FC2ブログ

記事一覧

BPO「人権侵害なし」旧優生保護法扱った番組巡り(2020年11月16日配信『共同通信』)

 放送倫理・番組向上機構(BPO)の放送人権委員会は16日、札幌テレビ放送(STV)の旧優生保護法を扱った番組を巡り、記者から意思に反して救済法に基づく一時金を申請させられ報道されたと申し立てがあった事案で、「人権侵害の問題はなく、放送倫理上の問題も認められない」との見解を示した。

 審理対象は2019年4月26日放送の「どさんこワイド179」。申立書などによると、旧優生保護法に基づく不妊手術を強制されたとして札幌地裁に国家賠償請求訴訟を起こした札幌市の男性が、STV記者から一時金の申請書への記入を求められて撮影されるなどしたとして申し立てた。

 人権委は「本件放送が報じたのは、新たに成立した一時金支給法に基づいて申立人が申請したという合法的な行為の紹介であり、これによって社会的評価は低下しない」と名誉毀損(きそん)は成立しないと判断。「事実をゆがめたりありもしない事実を作出したりしたと評価すべき、行き過ぎた取材があったとまでは言えない」と放送倫理上の問題もなかったと結論付けた。



放送人権委員会 委員会決定2020年度 第75号

「一時金申請に関する取材・報道に対する申立て」に関する委員会決定
2020年11月16日 放送局:札幌テレビ放送

見解:問題なし

 札幌テレビは2019年4月26日の『どさんこワイド179』で、札幌市内に住む男性が「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」に基づき、一時金を申請する模様を伝えた。
 男性は札幌テレビの記者の働きかけで不本意ながら申請をし、これが報道されたことで名誉が毀損された等として、札幌テレビに謝罪と訂正を求めて申立書を提出した。
 札幌テレビは、申立人に申請を働きかけたことはなく、取材と報道は公正なものだと反論していた。
 委員会は、審理の結果、人権侵害の問題はなく、放送倫理上の問題もないと判断した。

【決定の概要】

 札幌テレビは、2019年4月26日(金)夕方のニュース『どさんこワイド179』において、「旧優生保護法に基づく優生手術等を受けた者に対する一時金の支給等に関する法律」(以下「一時金支給法」という)に基づく北海道初の一時金支給申請者として、申立人による申請の模様を伝えた(以下「本件放送」という)。
 申立人は、本件放送について、一時金申請を希望していなかった申立人に対し、札幌テレビのA記者が申請するよう働きかけた結果、不本意な申請をすることになり、これを広く報道されたことで名誉が毀損されたなどと人権侵害および放送倫理上の問題があったと主張して、本件申立てを行った。一方、札幌テレビは、信頼関係があったからこそ可能となった放送であり、取材と報道は公正なものと反論した。委員会は、審理のうえ、名誉毀損等の人権侵害はなく、放送倫理上の問題も認められないと判断した。
 申立人は、旧優生保護法に基づいてかつて強制不妊手術を受けた被害者として、国家賠償を求める旧優生保護法被害者訴訟を提起している原告の一人である。
 まず、名誉毀損について、一般視聴者の普通の注意と視聴の仕方を基準とすれば、本件放送が報じたのは、新たに成立した一時金支給法に基づいて申立人が申請したという合法的な行為の紹介であり、これによって申立人の社会的評価は低下しない。また、本件放送は、申立人の複雑な心境や悩みまで浮き彫りにし、国に対する批判的なナレーションもまじえるなど申立人のような被害者の立場に寄り添った視点で構成されたものであって、申立人が一時金支給法の内容について批判的見解を有していたことを知る視聴者の観点を前提として検討した場合であっても、やはり社会的評価を低下させるものではない。よって、本件放送による名誉毀損は成立しない。
 次に、放送倫理上の問題について検討した。仮に、報道機関として報道したいと考える内容にあわせるよう事実を歪めたり、本来であれば存在しなかった事実を作出したりすることがあれば、問題がある。本件に即せば、当初の取材意図に固執するあまり、申立人に自己の意思に反して一時金申請を行わせるようA記者が働きかけた事情がもしもあれば、正当な取材活動を逸脱したものとして放送倫理上問題が生じる。また、その際、国家賠償請求訴訟との関連で一時金申請に伴う利害得失について訴訟弁護団の助言を受ける機会を申立人から奪うような言動がA記者にあったとすれば、放送倫理上の問題にかかわるだろう。しかし、文書とヒアリングにおける双方の主張を踏まえると、申立人による一時金申請は、申請が時期的に可能になったことをA記者から伝えられたことを契機としているものの、A記者との電話の後に申立人自ら北海道庁に電話し担当者から一時金支給法と裁判は関係ないとの説明を受けたことを理由として、一時金申請をする意思を抱いたと考えられる。この間A記者が、申立人が弁護団に相談するのを妨げる言動なども認められない。電話翌日の同行取材が決まったのも申立人の方からA記者に電話をかけたことを契機としている。また、申立人は、本件放送によって報じられた一時金申請の後、同年5月に申請を一旦取り下げたものの、2020年2月には、弁護団の助けを借りて再び申請をしている。したがって、これらの事実経過に照らすならば、申立人の意思に反して一時金申請を行わせるようA記者が働きかけて翻意させたとか、訴訟弁護団から助言を受ける機会を奪ったとか、それ以外にも事実を歪めたりありもしない事実を作出したりしたと評価すべき行き過ぎた取材があったとまでは言えないと委員会は判断する。
 よって、放送倫理上の問題も認められない。



全文PDFは➡ここをクリック






スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ