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(論)GoTo事業(見直し)に関する論説(2020年11月20・21・22・23・24・26・27・28・29・12月・1・2・3・4・8・9・10・12・13日)

コロナ対策 GoToより医療支援だ(2020年12月13日配信『琉球新報』-「社説」)

 なぜ、専門家の提言に耳を傾けず、かたくなに特定の政策にこだわるのか。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会は、感染者が急増するステージ3相当地域を、さらに3段階に分け、拡大が継続する地域内では外出自粛や観光支援策「Go To トラベル」の一時停止を求める提言をまとめた。

 しかし、菅義偉首相はGoToトラベルの一時停止を否定し「まだそこは考えていない」と述べた。政府はGoTo事業に3119億円の追加支援を閣議決定した。
 今必要なのは事業へのこだわりではない。感染拡大で疲弊している医療機関や医療従事者への支援強化である。

 政府は11日閣議決定した答弁書で、GoToトラベルが感染を広げたとの見方を否定した。しかし、専門家の知見は政府見解と正反対である。今回の感染の再々拡大は、東京都を事業の対象地域に加えた後に起きている。

 日本医師会の中川俊男会長はGoTo事業と感染拡大の関係について「エビデンス(証拠)がなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いない」と指摘している。東大などのチームの調査によると、事業を利用した人は、利用しなかった人に比べ感染を疑わせる症状を多く経験していた。

 内閣官房の調査報告(11月)に長距離移動のリスクが報告されている。東京大学の大沢幸生教授の分析によると「個々の人が行動自粛をやめてコミニュティー外との接触を増やすと収束せずに感染拡大が継続して発生」するという。明らかに事業と感染拡大の因果関係を示している。

 しかし、経済失速を避けたい菅政権は及び腰で、地域を限った小手先の見直しに終始している。

 GoTo事業を担当する国土交通省内でも「キャンセル料補填(ほてん)で巨額な予算が泡のように消えている。感染が落ち着くまでいったん立ち止まった方がいい」(幹部)と停止論が漏れるという。

 政府は11月25日に「今後3週間が勝負」と位置付けて対策強化を打ち出したものの、新規感染者数の減少につながっていない。

 厚生労働省が発表した新型コロナウイルス感染症患者向けの病床使用率(9日時点)によると、沖縄を含む22都道府県でステージ3(感染急増)の指標の一つとする25%以上だった。北海道、東京など5都道府県は、別の指標(感染ピーク時の確保想定病床や重症者用病床の使用率50%以上)で、ステージ4(爆発的感染拡大)の目安に達した。全国の広い地域で医療現場への負担が増している。

 政府の最高責任者には状況に応じて柔軟に政策決定することが求められる。首相は自身の肝いりの事業にこだわるあまり、数字を見て事実を把握し科学的な思考で判断することができなくなっているのだろうか。由々しき事態だ。





「GoTo」見直し 専門家の言を聞くときだ(2020年12月12日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルス対策をめぐる専門家会合の提言に、政府は耳を傾け取り入れるべきだ。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会(尾身茂会長)が、感染が急拡大するステージ3相当地域を状況により3段階に分け、拡大が続く地域内での外出自粛や、観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止を求めた。

 厚生労働省に助言する専門家組織(脇田隆字座長)は、国や自治体の感染抑止対策について「成功しているとは言い難い」とする分析を示した。

 その一方で、菅義偉首相は、インターネット番組で、年末年始を含むトラベル事業の一時停止を「まだそこは考えていない」と否定した。

 専門家組織は、20~50歳代の世代で移動歴のある人による二次感染が、その他の世代と比べ多いという分析も示した。人の動きを抑えるべき局面であるのに、国民に対して逆のアナウンス効果のあるトラベル事業に政府がこだわるのは疑問だ。

 最近の1日当たりの全国新規感染者数は最多を更新している。10日の東京は初めて600人を超えた。さらに懸念されるのは、北海道旭川市や大阪府の一部などで医療提供体制が極めて厳しい状態になったことだ。コロナ患者用の病床を確保しても、そこで働く看護師らの手配が間に合わず、自衛隊が期間を区切って看護官らを派遣する事態となった。局地的に医療崩壊の状態に陥ったといえる。

 全国の自衛隊病院の多くがコロナ患者を受け入れ、地域の医療にも従事している。自衛隊からの大規模、長期の看護官派遣はできない。政府と自治体は、地域の医療体制を守る具体策を急ぎ講じなければならない。真っ先に取り組むべきは、人の動きを一時的に抑え感染者数を減らすことだ。

 医療体制の逼迫(ひっぱく)はコロナの分野にとどまらない。すでに、その他の医療へもしわ寄せが生じ始めている。予定された手術や救急受け入れの制限をせざるを得ない例が出てきている。年末年始に向け、このような状況がさらに広がれば、経済活動にも大きな支障をもたらす。

 西村康稔経済再生担当相は会見で「専門家の皆さんと強い危機感を共有した」と語った。菅首相もそうであることを行動で示してもらいたい。



GoTo事業 全国的に一時停止を(2020年12月12日配信『東京新聞』-「社説」)

 新型コロナ感染拡大に歯止めがかからない中、「Go To事業」の見直し論が強まっている。自治体からは懸念の声が噴出しているが国の動きは極めて鈍い。事業の一時停止を決断する潮時だ。

 GoTo事業のうちトラベルについては大阪市、札幌市が一時除外としたり、東京都が65歳以上に自粛を求めるなど規制措置を実施している。イートでも都や愛知、神奈川、千葉、埼玉、茨城各県などが規制に踏み切っている。

 国の感染症対策分科会も感染状況が厳しい地域では直ちにトラベルを一時停止すべきだとの姿勢を鮮明にした。

 事業と感染増の因果関係を示す根拠はまだ明示されてはいない。ただ国民の命に直結した問題だ。経済を優先させる施策が、感染の急拡大に関連しているとの疑念が晴れない以上、一時停止に踏み切るべきではないか。

 さらに一時停止する場合、自治体に判断を委ねるのではなく、国の指導の下、全国規模で一斉に実施することを求めたい。感染が深刻な地域だけが受け入れを停止しても、別の地域で観光客が増加する恐れがある。一定期間、全国一律で止め、感染状況を見ながら再開時期を模索する手法が経済的にも打撃が少ないのではないか。

 だが菅義偉首相は依然、一時停止に否定的だ。事業が政権の目玉政策であると同時に、危機に直面する観光産業への配慮もあるのだろう。確かにトラベルは、苦境に立つ旅行会社や観光地のホテル、土産店などの経営を下支えする役割を担う。

 しかしイートも含めこれらの事業はあくまで経済的に余裕のある人々の消費を促すことで資金を循環させる経済刺激策だ。感染の急拡大期にはいったん止めて、財政資金は直接的な現金給付などに切り替えるのが妥当だ。

 事業の効果が一部観光地や大規模ホテル、レストランなどに限られているとの批判も根強い。民宿やビジネスホテルの倒産や街の小さな飲食店の閉店も後を絶たない。支援の対象が一部に偏り、制度の修正が必要なことも明らかだ。

 ブレーキとアクセルを同時に踏むような国の政策は極めて分かりにくい。その中途半端な対応が誤ったメッセージとして国民に伝わり、油断の温床になっている面も否定できない。

 事業をこれまで通り続けるのなら、菅首相がその理由を直接、国民に説明することが不可欠だ。





丼勘定(2020年12月10日配信『福島民友新聞』-「編集日記」)

 カツ丼や牛丼を盛る大きな器でお金などを管理し、細かい収支計算をしないから「丼勘定」と思っている人もいるようだ。実は「どんぶり」違いで、丼とはかつて職人らが着ていた腹掛けの前に付いていた大きな袋を意味する

 ▼この袋に小銭や身の回りの物を入れ、無造作に出し入れしたから丼勘定と呼ばれるようになった。キャッシュレスの時代でポケットなどから現金を出す人は減っただろうが、無駄遣いにつながる家計管理は避けたいところだ

 ▼こちらは丼勘定ではないと信じたい。政府は観光支援事業「Go To トラベル」を来年6月末まで延長するため、新たに3000億円を充てる。すでに事業予算は約1兆3500億円に上っている。感染拡大で制限されている地域があるなか、異例の追加投資だろう

 ▼本年度の新規国債発行額はコロナ対策などで初めて単年度で100兆円を突破する見通しだ。国の一般会計当初予算額と同規模の国債を発行する厳しい財政状況で、将来へのつけが心配になる

 ▼消費回復につなげ、経済への影響を抑え込むことも大事だが、事業効果などの緻密な計算が必要だ。コロナ禍で困窮する人、医療現場で奮闘している人の存在を忘れてはならない。





Go To トラベル 政府は一時停止の決断を(2020年12月9日配信『琉球新報』-「社説」)

 もはや躊躇(ちゅうちょ)すべき段階ではない。政府はコロナウイルス感染の拡大を防ぐため、一時停止を含む「Go To トラベル」の抜本見直しに踏み切るべきだ。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」の利用者の方が、利用しなかった人よりも多く新型コロナウイルス感染を疑わせる症状を経験したとの調査結果を東京大などの研究チームが公表した。嗅覚・味覚の異常などを訴えた人の割合は統計学上、2倍の差があり、利用者ほど感染リスクが高いと結論づけた。

 感染拡大地域における人の出入りや感染者との濃厚接触の機会が観光によって増えるのだから、「Go To トラベル」の利用者の方が感染リスクが高いという研究結果は予想の範囲内と言えよう。しかし、政府は両者の関連性を否定してきた。

 菅義偉首相は11月25日の衆院予算委員会で「Go To トラベル」が新型コロナウイルス感染拡大を助長したとの指摘に対して「専門家の提言では、主要な原因とする証拠はない」と反論し、経済効果を強調した。

 今回、「Go To トラベル」と新型コロナウイルス感染拡大の因果関係の一端が示された。研究に参加した津川友介・米カリフォルニア大ロサンゼルス校助教授(医療政策)は調査結果を踏まえ「事業を中止する必要はないと思われるものの、感染拡大が落ち着くまでは一時停止を検討すべきだ」と指摘している。

 政府はこの研究成果と指摘を率直に受け止めるべきだ。その上でこの事業が新型コロナウイルス感染にどのような影響を与えているのか検証し、結論を出すことが求められる。経済効果を強調し、施策の正当性を表明するような態度は改めなければならない。

 政府は8日、新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策を閣議決定した。民間投資を含めた事業規模は73兆6千億円で、「Go To トラベル」を来年6月まで延長する。しかし、多くの国民はコロナ禍のさらなる悪化を危惧している。

 日本総合研究所主席研究員の藻谷浩介氏は、日本では「医療崩壊」が言われ始めており、「病院が赤字にならず、医療関係者が交代で十分に休める体制整備への予算投下の方が、Go Toキャンペーンより優先度は高い」と指摘した。医療体制が逼迫(ひっぱく)する北海道旭川市への自衛隊看護師派遣に照らしても、政府は藻谷氏の指摘を傾聴すべきだ。

 共同通信の全国世論調査で菅内閣の支持率が前回より12・7ポイント下落し、50・3%となった。政府のコロナ対策を「評価しない」が55・5%。「Go To トラベル」は48・1%が全国一律に一時停止すべきたと答えた。政府と国民との乖離(かいり)は明らかだ。

 菅首相は「Go To トラベル」に固執してはならない。コロナ禍を収束させるための決断を急ぐべきだ。





GoToの延長方針 なぜ立ち止まらないのか(2020年12月8日配信『毎日新聞』-「社説」)

 全国で新型コロナウイルスの感染が拡大する中、前のめりに過ぎる対応ではないか。

 観光喚起策のGoToトラベルが、来年6月末まで延長されるという。

 地域によっては医療体制が逼迫(ひっぱく)している。大阪府と北海道へ、自衛隊の医官や看護師を派遣する検討が進んでいるほどだ。

 政府は、なぜ立ち止まろうとしないのか。

 菅義偉首相は「トラベル事業が感染を広げているとの科学的根拠はない」と主張している。

 しかし、政府の専門家組織は、若者や働き盛りの世代の移動が感染を広げているとの分析を示している。無症状のまま感染拡大地域を往来するケースがあるためだ。

 分科会の尾身茂会長は「移動と接触を短期間に集中的に減らすことが必須だ」と訴えている。

 政府は専門家の警告をしっかり受け止め、政策に反映させなければならない。

 そもそも、政府と専門家は、感染が急拡大している地域は支援対象から除外するとの認識を共有していたはずだ。

 しかし、どういう手順で除外するかのルールが不明確なため、国と都道府県が除外の判断を押しつけ合う結果を招いた。

 東京発着の旅行に関しては、高齢者や持病のある人に限って自粛を求めるという中途半端な対応になっている。

 若年層が感染を拡大させているとの分析に照らすと、これでは感染防止の効果に疑問が残る。東京除外を検討すべきだ。

 感染が拡大すれば柔軟に制度を見直す仕組みを整備するとともに、これまでの利用者や旅行先の感染状況を追跡調査し、リスクを見極める必要もある。それなくして、延長はあり得ない。

 観光産業への支援は必要だが、区域を限定して旅行を促すといった選択肢もあるはずだ。

 トラベル事業の延長方針は、旅行のリスクや現状認識に関する誤ったメッセージを送りかねない。来年の東京五輪開催を見据え、それまでの景気の底上げを優先した結論ありきの姿勢なら問題だ。

 感染状況を丹念に分析し、適切にブレーキを踏む仕組みこそが、政府に求められている。





GoTo見直し 迷走の度が過ぎないか(2020年12月4日配信『東京新聞』-「社説」)

 「Go To事業」が混迷の度を深めている。東京都など自治体は事業に危機感を強める一方、政府は期間延長を検討。一貫性を欠く中途半端な姿勢は新型コロナの被害を広げるだけではないのか。

 菅義偉首相と小池百合子都知事が1日会談した。その結果、「GoToトラベル」の東京発着分について、六十五歳以上や基礎疾患のある利用者に自粛を要請することになった。

 そもそも今夏にトラベルが始まった際、感染増加を懸念して都は除外された。今の状況はその当時より深刻化している。このため小池氏は首相に事業の一時停止を求めたが結局、一部自粛要請という形に押し切られた。

 この見直しについては「65歳以上と以下の夫婦の旅行はどうなるのか」「若い世代には旅行に行ってほしいという誤解を与えるのでは」などの疑問が噴出しても不思議はない。政府と都の考え方の違いも鮮明で、トラベルは方向舵(だ)を失っているようにみえる。

 自民党の下村博文政調会長は都知事の行動を「首相にまで行くことか」と批判した。だが国民の命に関わる喫緊の問題について首相と自治体トップが会談するのは当然だ。下村氏の発言は認識が甘いと指摘せざるを得ない。

 GoTo事業は菅首相が力を入れる政策であり継続の意志は固い。苦境に立つ観光産業も10月の国内宿泊数が前月から上向くなど政策効果は出始めている。

 観光のほか飲食関連にも効果があり経済対策として異論はない。ただ実施のタイミングや規模についてはメリハリがなく強い疑問が残る。GoToイートも含め、最も救済が必要な人々に支援が行き渡らず不公平との指摘もある。

 感染拡大を不安視する都など自治体側がブレーキを踏み、経済を優先させる国はアクセルを緩めようとしない。相反した対応は大きな混乱を招き、かえって経済にも一層の打撃を与えることになりはしないか。

 GoTo事業は経済的に余裕のある人々が旅行や飲食をすることで資金の好循環を促す政策であり、苦境に立つ観光や飲食支援は雇用面からも必要不可欠だ。

 しかし、感染の爆発的な再拡大が懸念される場合は、政府と各自治体が直ちに共同歩調を取り、一時停止を含めて極力柔軟に対応すべきだ。その後の事業再開についても、双方が議論を尽くし不公平な部分を修正した上で進めるべきである。 



コロナとリーダー(2020年12月4日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

メンツにこだわる場合か

 新型コロナウイルスの感染拡大の「第3波」が止まらない中で、政治、とりわけ首相や都道府県知事に求められる大きな役割の一つは、明確なメッセージの発信によって、膨らむ国民の不安を和らげることだ。現状の認識を詳細に示し、科学的な根拠に基づきながら、対応を丁寧に説明するリスクコミュニケーションである。

 ところが、新規感染者数が右肩上がりの増加に転じた11月に入ってから、菅義偉首相はじめ政権と、専門家でつくる新型コロナウイルス感染症対策分科会、日本医師会(日医)、各都道府県の間で危機感の乖離(かいり)が際立つ。肝心な認識の共有がないまま、それぞれが異なる見解を示せば、国民は戸惑うばかりだろう。その意味で菅政権は、リスクコミュニケーションが欠落していると言わざるを得ない。

 象徴的な場面が11月26日の首相インタビューだった。分科会が感染拡大地域の「Go To トラベル」事業の一時停止を検討するよう提言した点を問われたが、菅首相は全く触れず、飲食店の営業短縮要請、病床の確保に取り組む方針などを一方的に語っただけで、その場を去った。これでは、国民との「対話」の放棄ではないのか。

 その翌日の衆院厚生労働委員会で、分科会の尾身茂会長が「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と強い言葉を口にしたのは、動きの鈍い政権へのいら立ちにも映った。日医の中川俊男会長が11月の3連休前に「まず、感染拡大地域への移動を自粛してもらうことが重要だ。秋の『我慢の3連休』としてほしい」と訴えたのも、政府が静観するなら、自分たちが国民に強く呼びかけなければならないという使命感にほかならない。

 「Go To トラベル」の扱いを巡り、東京都と菅政権は「国が判断するのが筋」「知事の判断を踏まえる必要がある」と責任の押し付け合いを繰り広げた。7月のスタート時に東京を除外した“しこり”が残っているのは容易に想像が付く。ただ、感染症対策という重要な局面で、感情を持ち込むのはもってのほかだ。最終的に菅首相と小池百合子知事の会談で、高齢者らの利用の自粛を促す方針で合意したとはいえ、インパクトに乏しかった。今回のような意思決定までの数日間の遅れが、事態の深刻化を招きかねないことを肝に銘じてもらいたい。

 確かに「Go To」事業が、地方を中心に経済を下支えしていることは理解できる。けん引してきた自負もあるだろう。だが、緊急事態宣言を発動した第1波の際、官房長官だった首相も、感染拡大を防ぐためには、人の移動・接触を抑制することが肝心だと説いたのではなかったのか。医療現場の悲痛な声を踏まえればメンツにこだわっている場合ではない。

 もちろん、分科会は助言する役回りで、判断するのはあくまでも政治だ。だからこそ、専門家と違う判断を下すならば、第1波の時とは変わったと言うならば、政治の側が説得力を持って説明しなければならないはずだが、第3波の到来以降、指揮官のメッセージが伝わってこなかった。

 専門家や現場の意見に謙虚に耳を傾け、自治体と綿密に連携し、国民に積極的に語り掛ける「対話力」。菅首相や小池知事に抜け落ちているものが感染症対策の要諦だ。(共同通信・橋詰邦弘)



「やってる感」(2020年12月4日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 上っ面だけ取り繕って「やってる感」を出す。〈帳面消し〉は熊本でおなじみだが、きのうの本紙によると標準語ではないらしい。菅首相や小池都知事に投げ付けても、お分かりにならないかもしれない。「Go To トラベル」をめぐる対応を見て「帳面消しだな」と思った

▼東京発着の旅行を対象から外すとはどちらも言いたくなかったらしい。高齢者や基礎疾患のある人に利用自粛を呼び掛けるという、極めて中途半端な対処となった。7月の制度スタート時にも政府は直前になって東京を除外。予約のキャンセル料は補償しないと言ったが、批判を浴びて撤回した。迷走続きである

▼身近な経験では、首都圏を中心に新型コロナ第2波が広がっていた8月。東京からお盆の帰省を考えていた親族が、迷った末に断念した。蒲島郁夫知事の帰省自粛要請が決め手だった

▼格安航空会社(LCC)の航空券を既に購入していたが、払い戻しは一切なし。手痛い出費だった。自己都合のキャンセルでないから、なおさら悔しかったはず

▼「何かをするためではなく、何かをしないためにとられるお金というのは、本当に悔しい。そういう人々の感覚を理解することが、政治の第一歩ではないだろうか」。歌人の俵万智さんも本紙につぶやいていた

▼第3波の衰えが見えない中、年末の帰省シーズンが迫る。あの出費は痛かった、もう悔しい思いはしたくないと思っている人は多いはず。庶民感覚をアピールしている首相だが、分かってもらえるだろうか。





GoTo対応 正念場の意識が乏しい(2020年12月3日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスによる1日当たりの死者数は道内、国内ともに最多を更新し、全国では40人を超えた。重症者も増え、医療態勢が逼迫(ひっぱく)する地域が拡大している。

 政府は国民に「3週間が正念場」と呼び掛けているが、政府自身に感染爆発を防ぐ意識がどこまであるのか疑わざるを得ない。

 その一つが観光支援事業「Go To トラベル」への対応だ。

 東京発着分は65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人を対象に利用自粛を呼び掛けることを決めた。

 東京の人口は国内の1割を占め、観光・ビジネスで往来が多い道内をはじめ全国各地の感染状況に大きな影響を与える。

 事業の縮小はやむを得まい。

 しかし、呼び掛けの対象を限定し、それも自粛要請では、抑止効果に大いなる疑問が残る。

 事業に一定の効果はあったが、正念場であるならば、補助金を出して国民に旅行を促す事業はいったん止めるべきだろう。

 10月に東京発着分を事業対象に加えて以降、感染が急拡大した。

 専門家らによる政府の対策分科会は各地の状況を分析し、東京23区などで事業自体を一時停止する必要性を指摘してきた。

 そもそも今回自粛の対象になった基礎疾患のある人は、重症化リスクが高いと指摘され、すでに外出を控える傾向にある。

 ましてや旅行客の基礎疾患の有無を業者側がどう確認するのか。現場の混乱を招きかねない。

 感染抑止には、ウイルスに感染していることを知らずに無症状のまま感染を拡大させている可能性がある若年層への対策も重要だ。

 そうした点で、今回の対応は科学的根拠を欠くと言うほかない。

 「Go To」に固執する菅義偉首相は、眼前に迫りつつある感染爆発の危機が見えているのか。

 一方、東京都の小池百合子知事は、「Go To」は国の事業として積極的な関与を避けてきた。

 互いに国民、都民の命を守らなければいけない立場なのに、メンツにこだわり、感染対策で後手に回っている責任は大きい。

 短期集中で感染を抑止するには事業者への営業自粛要請も必要となる。それには政府からの補償を伴ってこそ効果が期待できよう。

 野党は国の財政支援や、知事に緊急事態宣言の発出権限を与える新型コロナ特別措置法改正案を国会に提出した。

 コロナ関連の抜本的法整備は本来、政府が最優先でやるべきことだ。その認識に欠けている。



川越しのご法度(2020年12月3日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 箱根八里は馬でも越すが、越すに越されぬ大井川。江戸幕府の防衛のため橋はもとより船も禁じた東海道の難所、大井川の「川越し」の苦労をうたった馬子唄だ

▼庶民はおろか参勤交代の大名に至るまで、馬や人足の輿(こし)や肩車を利用するほかなかった。増水すれば長逗留(とうりゅう)を強いられる。「川越してから宿を取れ」という言葉が生まれたゆえんである

▼国の観光支援事業「GoToトラベル」は菅首相が先月見直しを表明したものの、札幌と大阪を目的地とする旅行の一時停止を決めたのは連休明けのこと。感染が広がった場合の準備は十分だったのか。川を渡る前に宿の予約を奨励したような印象が拭えない

▼感染拡大の懸念はコロナ禍に限らない。西日本の養鶏場で鳥インフルエンザの感染確認が相次いでいる。宮崎県でも陽性が出るなど関係者の心配は尽きないが、迅速な消毒作業の実施に準備の大切さを痛感する

▼そんな鶏卵業界を揺さぶるような疑惑が浮上した。広島県の鶏卵生産大手グループの元代表が、吉川貴盛元農水相に現金を渡した疑いがあるという。昨年の参院選広島選挙区を巡る買収事件の家宅捜索で、国会議員への現金提供を示す資料が見つかったそうだ

▼不正な資金の授受はあったのだろうか。政治腐敗の感染拡大を防ぐには徹底した疑惑の究明と説明が必須である。こっそりと隠れて川を渡るようなことがあってはならぬ。



GoTo政治決着 失望と混乱広げるだけだ(2020年12月3日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 医療現場には失望感が広がっているのではないか。

 菅義偉首相と東京都の小池百合子知事が、国の観光支援事業「GoToトラベル」の東京発着を巡り、65歳以上の高齢者と基礎疾患のある人に利用自粛を呼び掛けることで合意した。

 新型コロナウイルスの流行「第3波」は、全年齢層に感染が広がり、重症者も死者も第1波や第2波を上回る勢いで増えている。各地の医療従事者からは病床の逼迫(ひっぱく)を懸念する声が相次いでいる。

 新たな感染者を一人でも減らすことが喫緊の課題のはずだ。今回の合意が感染拡大の歯止めになるとは思えない。

 第3波は、感染源の多様さと家庭内感染の多さが特徴とされる。無症状で家庭にウイルスを持ち込み高齢者にうつしてしまう事例が目立っている。

 そもそも重症化リスクが高い場合、普段から外出を控えるなど注意している人は多い。

 さらに合意した制限方法は、新規予約の停止ではなく利用自粛の呼び掛けにとどまる。65歳未満ならば東京発着は問題ないとのメッセージも与えかねない。

 こうした状況を考えれば、効果がある対策なのか疑問を抱かざるを得ない。予約済み旅行の解約手続きも混乱するだろう。

 トラベル事業は、経済再生の足掛かりとして位置付ける菅首相肝いりの政策だ。都道府県をまたいで人の移動を促すだけに、国民に気の緩みを生み、感染拡大のきっかけになったとの指摘がある。

 経済を重視する政府は、事業の根本的な見直しに後ろ向きだ。感染拡大との関係を否定し、政府の分科会の見直し提言を受けても、各知事からの要請で小出しに対応しているに過ぎない。

 感染者が最も多い東京の扱いも主体的にかかわろうとせず、「国が判断するのが筋」と主張する小池知事との間で、責任を押しつけ合う状態が続いていた。

 対立が長引けば、双方に批判が高まるのは確実だ。それを避けるためにお互いに妥協点を見つけ、政治決着したとしか映らない。

 日本は今、感染防止に注力しなければ医療崩壊を招きかねない段階にきている。先月26日、菅首相は「この3週間が極めて重要な時期だ」と述べた。今月1日に日本医師会の中川俊男会長らと感染防止で意見交換した際には「全力でやる」と応じたという。

 結果として出てきたのが今回の合意だとしたら、菅政権に感染防止は望めない。



東京発着「自粛」 またも後手を踏まないか(2020年12月3日配信『新潟日報』-「社説」)

 新型コロナウイルスによる死者、重症者が最多を更新し、状況が悪化しているというのに、あまりに中途半端な対応だ。

 判断を押しつけ合ってきた首相と都知事が「政治決着」で方針を示したせいだろう。抜本的というには程遠く、大きな効果があるようには見えない。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」の東京発着の旅行について、菅義偉首相と小池百合子都知事は1日、重症化リスクの高い65歳以上の高齢者や基礎疾患がある人に利用自粛を呼び掛けることで合意した。

 東京は感染者が最も多く、事業の扱いが全国にも影響するため、国と都はにらみ合いを続けてきたが、小池氏は「国と都で、特に重症者の増大をいかに抑えるかといった観点で合意した」と強調した。

 旅行の「停止」も想定されたが、基礎疾患のある人に診断書の提出を求めるといった手続きが困難になることから「自粛」にとどまったという。

 これに対し専門家からは「あまりにもひどい内容でびっくりした」との声が上がる。重症化の急増を止められるような対策に見えないからだろう。

 確かに高齢者や基礎疾患がある人は重症化リスクが高い。厚生労働省の10月時点のまとめでは、重症化率は30代を1とした場合、50代は10倍、60代は25倍、70代は47倍、80代は71倍と年代が上がるほど急増する。

 だが高齢者や疾患がある人はそもそも感染に注意して行動しているため、専門家は「移動制限を要請しても医学的に合理性はない」と指摘する。

 むしろ感染を拡大させているのは無症状の感染者の移動だ。そうした人々の動きをどう抑制していくのか。急いで講じるべき対策はそこだろう。

 トラベル事業を巡っては札幌市と大阪市を「目的地」とする旅行を除外したが、不十分だと指摘を受けて後から「出発地」の旅行を追加した経緯がある。

 今回は限られた人に「自粛」を求める方針だ。またも後手を踏むのではないか。

 合意したとはいえ気になるのは、首相と小池氏に事業を積極的に見直そうとする姿勢が見えないことだ。

 経済に配慮する首相は、国会答弁でもトラベル事業が感染拡大の主因となった「証拠はない」とする専門家の見方を紹介し続けており、事業にブレーキを踏む様子はない。

 小池氏は「国の事業であることは変わらない」として政府に主体的な判断を求める考えを崩していない。

 日本医師会の中川俊男会長は1日、「医療現場が逼迫(ひっぱく)している。早め早めの対応で感染はコントロール可能だ」と訴えた。

 都市部を中心に緊迫度が増し、首相が「この3週間が極めて重要だ」と呼び掛けてから1週間が過ぎた。

 このまま小刻みの対策を重ねるだけでは、手の施しようがなくなる恐れがある。

 なんとしても食い止める。首相にはその覚悟を求めたい。



GoTo東京一部自粛(2020年12月3日配信『福井新聞』-「論説」)
「今更」対応 合理性に欠く

 65歳以上の高齢者と基礎疾患がある人に利用自粛を呼び掛ける―。「Go To トラベル」事業を巡り菅義偉首相と東京都の小池百合子知事とのトップ会談で合意に達した内容に「何を今更」と思った都民、国民も少なくないはずだ。新型コロナウイルスの感染状況をみれば、東京発着を制限するのが当然とする意見が大方だっただけに拍子抜けの感が否めない。

 小池知事は理由について「東京の経済規模は極めて大きく、全国への波及効果も大きいため」と経済への影響を考慮したという。確かに「トラベル」で都市部は無論、地方の観光業者らが救われた面は否定しない。一方で、地方の知事らからは、感染者の急増が飛び火する懸念があるとして、運用見直しの対象となった札幌、大阪2市と同様に東京を扱うべきだとする声も少なくなかった。

 重症化する人の多くが高齢者だけに、今回の高齢者らへの自粛要請という対応は理にかなうように思えるが、専門家は「元々感染に注意していた人たち。移動制限を要請しても、医学的には合理性はない」と指摘。都内の高齢者からも「感染拡大は若い人の旅行の影響もあると思う。高齢者だけ制限しても効果は低い」と疑問視し「GoTo自体をやめるべきだ」と厳しい意見が出ている。

 東京都の2日の感染者は4日ぶりに500人となった。1日時点の直近7日間で平均した1日当たりの人数は444・9人で過去最大と悪化傾向が続いている。全国でみると、1日の死者数は41人に上り過去最多。重症者数も493人となり、9日連続で最多を更新した。死者、重症者とも第1波、第2波をしのぐ勢いで増えており、歯止めがかからない。

 とりわけ、医療関係者の危機感は強い。各都道府県は感染ピークを視野に病床の確保を進めているが、看護師ら医療スタッフの人員不足などから感染者増に追いついていない。大阪では看護師確保のため、全国でも珍しい若いがん患者専用の病棟を近く一時閉鎖するという。本来なら助かるはずの命が脅かされ、最悪失われてしまう事態こそが医療崩壊というべきものだ。

 政府は、今月半ばまでを「勝負の3週間」と位置付け、国民に感染防止対策の徹底を呼び掛けている。東京都など7都道府県では酒類を出す飲食店などに営業時間の短縮を要請し、協力金を出す動きが出ているが、家庭や職場などでの感染が急増している中で、前回ほどの効果は見込めないとの声もある。感染抑止と経済の両立にはおのずと限界があるだろう。命と暮らし双方がダメージを受け続けかねない状況は何としても避けなければならない。



GoTo見直し/いったん停止すべきでは(2020年12月3日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府がようやく「Go To トラベル」東京発着の見直しに踏み込んだ。高齢者や基礎疾患のある人を対象に一定期間、利用自粛を求めることで菅義偉首相と小池百合子都知事が合意した。

 政府は既に大阪市と札幌市を目的地とする旅行を対象から外したほか、両市からの出発も利用を控えるよう呼び掛けている。連日、全国最多の感染者数が報告される東京発着の扱いが注目を集めていた。

 ただ、自粛対象は重症化リスクの高い人に限られ、若年層は除外している。小池知事は停止を求めたが、結果は「自粛」にとどまった。手続きの困難さなどがあるにしても、「経済を回す」を重視するあまり、小出しの対策にとどめようとしている印象が否めない。

 感染拡大に歯止めがかからない状況が長引くほど経済へのダメージは大きくなる。緊急事態宣言を出すような状況を回避するには、思い切った措置が欠かせない。「Go To トラベル」は事業をいったん停止すべきではないか。

 国内にはかつてない規模の「第3波」が襲来し、新規感染者が2千人を超える日が相次いでいる。

 留意するべきはここ1週間ほどの死者数の急増だ。おとといは全国41人が報告され、過去最多を更新した。一刻も早く感染拡大にブレーキをかけなければ、死者数の増加もさらに加速しかねない。

 医療現場の逼迫(ひっぱく)度も各地で日ごとに増し、兵庫県内でも一般診療への影響が懸念されている。

 大阪市立総合医療センターでは若いがん患者専用の病棟を近く一時閉鎖する。新型コロナ治療の看護師が不足し、専用病棟の看護師で補うためという。現場のマンパワー不足は医療全体で問題化しつつある。

 医療資源のコロナシフトが続けば、同様の事態が救急患者受け入れの制限にもつながりかねない。政府は重症者数や病床の使用率といった数字だけでなく、医療現場の苦境を総合的に直視する必要がある。

 政府の分科会が先月下旬に出した提言は、「年末年始を穏やかに過ごすため、この3週間に集中して、早期に強い措置を講じる」ことを求めていた。しかし「早期に強い措置」に対して政府がいまだ及び腰の姿勢にあることが、今回の「Go To」東京発着を巡る政策決定で明らかになった。

 もはや限定的な対策の連続で感染状況を改善できるとは思えない。判断を誤れば、医療崩壊も現実味を帯びてくる。首相はリーダーシップを発揮し、都道府県としっかり連携した上で、直ちに強い対策を講じなければならない。



GoTo東京一部自粛 「除外」なぜ打ち出せぬ(2020年12月3日配信『中国新聞』-「社説」)

 観光支援事業「Go To トラベル」による東京発着の旅行について、65歳以上の高齢者や基礎疾患のある人を対象に17日まで利用自粛を呼び掛けるという。そんな拍子抜けのする対策で、菅義偉首相と東京都の小池百合子知事が合意した。

 新型コロナウイルス感染者の急増を受けて、「東京除外」を求める声が強まっていたにもかかわらず、限定的な自粛要請に落ち着いた。

 背景には、感染拡大防止と経済回復の両立を掲げる首相と、政府の責任で判断すべきだとする知事の対立があるようだ。

 東京除外をどちらも自分からは切り出したくないのだろう。いわば意地の張り合いによって国民の命と暮らしが危機にさらされることなどあってはならない。抜本的対策を取らなければ事態の悪化を招きかねない。

 今回の自粛要請で感染拡大をどれほど抑えられるか。効果は限定的に違いない。高齢者や基礎疾患のある人は日頃から感染に注意し、自粛していると、専門家も指摘する。

 高齢者は重症化リスクが高いが最近は家庭内感染が目立つ。「特に重症者の増大を抑える観点から自粛要請で合意した」という小池知事の説明には疑問符が付く。感染の多い若い世代には危機感が伝わらない懸念もある。感染急拡大の今、取るべき対策としては手ぬるい印象だ。

 GoTo事業を推進してきた首相は見直し対象を広げたくないのだろう。「事業が感染拡大の主因となった証拠はない」と国会でも繰り返している。

 しかし政府の新型コロナ感染症対策分科会は、感染状況が2番目に深刻なステージ3に相当する地域ではGoToトラベルの一時停止を提言。東京23区もステージ3に相当するとした。さらに医療関係者からも「医療現場は逼迫(ひっぱく)している」と悲痛な声が上がっている。

 もちろん、経済を回すことが重要なのは分かる。

 GoTo事業で旅行業界や観光業界では一息ついているのは間違いない。地方経済にも効果をもたらしている。飲食店などは「イート事業」もあって客が戻り、助かっているようだ。

 日本経済の中心である東京がGoToトラベルから除外となれば、地方にも相当なダメージが及ぶのは間違いない。

 とはいえ「勝負の3週間」として政府も広く感染拡大の対策を呼び掛けている。やはり今、一時的に東京を除外すべきではないか。「除外」の影響を受ける企業や店には給付金で対応するなどしてでも、まずは感染拡大を抑え込むという覚悟が求められる。

 今回の自粛要請に応じて高齢者らが旅行を取りやめる場合、キャンセル料などの手続きも煩雑となって、業者に負担が掛かることも懸念される。

 GoTo事業は、そもそも感染状況が落ち着いている時期に実施すべき性格のものだった。ところが感染状況によって、事業を停止する基準さえ決めずにスタートさせたため今、対策が後手後手に回っている。



カレンダーの日(2020年12月3日配信『高知新聞』-「小社会」)

 きょうは「カレンダーの日」だそうだ。明治政府は1872(明治5)年11月9日、長く続いた太陰暦を欧米に合わせて太陽暦に改めると布告した。〈来る12月3日を6年1月1日とする〉。

 1年を締めくくる12月が2日だけになる大改革を20日余り前に宣言したのだから、相当荒っぽい。唐突な改暦は政府の財政難も理由らしい。明治6年はうるう月があり、官吏の月給が13カ月分必要になる。太陽暦に切り替えて「1カ月ケチることを思いついた」(高橋昌明著「歴史家の遠めがね・虫めがね」)。

 正月を控えた国民生活にも大小さまざまな混乱をもたらした。とりわけ打撃を受けたのが暦の印刷・販売業者だ。旧暦の明治6年暦は返品の山に泣き、新暦の出版も立ち遅れて大きな損害を出したとか。

 影響の度合いは違うが、いまの国会で来年の祝日を移動する法律が成立した。ことしに続いてスポーツの日や海の日、山の日が東京五輪の期間に集中する。成立が遅かったため、変更を反映していない来年の手帳やカレンダーが手元にもある。

 五輪への準備着々といったところだが、コロナ第3波の渦中では本当に開けるのか疑問に思えてくる。「Go To トラベル」に執着する菅首相も、まずは感染抑止に全力を挙げないと、五輪への機運も何もないのでは。

 暦を見て何かと気ぜわしくなる師走。感染リスクを避け、当面の沈静化を願いたいものだ。



GoTo微修正(2020年12月3日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

泥縄対応では感染抑止できぬ

 菅義偉首相と小池百合子東京都知事が会談し、「Go To トラベル」について、東京発着の旅行では65歳以上と基礎疾患のある人に一定期間、利用自粛を呼びかけることで合意しました。一時停止には踏み込みませんでした。税金で人の移動を後押しする「Go To トラベル」が新型コロナウイルス感染急拡大の契機になったとの指摘が相次ぐ中、あくまで続行にこだわる菅政権の方針は感染対策に逆行しています。事業の根本を改めず、泥縄式に微修正を繰り返しても感染拡大は抑止できません。全国一律の「Go To」の中止を早く決断すべきです。

逆行する姿勢は変わらず

 「Go To トラベル」利用者が出発地でも目的地でも全国最多とされる東京都については、「第3波」が顕在化してから中止や見直しを求める声が強まっていました。しかし、政府の専門家会議が先月20日に感染拡大地域の除外を提言しても、菅政権は、東京の見直しには動きませんでした。その後、札幌市と大阪市を目的地とする利用の除外などは決めたものの、東京をはじめ全国規模で行うことに固執し続けてきました。

 菅首相と小池知事が1日の会談で、65歳以上などへの利用自粛しか呼びかけなかったのも、目玉政策と位置付ける「Go To トラベル」の大幅見直しにつながることを避けたい首相の意向が強く反映したためです。感染拡大が目に見えて広がり、重症者増加で医療機関の受け入れが危機的になっているのに、一度決めた仕組みにしがみつくことは、あまりにも硬直した姿勢です。国民の命と健康を守る立場とは相いれません。

 自粛要請の対象を65歳以上の人や基礎疾患がある人に限った理由について、政府や都は重症化リスクが高いためと説明しますが、「Go To」を利用しないからといって、これらの人たちが感染を免れる保証はありません。むしろいま深刻なのは、家庭内で世代を超えて感染したケースが目立っていることです。活動的で無症状の人たちでの感染を抑えることが大きな課題となっています。その中で、65歳以上などと限定した自粛要請を政府がすることには、「自粛の対象にならなかった人たちにとってみれば、引き続き旅行をしても大丈夫という誤ったメッセージになる可能性がある」(国際医療福祉大の松本哲哉教授=「朝日」2日付)との警告も出されています。

 全国一律の事業中止を打ち出さない政府の危機感の欠如と感染抑止への本気度が問われます。観光、旅行、飲食などの事業者を直接援助することを組み合わせた制度へと切り替える時です。多くの事業者は今年春からのコロナの影響ですでに大打撃を受けています。3度目になる営業自粛要請では、一層の手厚い支援が必要です。自粛要請と一体での補償は感染抑止の大前提です。

国会を閉じず議論続けよ

 国民に「我慢の3週間」を求めておきながら、菅政権と与党が5日で国会を早々と閉会しようとしていることは許されません。

 PCR検査の拡充や医療機関・医療従事者への支援強化、雇用や営業を守る仕組みの継続と拡大など議論が必要な課題は山積しています。会期を大幅に延長し、コロナから国民の命と暮らしを守るための徹底審議を行うべきです。





[新型コロナ・GoTo事業] 感染抑え込みが優先だ(2020年12月2日配信『南日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。これに伴い、重症者が東京など都市部を中心にほぼ半月で倍増しており、医療逼迫(ひっぱく)の懸念が強くなっている。

 政府は観光支援事業「Go To トラベル」で、先月下旬に専門家の提言を受けて感染拡大地域での適用一時除外などを決めた。対象は大阪市と札幌市だけにとどまっていたが、きのう小池百合子東京都知事が菅義偉首相に会い、東京発着の旅行について、重症化しやすいとされる65歳以上の高齢者と基礎疾患を持つ人の利用自粛を呼び掛ける方針を伝えた。

 コロナを抑え込めず、再び緊急事態を宣言せざるを得ない状況に陥れば、経済回復も遠のいてしまう。国民が年末年始を安心して迎えるためにも、政府は感染防止を優先し、迅速で柔軟な事業の見直しに踏み込むべきである。

 全国の重症者はきのう時点で493人と9日連続で最多を更新した。田村憲久厚生労働相は、医療体制が行き詰まらないよう「最悪の場合も想定して、計画を作らなければならない」と述べた。

 とはいえ、積極的に人の動きを止めようとしない政府の対応には不安が拭えない。その典型がGoToトラベルを巡る東京都と政府の対立だ。小池知事は当初、「国が判断するのが筋だ」として適用除外を求めなかった。

 一方、政府は実態を把握している都道府県が判断すべきだとの立場を崩さなかった。背景には、看板政策の抜本的な見直しに後ろ向きな菅首相の意向があったに違いない。

 11月だけで9857人の新規感染者が出ている首都の除外が遅れると、往来の多い地方にも影響をもたらす可能性がある。他県の知事からは「早く判断してほしい」との声が出ていただけに、今回の決定は重症者を減らす上で一歩前進と言えようが、対象を絞った自粛要請にどれほど効果があるかは分からない。

 菅首相は感染防止と経済の両立を目指し、GoToトラベルについては今後も小刻みな運用見直しにとどめたい考えだ。

 首相は参院本会議で、トラベル事業が感染拡大の主要因とする「証拠はない」とする専門家見解を持ち出した。ただ、内閣官房参与の岡部信彦・川崎市健康安全研究所長はこれに先立ち、証拠がないとは「分析できるデータがないとの意味だ」と説明している。

 10月の宿泊旅行統計(1次速報)では、国内に泊まった日本人は8カ月ぶりに3000万人を超えた。GoToの効果が小さくないのは確かだろう。だが、局面が変わった今、国民の命を守る対策にこそ重点を置くべきである。





コロナ「第3波」 GoToにブレーキを(2020年12月1日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が収まらない。先週は1日当たりの新規感染者が3日連続で2500人を超え、過去最多を更新。重症者も最多更新が続いている。人の移動が活発化する年末年始を前に国と自治体が連携を強め、この「第3波」を乗り切らなければならない。

 感染拡大の要因を厚生労働省の専門家組織は▽基本的な感染予防の不徹底▽人の移動増加▽気温低下―と分析。政府分科会の尾身茂会長は「個人の努力に頼るステージは過ぎた」とし、政府と自治体が感染防止策を強化すべきだとの認識を示した。

 分科会の提言は2回にわたった。その背景には医療逼迫(ひっぱく)への危機感がある。病床の使用率は、15都道府県で分科会がステージ3(感染急増)の指標の一つとする25%以上となった。重症者はこの半月で倍増。重症者は治療日数と多くの医療スタッフを要し、通常医療にも影響する恐れがある。歯止めをかけることが急務だ。

 需要喚起策「Go To キャンペーン」を進める政府は経済再生を重視するあまり、運用の見直しが後手に回っている。「Go To トラベル」は分科会の提言を受け、札幌市と大阪市への旅行を一時除外することを決定。だが両市からの出発分も除外すべきだと再提言され方針を転換。出発分については自粛を要請しただけだ。

 自粛要請にとどめたのは、トラベル事業と感染拡大の因果関係を政府が否定しており、除外すれば整合性が問われるからだろう。菅義偉首相は「(トラベル事業が感染拡大の)主要な原因とする証拠はない」とする。

 最も感染者の多い東京都がトラベル事業から除外されていないのも合理性を欠く。小池百合子都知事は事業実施主体の政府が判断すべきだと主張、責任の所在を巡り国と対立している。除外の判断基準や手順を制度設計の際に詰めておかなかったのはお粗末と言うほかない。

 こうした準備不足で対応が遅れ、感染拡大と混乱を招くことがあってはならない。政府は感染状況を見極め、除外地域を増やすなど柔軟に対応すべきだ。

 東京都など感染の著しい都道府県は飲食店への営業時間短縮要請に踏み切った。政府は自治体との連携をもっと強め、飲食店への補償をバックアップするなど積極的な支援が必要だ。

 本県も初の死者が出るなど予断を許さない状況だ。秋田市のキャバクラではクラスター(感染者集団)が発生した。佐竹敬久知事は首都圏などとの往来は慎重に判断するよう呼び掛けた。東京もトラベル事業の見直し対象に加えるべきだとの考えも示し、早めの対応を求めた。

 政府は今はブレーキを強く踏むべき局面と捉えなければならない。経済再生との両立にこだわり、感染防止策をおざなりにすることは許されない。菅首相は分科会の提言を尊重し、リーダーシップを発揮すべきだ。





政策の一貫性が感じられない(2020年11月29日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 毎週金曜日、厚生労働省は1週間分の全国のインフルエンザ発生状況を発表している。16~22日は46件だった。昨年同期は何と1万5390件。激減ぶりが分かる。先日の本紙朝刊も県内で発生ゼロが続いていると伝えていた

▼新型コロナ感染防止のためのマスク着用や手洗いの徹底などが功を奏しているらしい。「けがの功名」という表現でいいかどうか、個人の努力がインフルエンザ抑止では報われているようだ

▼だが、肝心のコロナの感染は拡大するばかり。過去最多の感染者を更新する都道府県が相次ぎ、重症者そして亡くなる人が増えている。県内でもとうとう感染者が千人を超えた

▼そういう状況に、政府の対応が追い付いているかというとどうも心もとない。例えば、「Go To トラベル」を巡る混乱だ。感染拡大地域の札幌市と大阪市を目的地とする旅行を対象外と決めたものの、出発分も制限が必要との声が相次いだ

▼すると、わずか3日で両市を出発する旅行を自粛するよう求めるなど、政策の一貫性が感じられない。政府と最大の人口を擁する東京都との意思の疎通がうまくいっているのかも心配だ

▼政府の新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と述べている。もちろん、個人の努力が必要なくなったということではないが、今こそ、菅義偉首相言うところの「自助・共助・公助」の公助が強く求められる。それも決してその場しのぎではない「総合的、俯瞰[ふかん]的」な視点から。





【新型コロナ GoTo見直し】対応の手を緩めずに(2020年11月28日配信『福島民報』-「論説」)

 新型コロナウイルス感染拡大の「第三波」が到来したと言われる中、政府は観光支援事業「Go To トラベル」を見直した。飲食業を支援する「Go To イート」の一時停止の検討も始まった。国や県は今後も手を緩めることなく、臨機応変に対応しなければならない。

 「トラベル」の見直しでは、札幌や大阪市を目的地とする十二月十五日までの新規予約の旅行を対象から外す。利用者にはキャンセル料の支払いを求めず、宿泊施設や旅行業者には国が代金の35%を補償する。

 都道府県単位ではなく地域を限定した除外や、キャンセルに伴う費用の補償は、全国知事会の緊急提言に沿う形となった。さらに当初は感染拡大地域を「目的地」とする旅行だけが対象だったが、「出発地」とする旅行も制限すべきとの知事会や政府の感染症対策分科会の意見を受け、国は出発も控えるよう国民に呼び掛けている。

 政府は経済の影響を最小限に抑えるのに躍起だ。国土交通省によると、「トラベル」を利用した宿泊者は十月末までに延べ三千九百七十六万人に上る。このうち確認された感染者は十一月二十三日時点で百八十七人にとどまり、国は事業に起因した感染拡大の報告はないとしている。

 とはいえ、感染が広がるエリアから人が来ることを心配する声は根強い。感染拡大地からの出発に配慮を求めるのはやむを得ない対応だ。国は都道府県や専門家の声に耳を傾け、今後も制限の在り方を随時、見直すべきだろう。

 「イート」に関しては、農林水産省がプレミアム付き食事券の新規発行の一時停止や、食事券と付与ポイントの利用自粛の呼び掛けを検討するよう全都道府県に求めた。すでに東京都や北海道などが食事券の新規発行を止める意向を示している。また、政府は飲食店などに営業時間の短縮を要請した場合、国の財政支援を拡充する方針を示している。今後の状況に応じ、県は事業を一時的に見合わせた上で、期間を延長する判断もあるのではないか。その際は国の支援策を活用して、景気の低迷を防ぐように努めてほしい。

 県内の病床の逼迫[ひっぱく]具合や療養者数、PCR陽性率などの指数は、感染状況で「急増」を示すステージ3の目安より、かなり低く抑えられている。一方、感染経路不明の割合は、ステージ3に当たる50%に迫った時期もあり、予断を許さない。県民も十分に感染予防対策を講じて年末年始を過ごす必要がある。(平田団)



江戸時代の享保年間…(2020年11月28日配信『毎日新聞』-「余録」)

 江戸時代の享(きょう)保(ほう)年間、インフルエンザと思われる感冒(かんぼう)がはやった折、「人々はわらで疫神(えきじん)をつくり、鉦太鼓(かねたいこ)を鳴らし、はやしつれて海辺にいたる」という記録がある。わらの疫神はそのまま海へ流された

▲町内こぞって「送れ、送れ、どんどと送れ」とはやし立てたこの「風邪の神送り」、やがて感冒流行の際の恒例行事となったが、人々の願いとは逆に感染を広げる結果となったろう。感染症の知識のなかった時代の悲しい過ちである

▲落語では流した張りぼての疫神が夜の海の漁網にかかり、「弱み(夜網)につけ込む風邪の神」というオチがつく。感染症が知識の空白や医療体制の手薄さなど、人間の弱点に容赦(ようしゃ)なくつけ込んでくるのは、昔も今も変わりあるまい

▲新型コロナの感染の拡大で、各地から医療体制の逼迫(ひっぱく)への不安が伝えられている。この勢いで感染が広がれば不安が現実になるのは避けられない。その場合、緊急に治療が必要な他の致命的な疾患への対応もできなくなる恐れがある

▲不思議なのは、人の移動を奨励するGoToトラベルへの政府の見直しの中途半端なことである。菅義偉(すが・よしひで)首相はGoToが感染を広げた証拠はないというが、経路不明の感染が急増するなか、わざわざ人の移動を促進することはない

▲旅行・観光業界も今の感染拡大を止めずに先行きは見えない。よかれと思っての施策も、そこにもし過ちがあれば容赦なくつけ込む風邪の神である。今こそ人間の側がこの先のリスクの認識を共有すべきだろう。



感染拡大深刻化 政府の強い意思を示せ 「トラベル」さらに見直しを(2020年11月28日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルスの感染拡大防止と経済を両立させることは極めて重要である。経済がストップしても、感染が蔓延(まんえん)しても、社会生活は成り立たない。

 ただ今、最も恐れるべきは、経済を止めても感染拡大の収拾がつかなくなる最悪の事態である。

 政府は27日、新型コロナ感染症対策本部を開き、菅義偉首相は観光支援事業「Go To トラベル」について、「札幌市、大阪市の出発分についても利用を控えるよう直ちに呼びかける」と述べた。感染が急増する両市を目的地とする同事業については、すでに旅行の割引を停止している。

 半歩前進だが、判断は遅く、矮小(わいしょう)なものと断じざるを得ない。

 ≪正念場を乗り切れるか≫

 西村康稔経済再生担当相は「ステージ4(爆発的感染拡大)となれば緊急事態宣言が視野に入る」と述べ、感染爆発を防ぐためには「今後3週間が正念場だ」と述べてきた。

 菅首相も同様に「この3週間が極めて重要な時期だ」と強調したが、言葉の危機感に政策が追いついているとはいえない。

 菅首相は26日、「国民の皆さんには、ぜひともマスク着用、手洗い、3密の回避という基本的な対策に協力いただきたい。一緒になって感染拡大を何としても乗り越えていきたい」と呼びかけた。これはただの「お願い」であり、強い危機感は伝わらない。

 政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会の尾身茂会長は27日の衆院厚生労働委員会で「人々の個人の努力に頼るステージは過ぎた」と述べ、「個人の努力に加えて、飲食店の営業時間の短縮、感染拡大地域とそうでない地域の行き来を控えるのは必須だ」と強調した。

 「Go To トラベル」を念頭に置いた発言である。こうした提言を受けて札幌、大阪両市出発の事業停止に踏み切った格好だが、分科会は25日の提言でも、トラベル事業について一時停止を行う際は「出発分についても検討すること」と明記していた。

 尾身氏は国民や国、自治体について「当事者意識を持って危機感を共有することが極めて重要だ」とも述べた。危機感を共有できていないとの認識が言わせた言葉だろう。政府と分科会の危機認識には、明らかな差異がある。

 トラベル事業の対応が重要なのは、それが国民への政府のアナウンス、意思表示になるからだ。

 国が人の移動にお墨付きを与えているのだから、外出や旅行を控える必要はあるまい。さらに、ここが正念場といわれても実際には大したことはないだろう-。このように受け取られてきたのではないか。日本医師会の中川俊男会長は「国が(人の移動を)推進することで、国民が完全に緩んでいる」と指摘している。



Go To見直し(2020年11月28日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆朝令暮改の対応は混乱増す◆

 新型コロナウイルスの感染が急拡大する地域で医療体制が逼迫(ひっぱく)しつつあり、専門家は「このままでは通常の医療で助けられる命が助けられなくなる」と警告した。その中で政府は観光支援事業「Go To トラベル」の対象から札幌市、大阪市の一時除外を決めた。

 ただ、除外の具体的方法、利用者や関連事業者への補償について事前準備が不足した。状況が悪化した場合の「撤退」の判断基準や手順は制度設計段階から詰めておくべきだった。泥縄式の対応との批判を政府は重く受け止めるべきだ。

 GoToトラベル見直しは21日からの3連休前に専門家が「今まで通りの対応では経済、雇用への影響が甚大になる」として強く提言した。菅義偉首相ら政府は直前まで、この事業は経済効果が大きい一方、感染拡大との因果関係はないとして方針転換できなかった。

 首相は感染防止と経済再生を両立させる方針を貫いてきた。この姿勢が政府の柔軟性欠如、対応の遅れにつながっていないか。リーダーに委ねられた判断の責任は重い。

 感染急増で医療体制が逼迫する懸念がある札幌市、大阪市を目的地とした旅行は12月15日まで、GoToトラベルの新規予約を停止。予約済みの旅行も12月2日から15日現地着分まで割引適用が無効になる。だが両市の住民が他の地域へ旅行する場合は割引が引き続き認められる。経済への影響を最小限にするためというが、一貫性を欠き、感染を広げる危険性が否定できない。

 飲食業界の支援策「Go To イート」を巡っても政府は、原則4人以下の食事に対象を限定する検討を都道府県に求めた数日後、プレミアム付き食事券の新規発行の一時停止や利用自粛の呼び掛けにまで要請を拡大させた。朝令暮改の対応は自治体を混乱させる。

 一方、GoToトラベルが7月にスタートした際は、政府が東京都全域を対象から除外した。この経緯もあり、今回は除外地域を決める判断を都道府県知事に委ねる政府に対し、小池百合子都知事は「国が判断していただきたい。それが責任だと思う」と反発した。

 地域の感染状況や医療体制を最も把握しているのは自治体だ。だが地域事情に合わない対策の実行判断を自治体に丸投げするようであれば、事業主体である政府の責任放棄との批判を免れない。東京に限らず、地方には「国のリーダーシップと責任で方針を明確にする必要がある」と不満が強い。準備不足を補うのは国と自治体の信頼関係だ。「第3波」乗り切りへ早急にタッグを組み直すべきだ。



GoTo混乱、誰が収拾するのか?(2020年11月28日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 その年に流行した商品やサービスを発表するSMBCコンサルティングの「ヒット商品番付」で東の横綱に「オンライン生活」が選ばれた。新型コロナウイルスの感染対策として、インターネットを活用する生活様式が広がった

▼旅行サイトを通じた旅の予約もその一つ。政府の観光支援事業「Go Toトラベル」が盛んに宣伝されている。観光事業の救済を目指し、始まった

▼宿泊割引と地域共通クーポンが付与される。一定の効果はあるが感染者の増加に伴い迷走している。政府は対象から札幌、大阪2市を一時除外すると決定した

▼飲食や買い物に使える地域共通クーポンも一部地域で支給されない混乱が発生している。私事だが、10月に「Go To」を利用し県内で1泊した。チェックイン時にもらうはずの地域共通クーポンが受け取れなかった

▼当日、「Go To」の事務局から紙券が届いておらず「後日、事務局から自宅へ郵送する」とホテルは説明した。ところが、待てども届かない。事務局に電話をかけるも通話中で4度目でつながった

▼期待は外れた。「(説明)資料を送るから待って」とにべもない。クーポン支給の有無をただすと「まず資料を送る」と返答はあいまい。狐(きつね)につままれたような気持ちになる。札幌市と大阪市発着の旅行を予約した人もしかり。この混乱、誰が収拾するのだろうか。





「GoTo」ブレーキ/タイミング外してはならぬ(2020年11月27日配信『河北新報』-「社説」)

 観光支援事業「Go To トラベル」を巡り、政府と自治体、専門家の歩調が合っていない。

 政府はトラベルの運用を見直し、飲食業界の支援策「イート」事業も食事券の新規発行の中断を打ち出した。

 新型コロナウイルス感染の第3波に見舞われているのに、ようやくの印象が強い。臨機応変な判断に欠け、後手に回ったとの批判は免れまい。

 見直し内容は矛盾や調整不足を露呈した。札幌、大阪両市を目的地とする旅行を3週間、対象から除外した。予約済みの旅行も割引停止としたが、両市から出発する旅行は割引が適用されたままだ。

 札幌市民に不要不急の市外移動の自粛を求めた北海道の対応と整合性が取れない。

 西村康稔経済再生担当相は3連休後の全国知事会とのテレビ会議で、トラベル事業の見直しについて「私権制約は必要最小限にしなければいけない。知事の意向を尊重し、サポートしたい」と述べた。各知事が主体的に判断すべきだとの考えだ。

 感染拡大地域を起点とする旅行も除外を求めた知事会に対し、西村氏は「医療の逼迫(ひっぱく)地域に多くの人が訪れ、感染が広がれば影響が出るとの考え方で整理した」と説明した。

 ならば、病床確保が急がれる大都市と、離島など医療提供体制がぜい弱な観光地を外すべきではないか。

 国のコロナ対策分科会が感染拡大を懸念する4都市のうち、東京都と名古屋市は対象のままだ。東京都の小池百合子知事は都民に不要不急の外出自粛を呼び掛けたものの、トラベルの扱いは「全国的な視点から国が判断するのが筋だ」と、政府と距離を置く。

 感染状況の濃淡と医療体制の実情に基づき除外地域を細かく設定すべきだ。政府と自治体は連携を強め、感染防止と地域経済に配慮しブレーキを小まめに踏むべきである。

 政府は感度の鈍さを改める必要があろう。第3波が今月初め始まったが、旅行は予約済みで変更が困難だとして、見直しに後ろ向きだった。

 事業が菅義偉首相の肝いりのため、遠慮が働いたと見る向きもある。首相自身は「静かなマスク会食の実践」という自助努力を促すだけで、国民や専門家が抱いていた危機感と大きな溝があった。

 トラベル事業の利用者延べ4000万人超のうち、陽性者は197人(25日現在)という。政府はこの数字から事業が感染拡大の主要な要因だとは言えないとの立場だが、感染拡大期にリスクの拡散は避けるのが基本ではないか。

 分科会は札幌、大阪両市のほか東京都、名古屋市を例示し、今後3週間、往来の自粛を求める提言をまとめた。

 事業の運用は地域の実情に通じた自治体の意向を重視すべきだが、出発地と目的地の足並みが乱れては、利用者と旅行業界が混乱するばかりだ。



利用者や旅行業界は翻弄(ほんろう)されている(2020年11月27日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 ピストやトラックレーサーなどと呼ばれる競輪用自転車は最高速度が時速70キロを超える。スピードを出すため軽量化が図られ、構造は至ってシンプル。ブレーキは付いていない

▼では、どうやって止めるのか。後輪ギアが固定され、ペダルを回すとタイヤが連動する仕組みのため、ペダルを逆回転させることによって速度を制御して徐々に減速させる。急停止はできない

▼走行中のピストに、無理やりブレーキを装着しようとしたかのようだ。国の観光支援事業「Go To トラベル」のこと。新型コロナウイルスの感染者が急増中の札幌、大阪両市を一時除外した。新規予約を3週間停止し、予約済みの旅行は割引適用を除外する。利用者にキャンセル料は求めず、宿泊施設や旅行業者の損害の一部は国が補償する

▼観光地がにぎわった3連休直後の決定で、またも遅きに失した感は否めない。感染者の急増を想定していないかのような制度設計の甘さも露呈した。場当たり的な対応に利用者や旅行業界は翻弄(ほんろう)されている

▼現時点で、東京は除外の対象から外れ、除外地域の住民が他の地域へ旅行する場合は割引が認められる。この程度の対策で、感染者の増加を抑えられるのか。もっとしっかりしたブレーキを付けないと、手遅れになりかねない。



GoTo見直し 検証重ね感染抑止を図れ(2020年11月27日配信『山陽新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府の需要喚起策「Go To キャンペーン」事業を一部で停止することが決まった。妥当な措置だが、ちぐはぐさも目につく。行方を注視するとともに、政府や自治体には混乱を招かぬよう状況に応じた柔軟な対応を望みたい。

 このうち観光支援事業「Go To トラベル」については、感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時的に対象から外す。飲食業界の支援策「Go To イート」では、プレミアム付き食事券販売の一時停止を知事に要請するなどとした。

 今週初めには、政府が知事の要請に基づき大阪、札幌両市を12月15日までトラベルの対象から除外すると発表。予約済みの旅行も12月1日現地着分まで利用を認め、それ以降は割引が無効になる。

 感染者数が最も多い東京都の出方が注目されたが、小池百合子知事は「一時除外は全国的な視点から国が判断することだ」と指摘。都側からは要請しない考えを示した。

 新型コロナの「第3波」が、とどまるところを知らない。重症者や重症化しやすい高齢者の感染が増え、日本医師会は「全国各地で医療提供体制が崩壊の危機に直面している」と懸念を示す。

 今回の見直しは、こうした状況を受けた措置だが、対応の遅さは否めない。キャンペーンの旗振り役である菅義偉首相が一貫して拒んできたからだ。感染の急拡大と、警戒感を強める専門家による政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が強く見直しを迫ったことで、ようやく方向を転じた。

 確かに感染防止と経済活動の両立は必要だ。「Go To キャンペーン」と感染拡大の間に因果関係があるか否かも定かではない。しかし、人の移動が感染を高める恐れがあるのに、税金を使って誘導するタイミングなのか。国民の警戒心が緩む一因にもなりかねない。関係業者に補償をした上で、一度立ち止まって検証するのは妥当だろう。

 見直しの内容には疑問な点もある。大阪、札幌両市を出発地とする旅行は、なぜ割引対象のままなのか。政府は「医療体制が逼迫(ひっぱく)していない地域を訪れるのは問題ない」と言う。経済回復にブレーキをかけたくない思いもにじむ。

 だが、感染拡大地域から少ない地域へ人が動けば、全国に感染を広げる可能性があろう。地方の医療体制を脅かしかねない。知事の間には、制限を求める声もある。

 東京が一時除外の対象外というのも理解し難い。西村康稔経済再生担当相は「最終判断は国」とする一方、小池氏の意向を尊重するとも語り、判断時期は明言しなかった。

 深刻さを増す感染拡大への対応は急務だ。国と自治体は情報を共有し、関係業界、そして国民と一体で取り組まなければ、未曽有の難局は切り開けまい。



GoTo見直し/「泥縄的」ではないか(2020年11月27日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 新型コロナウイルスの感染が急拡大する地域で医療体制が逼(ひっ)迫(ぱく)しつつあり、専門家は「このままでは通常の医療で助けられる命が助けられなくなる」と警告した。その中で政府は観光支援事業「Go To トラベル」の対象から札幌市、大阪市の一時除外を決めた。

 ただ、除外の具体的方法、利用者や関連事業者への補償について事前準備が不足し、判断の責任の所在を巡っては国と東京都が意見対立した。状況が悪化した場合の「撤退」の判断基準や手順は制度設計段階から詰めておくべきだった。泥縄式の対応との批判を政府は重く受け止めるべきだ。

 GoToトラベル見直しは21日からの3連休前に専門家が「今まで通りの対応では経済、雇用への影響が甚大になる」として強く提言した。菅義偉首相ら政府は直前まで、この事業は経済効果が大きい一方、感染拡大との因果関係はないとして方針転換できなかった。

 首相は感染防止と経済再生を両立させる方針を貫いてきた。この姿勢が政府の柔軟性欠如、対応の遅れにつながっていないか。リーダーに委ねられた判断の責任は重い。

 感染急増で医療体制が逼迫する懸念がある札幌市、大阪市を目的地とした旅行は3週間、GoToトラベルの新規予約を停止。予約済みの旅行も割引適用が無効になる。だが両市の住民が他の地域へ旅行する場合は割引が引き続き認められる。経済への影響を最小限にするためというが、一貫性を欠き、感染を広げる危険性が否定できない。

 両市が目的地の予約済み旅行は利用者にキャンセル料を求めず、国が宿泊施設や旅行業者に代金の35%分を補償することになったが、これも全国知事会などの要望を受け、ばたばたと決めた。「泥縄的だ」(枝野幸男立憲民主党代表)と言われても仕方ないだろう。

 飲食業界の支援策「Go To イート」を巡っても政府は、原則4人以下の食事に対象を限定する検討を都道府県に求めた数日後、プレミアム付き食事券の新規発行の一時停止や利用自粛の呼び掛けにまで要請を拡大させた。朝令暮改の対応は自治体を混乱させる。

 一方、GoToトラベルが7月にスタートした際は、政府が東京都全域を対象から除外した。この経緯もあり、今回は除外地域を決める判断を都道府県知事に委ねる政府に対し、小池百合子都知事は「国が判断していただきたい。それが責任だと思う」と反発した。

 政府は除外地域を細分化する方針だが、東京都は感染経路が複雑化して特定地域に集中していないため絞り込みが困難なこともあって今回は政府への除外要請を見送った。代わりに、都内で酒類を提供する飲食店などに午後10時までの時短営業を要請し、都民に外出を控えるよう呼び掛けた。

 地域の感染状況や医療体制を最も把握しているのは自治体だ。だが地域事情に合わない対策の実行判断を自治体に丸投げするようであれば、事業主体である政府の責任放棄との批判を免れない。

 東京に限らず地方には「国のリーダーシップと責任で方針を明確にする必要がある」(福田富一栃木県知事)と不満が強い。準備不足を補うのは国と自治体の信頼関係だ。「第3波」乗り切りへ早急にタッグを組み直すべきだ。





予算委集中審議 感染対策の明確な指針が要る(2020年11月26日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスに関する与野党の論戦は、かみ合わなかった。危機をどう乗り越えるのか。政府は国民に明確な指針を発信すべきだ。

 衆参両院の予算委員会で、集中審議が行われた。感染症対策について、野党は、政府の観光支援策「Go To トラベル」に焦点を当てた。

 立憲民主党の枝野代表は「人の移動が活発になれば、感染が広がる」と述べ、中止を求めた。

 菅首相は「感染拡大の主要な原因であるとのエビデンス(根拠)は存在していない。経済を支える有力な事業だ」と反論した。

 政府の支援策により、疲弊した観光産業を下支えする意義は大きい。その効果で事業を継続できている企業も多いだろう。

 だが、感染が急拡大する局面になっても、政府が旅行を奨励し続けることは、果たして妥当なのか。感染拡大地域を目的地とする旅行を制限する一方で、その地域からの出発は補助し続けることにも、違和感が拭えない。

 感染者が増えた理由について、田村厚生労働相は「十分に感染防止策が講じられていない中で、人の移動が増えた」と答弁した。

 政府は、社会に緩みが生じないよう、マスクの着用や「3密」の回避といった基本的対策の徹底を改めて促さねばならない。

 国内の重症者数は最多の水準にあり、都市部の病床使用率も上昇している。PCR検査や医療提供体制の拡充が急務だ。

 日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題について、首相は「バランスの取れた活動を確保するため、適切に判断した」と述べるにとどめた。

 首相による任命は「形式的」とした過去の政府答弁との整合性は、放置されたままだ。首相は、任命拒否の理由や経緯を丁寧に説明することが不可欠である。

 安倍前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡っては、参加者が支払った会費と、実際の経費の差額を、安倍氏側が補填ほてんしていたことが判明した。政治資金規正法違反の疑いなどが指摘されている。

 安倍氏は昨年、国会で「後援会としての収入、支出は一切ない」と述べていた。補填が事実なら、答弁と矛盾する。立憲民主党や共産党は、事実関係を明らかにするよう要求した。

 行政のトップにいた者として、安倍氏には高い倫理観が求められる。誠実に対応し、適切に説明責任を果たしてもらいたい。



GoTo事業見直し(2020年11月26日配信『福井新聞』-「論説」)
感染抑止につながるのか

 菅義偉首相は先月26日の所信表明で、新型コロナウイルスの感染拡大に「ちゅうちょなく、必要な対策を講じていく」と述べた。

 だが、その後の1カ月、感染拡大はとどまるところを知らず、1日の感染者数は全国で2千人を上回るなど連日、過去最多を更新する事態にもかかわらず何ら策を打ってこなかった。

 ここに来て、観光支援事業「Go To トラベル」の対象から感染者が急増する札幌、大阪2市を一時除外することを正式決定するなど、ようやく重い腰を上げた格好だ。

 首相は25日の衆参両院の予算委員会集中審議で「トラベル」事業に関して、利用した延べ約4千万人に対して、今月23日までに感染を確認した利用者は187人とする国土交通省の報告を持ち出し、トラベル事業が感染拡大に影響したとの見方には否定的だ。

 赤羽一嘉国交相が2市の一時除外の理由に挙げたのは医療体制の逼迫(ひっぱく)の回避であり「予防措置としてやむを得ないとの判断に至った」と述べたように、できれば全国でそのまま継続したいのが本音だろう。そうした意向もあったためか、2市を出発する住民の旅行は割引を認めるという。

 これに対して全国知事会は制限を検討するよう政府に求めている。2市からの旅行者が感染を広げる恐れが否めないからだ。トラベル事業での感染例は少数とする政府の見解に対して、集中審議で野党は無症状者が旅行先でうつした可能性があり、感染者数にカウントされていないと疑念を呈したのももっともだろう。

 新型コロナ対策分科会の尾身茂会長は、このまま個人の努力だけでは対策は困難になると指摘。一方、首相はGoTo事業見直しを「専門家が現時点ではそのような状況にないとの認識だ」と否定し続けてきた。今回の一時停止措置も中途半端と言わざるを得ない。

 それどころか、政府は「3密回避の徹底」など政策以前の自助努力に今なお比重を置くような発言に終始している。経済との両立は欠かせない視点だが、重症者が過去最多になり、医療崩壊にもつながりかねず、臨機応変にブレーキを踏むべき時ではないか。

 さらに、理解できないのは、政府がGoTo事業のトラベル、イートとも知事の判断任せにしていることだ。感染抑止と経済の両立となれば、知事の悩みも深いはずだ。政府が基準を設けるべきだし、知事に権限を委ねるなら、財源の裏付けは不可欠だ。第1波でも課題に挙がった特別措置法の改正を、首相は「収束後」と取り合わなかった経緯がある。そもそもGoTo事業自体が「収束後」と閣議決定していたことを政府は忘れてはならない。



GoTo見直し 感染動向に応じて柔軟に(2020年11月26日配信『北国新聞』-「社説」)

 観光支援事業「GoToトラベル」について、政府は新型コロナ対策分科会の提言を受け、感染拡大地域での一時停止を決めた。同事業が感染拡大を引き起こしたという証拠はないが、医療現場を守るための予防措置として運用を見直し、一部地域を一時的に除外するのは、やむを得ない判断だろう。

 分科会は9月に、都道府県が国基準の「ステージ3(感染急増)」相当と判断された場合、除外などの見直しをするよう提言している。今回はその段階にあるとみられる札幌市と大阪市が除外対象となった。

 全国の状況をみると、重症者用病床の使用率は、東京、大阪、沖縄の3都府県で25%を超え、「ステージ3」の水準に達している。これから停止対象となる地域がさらに増えるかもしれない。感染の動向に応じて、制度の運用を柔軟に見直していけばよい。

 幸いなことに、石川、富山両県は重症者が1人もおらず、重症者用病床の使用率は0%が続いている。谷本正憲知事は会見で、「Go To イート」の人数制限を行わず、「Go To トラベル」に関しても、感染拡大地域から石川への訪問自粛を求めない考えを示した。県内の感染状況が落ち着いていることを思えば、納得できる判断といえよう。

 野党やメディアの一部は、政府の見直しについて、「場当たり的な対応」「遅すぎる」などと批判している。だが、感染動向に応じて手を打っていく以上、ある程度、場当たり的な対応になったり、判断が遅れたりするのは、致し方ない面もある。

 観光業は産業のすそ野が広く、地域経済の主要な柱になっている地方が少なくない。ホテル、旅館、バス、タクシー、食材提供業者、土産店などに従事する人は全国で900万人を数える。菅義偉首相が国会で述べた通り、国民の暮らしを守らないと、命も守れなくなるだろう。

 実際、Go To事業によって倒産や失業を回避できたという声は北陸でも数多く聞かれる。地域経済を支え、生活を維持していくためにも、事業自体はぶれずに継続してほしい。



【Go To見直し】運用のルールを明確に(2020年11月26日配信『高知新聞』-「社説」)

 経済を優先してきた菅義偉首相がようやく、肝いり事業の運用見直しにかじを切った。

 政府は観光支援事業「Go To トラベル」の対象から、新型コロナウイルスの感染拡大が著しい札幌市と大阪市を一時除外する。

 今月に入り、国内の1日の新規感染者が2千人を超える日が続いた。方針転換は当然だろう。
 トラベル事業は国内旅行代金の50%を国が支援。35%分は代金から割り引き、15%分は旅先で買い物や飲食に使えるクーポンを配る。

 7月22日のスタート以降、10月半ばまでの間に宿泊で利用した延べ人数は3100万人以上、割引支援額は約1400億円に上る。

 人とお金の流れが生まれ、観光業や飲食業といった地域経済が息を吹き返したことは間違いない。

 ただ、専門家はトラベル事業と感染拡大との関係について「エビデンス(証拠)がなかなかはっきりしないが、きっかけになったことは間違いない」と指摘している。

 経済再生へアクセルを踏み続けた一方で、感染抑止に向けたブレーキをかけるのが遅きに失した感は否めない。

 見直しは札幌、大阪2市を目的地とする旅行の新規予約を3週間停止。予約済み旅行は12月1日現地着分まで利用を認め、それ以降は割引無効。キャンセル料は不要とし、旅行業者らに代金の一部を補償する。

 ただ、2市を出発地とする旅行は割引を認めている。感染抑止を考えれば、ちぐはぐに感じる。

 全国知事会は感染拡大地域を出発地とする旅行の制限も検討するよう、政府に求めている。感染拡大地域からウイルスが持ち込まれるリスクを懸念するのは理解できる。

 また同じ都道府県内でも感染状況には差がある。全国知事会は対象除外について、より地域を限定する選択肢も求めている。
 政府はそうした意見を取り入れつつ、さらに制度の運用を改善するべきだろう。

 そもそもトラベル事業は見切り発車だった。スタート時に急きょ対象から東京が除外され、キャンセル料の補償を巡り政府の方針は二転三転し、旅行業界は対応に追われた。

 本来ならそれらを教訓にして、感染が再拡大した場合に利用者や事業者を混乱に陥れない対策を考えておくべきだった。

 西村康稔経済再生担当相は「キャンペーンを使って旅行するかどうかは国民の皆さんの判断だ」と述べて批判を浴びた。都道府県や国民に判断を丸投げするような姿勢では理解は得られまい。

 今後とも経済再生と感染防止の両立が求められる。それだけに具体的にどんな場合に、どんなふうに人の流れを制限するのか。

 多くの人が事業を利用するであろう年末年始が迫っている。これ以上、利用者や事業者が混乱しないよう、政府が責任を持って運用のルールを明示する必要がある。



GoTo見直し 政府対応は遅く無責任だ(2020年11月26日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの急速な感染拡大を前に、政府の対応はあまりに鈍く、後手に回ってはいないか。疑念を禁じ得ない。

 政府がようやく観光支援事業「Go To トラベル」の一部制限に乗り出した。ただし、その見直しは小幅にとどまる。

 事業の対象から一時除外となるのは感染者が増加している札幌、大阪両市を目的地とした旅行だけだ。期間は3週間で、予約済み分は12月1日出発分まで割引対象となる。

 感染拡大地の医療負荷を増大させないための措置といい、両市を出発地とする旅行は除外されない。全国知事会が「他の地域に感染を拡大させてしまう」と懸念を示したのは当然だ。

 予約した人は解約料を支払う必要はなく、旅行会社や宿泊施設の損害は国が補償する。政府は事業を始める際、どんな感染状況になったら一時停止するのかといった基準を示していなかった。停止に伴う影響の緩和策も慌てて決めた。泥縄の対応と批判されても仕方あるまい。

 そもそも各種の「Go To」事業は感染収束後に実施するはずだった。政府は「第2波」と呼ばれる感染拡大が始まった7月にトラベル事業を前倒しで始め、その後も経済回復のアクセルを踏み続けた。一方で、感染拡大を防ぐブレーキへの配慮が希薄だった結果、現状があると言わざるを得ない。

 11月に入ると「第3波」の様相を呈し始め、1日の新規感染者数が2千人を上回るようになった。日本医師会がトラベル事業に危機感を示しても、政府は事業継続の姿勢を貫いた。

 政府のコロナ対策分科会の提言を受け、菅義偉首相が事業の一時停止を表明したのは3連休初日の21日、具体策が示されたのは連休明けだ。連休の人の移動は感染拡大を招きかねない。遅きに失した判断である。

 そのうえ政府は、事業継続の判断を自治体に委ねる姿勢も変えていない。札幌、大阪両市の一時停止はあくまで地元要請に基づくもので、他の感染拡大地域では事業が継続される。農林水産省は「Go To イート」事業の制限を始めたが、都道府県にプレミアム付き食事券の新規発行の一時停止検討などを求める内容にとどまっている。

 感染状況は地域で異なり、地方の意向を尊重することは大切だが、政府が制度設計した事業の停止判断を自治体に丸投げするのはあまりに無責任だ。

 経済のブレーキをためらうのは地方自治体も同様だ。政府は自治体との丁寧な対話で感染防止と経済のバランスを見極め、国全体で目指す大方針を示した上で、各地の実情に応じた対応も促し、容認すべきである。



菅首相の国会答弁(2020年11月26日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

無責任ぶりが際立つばかりだ

 菅義偉首相が出席し、衆参両院で予算委員会の集中審議が行われました。新型コロナウイルス感染拡大に対する政府の無策や、「桜を見る会」前夜祭をめぐる安倍晋三前首相側の費用補てん問題を中心に、野党は首相をただしました。首相はコロナ感染を広げた「Go To」事業の誤りをあくまで認めず、「桜」前夜祭での安倍氏の国会の虚偽答弁についても見解を示すことさえ拒みました。あまりに無責任です。国政の焦点課題でまともに議論しようとしない姿勢は大問題です。政権を担う資格そのものが問われます。

前首相のウソ放置なのか

 都内の高級ホテルを会場に開かれてきた「桜」前夜祭の費用の一定額を補てんしていたと安倍氏の周辺が認めたことは、補てんを否定していた安倍氏の国会答弁を根底から覆すものです。補てんしていた額は2015~19年で800万円以上とも、916万円とも報じられています。ホテルが発行した明細書や領収書の存在も明らかになりました。「明細書はない」などと強弁してきた安倍氏のウソはいよいよ動かせません。

 現職の首相が1年にわたって国会を欺き続けたことは、国会審議の前提を崩すものであり、民主主義を根幹から揺るがす重大事態です。集中審議では、日本共産党の宮本徹衆院議員と田村智子参院議員をはじめ、立憲民主党などの議員が、「桜」疑惑を取り上げました。ところが菅首相は、安倍事務所のことであり「私の立場では答えられない」とか、検察の捜査中を口実に「答弁を差し控える」と言うばかりです。安倍氏が虚偽答弁をしていた可能性についても答えません。菅氏が官房長官として、安倍氏の主張に沿った国会答弁をしていたことの責任を問われると、「(安倍氏に)確認していた」と居直りました。

 事実をきちんと確認をせず、安倍氏のウソ答弁をおうむ返しにして、真相を隠ぺいする片棒を担いできたことについて菅首相は責任や痛みを感じないのか。首相の開き直りは、通用しません。

 菅首相は自らの過去の答弁を反省し、「桜」疑惑の全容解明に動くべきです。安倍氏周辺が補てんを認めたことは、いままでと異なる新たな局面です。捜査当局任せにするのでなく、明細書などの資料提出をはじめ国会で徹底解明することが急務です。安倍氏の招致では、ウソを言えば偽証罪に問われる証人喚問として行うことが不可欠です。

 菅首相はコロナ感染対策でも反省がありません。「Go To トラベル」が感染を広げるきっかけになったと専門家の指摘が続いているのに、「Go To」事業に固執し、一部見直ししかしません。「第3波」到来で、重症患者が急増し、「医療崩壊」が現実のものになっています。雇用も暮らしも深刻で「このままでは年を越せない」と国民の悲鳴が上がっています。従来型の対策から一歩も出ない姿勢を改めるべきです。

国民の苦境を直視せよ

 2020年度第2次補正予算の予備費約10兆円のうち使われていない7兆円以上の使途を、菅政権は臨時国会中に明らかにすべきです。PCR検査の戦略的な抜本拡充、医療機関への強力な財政支援、事業と雇用、暮らしを守り抜くための具体的な対策を一刻も早く示すことが政府の責任です。





GoTo停止 感染防止対策に集中を(2020年11月25日配信『北海道新聞』-「社説」)

 国は観光支援事業「Go To トラベル」について、新型コロナウイルスの感染拡大が深刻な札幌、大阪両市内を目的地から一時除外した。

 道内のきのうの新規感染者は216人で、札幌市はその約8割を占める165人だった。道内の新規感染者が3桁になるのは20日連続だ。拡大防止に歯止めはかかっていない。除外はやむを得まい。

 鈴木直道知事はトラベルを推進する菅義偉首相の方針に足並みをそろえてきた。だが、コロナ分科会の提言を契機に国は方針を転換した。知事の対応は首相を追随する故に、後手に回ったと言える。

 札幌や旭川などでは医療体制が逼迫(ひっぱく)し、一刻を争う状況だ。今は経済対策より、感染防止対策に全力を挙げなければならない。

 除外で札幌、大阪を目的にした新規予約は3週間停止される。一部の予約済み分で割引が無効になる。国はキャンセル料を負担し、旅行会社などの損害は補償する。

 トラベル事業と感染拡大の因果関係について、国は明確な説明を避けてきた。

 ただ、トラベル事業に東京発着分が加わった10月を境に、道内の感染は再び増え始めた。専門家も「道内外の人の往来が活発化したことが要因」と指摘する。

 知事も事業と感染者増との関連は認めてこなかった。今月中旬、札幌市民に外出自粛要請を出した際も、事業の見直しは不要との考えを示していた。

 だが、外出自粛も効果が判然としない約1週間後に「菅首相が(見直しを)判断した。一時停止を検討せざるを得ない」と、政策を急転換した。知事の国任せの姿勢が道民の困惑を招いている。

 札幌や旭川では、基幹病院でクラスター(感染者集団)が発生し、医療崩壊が危惧されている。道は病床や療養施設のさらなる拡充を図る必要がある。

 空き病床があっても、看護師らが不足して受け入れ困難な事例もある。国を通じ、道外からの応援を検討する必要もあろう。

 一時停止に伴い、宿泊業や運輸業への打撃は避けられない。道や札幌市が経営安定化政策を十分に講じられるよう、国は自治体向けの財源支援を手厚くするべきだ。

 全国知事会からは、トラベル事業停止の判断を、知事側に委ねる国の姿勢に疑問が出ている。

 事業は開始当初から明確な停止の基準や手続きがなかった。今後、対象から外れる地域の拡大も考えられる。早急な判断が必要だ。



GoTo見直し 政府は混乱回避へ責任果たせ(2020年11月25日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染状況に応じ、臨機応変に政策を軌道修正するのは当然だ。混乱が広がらぬよう、万全の措置を講じるべきである。

 政府が需要喚起策「Go To キャンペーン」の運用見直し策を発表した。

 観光支援の「Go To トラベル」では、感染拡大地域を目的地とする旅行について、新規の予約に加え、予約済みの場合も補助対象から外す方針を示した。札幌、大阪の両市は、12月15日まで対象から除外するという。

 東京都を含む都市部では、病床の使用率や感染経路が不明な患者の割合が高まり、感染状況が2番目に深刻な「ステージ3」に近づいているとの見方が出ている。

 経済活動と感染防止の両立は必要だが、今は感染の抑止に比重を移すべき局面である。政府は強いメッセージを発して、国民に協力を呼びかけることが大切だ。

 政府は、感染拡大地域から出発する旅行については、引き続き割引対象とした。都市部の住民が旅行を控えた場合、事業の効果が薄れると懸念しているのだろう。

 だが、それでは地方に感染を広げる可能性もあり、かえって経済の早期回復を阻害する結果にならないかと心配されている。感染が拡大し続けた場合には、柔軟に見直すことが不可欠だ。

 一方、政府は、飲食店を支援する「Go To イート」で、食事券の発行やポイントの利用を控えるよう、事業者や住民に求めることを知事に要請した。

 トラベル、イートともに、様々な判断が知事に委ねられている。国と地方が緊密に連携し、実情を踏まえて効果的に対処することが重要だ。政府は、具体的な指針を示してもらいたい。

 今回の見直しで、旅館や飲食店などにキャンセルが殺到する恐れもある。官民が協力し、予約サイトのシステムなどに支障が生じないように注意してほしい。

 政府は、自治体が事業者に営業時間の短縮を要請できるよう、臨時の交付金を追加で配分する方針だ。今年度2回の補正予算で計上した予備費も活用し、自治体の財政を下支えせねばならない。

 コロナ対策を担う西村経済再生相は先週、今後の感染状況に関して、「神のみぞ知る」と述べた。先行きが見通せないとはいえ、無責任と受け取られかねない。

 多くの人が移動する年末年始を控えて、菅首相が今後のコロナ対策を明確に示し、国民に理解を求めることが大事だ。



GoTo混乱 責任回避が目に余る(2020年11月25日配信『東京新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が「GoTo」事業の見直しを表明した。ただ変更の中身が完全には明確にされていない上、対応を自治体に委ねる姿勢も目立つ。国は政策の実行責任者として強い自覚を持つべきだ。

 菅首相は先週末これまでの姿勢を一転し、事業を一時制限する方針を示した。しかし新型コロナはその前から急激に再拡大しており、事業継続を懸念する声も出ていた。首相判断は遅きに失したといえるだろう。

 今回、感染の増減に応じて事業を縮小したり停止したりする具体的な手段や基準がなかったことも露呈した。感染の再拡大は容易に想像できたはずだ。政策の出口戦略を用意していなかった形であり、国に猛省を促したい。

 西村康稔経済再生担当相は感染増減の見通しについて「神のみぞ知る」とし事業の利用についても「国民の判断だ」と述べた。この姿勢は国策の結果を旅行者や観光産業、各自治体に丸投げしたに等しく強く批判せざるを得ない。

 東京都の小池百合子知事や愛知県の大村秀章知事ら各知事は、事業を見直すにしても国が一定の基準を示してほしいと要望している。自治体が国と擦り合わせもせず、ばらばらに対策を実行しても効果は薄いためだ。

 知事らの求めは当然で国の対応に不備があるのは否定できない。ただ喫緊の課題は、経済とのバランスに留意しながら感染拡大をいかに食い止めるかだ。国と自治体は責任のなすり合いを避け、直ちに共同歩調を取るべきだ。

 GoTo事業が観光産業の支援に効果があることは間違いない。ただ問題は実施のタイミングだ。今回も見直しの動きが本格化したのは人出が確実に増える3連休の後だ。今夏の事業開始時も感染拡大と重なった。

 観光産業の苦境を考慮すれば見直しの判断が難しいことはある程度理解できる。だが感染拡大は国民の命に直結した問題だ。コロナ禍で苦しいのは観光産業だけではない。観光に限らず解雇や雇い止めは増え続けており経済全体を公平にみる姿勢も重要だ。

 GoTo事業はトラベルだけでも約1兆3000億円という巨額の国家予算が投じられている。今足りないのは責任を持つ菅首相の強いメッセージだ。

 今後、コロナ禍対策とGoTo事業を具体的にどうやって舵取(かじと)りしていくのか。首相が自らの考えを自らの言葉で国民に語るべきである。 



GoTo見直し 首相が指導力発揮せねば(2020年11月25日配信『新潟日報』-「社説」)


 またしても新型コロナウイルスの感染拡大に対する政府の及び腰が見えた。

 感染はこれまでにない勢いで広がっている。政府は変化の局面をきちんと捉え、感染を封じ込むための対策を的確に講じてもらいたい。菅義偉首相はしっかり指導力を発揮すべきだ。

 感染者数の最多更新が続き、専門家から早急な対応を迫られる中で、首相はようやく観光支援事業「Go To トラベル」の運用見直しを決めた。

 これを受け、政府は24日、札幌市と大阪市をGoToトラベルの対象地域から3週間程度、除外すると正式決定した。

 予約済みの旅行については割引適用を無効にし、利用者にキャンセル料支払いは求めない。旅行会社や宿泊施設の損害は国が補償する。

 「Go To イート」についてもプレミアム付き食事券の新規発行の一時停止などを検討するよう都道府県に要請した。

 経済回復を優先する姿勢の政府に対し、危機感を強めた専門家が感染防止策の強化に舵を切るよう尻をたたいた格好だ。

 政府の新型コロナ対策分科会が政府に決断を迫ったのは秋の3連休前日の20日だった。

 こうした声に押し切られる形で、菅首相は翌21日になって運用見直しを表明したが、具体的な内容を決められないまま3連休が過ぎた。

 感染状況は各県知事が一番詳しいとして「知事にまずしっかり判断してほしい」(西村康稔経済再生担当相)と、丸投げするような言動も目立った。

 方針が急転換したとはいえ、感染が広がった場合の対策を十分に講じていなかったことが露呈したといえよう。政府は責任感が希薄なのではないか。

 政権の目玉事業なのに、伝わるのは西村氏が調整に当たる様子ばかりで、首相の姿が見えないことも気になる。

 トラベルの見直しでは、感染拡大が深刻な地域を「目的地」とする旅行予約は制限されるが、拡大地域を「出発地」とする旅行はどうするのか。

 全国知事会の指摘もあるが、感染拡大防止というのなら、そこをきちんと考えるべきだ。

 トラベルが観光事業者の支援に効果を上げているとして、事業の推進を求める立場の全国知事会は、23日に国への緊急提言をまとめ、除外するのは都道府県単位ではなく、地域限定とするよう求めた。

 都道府県全域で実施した場合は経済的なダメージが大きすぎるといった懸念があるためだ。政府にはこうした声を踏まえ、各地の実情に応じたきめ細かな対策を講じてもらいたい。

 一時停止の期間や解除後の対応についてもあらかじめ明確な方針を示す必要があろう。

 年末年始の帰省や初詣など、一年で最も国民の往来が増える季節が迫る。感染が急加速して医療現場の逼迫(ひっぱく)を招くことは避けたい。

 経済回復のためには迅速な危機管理が必要だ。政府は肝に銘じなければならない。





政府は早急に具体策示せ/「Go To」 運用見直し(2020年11月24日配信『東奥日報』-「時論」)

 政府は、観光支援事業「Go To トラベル」の運用見直しに踏み切った。新型コロナウイルスの感染が深刻な札幌市、大阪市などを対象に、予約を一時停止する調整に入った。他の感染拡大地域についても知事の意向を踏まえ、停止するかどうか協議を進めるという。

 政府の分科会は、感染が急拡大している地域について飲食店の時短営業や「Go To キャンペーン」の運用見直しを求めていた。菅義偉首相はこれまで見直しを否定していたが、方針の転換を迫られた。

 経済再生と感染防止の両立にも限界があり、欧米のような爆発的感染を招けば、あぶ蜂取らずになる。今はブレーキを強く踏むべき局面だ。見直しは当然である。

 国内の新規感染者は東京、大阪、北海道、愛知などで顕著に増え、1日2千人を超えた。東京は独自の4段階の警戒度を最高レベルとした。専門家は「急速な感染拡大の局面」とし、従来になく厳しい状況との見解を示していた。

 そもそも事業は「感染拡大の収束後」の実施とされていた。だが、東京で感染が再拡大していた中、7月22日に前倒しして始められた。事業開始に当たって、感染拡大で中断せざるを得ない場合の対応策などは明確に定められていたのだろうか。

 見直しを打ち出したとはいえ、対象地域や開始時期など詳細が示されていない。予約済みのキャンセル料の補償などで、業者や利用者の間に混乱が広がることが予想される。見直しの影響を被る事業者への経済支援も必要だ。政府は、早急に一体で具体的な対策を示し、国民に協力を求めるべきだ。

 厚労省の専門家組織は「第3波」の要因を、基本的な感染予防策の不徹底、人の移動増加などと分析。今回の特徴は、クラスター(感染者集団)発生が繁華街だけでなく職場、大学、外国人コミュニティーなどに多様化し、感染場所が家庭内にも広がり対策が難しいことだと指摘した。

 重症者数も増え病床が埋まってきた。北海道などで医療体制逼迫(ひっぱく)の懸念が強い。行動制限や飲食店の営業時間短縮など強い対策が必要で、東京、愛知、大阪もそれに近づいている。専門家組織の評価に危機感を持ち、対応しなければならない。

 政府が「両立」の方針に固執したことで、コロナ対策は多くの面でちぐはぐになっていたと言わざるを得ない。

 例えば、会食での感染防止を強く求める一方、GoToイートを続けることとの整合性を取るため、原則4人以下に対象を絞るよう唐突に各知事へ要請した。5人の会食が危険で4人ならなぜ安全なのか。「4人以下に意味はあるのか。政府は混乱している」(長崎幸太郎山梨県知事)との反発も当然だった。

 既に人の移動の自粛を要請している北海道も、感染が集中する札幌市と道内他地域との往来自粛を要請する一方、GoToトラベルでの道外からの観光客受け入れは止めなかった。

 これまで対策が自助努力要請や重症者対応が中心で手詰まり感が強まったのも、政府が経済のアクセルを踏み続けたためだ。忘年会や帰省で人が動き、集まる年末が近い。雇用や事業を守る重要性は言うまでもないが、「両立」にこだわり、感染防止に穴があく状況は避けなければならない。



元の木阿弥(2020年11月24日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 妻と離縁して出家し、仏道に励んだ木阿弥(もくあみ)という僧がいた。しかし、年老いて心身が弱ると、妻の元に戻ってしまった。長年の修行が台無しになったとして人々は「元の木阿弥」と言ってばかにしたという。

 苦労して一度はよくなったものが再び元のよくない状態に戻ってしまう意味のことわざ。その語源だ。この「元の木阿弥」は、戦国武将の筒井順昭にちなむものなど語源には複数の説がある。だが、苦労が水泡に帰すという意味では、この説が最もしっくりくる。

 思えば新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言の下で迎えた春の大型連休は、皆が行楽をがまんした。宣言解除後のお盆もしかり。オンライン帰省などでがまんした。経済の停滞といった大きな痛みや忍耐の代償として、これまで感染拡大を一定程度抑えることができた。

 そうした苦労がまさに元の木阿弥となりかねない状況。おとといまで5日続けて新規感染者が2千人を超えるなど、春の第1波をしのぐ勢いだ。全国知事会はきのう「Go To トラベル」に関して都道府県が「感染急増」と判断した地域は、事業対象から外すといった緊急提言の素案を示した。

 北海道のように、一時停止受け入れの準備に入ったところもある。知事たちにとっては苦渋の選択だろう。人とカネが大きく動く年末に向け今の厳しい状況をどれだけ改善できるか、新たな正念場だ。政府は、同事業運用見直しの詳細を数日中に示すという。





面子(2020年11月23日配信『東奥日報』-「天地人」)

 新型コロナの感染者急拡大を受けて、ようやく政府の観光支援事業「Go To トラベル」の運用が見直される。ただ中身は、感染拡大地域への旅行の新規予約一時停止など限定的で、対象地域や時期も調整が必要だ。

 菅義偉首相が、官房長官時代に旗振り役を務めた肝いりの事業とあって、おいそれと面子(めんつ)をつぶすわけにはいかなかったようだ。医療崩壊を恐れる政府分科会が「英断を」と求めるまで、感染対策に軸足を移す気配はなかった。

 面子をかなぐり捨ててでも、米大統領の座を手放せない理由があるように映るのがトランプ氏だ。民主党のバイデン前副大統領が勝利確実となった選挙結果を認めず、政権移行への協力も拒み続けているのは尋常ではない。

 突然、国防長官を解任してアフガニスタンとイラクの駐留米軍の削減方針を発表したり、大統領選で不正があったという主張を否定した国土安全保障省の幹部も解任したりと、やりたい放題の鉄面皮ぶりだ。

 対照的な南米ウルグアイの元大統領が先月、政界引退を表明した。報酬の大半を寄付して農場で暮らすなど「世界一貧しい大統領」として知られたホセ・ムヒカ氏、85歳。「人生で成功するということは人を負かすことではない。倒れるたびに起き上がるということだ」。若者に向けた呼び掛けに、コロナとともに生きるための秘訣(ひけつ)が二重写しになる。



「Go To」運用見直し 根拠を示し協力求めよ(2020年11月23日配信『中国新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が観光支援事業「Go To トラベル」の運用見直しを表明した。感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。飲食業界を支援する「Go To イート」は、食事券の新規発行停止などの検討を都道府県知事に要請するという。感染が急拡大している現状を考えれば、見直しは当然のことだろう。

 人が動けば、感染が広がることはかねて分かっていたはずである。既に専門家からは「Go To」事業の一時中断などを求める声が高まっていた。にもかかわらず、経済活動を重視する政府は腰が重く、先週末の国会でも継続する方針を繰り返し表明していた。

 驚くのは、感染がどの程度広がればブレーキをかけるといった具体的な目安の検討が今に至るまでなされていなかったことだ。緊急事態宣言などこれまでに取り組んだ感染防止対策の効果を科学的に検証し、その知見を踏まえて次の施策を進めるべきではないか。

 政府が旗を振っておきながら「Go To」の何が感染拡大につながったのか、何が問題だったのかが示されなければ、国民は不安になるばかりだ。しかも今回の見直し表明は、3連休で多くの人が既に動いているさなかである。決断のタイミングにも批判は免れまい。

 さらに理解に苦しむのが、見直しについて、いつから、どの地域を対象にするかといった肝心な点が何も示されていないことだ。西村康稔経済再生担当相はきのう「ここ何日かで方向性を示し、都道府県知事と連携して対応したい」と述べた。「生煮え」の状態で見直しを表明し、都道府県に判断を迫るのだとすれば無責任に過ぎよう。

 そもそもこの事業は、「感染拡大が収束し国民の不安が払拭(ふっしょく)された後」に開始することになっていた。だが政府は東京で感染が再拡大していたさなかの7月に前倒しして始め、「前のめり」だと批判された。

 政府が旗を振って全国に人の流れをつくる「Go To」事業の是非や、開始時期がよかったのかどうかについても、正しく検証されなければならない。

 感染は医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な地方にも広がりつつある。重症化リスクの高い高齢者の感染も増えている。さらに広がれば持ちこたえられなくなる。政府の分科会は「今まで通りの対応では早晩、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する可能性が高い」と警鐘を鳴らす。コロナはもちろんそれ以外の病気の人の手術や入院にも支障が出かねない。国がまず旗を振るべきは、医療機関の態勢強化や検査態勢の拡充ではないか。

 経済対策が重要であることは国民も理解していよう。しかし感染が爆発すれば、経済活動どころではない。今は感染防止を優先すべき時である。

 分科会は先日の提言の冒頭で「個人の努力に頼るだけではなく、今までと比べより強い対応及び人々の心に届くメッセージを期待したい」と記している。政府は重く受け止めるべきだ。

 あいまいな発言で国民を振り回すのではない。何をどうすれば感染がどれだけ抑えられるといった具体的な根拠を示し、国民に協力を求めるべきだ。

 菅首相には今こそ自らの言葉で、感染押さえ込みに向けた決意を語ってほしい。 



GoTo見直し(2020年11月23日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 3連休もきょうで終わり。紅葉狩りなどを楽しむ観光客で各地はにぎわっている。旅行は新型コロナウイルス禍で息詰まる日々の貴重な潤い

▲その旅行を後押しする「Go To トラベル」事業が見直される。コロナの「第3波」を受け、政府は感染拡大地域への新規予約を一時停止するという。飲食業界を支援する「Go To イート」にも一定の制限を設ける方向だ

▲新規感染者数が連日、最多を更新している。医療崩壊を恐れる専門家の提言で、経済優先の菅義偉首相が重い腰を上げた。地域によっては、お得な料金で旅行できる特典が利用できなくなりそうだ。旅行熱を冷ますのは間違いあるまい

▲感染を広げないためには人の移動を減らす必要がある。政府による運用見直しは避けがたい情勢だったが、肝いり事業にこだわり、後手に回った感が否めない。一方で、ようやく業況が上向きかけた旅行や飲食業界にとっては死活問題。新たにどう支援するかも含め、今後は先手先手で

▲感染対策と経済回復いずれも大事なのは言うまでもない。ただ、感染対策は個人の予防頼みでは限界があり、国がそちらに軸足を移すべき時だ。医療、ひいては経済を一層のダメージから守るためにも

▲これからは忘年会シーズンで、人の移動が活発化する年末年始も迫る。改めて予防の徹底を。「旅は道連れ世は情け」で、互いに支え合ってコロナ禍の克服という長旅に挑みたい。



GoTo見直し 早急に「公助」態勢構築を(2020年11月23日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 見直しを表明した。

 各地でキャンペーンによるにぎわいが伝えられている3連休初日の方針転換は、いかにもちぐはぐな印象である。具体的な見直し時期や対象地域も今後の検討課題としており、「遅きに失した」との批判は免れまい。政府は、これまでの経済優先の政策にブレーキをかける対応に明確な方針を示した上で、生活支援などの「公助」の態勢を早急に構築すべきだ。

危機感に大きな溝

 全国のコロナの新規感染者は10月から増加傾向に入った。今月12日には1660人が報告され、過去最多を更新。その後も拡大が続いている。

 こうした状況を受け、日本医師会の中川俊男会長は11日の会見で「第3波と考えてもよい」と表明。政府のコロナ対策分科会の尾身茂会長も12日に「感染拡大がこのまま続けば一人一人の努力だけでは対策が追いつかなくなる」と警告していた。

 共同通信社が14、15日に実施した全国世論調査でも、感染者が急増している現状に、「不安を感じている」は「ある程度」を含め計84・0%に。「Go To トラベル」の実施期間を延長する政府方針についても、反対が50・0%で賛成の43・4%を上回った。

 にもかかわらず、菅首相は「Go To」見直しについて慎重姿勢を示し続け、19日の段階でも「静かなマスク会食」の実践という国民の自助努力を提言。国民や専門家らが抱いていた危機感とは大きな溝があった。

安全網確立が必要

 結局、20日のコロナ対策分科会の見直し提言を受けて方針転換を迫られた形だが、泥縄であることは否めない。

 対象地域は、感染状況を表す4段階の国基準で「急増」のステージ3相当の地域が想定され、現時点で北海道や東京都、愛知県、大阪府が該当すると見込まれる。

 西村康稔経済再生担当相は「知事の意向を尊重して調整したい」としているが、キャンセル料の支払い方法や予約システムの変更をどうするかなどは不透明なまま。まずはこうした具体的課題の解決策を示すのが先決だろう。関係業界の混乱を最小限とする対応が必要である。熊本も先行事例を見据えながら、対象となった場合に備えておくべきだ。

 また、政府には、医療支援とともに、経済活動の縮小に伴う国民生活への追加の支援策も早期に示してほしい。

 現在、特に気になるのが自殺者の急増である。警察庁によると、10月の自殺者数(速報値)は2153人で、前年同月の1・4倍。4カ月連続で前年同月を上回り、女性の増加傾向が著しい。非正規労働者を中心に解雇が急増するなどコロナによる生活不安が影響しているのは間違いあるまい。首相は、「公助」による安全網確立が今こそ必要であることを強く認識すべきだ。

問われる補正内容


 政府は現在、第3次補正予算の編成作業に着手しているが、「Go To」見直しを受け、改めてその内容が問われる。

 検討中の項目では、雇用調整助成金の拡充措置の期限延長やワクチン確保の一方で、「Go To トラベル」の延長や地方自治体のデジタル化支援など、コロナ後を見据えたような経済優先の踏襲が目立っていた。今はまだそのような状況にないことが明確になった以上、前述した安全網確立を最優先するべきだ。このところ正式な記者会見を開かないままでいる首相には、今後のコロナ対応の方針について、明確で丁寧な説明を求めたい。



「Go To」見直し 補償の拡充が最優先だ(2020年11月23日配信『琉球新報』-「社説」)

 「Go To」事業が再び迷走している。菅義偉首相は観光支援事業「トラベル」と飲食業界支援策「イート」の2事業で見直しを表明した。

 遅きに失したとしか言いようがない。21日からの3連休を利用し、全国で多くの人が観光旅行を楽しんでいる。これまでも連休明けに感染者が増えた経験と反省が全く生かされていない。

 見直しによるキャンセルが続けば事業者への補填(ほてん)がまず必要だ。さらに観光、飲食業界が安心して休業し、収束後も事業を継続するには補償の拡大が最優先であることを政府は直視すべきである。経済再生も大事だが、感染症対策の大本は人の接触を最小限に減らすことだ。

 見直しで「トラベル」は感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。「イート」は食事券の新規発行停止を都道府県知事に要請する。時期や地域は未定だ。

 沖縄は21日現在、新規感染者が10万人当たり17.64人で、全国4番目の多さだ。見直し対象地域になる可能性は十分ある。確実なのは、両事業とも見直しによって沖縄経済に多大な影響を及ぼすことだ。

 「トラベル」の開始で沖縄関係航空路線は搭乗率が持ち直した。ホテル稼働率も一部で80~90%台に回復している。これが再び7月以前の水準に戻るとなれば、再度の雇用調整、補償なき休業へ追い込まれる事業者が出かねない。

 国民にとっても新たな混乱の種でしかない。旅行できない場所がどこなのか。感染拡大地域を目的地とする旅行は停止するが、11月になって感染者が増えている東京、大阪、北海道から沖縄に来るのは認めるのか。発行済の食事券やポイントは利用できるのか。全く示されていないからだ。

 そもそも12日に国内新規感染者が1650人で最多となって以降、14日まで3日連続で最多を更新し続け、18日には初めて新規感染者数が2千人を超えた。「第3波」到来は誰の目にも明らかだった。

 医療崩壊への危機感から、日本医師会や東京医師会の会長、政府の感染症対策分科会が一時停止や見直しを求めたのも当然だ。日本医師会の中川俊男会長は明確な根拠を示しづらいと前置きしつつも「(感染拡大はトラベル事業が)きっかけになったのは間違いない」と指摘している。

 専門家の指摘にもかかわらず、コロナ対策を担う西村康稔経済再生相は、今後の感染拡大は「神のみぞ知る」と言い放った。無責任の極みだ。

 「最大限の警戒感」を持ち「効果的な対策を迅速に実行する」と言う菅首相も、少人数での会食呼び掛けなど「国民の自助」に頼るだけでまともな対策を示していない。

 経済再生は重要課題だが、まずは国民の命を守ってこその話だ。「Go To」事業見直しは当然として、国が本年度予算にコロナ対策として計上した予備費10兆円を今こそ「公助」に活用すべきだ。



[GoTo一時停止]経済支援策も一体的に(2020年11月23日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 爆発的な感染へ向かいつつある重大な局面だ。いったん規模縮小へかじを切るのもやむを得ない。

 菅義偉首相は21日、自ら音頭を取ってきた観光支援事業「GoToトラベル」の運用見直しを表明した。新型コロナウイルス感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。飲食業界を支援する「GoToイート」も、都道府県知事にプレミアム付き食事券の新規発行停止を求める。

 多くの人たちが観光地に繰り出した3連休のさなかの制限要請が映し出すのは、政府のちぐはぐでドタバタした対応だ。

 前日の20日、感染症対策分科会はGoToキャンペーンの運用見直しを求める提言をまとめた。

 都市部を中心に感染が急拡大する中、「人々の健康のために英断を」という専門家の危機感に押され、ブレーキに足を移した格好である。

 コロナ禍による日本経済の落ち込みは深刻だ。特に観光業や飲食業が大打撃を受けている。

 首相はこれまで経済再生を優先しGoTo見直しに否定的だった。「両立」に固執するあまり泥縄的な対応になったことは否めない。

 未知のウイルスとの闘いは終わりが見えず、感染予防と経済活動の両立をどう図るかは困難な作業である。

 事業や雇用を守ることはもちろん重要だ。ただ今の状態で何も手を打たなければ、医療体制を維持できず、経済活動にさらにブレーキをかける事態になりかねない。

■    ■

 トラベルの新規予約の一時停止に関し、具体的な見直し時期や対象地域は示されていない。

 回復の手応えを感じ始めていた観光業者や飲食店などは、政府の方針転換に再び不安を募らせている。

 分科会は、4段階の基準で上から2番目の「ステージ3(感染急増)」の地域をトラベルから除外するよう求めている。政府は「都道府県知事と連携しながら対応する」方針だ。

 北海道、東京、大阪、沖縄などは、感染状況を判断する指標の一つ病床使用率が18日時点で「ステージ3」に相当する数値となっている。

 見直しの前提となるステージは六つの指標に基づき知事が総合的に判断することになっているが、県をまたぐ移動制限などは政府が主体的にかかわるべきではないか。

 トラベル見直しで発生するキャンセル料が生じない仕組みも整える必要がある。

■    ■

 22日の新規感染者は2100人余りで5日連続で2千人を超えた。県内も32人で高水準が続く。

 政府は感染状況によって自治体が再び飲食店に時短営業を求める際の財政支援を打ち出している。

 GoToを一時停止した場合、その地域や事業者への経済支援策も責任を持って実施すべきである。

 県内では夏場の感染拡大で病床や看護師不足に陥り混乱が広がった。冬場の医療・検査体制の総点検も急がなければならない。





GoTo見直し 判断があまりにも遅い(2020年11月22日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府は、観光支援事業「Go To トラベル」の運用を一部見直すことを決めた。

 新型コロナウイルスの感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する措置を講じる。

 国内の新規感染者が連日、過去最多を更新する中、これ以上の感染拡大を防ぐために、経済活動にある程度ブレーキをかけるのはやむを得まい。

 ただ、専門家からは全国的な流行の「第3波」を懸念する声が以前から出ていた。政府の判断は遅きに失した感が否めない。

 「Go To」事業が落ち込んだ個人消費の回復を下支えした面はあるとはいえ、感染爆発を招けば経済の再生は遠のくばかりだ。

 政府には感染状況を冷静に見極め、機敏に政策を見直す姿勢が求められる。

 「Go To」事業の見直しは、政府の対策分科会が20日夜に出した提言を受けて決定した。

 予約停止の開始時期や対象地域などの具体的な内容は今後詰めるという。

 既存予約のキャンセル料の補助も検討するが、この3連休が対象になるかは不明だ。感染がさらに広がる懸念は拭えない。

 唐突な方針転換であり、準備不足は明らかだろう。

 事業は経済を重視する菅義偉首相の肝いりだ。感染の再拡大にも、首相は事業で感染した人は少ないとしてそのまま継続してきた。

 これに対し、日本医師会の中川俊男会長は医療提供態勢に関し「東京、北海道は逼迫(ひっぱく)している。ほかの地域も間もなく逼迫するだろう」と警鐘を鳴らし、感染拡大地域との往来自粛を呼びかけた。

 分科会の尾身茂会長もこのまま感染拡大が続けば「普通の医療ができなくなる」と厳しく指摘し、政府はようやく重い腰を上げた。

 分科会に先立つ参院本会議で、首相は事業の必要性を強調していた。医療崩壊への危機感があったか疑わしい。

 首相が事業継続にこだわるあまり、対応が後手に回ったのは明白である。

 首相は事業の見直しに合わせて、飲食店の営業時間短縮を要請した自治体が支給する協力金への財政支援策として、地方創生臨時交付金で500億円の枠を設ける方針も示した。

 これは交付金の未配布分を活用した急場しのぎにすぎない。時短の効果を上げるためにも、自治体が十分な協力金を支払える法的な裏付けを整えるべきだ。



GoToの運用見直し 危機感強め十分な対策を(2020年11月22日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染者急増を受け、政府は需要喚起策「GoToキャンペーン」の運用見直しを決めた。

 「GoToトラベル」は感染拡大地域への旅行の新規予約を一時停止する。「GoToイート」では、プレミアム付き食事券の新規発行停止などを知事に要請する。

 菅義偉首相は、事業を従来通り続ける方針を繰り返し表明してきた。しかし、1日当たりの新規感染者数は連日過去最多を更新している。専門家による分科会は、より強い感染対策を求めていた。

 政府は方針転換を強いられた形だ。社会・経済活動と感染対策を両立させるとはいえ、危機意識が薄かったと言わざるを得ない。

 感染者の急増は大都市だけでなく地方にも広がっている。重症化リスクが高い高齢者の感染も増えている。

 クラスター(感染者集団)の発生場所は接待を伴う飲食店にとどまらず多様化し、感染経路が追えないケースも多くなっている。

 実態を十分に把握できず、感染拡大の防止が困難になってきているのが実情だ。

 首相は感染爆発を防ぐと言ってきたが、総力を挙げてきたとはいいがたい。提案したのは「静かなマスク会食」だ。予防対策の徹底だけを呼び掛けても、国民に危機感を持ってもらえるかは疑問だ。

 GoToトラベル見直しの対象は北海道や東京都、大阪府などが想定される。政府は知事との協議を急ぎ、具体策を速やかに決定すべきだ。予約のキャンセル料を国が負担することなども検討する必要がある。

 医療体制の面では重症者が増え、病床の逼迫(ひっぱく)を懸念する声が現場から強まっている。急増が続けば、コロナ以外の病気の患者も手術や入院に支障が生じかねない。

 個人や事業者による感染予防策も引き続き重要だ。高齢者や持病のある人は、改めて感染リスクが高い場所を避けるようにしてほしい。若年者も、自らが感染を広げることがないよう予防を徹底する必要がある。

 経済との両立は重要だが、今は感染防止に軸足を移す時だ。社会全体で「第3波」を乗り切るためにも、政治は危機意識を強く持って取り組むべきだ。



「GoTo」見直し 具体策を一日も早く示せ(2020年11月22日配信『産経新聞』-「主張」)

 菅義偉首相が21日、新型コロナウイルス感染症対策本部の会合で、新型コロナ禍で打撃を受けた業界を支援する「Go To」事業の運用を見直すと表明した。

 観光業支援の「Go To トラベル」は、感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する。飲食業支援の「Go To イート」は食事券の新規発行の一時停止などを実施する。

 都道府県の一部が感染急増段階の「ステージ3」に入りつつあり、政府分科会の尾身茂会長は20日、札幌市について「ステージ3に入っている」と語った。

 このように感染拡大が止まらぬ以上、見直しは当然だ。陽性者が出た医療、介護施設などの入所者やそこで働く人々全員を対象に国の費用で新型コロナの検査を行うことも評価できる。

 そうであっても、腑(ふ)に落ちない点がある。

 菅首相は対策本部の会合後、記者団に対して政府の方針を説明したが、いつから、どの地域を対象に「Go To」事業を一時停止するのかという肝心な点を説明しなかった。

 ウイルスを運ぶのは人である。人の移動が活発になる3連休にすでに入っている。

 政府が今ごろ会合を開き、方針を決めたことすら遅いのに、具体的な実施対象、期間を示さないのはどうかしている。対応が後手に回っている感が否めない。

 菅首相は「Go To」事業を推進してきた。経済社会活動と感染防止対策の両立を図ることは望ましいが、感染状況に応じてブレーキとアクセルを踏みわける必要はある。

 運用見直しは、都道府県知事と連携して行うというが、対象地域の決定は五月雨式で構わない。早急に具体策をまとめ、公表してもらいたい。

 懸念されるのは、地域の医療体制が崩壊することだ。政府の分科会は20日、「今まで通りの対応では早晩、医療提供体制が逼迫(ひっぱく)する可能性が高い」と警鐘を鳴らした。政府と自治体は病床や宿泊療養施設の確保を急いでほしい。

 菅首相が取り組むべきことはまだある。臨時国会の会期末(12月5日)を待たずに記者会見に臨み、自らの言葉でコロナ収束への取り組みと決意を国民に伝えることだ。



「GoTo」見直し/政府対応はまたも後手に(2020年11月22日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス禍の旅行支援策「Go To トラベル」と外食支援策「Go To イート」について、菅義偉首相が政府の対策本部会議で一部見直しを表明した。感染拡大地域への旅行の新規予約を一時止めるほか、食事券の新たな発行も止めるよう知事に要請する。

 11月に入って全国で感染者数が急拡大し、病床使用率も上昇して医療体制の逼迫(ひっぱく)が現実味を帯びている。専門家は爆発的感染の可能性に言及し始め、人の移動を促す「Go To」に批判が集まっていたが政府は見直そうとしなかった。

 踏み込んだ対策を求める声に押された形だが、きのうからの3連休で空港や観光地は混雑も見られる。またも政府のコロナ対策は後手に回ったといえる。

 首相は見直しの具体的な時期や内容に言及していない。年末年始に向け「Go To」利用の増大が見込まれ、政府は早急に中身を詰めねばならない。すでに予約した人のキャンセル対策も不可欠だ。

 首相は経済再生と感染拡大防止の両立を掲げ、安倍前政権の官房長官当時から「Go To」に力を入れてきた。見直しに二の足を踏んだ一因だろう。

 国民に「3密」回避やマスク着用を呼び掛けてはいるが、政策の重心は経済再生にあった。政府がアクセルを踏み、ブレーキは国民任せだったといえる。

 だが強力な感染防止対策が遅れれば遅れるほど、抑え込みが難しくなる。緊急事態宣言を出すような事態になればより大きな損失を被ることを、政府は学んだはずではなかったか。

 中途半端な対応では同じ展開になりかねないとの強い危機感を持ち、対策を講じる必要がある。国民にも明確なメッセージを示し協力を求める段階だ。

 高価格の宿泊施設や飲食店への利用集中、ポイント利用を巡る不正など、一連の「Go To」にはいくつも問題点が指摘されてきた。急ごしらえで施策の内容を十分に煮詰めなかった結果である。中小業者までメリットが及んだとは言い難い。

 今回の見直しを機に制度全体を再考し、感染が収束した段階で広くメリットが及ぶ事業となるよう、「Go To」全体を練り直すべきだ。



[新型コロナ・GoTo見直し] 遅きに失した首相判断(2020年11月22日配信『南日本新聞』-「社説」)

 菅義偉首相はきのう、新型コロナウイルスに対応した需要喚起策「Go To キャンペーン」の運用を一部見直すことを表明した。
 観光支援のトラベル事業では、感染拡大地域を目的地とする旅行の新規予約を一時停止。飲食店支援のイート事業でも、食事券の新規発行停止などの検討を都道府県知事に要請する。

 感染者が急増する中、経済再生を優先してきた菅政権にとって方針転換を余儀なくされた格好だ。ただ、具体的な対象地域や開始時期は示せなかった。3連休に入ってからの判断は「遅きに失した」との批判を免れまい。

 経済と感染防止の両立には限界があり、欧米のような爆発的感染が生じれば元も子もない。政府には硬直的な姿勢を改め、直近の状況に臨機応変に対応していくよう求めたい。

 国内の新規感染者は10月下旬から拡大傾向にあり、特に東京、大阪、北海道、愛知などで顕著だ。全国ではきのうまで4日連続で2000人を超えた。

 専門家からは「第3波」の到来を指摘されていた。だが、菅首相は自ら主導したGoTo事業の見直しに否定的な態度を取り続けた。
 20日には政府の新型コロナ対策分科会が事業見直しを含む提言をまとめ、対応を迫った。尾身茂会長が「今まで通りでは経済、雇用への影響が甚大になる」と強調したのは、危機感の表れに違いない。

 北海道などでは医療体制逼迫(ひっぱく)の恐れが出ている。分科会が「感染急増」かどうかを判断する指標の一つ、病床使用率25%以上は18日時点で9都道府県と、1週間前の5都府県から増えた。

 都道府県側からは、これまでGoTo事業の中止などを望む声は表立って出てこなかった。経済回復の腰折れを避けたい意識が強いためとみられるが、今回の見直しで新たな判断を迫られることになる。

 西村康稔経済再生担当相は会見で「都道府県知事と感染や病床の状況を分析し、緊密に連携していきたい」と述べた。対応を急いでほしい。

 厚生労働省の専門家組織は、第3波の要因を基本的な感染防止策の不徹底、人の移動増加などと分析。今回の特徴はクラスター(感染者集団)が職場や大学など多様化し、家庭内感染も広がって対策が難しいこととする。

 鹿児島県の病床使用率は8%にとどまる。しかし、県内でも大学のサークル関連で20人以上のクラスターが発生するなど感染確認が続いており、警戒を緩めてはならない。

 年末年始は人が集まり、飲食をともにする機会も多くなる。3密を避けるなどの基本的な予防策を徹底できるよう今一度確認したい。



GoTo見直し(2020年11月22日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

政府は根本から姿勢を改めよ

 菅義偉首相が、観光需要喚起策「Go To トラベル」の運用の一部見直しなどを表明しました。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が感染拡大地域の適用除外などを提言(20日)したことを受けた動きです。あまりにも遅すぎる対応です。コロナはすでに「第3波」に突入し、感染者は激増しています。医療の現場などからは、早くから事業の見直しを迫る声が相次いでいたのに、あくまで続行に固執し、見直しを拒んできた菅政権の責任は重大です。感染の急速な拡大に真剣に向き合おうとせず、無為無策を続ける姿勢を根本から改めるべきです。

あまりにも遅きに失した

 菅首相は「Go To トラベル」について感染拡大地域を目的地とする新規の旅行予約を一時停止する方針を示しました。外食需要喚起策「Go To イート」も食事券の新規発行一時停止などを知事に求めるとしています。

 「第3波」の感染急拡大が深刻化する中で、人の動きを活発化させる「Go To」事業については、地域を限り実施することなど、大幅な見直しを求める声が続出していました。東京都医師会の尾﨑治夫会長は20日、「一時中断」を提起しました。感染者の急拡大で医療機関がひっ迫することへの強い危機感の表明です。批判の強まりの中、頑として見直しを拒否してきた菅政権も態度を変えざるをえなくなりました。しかし、抜本見直しに程遠いものです。すでに3連休に入り、人の動きは活発化しており、遅きに失した表明です。

 現在の「第3波」は、7~8月の「第2波」が抑えられていないうちに到来したと指摘されています。「Go To トラベル」が感染拡大の「きっかけになった」というのは、日本医師会の中川俊男会長をはじめ専門家の共通した認識として示されています。

 もともと感染が鎮まってから行うはずの「Go To」事業を7月から段階的に拡大してきたことの是非が問われます。感染リスクへの不安がある中で、国策として税金を投じて全国各地に人の流れをつくる政策を強行したことは厳しく検証されなければなりません。もともと同事業には、小規模業者には恩恵がないという問題もありました。苦境に立つ観光・飲食業者には、直接支援が行き届く別の仕組みを至急検討すべきです。全国一律の制度でなく、地域ごとの実情に見合ったやり方に切り替えることが重要です。

 感染を抑止することが、観光業をはじめ地域経済を安定させる土台です。PCR検査の大幅拡充を自治体任せにせず全額国庫負担で支えることや、感染者に接触した人を追跡できる保健所体制を強化することなどは急務です。

信頼できる政治の実現を

 医療機関のコロナ対応支援のために国が設けた「緊急包括支援交付金」総額約3兆円は10月末時点で2割弱しか現場に届いていません。これでは医療現場の疲弊は打開できません。コロナ影響で赤字に苦しむ医療機関への減収補てんの実現は待ったなしです。

 政府に求められる公的役割をまともに果たさず、「静かなマスク会食」などのメッセージしか出せない菅首相の姿勢に国民は不信を募らせています。国民の命と健康、暮らしを真剣に守る信頼できる政治への転換が急がれます。



「神のみぞ知る」(2020年11月22日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 罪に問われ死の宣告を受けた古代の哲学者は、こう言い残しました。「去るべき時が来た。私は死ぬために、諸君は生きつづけるために。しかし、どちらがよりよき運命に出あうか。それは神よりほかに知る者がない」

▼プラトンが記した『ソクラテスの弁明』の最後の一節は「神のみぞ知る」の語源とも。その言葉を引いた閣僚が批判を浴びています。「感染がどうなるかっていうのは、ほんとうに神のみぞ知る…」。コロナ対策を担う西村担当相の発言です

▼いまの政府の無策ぶりを象徴する無責任さ。第3波が襲い全国で感染がひろがっているのに、呼びかけるのは会食の仕方ばかり。やれマスクをしてだの、静かに食べてだの。そんなことしか発信できないのか

▼ようやく「Go To」事業の見直しを言いだしましたが、行楽シーズンの連休で人出は各地に。これまで散々あおっておきながら、はしごを外され不信感が募る人も多い

▼ここにきて中高年層への感染が増え、医療現場は緊迫しています。病床や人員、検査体制をどう確保するか。そうした支援に尽力するわけでもなければ、感染を抑え込む戦略もみえない。国民のために何をなすべきか、根本となる考えがないからでしょう

▼知らないことを自覚する―。ソクラテスは「無知の知」を己の哲学の出発点としました。それは、ただ生きるのではなく、よりよく生きるための指針でもあったといいます。そんな人類の知恵や教訓を説いたところで、恥を知らない政権には響かないか。





感染拡大下の連休 GoToと因果関係は薄い(2020年11月21日配信『北国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染者が連日のように過去最多を更新するなかで、秋の行楽シーズン最後の3連休を迎えた。観光業支援の「GoToキャンペーン」を利用した県外からの観光客で、北陸の観光地はにぎわうことだろう。

 人の移動や接触が増えれば、今は落ち着いている北陸でも感染が一気に広がる恐れはないか。首都圏や関西圏から地方へと感染が広がり始めている時期だけに、観光客を受け入れる地元関係者も不安は隠せない。

 菅義偉首相は20日の参院本会議で、Go To キャンペーンについて、「感染対策と経済の回復の両立が基本的な考え方だ。今後も適切に運用する」と述べた。同キャンペーンはこれまでに約4千万人が利用し、判明している感染者は176人という。この数字を見る限り、キャンペーンと感染拡大の因果関係は薄い。警戒すべき状況にあるとはいえ、見直しには慎重であってほしい。

 全日本シティホテル連盟の調査によると、9月の北陸三県の利用率は69・4%となり、全国10の地域別で最も高かった。特に19日から22日にかけての4連休は、県外からの観光客でにぎわい、金沢市などでは満室になったホテルも多かった。昨年9月の利用率は88・4%だったから、8割近くまで回復したことになる。

 北陸新幹線も8月が77%減、9月が63%減、10月は台風の影響で金沢-東京間の直通運転が13日間できなかった関係で11%減、2年前との比較では53%減だった。11月上旬は33%減と、急速に持ち直している。回復基調が強まったのはGo To トラベルで、東京発着旅行が割引対象になり、首都圏から地方への移動が増えたからだろう。

 9月の4連休から2週間後、石川県や富山県内の感染者はむしろ減少しており、連休中の混雑が感染を広げた痕跡はみられない。

 この3連休で、気になるのは気温の低下による影響である。米メリーランド大の調査では、平均気温が5~11度で、湿度が低い地域に感染者が多かった。本格的な冬の到来に向け、これ以上、感染が広がらぬことを祈りたい。



「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」(2020年11月22日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 春の味覚であるハマグリが、このところ九十九里浜に打ち上げられている。大粒の二枚貝がごろごろした晩秋らしからぬ光景は、一説によると海水温の変化が原因だという。虫の知らせと受け止め、肌に粟(あわ)立つものを覚えた人は多いかもしれない。

 ▼漢字で「蛤」と書くハマグリには、その美味と裏腹に怪しい伝承がある。中国の古典『礼記』いわく、山鳥のキジが海に入って大きなハマグリに姿を変え、海の中で吐いた息が蜃気楼(しんきろう)を起こす。「蜃」は「おおはまぐり」とも読み、やはり字の中には「虫」がいる。

 ▼空の怪異は虫のしわざ-と聞けば、「虹」も思い浮かぶ。こちらの「虫」は竜である。古代中国人が、山をまたいで川の水を飲む竜の姿から「虹」の字を作ったのは知られている。現れては消える蜃気楼や虹に、人々が「虫」の気配をみとめ畏れていたのが分かる。

 ▼それが狭い海を越え、奇瑞として喜ばれるようになった日本の虹である。「虫」より手強(ごわ)いコロナ禍が広がる中、感染予防策を施した飲食店に東京都が配るお墨付きのステッカーも、その意匠は虹だった。七色のお札につかの間の安心を覚えた利用客は多いだろう。

 ▼コロナ禍はしかし、職場や家庭にも感染の足場を広げている。観光業や飲食店を支援する「Go To」事業も、一部が停止される。皮肉にも、この時節は七十二候の「虹蔵不見(にじかくれてみえず)」に当たる。空気が乾き、虹がくっきり立つことはない、と。

 ▼七色のご利益も歯が立たないということか。専門家が「我慢」を国民に求める中、観光地や飲食店にとっては、ため息の尽きぬ3連休かもしれない。〈またゝけどまたゝけど虹睫毛(まつげ)の雨〉中村草田男。北風が目にしみそうな、ことしの冬である。





GoTo事業 ブレーキを踏む時だ(2020年11月20日配信『東京新聞』-「社説」)

 新型コロナの感染が急激に再拡大している。だが政府は観光や飲食を促すGo To事業を継続する姿勢を変えていない。感染対策と経済の両立は必要だとしても今はブレーキを踏む時ではないか。

 菅義偉首相はコロナ禍について「最大限の警戒状況にある」と言明している。その一方で、Go To トラベル、イートの双方を続ける方針を表明している。

 GoTo事業の狙いは、コロナ禍で売り上げが激減している観光や飲食の分野で消費を刺激することだ。元々は感染拡大が沈静化した場合に実施する対策でもあった。

 しかし政府は今夏の感染拡大期に開始し、再び感染が激増する今も姿勢を転換していない。警鐘を鳴らすと同時に感染拡大につながる政策を後押ししている形で、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいるようなものだ。

 感染者数は、東京都や愛知県、北海道などを中心に、最多記録を更新している。重症者が増え、医療が逼迫(ひっぱく)する気配を見せ始めている地域もある。

 この状況下で西村康稔経済再生担当相は、GoToトラベルの利用について「国民の判断だ」と述べた。だがトラベルは国が約1兆3千億円の予算を投入して行っている国策である。感染リスクが高まる中、国策の責任を国民に押しつけるのなら、見過ごすことはできない。

 事業全体の仕組みにも問題点がある。トラベルでもイートでも不正に近い行為が横行している。高級宿泊施設や予約サイトばかりが恩恵を受け、真に救済を求めている民宿や小規模な飲食店には支援が行き届いていないという指摘もある。

 感染対策ばかりに傾斜すると経済的痛手が深まり、生活苦が増えるなどかえって被害が広がるとの見方がある。それに異論はないが、事業はあくまで観光、飲食などに絞った消費促進策だ。

 コロナ禍はあらゆる業態に打撃を与えているが、特に非正規労働者など収入が比較的低い人々への影響が甚大だ。生活苦への対応は資金給付など直接的な支援策を強化するしか手はない。

 観光や飲食業全体に効果があるのであれば事業継続には原則として賛成だ。だが今は、いったん停止するか規模を縮小するタイミングではないか。矛盾点を改善した上で、感染状況を見ながら徐々に再開するなど臨機応変に対応すべきである。 



急速な感染拡大 強い危機感を政策で示せ 「Go To」の一部停止も(2020年11月20日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。低温低湿の冬場に深刻化することは、当初から懸念されていた。しかも本格的な冬の到来はこれからだ。政府も国民も一層の警戒を必要とする。

 東京都では19日、新たに報告された新型コロナの感染者が過去最多の534人となった。北海道でも266人を数え、全国でも最多記録を更新した。

 留意すべきは、夏の流行期に夜の街や若年層に感染が集中したのに対し、今回は家庭や職場での感染が目立ち、重症化のリスクが高いとされる65歳以上の高齢者の割合が増えていることだ。

 ◆医療現場の悲鳴に耳を


 救いは重症者や死者の数が比較的低く抑えられていることだが、これは医療従事者の奮闘に支えられた数字とみるべきだろう。その意味で、最も恐れるべきは、医療体制の崩壊である。

 日本医師会の中川俊男会長は18日の会見で、医療提供体制について「東京都、北海道は逼迫(ひっぱく)している。その他の地域も、間もなく逼迫するだろうとの連絡が入っている」と述べた。医療現場の悲鳴と受け止めるべきである。

 東京都は19日、感染状況に関する警戒度を最高レベルの「感染が拡大していると思われる」に引き上げた。「急速な感染拡大の局面を迎えた」とする専門家の状況判断が語られた。

 北海道は、新型コロナ感染者が利用可能な病床のうち、17日時点で7割超の病床が埋まったと明らかにした。道は近く病床数を17日時点の963床から76床増やし、1039床とする方針だが、感染拡大のペースがこのまま続けば、すぐにまた足りなくなる。

 大阪府は18日、自粛要請の基準「大阪モデル」で重症病床使用率が35%に達した。吉村洋文知事は「70%近くになる手前で(非常事態の)赤信号を出すかもしれない」と述べた。

 重症患者の治療に使う人工心肺装置「ECMO(エクモ)」などの普及を支援する「ECMOネット」によると、11月1日時点の装置の使用は全国で131件だったが、17日は197件に上ったという。医療現場は「逼迫」の状態に近づきつつある。

 こうした医療現場や地方の声が着実に政府に届いているか。はなはだ不安になるのは、国の観光支援事業「Go To トラベル」に対する意識の乖離(かいり)である。

 日本医師会の中川会長は18日の会見で、今週末を「秋の我慢の3連休としてほしい」と呼びかけ、「Go To トラベル」に関して「(感染拡大の)きっかけになったことは間違いない」と言及した。中川氏は19日にも自民党の感染症対策本部のヒアリングに呼ばれ「国が(移動を)推進することで国民が完全に緩んでいる」と述べた。

 これは事実だろう。ウイルスは自ら移動することはできず、人の移動に伴い感染範囲を広げる。

 だが加藤勝信官房長官は「県をまたぐ移動の自粛を一律に要請する状況ではない」「基本的考え方に何ら変更ない」として「Go To」事業の継続を表明した。マスクの着用、手洗いの徹底、3密の回避で感染防止と事業継続の両立が図れるとの立場だ。

 一方で北海道は、札幌市で不要不急の外出や、道内の他地域との往来を自粛するよう要請している。道内の移動が制限されている地域に、国の事業で観光に向かうことは矛盾しないのか。

 菅義偉首相は「最大限の警戒状況にある」と強調した上で、改めて国民に3密回避など基本的な感染対策を徹底するよう協力を求めた。専門家から飲食を通じた感染リスクの指摘もあったとして、飲食時も会話の際はマスクを着用する「静かなマスク会食」もお願いした。

 ◆個人努力に依拠するな

 努力しよう。国民は十分に頑張っている。来日した国際オリンピック委員会(IOC)のバッハ会長は、欧米より感染者数が抑えられている国内の現状を「日本の方々の規律正しい姿が違いを生んでいる」と述べた。これは日本の美質であり、誇りである。

 ただし、一人一人の感染防止策には限界がある。政府や首長には今、強い言葉と政策でコロナと対峙(たいじ)することが求められる。アナウンス効果も含め、感染拡大地域での「Go To」の事業停止も選択肢である。





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