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最後のとりで「児相」の仕事に密着した㊥ 子どもの成長に最良の選択を(2020年11月24日配信『東京新聞』)

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親が子の施設入所などに同意しない場合は家庭裁判所に申し立てる。弁護士(右)と打ち合わせて期日に臨む北児相職員の西川裕幸さん=東京・霞が関の東京家裁で

 「あ!」。自転車で遊んでいた女の子の顔が、こちらを見てぱっと明るくなった。東京都内の住宅街にある児童養護施設。「こんにちは。後でお話ししようね」。都北児童相談所の児童福祉司、西川裕幸さん(55)はニコッと笑いかけ、施設の建物に入った。

 「最近の様子はどうですか」。西川さんは施設の担当指導員と向き合うと切り出した。女の子の母親は身体的な暴力をふるうことはないものの、きっかけがあると怒声を上げ、まだ幼児の娘を責め続ける心理的虐待を繰り返していた。女の子は一時保護を経て、今夏から施設で暮らす。

◆心理的虐待に定期的ケア

 「甘えや要求があふれ出して収拾がつかないことがある」と指導員。西川さんは、児童心理司も関わって児相と施設が連携し、定期的な心理ケアを考えることを提案した。西川さんに会えた女の子はうれしそうにソファで跳びはねながら、幼稚園の様子を懸命に話していた。

 指導員によると、女の子は就寝時に「おうちに帰りたい」とつぶやく一方、「怒られてばかりでいやだった」とも。「お母さんは、会いたいですよね」と話す指導員に、西川さんは母親の現状を説明し「すぐに(家庭に)帰せる状況ではない」と厳しい見通しを伝えた。

 「子どもにとって家庭は本来、他には代えがたいもの。子どもに適切に向き合えない親自身も精神疾患などつらさを抱えていることも多く、話を聞くうちに何とか親子で過ごせないかという思いになることもある」。西川さんはそう打ち明け、「でも、子どもの成長にとって何が良い選択かを考えることが一番大事」と続けた。

◆40歳で初勤務「もう1度、現場で」

 都職員として40歳で初めて、都内の児相に3年間勤務。その後、施設で育つ子どもたちの権利擁護の担当などをしてきたが「もう1度現場で」と、2018年9月から北児相で働く。

 最初の児相勤務は無我夢中だった。「子どものために働けていただろうか」と後悔もあるが、当時担当した子が後年、別の立場で施設を訪れた西川さんを覚えていて声を掛けてくれた。「子どもにとって児相職員の存在は大きいんだと気づかされた」。2度目の児相勤務では、そのことを大切に心に留めている。

 この日午後6時すぎ、西川さんは北児相に戻るとすぐ、北区の子ども家庭支援センター職員と家庭訪問をした。3週間前、「子どもの泣き声がやまない」との通報で訪れた警察から北児相に通告があった。父親への聞き取りなどから「母親の育児疲労が積み重なっている」と判断し、地域の子育て支援を担うセンターにつなぐことにした。

◆大事な家庭訪問にコロナの壁も

 家庭状況の把握には直接の訪問が重要だが、今は新型コロナウイルスの影響で普段にも増して難しくなっている。訪問拒否もあるし、会えても短時間しか話せない。この日も玄関先で約15分の面会だったが、センターの資料などを手渡すことができた。

 「子どもや親の人生に大きな影響を与える仕事に、押しつぶされそうになることもある」と西川さん。「でも、関わった子や親の表情が明るくなっていったり、変化に立ち会えたときは良かったと思えます」



最後のとりで「児相」の仕事に密着した㊤ 主婦から転身したチーフの決意(2020年11月23日配信『東京新聞』)

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同僚と打ち合わせする北児童相談所の花田和美さん(中)=東京都北区で

 子どもたちを虐待から守るために中心的な役割を担うのが、全国の児童相談所だ。11月は児童虐待防止推進月間。東京都北児童相談所の職員の仕事に密着し、見えにくい業務の実情や子どもたちへの思いを取材した。(全3回、奥野斐・小林由比)

 東京都心から郊外へ向かう車内で、まだあどけなさも残る10代の男の子は、ずっと窓の外を眺めていた。「暑くない?気持ち悪くなったら言ってね」。声を掛けて気遣ったのは、都北児童相談所の児童福祉司、花田和美さん(54)だ。

◆新生活の日に用意したランドセル

 複雑な事情がある家庭に育つ男の子は約2カ月前、親と暮らせなくなり北児相に一時保護された。この日、一時保護所を出て新生活を始める児童養護施設に向かうため、担当の花田さんが付き添った。ランドセルや衣類が入ったスーツケースも花田さんが用意した。

 緊張した面持ちで施設に足を踏み入れた男の子。担当職員の話に時折うなずく。引き継ぎを終え「じゃあ、またね」と声を掛ける花田さんをじっと見つめ、ゆっくり首を縦に振った。

 不安定な家庭の状況に耐え、突然始まった保護所での生活にも必死で適応してきた男の子は、これからは施設近くの学校に通う。「まずは学校に行かせてあげたかった。彼がもっと感情を出せるようになって、望む進路を選べるようになれば」。施設に入所させた思いを、花田さんはそう語った。

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 北児相は7月から北区と板橋区を担当する。荒川区も担当していた昨年度の虐待相談は1650件、一時保護は254件。約60人の職員のうち、板橋区担当の児童福祉司は花田さんら10人で、それぞれが継続的に関わっているケースは常時100件ほどある。

 施設に付き添った日の午前中には、病院で一時保護されている別の男の子の支援策を話し合う会議があった。感情のコントロールが利かず衝動的な行動があるため家庭で過ごせなくなり、夏ごろ保護した。

 児相の児童心理司と共に、子どもの様子を主治医やソーシャルワーカーから聞き取った花田さんは「退院後も定期的な通院や、訪問看護で見守っていきましょう」と提案。本人や母親とも面会した。「直接会って様子を見ることが、とても重要なんです」

◆50歳で主婦から転身

 主婦だった花田さんは子育てが一段落後、教員免許を生かして特別支援学校などに勤務。千葉県の自治体の子育て支援課にも非常勤で8年勤めた。目にしたのはネグレクトや、しつけと称した体罰などの犠牲になる子どもたち。「最後の最後で力になれるのは児相。児相にしかできない役割がある」と思うようになり、都のキャリア活用採用に応募し50歳で入庁した。

 今春からは板橋区担当のチーフを務め、担当者から受け持ちの報告を受けて助言するのも重要な仕事だ。毎週開く区担当の会議では2時間で200件以上の子どもの様子が報告される。親に精神疾患があるために育てられず乳児院にいる赤ちゃん、他の子に性的加害をした少年、父親から暴力を受け続ける高校生…。

◆「良かったね」チーフが見せた笑顔


 終始厳しい表情で報告を聞く花田さんだが、親が薬物使用で逮捕されたため施設にいた子が親族の元で暮らせることになった、との報告には「良かったね」と笑顔を見せた。

 「子どもにも親にも誠実に、親子にとって最善だと思うことを毎日積み重ねるしかない。親子が自立して暮らせるようサポートしたいのです」




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Author:gogotamu2019
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