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“アイヌ展”に老若男女が殺到する深いワケ 東京・日本民藝館で80年ぶりの大規模展覧会(2020年11月15日配信『AERA.com』)

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1941年の「アイヌ工藝文化展」を一部再現。41年の展示品は戦災で焼失したため、展示されているのは他のものだ(撮影/写真部・掛祥葉子)© AERA dot. 提供 1941年の「アイヌ工藝文化展」を一部再現。41年の展示品は戦災で焼失したため、展示されているのは他のものだ(撮影/写真部・掛祥葉子)

 アイヌの工芸品を紹介する展覧会が世代や性別を超え多くの人を集める。漫画などの影響に加え、マイノリティーへの視線も変化している。AERA 2020年11月16日号に掲載された記事を紹介する。

*  *  *

 近年、アイヌ文化への注目が高まっている。連載が続くベストセラー漫画『ゴールデンカムイ』のヒットがあり、今年7月には北海道白老町に、アイヌ文化の復興・発展を目的とした「ウポポイ(民族共生象徴空間)」も開業した。

 そんな中、日本民藝館(東京都目黒区)で開催中の「アイヌの美しき手仕事」展(11月23日まで)が話題だ。

■老若男女が押し寄せる

「なぜアイヌにあんなにも美しく物を作る力があるのであろうか。今も本能がそこなわれずに、美を作り出す働きがあるのであろうか」

 日本民藝館の創始者でもある柳宗悦は、かつて『アイヌへの見方』でこのように書き、アイヌ民族の工芸と人々を讃えた。

 1941年、柳は同館で「アイヌ工藝文化展」を開催する。展示を担当したのは、柳を師と仰いだ染色家の芹沢ケイ(※ケイは金偏に圭)介。アイヌの造形を美術館で紹介する試みだった。

 以来、約80年ぶりに企画された大規模な展覧会なのだ。

 イラクサやオヒョウなどを材料にした自然布に、アイヌならではの文様が施された衣裳は、大胆なデザインと緻密な手仕事に圧倒される。大ぶりの首飾り(タマサイ)は祭礼用で、母から娘へと宝物として受け継がれたもの。様々な木工の生活用具は、造形的にも美しい。

「本展への関心の高さは予想以上でした。実は2013年にも、今回より小規模なアイヌの展覧会を開催したのですが、来館者の数、反応の多さがまったく違います」と、本展を担当した学芸員・古屋真弓さんは語る。

 これまで写真撮影は一切NGだったが、今回は撮影OKの場所を作ったので、SNSで広がったということもあるが、それにしても反響が大きい。

「一般的に、染織の企画は女性の来館者が多く、陶磁器は男性、海外をテーマにした展示は若い男性──と、傾向があるのですが、今回はまさに老若男女、いろいろな世代の方が来ています。リサーチとして、来館者へのインタビューをしていると、興味を持ったきっかけが多様であるのも特徴的です。デザインや文様、手仕事に関心があるという方など、いろいろな入り口があるのがアイヌ工芸の強みだと思います」(古屋さん)

 同時に、ここ数年の社会の変化が少数民族としてのアイヌへの関心につながっていることもありそうだ。自国主義が叫ばれる一方で、BLMやLGBTといった社会のマイノリティーへのまなざしが、着実に育っているのではないか。

「先住民族としてのアイヌの歴史をあまり知らない方々が、アイヌ工芸の美しさに感動したことで、民族としてのアイヌの歴史に関心を持つこともあるでしょう。自分の中に『アイヌ文化』という引き出しができることが大事ではないかと思います」(同)

■輝き生むアイヌの生活

 工業デザイナーでもある、同館の深澤直人館長は柳宗悦とアイヌについて、こう語る。

「柳は様々な手仕事の魅力に引き寄せられながら生き、それらを『民藝』と名付けました。多くの人が惹きつけられる魅力を持っている、アイヌの手仕事もその一つです。柳は民藝の普遍性、創造と共感に対して自信を持っていた。アイヌが生きた道があればこそ、その生活の中から生まれたものたちが今でも輝いて見える。生活に寄り添う道具とはそういうものだと思います」

(ライター・矢内裕子)

※AERA 2020年11月16日号




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