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(論)コロナと文化・芸術に関する論説(2020年11月18・1・2021年3月4日・4月8日・5月2日)

ウィズコロナ時代の文化(2021年4月8日配信『佐賀新聞』-「論説」)

混迷乗り切る指針に

 今回のコロナ禍は、私たちの社会に「文化は不要不急か」という根源的な問いを突きつけた。「第4波」が懸念され、いまだに外出を控える日々が続くが、1年余りの自粛生活を経た今、改めて冒頭の問いかけを考えてみたい。

 周囲を見渡してみると、そこここに新たな動きが芽吹いてきたのではないだろうか。

 3月末、佐賀県庁の県民ホールにコンサート用のグランドピアノがお目見えした。誰もが自由に触れて弾くことができるピアノで、プロジェクトは「ピアノの駅」と名付けられている。ピアノそのものを、人と人が交流する「駅」にしようという試みである。

 佐賀市の市村記念体育館に眠っていたピアノの有効活用で、オープニングでは佐賀市のピアニスト大坪健人さんが、ショパンやモーツァルトを軽やかに披露した。生の演奏に多くの人が足を止め、心から楽しんでいた。

 県芸術文化協会が募集した2020年度の「県文学賞」の作品集がまとまったが、ここでも今の時代性をうかがわせる作品が目立つ。

 「コロナ禍の最前線にて天使にも戦士にもなる白衣の背(そびら)」(筒井孝徳さん、一般の部短歌一席)は、医療従事者へ向けた信頼と感謝のまなざしだ。

 ジュニア(中学生)部門の随筆一席に選ばれた吉村円花さんの「価値ある当たり前」は、音楽部の演奏会が中止になったエピソード。「私にとっての日常である、学校生活が、休校によって壊れてしまった」と率直につづった。

 ジュニア(中学生)部門の小説一席を取った増田晴奈さんの「僕たちの音」は、中学3年生の合唱コンクールを舞台に、バイオリニストの「僕」と、ピアニストの「彼女」との物語。同じく二席の太田結菜さんの「君のいないユニゾン」も、ユーフォニウムのソロパートをめぐって練習に打ち込む青春小説だ。

 読み進めていくと、その根底には、何かを奪われる喪失感と、それを乗り越えようとするもがきがひそんでいると思えてくる。これらの作品は、今の時代だから生まれたとは言えないか。目の前の不安やストレスに、どうつきあっていくか。その一つの答えが「書く」という行為なのだろう。

 「書く」に対する「読む」行為もまた、重みを増したようだ。県立図書館を例にとると、来館者数は昨年4月から今年2月までで8割止まりと落ち込んだ。しかし、その半面、インターネットで公開しているデータベースのアクセスは跳ね上がった。歴史資料データベースは前年同期比120%、ウェブ版古文書入門が147%、自然デジタル大百科事典に至っては180%と一気に伸びている。

 「書くこと」「読むこと」を通じて私たちは、足元を見つめ直し、この苦境をいかに乗り越え、人生を豊かにしていくか、と考えを深めていく。文化は不要不急どころか、不透明な時代の指針になりうる。

 歴史をひもとけば、中世ヨーロッパではペストが猛威を振るった。この間、内面的な思索が深まった結果、人間性を解放し、個性を重視するルネサンス(文芸復興)へとつながったとも指摘されている。今を生きる私たちもまた、新たなルネサンスの前夜にいるのだと信じたい。





コロナ禍と文化芸術 豊かさ守る支援足りない(2021年3月4日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、文化芸術に携わる人々の困窮が長引いている。

 政府が最初のイベント自粛を要請してから1年が過ぎた。昨夏に公演や興行が徐々に再開され、客足が戻りかけてきたところに、2度目の緊急事態宣言が出された。

 施設の閉鎖や、公演や興行の中止までは求められていない。しかし、午後8時以降の不要不急の外出自粛が呼びかけられ、イベント開催も5000人以下かつ収容率50%以下に制限された。

 中止や延期に踏み切った団体も多い。実施の場合も、客席制限や夜公演の中止、開演時間の前倒しを余儀なくされ採算は取れない。

 ぴあ総研が昨秋発表した試算では、2020年のライブ・エンターテインメントの市場規模は、前年比8割減に縮小する見込みだ。

 公的支援は十分とはいえない。今年度の第3次補正予算でも250億円の公演支援などが計上された。だが、あくまでも公演や興行などを積極的に実施することが補助の前提になるとみられる。

 経費の立て替えが必要な仕組みとなれば、経済的に疲弊している団体は使えない。実態に即した支援になるよう検討してほしい。

 そもそも今、必要とされているのは苦境を支える給付型の支援ではないか。

 時短要請に応じた飲食店には協力金が支払われるが、「働きかけ」で自粛を強いられる文化芸術関係者には支払われないのも公平性を欠く。

 文化芸術関係者らで作る団体が先月、菅義偉首相や萩生田光一文部科学相らに質問状を出したが、文化庁からの回答は、不安や懸念に答えるようなものではなかった。文化芸術の危機に際し、政府がきちんとしたメッセージを出さないのは残念だ。


 人間の営みや、暮らしの豊かさに文化芸術は必要不可欠だ。コロナ禍で接する機会を失って初めて、かけがえのない価値に気づいた人も多いはずだ。ライブが困難な中、オンライン配信市場が急拡大しているのはその証しだ。

 文化芸術基本法は「心豊かな活力ある社会の形成にとって極めて重要」と掲げている。国は文化芸術を守る揺るぎない姿勢を見せてほしい。





コロナと文化芸術支援 もっと使いやすい制度に(2020年11月19日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大で打撃を受けた音楽や演劇、演芸といった文化芸術活動が再開している。しかし、それにかかわる個人や団体はなお厳しい状況にある。

 国は活動を継続するために総額約460億円の支援制度を設けたが、十分に行き届いていない。

 文化庁によると9月末までの3次にわたる募集で、申請は約5万4000件にとどまる。すべて採択されても推計で250億円前後と、予算の5割ほどでしかない。

 この制度は、個人や小規模団体を対象に活動経費を補助するものだ。取り組みや規模に応じて最大150万円が助成されるが、3分の1または4分の1の自己負担が求められる。

 申請件数が伸びない原因として指摘されるのが、制度の複雑さだ。申請内容の不備なども多く、採択まで時間がかかるケースがあるという。文化庁も個人に対する支援は初めての試みであり、審査する側の不慣れを認める。

 日本俳優連合のアンケートでは、6割以上が申請していない。自己負担金が用意できない、差し戻しが多くて困惑しているなどといった声が上がる。本当に困っているところに届いていない。

 先月半ばに演劇、ミニシアター、ライブハウスの3者が文化庁と財務省に、自己負担金のない定額補助にするなどの改善を求めた。

 文化庁は25日から新規募集を始める。共同申請がしやすくなるなど一定の改善がなされたことは評価できる。

 しかし、自己負担が必要であることは変わっていない。補助率の見直しや補助の上限額の引き上げなど、工夫する余地があるのではないか。

 文化芸術は「不要不急」と言われ、中止や延期を余儀なくされた。しかし、再開後の劇場や映画館は活気にあふれている。これは、生きるために文化芸術が欠かせないことの証左だろう。

 感染防止のため客席減や消毒、検温といった防疫対策がとられてはいるが、感染者が出れば公演中止や延期というリスクを常に抱えている。

 活動継続のためクラウドファンディングを実施している団体もあるが限界がある。公的支援が不可欠という認識を共有したい。





コロナ下の舞台 現場目線で支援を図れ(2020年11月18日配信『東京新聞』-「社説」)

 コロナ禍が音楽や演劇界を直撃している。文化庁も支援策を設けたが、業界のニーズと合わず、不人気だ。25日から追加の募集が始まるが、現場目線からの制度見直しが必要だ。

 アニメ映画「鬼滅の刃」の大ヒットこそあったものの、コロナ禍でエンターテインメント業界は死活にかかわる事態に陥っている。

 とりわけ、音楽や演劇などの舞台や独立系の映画館運営に携わる人々の苦悩は深い。ぴあ総研は先月下旬、今年のライブ・エンターテインメント市場規模を前年比8割減の1306億円と試算した。

 ライブハウス関係者からは「このままでは1年もたない業者が9割」という声も上がっている。

 こうした苦境を受け、文化庁は2020年度第2次補正予算で年間予算の半額に迫る509億円の「文化芸術活動の継続支援事業」を設けた。小規模団体やフリーランスの実演家などが対象で標準的なフリーランスの場合、上限20万円を援助するという内容だ。

 7月に募集を始め、当初は個人だけで10万人の応募を見込んだ。だが、9月末に締め切られた3次募集までの申請件数は約5万4000件で、全て採択されても総額で387億円分にすぎない。

 不人気の原因は事業の内容にある。公演団体などは休演への赤字補填(ほてん)や補償を求めているが、この支援策は新規事業への補助が基本で、一定の自己資金がないと申請できない。これは休業補償を渋る政府の姿勢を反映している。

 さらにプロが対象なので、事務局が認定した業界団体への所属や確定申告書などの提出が条件になっている。だが、低収入から確定申告していない人が少なくなく、音響や照明の技術者らの間では業界団体自体が知られていない。

 申請できる企画の対象期間も短い。今月25日から4次募集が始まるが、対象は来年2月末までの公演などだ。いずれの問題も、現場の実態や要望を十分に理解していないことから生じている。

 経済産業省にも類似の支援策があるが、新規事業が対象である点は変わらない。9月にイベント会場への入場制限が緩和されたが、新型コロナの再燃で業界の先行きには暗雲が漂っている。

 文化芸術活動を「不要不急」と切り捨てる意見もある。だが、熟練の技術や劇場経営は一度失われれば、取り戻すことは容易ではない。政府には現場のニーズに即した支援策の見直しを求めたい。



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