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(論)DVに関する論説(2020年11月20日・2021年4月2・7・9日)

コロナとDV対策(2021年4月9日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆抜本改正急ぎ被害者を守れ◆


 新型コロナウイルスの感染拡大と長期化によりドメスティックバイオレンス(DV)が深刻さを増す中、内閣府の専門調査会がDV防止法による通報や保護命令の対象を身体的暴力に限らず、精神的、性的暴力などにも拡大するべきだと法改正を求める報告書をまとめた。政府は今後、有識者検討会議を設置し、詳細な制度設計を進める。

 現在の防止法はDVを巡り▽発見者が、全国各地の配偶者暴力相談支援センターや警察に通報する努力義務▽被害者の申し立てにより加害者に、つきまといの禁止や住居からの退去を命じる裁判所の保護命令―を定めている。ただ、いずれも対象を殴る蹴るなどの身体的暴力に限定している。

 20年前の制定時、夫婦間の問題に公的機関が介入するのは極力避けるべきだとの考え方から、暴言を吐いたり無視したりする精神的暴力や、性行為や中絶を強要するといった性的暴力は対象外となった。しかしコロナ下で在宅時間が長くなり、状況は悪化の一途をたどる。各機関への相談は後を絶たない。

 加害者と一緒にいることが多くなったため被害者は誰かに相談するのも難しく、被害が見えにくくなった。政府は被害の実態を見て、生活費を渡さないような経済的暴力の扱いや保護命令違反の厳罰化も含め、制度の抜本的改正を急ぐ必要がある。

 精神的、性的暴力について専門調査会は先月下旬公表した報告書で「法益侵害の程度、被害者に与えるダメージは身体的暴力と変わらず、むしろ長期間にわたり持続することで回復をより困難にさせる」とし「身体的な暴力と同様に扱うべきだ」と結論付けている。

 警察庁によると、2020年に全国の警察に寄せられたDVの相談は8万2643件。前年より436件増え、01年の防止法施行以降で過去最多となった。本県での相談件数は781件。被害者の76・4%が女性だった。相談支援センターが対応した相談は19年度に11万9276件に上り、過去最多を更新した。

 そうした中、裁判所による保護命令は14年度の2528件をピークに減少傾向にあり、18年度は1700件にとどまった。

 被害者の申し立てに基づく保護命令は接近や電話の禁止、住居からの退去などがあり、違反に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるが、被害者を守る制度として十分機能していないと専門家はみる。

 19年の改正で発令の要件に「生命などに対する脅迫」が追加されたとはいえ、身体的暴力を基本とする点は変わらず利用しづらい。被害者の安全を守るために何ができるか、積極的な検討が求められる。





コロナとDV対策(2021年4月8日配信『茨城新聞』ー「論説」/7日配信『佐賀新聞』-「論説」)

制度の抜本改正を急げ

 新型コロナウイルスの感染拡大と長期化によりドメスティックバイオレンス(DV)が深刻さを増す中、内閣府の専門調査会がDV防止法による通報や保護命令の対象を身体的暴力に限らず、精神的、性的暴力などにも拡大するべきだと法改正を求める報告書をまとめた。政府は今後、有識者検討会議を設置し、詳細な制度設計を進める。

 現在の防止法はDVを巡り▽発見者が、全国各地の配偶者暴力相談支援センターや警察に通報する努力義務▽被害者の申し立てにより加害者に、つきまといの禁止や住居からの退去を命じる裁判所の保護命令―を定めている。ただ、いずれも対象を殴る蹴るなどの身体的暴力に限定している。

 20年前の制定時、夫婦間の問題に公的機関が介入するのは極力避けるべきだとの考え方から、暴言を吐いたり無視したりする精神的暴力や、性行為や中絶を強要するといった性的暴力は対象外となった。しかしコロナ下で在宅時間が長くなり、状況は悪化の一途をたどっている。支援センターや警察への相談は後を絶たず、「コロナうつ」という言葉も耳にする。

 加害者と一緒にいることが多くなったため、被害者は誰かに相談するのも難しく、被害が見えにくくなった。政府は被害の実態をしっかり見極め、生活費を渡さないような経済的暴力の扱いや保護命令違反の厳罰化なども含め、制度の抜本的改正を急ぐ必要がある。

 精神的、性的暴力について専門調査会は先月下旬公表した報告書で「法益侵害の程度、被害者に与えるダメージは身体的暴力と変わらず、むしろ長期間にわたり持続することで回復をより困難にさせる」とし「身体的な暴力と同様に扱うべきだ」と結論付けている。

 現行制度のままでは法律上、精神的暴力などを軽んじることになりかねない。影響は子どもにも及ぶ。千葉県野田市で2019年1月に起きた小4女児虐待死で市の検証報告書は精神的暴力について「母が子どもを守れなくなり、外から見えやすい身体的DVより、子どもにとって危険度は増大する」と指摘した。

 警察庁によると、20年に全国の警察に寄せられたDVの相談は8万2643件。前年より436件増え、01年の防止法施行以降で過去最多となった。被害者の76・4%が女性だった。一方、相談支援センターが対応した相談は19年度に11万9276件に上り、こちらも過去最多を更新した。

 そうした中、裁判所による保護命令は14年度の2528件をピークに減少傾向にあり、18年度は1700件にとどまった。被害者の申し立てに基づく保護命令は接近や電話の禁止、住居からの退去などがあり、違反に1年以下の懲役または100万円以下の罰金が科されるが、被害者を守る制度として十分機能していないと専門家はみる。

 19年の改正で発令の要件に「生命などに対する脅迫」が追加されたとはいえ、身体的暴力を基本とする点は変わらず、利用しづらい。接近禁止と退去の期間がそれぞれ6カ月、2カ月と短いのもネックになっている。

 またストーカー規制法の禁止命令違反は2年以下の懲役または200万円以下の罰金だが、それに比べ保護命令違反は軽いとの批判も根強い。被害者の安全を守るために何ができるか、積極的な検討が求められよう。

(共同通信・堤秀司)





[DV相談最多] 被害者救う対応 迅速に(2021年4月2日配信『南日本新聞』-「社説」)

 全国の警察に昨年寄せられた配偶者らからの暴力、ドメスティックバイオレンス(DV)の相談は8万2643件で、2001年のDV防止法施行以降、過去最多を更新した。

 相談件数は増加傾向が続き、被害者の多くは女性だ。警察庁は新型コロナウイルスの感染拡大で在宅時間が増え、さらに被害が潜在化、深刻化している可能性があるとみている。

 家庭での暴力は外から見えずエスカレートしやすい。関係機関は連携して迅速に対応し被害者を救わなければならない。併せて加害者の更生教育などDV根絶に向けた対策も急ぎたい。

 DVは身体に加える暴力のほか、相手の心を傷つける心ない言動なども含む。警察庁によると、相談を寄せた被害者の76.4%は女性だった。

 鹿児島県警は418件の相談を受け、自粛期間中の外出や給付金申請を巡るけんかなど新型コロナ関連も数件あった。以前からの継続分を含むと計7311件で、過去5年で倍増した。

 刑法や防止法などによる全国の摘発は計8778件(鹿児島県警49件)で高止まりしている。加害者への指導警告は相談の7割で実施し、5年間で1.5倍近くまで増えた。警察は被害者に防犯指導したり、防犯機器を貸し出したりしている。今後も被害者の安全を最優先に対応していくべきである。

 相談は都道府県の配偶者暴力相談支援センターなどでも受け付けており、被害者には一時保護や自立支援といったサポートがある。加害者を引き離す保護命令を裁判所から出すことも可能だ。こうした支援の周知にさらに努めたい。

 一方、加害者をなくす取り組みも重要になる。鹿児島市で加害者向けの教育プログラムを続ける団体によると、コミュニケーション法などの指導を重ねると加害者に変化が表れるという。ただ、対策は全国的に民間任せなのが実情だ。国や自治体は加害者対策にもっと力を入れてもらいたい。

 気掛かりなのは、DVがある家庭で児童虐待が同時に起きている例が少なくないとみられることだ。子どもの前での夫婦間の暴力(面前DV)も心理的虐待に当たる。

 子どもに暴力を振るう配偶者を恐れ、制止できなくなるケースもあるという。負の連鎖を生まないため、暴力の芽は早期に摘み取る必要がある。

 内閣府は24時間態勢で相談の電話やメールを受け付けている。昨年10月には、最寄りの相談支援センターにつながる全国共通短縮ダイヤル「♯8008」も始めた。一人で悩まず相談してほしい。

 防止法はDVの発見者に警察や相談支援センターに通報する努力義務を課す。人ごとと思わず、異変を感じたら迷わず通報したい。





189番(2020年11月20日配信『福島民友新聞』-「編集日記」)

 児童文学作家の村上いしこさんは子どもの頃、継母からの虐待に苦しんだ。村上さんが逃げ込んだ場所は図書館。「赤毛のアン」や「アルプスの少女ハイジ」など、早くに親と離れた子どもの話を読んでは自分を重ね、気持ちを保った

 ▼犯罪被害や交通事故に遭った時には110番、火事や急病の際は119番。困った人が助けを求める電話番号がいくつかある。5年前にできたのが189番だ。「いちはやく」と覚える。虐待に苦しむ子どもからの相談や、虐待が疑われるケースの情報提供を受け付ける

 ▼新しい番号が浸透してきたのだろうか。警察からの通報や189番の情報提供などにより、全国の児童相談所が昨年対応した虐待の件数が19万件を超えた

 ▼最も多いのは面前DV(ドメスティック・バイオレンス)と呼ばれるケースだ。親がもう一方の親に暴力をふるったり、暴言を浴びせたりするのを目撃する子どもが多いことに胸が痛む

 ▼自分で189番にダイヤルできればいいが、親のことで誰かに相談するというのは子どもにとって高いハードルだろう。異変にいちはやく気付き、子どもたちの心を包み込むクッションが必要だ。それができるのは周りにいる大人だけである。

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児童相談所虐待対応ダイヤル「189」のフロー [PDF形式:86KB]➡ここをクリック



住所の漏洩 DV被害者への意識が乏しい(2020年11月20日配信『読売新聞』-「社説」)

 家庭内暴力(DV)やストーカーの被害者が、加害者に住所を知られれば、命にかかわりかねない。自治体は漏洩ろうえい防止に万全を期すべきだ。

 総務省によると、市区町村のミスで、DV被害者らの住所を加害者に漏らした事例が、この10年間で63件あった。近年増えており、昨年度は18件に上っている。

 全国の市区町村は2004年以降、被害者から申請があれば、住民票や戸籍付票の閲覧・交付を、加害者には認めない措置をとっている。申請が認められた被害者は約13万8000人に上っており、10年前の約4倍に増えた。

 漏洩でDV加害者の元夫に住所を知られた女性は、本紙の取材に「いつ元夫が現れるかと、生きた心地がしなかった」と語っている。その恐怖はいかばかりか。

 12年には、神奈川県逗子市が、ストーカーの被害女性の住所を加害者側に漏らした翌日、女性が殺害される事件が起きた。

 住所の漏洩は、被害者の身の安全を脅かすこともある。加害者に住所を知られ、転居を余儀なくされた人もいる。市区町村は、被害者の個人情報を扱う重みを、改めて自覚してもらいたい。

 総務省は14年から6回にわたって、被害者の個人情報管理の徹底を求める通達を市区町村に出した。情報管理の責任者を置き、閲覧・交付の申請時に複数の目でチェックすることなどを指導してきたが、なお漏洩はやまない。

 申請者の本人確認を怠るなどの単純ミスが目立つという。危機意識が薄い自治体も多いのではないか。国や都道府県は、市区町村の取り組み状況を調査し、不備があれば、改善を指導してほしい。

 最近は、住民票や戸籍付票のほかに、課税に関する証明書や児童手当の書類から、住所が漏れる例が増えている。被害者の個人情報を扱う全ての部署が、漏洩防止に取り組まねばならない。

 市区町村の職員は、数年ごとに異動する。交代時には、十分な引き継ぎが不可欠だ。都道府県が、市区町村の担当者を集めて研修を行うことも有効だろう。

 多くの市区町村が、住民基本台帳システムの端末に、被害者であることが一目で分かる表示が出るようにしている。一方、被害者の個人情報を書類で管理している自治体もあるという。

 国は5年後をめどに、自治体の情報システムの見直しを進める方針だ。これを機に、人為ミスによる漏洩をできる限り排除できる仕組みを構築することが重要だ。




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