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(論)夫婦別姓に関する論説(2020年11月20・24・25・30・12月1・2・6・7・9・11・15・17・18・20・21・24・26・27・28・29・30・2021年1月12・25・2月27日・3月4・5・6・12・13・14・16日・4月2・3・7日)

男の弱まり(2021年4月7日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 奄美大島にすむ国の天然記念物アマミトゲネズミには、男性を決める遺伝子を持つY染色体がない。オスがいないかというと、いる。Yとは別の染色体の中に新たな性決定遺伝子を作り「進化」した

▼このことを発見した北大大学院理学研究院の黒岩麻里教授によると、ヒトの男性のY染色体も退化して遺伝子が減り続けており、やがて消えゆく運命にあるという。「男らしさ」を維持するには、アマミトゲネズミのような手段に頼るしかないそうだ

▼無論、何万年も先の話である。とはいえ、生物学の世界で男の弱まりが定説だとすれば、このところの男女のあり方をめぐる議論は滑稽に響く

▼「女性が多い会議は時間がかかる」とうそぶいた元首相が、こんどはベテラン女性秘書を「女性と言うには、あまりにもお年だ」と言い放った。生物学的には、ヒトは女性が原型で、男性は後から作り出された。女性からすれば「黙れ、新参者」と言いたくなろう

▼選択的夫婦別姓をめぐり自民党内には「家族の絆が壊れる」と慎重論が根強い。男らしさの衰退を、名字を利用して防ごうというのか。だが、Y染色体の退化は、いまのところ人の力で止められないらしい

▼日本社会の男女格差がなお大きいままだという世界経済フォーラムの報告もあった。是正を急がねばなるまい。ただ、縮小するY染色体と大きさを保つX染色体の「格差」も気になる





(選択的夫婦別姓2021年4月3日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 選択的夫婦別姓をめぐり自民党は2日、その在り方を検討する作業チーム初会合を開いた。党内は推進派と慎重派がせめぎ合っており、この日も賛否双方の意見が拮抗(きっこう)したという。諸政策を議論するのは大いに結構だが、優先して認識を共有すべき課題はほかにあるのではないか。

 ▼ただでさえコロナ禍で、日本社会は閉塞(へいそく)感に包まれている。国際情勢を見れば、中国の少数民族弾圧やミャンマーの国軍クーデターなど、民主主義が露骨な挑戦を受けている。衆院選を間近に控えたタイミングで、なぜ悠長に党が割れる議論を始めるのかも不可解である。

 ▼「多様性を包摂する社会にしたい」。推進派の岩屋毅元防衛相は語る。とはいえ実際はどうか。国会では、かつて夫婦別姓に反対する文書に署名したとして、丸川珠代五輪相が野党議員らにつるし上げをくらっている。異なる意見を認めないその光景は、多様性の尊重からはほど遠い。

 ▼「子供が18歳になったら“家族解散式”というのをやろう」。国会で執拗(しつよう)に丸川氏を追及した一人、社民党の福島瑞穂氏の著書にはこんな記述がある。「名実ともに個人単位で暮らしていきたい」ともあるが、この発想は男女平等と女性解放を名目に、家族制度廃止を試みたスターリン時代のソ連に通じる。

 ▼福島氏といえば、かねて「リベラル勢力結集」を訴えてきた。そして共産、社民、立憲民主各党など左派政党はみな夫婦別姓の推進派である。本来、リベラルは「自由・寛容なさま」を意味するが、彼らにそんな姿勢は見当たらない。

 ▼自民党は表面的な世論に動揺し、すぐにリベラルぶりたがる。だが、野党に歩調を合わせてどうするのか。政権与党には、現実の危機に真正面から向き合う責任がある。





もう先送りできない「選択的夫婦別姓」議論 政治部・柚木まり(2021年4月2日配信『東京新聞ー「視点」)

 日本では民法が夫婦同姓を定め、結婚する時、男性か女性のどちらかが姓を変える必要がある。96%の女性が男性の姓に変えているが、国際的に見ればいびつな制度で、国連女性差別撤廃委員会(CEDAW)は日本社会の根深いジェンダー格差を指摘する。世界で唯一の制度を改めてジェンダー平等を実現するため、希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓(別氏)制度」の議論はもう先送りできない。

 「時代にマッチした形で、世の中は変わっていくべきだという思いを主張したい」。選択的夫婦別姓制度の早期実現を目指す自民党の議員連盟が先月に発足し、会長の浜田靖一元防衛相が力を込めた。党内に反対、慎重派が少なくない中、若手を中心に賛同を呼び掛け、派閥を超え100人以上の議員が参加を表明した。

 一方で、夫婦別姓制度に反対し、旧姓使用の拡大を目指す有志議員も今月に入って議連を発足させた。賛否両論の新たな動きを受け、自民党は制度を議論するワーキングチームで約20年ぶりに本格的な議論を再開させる。安倍政権では、結婚後も社会的な通称として旧姓を使うよう促し、夫婦別姓制度の議論が進まなかったことを考えれば、ようやく一歩を踏み出した。

 だが、自民党内には「家族観を根底から覆す問題だ」という反対、慎重論が根強く、国際社会や国民の声との隔たりが大きい。ジェンダー平等を目指す政府の第5次男女共同参画基本計画の策定を巡る取材でも実感させられた。

 政府は昨年12月、夫婦同姓規定を「差別的だ」として法改正を求めるCEDAWの勧告や、世論調査で夫婦別姓の容認派が反対派を上回る現状を重視し、踏み込んだ内容を基本計画に盛り込むよう検討していた。自民党の反対派は「政府は導入ありきで意図的に作成している」と同意せず、基本計画からは96%の女性が改姓する現状説明も、「選択的夫婦別氏制度」の文言も消えた。

 夫婦別姓の導入を求める400件以上の意見が内閣府にパブリックコメントで寄せられていたにもかかわらずだ。政府の担当者は「自民党には高いハードルだった」と肩を落としたが、党内の水面下での議論で基本計画の内容が大きく後退したことに、納得のいく答えはなかった。

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長による女性蔑視発言は、国内外から強い批判を浴び、ジェンダー平等が進まない日本の現状を世界に発信することになった。世界経済フォーラム(WEF)が公表した2021年のジェンダーギャップ指数で、日本は156カ国中、120位にとどまり、男女平等実現への道のりは遠い。

 政府は「30年代には誰もが性別を意識することなく活躍できる社会」を目指す。まだ見ぬ世界を実現するには、少なくとも選択的夫婦別姓制度の導入は欠かせない。





女性の平均寿命は30歳、生涯に…(2021年3月25日配信『山陽新聞』-「滴一滴」)

 女性の平均寿命は30歳、生涯に産む子の数を示す合計特殊出生率は6・5に及んだ。今津勝紀・岡山大大学院教授(日本古代史)の著書「戸籍が語る古代の家族」は正倉院文書に残る8世紀の戸籍から家族のかたちを浮かび上がらせる

▼この本を巡って2月末、小さな異変が起きたという。刊行から2年近くを経て突然、オンライン書店のランキングが急上昇した。しかも意外な理由だった

▼「大原則からみてみよう…古代の夫婦は別姓であった」。この記述が会員制交流サイト(SNS)で、そんな時代があったのかと話題になっていた。理由は現代の選択的夫婦別姓制度。丸川珠代・男女共同参画担当相が反対文書に署名していたと関心が高まった時期だ

▼希望すれば結婚前の姓を名乗れる同制度の議論が続いている。世論調査では理解が広がり、倉敷や総社市など各地の地方議会で導入を求める意見書が可決される一方、岡山県議会は反対の立場を先日示した

▼「伝統的な家族観」といわれる夫婦同姓は、結婚で相手の家に入る家制度から生まれた。中世に始まり、社会全体で確立したのは明治期だと同書は記す。伝統は時代とともに移り変わってきたようだ

▼別姓だった古代社会でも人々は恋をし、子を産み育て、懸命に家族を守った。その絆もきっと強かっただろう。現代と同じように。





夫婦別姓の反対文書 地方の声、封殺は許せぬ(2021年3月16日配信『中国新聞』-「社説」)

 夫婦が同じ姓を名乗るか、結婚前の別々の姓にするかを法的に選べる「選択的夫婦別姓」の議論が進まない。

 制度導入にかたくなに反対する自民党の国会議員有志が、賛同する意見書を採択しないよう求める文書を道府県議会議長に送りつけていた。衆参計50人が連名で党所属の42人に送付したもので、家族単位の社会制度崩壊を招くなどの理由を挙げている。

 男女共同参画担当相の丸川珠代氏も名を連ねていた。ジェンダー平等の旗振り役である担当相まで加わって国会議員が地方議会に圧力をかけていたとは、いただけない。議長が「地方の意思決定を軽視している」と反発するのも当然だ。国会は地方の意見を尊重し、法改正を進めるのが本来の役目ではないか。

 丸川担当相は旧姓を通称として使用している。ところが、選択的夫婦別姓に個人的に反対していることを国会で渋々認めた。個人的に別姓に反対する一方で、自分は旧姓を通称使用するというのは矛盾している。

 別姓に前向きな発言をしている菅義偉首相にとってもその姿勢や任命責任が問われよう。

 昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画の策定過程でも、自民党の反対派議員は「選択的夫婦別姓」の文言を削除させている。要請文書もその延長線上の話だろう。しかし地方議員への「上から目線」は時代錯誤も甚だしい。

 1985年の男女雇用機会均等法成立などで女性の職場進出が進んでいる。明治期に始まった夫婦同姓では不利益を被る人が次第に増えてきた。民法は夫婦は夫、妻のどちらかの姓を名乗るよう規定するが、実際に姓を改めるのは96%が女性側だ。

 時代遅れの女性差別との批判が国内外でやまない理由にもなっている。法制審が選択的夫婦別姓を導入するよう答申してから既に25年もたつ。

 婚外子の相続差別や女性の再婚禁止期間は撤廃や短縮など改善された。選択的夫婦別姓だけが手付かずのままだ。昨年11月に男女共同参画会議が「踏み込んだ議論を期待する」と菅首相に要請したのもうなずける。

 地方議会ではこうした流れを受け、選択的夫婦別姓を求める声が強まっている。市民団体によると、全国178議会が別姓賛成の意見書を採択している。

 要請文書にこうした動きを封じる狙いがあるのは明らかだ。批判されても仕方あるまい。

 最高裁は2015年に夫婦同姓を合憲と判断した上で、制度改正に向けた議論も国会に求めた。ただ5人の判事は「違憲」として異論を唱えた。

 その最高裁が夫婦別姓を認めない家事審判を大法廷で審理することを決めた。改めて憲法判断を示すとみられる。にもかかわらず、宿題を出された国会は十分な議論を重ねていない。

 東京五輪組織委員会の森喜朗前会長の女性蔑視発言で、日本には厳しい批判が浴びせられたばかりだ。夫婦同姓を義務付けていることについて、国連女性差別撤廃委員会は、日本政府に再三是正を勧告している。

 そもそも夫婦同姓を法で縛っている国は日本だけだ。選択的夫婦別姓の導入をためらう理由はない。男女共同参画社会の実現へ向け、国会は今こそ本気で取り組まなくてはならない。



個人の自由を抑えてまで守りたいものとはいったい何だろうか(2021年3月16日配信『新聞』-「新生面」)

 森鴎外の『舞姫』は、自身のドイツ留学での体験を投影したとされる。青年がベルリンで美しくも貧しい踊り子と恋に落ち、一緒に暮らすが、結局は立身出世を選び、一人で日本に戻る

▼国際結婚が日本で正式に認められたのは、明治政府の太政官布告が出された1873年のきょう。『舞姫』発表の15年以上前だが、軍医だった鴎外に、その選択肢はない。母親に逆らい、家を裏切るようなことはできなかった(六草いちか『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』)

▼一時より減ったものの、年間2万件を超す国際結婚。日本人同士と違い、それぞれの姓が維持され、届け出れば、相手の姓に変えることもできる。日本人夫婦に関しては議論が進まない選択的夫婦別姓が、既に実現している

▼自民党は先日、検討チームを新設して、議論を始めると表明した。同党の国会議員有志が、制度導入に反対する文書を、熊本など42道府県議会議長に送っていたことに批判が集まり、慌てたのか。次期衆院選で争点化を避ける狙いとみられている

▼改姓には制裁措置としての歴史もある。奈良時代末期、天皇の怒りを買った和気清麻呂[わけのきよまろ]は別部穢麻呂[わけべのきたなまろ]に変えられた。相当な屈辱だっただろう。そこまでではないにせよ、改姓に抵抗を感じる人がいるのなら、尊重してもいいと思うのだが

▼多様性を認め合う社会へ風穴をあけることが、蟻[あり]の一穴に映るのだろうか。一つ許すとほかのものまで崩れてしまう、と。個人の自由を抑えてまで守りたいものとはいったい何だろうか。





個人の自由を抑えてまで守りたいものと(2021年3月14日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 森鴎外の『舞姫』は、自身のドイツ留学での体験を投影したとされる。青年がベルリンで美しくも貧しい踊り子と恋に落ち、一緒に暮らすが、結局は立身出世を選び、一人で日本に戻る

▼国際結婚が日本で正式に認められたのは、明治政府の太政官布告が出された1873年のきょう。『舞姫』発表の15年以上前だが、軍医だった鴎外に、その選択肢はない。母親に逆らい、家を裏切るようなことはできなかった(六草いちか『鴎外の恋 舞姫エリスの真実』)

▼一時より減ったものの、年間2万件を超す国際結婚。日本人同士と違い、それぞれの姓が維持され、届け出れば、相手の姓に変えることもできる。日本人夫婦に関しては議論が進まない選択的夫婦別姓が、既に実現している

▼自民党は先日、検討チームを新設して、議論を始めると表明した。同党の国会議員有志が、制度導入に反対する文書を、熊本など42道府県議会議長に送っていたことに批判が集まり、慌てたのか。次期衆院選で争点化を避ける狙いとみられている

▼改姓には制裁措置としての歴史もある。奈良時代末期、天皇の怒りを買った和気清麻呂[わけのきよまろ]は別部穢麻呂[わけべのきたなまろ]に変えられた。相当な屈辱だっただろう。そこまでではないにせよ、改姓に抵抗を感じる人がいるのなら、尊重してもいいと思うのだが

多様性を認め合う社会へ風穴をあけることが、蟻[あり]の一穴に映るのだろうか。一つ許すとほかのものまで崩れてしまう、と。個人の自由を抑えてまで守りたいものとはいったい何だろうか。





別姓反対文書(2021年3月13日配信『山陰中央新報』/『佐賀新聞』-「論説」)

国民に開かれた議論を

 選択的夫婦別姓制度を巡り、地方議会で導入を求める意見書が採択されないようにしてほしいとする文書が各地の議長に送られた。1月末のことだ。自民党の国会議員有志50人が名前を連ね、高市早苗前総務相はこのほど、東京都と大阪府、岩手、三重、沖縄の各県を除き、自民党籍を持つ42道府県の議長宛てに発送したと明らかにした。

 別姓制度について、文書は「家族単位の社会制度の崩壊を招く恐れがある」「子の氏の安定性が損なわれる可能性がある」などと訴える。これに埼玉県議会議長は「地方議会の意思決定を軽んじている」と反発。三重県議会議長も「われわれはわれわれの判断をさせてもらう。強制されることではない」と語った。

 さらに有志に加わった丸川珠代男女共同参画担当相が「担当相として不適格」と批判の的になるなど、波紋が広がっている。高市氏らは、あくまでも要望で、圧力ではないと強調する。しかし50人もの国会議員の連名で別姓導入を求める意見書採択に待ったをかけようとするのは圧力ととられても仕方ないだろう。

 家族の形が多様化し、保守派が重んじる「伝統的な家族観」は色あせようとしている。そうした中、社会進出と活躍を目指す多くの女性の足かせをいかに解くかが問われており、時代の変化をしっかりと踏まえ、国民に開かれた議論を重ねていくことが求められる。

 もともと希望すれば結婚後も別々の姓を名乗れる選択的夫婦別姓制度の導入は、法相の諮問機関である法制審議会が1996年2月、婚外子の相続差別撤廃や女性の再婚禁止期間の短縮などともに民法改正要綱案に盛り込み、答申した。いずれも明治時代に定められた制度で時代の流れにそぐわなくなり、政府は直ちに改正案をまとめた。

 自民保守派の反発で国会提出には至らなかったが、最高裁が結婚していない男女間の子の遺産相続分を法律上の夫婦の子の半分とする婚外子差別について2013年9月、6カ月間だった再婚禁止期間についても15年12月、違憲とする判決を出したのを受け、ともに法改正が実現。これで100日間に短縮された再婚禁止期間を巡り今年2月には、法制審部会が撤廃する試案を公表した。

 しかし別姓を認めない制度は15年最高裁判決で合憲と判断され、積み残しになっている。昨年12月に、導入を積極的に後押しする文言を政府の男女共同参画基本計画に盛り込もうという動きもあったが、自民保守派の反対で大幅に後退した。

 保守派は別姓を導入すれば家族の絆が損なわれ、子どもに悪影響が及ぶと主張する。だが事実婚で別々の姓を名乗り、良好な家庭を築いている例はいくらでもある。そして何より、結婚後の改姓がキャリアの断絶や自己喪失感につながり、仕事や暮らしに支障が出ている人が現に多数いる。世論も別姓導入を支持している。近年、多くの企業や官庁で旧姓を使い働けるようになってはいるが、勤め先や契約相手の事情に左右され、効用の限界が指摘されている。

 最高裁は昨年12月、夫婦別姓を認めない民法規定は違憲と事実婚の3組が起こした家事審判の特別抗告を大法廷に回付した。改めて憲法判断を示す可能性がある。ただ、それを待たず、社会の要請に耳を澄まして動くのが政治の役割だろう。(共同通信・堤秀司)





別姓反対文書 国民に開かれた議論を(2021年3月12日配信『東奥日報』-「時論」/『茨城新聞』-「論説」)

 選択的夫婦別姓制度を巡り、地方議会で導入を求める意見書が採択されないようにしてほしいとする文書が各地の議長に送られた。1月末のことだ。自民党の国会議員有志50人が名前を連ね、高市早苗前総務相は、東京都と大阪府、岩手、三重、沖縄の各県を除き、自民党籍を持つ42道府県の議長宛てに発送したと明らかにした。

 別姓制度について、文書は「家族単位の社会制度の崩壊を招く恐れがある」「子の氏の安定性が損なわれる可能性がある」などと訴える。これに埼玉県議会議長は「地方議会の意思決定を軽んじている」と反発。三重県議会議長も「われわれはわれわれの判断をさせてもらう。強制されることではない」と語った。

 さらに有志に加わった丸川珠代男女共同参画担当相が「担当相として不適格」と批判の的になるなど、波紋が広がっている。高市氏らは、あくまでも要望で、圧力ではないと強調する。しかし50人もの国会議員の連名で別姓導入を求める意見書採択に待ったをかけようとするのは圧力ととられても仕方ないだろう。

 家族の形が多様化し、保守派が重んじる「伝統的な家族観」は色あせようとしている。そうした中、社会進出と活躍を目指す多くの女性の足かせをいかに解くかが問われており、時代の変化をしっかりと踏まえ、国民に開かれた議論を重ねていくことが求められる。

 もともと希望すれば結婚後も別々の姓を名乗れる選択的夫婦別姓制度の導入は、法相の諮問機関である法制審議会が1996年2月、婚外子の相続差別撤廃や女性の再婚禁止期間の短縮などともに民法改正要綱案に盛り込み、答申した。いずれも明治時代に定められた制度で時代にそぐわなくなり、政府は直ちに改正案をまとめた。

 自民保守派の反発で国会提出には至らなかったが、最高裁が結婚していない男女間の子の遺産相続分を法律上の夫婦の子の半分とする婚外子差別について2013年9月、6カ月間だった再婚禁止期間についても15年12月、違憲とする判決を出したのを受け、ともに法改正が実現。これで100日間に短縮された再婚禁止期間を巡り今年2月には、法制審部会が撤廃する試案を公表した。

 しかし別姓を認めない制度は15年最高裁判決で合憲と判断され、積み残しになっている。昨年12月に、導入を積極的に後押しする文言を政府の男女共同参画基本計画に盛り込む動きもあったが、自民保守派の反対で大幅に後退した。

 保守派は別姓を導入すれば家族の絆が損なわれ、子どもに悪影響が及ぶと主張する。だが事実婚で別々の姓を名乗り、良好な家庭を築いている例はいくらでもある。そして何より、結婚後の改姓がキャリアの断絶や自己喪失感につながり、仕事や暮らしに支障が出ている人が現に多数いる。世論も別姓導入を支持している。近年、多くの企業や官庁で旧姓を使い働けるようになってはいるが、勤め先や契約相手の事情に左右され、効用の限界が指摘されている。

 最高裁は昨年12月、夫婦別姓を認めない民法規定は違憲と事実婚の3組が起こした家事審判の特別抗告を大法廷に回付した。改めて憲法判断を示す可能性がある。ただ、それを待たず、社会の要請に耳を澄まして動くのが政治の役割だろう。





[夫婦別姓への圧力]社会の声押しつぶすな(2021年3月6日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 夫婦が希望すればそれぞれ結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」の議論が後退しないか気掛かりだ。

 自民党の国会議員有志50人が、制度への反対を呼び掛ける文書を地方議員に送っていたことが分かった。

 文書は1月30日付。驚いたことに男女共同参画担当相就任前ではあるものの丸川珠代氏も名を連ねていた。

 丸川氏は3日の参院予算委員会で、個人として反対意見を持っていることを認めた。「家族の根幹に関わると思った」と理由を説明した。一方で「大臣として反対したことはない」とも述べた。

 男女共同参画担当相は、政府におけるジェンダー平等の旗振り役である。男女格差の解消に向け、担当相の役割は重要性を増している。

 結婚後も働き続ける女性が増え、選択的夫婦別姓制度を求める声は高まっている。その中で、なぜ反対の意見を持つ丸川氏が担当相に就いたのか、ジェンダー平等に矛盾してはいないか、制度を議論する環境を整備できるのか、など疑問の声は当然だ。

 丸川氏は自身の考えを丁寧に説明する必要がある。にもかかわらず予算委では反対の理由を繰り返し問われても「大臣として答弁に立っており、個人の意見を申し述べる場ではない」と当初は回答を拒否した。政治家としての説明責任から逃げているように映る。

 菅義偉首相は、文書への参加は閣僚としての任命に影響しないと明言した。担当相の役割を軽んじてはいないか。

■    ■

 丸川氏らが名を連ねた文書は、選択的夫婦別姓制度に賛同する意見書を採択しないよう訴える内容だ。47都道府県議会議長のうち自民党所属の約40人に送られた。

 意見書を採択するかどうかは、それぞれの議会が議論して決めるものだ。50人の国会議員が連名の文書で一方的に不採択を求めるのは圧力に等しく、地方議会の独立性を脅かしかねない。

 文書は、夫婦別姓制度を「家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある」などとしている。

 昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画を巡る議論でも、伝統的な家族観を重んじる自民党の反対派から同様の意見が出た。そのため「夫婦別氏(姓)」の文言自体が削られた経緯がある。

 一方で政府が行ったパブリックコメント(意見公募)には、導入を求める意見が約400件寄せられた。この声こそ真(しん)摯(し)に受け止めるべきだ。

■    ■

 選択的夫婦別姓は県議会の2月定例会一般質問でも取り上げられた。

 答弁した名渡山晶子子ども生活福祉部長は「全国的な調査や司法の判断なども踏まえ、国民的議論がなされていくものと考えている」と述べるにとどまった。県としての姿勢を示さなかったのは残念だ。

 玉城デニー知事は、ジェンダー平等の実現に賛同し「Woman(うーまん)ちゅ応援宣言」を発表した。選択的夫婦別姓は社会の要請である。その声に耳を傾けて地方から実現を後押ししてほしい。





[別姓反対文書] 地方へ圧力 容認できぬ(2021年3月5日配信『南日本新聞』-「社説」)

 自民党の国会議員有志が、47都道府県議会議長のうち鹿児島県を含む党所属の約40人に対し、選択的夫婦別姓制度導入に賛同する意見書を議会で採択しないよう求める文書を送っていた。

 地方議会は住民の代表機関で、独立した存在である。今回の行為は、国会議員として地方自治の在り方を何ら考慮していないと言わざるを得ない。有志議員側は圧力を否定しているとはいえ、容認できない。

 文書は1月30日付で、閣僚就任前の丸川珠代男女共同参画担当相ら自民党の保守系50人の連名である。高市早苗前総務相、衛藤晟一前少子化対策担当相、山谷えり子元拉致問題担当相といった閣僚経験者も含まれる。

 議長の1人に届いた文書では、一部議会で選択的夫婦別姓の実現を求める意見書採択が検討されていると指摘。(1)家族単位の社会制度崩壊を招く(2)民法が守ってきた「子の氏の安定性」が損なわれる可能性がある-などとして「制度創設に反対している」と明記している。

 受け取った県議会議長の1人は「国会議員が連名で文書を出せば地方議会へのプレッシャーになると思ったのかもしれない。あり得ない話だ」と批判している。大方がそう解釈したとみていいだろう。

 ジェンダー平等の旗振り役の立場となった丸川氏が名を連ねているのも理解に苦しむ。参院予算委員会でただされた丸川氏は「大臣として反対したことはない」と述べた。しかし、自身の思想に近い意見を優先し、議論が止まってしまうのではないかとの懸念は拭えない。

 選択的夫婦別姓を巡っては、結婚後も働き続ける女性が増えている中、職場で旧姓使用が認められない事例や、事実婚では子どもを持ちづらいといった声が出ている。夫婦が同じ姓であることを義務づけている国は日本以外に見当たらない。

 政府は昨夏、今後5年間の女性政策の指針となる第5次男女共同参画基本計画の策定に当たり、意見を公募した。制度導入を求めるものが約400件寄せられ、反対意見はなかった。

 このため計画には積極的な記述を入れることを検討していた。菅義偉首相が導入に前向きな発言をし、議論が前に進むことが期待された。

 ところが、自民の反対派が猛反発する。計画の文面の削除や修正を何度も要求し、計画から「選択的夫婦別姓」の文言自体が削除された。

 結局、政府は12月、大幅に後退した内容の計画を閣議決定した。今回の文書送付はこの流れに沿うものだろう。

 しかし、反対する国会議員は導入を求めている国民の声に誠実に耳を傾けた上で、主張を戦わせるべきである。これ以上議論を萎縮させてはならない。



[夫婦別姓への圧力]社会の声押しつぶすな(2021年3月5日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 夫婦が希望すればそれぞれ結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」の議論が後退しないか気掛かりだ。

 自民党の国会議員有志50人が、制度への反対を呼び掛ける文書を地方議員に送っていたことが分かった。

 文書は1月30日付。驚いたことに男女共同参画担当相就任前ではあるものの丸川珠代氏も名を連ねていた。

 丸川氏は3日の参院予算委員会で、個人として反対意見を持っていることを認めた。「家族の根幹に関わると思った」と理由を説明した。一方で「大臣として反対したことはない」とも述べた。

 男女共同参画担当相は、政府におけるジェンダー平等の旗振り役である。男女格差の解消に向け、担当相の役割は重要性を増している。

 結婚後も働き続ける女性が増え、選択的夫婦別姓制度を求める声は高まっている。その中で、なぜ反対の意見を持つ丸川氏が担当相に就いたのか、ジェンダー平等に矛盾してはいないか、制度を議論する環境を整備できるのか、など疑問の声は当然だ。

 丸川氏は自身の考えを丁寧に説明する必要がある。にもかかわらず予算委では反対の理由を繰り返し問われても「大臣として答弁に立っており、個人の意見を申し述べる場ではない」と当初は回答を拒否した。政治家としての説明責任から逃げているように映る。

 菅義偉首相は、文書への参加は閣僚としての任命に影響しないと明言した。担当相の役割を軽んじてはいないか。

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 丸川氏らが名を連ねた文書は、選択的夫婦別姓制度に賛同する意見書を採択しないよう訴える内容だ。47都道府県議会議長のうち自民党所属の約40人に送られた。

 意見書を採択するかどうかは、それぞれの議会が議論して決めるものだ。50人の国会議員が連名の文書で一方的に不採択を求めるのは圧力に等しく、地方議会の独立性を脅かしかねない。

 文書は、夫婦別姓制度を「家族単位の社会制度の崩壊を招く可能性がある」などとしている。

 昨年末に閣議決定された第5次男女共同参画基本計画を巡る議論でも、伝統的な家族観を重んじる自民党の反対派から同様の意見が出た。そのため「夫婦別氏(姓)」の文言自体が削られた経緯がある。

 一方で政府が行ったパブリックコメント(意見公募)には、導入を求める意見が約400件寄せられた。この声こそ真(しん)摯(し)に受け止めるべきだ。

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 選択的夫婦別姓は県議会の2月定例会一般質問でも取り上げられた。

 答弁した名渡山晶子子ども生活福祉部長は「全国的な調査や司法の判断なども踏まえ、国民的議論がなされていくものと考えている」と述べるにとどまった。県としての姿勢を示さなかったのは残念だ。

 玉城デニー知事は、ジェンダー平等の実現に賛同し「Woman(うーまん)ちゅ応援宣言」を発表した。選択的夫婦別姓は社会の要請である。その声に耳を傾けて地方から実現を後押ししてほしい。





夫婦別姓への圧力/家族観の押しつけやめよ(2021年3月4日配信『神戸新聞』-「社説」)

 「あるべき家族像」を他者に押しつけ、異なる意見に耳を貸そうとしない。強権的ともいえる自民党国会議員らの行動が明らかになった。

 保守派を自任する衆参50人の議員有志が、選択的夫婦別姓への反対を呼びかける文書を地方議会に送っていたのである。送付先は47都道府県議会議長のうち約40人に上る。

 ここ数年、政府に対して夫婦別姓の実現を求める意見書を採択する地方議会が増えている。価値観が多様化し、夫婦同姓の強制をやめてほしいとの声が広がっているためだ。現状を不当とする訴訟も相次ぎ、最高裁は国会での議論を促してきた。

 「伝統的な家族観」を重んじる議員らは、国民意識の変化を受け入れたくないのだろう。文書送付は与党の国会議員による地方議会への圧力にほかならず、容認できない。

 50人連名の文書は、夫婦別姓は家族単位の社会制度の崩壊を招く、子どもの氏(うじ)の安定性が損なわれかねない-などと訴える。驚くことに、ジェンダー平等の旗振り役である男女共同参画担当相の丸川珠代氏が大臣就任前とはいえ名を連ねていた。

 衆院内閣委員会で認識を問われた丸川氏は「個人としての思いは脇に置き、国際社会にどう受け止められるかに力を尽くしたい」と述べた。個人的に夫婦別姓には反対だが、五輪相を兼務する立場から、男女共同参画に取り組む姿勢は見せるという趣旨だろう。

 あきれるほかない。菅義偉内閣が性別による不平等の問題を軽んじているとみられても仕方がない。失望し、憤る女性は多いはずだ。

 国の調査でも夫婦別姓への賛成は反対を上回る。若い世代ほど容認派が多い。「国際社会の視線」が気になるのなら、変化を求める国内の意見に向き合うのが先ではないか。

 夫婦別姓を巡る民法改正の議論は、自民党の一部の強硬な反対で前に進まない。それどころか、昨年末に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画から夫婦別姓の文言そのものが削られ、大きく後退した。

 兵庫県議会では昨年3月、夫婦別姓導入への法改正を求める請願が不採択とされた。委員会で可決されたが、本会議で最大会派の自民党が反対し一転、不採択となる展開となった。そのため今回、文書は送付されていないが、県議会の姿勢には多くの県民が首をかしげるだろう。

 結婚前の名字を引き続き使えないことで仕事に支障が出たり、実家の姓が絶えるため結婚に踏み切れなかったりする例が報告されている。少子化の一因との指摘すらある。

 切実な声に背を向け続けてはならない。「押しつけ」をやめ、冷静で丁寧な議論を始めるときだ。





別姓反対文書 地方議会を軽んじている(2021年2月27日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 何に依拠して政治を進めようというのか。

 選択的夫婦別姓を巡り、自民党の衆参議員50人が、制度に賛同する意見書を採択しないよう求める文書を、党所属の都道府県議会議長に送っていたことが分かった。

 地方議会の意思決定の過程をねじ曲げ、政治家個々で異なる思想信条を統制しかねない。自民党は厳正に対処すべきだ。

 菅義偉政権は当初、別姓制度の導入に前向きだった。が、党内の保守系議員が反対し、閣議決定した第5次男女共同参画基本計画から「選択的夫婦別姓」の文言が削られた経緯がある。

 通称で旧姓を使う女性は多いものの、生活や仕事でさまざまな支障が生じる。改姓は女性差別との批判も強く、別姓の法制化を求める世論は高まっている。

 自民の50人は文書で「先生(議長)におかれましては」と慇懃(いんぎん)な言葉を用いつつ、意見書を採択しないよう求めている。家族単位の社会制度の崩壊を招き、「子の氏(姓)の安定性」が損なわれる―などを理由に挙げた。

 50人全員の名前も記した。橋本聖子氏に代わって男女共同参画担当相に就いた丸川珠代氏、閣僚経験者が含まれる。

 意見書の発案権は地方議会にある。通常、住民が「○○の意見書提出を求める」請願書や陳情書を出す。採択されると、紹介議員が意見書を発議し、可決後に衆参両院や省庁、首相に送る。

 地方議会は国会の下部機関ではない。別姓反対を主張したいなら居住地の議会に請願や陳情を提出すればいい。世論の陰に隠れるようにして圧力をかけ、地方を誘導するのは許されない。

 地方議員からは、国と地方を主従関係に置くような手法はおかしい、地方議員が主体的に判断する問題、あり得ない話、といった冷静な声が聞かれる。心強い。

 自らの選挙区を軸に、住民がどんな政策を望んでいるのか。審議に欠かせない資料であるのに、国会議員は地方議会の意見書にほとんど目を通していない。どう扱い、どんな結果になったのかを地方に報告する規定もない。

 請願は、憲法に規定された民主政治を支える大切な仕組みの一つだ。地方議会を軽んじるような現状こそ、自民党は与党として早急に改めるべきだろう。

 政治は国民一人一人の日常生活に基づく。現場の声を聴き、政策に反映させる意思を持ち得ないなら、汚職と疑惑が相次ぐ政権の不信は拭えるはずもない。



主従関係?(2021年2月27日配信『高知新聞』-「小社会」)

 明治初年に各地で相次いだ不平士族の反乱。彼らの「不平」のもとは何だったのだろう。むろん薩摩、長州両藩の出身者が天皇を頂き、国政を勝手に処理していることへの不満は大きかった。

 明治政府の立役者といっても、しょせんは旧幕府時代に日の目を見ることのできなかった最下級の武士たちではないか…。作家の伊藤整は旧上級武士のそんな「侮蔑心」も理由の一つに挙げている(「日本文壇史」)。

 彼らは明治維新で家禄(かろく)を没収され、下手な商売に手を出して金を失い、生活不安に陥った。広大な邸宅に住み、馬車に乗り、日夜遊び暮らしているかつての「軽輩」たちへの嫉妬もあったろう。四民平等の世とはいえ、長い封建制で培われた差別意識は残っていた。

 現代の国会議員にそんな優越意識があるとは思わない。が、異様な振る舞いは目に余る。自民党の国会議員有志が都道府県議会議長約40人に、選択的夫婦別姓導入に賛同する意見書を採択しないよう求める文書を送っていた。

 国会での夫婦別姓論議は停滞している。それを活性化させるのが議員の役目のはずなのに怠ってきた。そればかりか地方議会にまで口を出し、独立性を脅かそうとするのにあきれる。

 五輪の聖火リレー中止に言及した知事に、地元選出の自民党重鎮が「注意する」と述べる一幕もあった。国と地方は主従関係にない。地方分権についてもっとわきまえていただきたい。



 結婚にともなって夫の姓にするか、妻の姓にするか。「じゃんけんで決めた。勝ちたいと気合を入れた」という知人がいました

▼夫婦同姓が法律で定められているのは、世界の中でも日本だけ。夫の姓にしたカップルが96%にも上ります。日本がジェンダーギャップ指数121位という現実がここに示されています

▼NHKの「ETV特集」がこの問題に切り込みました。「結婚したら当然、自分の姓に」と思っていた男性。相手の女性が「あなたの名字になりたくない」と言い出し、女性の姓にしようと決断しますが、自身の両親が猛反対。事実婚に踏み切った二人は、夫婦別姓について学んでいきます

▼夫婦同姓の始まりは明治時代の「家」制度。国家のもとでは天皇が父で、皇后が母、国民は天皇の子と見なされたのです。戦後、「家」制度は廃止されましたが、夫婦が同じ「氏」を名乗ることは残りました。番組の取材に応えて、共産党の志位委員長が「強制的夫婦同姓制度」とコメントしています

▼夫と妻が同姓であろうと、それぞれの姓を名乗る別姓であろうと、二人が選択すること。自由に姓が選べないのは、平等や個人の尊厳を掲げた憲法に反すると、裁判に訴えるカップルも少なくありません

▼選択的夫婦別姓を求める声は年々高まり、いまや50代以下では8割以上との世論調査も。菅首相は昨年の国会で、過去に自身が選択制を提唱してきたことに「責任がある」と認めています。選択的夫婦別姓の実現にもはや壁はないはずですが。





選択的夫婦別姓 多様な「家族」尊重したい(2021年1月25日配信『西日本新聞』-「社説」)

 夫婦が同じ姓にするか、別姓にするかを法的に選べる制度である「選択的夫婦別姓」を巡る議論が再び高まっている。女性の社会進出が一層進み、夫婦いずれかの姓を名乗る現行制度では不利益を被るとの訴えが顕著になっているからだ。

 家族観は時代とともに変化する。それぞれの夫婦や家族の事情に合わせ、姓を選択できることは基本的人権の尊重にかなう制度だと、私たちは考える。

 自民党は昨年12月、内閣府の第5次男女共同参画基本計画案について激しい議論を重ねた。「選択的夫婦別姓」の文言が入っていたためで、結局、文言自体を削除して内容を了承し、政府が閣議決定した。保守派議員が「伝統を重んじるべきだ」「家族の一体感が損なわれる」などと強く主張した結果だ。この騒動が別姓制度への関心を改めて高める契機ともなった。

 最高裁大法廷が、夫婦同姓は日本社会に定着しており、民法の規定は合憲との初判断を示したのは2015年である。ただその際、別姓に対する国民の理解が高まっていることから「国会で議論されるべき問題」とも付言していた。

 大法廷は近々、再び現行制度に関して合憲か否かの判断を示す方向とみられる。事実婚の夫婦3組が別姓の婚姻届を受理するよう自治体に求めた家事審判の特別抗告審の判断である。

 原告側は姓を変えることによるパスポートや預金通帳、登記簿の書き換えなどは想像以上に煩雑で、現行制度は違憲と訴えている。原告以外にも改姓による不利益を恐れ、婚姻届を出さず事実婚を選ぶ人々もいる。

 早稲田大などによる昨秋のインターネット調査によると、全国7千人の成人男女から得た回答のうち、約7割が選択的夫婦別姓を容認したという。

 法制審議会(法相諮問機関)が選択的夫婦別姓を盛り込んだ民法改正案を答申したのは1996年のことだ。男女雇用機会均等法成立(85年)からも久しい。夫婦同姓は「夫は職場、妻は家庭」という旧来の価値観が土壌であるのは否定し難い。

 国会議員が「男女共同参画」を論じながら、姓の自己決定権を認めないというのは、時代に逆行すると言わざるを得ない。

 もちろん伝統を守ることの大切さや、家族は同姓であるべきだという考え方も尊重されるべきだ。子どもから見た場合、片方の親と違う姓であることに違和感を覚えるケースはあるかもしれない。

 だからこその「選択制」である。今や女性だけの問題ではない。コロナ禍で在宅の機会が増えた。家族の在り方を話し合ってみるのもいいだろう。





夫婦別姓の後退/社会の変化に目を向けよ(2021年1月12日配信『神戸新聞』-「社説」)

 若い世代や困っている女性たちの切実な声に、政治が背を向けたことになる。失望を禁じ得ない。

 2021年度から5年間の女性政策をまとめた「第5次男女共同参画基本計画」が、昨年末の閣議で決まった。

 最大の焦点となった選択的夫婦別姓は、導入に向けて前向きな表現が当初案に盛り込まれたが、「夫婦別姓」の文言そのものが削られた。大きな後退である。

 自民党内の反対派が別姓を巡る記述に猛反発したためだ。

 当初案は結婚前の名字を引き続き使えないことで実際に困っている国民の声を紹介し、「政府も必要な対応を進める」と記していた。現在の第4次計画より踏み込んだ内容で、議論の前進が期待された。

 ところが、反対派は「家族の絆が弱まる」「子どもがかわいそう」などと主張した。同姓でないと幸せになれないと言っているに等しく、一面的で理解に苦しむ。家族観はもっと多様であるはずだ。

 夫婦同姓を法律で義務付ける日本では、妻が夫の姓に変えるケースが圧倒的で全体の96%に上る。改姓に肯定的な人がいる一方、女性を中心に、仕事の支障になるなどの理由で姓を変えたくない人がいるのも当然だろう。

 時代を経て国民の意識も変わった。夫婦別姓を容認する人は今や多数となった。10~30代でその傾向はより顕著だ。最高裁も国会での議論を強く促してきた。

 政治は社会の変化を直視せねばならない。少子化が進む中、これから家族をつくる若者たちの意見に耳を傾けるべきだ。

 自民党内でも賛成派が勉強会を開き、若手議員からは「困っている人の問題を解決すべきだ」との声が上がった。賛否が割れているからこそ丁寧な議論を続ける必要がある。

 ここでも問われるのは菅義偉首相のリーダーシップだ。

 かつて首相は夫婦別姓を推進する立場で活動してきた。昨年11月の参院予算委員会でその点を指摘され、「政治家として申し上げてきたことには責任がある」と答えた。

 にもかかわらず、静観を決め込むのはなぜか。責任の果たし方を、女性や若者たちが見つめている。

 第5次男女共同参画基本計画は、政治家や管理職の女性割合について「2020年代の可能な限り早期に30%程度」と、従来の目標を先送りし、明確な年限を設けなかった。ここでも消極姿勢が目立つ。

 性別による不平等を解消し、個性を生かせる社会を築くには、不断の努力が要る。政治による後退や怠慢は許されない。





「夫婦別姓」削除 女性や若者の失望を招く(2020年12月30日配信『新潟日報』-「社説」)

 女性の社会進出が進む中で制度の導入を支持する世論が高まっているのに、肝心の文言そのものが削られた。

 政府の姿勢が後退しては議論が停滞しかねず、女性や若者の失望を招いてしまう。

 政府は今後5年間の女性政策をまとめた「第5次男女共同参画基本計画」を閣議決定した。焦点だった選択的夫婦別姓を巡っては、「夫婦別姓」という文言自体を計画から削除した。

 内閣府が当初まとめた計画案は前向きだった。「国会において速やかに議論が進められることを強く期待しつつ、政府においても必要な対応を進める」と明記されていた。

 これに対し、伝統的な家族観を重んじる自民党内の反対派が激しく反発し、賛否が割れた。

 計画からは「夫婦別姓」の文字が消え、表記は「司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」と後退した。

 反対派の主張に沿って「家族の一体感、子どもへの影響を考える視点も十分に考慮」との記述が加わった。

 夫婦別姓に対しては自民党内にも「選択ができるのであれば反対する理由はない」と導入を支持する声がある。公明党は「一貫して認めるべきだとの立場だ」と強調している。

 過去に導入に前向きな発言をしていた菅義偉首相も、先の臨時国会で「申し上げたことには責任がある」と答弁した。

 自民党内の議論がまとまらなかったとはいえ、どうしてここまで後退させたのか。政府の判断は理解に苦しむ。

 橋本聖子男女共同参画相は記者会見で、夫婦別姓について「特に若い世代で多くの人が求めているという事実がある」と述べていた。政府はより積極的な推進方針を示し、議論を前に進めるべきではなかったか。

 国会の責任も問われる。

 夫婦が同じ姓を名乗ると定めた民法の規定は違憲だとして事実婚の夫婦が起こした訴訟で、最高裁は2015年に「合憲」と初めて判断した。

 同時に最高裁は「制度の在り方は国会で論じられ、判断されるべきだ」と促していた。

 それから5年がたったが、国会の議論は止まっている。

 内閣府が17年に行った世論調査では、選択的夫婦別姓の導入を容認する人の割合が42・5%と過去最高になり、反対の29・3%を上回っていた。

 こうした世論の動きを敏感に捉えた様子もうかがえない。

 結婚後も仕事を続ける女性が大半になり、「結婚前の姓が使えないのは生活の支障になる」との声はよく聞かれる。

 一人っ子同士は、実家の姓が引き継がれないとして、結婚を踏みとどまるケースがある。そうしたことが少子化につながるとも指摘されている。

 第5次男女共同参画基本計画は女性の管理職登用の数値目標も先送りし、停滞感が漂う。

 女性が輝く社会を実現するには性差によって生じる課題を丁寧に解消しなくてはならない。政府は肝に銘じてほしい。



選択的夫婦別姓 導入は時代の要請確かな道筋を(2020年12月30日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政府は第5次男女共同参画基本計画を閣議決定した。焦点だった選択的夫婦別姓は自民党の反対派に配慮して「夫婦別姓」という文言自体を削るなど当初案から後退した内容となった。

 基本計画は女性政策における今後5年間の指針となる。導入に前向きな表現が盛り込まれれば、法改正などの検討が進むと期待されたが、文言が消えたことで実現への道筋が見えなくなることを憂慮する。

 結婚後も働き続ける女性が増える中で、夫婦別姓は時代の要請だ。特に若い人で望む声が強く、新たな計画はそうした世代の思いに背を向けたと受け止められても仕方がない。女性が活躍しやすい社会の実現のためにも、政府は計画期限の5年を待たず、改善への取り組みを進めるべきだ。

 当初の計画案では導入に前向きな記述が盛り込まれていた。しかし、伝統的な家族観を重視する自民党の反対派が巻き返した。具体的な制度の在り方は、「さらなる検討を進める」としながらも「家族の一体感、子どもへの影響を考える視点も十分に考慮」と反対派に配慮の色合いを強め、骨抜きにした。

 事実婚では子どもを持ちづらいという声や、職場で旧姓使用が認められず結婚前に築いた仕事の実績が引き継がれない課題もある。夫婦同姓によって仕事や生活に支障を来していると感じる人は少なくない。選択的夫婦別姓は全ての人に別姓を強いるのでなく、希望する人が選べるようにするものだ。反対派は「家族の一体感が失われる」などと主張するがほとんど女性側が改姓する中、性差による課題が解消されていない現実を直視すべきだろう。

 菅義偉首相がリーダーシップを発揮しなかったのは残念だった。かつて制度導入に前向きな発言をしたことを先の臨時国会で野党に指摘され「申し上げたことには責任がある」と答弁。本気ぶりをうかがわせたが、党内の意見がまとまりづらいと判断すると、あっさり慎重姿勢に転じた。多くの人を失望させたことを重く受け止めるべきだ。

 基本計画は他にも踏み込み不足が目立つ。女性の管理職登用は2020年までに30%程度とする目標が達成できず、「20年代の可能な限り早期」に期限を先送りした。国政選挙と統一地方選挙の女性候補者を25年までに35%とする目標値を掲げたが強制力はなく各政党の取り組みに委ねられる。候補者の一定割合を女性に割り当てる「クオータ制」の導入を急ぐなど、実効性を高めなければなるまい。

 「国際社会のスピード感と比較し、わが国の男女共同参画の推進状況は非常に遅れている」と基本計画では率直に認めている。特に自民党はその認識を持ち、時代にふさわしい制度設計へ議論を重ねるべきだ。政府も基本計画を着実に進めるというメッセージを打ち出し、遅れている分野の底上げを図っていく必要がある。





夫婦別姓問題(2020年12月29日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆政府は時代と世論直視せよ◆

 政府が閣議決定した第5次男女共同参画基本計画から「選択的夫婦別姓」という言葉が消えた。自民党の反対派に配慮して「夫婦別姓」という文言自体を削除するなど、当初案から後退する表現になった。女性の管理職登用についても「2020年までに30%程度」との目標を達成できず、「20年代の可能な限り早期」に期限を先送りした。

 基本計画の策定に向け、政府が8~9月に実施したパブリックコメントには選択的夫婦別姓の導入を求める国民の意見が約400件寄せられた。

 働く女性が結婚後の改姓により仕事で不便を強いられたり、自己喪失感を味わったりしないよう、希望する夫婦は別々の姓を名乗れる制度の導入を求める声は高まっている。パブリックコメントにもこうした流れを受け、「仕事や生活に支障を来している」「実家の姓が絶えることを心配して結婚に踏み切れない」などの声が多い。

 政府がまとめた計画の当初案は夫婦別姓について「政府においても必要な対応を進める」と従来より踏み込んだ内容だった。これに伝統的家族観を重んじる自民党の保守派が猛反発。導入に前向きな文言をことごとく削らせた。

 その結果、選択的夫婦別姓制度は「夫婦の氏に関する具体的な制度」に置き換えられ、その在り方について「さらなる検討を進める」という表現にとどまった。加えて「夫婦の同氏を義務付けている国は日本以外見当たらない」という説明を脚注に”格下げ”。仕事の実績が引き継がれないなど改姓による支障の例示も削除を要求された。

 結婚後の改姓が仕事や暮らしで支障となる人が現にいる。家族のありようは多様化しており、世論も別姓導入を支持している。そんな中、保守派の意向に配慮し、計画の中身を大きく後退させるのは社会の要請を無にしたと言わざるを得ない。

 菅義偉首相はかつて自身が夫婦別姓に前向きな発言をしたと野党に指摘され「申し上げたことには責任がある」と答弁。閣僚や自民若手議員からも積極的な意見が相次ぎ、議論が加速するかに見えた。だが最後は保守派が押し切り、別姓導入に関する計画案は骨抜きになった。

 内閣府の17年世論調査では、別姓制度導入に賛成が42・5%で、反対の29・3%を大きく上回った。とりわけ結婚後の改姓で悩まされることの多い女性は18~29歳で52・4%、30~39歳で54・1%が賛成と答えた。

 今の時代、旧来の家族像や結婚観にしがみつく必要性は果たしてあるのか。違和感を感じてきた女性たちや若い世代の落胆は大きい。政府、自民党は時代と世論を直視すべきだ。



「政治家として申し上げたことには責任がある」(2020年12月29日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 「名字がひとつになった日」「あなたの名字になる私」…。こんな歌詞で結婚を表現するラブソングがあります。憧れを抱く人もいれば不快に思う人もいる。感じ方は人それぞれです

▼結婚後に、同姓にするか別姓にするかを選べる選択的夫婦別姓制度。「慣れ親しんだ氏名のまま結婚することも認めて」「戸籍名と通称を使い分ける煩わしい生活から解放してほしい」と願う人たちが声を上げ、世論を動かしてきました

▼実現を阻んでいるのは自民党内の強硬な反対です。「夫婦別姓を認めれば家族の絆が壊れ、子どもに悪影響が及ぶ」と。説得力に欠ける主張に「同姓を否定するわけじゃない。別姓の選択肢を与えてほしいだけ。拒否する意味がわからない」「希望する人が別姓を選択したくらいで、この国では家庭が崩壊するの?」と批判があふれています

▼両親が別姓の20代女性は「母親と名字が違う理由を聞かれるのは面倒だったけど、姓が違うことも当たり前になって、そんな悩みが解消するのが理想の姿」と言います

▼価値観が多様化するなか、大切なのはさまざまな選択肢を用意すること。多彩な家族のあり方を尊重する社会であれば、子どもに悪影響など及ばないはずです

▼かつて選択的別姓に賛成を表明していた菅義偉首相。日本共産党の小池晃書記局長の国会質問に「政治家として申し上げたことには責任がある」と答えました。だれもが自分らしく生きられる社会に向けて自らの発言をいつ実行するのか、問われています。





夫婦別姓の議論 差別の放置許されない(2020年12月28日配信『北海道新聞』-「社説」)

 選択的夫婦別姓制度の導入が見通せない。

 今後5年の女性政策の指針となる第5次男女共同参画基本計画が先週、閣議決定された。そこでの言及は、自民党の保守派によって骨抜きにされた表現となった。

 夫婦が望めばそれぞれ結婚前の姓を名乗れる制度だ。家族の形は多様になっており、選択肢として制度化するのは時代の要請だ。

 なのに自民党は流れに逆らい続けている。夫婦同姓を義務づける日本の民法の規定は差別的だとして、国連の委員会から再三是正勧告を受けている。自民党の行いは差別の放置に等しい。

 自民党は社会の実態を直視し、導入に向け議論を進めるべきだ。

 選択的夫婦別姓制度は、2000年の最初の計画から15年の第4次計画までいずれにも、具体的施策として位置づけられてきた。

 第5次の策定に当たり内閣府は従来の「検討を進める」から、「政府においても必要な対応を進める」と踏み込んだ原案を示した。

 女性の社会進出を踏まえた妥当な方針だ。橋本聖子男女共同参画担当相も導入に意欲的だった。

 しかし、これに伝統的な家族観を重視する自民党保守派が警戒感を強め、強く反発した。

 会合に動員をかけて議論を主導し、選択的夫婦別姓の文言を削除させ、表現を「さらなる検討を進める」に押し戻した。時代錯誤も甚だしい。やすやすと受け入れた党にも失望を禁じ得ない。

 結婚後も働く女性は増えている。姓を変えるのは圧倒的に女性だが、仕事の実績を引き継ぎにくいという不満が聞かれる。

 やむなく事実婚を選べば各種控除が受けられないなどの不利益を被る。現行制度が時代にそぐわなくなっているのは明らかだ。

 保守派は夫婦別姓を認めれば「家族の絆が壊れる」という。

 夫婦同姓を義務づける国は日本以外ないとされるが、諸外国の家族のつながりは弱いのか。説得力を著しく欠く主張だ。

 法制審議会が選択的夫婦別姓制度の導入を法相に答申してから24年がたつ。この間、最高裁は現行制度を合憲と判断し、議論を進めるよう国会に促している。

 最近も東京の事実婚夫婦3組の特別抗告審を大法廷に回付し、改めて憲法判断を示す見通しだ。

 政治がこれ以上不作為を続けることは許されない。かつて選択的夫婦別姓に賛同した菅義偉首相もだんまりを決め込むのではなく、リーダーシップを発揮すべきだ。



夫婦別姓の議論を止めるな(2020年12月28日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 実現に向けて動き出したかと思われていたのが、一転して大きく後退した。夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる、選択的夫婦別姓制度の導入のことだ。

 政府が閣議決定した新しい男女共同参画基本計画の書きぶりは以前よりかなり後ろ向きだ。

 計画は2000年に始まり、今回が第5次だ。第1次から4次までは、選択的夫婦別氏(姓)制度という言葉を明記していた。この文言がなくなり「夫婦の氏に関する具体的な制度」というあいまいな表現になった。政府として「必要な対応を進める」という第5次の当初案も、「さらなる検討を進める」にトーンダウンした。

 変更の理由は、自民党内からの強い反論だ。党内には賛否それぞれの意見があり、調整は難航した。最終的には保守系に配慮したかたちで「夫婦同氏制度の歴史」などの言葉が追加された。選択的夫婦別姓の導入には、大きな逆風になりかねない。

 働き続ける女性が増えるなか、改姓で仕事に支障が生じるとの声は多い。一人っ子が増え、結婚しても実家の姓を残したい、という希望も強い。計画策定に先立つパブリックコメントでは、導入を求める多くの声が寄せられた。今回の計画は、こうした声に真摯にこたえたとはいえない。

 1996年には法制審議会が導入するよう答申した。17年の内閣府の世論調査でも、導入に賛成する人は当事者世代である18~29歳、30代でいずれも5割を超える。

 選択的夫婦別姓はあくまでも希望者に新たな選択肢を示すというものだ。今回の計画は、旧姓の通称使用拡大を強調するが、2つの姓の使い分けには限界がある。夫婦同姓を法律で義務付けているのは、主要国でも異例だ。家族の一体感のみなもとは「同姓であること」だけでもないだろう。

 大事なのは、議論を止めず、しっかり続けることだ。菅義偉首相はかつて導入に賛意を示していた。将来に向け、何が必要なのか。議論をリードしてほしい。



選択的夫婦別姓 もの足りない野田発言(2020年12月1日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★年末、自民党幹事長代行・野田聖子が相次いでメディアのインタビューに応じている。時事通信では政府が25日に閣議決定した第5次男女共同参画基本計画で、選択的夫婦別姓について「さらなる検討を進める」と明記したことを「前進だ」と評価し、「子ども家庭庁」を創設して少子化対策に予算をもって臨むべきと訴えた。選択的夫婦別姓問題については後退したのではとの問いに「議論出来て実を取った」と説明、首相・菅義偉の政策の柱の1つ、不妊治療無料化は野田のプランといわれているが、今後は混合治療の中、どう決着付けるか課題は多い。

★首相・菅義偉については「ずっと私の天敵だった。安倍政権下で総裁選に出ようとするたびに盾になり、応援してもらったことはない。だが、今は無派閥という負荷を背負いながらここまできたという仲間かな」と無派閥としての党内での生き残り方を評価してみせた。一方、朝日新聞のインタビューでは「保守分裂の岐阜『ドン』批判、野田聖子氏が抱く違和感」とのタイトルで来月ある岐阜県知事選挙が保守分裂選挙になったことに触れ「好き嫌いや数値化されないところで人の査定があった。一部の力で政治が引っ張られることは、これから通らない」と昭和の長老支配を批判。いずれも示唆的な質疑となっている。

★だが、あえて注文をつけたい。選択的夫婦別姓については、自民党女性議員のとりまとめ、ことに杉田水脈の対応に党も終始曖昧な態度で、議論できたのではなく、本質の議論を台無しにしたのではないか。既に自民党以外の公明党、立憲民主党、国民民主党、共産党、社民党が賛成を表明。自民党の議論も方向も中途半端でまとめきれなかっただけではないか。この議論をリードしてきた野田の発言としては極めてもの足りない。野田は閣僚経験、党三役のキャリアからいっても、県内の長老支配と今の自らの上司たる幹事長・二階俊博や首相の政治姿勢や手法に切り込んでもいいはずだが、踏み込んでほしかった。来年は総裁選挙がある年だ。





[「夫婦別姓」後退] 社会の声に背を向けた(2020年12月27日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 新制度の導入に向けてアクセルを踏むべき時に、まさかの大幅後退となった。時計の針を巻き戻したかのようだ。

 今後5年間の政府の取り組みをまとめた第5次男女共同参画基本計画が閣議決定された。最大の焦点は、夫婦が希望すればそれぞれ結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」の記述だった。

 どこまで踏み込むか注目されたが、決定された計画では「国会での議論の動向を注視しながら、司法の判断も踏まえ、さらなる検討を進める」との消極的な表現にとどまった。それどころか第4次計画まであった「選択的夫婦別氏」の文言自体が削除された。社会の要請からあまりにも乖離(かいり)しており納得できない。

 当初の計画案には「政府においても必要な対応を進める」と導入に前向きな記述があった。修正に追い込まれたのは、伝統的な家族観を重視する自民党の反対派が攻勢をかけたためだ。

 計画案を議論した自民党の会議では「導入ありきで恣意(しい)的だ」などの批判が反対派から相次いだという。

 党内では、選択的夫婦別姓の推進派も活発な動きを見せ、意見が二分していた。議論したこと自体は一歩前進だとの見方も党内にあるようだが理解に苦しむ。

 新たな計画の策定に向け政府が実施したパブリックコメント(意見公募)には、導入を求める意見が約400件寄せられていた。結婚の当事者である若い世代などからの切実な声だ。その意見を5年に1度の改定に反映できず失望させた責任は極めて大きい。

■    ■

 決定した計画には、基本認識として次の記述がある。「男女共同参画社会の形成のためには、社会制度や慣行が、実質的に男女にどのような影響を与えるのか常に検討されなければならない」

 現状を見れば、結婚で96%の女性が夫の姓に変えている。結婚後も働き続ける女性が増える中、改姓によってキャリアが分断される不安を感じたり、自己喪失感を抱いたりする人は少なくない。

 通称として旧姓を使える範囲は広がってきたが、不利益の解消には十分ではない。明治時代に始まった「夫婦同氏制」が見直しの対象とされるのはごく当然だ。

 菅義偉首相は、かつて選択的夫婦別姓に前向きな発言をしていた。首相就任後にも「政治家として申し上げたことには責任がある」と答弁している。ならば党内に異論があっても責任を果たし、リーダーシップを発揮すべきだ。

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 第5次男女共同参画基本計画は女性の管理職登用についても数値を示している。

 指導的地位に占める割合を「2020年までに30%程度」と03年に掲げた目標を達成できず、今回は「20年代の可能な限り早期」に期限を先送りした。19年時点の実績は14・8%。明確な期限がなく目標がぼんやりしていて本気度が伝わってこない。

 スイスのシンクタンクが19年に発表した男女格差報告「ジェンダー・ギャップ指数」で、日本は121位と大きく落ち込んだ。世界の趨勢(すうせい)から完全に取り残されている。





[「夫婦別姓」後退] 社会の要請に逆行する(2020年12月26日配信『南日本新聞』-「社説」)

 政府がきのう閣議決定した第5次男女共同参画基本計画から「選択的夫婦別姓制度」の文言がなくなった。

 働く女性が結婚後の改姓で仕事や暮らしに支障を来すことがないよう、制度の導入を求める声は増えている。5年ごとの基本計画にも毎回、導入の検討が明記されてきたが、今回は大きく後退する書きぶりになった。

 政府がまとめた計画の当初案は、国会の速やかな議論を期待するとした上で「政府においても必要な対応を進める」と踏み込んだ内容だった。

 これに自民党の保守派が猛反発。選択的夫婦別姓制度は「夫婦の氏に関する具体的な制度」に置き換えられ、その在り方は「さらなる検討を進める」という表現にとどめるなど、導入に前向きな文言はことごとく削られた。

 保守派の議員らは「家族の一体感に配慮すべきだ」と主張する。だが、家族のありようは多様化している。

 働く女性が増え、改姓が仕事の支障になるケースも多く、希望すれば結婚後も夫婦がそれぞれの姓を名乗れる選択的別姓導入を支持する世論は高まっている。

 こうした現状で、今後5年間の政策の指針となる計画の中身を後退させるのは、社会の要請と逆行すると言わざるを得ない。積み上げられてきた議論の停滞を招かないか気掛かりだ。

 政府は、女性が輝ける社会づくりを政策の柱の一つに掲げる。菅義偉首相もかつて自身が夫婦別姓に前向きな発言をしており、野党の指摘に「申し上げたことには責任がある」と答弁。閣僚や自民若手議員からも制度導入に積極的な意見が相次いだが、結果的に保守派に押し切られた格好となった。

 公明党も夫婦別姓への国民の理解は年々広がっているとし、選択的夫婦別姓を容認する姿勢だ。

 夫婦の姓について、明治民法は「家の姓を名乗る」と規定。戦後は結婚時に定めた夫または妻の姓を名乗ると改められ、現状は約96%(2019年)が夫の姓を名乗っている。

 ただ、法務省によると、夫婦同姓を法律で定めている国は日本以外に把握できないという。

 15年の最高裁判決は夫婦同姓規定を合憲としたが、同時に制度に関しては「国会で論じられるべき」と制度の是非を検討するよう促した。しかし、具体的な議論の進展が見られない。

 17年の内閣府調査では選択的夫婦別姓制度導入を容認する人の割合が過去最高の42.5%で、反対の29.3%を大きく上回った。とりわけ、女性の若年層で過半数が賛成と答えているのが際立っている。

 現に不利益や不便を訴える多くの声がある。誰もが活躍できる社会づくりのため、政府と自民党は世論を直視した取り組みを進めてもらいたい。





【夫婦別姓】導入へ後退は許されない(2020年12月24日配信『高知新聞』-「社説」)

 選択的夫婦別姓を巡り、時代錯誤と言うほかない「骨抜き」である。

 自民党内で議論されていた第5次男女共同参画基本計画案が了承された。政府はこれを近く閣議決定する。

 当初、党の推進派は制度導入に前向きな表現を計画案に盛り込もうとしていた。しかし、反対派の主張で大幅に後退。ついには「選択的夫婦別姓」との文言も削除された。

 世論調査では、制度導入に「賛成」という声が「反対」を上回っている。それを裏切る行為である。

 同計画は今後5年間の女性政策の指針となるものだ。第4次計画での「検討を進める」よりも踏み込んだ記述が盛り込まれれば、法改正などの検討が進むと期待されていた。

 当初案では「婚姻前の氏を引き続き使えないことが生活の支障になっているとの声がある」と指摘。

 支障を例示し、「国会において速やかに議論が進められることを強く期待しつつ、政府においても必要な対応を進める」と明記していた。

 これに反対派が「導入ありきで恣意(しい)的だ」と猛反発。大幅に書き換えられ、「さらなる検討を進める」という表現に後退した。

 制度の名称まで消されたことで、国会などでの議論が停滞することも予想される。

 「政府から『国会の議論を求める』と言われる筋合いはない」。反対派の高市早苗前総務相は当初案に対し、露骨に不快感を示したが、的外れではないか。

 最高裁は選択的夫婦別姓を巡る判決で「制度の在り方は国会で論ぜられ、判断されるべきだ」と促している。にもかかわらず、議論を進めてこなかった政府や国会の怠慢があることを忘れてはならない。

 一方で、了承された計画案には「家族の一体感、子どもへの影響や最善の利益を考える視点も十分に考慮」との文言が盛り込まれた。

 保守層の「夫婦別姓を認めたら家族の絆が壊れる」という主張への配慮が込められている。

 しかし社会の実態として、事実婚だったり、再婚をしたりして親子が違う姓であっても、強い絆で結ばれている家庭は数多い。

 婚姻や家族の在り方は多様化している。政治が社会の変化に向き合わないことに違和感が募る。

 夫婦別姓を容認している公明党の議員からも、自民党の反対派は「昭和どころか明治時代の価値観に染まっている」と皮肉る声が出ている。

 「旧姓の通称使用の拡大で対応すべきだ」との意見もある。

 ただ、資格取得などは戸籍上の姓を使用する必要があったり、海外で出入国管理当局などから通称の説明を求められたり、姓を使い分ける負担が解消されることはない。

 また一人っ子が多くなり、改姓せず実家の姓を残したい人も増えている。夫婦同姓の法的義務は、結婚や出産を妨げる弊害にもなっている。

 国民の選択肢を広げるため、法改正が必要である。政府や自民党は制度導入へ議論をやめてはならない。





自民党の夫婦別姓論議 後退の理由が分からない(2020年12月21日配信『毎日新聞』-「社説」)

 選択的夫婦別姓の導入論議が大きく後退しそうだ。政府が策定する第5次男女共同参画基本計画での言及が、トーンダウンする見通しとなったためだ。

 橋本聖子男女共同参画担当相は、前向きな内容を盛り込む考えを示していた。社会の機運も高まっていた。

 原因は自民党にある。

 内閣府の当初案は、姓を改めさせられることの不都合や、同姓を義務づけるのは日本しかないことを記述していた。国会の速やかな議論を強く期待し、政府も「必要な対応を進める」と結んでいた。

 ところが自民党の保守派は、伝統的な家族観を重視する立場から「世論の誘導だ」と強硬に反発した。具体的な記載は削られ、結論も「更なる検討を進める」に押し戻された。

 第4次の計画まではあった「選択的夫婦別氏制度」の言葉すら消える一方で、「同氏制度の歴史」など、保守派に配慮する記載が加えられた。理解に苦しむ。

 夫婦の96%が夫の姓を選んでいる。姓が変わることで、女性の仕事や暮らしに支障が生じている。通称として結婚前の姓を使える場面は増えてきたが、限界がある。

 計画策定にあたって、選択的夫婦別姓の導入を求める意見が400件以上寄せられた。「事実婚を選ばざるを得なかった」「実家の姓が絶える心配から結婚に踏み切れない」との切実な声もあった。

 市民団体などが10月、全国の60歳未満の成人7000人に行った調査では、賛成が7割に上った。

 法務省が選択的夫婦別姓を導入する法案を準備してから、既に24年が経過した。与党でも公明党は賛成している。自民党は社会の現実を直視すべきだ。

 自民党内でも、若手議員らが政府と党に要望書を出すなど、導入を求める動きが広がりつつある。

 党内の議論を止めてはならない。そもそも姓をどうするかは個人の生き方に関わることだ。合意を得るのが難しければ、議員個人の判断に委ねるのも一案だろう。

 菅義偉首相は国会で、過去に推進の立場で活動したことを指摘され、「政治家として、申し上げてきたことには責任がある」と述べた。そうであれば、リーダーシップを発揮すべきだ。



選択的夫婦別姓 反対の主張、説得力ない(2020年12月21日配信『中国聞』-「社説」)

 政府が近く閣議決定する男女共同参画基本計画案が自民党の意向で書き換えられた。焦点だった「選択的夫婦別姓」は文言自体が削除され、大幅に後退する内容になりそうだ。

 夫婦が望めばそれぞれが結婚前の姓を名乗れる制度で、若い世代を中心に認めてほしいとの声が強まっている。

 政府は今回、導入へ向けて「必要な対応を進める」と前向きな当初案を示していたが、伝統的な家族観を重視する反対派の議員らが反発。「さらなる検討を進める」と修正し、「夫婦別姓」の言葉まで削った。

 代わりに「家族の一体感や子どもへの影響」への考慮など、反対派の主張が盛り込まれた。導入に前向きな表現もあった政府の当初案は骨抜きにされた。

 自民党内でも賛否は割れている。反対派は、夫婦別姓を認めれば「家族の絆が壊れ、子どもに悪影響が及ぶ」などと唱えている。しかし、強制的に同姓にしなければ家族が壊れるとの主張に説得力はない。時代錯誤も甚だしいと言わざるを得ない。

 価値観が多様化する中、可能な限り選択肢を用意することが重要である。さまざまな家族のあり方を尊重する社会であれば、子どもに悪影響はないはずだ。反対派の主張をやすやすと受け入れてしまう自民党の体質にも問題があろう。

 選択的夫婦別姓を巡っては、1996年に法務省の法制審議会が制度を導入するよう答申したが、自民党の反対で法案提出に至っていない。2015年には、最高裁が国会での議論を促したが、進展はなかった。

 結婚後も働き続ける女性が増え、結婚前の姓を引き続き使えないために仕事に支障が出ているとの声は多い。

 愛着のある姓を変えたくない人や、一人っ子同士で「実家の姓を残したい」と望む人もいる。改姓を理由に結婚に踏み切れない女性も少なくないとされる。少子化の観点からも見過ごせない問題だ。

 民法750条は、夫婦は婚姻時に夫または妻の姓のどちらかを名乗るよう規定する。ただ実際に姓を改めるのは圧倒的に女性の方が多い。全体の96%に上る現状は公平とは言えず、時代遅れの女性差別との批判がやまないのも当然だろう。

 法律で夫婦同姓を義務付けている国は日本ぐらいとされ、国連女性差別撤廃委員会は日本政府に再三是正を勧告している。にもかかわらず、四半世紀近くにわたって議論を棚上げにしてきた政府と国会の責任は重い。

 最高裁は今月、夫婦別姓を認めず、婚姻届を受理しないのは憲法に違反すると訴えた3件の家事審判について、大法廷で審理すると決めた。改めて憲法判断を示す可能性がある。

 選択的夫婦別姓は「選択的」という言葉にあるように、夫婦同姓の選択も自由だ。同姓にすることで家族の一体感を得られると思う人はそちらを選べばいいだけだ。反対する論理的な理由は見当たらない。

 菅義偉首相もかつて別姓の導入に前向きな発言をし、11月の参院予算委員会で「政治家として申し上げたことには責任がある」と答弁した。

 改姓を強いられることで、不自由さや痛みを感じている人がいる。解決策を示せるよう「責任」を果たすべきだ。





選択的夫婦別姓(2020年12月20日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

多様性を求める声にこたえよ
 結婚したら、どちらか一方の姓を名乗らなければならない―夫婦同姓を法律(民法)で義務付けているのは世界で日本だけです。姓を変えるのは96%が女性です。外国人との結婚や離婚の際の姓は選択できますが、日本人同士の結婚では同姓が強制的義務とされたままです。日本も批准している女性差別撤廃条約第16条の「夫及び妻の同一の個人的権利」には、姓を選択する権利も含まれます。女性差別撤廃委員会から再三にわたり法律改正の勧告を受けています。

許されない大後退の動き
 2015年、夫婦別姓を認めるよう求めた裁判で最高裁は民法を合憲としたものの、裁判官15人中5人が違憲と表明し、「国会で論ぜられ、判断されるべき」としました。18年に日本共産党など野党が改正法案を提出したにもかかわらず与党は審議に応じません。

 近く閣議決定される男女共同参画第5次基本計画で、当初の政府案は、国民の強い要望を背景に、「選択的夫婦別氏制度」へ「政府として必要な対応を進める」とされました。しかし自民党内の反対意見が噴出し、「検討を進める」と大幅後退する動きです。2000年来、計画に盛り込まれてきた「選択的夫婦別氏制度」という言葉さえ消えようとしています。

 内閣府の調査(18年)で選択的夫婦別姓に「賛成」は43%で、「法律を改める必要はない」の29%を上回り、50歳代以下では賛成が半数を超えます。直近の各種調査では賛成は7割(「朝日」)、高校生を中心とした調査(学校総選挙プロジェクト)では9割が賛成です。

 国民は、選択できる社会、個々の人格や多様性が認められる社会を望んでいます。最高裁も「氏名は、人が個人として尊重される基礎であり、その個人の人格の象徴」(1988年)と判断しています。

 「旧姓と新姓の論文が同一人物の成果とみなされず、正当な評価が得られない」「姓が変わったため取得した資格が消滅、再取得が必要となった」「事実婚では一方の親権がない」。同姓強制で多くの不利益が起きています。改姓による喪失感、結婚や離婚などの個人情報の事実上の公開、パスポート変更手続き等の労力と経費など一方の性に重い負担がのしかかっています。一刻も早い解決が必要です。

 反対派は「家族の一体感がなくなる」などと主張します。しかし、内閣府の世論調査では別姓で「家族の一体感(きずな)が弱まる」という人は3割、「影響ない」はその2倍の6割で、国民の認識とのずれは明らかです。反対派は「日本の伝統」と言いますが、夫婦同姓の義務は明治民法(1898年公布)で、家長による男性優先の家族内序列がつくられ、女性は法的無能力者とされた男尊女卑の社会で定められたものです。このような時代錯誤は通用しません。

別姓制度求める声やまぬ
 菅義偉首相は過去に選択的別姓に賛成表明しています。「政治家として責任がある」(11月6日、日本共産党の小池晃参院議員への答弁)というなら決断すべきです。

 女性たちはこれまでも、結婚退職制をなくし、出産しても働き続けられるよう職場と社会を粘り強く変えてきました。選択的夫婦別姓を求める声と行動はいっそう広がるでしょう。日本共産党はジェンダー平等社会の実現へ、さらに奮闘する決意です。





「夫婦別姓」削除 同姓見直し避けられない(2020年12月18日配信『琉球新報』-「社説」)

 誰もが望む姓で生きられる社会に向けた取り組みが、大幅に後退した。

 政府は近く閣議決定する第5次男女共同参画基本計画案から「選択的夫婦別姓」の文言を削除することを決めた。

 働く女性が増え、家族の在り方も多様化している。日本以外に夫婦同姓を義務付ける国はないという。同姓規定の見直しは避けて通れない。

 基本計画の政府原案は、民法の夫婦同姓規定により96%の女性が結婚に伴い姓を変えている現状や、意見募集で寄せられた「実家の姓が絶えることを心配して結婚に踏み切れず少子化の一因となっている」という意見を掲載した。

 2015年の最高裁判決の「夫の氏を称することが妻の意思に基づくとしても、意思決定の過程に現実の不平等と力関係が作用している」との指摘も掲載。民法の差別的規定を廃止するよう求める国連女性差別撤廃委員会の勧告にも触れていた。

 しかし、自民党反対派に押され最高裁判決や国連勧告の部分は削除された。これまで積み上げてきた事実を、なかったことにするような乱暴なやり方である。

 基本計画は女性政策における今後5年間の指針となる。導入に前向きな表現が盛り込まれれば、法改正などの検討が進むと期待されていたが、選択的夫婦別姓の文言自体が消えた。代わりに「家族の一体感、子どもへの影響や最善の利益」の考慮など、反対派の主張が盛り込まれた。今後議論が停滞することも予想される。

 選択的夫婦別姓を巡っては、法務省の審議会が1996年に民法を見直し、選択的夫婦別姓制度を導入するよう答申した。法務省は96年と2010年に導入の改正法案を準備したが、自民などの保守派が「家族の絆が壊れる」と反対し、提出されていない。強制的に同姓にしないと家族が崩壊する、との主張に説得力はない。

 内閣府が18年2月に公表した世論調査で選択的夫婦別姓制度に賛成する人は過去最高の42・5%だった。姓が違っても家族の一体感に影響はないと考える人は64%に上る。

 この調査から、社会の意識は変わりつつあることが分かる。しかし、「女性活躍」の看板を掲げた安倍政権下で議論は進まなかった。伝統的な家族観を重視する保守層に支持されていたため、慎重になっていたとみられる。

 菅義偉首相の誕生で変化が感じられた。かつて自身が推進の立場で議員活動をしてきたことについて「そうしたことを申し上げてきたことには責任があると思います」と明言したからだ。結果は前進ではなく後退だった。

 夫婦別姓について地方議会から立法化を求める意見書の採択が相次ぐ。最高裁も国会に議論を促している。個人の尊厳や多様な価値観を尊重するため、立法府でしっかり議論すべきだ。





夫婦別姓が後退 自民党は現実を直視せよ(2020年12月17日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 社会の状況をどこまで認識しているのか。

 選択的夫婦別姓に対する自民党の対応である。夫婦が望む場合、結婚後もそれぞれ婚前の氏を使うことを認める制度だ。

 今後5年間の女性政策の指針となる計画で、政府が導入へ「必要な対応を進める」としていた当初案が、旧来の家族観を重視する保守派の反対で大幅に後退した。最終案は現行計画に近い「さらなる検討を進める」となり、「選択的夫婦別姓」の文言も削除された。

 導入に前向きとも取れた政府の案が骨抜きにされ、早期導入が見通せなくなった状況である。

 保守派の主張は「伝統的な家族観が失われ、子どもの氏の安定性も損なわれる」というものだ。不利益を被っている人が数多くいることを、どう認識しているのか。

 民法750条は、夫婦は婚姻時に夫、妻どちらかの姓を名乗ることを規定している。厚生労働省の調査では、女性の96%が改姓しており、女性差別との批判が強い。

 結婚後も働く女性が増え、改姓で結婚前の実績を引き継ぎにくいなどの支障も出ている。改姓を理由に結婚に踏み切れない女性も少なくないとされる。

 各種調査では導入に「賛成」が「反対」を上回る。個人の尊重を根幹に置く現憲法の趣旨に合わないことも明らかだ。県内では上田市議会と長野市議会が選択的夫婦別姓の法制化について、国に議論を求める意見書を可決している。

 夫婦同姓を義務付ける国は日本以外には確認されていない。国連の委員会も差別規定として、日本政府に改正を勧告している。

 国内外の情勢を考慮すると、制度導入を進めるのが当然だ。法制審議会が、別姓を選べるようにする民法改正を答申したのは1996年だ。現実を直視せず、議論を先送りすることは看過できない。

 保守派の主張を簡単に受け入れる党の体質も問われる。

 政府内では、導入に肯定的な機運が出ていた。

 橋本聖子男女共同参画担当相が国会で導入に向け、議論を進める姿勢を強調。かつて制度に前向きな発言をしていた菅義偉首相も参院予算委員会で「政治家として申し上げたことには責任がある」と述べた。当初案はそうした政府の意向を反映していた。

 それなのに党が計画案を議論する会合を開くたびに、保守派が動員をかけて議論を主導し、表現が後退していった。社会状況と懸け離れた議論に押し切られるようでは、与党の責任を果たせない。





選択的夫婦別姓/国会で議論すべき時期だ(2020年12月15日配信『河北新報』-「社説」)

 夫婦が同じ姓を名乗ると決めた民法の規定が憲法に違反するかどうかを巡り争われた裁判で、最高裁が再び憲法判断を示す可能性が出てきた。

 東京都内の事実婚の男女3組が起こした家事審判で、最高裁第2小法廷と第3小法廷が大法廷で審理すると決めたからだ。

 大法廷は2015年の判決で「合憲」と初めて判断したが、15人の裁判官のうち5人が「違憲」としていた。

 法相の諮問機関、法制審議会(法制審)は1996年、希望すれば結婚後も別々の姓を名乗ることができる選択的夫婦別姓制度を盛り込んだ民法改正を答申しているが、いまだに実現していない。

 選択的夫婦別姓についての内閣府世論調査で、2012年は賛成、反対が拮抗(きっこう)していたが、17年には賛成42・5%、反対29・3%と賛成が大きく上回った。最高裁が時代の変化を反映した判断を示すことを期待したい。

 15年の最高裁判決は、夫婦や子どもが同じ姓を名乗ることには合理性があり、社会に定着しているとして、憲法に違反しないと判断した。

 結婚し姓を変えた人が自己喪失感を抱いたり、社会的信用や評価の維持が困難になったりすることがあるのは認めたが、旧姓を通称として使用することが広まれば不利益を一定程度緩和できるとした。

 通称使用は広がりつつあるとはいえ、認めない職場や契約相手もあり、税金面で不利な扱いを受ける場合もある。別姓を望む男女はやむなく事実婚を選ぶ。

 結婚で姓を変えるのが圧倒的に女性だ。反対意見を述べた裁判官5人は「多くの女性が姓の変更による不利益を避けるために事実婚を選んでいる」「通称使用も法制化がないままでは合理性の根拠とならない」などと述べた。

 判決は「制度の在り方は国会で論じられ、判断されるべきだ」とも説いている。

 その意味で国会は怠慢だったと言わざるを得ない。法制審の答申後、政府は2度にわたって民法改正案を準備したが、自民党保守派の反対で提出を断念した。20年以上、国会で審議すらしていない現状を猛省する必要がある。

 自民党保守派の夫婦別姓アレルギーはまだ強い。今月8日、政府の男女共同参画基本計画案に選択的夫婦別姓について「国会の速やかな議論を期待」などと記述されていることに猛反発したという。

 保守派は反対理由に「家族の一体感が失われる」を挙げるが、夫婦同姓を義務付けている国は日本以外にない。その主張は、法政大総長の田中優子氏が指摘するように「日本の外では家族が崩壊している」と述べているのと等しい。

 非論理的な強弁で国会審議の機会を奪うのはやめるべきだ。司法に促されるまでもなく、社会的課題を議論し判断するのが立法の責務だろう。



夫婦別姓/選択制の議論を一歩前に(2020年12月15日配信『神戸新聞』-「社説」)

 さまざまな価値観を持つ人が生きやすい社会をつくるためには「決めつけ」を排し、選択肢を広げることが極めて重要だ。

 日本は夫婦に同姓を義務付ける世界でもまれな国である。しかし、時代とともに強制をやめてほしいとの声が広がり、今や選択的夫婦別姓を容認する国民は幅広い年代で多数を占めるまでになった。

 婚姻前の名字を引き続き使えず仕事に支障が出ている、実家の姓が絶えるので結婚に踏み切れない-。こうした理由で実際に困っている人がいる。未婚化や、ひいては少子化の一因になっているとの指摘もあり、見過ごせない。

 政府、与党は国民の変化にしっかりと向き合い、夫婦別姓を巡る法改正の議論へ一歩踏み出すべきだ。

 現在、今後5年間の女性政策をまとめた「第5次男女共同参画基本計画」の策定に向けた議論が自民党内で行われている。夫婦別姓の記述を巡り、賛成派と反対派が激しく対立している状況だ。

 政治は20年以上も問題を放置してきた。1996年、法制審議会は選択制を認める民法改正案を答申したが、法改正は棚上げされた。

 2015年には最高裁が夫婦同姓を合憲としつつも「国会で論ぜられるべき」との判決を出した。ところが、やはり進展しなかった。怠慢はもう許されない。

 最高裁は先日、夫婦同姓を定めた民法の規定は違憲だと訴えた3件の家事審判の特別抗告審について、大法廷で審理すると決めた。改めて憲法判断を示す可能性がある。

 これからの社会を担う若い世代の意向は特に尊重されるべきだろう。

 30歳未満の若者によるプロジェクト「#男女共同参画ってなんですか」は先ごろ、夫婦別姓の実現を求める約3万筆の署名を橋本聖子男女共同参画担当相に提出した。内閣府の17年調査によると、夫婦別姓への賛成は、反対の29・3%を大きく上回る42・5%に上り、18~39歳では50%を超えた。

 自民党などの反対意見で目立つのは「家族の絆や一体感が失われる」である。同姓にすることで一体感を得られると思う人は、そちらを選べばいい。だが、家族観は一様ではない。望めば別姓を選べるようにするのは政治の責任といえる。

 夫婦同姓を日本古来の伝統のよううにとらえる向きがあるが、それは違う。ドイツを手本に、1898(明治31)年に導入された。

 しかしそのドイツも1993年の法改正で選択的別姓となった。日本でも家族のあり方や国民の意識は確実に変わっている。今こそ、柔軟に考えるときである。





選択的夫婦別姓 実態踏まえ議論を進めよ(2020年12月11日配信『山陽新聞』-「社説」)

 夫婦が希望すれば、それぞれが結婚前の姓を名乗ることを認める「選択的夫婦別姓」制度を巡る議論が活発化している。

 きっかけは、政府が近く閣議決定する第5次男女共同参画基本計画案だ。導入に前向きな表現が盛り込まれたことに対し、自民党内の会議が紛糾。反対派に譲歩して一部の表現が修正される見通しとなった。

 ただ、導入を求める機運はこれまでになく高まっているといえるだろう。自民党内でも推進派が菅義偉首相に導入を“直訴”するなど、かつてない動きが出ている。連立を組む公明党は自民党に対し、容認するよう求めている。制度の具体化に向けて、国会で議論を進める時である。

 民法750条は、結婚した男女は結婚時に定めた夫または妻の姓を名乗ると規定しているが、厚生労働省によると約96%は女性の側が改姓する。夫婦同姓を義務づけているのは世界でも日本だけといわれ、女性差別だとして国連女性差別撤廃委員会は日本政府に是正を勧告している。

 選択的夫婦別姓は「選択的」の言葉が示すように別姓を選びたい人は夫婦別姓にでき、これまで通り同姓にしたい人は夫婦同姓を選べる制度である。法制審議会が1996年に答申した民法改正案要綱に盛り込まれたが、伝統的な家族観を重んじる自民党が強く反対し、法案提出に至らないまま四半世紀近くが過ぎた。

 2015年には最高裁が、夫婦別姓を認めない民法の規定について憲法に違反しないという判断を初めて示す一方、「国会で論じるべきだ」と立法による解決を促した。

 国会での議論の進展はなかったが、国民の理解は広がっているようだ。内閣府の調査では制度導入を容認する人の割合は17年に過去最高の42・5%となり、反対の29・3%を大きく上回った。

 さらに今年10月、早稲田大教授と市民団体がインターネットで全国7千人を対象に行った調査では、「自分は夫婦別姓がよいが、他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」と「自分は夫婦同姓がよいが、他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」を合わせ、7割が選択的夫婦別姓に理解を示した。多くの人が、同姓と別姓の夫婦が共存する社会を寛容に受け止めようとしているのではないか。

 こうした世論を反映するように近年、地方議会でも導入を求める意見書を可決するところが増えている。市民団体のまとめでは、これまでに約160の議会に上り、今年は倉敷市議会、総社市議会などが可決したという。

 「改姓を避けるために結婚を諦めている」「事実婚では子どもが持ちづらい」…。政府が男女共同参画基本計画案の策定に向けて実施した意見公募には、当事者の切実な声が寄せられた。不利益を受けている人の声を聴き、実態を踏まえて国会は動くべきだ。



【夫婦別姓】選択の自由を認める時だ(2020年12月11日配信『高知新聞』-「社説」)

 「選択的夫婦別姓」を巡り、政府や自民党で議論が続いている。

 推進派は、政府の男女共同参画基本計画案に導入に前向きな表現を盛り込もうとした。しかし反対派の巻き返しで大幅に削除される方向だ。

 1996年に法制審議会が制度導入を答申して四半世紀近くがたつ。かつて「反対」が多数派だった世論は、今や「賛成」が上回っている。国民の理解が広がっている現状を踏まえ、法改正に向けた議論を加速させなければならない。

 内閣府の2017年の世論調査によれば、制度導入に伴う民法改正に賛成(42%)が反対(29%)を上回った。先月公表された60歳未満の成人男女を対象にした7千人規模の民間調査でも、制度に理解を示す人は7割に達した。とりわけ結婚が視野に入る20~30代の賛成率が男女とも高い。

 現行ではどちらかの姓に変えなければならないため、法律婚に踏み切れず事実婚を選ぶ人たちの大きな理由になっている。「少子化の一因になっている」との指摘もある。改姓の問題に直面する若い世代の意見は重視する必要があるだろう。

 自民党内の賛否は割れている。

 反対派は「夫婦別姓を認めたら家族の絆が壊れる」「孫とおじいちゃんで墓に違う名前が刻まれるのか」などと反発。「旧姓の通称使用の拡大で対応すべきだ」などと長年、主張してきた。

 とはいえ、夫婦同姓を法律で義務付けている国は日本以外にないとされる。別姓を認めている他国が日本と比べて、家族の絆に問題があるとは到底思えない。

 日本で改姓している96%は妻だ。国連の委員会からも再三にわたって、「差別的な規定」と撤廃を要請されていることを重く受け止めなければならない。

 確かに最高裁は15年、民法の夫婦同姓規定を「合憲」と判断してはいる。しかし裁判官15人のうち、女性3人全員を含む5人は「違憲」とした。判決は「制度の在り方は国会で論ぜられ、判断されるべきだ」とも促している。

 にもかかわらず、議論を進めてこなかった政府や国会の対応は怠慢と言われても仕方あるまい。

 この問題は、家制度への考え方や家族観によって意見が違うだろう。ただし、選択的夫婦別姓は夫婦同姓を選ぶ人の権利も保障している。国民それぞれの思いをかなえるための選択肢として、夫婦別姓の導入を進める時である。

 菅義偉首相は01年、自民党内の議員有志が選択的夫婦別姓の推進を党執行部に求めた際、現在、法相を務める上川陽子氏らとともに名を連ねた。「不便さや苦痛を感じている人がいる以上、解決を考えるのは政治の責任だ」と、導入に前向きな発言もしている。

 婚姻や家族の在り方は多様化している。菅首相には社会の変化と向き合い、時代に即した制度見直しを進める責任があろう。





選択的夫婦別姓 社会の現状を踏まえ制度設計を(2020年12月9日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 夫婦が望む場合、結婚後もそれぞれ結婚前の姓を名乗ることを認める選択的夫婦別姓。自民党内でこの制度を巡る賛否の議論が活発化している。政府が近く閣議決定する新たな男女共同参画基本計画にどう盛り込まれるかが、焦点になっているためだ。基本計画は今後5年間の女性政策の指針となる。

 働く女性が増える中、仕事への支障などを理由に、姓を変えない事実婚を選ぶ人が少なくない。結婚をためらい、少子化の一因になっているとの指摘もある。別姓導入は、若い世代を中心に認めてほしいという声が強く、政府が掲げる女性が活躍できる社会実現に欠かせない制度といえる。基本計画には踏み込んだ文言を明記し、制度の具体化を急ぐべきだ。

 選択的夫婦別姓は、法制審議会が1996年に答申した民法改正案要綱に盛り込まれたが、伝統的な家族観を重んじる自民党が強く反対。その後も導入を模索する動きはあったものの、法案提出には至らなかった。

 しかし時代の流れに伴い党内も抵抗感は薄らいでいる。導入に積極的な意見も珍しくない。連立を組む公明党も自民に対し容認するよう求めている。

 一方で自民保守層に異論が根強いのも確かだ。夫婦別姓は家族の崩壊につながると反対する人もいる。同姓の方が一体感を持ちやすいとの心理は分からなくはないが、不便さや、生きづらさを感じる人がいる状況をいつまでも放置してはなるまい。

 早稲田大の棚村政行教授と、市民団体が10月に実施したインターネット調査(60歳未満の成人男女、7千人が回答)によると、70・6%が夫婦別姓に理解を示したという。自分も、他の夫婦も同姓であるべきだとする回答は14・4%。内閣府の2017年の世論調査でも賛成が42・5%で、反対の29・3%を上回っている。国民の理解は広がっていると見るべきだろう。

 民法は夫または妻の姓を名乗ると規定するが、実際は女性側の改姓がほとんどだ。海外では女性の権利を守る運動が広がり義務化の撤廃が進んだ。現在では日本以外に確認できないとされる。国連女性差別撤廃委員会は、夫婦別姓を認めないのは女性差別だとして日本政府に是正勧告している。

 5年前、最高裁は現行規定を「違憲ではない」と初判断したが、改姓した女性がアイデンティティーの喪失など不利益を受けることを認めている。さらに「制度の在り方は国会で論ぜられるべきだ」と立法府による改善の取り組みを促した。今が重い腰を上げるときである。

 導入に前向きな発言を過去にしてきた菅義偉首相のリーダーシップにも期待したい。先の臨時国会でもそのことを問われ、「申し上げたことには責任がある」と明言した。言行一致が求められる。議員一人一人もイデオロギーの対立にせず、国民の切実な困り事を解決する立場で意見集約してもらいたい。





「夫婦別姓」案 家族の意義考えぬ暴論だ(2020年12月7日配信『産経新聞』ー「主張」)

 政府の「男女共同参画基本計画」原案に、選択的夫婦別姓制度の推進派の意見を強く反映した記述があることが分かった。結婚した夫婦が同じ姓を名乗る現行制度について「少子化の一因」とするなど、極めて問題のある内容だ。

 夫婦同姓は、日本の伝統的な家族観に基づき、社会に広く受け入れられている。最高裁も合憲の判断を示している。制度を変える必要はない。

 男女平等社会推進のための次期基本計画について検討されており12月中旬にも閣議決定される。

 原案では選択的夫婦別姓制度に関する記述で「婚姻前の氏(姓)を引き続き使えないことが婚姻後の生活の支障となっているとの声もある」「国際社会で夫婦の同氏を法律で義務付けている国は、日本以外に見当たらない」などとしている。別姓推進派の意見に偏っていると言わざるを得ない。

 「実家の姓が絶えることを心配して結婚に踏み切れず少子化の一因になっている」と言う。だが結婚を躊躇(ちゅうちょ)させる要因は、姓の問題だけではなかろう。別姓にしたからといって少子化が解決するのか疑問である。

 姓の選択の幅が広がると安易に考えるのは誤りだ。子供をどちらの姓にするかなど、混乱も当然予想される。4日の自民党の合同会議でも夫婦別姓の記述に反対意見が相次いだのはもっともだ。

 最高裁は平成27年、夫婦が同じ姓を名乗る民法の規定について合憲とした。夫婦が同一姓にすることは社会に定着し、「家族の呼称として意義がある」と認めた。

 判決の中では、姓を変えることの不利益は、旧姓の通称使用が広まることで「緩和され得る」とした。パスポートの旧姓併記のほか、旧姓を通称使用できる企業も増えている。夫婦同姓を堅持し、旧姓使用のさらなる拡充などを検討するほうが現実的だ。

 夫婦同姓は男女差別を助長したり、姓が変わるからといって個人の人格を傷つけたりする制度ではないことも明確にされている。家族をめぐる制度は、各国の歴史や文化に根差し、それを無視した国際比較も意味がない。

 夫婦同姓は、責任を共有し、子供を育てていく家族の一体感につながる。それを崩す道理はない。コロナ禍で家族が協力すべき場面は多い。児童虐待も絶えない。家族の絆こそ大切にするときだ。





同姓になったのは長い歴史の中では最近のことだ(2020年12月6日配信『朝日新聞』-「北斗星」)

 一人娘の親と知り合いという人から、その親が娘の結婚相手を探していると聞いたことがある。名字を変えて婿養子にならなくてもいいから、その親元で暮らしてくれる相手がいないかという。漫画「サザエさん」のマスオさんのような人が望みなのだろう

▼希望通りの人はなかなか見つからないかもしれないが、親の切実な思いが感じられた。代々受け継いだ名字を残したいと考える人もいて、一人っ子同士の場合など、改姓の必要が結婚の障害になることもある。働く女性が増える中、姓が変わるのは仕事を続けるのに不都合との声もある

▼誰もが姓を持つようになったのは明治時代。夫婦同姓を定めた旧民法が1898(明治31)年に成立するまでは、女性が結婚後も実家の姓を名乗る別姓の通達が出されていた。同姓になったのは長い歴史の中では最近のことだ

▼結婚後も姓を変えないことを選べる「選択的夫婦別姓」の制度化を求める声が高まっている。自民党内でこの問題を巡る本格的議論が始まった。推進派と反対派の意見の隔たりは大きいようだ

▼菅義偉首相はかつて選択的夫婦別姓に前向きな発言をしていたと先の国会で指摘され、「政治家として申し上げたことには責任がある」と答弁した。9月の党総裁選では慎重な姿勢を示していただけに意外だった

▼自民党の推進派は「議論を進める力になる」と評価する。前例踏襲の打破を掲げる首相は今後、夫婦同姓という前例にどう対処するのだろうか。





今こそ夫婦別姓の選択肢を若者に示そう(2020年12月2日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 困っている人がいれば、寄り添い、解決策を探る。当たり前のことだろう。なのに長年にわたり放置されてきた問題がある。

 働く女性が増えるなか、結婚前の姓を使いたいという声も高まっている
夫婦が希望すれば結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」制度の導入だ。若い世代を中心に認めてほしいとの声は強い。政府・与党は今こそ前に進むべきだ。

 夫婦別姓は古くて新しい課題だ。1996年には法制審議会が導入するよう答申し、2015年には最高裁が国会での議論を促した。だが変わらなかった。

 働き続ける女性が増えるなか、結婚前の姓を引き続き使えないために仕事に支障が生じる、との声は多い。ひとりっ子が増え、実家の姓を残したい、という希望も強い。女性活躍や少子化対策の観点からも、見逃せない問題だ。

 議論が活発になったきっかけのひとつは、新しい男女共同参画基本計画づくりだ。政府の会議は11月、夫婦別姓について踏み込んだ議論を期待するとの答申をまとめた。計画を近く閣議決定する。

 計画にどこまで盛り込むか。今後どう具体化するか。自民党では賛否それぞれの動きが活発で、このほど本格的な議論が始まった。公明党の山口那津男代表は「社会の変化を直視し、時代にあった判断をすべきだ」と述べている。

 国民の意見はさまざまあろう。とりわけ真摯に受け止めたいのは若い世代の声だ。内閣府の17年の調査では、選択的夫婦別姓導入に賛成する人は18~29歳、30代でいずれも5割を超えた。40代、50代でも5割近い。

 反対意見の代表例は「家族の一体感を損ねる」だ。しかし同姓であることだけが、家族の絆の源ではないだろう。さまざまな家族のあり方、多様な価値観を尊重する社会であれば、夫婦にも子どもにも悪影響は生じないはずだ。

 選択的夫婦別姓は、決してすべての夫婦に強いるものではない。あくまで希望する人に、新たな選択肢として示すものだ。菅義偉首相はかつて導入に賛意を示した。「政治家としてそうしたことを申し上げてきたことには責任がある」と国会で述べたことも、議論の大きなきっかけになっている。

 法制審からすでに四半世紀近くがたった。夫婦同姓を法律で義務づけているのは、主要国でも異例だ。時代の変化、家族の変化にあわせて法制度も不断に変わっていくべきだ。今後の道筋をつけてほしい。





選択的夫婦別姓 社会の現況見直し導入を(2020年12月1日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 夫婦が希望すれば、結婚後もそれぞれの姓を名乗ることができる「選択的夫婦別姓制度」を巡る議論がようやく前に進みそうだ。

 伝統的な家族観を重んじる保守派の反対で制度改正に消極的だった自民党が10月、党内の女性活躍推進特別委員会に「夫婦の氏の在り方」に関する作業部会を設け、議論を活発化させている。

 11月には、菅義偉首相が参院予算委員会で、かつて自身が推進の立場で発言したことについて「責任がある」と明言した。橋本聖子男女共同参画担当相も記者会見で「深刻な少子高齢化を食い止めるために、非常に重要で配慮すべきだ」と述べ、制度導入に前向きな姿勢を示した。

 改姓を強いられることで、仕事上の不利益を被ったり、自己喪失感を覚えたりする人たちがいる。多様な選択を尊重する考えは社会に広がりつつある。政府と国会はこうした現況を直視し、今度こそ制度導入へとかじを切るべきだ。

 民法750条は、夫婦は婚姻の際、夫か妻の姓を名乗ると規定している。しかし現状では96%が夫の姓を選択。国連の女性差別撤廃委員会は差別規定に当たるとして、日本政府に改正するよう繰り返し勧告している。

 改正に向け、法相の諮問機関である法制審議会が別姓を選べるようにする民法改正を答申したのは1996年のことだ。政府はその年と2010年にも改正案を策定したが、いずれも与党保守派らの反対で国会に提出できなかった。その後は目立った動きはない。

 この間、女性の社会進出などを背景に、民法の規定は違憲として国に賠償を求める訴訟が相次いでいる。最高裁は15年の判決で合憲と判断する一方で、「制度の在り方は国会で論じるべきだ」と付け加えた。立法による解決を促した形だ。

 政府が今年8~9月に実施した男女共同参画基本計画策定に伴う意見公募では「改姓を避けるために結婚を諦めた」「事実婚を選んだが子どもを持ちづらい」といった声が寄せられた。議論を棚上げにした結果、こうした状況が生まれたとすればその責任は大きい。

 法改正が進まない中、多くの企業や官庁で旧姓を使うことが可能になった。住民票やマイナンバーカード、運転免許証への旧姓併記も認められている。ただ、改姓に伴う不利益を一定程度は緩和できても、根本的な解決策ではないことを確認しておきたい。

 内閣府による17年の世論調査では、選択的夫婦別姓制度に賛成する回答が42・5%に達し、反対の29・3%を大きく上回った。早稲田大と市民団体が先日発表した調査では、7割以上が別姓への理解を示した。制度導入の環境は整いつつあるとみるべきだろう。

 夫婦別姓を巡っては、子どもの姓をどうするかなど議論すべき点も残されている。夫婦同姓を義務付けている国は日本だけという。どうすれば国民の要望に応えられるかという視点で議論を進めてもらいたい。



選択的夫婦別姓(2020年12月1日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆動きだした議論歓迎したい◆

 ようやく、選択的夫婦別姓制度を巡る議論が動きだした。希望すれば結婚後も別々の姓を名乗れる制度を巡り「伝統的な家族観を壊す」と保守派の反発が根強かった自民党内で女性活躍推進特別委員会が新設され、その下に「夫婦の氏の在り方」を議論する部会が置かれた。

 11月に菅義偉首相は、自身が以前、制度導入に前向きな発言をしたことを指摘され「申し上げたことには責任がある」と答弁。橋本聖子男女共同参画担当相も「深刻な少子高齢化を食い止めるために、非常に重要で配慮すべきだ」と述べた。

 法相の諮問機関・法制審議会は1996年、夫婦同姓を定めた民法の改正を答申。政府はその年と2010年に改正案を準備したが、いずれも自民保守派の反対で提出を断念した。女性の社会進出が進む中、民法の規定は違憲として国に賠償を求める訴訟が相次ぎ、最高裁大法廷は15年12月の判決で合憲の判断を示した。その後も、こうした訴訟は後を絶たない。

 互いを尊重して別姓を望み、事実婚を選ぶ男女は少なくない。しかし新型コロナウイルスの感染が広がりを見せる中、選択的夫婦別姓の導入を目指す市民団体には、どちらか一方や子どもが感染した場合、法的な家族ではないため、入院や治療の承諾などの手続きに関われなくなるかもしれないといった不安の声が寄せられているという。

 さらに相続や親権を巡る問題など、悩みは尽きない。15年最高裁判決は女性が改姓で自己喪失感などの不利益を受けると認めながらも「旧姓の通称使用が広まれば、一定程度は緩和できる」とした。確かに近年、多くの企業や官庁で旧姓を使い働けるようになった。しかし、勤め先や契約相手の意向によって認められないこともある。

 裁判官15人のうち女性3人は全員が反対意見を出して、改姓が原因で結婚をためらう人もいると指摘。「一定程度緩和されるからといって、夫婦が別の氏を称することを全く認めないことに合理性が認められるものではない」などと述べた。

 この判決は夫婦別姓について「国会で論じるべきだ」とし、それ以降も各地の地裁、高裁による別姓訴訟判決は国会の議論を促していた。

 内閣府による17年の世論調査では、選択的夫婦別姓制度に賛成が42・5%に達し、反対の29・3%を大きく上回った。多くの女性が結婚後、改姓することによってどんな負担が強いられるのか、個人の尊厳と両性の平等に反していないか―などの論点で検討を進めてほしい。女性活躍を絵に描いた餅に終わらせないためにも、新たな制度導入を見据え議論を深めたい。





選択的夫婦別姓 導入への議論進めたい(2020年11月30日配信『中国新聞』-「社説」)

 夫婦が望めばそれぞれが結婚前の姓を名乗ることも認める選択的夫婦別姓について、導入を求める機運が再燃してきた。働く女性が増え、家族の在り方も多様化している。時代に合わせた議論を進めてもらいたい。

 政府の法制審議会が導入を含めた法改正を答申して四半世紀近くになる。伝統的家族観を重んじる保守層の反対が強く、これまでは実現できなかった。

 しかし今回は、橋本聖子・男女共同参画担当相が前向きな姿勢を示している。年内策定を予定する、来年度からの男女共同参画基本計画に、実現に向けて検討を進める方針を盛り込む考えを繰り返し述べている。

 政府が今月開いた男女共同参画会議で、有識者会議の佐藤博樹会長が選択的夫婦別姓について「もう一段踏み込んだ議論を期待する」と菅義偉首相に要請した。首相自身もかつて賛成を表明していた。今国会でも「政治家として、そうしたことを申し上げてきた責任がある」と強調している。

 国民の多くも受け入れようとしているようだ。60歳未満の成人男女の70・6%が理解を示した―。早稲田大教授と市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」が10月にインターネット調査して、全国7千人の回答を得た。自分は夫婦同姓を望み「他の夫婦も同姓であるべきだ」と、同姓に固執する回答は14・4%にとどまった。同じ姓でないと家族の一体感が薄れる―といった意見はさほど広がってはいないのではないか。

 夫婦同姓は、民法750条で結婚後にどちらかの姓を名乗るよう規定されている。実際に姓を変える96%が女性のため、時代遅れの女性差別との批判がやまない。「姓を変えることで今までの自分が失われるようだ」といった不満の声が漏れる。仕事への支障などを理由に、姓を変えない「事実婚」を選ぶ人も少なくない。

 民法の規定は差別的だとして、政府は国連女性差別撤廃委員会から再三廃止を求められてきた。しかし腰は重かった。

 この規定が憲法違反かどうかを巡る訴訟の上告審判決で、最高裁は2015年、合憲との初判断を示したことも影響していよう。一方で、裁判官15人のうち女性判事3人全員を含む5人が「違憲」と判断した。しかも判決は夫婦別姓の制度を議論するよう国会に促している。

 最高裁の判決後も、選択的夫婦別姓に絡む国家賠償請求訴訟が広島地裁などで起こされ、係争中だ。広島高裁は9月、「合憲」との判断を示して請求を退けた一審の広島地裁判決を支持した。しかし最高裁判決以降、内閣府調査で選択的夫婦別姓制度への賛成が反対を上回り、全国の地方議会でも制度導入の審議を求める意見書が出ていると指摘。「謙虚に耳を傾け、真摯(しんし)な議論が期待される」と国会に注文を付けた。議論せず放置し続けることはもう許されまい。

 制度の導入や議論を求める意見書を出した地方議会は、全国陳情アクションのまとめでは近年増えている。これまで広島や三原、総社、倉敷の各市議会など160件近くに上るという。

 法務省によると、夫婦同姓を義務化している国は日本だけ。子どもの姓はどうするか―など詰めるべき点もあるが、導入に向けた議論は待ったなしだ。



[選択的夫婦別姓] 制度導入へ動きだす時(2020年11月30日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 夫婦が希望すればそれぞれ結婚前の姓を名乗れる「選択的夫婦別姓」への支持が高まりを見せている。

 市民団体「選択的夫婦別姓・全国陳情アクション」などが60歳未満の成人男女へ行ったインターネット調査で、自分がどちらの姓を選ぶかは別にして「他の夫婦は同姓でも別姓でも構わない」とする人は合計で7割に上った。回答者が7千人に及ぶこれまでにない大規模調査だ。

 「自分は夫婦同姓がよい。ほかの夫婦も同姓であるべきだ」との意見は14・4%にとどまった。

 地域別では、沖縄が選択的夫婦別姓に「賛成」の割合が最も高かった。

 現状は結婚するカップルの96%が夫の姓を選んでいる。つまり改姓するのは女性が圧倒的に多い。晩婚化でキャリアを積んでから結婚する人も増えているのに、姓が変わることで仕事の実績や人脈が分断されてしまう。そんな不安を抱える女性は少なくない。

 名前は個人の尊厳にも関わる。もちろん相手と同じ姓を名乗ることに夫婦の絆や幸せを感じる人もいるだろう。一方で慣れ親しんだ名前が変わることは自己喪失感につながりかねず、互いを尊重するために事実婚を選ぶカップルもいる。

 最近は通称として旧姓が使える職場が増えてきた。住民票やマイナンバーカード、運転免許証に旧姓を併記できるようにもなった。ただ、旧姓が契約や手続きに使えるかどうかは組織によって異なる。両方の姓を使い分ける必要があるなど不利益の解消には不十分だ。

■    ■

 「伝統的な価値観を壊す」としてかねて夫婦別姓への慎重姿勢が強かった自民党内で最近、議論が活発化している。

 党の女性活躍推進特別委員会が菅義偉首相に制度への対応を“直訴”するなどこれまで見られなかった動きがある。一方、保守系議員ら反対派も議員連盟を発足させた。双方の主張の隔たりは大きい。

 だが、政府が新たな男女共同参画基本計画の策定に向け実施したパブリックコメント(意見公募)に目を向けてもらいたい。

 「改姓を避けるために結婚を諦めている」「事実婚では子どもが持ちづらい」など選択的夫婦別姓の導入を求める意見が約400件寄せられた。当事者の切実な思いが伝わってくる。

 菅首相は6日の参院予算委員会で、自身がかつて選択的夫婦別姓に前向きな発言をしたことを問われ「政治家として申し上げたことには責任がある」と答弁した。ぜひ責任を果たしてほしい。

■    ■

 そもそもこの問題は、法制審議会が1996年に民法の改正を答申したもののたなざらしにされてきた。

 2015年の最高裁判決は、夫婦別姓を認めない民法の規定を合憲と判断した一方で、選択的夫婦別姓は「国会で論じるべきだ」とした。

 選択的夫婦別姓の導入は時代の要請だ。来月閣議決定される第5次男女共同参画基本計画に盛り込むとともに、国会は制度導入へ動きだすべきだ。





選択的夫婦別姓(2020年11月25日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 免許証に旧姓が併記できるようになったと知り昨年12月、免許更新時に戸籍謄本を持参した。しかし当てが外れた。理由は旧姓が併記された住民票かマイナンバーカードが必要とのこと

▼事前に必要書類を確認していなかったこちらに落ち度はある。旧姓を示す戸籍があれば十分だと思い込んでいた。免許証に旧姓を記載する前に、まず住民票の変更が必要になるとは、二度手間でしかない

▼結婚で姓を変えた側は銀行、免許証、クレジットカード、パスポートなど煩雑な手続きが発生する。結婚当時、長年親しんできた名字が変わる寂しさもあって複雑な思いだった

▼夫婦が望めば旧姓を名乗ることを認める選択的夫婦別姓について先月、市民団体などがネットで調査した。回答者自身が同姓、別姓のいずれを希望するかにかかわらず7割が理解を示した

▼鎌倉幕府をつくった源頼朝の妻は北条政子。徳川時代は農民、町民は名字はなかった。1876(明治9)年、妻は結婚しても旧姓使用とされたが、98年から夫婦同姓へ。わずか120年余の歴史

▼旧姓併記した住民票を持参し、警察署に出向けば免許証裏面に旧姓が記載できるという。夫婦別姓が認められれば、片方だけが役所と警察署をはしごせずに済む。菅義偉首相は過去に選択的夫婦別姓に理解を示す発言をしている。機は熟しつつあるのではないか。





選択的夫婦別姓 議論深め実現めざす時(2020年11月24日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 国会で議論を深めて実現を目指す時だ。

 希望する夫婦が結婚後もそれぞれの姓を名乗れる「選択的夫婦別姓制度」である。

 11日に開かれた政府の男女共同参画会議で、有識者会議の佐藤博樹会長が菅義偉首相に「踏み込んだ議論を期待する」と要請。橋本聖子男女共同参画担当相も国会などで導入に向け、議論を進める姿勢を示している。

 菅首相はかつて選択的夫婦別姓に前向きな発言をしていた。今月の参院予算委員会では「政治家として申し上げたことには責任がある」とも答弁している。

 自民党内にも作業部会が設置され、議論が活発化している。与野党で協議を深め、国民が望む制度に変えていくのが政治の責任だ。

 民法750条は、夫婦は婚姻時に夫、妻どちらかの姓を名乗ることを規定している。厚生労働省の調査では、女性の96%が改姓しており、女性差別との批判が強い。

 最高裁は2015年の判決で、この規定は「憲法に違反しない」と判断した。一方で「制度の在り方は国会で論じるべきだ」として、立法による解決を優先する立場を示した。今年に判決が出された同様の訴訟でも、広島高裁や東京高裁が国会の議論を求めた。

 法制審議会が、別姓を選べるようにする民法改正を答申したのは1996年だ。議論を先送りしてきた政府と国会の責任は重い。

 背景には「別姓を認めたら家族の絆が壊れる」という保守系議員の根強い反対がある。保守層を支持基盤とした安倍晋三前首相も「慎重な検討が必要」としただけで議論は進めなかった。

 夫婦同姓は明治期に家制度の下で定められた。個人の尊重を根幹に置く現憲法の趣旨に合わないことは明らかだ。

 世論は変わりつつある。内閣府の17年の世論調査では、選択的夫婦別姓について賛成が42・5%を占め、反対の29・3%を大きく上回った。早稲田大と市民団体が今月発表した調査でも、7割以上が別姓に理解を示した。

 仕事への支障などを理由に姓を変えない事実婚を選ぶ人も少なくない。夫婦別姓は少子高齢化を食い止める方策にもなる。一方で子どもの姓をどうするか、など議論するべき点も残っている。

 法律で夫婦同姓を義務付ける国は日本以外には確認されていない。国連の女性差別撤廃委員会は夫婦同姓制は差別規定として、改正するよう繰り返し日本政府に勧告してきた。これ以上、議論せず放置することは看過できない。





夫婦別姓(2020年11月20日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 「お願いがあるのよ あなたの苗字になる私」。シンガー・ソングライターの平松愛理さんが1992年に出した「部屋とYシャツと私」の出だしの歌詞である。結婚を前に相手に気持ちを伝える女性の歌。

 「あなたの姓になる」という、結婚の遠回しな表現。だがそれは日本の話。この歌がヒットしたころ、欧州の多くの国ではすでに「夫婦の姓の選択」が自由化されていた。75年の国際婦人年、79年の国連の「女性差別撤廃条約」の採択などが契機になったという。

 大野菜穂美さんの「女の民法」という著書に総理府(現内閣府)が行った当時の調査結果がある。「夫婦別姓を認めるか」の問いに、87年は「はい」が13%で「いいえ」が66%。それが90年になると「はい」が30%で「いいえ」が52%。3年で容認派がかなり増えている。

 それから30年。早稲田大の教授と市民団体によるインターネット調査の結果が先日、発表された。それによると、夫婦別姓に理解を示した人は70・6%に上ったという。今月に入ってからは、橋本聖子男女共同参画担当相が会見で、また菅義偉首相が参院予算委で別姓に対して前向きな発言をした。

 この問題が、今後5年間の女性政策をまとめた「第5次男女共同参画基本計画」に盛り込まれるか注目されるが、今も反対の声は根強くある。これから議論を重ねていけばいいが、少なくとも問題を先送りや棚上げにできないところまできているのは確かだ。





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