前に、既成事実を積み上げるような政権や電力会社の手法は、エネルギー政策全般に関する国民の信頼を失墜させかねない。福島の教訓を踏まえて、どれだけオープンな論議ができるか。そのプロセスが改めて問われている。





女川原発 住民不安は残ったままだ(2020年11月16日配信『山陽新聞』-「社説」)

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)を巡り、宮城県の村井嘉浩知事が再稼働に同意した。必要とされる地元同意の手続きが完了し、東北電は安全対策工事が終わる見込みの2022年度以降の再稼働を目指す。

 女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発であり、地震の揺れや津波の被害に遭った。地元同意は震災で被災した原発では全国初で、重大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉としても初となる。

 再稼働に向けた地元同意が得られたとはいえ、周辺自治体では原発への不安は依然根強く、事故が起きた際の避難計画に対する懸念も拭えていない。同意に至る議論が十分には深まらないまま、結論を急いだ面は否めず、残念と言わざるを得ない。

 震災では、女川原発は最大約13メートルの津波に見舞われ2号機原子炉建屋の地下が浸水したほか、壁に千カ所以上の微小なひびも見つかった。東北電は海抜29メートルの防潮堤を建設したほか、耐震性を高める対策を施し今年2月、再稼働の前提となる原子力規制委員会の審査に合格した。

 だが地元では、避難計画の実効性への不安が強い。

 女川原発は牡鹿半島の付け根近くに位置する。もし原発事故が起きれば、避難する住民らの車で原発近くの幅の狭い道路が渋滞し、逃げ遅れが出る可能性がある。

 昨年の台風19号では、避難で使う道路の一部が冠水し孤立状態に陥る地域もあった。原発事故と水害が複合的に起きる事態は否定しきれない。万一の事態に備え、住民らが安心できる避難計画や体制を整えることが欠かせない。

 周辺自治体の意向が置き去りにされていることも看過できない。再稼働に向けて同意が必要な対象は原則、原発がある道県と地元の市町村に限られている。女川原発では宮城県と女川町、石巻市が対象で、3者の同意により手続き上は整ったことになる。

 原発事故の被害は広範囲に及ぶ。国は原発から半径30キロ圏内の自治体に対して重大事故を想定した広域避難計画の策定を定めている。一方で、同圏内にある立地自治体以外の自治体の同意は必ずしも必要ではない。一部が30キロ圏に入る美里町では町長が再稼働に反対するものの、地元同意には影響しない。

 だが、茨城県にある日本原子力発電東海第2原発のように、地元の東海村の要求によって、同意が必要な対象自治体が広がった例もある。再稼働の可否について、周辺自治体の意向が最大限くみ取れる仕組みとするよう同意手続きを改めるべきだろう。

 女川原発に限らず、原発に対する国民の不信感や不安は今なお根強い。福島第1原発事故後に再稼働できたのは9基にとどまる。エネルギー基本計画の見直しが進む中、現実を踏まえ、脱原発依存へかじを切ることが求められる。





女川再稼働の同意 「原発ありき」から脱却を(2020年11月14日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 宮城県の村井嘉浩知事が、東京電力福島第1原発事故以来、停止している東北電力女川原発2号機(同県女川町、石巻市)の再稼働に同意すると表明。被災地の原発としては初めて再稼働に道を開いた。重大事故を起こした第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初めてとなる。

 村井知事は「原発には優れた電力の安定供給性があり、地域経済の発展にも寄与する」と述べた。だが、その根拠は不明確なうえ、事故で露呈した原子力発電が抱える問題点の多くも未解決のままだ。

 日本のエネルギー供給の中で、また、地域経済にとって、なぜ今、原発再稼働が必要なのかという議論は不十分で、事故の教訓を忘れたかのような「原発ありき」の姿勢は多くの問題をはらむ。原発の将来に関する広い議論を行うのが先決で、時期尚早とのそしりは免れない。

 東日本大震災の際の津波で原子炉建屋地下が浸水した女川原発2号機は、安全対策を講じた結果、今年2月に審査に合格した。東北電は安全対策工事が完了する見込みの2022年度以降の再稼働を目指している。

 原発事故から10年近く、日本と世界のエネルギーを巡る状況は大きく変化した。原発事故の教訓に応えるために安全対策の費用が拡大。原発のコストは上昇傾向が続き、多くの先進国で停滞が深刻だ。一方で、再生可能エネルギーは大量導入とコスト低下の好循環が進み、各国で大規模な開発が進んでいる。変動する出力を巧みに制御する技術も進み、電力供給で中心的な位置を占めるようになった。

 放射能汚染のリスクがつきまとい、ちょっとしたトラブルでも一瞬にして大量の電力供給が止まる原発に比べ、事故や災害時のリスクが小さい点も注目されている。

 脱原発を決めたドイツでは、地域や市民が出資する地産地消の再生可能エネルギーが、地元に利益をもたらしている。

 新型コロナウイルス禍からの復興を考える際、重要なキーワードの一つは、一極集中を避ける「分散」だ。

 国レベルでも地域レベルでも、この10年間の変化を見つめ、大規模集中型の原発ありきの発想から脱却する必要があるのだが、このような議論や検討は不十分だった。

 大事故の際に大きな影響を受ける周辺自治体や隣県などの住民を含めた多くの利害関係者の意見を聞くことなく、「立地自治体」の議会や首長だけの合意で重大な決定を行うという旧態依然のスタイルが繰り返されたことにも、大きな違和感がある。

 福島原発事故の重要な教訓の一つは、いったん、事故が起これば取り返しのつかない被害をもたらす原発に関する意思決定を、一部の関係者の決定に委ね、結果として住民にリスクを押し付けるやり方には大きな問題があるということだったはずだ。

 政府は、50年に温室効果ガスの排出を実質的にゼロにする方針を打ち出し、原発の将来を含むエネルギー政策の議論を始めた。そのプロセスでは、広く、オープンな形で原発の将来に関する合意を図ることが肝心である。

 それを先取りし、既成事実を積み上げるような政府や大電力会社の手法は、エネルギー政策に対する市民の信頼を失わせるものとなるだろう。



女川原発再稼働同意 住民の不安置き去りの拙速判断(2020年11月14日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 宮城県にある東北電力女川原発2号機の再稼働に、県と、立地する女川町、石巻市が同意した。東日本大震災で被災した原発での地元同意は全国で初めてとなる。

 村井嘉浩知事は「原発には優れた電力の安定供給性があり、地域経済の発展にも寄与する」と理由を説明した。しかし、原発を巡る状況は震災後、厳しさを増しており、将来性は大きく揺らいでいる。住民の安全性に対する不信感も根強いままで、判断を急ぐ必要があったのか疑問を禁じ得ない。

 女川原発は、東日本大震災の震源に最も近い原発で、2号機の原子炉建屋地下が津波で浸水し、壁に千カ所以上の微小なひびが見つかるなどの被害に遭った。東北電は、地震の揺れの想定を引き上げ、海抜29メートルの防潮堤を建造することとし、今年2月に国の原子力規制委員会の審査に合格した。

 ただ、実際に再稼働するのは安全対策工事が完了する見込みの2022年度以降となる。村井知事は「しっかりとしたプロセスを経た」と強調したが、拙速感は否めない。いつまでも先延ばしできないという考えもあったようだが、再稼働の推進派が多数を占めた県議会を含め、議論が深まらないまま結論を急いだ印象を受ける。

 とりわけ重大事故が起きた場合の避難計画は、ほかの再稼働した原発がある自治体と同様に住民の不安が置き去りにされたと言わざるを得ない。原発から30キロ圏の約20万人が対象だが、昨年の台風19号では、避難路の一部が冠水し、孤立状態になる地域も出た。地震や水害と重なる複合災害に対応できるかどうか、実効性に懸念は大きい。

 地元の範囲を巡っても課題を残した。女川町、石巻市以外の30キロ圏の5市町の首長は、知事への共同の意見書提出を見送った。地元同意を求める美里町長が再稼働に反対したためで、こうした意見が反映されなかったのは問題だ。茨城県の日本原子力発電東海第2原発では、同意が必要な自治体の範囲を広げており、ほかの立地自治体も検討すべきだろう。

 女川原発は、沸騰水型軽水炉(BWR)としても、初めて地元同意を得た。国はエネルギー基本計画の見直しに当たって原発を活用する方針を維持しており、同型炉の再稼働が進むことに期待を寄せる。だが、これまで再稼働した原発でも、テロ対策施設の設置遅れや司法判断などで運転は不安定だ。使用済み核燃料を再利用する核燃料サイクル政策も行き詰まっており、抜本的な方針の転換は避けられまい。

 震災の被災地である立地自治体には、復興事業が終わりに近づき、過疎化が急速に進む中、再稼働による経済活性化を求める声もあるが、現状を冷静に見極める必要がある。将来世代に責任を果たすために、原発に頼らない地域振興の方向へ議論を深めてもらいたい。





女川原発再稼働同意 住民の安全確保が先決だ(2020年11月13日配信『琉球新報』-「社説」)

 宮城県の村井嘉浩知事は11日、東北電力女川原発2号機の再稼働に同意することを表明した。重大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉で初の地元同意となる。

 女川原発は東日本大震災の震源に最も近い原発だ。原発事故時に周辺住民を避難させるための計画は課題が多く、周辺住民の安全に責任を負えるのかという点で、再稼働同意の判断は性急に映る。住民避難計画の策定が必要な30キロ圏の自治体に同意の範囲を広げ、実効性のある避難計画作りを最優先すべきだ。

 東日本大震災で女川原発は運転中の1、3号機と、原子炉を起動中の2号機が自動停止した。敷地高さを海抜14・8メートルに設計していたが約13メートルの津波が押し寄せ、2号機の原子炉建屋地下が浸水した。

 政府は福島原発の事故を受け、原発から30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)にある自治体に住民避難計画の策定を義務付けた。原発事故の影響が想定されるUPZの自治体は、原発再稼働に当たって同意が必要な当事者と考えるのが当然だろう。女川原発から30キロ圏に一部が含まれる宮城県美里町の相沢清一町長は「避難道路の整備など課題が山積している」と、再稼働に反対姿勢を見せている。

 しかし、東北電が今回の再稼働で同意の対象としているのは宮城県のほか女川町、石巻市という、原発が直接立地する自治体に限っている。

 同様に震災で被災した茨城県の日本原子力発電東海第2原発では、UPZに含まれる自治体を地元同意の対象に加えている。女川原発でも30キロ圏の自治体や住民の意向を除外すべきではない。

 女川原発で重大事故が起きた場合に周辺住民は陸路で避難する計画だが、避難で使う道路は道幅が狭く、地域が求める拡幅も実現していない。昨年の台風19号では道路が一部冠水し、孤立状態に陥る地域も出た。そうした住民の安全確保の議論を置き去りに、再稼働ありきで手続きが進んでいる印象は拭えない。

 東北電は津波の想定を23・1メートルに引き上げ、国内の原発で最も高い防潮堤(海からの高さ29メートル、総延長800メートル)を築いている。安全対策費は3400億円に膨らみ、対策工事の完了予定は当初見込みから2年遅れの22年度までずれ込むこととなった。原発はもはや高コストの電気をつくる施設となっている。

 安全対策が遅れるのであれば、なおさら地元同意の判断を急ぐことはない。

 そもそも、再稼働した全国の原発でもテロ対策用施設の完成遅れや司法判断などの影響で、不安定な稼働状況が続いている。東日本大震災以降、原発の稼働がなくても国内の電力供給は賄えてきた。

 原発を「重要なベースロード電源」と位置付ける政府のエネルギー基本計画を見直し、脱原発を明確にする国全体の政策転換が必要だ。



女川再稼働「同意」(2020年11月13日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

安全と住民置き去り許されぬ

 宮城県の村井嘉浩知事が、東北電力女川(おながわ)原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働に同意を表明しました。2011年3月11日の東日本大震災で被災した原発の再稼働について地元自治体が同意したのは、初めてです。同原発では、原発自体の危険性とともに避難計画の実効性が大きな問題になっています。県民の不安は解消されておらず、周辺の自治体の中からも再稼働の中止を求める意見が出されています。これらの声に向き合わず、再稼働を推し進める菅義偉政権や知事の姿勢は重大です。

被災地の原発では初めて

 女川原発2号機は、大震災で大事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型原子炉(BWR)です。BWR再稼働への「地元同意」も今回が初めてで、東北電力は22年度以降の運転を目指すとしています。

 女川原発は、東日本大震災の震源に最も近い原発です。震災時は、想定を大きく超える揺れによって、1~3号機すべてが緊急停止しました。約13メートルの津波にも襲われ、2号機の原子炉建屋の地下は浸水しました。外部電源は5系統のうち4系統が失われるなど重大事故直前の状況になりました。

 今年2月、原子力規制委員会は、津波の想定を引き上げた高い防潮堤をつくる対策などを講じたとして、2号機を新規制基準に適合するとしました。しかし、東日本大震災で、タービンの損傷や原子炉建屋に多くのひび割れが発生したこともあり、建屋の強度など安全への疑念は消えません。

 新規制基準への「合格」は、重大事故の際の住民の安全を保証するものではありません。事故の進展によっては放射性物質を放出することもあるという基準だからです。宮城県沖で今後30年以内にマグニチュード7クラスの地震が起きる確率は90%程度という政府の地震調査研究推進本部の想定も深刻に受け止めるべきです。

 事故を想定して県や石巻市が策定した避難計画に対する住民の不安は解消されていません。女川原発があるのは、牡鹿(おしか)半島の付け根近くです。主要道路は海岸沿いに曲がりくねっているなど、多数の住民が迅速に避難するのは極めて困難視されています。昨年の台風19号では道路が冠水し、長時間通行できなくなって住民が孤立する事態も発生しました。

 同原発の半径30キロ圏内には約20万人が暮らしていますが、県の試算でも圏内の住民が一斉に避難した場合、石巻市の人の多くが避難の目的地に到着するには5日以上を要することが明らかになっています。住民の安全が守られない避難計画のまま、再稼働を推進することは、あまりに危険です。

福島事故を忘れたのか

 地元紙の世論調査では再稼働不支持が7割以上です。再稼働の是非を問う住民投票条例を求める署名には11万人以上がサインしました。9日に開かれた県内の市町村長会議では、30キロ圏内の自治体首長が、県民の声を踏まえた判断を求めました。この声を真剣に受け止めるべきです。

 ひとたび事故を起こせば、長期にわたり広範囲に甚大な被害をおよぼす原発の危険性は福島原発事故で明白です。事故に反省もなく安全と住民の懸念を置き去りにした原発再稼働の加速を狙う菅政権を許すわけにはいきません。





女川原発再稼働 不安が拭えぬ知事同意(2020年11月12日配信『北海道新聞』-「社説」)

 宮城県の村井嘉浩知事がきのう、東北電力女川原発2号機(女川町、石巻市)の再稼働を認める地元同意を表明した。

 知事の判断を受け2022年度以降に運転再開する見通しだ。地元同意は東日本大震災の被災原発では初めてで、東京電力福島第1と同じ沸騰水型でも全国初だ。

 福島事故から10年もたっていない。同じ被災地として地域住民が不安に思うのは無理もない。

 これまでに県議会は再稼働の住民投票条例案を否決し、重大事故時の広域避難計画にも疑問が出たが、県は解消しないままだ。

 性急な知事の判断は理解に苦しむ。県民と向き合おうとしない姿勢は地域に禍根を残すだろう。

 村井知事は地元2市町長との会談後、「原発には優れた電力の安定供給性があり、地域経済の発展にも寄与する」と述べた。

 女川2号機は震災時、原子炉建屋地下に浸水したほか、外部電源喪失の恐れもあった。国会の事故調査委員会は、事故を免れたのは「単なる幸運」としている。

 国内原発で最も高い29メートルの防潮堤や蓄電池整備などの安全対策を講じることで、原子力規制委員会は2月に審査合格を与えた。

 広域避難計画は福島事故を受け、対象を原発の半径30キロ圏に広げた。住民は7市町約20万人に及ぶ。計画では車で圏外に避難するが、周辺は山が迫るリアス海岸で道路は曲がりくねり、幅が狭い。

 計画通りでも移動に6時間ほどかかり渋滞も予想される。国は住民説明会で「訓練などを通じて実効性を高める」と述べるのみだ。

 計画への懸念は県議会で再稼働賛成派からも指摘された。30キロ圏内の町長からは「避難道路の整備など課題が山積している」との声が出る。これでは再稼働を検討する以前の問題だろう。

 東北地方は秋田県に国内有数の洋上風力が集積し多様な電源構成が進む。電力は不足していない。

 山形県の吉村美栄子知事は「隣県への影響に十分配慮してほしい」と注文を付けた。当然だ。

 地元同意の流れは、9月に女川町議会が容認したことで加速した。商工団体などが再稼働の陳情を提出したのがきっかけだ。地域経済はサンマ漁不振にあえぐ。

 後志管内神恵内村が高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査を受け入れた経緯と酷似する。

 新型コロナ禍で地域の疲弊は進む。そこにつけ入るかのような原子力行政の手法は許されない。



真っ白な花の願い(2020年11月12日配信『朝日新聞』-「卓上四季」)

 少女は願う。6歳で病死した姉にもう一度会いたい。妖精がくれた花の魔法は夢をかなえてくれた。「けど、あの頃には戻れない。だって私は中学生」。なのに姉は6歳のまま。「私が妹として、お姉ちゃんが姉として接することは、もうないのかもしれないなぁ」

▼石巻市の中学生佐藤珠莉(じゅり)さんの小説「真っ白な花のように」は東日本大震災で犠牲になった姉愛梨(あいり)さんへの思いをつづった。姉の年齢を追い越した珠莉さんの痛みが読者の心を強く揺さぶる

▼地域誌「石巻学」を発行する石巻プロジェクトが執筆を依頼。9月に出た「石巻学Vol5」(こぶし書房)に掲載された。最後の魔法を天国での姉の幸せのために使う少女は、珠莉さん自身の姿なのだろう

キャプチャ

▼珠莉さんは、震災の記憶を伝える地域の取り組みに参加。愛梨さんが亡くなった現場に咲いたフランス菊を株分けする活動を続ける。「命の犠牲の上に成り立つ教訓はあってはならない」という思いは人一倍強い

▼宮城県の村井嘉浩知事がきのう、東北電力女川原発2号機の再稼働に同意を表明した。2011年の震災で被災した原発では初めてだ。経済的理由から原発との共存の道を求める地元の事情がある一方で、周辺の自治体や住民の間には不安も根強い

▼「いつまでも、ずっと笑っていてね」。物語の中の姉は最後に少女にそう告げる。二度と奪われてはならない願いである。



女川再稼働に同意/事故の不安除く責務は残る(2020年11月12日配信『河北新報』-「社説」)

 東北電力女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に同意する考えを、村井嘉浩宮城県知事がきのう表明した。立地自治体の女川町、石巻市の首長との3者協議を行い、結論を出した。

 梶山弘志経済産業相に来週伝えるという。再稼働の前提となる「地元同意」手続きが終わることになる。

 東日本大震災で被災した原発の再稼働同意は初めてだ。女川2号機は過酷事故を起こした東京電力福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉で、この型でも国内初となる。

 河北新報社が3月に行った世論調査で「安全性に不安がある」として6割の県民が再稼働に反対している。他にも避難計画の実効性などに懸念の声が強い。課題が解消されないまま、同意に踏み切ったことは残念でならない。

 東北電は安全対策工事が終わる2022年度以降の再稼働を目指す。県にはそれまでに最低限、事故の際の避難道路整備のめどを付け、不安を取り除くことが求められる。

 村井知事は県議会が再稼働の賛成請願を採択したのを受け、県内全首長の意見を聴く市町村長会議を9日に開いた上で3者協議に臨んだ。

 地元同意の当事者について法的な規定はない。知事は県と立地2市町の3者で十分との考えだ。

 ただ前述の世論調査で、3者が適切とする回答は7.6%にすぎない。最も多かったのは「県と県内全ての自治体」で6割に上り、3者に原発から半径30キロ圏の緊急防護措置区域(UPZ)の5市町(登米市、東松島市、涌谷町、美里町、南三陸町)を加えた範囲としたのが3割だった。

 原発事故が起きれば被害は広範囲に及ぶ。風評被害や古里に住めなくなることさえあることは、福島第1原発事故で目の当たりにしている。

 立地自治体以外の住民が同意の権利を持ちたいと思うのは当然だ。特に事故の影響が大きいと予想される30キロ圏内の5市町には切実だろう。

 市町村長会議は住民の不安を代弁する機会だった。

 5市町の首長で再稼働反対を明言したのは1人だけ。会議で懸念を示す複数の声も出たが、知事と2市町長の判断に委ねることになった。

 無論、2市町への遠慮があっただろう。しかし、住民の負託を受けた首長のあるべき態度とは言えまい。

 日本原子力発電の東海第2原発(茨城県東海村)は立地する東海村に加え、水戸市など周辺5市からも実質的に了解が必要とする安全協定を締結した例がある。

 村井知事も「地元同意の範囲は国が決めるべきだ」と述べている。

 震災を教訓に避難計画策定を義務付ける範囲を立地自治体に加え、半径30キロ圏の自治体に広げたのは国自身である。整合性を取るためにも、国は地元同意の範囲を広げる法整備をするべきだ。



女川原発再稼働 避難はまた置き去りか(2020年11月12日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 宮城県の村井嘉浩知事が、東北電力女川原発2号機の再稼働に同意した。

 立地自治体の女川町と石巻市、県議会は既に容認している。東北電は、安全対策工事が完了する予定の2022年度以降に2号機の運転を再開できる。

 県は半径30キロ圏内の住民を対象に説明会を開き、県内全市町村の意見を聞く場を設けてきた。それでも、避難計画に強い不信感を抱いたままの住民は少なくない。

 東日本大震災では、2号機の原子炉建屋地下が浸水した。外部電源のうち1回線だけが機能し、炉心溶融を免れている。

 東北電は、想定する津波の高さを23・1メートルに引き上げ、高さ29メートルの防潮堤を築いている。地盤改良も施すなど安全対策費は3400億円に膨らんだ。電気料金として住民にはね返る。

 女川でも問題になったのが避難計画だ。経路に当たる国道は豪雨や高潮で通行不能になる例が多く大渋滞も懸念される。

 離島からの避難には海路や空路が含まれているが、広域災害時に人員や資材を確保できるのか。想定される避難先も被災した場合、収容先はどうなるのか…。実効性が疑われている。

 地元住民らは、立地自治体の同意の差し止めを求める仮処分を裁判所に申し立て、議会には再稼働反対の請願を提出。政府にも避難計画の再審査を求めてきた。

 村井知事は「再稼働ありきでなく、総合的に判断する」と強調していた。避難計画の不備から反対する声も上がっていたのに、最後は多数決のようにして同意したのでは、結論ありきと非難されても仕方あるまい。

 裁判所も「同意だけで直ちに再稼働する状況にない」と、肩透かしの決定を出している。

 これで十分という避難計画はないのかもしれない。横たわるのは日常の暮らしが根底から覆されかねない危険性を受け入れてまで、原発を維持しなければならないのか、との問いだ。

 東北電には地元出身の社員が多く、地域との共生を重視してきたと言われる。2号機が再稼働しても、原則40年の運転期限まで十数年しかない。この間に、安全で経済性の高い電源に切り替える構想を示してはどうか。

 年明けに女川で原子力総合防災訓練が行われる。明らかになる課題を公開し、懸念に応え得る対策を講じることは、東北電、国、立地自治体の最低限の責務だ。見切り発車は認められない。



女川原発再稼働「同意」 住民の不安を置き去りか(2020年11月12日配信『中国新聞』-「社説」)

 宮城県の村井嘉浩知事はきのう、東北電力の女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働に同意した。東日本大震災で被災した原発の再稼働への地元同意は初めて。過酷事故を起こした東京電力の福島第1原発と同じ沸騰水型軽水炉(BWR)としても初めてとなる。

 知事の判断を受けて、東北電力は2年後の再稼働に向けた準備を加速させることになる。

 国の基準はクリアしたものの、安全性や事故時の避難計画の実効性などへの懸念は根強い。住民の不安を置き去りにしたまま、再稼働へ突き進むことがあってはならない。

 原子力規制委員会による安全審査に合格したのは今年2月末。直後に梶山弘志経済産業相が県に地元同意を要請してから手続きが急ピッチで進んだ。

 女川町と石巻市の議会に続き、県議会が先月、早期の再稼働を容認する意思を表明した。9日には村井知事が県内全35市町村の首長から意見を聞く会も開いた。そしてきのう、女川町長、石巻市長と最終協議し、再稼働へゴーサインを出した。

 地元が同意に動くのは、地域経済と原発の結びつきが強く、立地自治体も原発マネーへの依存を断ち切れないからだろう。震災後の人口減少で地域経済が疲弊し、主要産業の漁業も衰退してきた厳しい現実がある。

 ただ形の上では手順を踏んでいるように見えるが、当初から「同意ありき」でゴールを目指していたのではないか。住民の懸念や不安を直視し、慎重に議論を尽くしたとは言い難い。

 9日の市町村長会議では、同意手続きを着々と進める村井知事を批判する首長もいた。中でも「事故が起きた時に計画通りに避難できるのか」という課題を懸念する声が相次いだ。

 国は30キロ圏内の自治体に対し、広域避難計画を策定するよう定めている。女川原発では、7町村の約20万人を避難させる計画を策定している。

 だが女川原発のある牡鹿半島は、道路網が脆弱(ぜいじゃく)で、避難車両が殺到すれば、渋滞で逃げ遅れる住民が出る恐れがある。津波などに襲われれば、海岸近くの道路が通行できなくなることも想定される。実効性ある避難計画がないまま、「再稼働ありき」で進んでは困る。

 安全性への不安も払拭(ふっしょく)できていない。

 震災では、福島第1原発と同じように、高さ13メートルの大津波に襲われた。海面から15メートルの高台にあったが、2号機の原子炉建屋に浸水があり、原子炉を冷却する設備の一部が使えなくなった。東北電力は「安全に停止できた」とするが、辛うじて事なきを得たにすぎなかった。

 東北電力は3400億円を投じ、耐震補強や防潮堤建設などの対策を講じ、原子力規制委の審査をクリアした。しかし安全が保障されたわけではない。

 女川原発の再稼働について、山形県の吉村美栄子知事は「再稼働は安全を第一に考え、隣接県への影響にも十分配慮してほしい」との意見書を村井宮城県知事に出した。

 東日本大震災から来年3月で10年となる。原発で過酷事故が起きれば、被害は立地県だけにとどまらず、広域かつ長期に及ぶことを学んだはずだ。コロナ禍の混乱の中で、急ぎ進めた「同意」に危うさを感じる。 




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