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「レイプ神話」届かぬ被害者の声(2020年11月16日配信『全国新聞ネット』)

杉田水脈議員は逃げ切ったのか(上)

 自民党の杉田水脈衆院議員が性暴力被害に関して「女性はいくらでもうそをつけますから」と発言してから1カ月以上が過ぎた。杉田氏はブログで釈明した後、ほぼ沈黙を続け、自民党も口頭で杉田氏に注意しただけだ。謝罪や辞職を求める13万8千筆超の署名も受け取られることなく宙に浮いたまま。世間の関心は日本学術会議の任命拒否問題などに移り、杉田氏や自民党が「逃げ切った」かのようにも見える。

 だが、性暴力被害者や支援者らの怒りは収まっていない。「あの発言には、決してうやむやにしてはいけない問題が含まれている」からだ。

 一体、杉田氏の発言の何が問題だったのか。「レイプ神話」というキーワードから、改めて考えたい。(2回続き、共同通信=小田智博、三浦ともみ)

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自民党の杉田水脈衆院議員

 ▽WHOも警鐘

 まずは、発言の経緯をもう一度振り返ってみる。杉田氏は9月25日、自民党の会合で、政府担当者が性暴力被害者の相談事業を説明した際に「女性はいくらでもうそをつけますから」と述べた。性暴力の被害を受けたという女性の申告には虚偽が含まれているかのように受け取れる表現だった。

 性暴力被害者らの団体「Spring」代表理事の山本潤さんはこの発言が「レイプ神話」に当たると指摘する。

 レイプ神話とは、性暴力に関して世間的、一般的に常識だと思い込まれている内容だが、事実とは大きく異なっていることを指す。例えば次のような例だ。

 ・性暴力の加害者は、大半が顔見知りであるにもかかわらず、「被害者は見知らぬ者からレイプされる」と思われていること。

 ・どんな服装の人であっても被害者になり得るのに「肌を露出する格好をしているから被害に遭う」と思われていること。

 ・暴力や脅しがなくても恐怖で体がすくみ、抵抗できずにレイプされるケースが多いのに、「暴力も脅しもないから、レイプではなく合意があった」と決めつけられること。

 こうしたレイプ神話がはびこることで、「被害救済を困難にし、加害者を野放しにする。性暴力の対応で最も障壁になる」と世界保健機関(WHO)が警鐘を鳴らすなどしており、現在、世界的に問題視されている。

 ▽政治家として問題

 レイプ神話とは、簡単に言えば「間違った思い込み」だ。これが世間の常識と捉えられるようになると、被害者が勇気を出して訴えても、世間が思う常識とずれがあるために被害とすら認めてもらえない。逆に、被害者側に落ち度があったのではないかと、欠点をあげつらわれる。こうして二次的な被害(セカンドレイプ)に被害者が苦しめられる。

 結果として、責めを負わなければならない加害者は野放しにされ、反対に被害者は沈黙せざるをえず、性暴力の問題が潜在化していく。

 山本さんは、杉田氏の発言に抗議するために開かれた10月3日の東京都内のフラワーデモで、こう声を上げた。「被害を訴えると『そんな時間に歩いていたのが悪い』と責められ、相手が知人だと『合意があった』と言われる。被害者は、疑いのまなざしを向けられてきた」

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杉田水脈衆院議員の発言に抗議し、開かれた「フラワーデモ」=10月3日、東京都千代田区
 
 「性暴力禁止法をつくろうネットワーク」共同代表でカウンセラーの周藤由美子さんは、性暴力の被害を訴えても信じてもらえない多くの人々に出会ってきた。

 「性暴力の被害に遭っている瞬間は、恐怖でフリーズするなどしているため、抵抗することは本当に難しい。だからといって、被害の後に警察や周囲に訴えても、襲った相手が顔見知りの場合は『関係がこじれた腹いせなのでは』などと言われ、信用してもらえない」

 その結果、「被害届を受理してもらえなかったり、不起訴になったりして、『被害者』とすら認めてもらえない。心身がぼろぼろに傷つけられる。こうした性暴力の実態を知りもしないで、世間話レベルの認識で発言するのは、政治家として非常に問題」と杉田氏の不見識さを強く批判した。

 ▽180度転換

 ところで、杉田氏は発言後、すぐに謝罪したわけではない。

 共同通信などが発言を報じた翌日の9月26日、杉田氏は自身のブログにこう記した。

 「まず、報道にありましたような女性を蔑視する趣旨の発言(「女性はいくらでも嘘をつく」)はしていないということを強く申し上げておきたい」

 と発言自体を否定した。しかし、ことはそれでは済まなかった。批判の声が高まる一方となり、9月30日、自民党の下村博文政調会長が杉田氏を口頭で注意した。

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杉田水脈衆院議員と面会後、記者の取材に応じる自民党の下村政調会長=9月30日午後、東京・永田町の党本部

 その翌日、10月1日に更新したブログで、杉田氏は「改めて関係者から当時の私の発言を精査致しましたところ(中略)、ご指摘の発言があったことを確認しましたので、先のブログの記載を訂正します。事実と違っていたことをお詫びいたします」と記し、当初の記載内容から180度転換した。

 報道各社はこのブログの記述を受け、一斉に「杉田氏が謝罪した」と報じた。

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杉田水脈衆院議員のオフィシャルブログ

 ▽またボロが…?

 一方でフラワーデモの参加者らは、「謝罪になっていない」と強く抗議している。

 杉田氏の発言は、レイプ神話を助長する非常に危険な言葉だ。それにもかかわらず、ブログでは自身の発言の危険性についてきちんと向き合わず、ごまかしただけのように感じられたからだ。

 10月1日のブログの中で杉田氏は、自身の発言の問題点について「嘘をつくのは性別に限らないことなのに、ご指摘の発言で女性のみが嘘をつくかのような印象を与え」たことだと説明した。

 これは言い換えれば「男性だって嘘をつくのに、女性だけが嘘をつくような誤解を与えた」と釈明しているだけで、被害者が被害を訴えにくくさせるような発言だったという点について認識しているとは思えない。

 しかもこの釈明をしたのは自分のブログでだ。それまで何度も報道機関から説明を求められても、何も答えなかった。10月14日、所属する党山口県連の会合後、山口市で記者団に質問された際も「ブログに書いてある以上はコメントできない。こういう形での説明は党と相談し、指導をいただきながらやっている」と述べた。

 質問に答えたら、何かまたボロが出てしまうからだろうか。逃げ回って沈静化を図ろうとしているような印象を与える姿勢に終始した。(続く)




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