FC2ブログ

記事一覧

古代のハンコが教えている(2020年11月15日配信『日本経済新聞』-「春秋」)

 紀元前2300~前2000年ごろに最盛期を迎えたインダス文明の特徴は、ハンコをさかんに使ったことだ。一辺が2~5センチほどの正方形をした石に、いまだ解読されていないインダス文字や人物、動物を彫った印章が数多く出土している。交易活動の必需品だった。

▼相手に送り届ける商品は梱包した後に、ひもの結び目を粘土で覆って、その上に印章を押した。輸送途中で開封されなかったことを伝えるためで、品物が約束した通りのものであることの、いわば保証書だ。紅色の宝石を加工したネックレスなど特産の工芸品は、「封印」とともに、遠くメソポタミア地方まで輸出された。

▼押印が誰のものか、見分けやすくする仕掛けもあった。インダス文明の社会では角が神聖視され、角のある人物を刻んだ印章は持ち主が地位の高い者であることを示しているとされる。彫られた文字は、印章の所有者やその人が所属する集団を表すと考えられている。必要な情報が印に詰まり、取引を支えていたのだろう。

▼取引先との契約や金融機関の手続きなどの押印を廃止し、デジタル化で業務を効率化する動きが広がり始めている。分が悪いハンコだが、昔の印章には様々な工夫があった。今の企業も負けぬよう、情報の改ざん防止や本人確認を徹底してほしい。大切なのは、取引の信頼性をいかに高めるか。古代のハンコが教えている。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ