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勤労感謝の日 11月23日

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「勤労をたつとび、生産を祝い、国民がたがいに感謝しあう」日



糊口の為のみにあらず(2020年11月23日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

文学は糊口(ここう)の為になすべき物ならず。おもいの馳(は)するまま、こころの趣くままにこそ筆は取らめ。生活のため筆を執ることが文学とは言えない。樋口一葉が悩み抜いた末の結論である

▼父則義が事業に失敗して死んだのは一葉が17歳の時。本郷の借家に移り住み、内職で生計を立てた。肺結核を患い24歳で亡くなる前年、医者は「加療は無駄。せめておいしいものを食べさせて」と妹邦子に伝えたという

▼信条を貫くことは容易ではない。希望通りの職に就ける人は一握りかもしれない。とりわけコロナ禍の今、仕事を選ぶ余裕などないという人も少なくなかろう

▼9月の有効求人倍率は9カ月連続で悪化した。8月の25~34歳の女性の完全失業率は約5年ぶりの高水準だ。働けるだけありがたい。そんな嘆きも聞こえそうな勤労感謝の日である

▼死の間際、「にごりえ」「たけくらべ」などで世評を高めた一葉だが、「ただ女子なりというを喜びてもの珍しさに集うなりけり」と憂えた。にごりえの遊女お力は、一葉の家の隣の酒場の女性がモデルだ。最後は無理心中で落命するお力に、一葉自身の辛苦も投影されていたのだろうか

▼労働は、くちすぎのためだけにあらず。誰かの役に立つという実感のないものは、どこか空疎である。その内容を認められてこそ、やりがいも持てるというものだろう。きょうは一葉忌。働く喜びも見つめ直したい。



ひと息ついて(2020年11月23日配信『神戸新聞』-「正平調」)

世の中に仕事が幾つあるかは分からない。昔の中国の思想家、荀子(じゅんし)が言うのには「百技の成す所は、一人(こじん)を養うゆえんなり」。さまざまな技能や職種が一人一人の暮らしを支えている

◆身近にあるがゆえ実感の乏しかったあの仕事、この仕事のありがたみを図らずもコロナ禍に身をおいて学んだ。6月に出版された「仕事本 わたしたちの緊急事態日記」には、働く77人の手記が収められている

◆「密」が怖くて大型スーパーには行けないという高齢客のために、品ぞろえをよくしようと誓ったミニスーパーの店員がいる。子どもたちも不安だろうな、みんなで頑張ろうね、そうつづった若い保育士がいる

◆手記から伝わってくるのは働くことへの喜びと誇り、そして隠せぬ不安。「落ちた箸を拾うのも怖い」。ごみ清掃員はそれでもごみの回収をやめるわけにはいかない、と書いた。あるのは「責任感の一点」だと

◆すべての仕事に敬意を払い、働くすべての人を互いに気遣いたい。強く願って迎える今年の「勤労感謝の日」である。その一方、コロナを理由にした解雇や雇い止めが7万人に上るなど労働環境は厳しさを増す

◆へとへとに疲れた社会に、頑張りすぎた自分に、たまにはねぎらいの拍手をおくりませんか。ひと息ついて。



恥ずかしながら、この言葉を聞いてもシャンプーの銘柄が思い浮かぶだけ…(2020年11月23日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 恥ずかしながら、この言葉を聞いてもシャンプーの銘柄が思い浮かぶだけ。意味まで深く考えることはなかった。頭を洗って、いや顔を洗ってこい、と言われても仕方があるまい

▼essential(エッセンシャル)。英語で「不可欠な」「極めて重要な」「必須の」という意味。コロナ禍の中でエッセンシャルワーカーといえば、奮闘する医療・介護従事者が筆頭に挙げられる

▼ただ世の中は持ちつ持たれつ。生活必需品の製造や販売、運輸・交通、公共サービスなど暮らしを支える各種の仕事…。広く捉えれば、こうした営みもエッセンシャル。感染リスクと向き合う業種は多分野にまたがる

▼きょうは勤労感謝の日。例年にまして考えさせられることが多い。祝日法では「勤労をたっとび、生産を祝い、国民たがいに感謝しあう」日とされている。けれど土台となる雇用環境はどうか

▼景気悪化による企業の倒産や業績低迷、それに伴う休業や失業、就職内定の取り消し…。弱者を支えるセーフティーネットが機能していないことの表れだろう。若い世代の自殺増加や児童虐待の多発なども報じられている

▼労働時間の短縮や休暇の取得で余裕のある働き方を-。11月はこう呼び掛ける「ゆとり創造月間」。実は1985年から続く取り組みだ。30年以上を経てどれだけ成果が生まれたか。顔を洗いつつ頭を冷やしていま一度、社会のあり方を考えねば。




仕事のことば(2020年11月23日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 いちばん今年はやった言葉は「NNT」だという。あれ、新語流行語大賞の候補にこんなのあったかな。それもそのはず、来春卒業予定の大学生や大学院生の間で使われた「就活用語」である。「NNT」の意味は「無い内定」

◆ほんの1年前まで早々ともらえた「内々定」が今年はない。新型コロナの影響で大学生の内定率(10月1日時点)は70%を割り込み、2009年のリーマン・ショック後に次ぐ下落幅という。採用試験のキャンセルで「コロキャン」なる言葉も生まれ、大事なウェブ面接で通信が乱れて動揺させられるのを「回線圧迫面接」と皮肉られる

◆働くことの意味を、いまほど考えさせられるときもない。「テレワーク」「オンライン〇〇」といった言葉が耳になじむほど、通勤や会議が本当に必要なのか、会社とは一体何なのか、悩ましい問題に突き当たる

◆いのちや暮らしを支える「エッセンシャルワーカー」という言葉にも、コロナ禍は光を当てた。医療や介護、生産や物流、販売に従事する人たち。在宅勤務もできず、身体的にも精神的にも大変な仕事だというのに、概して低賃金で人手不足にあえいでいる。そのことに社会は目をそらしてきた

◆世の中に、なくていい仕事などない。私たちはついそれを、いっときの流行語のように忘れてしまう。きょうは勤労感謝の日。



働くことと生きがい(2020年11月23日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 主に大都市のことだが自転車がよく売れているという。コロナ感染防止のため満員の電車を敬遠して、自転車通勤を始める人が増えたためだ。しかし反比例するように、街中の自転車店は徐々に減っている。

 チェーン店で購入する人が増えたからだ。ただパンクすると困る。スポーツ車は車輪の着脱が容易だが、一般のシティーサイクルは難しい。買った店に運ぼうにも、最近のスタイルがいい自動車は積載に適していない。やはり団地や街中に自転車店はあってほしい。

 先日、後輪がパンクし、宮崎市清水1丁目のあまん自転車店に持ち込んだ。市街地のど真ん中。87歳の阿万木久夫さんが、90年前に父が創業した店を1人で切り盛りする。申し訳ない気もしたが、阿万さんは軽々と自転車をひっくり返し、車輪を外してタイヤを交換した。

 ここから手間がかかるのだが、ブレーキや変速機、かごなどを順番通りに装着し、瞬く間に作業は終了。70年以上も働いてきたプロならではの技量にうなった。県肢体不自由児父母の会会長を長年務めて厚労大臣表彰を受けた阿万さんは今も保育園の理事長を務め、老人クラブや消防団でも顔役だ。

 昭和初期は周辺が田畑だったとか、販売が好調な頃は支店も出したなど話も面白い。「やめると困る人がいるから90歳までは店を開けるわ」と笑う。貴重な技術が街から消えるのはもったいない。働くことと生きがいについて考えさせられた。勤労感謝の日。




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