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(論)桜を見る会前夜祭に関する論説(2020年11月24・25・26・27・28・29・30・12月2・4・7・19・21・22・23・24・26・27日・2021年1月17・18・24・3月22日・4月5日)

「桜を見る会」疑惑(2021年4月5日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

うそと国政私物化 放置できぬ

 「桜を見る会」疑惑でだんまりを決め込む安倍晋三前首相と菅義偉首相の姿勢を見過ごすことはできません。安倍前首相は2020年12月末に衆参両院の議院運営委員会に出席して以降、国民に説明していません。菅首相も国会での野党の質問にまともにこたえず、疑惑解明に背を向けています。「桜」疑惑で浮き彫りになった政権中枢による国政私物化とモラル崩壊は、菅政権下で続発する「政治とカネ」疑惑や官僚・政治家の高額接待を招いた大本にもかかわる重大問題です。疑惑まみれの「安倍・菅政治」に対する追及を緩めるわけにはいきません。

無反省と責任転嫁のまま

 安倍前首相主催の公的行事「桜を見る会」は13~19年の4月に毎年開催され、回を重ねるごとに参加者と費用は膨らみ続けました。首相の地元の支援者らを大量に招待し、飲ませ食わせしたことは、税金を使った事実上の買収そのものです。19年に「しんぶん赤旗」日曜版のスクープと日本共産党の国会質問で実態が暴露され、国民の怒りが広がる中で20年からは開催中止に追い込まれました。

 「桜を見る会」前日に都内の高級ホテルで開かれた「前夜祭」をめぐり、安倍晋三後援会が参加者の費用を補填(ほてん)していた問題も明らかになりました。東京地検特捜部は20年末、安倍後援会が16~19年にかけて前夜祭費用を合計約700万円支出したのに、政治資金収支報告書に記載がないと認定し、政治資金規正法違反(不記載)で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴しました。検察に事情聴取された安倍前首相は不起訴になったものの、国会で「補填はしていない」と言い張った答弁は虚偽だったことが明白になりました。

 刑事処分の結果を受けて安倍前首相は国会や記者会見で虚偽答弁を認め、「反省」を表明しました。しかし、自分は知らなかったと全て責任を秘書に押し付け、自己弁護と保身に終始しました。

 補填の原資は「手持ち資金」と言うだけで説明を拒んだことは新たな疑惑を生んでいます。政治資金収支報告書には原資をめぐる記載はなく、うその可能性が濃厚です。前夜祭会場のホテルからの明細書や領収書の国会への提出にも前首相は応じません。全国の法律家らが前首相側の刑事責任の追及を続けているように、国民は徹底解明を求めています。あくまで説明を拒否する前首相に国会議員としての資格はありません。

 安倍前首相が「桜」疑惑で少なくとも118回も虚偽答弁をしたことは曖昧にできません。行政府の長が、国権の最高機関である国会でうそを言い続け、審議を妨げてきた責任は厳しくただされなければなりません。うそを言えば偽証罪に問われる証人喚問で真相を徹底追及することが不可欠です。

菅首相は責任を免れない

 当時官房長官だった菅首相の責任も免れません。前首相のうそをおうむ返しして解明を邪魔したことへの真摯(しんし)な反省は示さず、招待者選定に関与した責任者だったにもかかわらず経過を語りません。疑惑隠しは許されません。

 虚偽答弁は、総務省の接待問題などでも繰り返されました。政権の隠蔽(いんぺい)体質が改まらないことに国民の不信は高まります。信頼を失った政権を退場させ、新しい政治に切り替えることが重要です。





ウミウシの自切(2021年3月22日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 潮が引いた浜辺などに見られるウミウシの一種、コノハミドリガイは変わった「特技」を持つ。頭より下の体を自分で切り取って、やがて心臓を含め大部分を再生できるのだ

▼奈良女子大の大学院生と教授が発見した。産卵を抑制する寄生者を排除するためと考えられている。頭部が活発に動き回って餌を食べ、約3週間で元通りに。なかなかのしたたか者である。研究成果は今月、米科学誌で紹介された

▼切ってもまた生えてくるといえば、これまではトカゲのしっぽだった。「桜を見る会」疑惑で、安倍晋三前首相の公設第1秘書が略式起訴され、安倍氏自身は不起訴となった際に、この言葉が人々の口の端に上った

▼しっぽどころか、体の大事な部分をも切り捨てて再生しようとするのは「ウミウシの自切(じせつ)」に例えられようか。総務省の中枢を担い、菅義偉首相の「懐刀」と言われた前総務審議官の辞職はそれを思わせる

▼求められるのは、首相の長男が勤める放送事業会社からの接待に甘んじてきた組織体の一新だ。武田良太総務相は「私自ら先頭に立ち、国民の信頼回復に努める」と省の再生へ動き回るが、自身もNTT社長との会食を認め、改革の行方は心もとない

▼ウミウシの別名「雨虎(あめふらし)」は春の季語でもある。<雨虎甘言の世に在りつづく>(中尾寿美子)。なにやら、権力者への忖度(そんたく)がはびこる今の世を暗示するような一句である。





政治とカネ 手厚い公助は何のためか(2021年1月24日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 年間300億円を超える政党交付金について、総務省は8政党が2021年分の受け取りを届け出たと発表した。共同通信の試算による21年の交付金総額は317億7300万円で、このうち自民党への配分は9年連続トップの170億2100万円に上る。

 実際の配分額は、ことしの衆院選の結果を受けて確定する。政党助成法に基づく交付金は、全国民が毎年、1人当たり250円を負担して税金で賄われる。いわば、政治家に対する究極の「公助」である。

 にもかかわらず、長年にわたり高額交付を受けてきた自民党に絡み、「政治とカネ」の問題が絶えない。手厚い公助にあぐらをかく一方で、その目的である「政治とカネ」の浄化、透明化へ向けた「自助」努力を欠く現状は看過しがたい。交付金を受けている各党は改めて自らを省み、政治活動の在り方を再確認してもらいたい。

 19年7月の参院選広島選挙区を巡り、参院議員河井案里被告=自民離党=と夫で元法相の衆院議員克行被告=同=が共謀したとされる広範な買収事件では、東京地裁が案里被告に公選法違反(買収、事前運動)の有罪判決を出した。

 案里被告と公判中の克行被告はそれぞれ法廷で、地元議員らに渡した現金は当選祝いや陣中見舞いであり、買収ではないと主張する。刑事裁判である以上、法に抵触したかどうかを争うのは、被告の当然の権利である。

 しかし、その主張から、政治家同士が水面下で現金授受していたことに対する倫理的な規範意識は一切感じ取れない。当選するためなりふり構わず、違法でなければ何でもありという姿勢なら、政治家の名に値しない。政治屋の所業だ。

 鶏卵生産大手の元代表から現金500万円を受け取ったとして、収賄罪で在宅起訴された吉川貴盛元農相=自民離党、衆院議員辞職=も、現金授受は認めたものの、賄賂性は否定した。その真偽は法廷で明らかになろうが、驚くべきことに現金は大臣室でも受け渡しされていた。ここでも刑事事件以前に、多数の国民が共有する倫理観は踏みつけにされた格好だ。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡[ほてん]も、根底には「政治とカネ」がある。安倍氏の公設第1秘書は政治資金規正法違反罪で罰金100万円の略式命令を受けた。安倍氏自身は起訴猶予となったが、国政運営や国会答弁のつじつまを優先させたモラルハザード(倫理観の欠如)の結果が、100回以上に及ぶ事実と異なる国会答弁につながったと捉えていい。

 「政治家は責任を自覚し、常に襟を正すべきだ」。21日の参院代表質問で「政治とカネ」について問われた菅義偉首相は答弁したが、不十分である。年間300億円超の政党交付金は、政治家の既得権益そのものだ。菅内閣が既得権益の打破を目指すのならば、まず「政治とカネ」の問題で具体的な行動を起こす必要があろう。

「桜」前夜祭疑惑(2021年1月18日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

居直りを許すわけにいかない

 「桜を見る会」前夜祭について虚偽答弁を続けた安倍晋三前首相は昨年末、国会と記者会見で「謝罪」を表明しました。しかし、国民の圧倒的多数は納得していません。もっぱら秘書のせいにして自らの責任を認めない安倍氏の説明は矛盾だらけで、新たな疑惑も浮上しています。野党が安倍氏に質問文書を出して説明を求めても「ゼロ回答」です。安倍氏の「謝罪」は口先だけだったという他ありません。居直りを許すわけにいきません。官房長官として、安倍氏のウソをおうむ返しし、「桜」疑惑解明を妨害してきた菅義偉首相の責任も免れません。

ウソの上塗り疑い深まる

 公的行事「桜を見る会」の前日に都内の高級ホテルで行われた前夜祭は、ホテルへの支払いが参加者から集めた会費を上回っており、安倍晋三後援会が補填(ほてん)していた疑惑などが大問題になりました。昨年末、東京地検特捜部は2016~19年に安倍後援会が計約700万円を補填したのに、政治資金収支報告書に記載されてないとして後援会代表の公設第1秘書を不記載の罪で略式起訴しました。安倍氏は不起訴でしたが、「補填はない」などと言い張った安倍氏のウソがはっきりと認定されました。

 刑事処分結果を受けて安倍氏は記者会見(12月24日)や衆参の議院運営委員会(同25日)で、国会での虚偽答弁を認め、反省も口にしたものの、補填は秘書が勝手にやった、自分は知らなかった、と自己弁護に終始し、具体的な事実を語りません。ホテルの明細書はないと主張したことのウソは認めたものの、明細書や領収書の提出は再び拒みました。「反省」どころか、隠ぺいと開き直りです。

 補填費用の原資などでは新たな疑惑が浮かびました。安倍氏は、原資は自らの「手持ち資金」と説明しました。それなら政治資金収支報告書に安倍氏から寄付金や貸付金などとして毎年記載する必要がありますが、それらは書かれていません。自らに責任が及ばないようにするため、ウソの上塗りをしていることが濃厚です。

 安倍氏の説明の疑問点をただすため、野党の「桜を見る会」追及本部は2度にわたって質問文書を出し、明細書などの提出を求めました。ところが安倍氏側は、記者会見や議運委で説明した通りと一切答えません。明細書などの提出もホテル側が出さないとして応じません。国会で少なくとも118回も虚偽答弁をした当時の姿勢と全く変わっていません。

 行政府の長が、国権の最高機関である国会でウソを言い続け、審議を妨害したことに無反省の姿勢をこのままにできません。民主主義の根幹に関わる重大事態です。議員の資格が問われる安倍氏に真相を語らせ、責任を取らせなければなりません。それは与野党を超えた立法府としての役割です。18日召集の通常国会で安倍氏の証人喚問を行うことは不可欠です。

幕引きさせてはならない

 マスメディアの世論調査も安倍氏の「桜」前夜祭の説明に「納得できない」の回答は7割以上です。幕引きは国民への背信です。

 税金を投じた行事「桜を見る会」に支援者を招き、飲ませ食わせしたこと自体、許し難い国政私物化であり、公費を使った悪質な買収行為です。全容解明に背を向ける菅政権を許してはなりません。





安倍氏の「桜」前夜祭 国会の場で疑惑の解明を(2021年1月17日配信『毎日新聞』-「社説」)
毎日新聞2021年1月17日 東京朝刊

 「桜を見る会」前夜祭の費用補塡(ほてん)問題について、疑念は解消されていない。

 安倍晋三前首相は記者会見や国会で、知らないところで秘書が補塡していたと述べた。しかし、到底納得できるものではない。

 あすから始まる国会で、疑惑を解明する必要がある。

 安倍氏を不起訴とした東京地検の処分には、市民団体が検察審査会に審査を申し立てている。

 地検は、政治資金収支報告書への不記載に関与した証拠は見つからなかったなどと説明している。ただ、事務所の捜索といった強制捜査は行っていない。

 捜査は十分に尽くされたか、処分の判断に問題はないか、市民の視点でチェックする必要がある。

 毎日新聞の世論調査でも、安倍氏の説明を「信じられない」と答えた人が67%に上っている。

 前夜祭は、桜を見る会に招待した支援者を集め、高級ホテルで開いた宴会だった。会費を超える分は、利益供与の疑いがある。

 これについて安倍氏は、補塡分は会場費等であり、有権者への寄付ではなく、公職選挙法違反には当たらないと強調した。

 それを証明するには、ホテル発行の明細書を示し、費用の内訳を明らかにしなければならない。

 補塡の原資にも疑問が残る。安倍氏は、私的な支払いのため事務所に預けた自己資金の中から、秘書が支出したと説明している。

 だが、一昨年までの4年間で約700万円にも上るのに、秘書が独断で支出したというのは不自然だ。ホテルが出した領収書の宛名は、主催した後援会ではなく、安倍氏の資金管理団体とされる。

 直近3年分の政治資金収支報告書は修正されたが、補塡分の「収入」に関する記載はない。

 収支報告書に前夜祭の収支を記載してこなかった経緯も不明のままだ。不記載が始まった当時の担当者に説明を拒まれたというが、それでは通用しない。

 にもかかわらず、安倍氏は「説明責任を果たせた」と語った。野党から改めて、明細書や領収書の提示を求められても、拒否している。極めて不誠実な対応だ。

 国会では「虚偽答弁」が繰り返された。真相が究明されないまま幕引きとすることは許されない。





安倍氏国会弁明 自浄能力は失われた(2020年12月27日配信『茨城新聞』-「論説」)

 安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、国会で事実と異なる答弁を重ねたとして謝罪した。

 自民党と安倍氏はこれで疑惑の幕引きを図ろうとしているが、行政府の長が立法府で「虚偽答弁」を繰り返した責任の重大さを軽んじているのではないか。安倍氏以外でも「政治とカネ」問題が続出しており、自民党は自浄能力を喪失していると言わざるを得ない。

 東京地検特捜部の調べによると、安倍氏側の補填額は2016年から19年までだけでも約708万円に上る。だが、安倍氏は首相当時、政治資金収支報告書への記載が必要な収入や支出は「一切ない」と一貫して否定。野党が「答弁が事実でなければ責任を取るか」とただすと、「全ての発言が責任を伴う」と言い切っていた。

 虚偽であることが判明した場合、首相在任中なら首相を、退いていても衆院議員を辞職する覚悟を示唆したと受け止めるのが普通だろう。

 補填問題では、政治資金規正法違反罪で公設第1秘書のみが略式起訴され、安倍氏は不起訴になった。議運委や前日の記者会見で「国民と全ての国会議員におわび申し上げたい」と頭を下げたが、秘書の隠蔽(いんぺい)で「(不記載は)私が知らない中で行われた」と言い添えた。「議員辞職に値する」との指摘には「身を一層引き締めながら研さんを重ねていく。初心に帰り努力していきたい」と否定した。

 これでは何ら責任を取ったことにはならないのではないか。衆院調査局によると、補填問題で安倍氏は少なくとも118回、事実とは違う答弁をしていたことが判明した。それだけ野党の追及を受けていたわけで、いくらでも修訂正する機会はあったはずだ。秘書が補填を隠した動機は何か、原資が安倍氏の個人資金であるのに、安倍氏は気づかなかったのかなど疑問点も残っている。

 議運委での発言は、補填と収支報告書への不記載を認めた以外、夕食会会場になったホテル発行の明細書や領収書提示の可否を含め、従来の答弁のほぼ枠内だった。この期に及んで国会審議に真摯(しんし)に向き合わないのであれば、議員の資格があるか疑わしい。

 立憲民主党の辻元清美氏が「民間企業の社長が公の場で100回以上、うその説明をして、社員にだまされたと言い訳して許されると思うか」と指摘したのは、国民感情に合っているのではないか。

 自民党が抱える「政治とカネ」問題はほかにもある。吉川貴盛元農相に鶏卵業者から現金受領疑惑が発覚。「体調不良」を理由に衆院議員を辞職したが、東京地検特捜部が収賄容疑での立件に向け、関係先を家宅捜索した。参院広島選挙区の選挙買収事件では離党したものの、河井克行衆院議員(元法相)と妻の案里参院議員が公判中だ。

 自民党内にも事態を深刻にとらえる議員もいる。だが、安倍氏が議運委に出席したのは衆院選を控えた来年まで、「党の顔」である首相経験者を直撃した問題を引きずりたくないとの思惑がある。官房長官当時、安倍氏の答弁を追認した菅義偉首相も陳謝したが、「政治とカネ」問題への取り組み姿勢を見極め、衆院選でしっかり審判したい。



安倍氏の説明 証人喚問での真相究明が必要だ(2020年12月27日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」前日の夕食会費用補塡(ほてん)問題に関し、安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会で質疑に臨んだ。それまでの記者会見と同じ説明を繰り返し、自ら進んで疑惑を解消する姿勢は見られなかった。

 安倍氏は「結果として事実に反するものがあった」と述べ、補塡を否定した首相在任中の国会答弁を訂正し謝罪した。しかし、訂正に至った詳細な根拠は示さず、多くの疑念が残されたままだ。説明責任を果たしたとは言えず、国民の理解は得られていない。このまま幕引きすることなく、うそをつくと偽証罪に問われる証人喚問で真相を明らかにする必要がある。

 夕食会は安倍氏の後援会が主催し、参加者の会費との差額を安倍氏側が補塡。東京地検特捜部は、政治資金収支報告書に夕食会の収支を記載しなかった罪で公設第1秘書を略式起訴したが、安倍氏は不起訴とした。

 事実と異なる安倍氏の答弁は少なくとも118回あった。国のトップとしてあるまじき国会軽視であり、国会論戦が成り立たなくなる。刑事責任は問われなくても政治責任は重大だ。

 今回の議運委でも、補塡の理由や、収支報告書に記載しなかった動機という核心部分が解明されなかった。安倍氏は秘書を全面的に信頼しており、自身が知らない中で補塡が行われていたなどと釈明。野党側は夕食会の会計内容を確かめるため、会場のホテルが発行した明細書の提示を改めて要求したが、安倍氏は「営業上の秘密に当たる」とするホテル側の説明を持ち出し拒否した。補塡の原資は「手持ち資金」としたが、その性格は判然としない。

 安倍氏は在任中と同様に野党の質問に正面から答えず、責任転嫁や論点ずらしと受け取れる発言もあった。自身の道義的・政治的責任は重いと認めながらも、責任の取り方として議員辞職は否定した。補塡を否定し続けたこれまでの言動は結果として国民と国会を欺き、民主主義の基盤を揺るがしていることを改めて自覚すべきだ。

 そもそも、公費で開かれる桜を見る会に安倍氏の地元後援会員を多数招くという「私物化」が問題の根源にある。「首相として推薦を依頼され、地元の秘書が推薦し、内閣府や官邸で最終決定した」と釈明したが、国民は納得しただろうか。

 菅義偉首相も無関係とは言えない。安倍内閣で官房長官を務め、安倍氏を擁護する発言をしてきた。菅氏は自身の責任を重く受け止め、来年の通常国会で説明責任を果たすとともに、引き続き真相の究明に努めることが求められる。

 国のトップが事実と異なる答弁を重ねた背信行為に、国民の政治不信は高まる一方だ。吉川貴盛元農相の現金受領疑惑で強制捜査が始まるなど、「政治とカネ」の問題が次々と明るみに出ている。長期政権のうみを出し切らなければ政治への信頼回復はおぼつかない。



相手得意の形で(2020年12月27日配信『( 愛媛新聞』-「地軸」)

 正統派であることが共通点だという。将棋の藤井聡太二冠と羽生善治九段の2人だ。谷川浩司九段が月刊誌「文芸春秋」新年特別号で評していた

▲2人とも、相手が得意で自分はあまり経験のない形に飛び込む将棋を指すそうだ。相撲でも相手の攻めを堂々と受け余裕を持って勝ち切る横綱相撲がある。その道の頂点に立つ人は相手の挑戦を正面から受け止めるものなのだろう

▲少し前までこの国のリーダーだった人は相手とまともに向き合うことを好まないようだ。安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会で「桜を見る会」の夕食会費補塡(ほてん)問題について釈明した。だが質問に対し論点をずらし、答えを聞いても疑問が残ったままだ。在任中の姿勢と変わらない

▲野党の追及の仕方にも問題はある。確かに安倍氏が長くしゃべり、時間を浪費した面はあろう。ただ、質問しながら自身の主張を重ねてアピールし、問いの趣旨がぼやけた印象も否めない

▲谷川九段は「棋士には勝負師、芸術家、研究者の三つの顔がある」とよく言う。勝負だから勝とうとするのは当然だが、対局者2人で一つの作品をつくり上げる芸術でもあるのだ

▲政治家の論戦でも互いが優位に立とうと懸命になるのは分かる。同時に質問者と答弁者の2人が真相解明を目指し、国民の疑問解消に努めることはできないものか。まずは、政権側が野党の追及を堂々と受け止めることから始まるように思う。



【2020回顧(上)】国民との対話はどこへ(2020年12月27日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に社会が混迷を深める中、突然のトップ交代となった。安倍晋三首相が9月、第1次政権に続く体調不良で辞任し、7年8カ月に及んだ長期政権が幕を下ろした。

 国政選挙での連勝を力の源泉とする1強政治は、旧民主党政権時代の「決められない政治」を一変させた。数の力による強行突破を繰り返し、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法などを成立させた。

 強弁やはぐらかしを重ね、言論の府である国会を軽視する強引な政治手法は一方で、人事で官僚を抑え込み、官邸の顔色をうかがう忖度(そんたく)をはびこらせる。官僚による公文書の廃棄や改ざんが常態化した。

 経済政策「アベノミクス」は大規模な金融緩和で大企業や富裕層に恩恵をもたらした。しかし、景気回復の実感は乏しかった。東京一極集中の是正へ地方創生を掲げたが、目立った成果は上がっていない。自身が悲願とする憲法改正や北方領土の返還、北朝鮮による拉致問題の進展はなかった。

 新たに内閣を率いた菅義偉首相は、安倍政権の「継承と前進」を打ち出した。原動力とするべきは説明と理解という国民との対話だろうが、積極的とは言い難い。

 喫緊の課題であるコロナ対策を巡って、政権に国民の不安を和らげようとする意思が薄いように思える。国と地方自治体との風通しの悪さも浮き彫りとなった。

 観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止を巡る判断の遅れにも疑問符がついた。専門家は感染拡大に厳しい見方をしている。経済との両立を目指すのならなおさら慎重な対応が求められる。

 また、給付金の申請混乱や、押印がテレワークの支障になるなどデジタル対応の遅れが鮮明となった。首相はデジタル庁の新設を掲げ、官民のデジタル改革を促進する。効率を高めることは大切だが、根幹と位置付けるマイナンバー制度には個人情報を把握されることに不安も伴う。予算や組織論を先走りさせるのではなく、丁寧な説明で理解を求めるのが基本だ。

 日本学術会議の会員候補の任命拒否も、首相の説明は紋切り型の言葉が並び、理由は分からないままだ。組織改編論で論点をずらしたいようだが、理由を語るのが先だろう。

 内閣支持率の急落には、こうした姿勢が関わっていることをしっかり受け止めることだ。

 国民の拒否感が強い「政治とカネ」問題が相変わらず浮上した。政治不信の解消は遠のいてしまう。

 「桜を見る会」前日の夕食会を巡っては、安倍氏は国会で事実と異なる答弁を行ってきた。政治責任は、当時の官房長官だった首相も無関係ではない。

 「ほかに適当な人がいない」という根強い世論が安倍長期政権の背景にあった。自民党内はもとより、野党はふがいなさを自覚することだ。



演出(2020年12月27日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 7年前の12月27日、年末の慌ただしさが一層増した。名護市辺野古の新基地建設計画で、当時の仲井真弘多知事が埋め立ての承認を表明した。取材に追われ、正月どころではなかった

▼この時期に合わせて思い出すのが、承認2日前の安倍晋三首相と菅義偉官房長官。首相官邸で仲井真氏と面談し、報道陣の前で額を机に近づけるほど深々と頭を下げた姿が印象的だった。シナリオ通りの演出のように見えた

▼こちらの結末はどうなるのやら。安倍氏の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検は今月24日、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴とした

▼安倍氏は会見や衆参両院で、これまでの国会答弁が事実と異なっていたことを認めた。「行政府の長、自民党総裁、国会議員として国民、与野党全ての国会議員に深くおわびする」とここでも頭を下げた

▼菅首相も事実と異なる答弁を記者団に陳謝したが、桜を見る会の再調査をしないと言う。幕引きを図りたい政権の思惑もにじむ。告発した弁護士らは検察審査会に申し立てる予定だ

▼国会は国権の最高機関であり、国民の代表が一堂に集まる。「政治と金」を巡り、いわば安倍氏は国民に向かって、事実と異なる答弁を少なくとも118回繰り返した。頭を下げて済ませる。その演出はもう通じない。





安倍氏の説明 議員辞職してけじめを(2020年12月26日配信『北海道新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相はきのう、自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、衆参両院の議院運営委員会に出席した。

 補填を否定した首相在任中の国会答弁について「事実に反するものがあった」として陳謝した。

 時の首相が国会で100回以上も事実と異なる答弁を行った責任は極めて重い。

 補填は「私が知らない中で行われた」などと、秘書に責任転嫁するかのような発言を繰り返した。

 国会議員には秘書を監督する責任がある。もはや議員辞職してけじめをつけるしかない。

 この問題で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で公設第1秘書を略式起訴し、安倍氏本人は不起訴とした。

 安倍氏は昨秋の疑惑発覚後、国会で「全く違法性はない」と繰り返し「私がここで話しているのがまさに真実」とまで言い切っていた。その答弁が根底から崩れた。

 ところが、安倍氏は野党の議員辞職要求を拒否し、「失われた信頼を取り戻すために、今後とも研さんを重ね、期待に応えられるよう全力を尽くす」と述べた。

 補填についても、政治資金収支報告書の不記載についても「知らなかった」では済まされない。

 首相在任中に起きた自身の政治資金を巡る事件や国会での誤った答弁の責任の取り方として、到底納得できるものではない。

 見過ごせないのは、費用の穴埋め自体は問題はないとの認識を示したことだ。

 検察の処分対象になったのは、補填に絡む収支を政治資金収支報告書に記載しなかったことだとはいえ、多額の補填は利益供与に当たるとの指摘が根強くある。

 桜を見る会は安倍氏の支持者のために私物化したと批判され、夕食会も一体とみられている。費用を穴埋めした動機を解明しなければならない。

 「ない」と断言していた明細書に関しては「ホテルが公開前提では出せないと言っている。ないとは言っていない」と釈明した。

 国会で再三追及されながら、明細書の確認などを怠った事実に変わりはない。

 計2時間ほどの質疑では不十分だ。虚偽の証言をすれば罰則が科せられる証人喚問が欠かせない。

 官房長官時代に安倍氏の説明をなぞる答弁を重ねた菅義偉首相も責任は免れない。安倍氏の証人喚問の実現に向け、自民党総裁として指導力発揮が求められている。



責任を軽んじているのか/安倍前首相 国会弁明(2020年12月26日配信『東奥日報』-「時論」)

 安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、国会で事実と異なる答弁を重ねたとして謝罪した。

 自民党と安倍氏はこれで疑惑の幕引きを図ろうとしているが、行政府の長が立法府で「虚偽答弁」を繰り返した責任の重大さを軽んじているのではないか。安倍氏以外でも「政治とカネ」問題が続出しており、自民党は自浄能力を喪失していると言わざるを得ない。

 東京地検特捜部の調べによると、安倍氏側の補填額は2016年から19年までだけでも約708万円に上る。だが、安倍氏は首相当時、政治資金収支報告書への記載が必要な収入や支出は「一切ない」と一貫して否定。野党が「答弁が事実でなければ責任を取るか」とただすと、「全ての発言が責任を伴う」と言い切っていた。

 虚偽であることが判明した場合、首相在任中なら首相を、退いていても衆院議員を辞職する覚悟を示唆したと受け止めるのが普通だろう。

 補填問題では、政治資金規正法違反罪で公設第1秘書のみが略式起訴され、安倍氏は不起訴になった。議運委や前日の記者会見で「国民と全ての国会議員におわび申し上げたい」と頭を下げたが、秘書の隠蔽(いんぺい)で「(不記載は)私が知らない中で行われた」と言い添えた。「議員辞職に値する」との指摘には「身を一層引き締めながら研さんを重ねていく。初心に帰り努力していきたい」と否定した。

 これでは何ら責任を取ったことにはならないのではないか。衆院調査局によると、補填問題で安倍氏は少なくとも118回、事実とは違う答弁をしていたことが判明した。それだけ野党の追及を受けていたわけで、いくらでも修訂正する機会はあったはずだ。秘書が補填を隠した動機は何か、原資が安倍氏の個人資金であるのに、安倍氏は気づかなかったのかなど疑問点も残っている。

 議運委での発言は、補填と収支報告書への不記載を認めた以外、夕食会会場になったホテル発行の明細書や領収書提示の可否を含め、従来の答弁のほぼ枠内だった。この期に及んで国会審議に真摯(しんし)に向き合わないのであれば、議員の資格が問われかねない。

 立憲民主党の辻元清美氏が「民間企業の社長が公の場で100回以上、うその説明をして、社員にだまされたと言い訳して許されると思うか」と指摘したのは、国民感情に合っているのではないか。

 自民党が抱える「政治とカネ」問題はほかにもある。吉川貴盛元農相に、鶏卵業者から現金を受領した疑惑が発覚。「体調不良」を理由に衆院議員を辞職したが、東京地検特捜部は収賄容疑での立件に向け、関係先を家宅捜索した。参院広島選挙区の選挙買収事件では、離党したものの、河井克行衆院議員(元法相)と妻の案里参院議員が公判中だ。

 自民党内にも事態を深刻にとらえる議員もいる。だが、安倍氏が議運委に出席したのは衆院選を控えた来年まで、「党の顔」である首相経験者を直撃した問題を引きずりたくないとの思惑がある。官房長官当時、安倍氏の答弁を追認した菅義偉首相も陳謝したが、有権者は今後も「政治とカネ」問題への取り組み姿勢を見極めていきたい。



「末は博士か大臣か」(2020年12月26日配信『東奥日報』-「天地人」)

かつて、子どもの才能に期待を込めて、大人たちはこう言ったものだ。「末は博士か大臣か」。博士といえば、最高峰はノーベル賞受賞者か。大臣のトップは言うまでもなく首相だ。

 その要職にあった安倍晋三氏が、「桜を見る会」前日に後援会が開いた夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、国会で事実と異なる答弁を繰り返していた。「後援会としての収入、支出は一切なく、政治資金収支報告書への記載は必要ない」「補填した事実は全くない」などが虚偽だった。

 東京地検特捜部は、政治資金収支報告書に4年分の収支計約3千万円を記載しなかったとして、政治資金規正法違反罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴。不起訴処分となった安倍氏は記者会見や衆参両院の議院運営委員会で陳謝したものの「秘書に真実を話してもらえていたら、政治資金収支報告書を訂正していた」などと弁明した。ただし疑問が解消されたとは言いがたい。

 菅義偉首相も官房長官時代の安倍氏を擁護する発言を「事実と異なる答弁になってしまった。大変申し訳ない」。とはいえ「桜を見る会」の再調査は否定した。

 県内では、西目屋村発注の入札を巡る官製談合容疑事件が拡大の様相。中央でも地方でも「政治とカネ」の問題が続くと政治全体への信頼が損なわれる。それでは、政治を志すことが望まれない将来像になりはしないか。



安倍前首相弁明/国会を欺いた罪は消えない(2020年12月26日配信『河北新報』-「社説」)

 予想されたことだが、秘書に全て責任を押し付ける弁明に憤りを禁じ得ない。

 安倍晋三前首相がきのう、衆参両院の議院運営委員会で、「桜を見る会」前日に開かれた夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、国会で事実と異なる答弁をしたことを陳謝し訂正した。

 安倍氏は首相在任中、後援会員らを集めた夕食会について、参加者の会費で賄われており「後援会としての収入、支出は一切ない」と関与を否定。政治資金収支報告書に記載がないのも「当然だ」と答弁していた。実際は安倍氏が代表の資金管理団体が不足分を穴埋めしていたとされる。

 議院運営委で、秘書から事実関係を知ったのは首相退任後の今年11月下旬だったと説明。「私の知らない中で行われたこととはいえ、道義的責任を痛感している」とわびた。

 補填の原資は安倍氏の手持ち資金。秘書に私的な支払いを任せていて、補填は秘書が無断で行っていたという。

 説明は疑わしい。補填額は2016~19年だけで約708万円に上る。私的な資金をこれほど使っておきながら、報告をしないことは常識では考えられない。

 もし本当ならば、この秘書は安倍氏にうそをついた上、勝手に金を流用していたことになる。関わった秘書2人は辞職したが、本来は解雇すべき事案だろう。

 安倍氏は国会での追及に「ここで話していることを信じていただけないなら、そもそも予算委員会が成立しない」と大見えを切っておきながら、自ら事実を解明する姿勢を見せなかった。

 以前も指摘したが、会場となったホテルから明細書を取り寄せれば分かったことだ。このことをもってしても国会軽視は甚だしい。
 安倍氏は首相時代、閣僚の不祥事などで「責任を痛感する」と述べることはあっても、責任は取らなかった。

 今回も議員辞職を求める声もあるが、職にとどまり「政治資金の透明性を確保し、国民から一点の疑問も生じることのないよう徹底する」のだという。まっとうな政治家なら誰でも実行していることだ。初歩の初歩を誓わなければならないことを、安倍氏は恥じなければなるまい。

 東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)容疑で告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とした。一方で、同法違反罪で後援会代表の秘書は略式起訴した。

 捜査は終結したが、国会で118回も誤った答弁をした事実は消えない。

 首相経験者が答弁の誤りを国会で説明するのは極めて異例だ。国民の政治への信頼を損ない、国会の歴史に泥を塗った責任をどう考えるのか。

 「政治資金報告書を訂正すれば済む」と言わんばかりの安倍氏の釈明を聞いていると、とても真摯(しんし)に向き合っているとは思えない。



「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まつて…(2020年12月26日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 「桜の樹の下には屍体(したい)が埋まつている!」。梶井基次郎の短編小説『桜の樹の下には』は印象的な一文で始まる。満開の桜を前に不安と憂鬱(ゆううつ)に駆られた「俺」は、桜の花が美しいのは木の下に死体が埋まっていて、腐乱した液を根が吸っているからだと想像する

▼季節外れの「桜」を覆っていた疑念の霧は晴れ、埋もれていた真相は解明されたのだろうか。安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題。政治資金規正法違反容疑などで告発された安倍氏は嫌疑不十分で不起訴処分に

▼記者会見で、安倍氏は「5000円の会費で全てを賄っていると確信していた」と釈明した。高級ホテルでの夕食会を、その金額で開けると本当に思っていたとしたら、社会常識とは懸け離れている。「桜」は霧でかすんだままだ

▼「道義的責任を痛感」しても、議員辞職は否定した。責任はある。でも、きちんと取らない。いつもの言動がまたも繰り返された感が強い

▼もっとも、公選法違反罪に問われた元法相の河井克行、妻で参院議員の案里の両被告や、鶏卵生産会社から現金を受領した吉川貴盛元農相は、説明責任すら果たしていない。政界での「責任」という言葉の何という軽さ。年の瀬にそのことを改めて痛感させられた。



安倍氏の国会説明 証人喚問で解明が必要だ(2020年12月26日配信『毎日新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」前夜祭の費用補塡(ほてん)問題について、安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会で説明した。

 自分が知らないうちに秘書が補塡し、その秘書の「補塡していない」という説明をうのみにして事実に反する国会答弁をしたと主張した。

 しかし疑念は深まるばかりだ。

 補塡の原資は、自身の預金の中から事務所に預けた「手持ち資金」だという。その額は4年間で約700万円に上る。秘書が独断で支出し、報告すらしないというのは不可解だ。

 会場となったホテルの明細書については、これまで「発行されていない」と答弁していた。それが今回は、ホテルにはあるものの営業上の秘密があるので公開できないという説明にすり替わった。

 なぜ秘書が政治資金収支報告書に記載しなかったのかという動機も、明らかになっていない。

 問題は前夜祭にとどまらない。疑惑の核心は、公費で行われる「桜を見る会」に、首相が地元支持者を数百人規模で招待していたという「権力の私物化」だ。

 委員会でこの点をただされた安倍氏は、招待者推薦の手続きに言及するだけで、多くの支持者を招待していた理由については口をつぐんだ。

 そもそも答弁の訂正を申し出た安倍氏の求めで設けられた説明の場だった。

 ところが、首相在任時と同様に、野党の質問には正面から答えず、聞かれていないことを長々と述べて時間を費やした。

 事実関係を確認する質問に対し、「事前の通告がない」と回答を避けた場面もあった。これでは説明責任を果たすつもりがあるのか疑われる。

 衆院調査局によると、国会での事実と異なる答弁は、少なくとも118回に上る。

 虚偽答弁がまかり通れば、論戦は成り立たなくなる。民主主義の基盤を損なう重大な問題だという認識があるのだろうか。

 安倍氏の無理な説明は、新たな疑問を生んでいる。虚偽答弁が問題になっている事柄であるだけに、ウソをつけば偽証罪に問われる証人喚問で真相を解明する必要がある。



安倍氏答弁 国会軽視が重大な事態招いた(2020年12月26日配信『読売新聞』-「社説」)

 不誠実な答弁で、国会審議をやり過ごそうという姿勢が、重い結果を招いたと言えよう。

 安倍前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が開いた「桜を見る会」の前夜祭を巡り、前日の記者会見同様、国会答弁の誤りを認めて、謝罪した。

 参加者が支払った前夜祭の会費の不足分を、安倍氏側が補填ほてんしていた。公設第1秘書が、政治資金規正法違反(不記載)で罰金の略式命令を受けた。安倍氏は、嫌疑不十分で不起訴となっている。

 補填の否定など事実と異なる答弁は、昨年11月から今年3月までで計118回にのぼるという。立法府の軽視も甚だしい。安倍氏が「国会に対する国民の信頼を傷つけた。責任の重さを痛感している」と述べたのは当然だ。

 立憲民主党や共産党は委員会で、補填は利益供与が目的だったのではないか、とただした。安倍氏は「票を集めようとは、つゆほども考えていない」と語った。

 安倍氏側は、前夜祭の費用の政治資金収支報告書への記載方法を総務省に問い合わせていた。

 記載の必要性を認識しながら、書かなかった理由について、安倍氏は、当時の秘書との連絡を捜査当局に禁じられており、分からない、と述べるにとどめた。

 国会での質疑を経ても、不明な点は残っている。真相が分かった段階で、安倍氏は丁寧に説明責任を果たすべきだ。真剣に信頼回復に努めなければならない。

 前夜祭を巡る疑惑が初めて取り上げられたのは、昨年11月の国会である。安倍氏は当時から、違法性はないと強調していた。

 疑いをかけられた段階で、会計処理の実態を詳細に調べ、真摯しんしに対応していれば、これほどの問題にならなかったのではないか。

 安倍氏の挑発的な答弁が、物議を醸すことは多かった。

 学校法人「森友学園」への土地売却問題では、「私や妻が関係していれば、首相も議員も辞める」と強調した。その後、財務省で、安倍氏の妻に関する記述を削除するという公文書改竄かいざんが起きた。

 軽率な発言が無用な混乱を招き、本来費やすべき政策論議に影響を与えた面は否めない。その損失の大きさを、安倍氏は重く受け止める必要がある。

 野党は、来年の通常国会でも前首相を追及する構えだ。ただ、今回の不記載は、国政全般を揺るがすような問題とは言えまい。スキャンダルの追及に明け暮れるだけの国会にしてはならない。



安倍氏国会で陳謝 疑惑払拭し負託に応えよ(2020年12月26日配信『産経新聞』-「主張」)

 安倍晋三前首相は25日、衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会の費用を補填(ほてん)した問題をめぐり、質疑に応じた。

 首相経験者が答弁の誤りに関して国会で説明するのは、極めて異例の対応だ。

 安倍氏は、国会で事実と異なる答弁をしてきたことについて、「私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している。全ての国会議員に心から深くお詫(わ)びする」と陳謝した。

 政治資金収支報告書への不記載については、「結果として事実に反するものがあった。改めて事実関係を説明し、答弁を正したい」と述べた。

 事実を知らされていなかったとしても、現職首相のお膝元で政治資金規正法違反となる不記載が4年分にもわたって続いていた責任は重い。不起訴とはなったが、丁寧な説明が求められる所以(ゆえん)だ。

 前日の記者会見と同様、安倍氏自身と事務所の不実について、国会という国権の最高機関で謝罪した。ただ国会で少なくとも118回以上にわたり、事実と異なる答弁をしてきた。

 これについて、どの部分をどう訂正するかについての具体的な言及がなかったのは問題だ。

 野党の質問はホテルの領収書と明細書に集中した。解せないのは安倍氏がこれらをなぜ、自ら確認しようとしなかったかだ。

 首相が政府のトップとして多忙を極めるのは分かる。だが、小渕優子元経済産業相ら自らの閣僚らが不祥事に見舞われてきた「政治とカネ」の問題だ。疑惑を晴らすべきは安倍氏自身である。

 不記載の理由について、多額の補填による利益供与を隠すためではないかとの野党の指摘に、安倍氏は「利益供与をして票を集めようとは私も事務所もつゆほども考えていない」と述べた。これを額面通りに受け止める有権者がどれほどいるだろうか。

 公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴され、首相経験者が、東京地検特捜部から事情聴取を受けるなど捜査対象となった事実は極めて重い。

 野党が議員辞職を求めたのに対し、安倍氏は否定した。今後、国会議員として有権者の負託に応えるには、どこまで行動で責任を果たせるかにかかっている。



「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい」(2020年12月26日配信『産経新聞』-「産経抄」)

「あなたたちの中で罪を犯したことのない者が、まず石を投げなさい」。イエス・キリストの誕生を祝うクリスマスの25日、こんなイエスの言葉が頭をよぎった。後援会の政治資金収支報告書の不記載問題をめぐり、国会で安倍晋三前首相をつるし上げる議員らの姿を見てのことである。

 ▼立憲民主党の意図には首をひねった。質問者の一人の辻元清美副代表といえば、かつて秘書給与詐欺事件で逮捕され、有罪判決を受けた。しかも、当初は自身の疑惑を否定していた。「嘘の雑貨店」とも報じられた辻元氏を選んで、「虚偽答弁をした」と安倍氏を追及させる狙いは何なのか。

 ▼立憲民主党の前身、民主党の初代首相の鳩山由紀夫氏の事例も思い出す。資金管理団体の収支報告書に4億円を超える虚偽記載があり、母親から12億6千万円にも上る「子供手当」の贈与を受けていたが、「気付かなかった」で済ませた。「兄は脱税している」との弟の邦夫元法相の告発は、民主党内では問題にされなかった。

 ▼政治とカネの問題では、鳩山氏の次の菅(かん)直人首相も3代目の野田佳彦首相も、違法な外国人献金問題が発覚した。違法でなくとも、立憲民主党の枝野幸男代表が「革マル派活動家が相当浸透している」(政府答弁書)労組から、多額の献金を受けてきた件も軽視できない。

 ▼国会では、立民議員らが補填(ほてん)を知らなかったという安倍氏を嘘つき呼ばわりして議員辞職を求めていたが、これもしらける。そもそも菅(かん)内閣は、閣僚が国会で虚偽答弁しても、必ずしも政治的・道義的責任は問われないと閣議決定している。

 ▼イエスの言葉に、石を投げていた民衆は立ち去る。そんな反省や良心には無縁でないと、国会議員など務まらないのかもしれない。



安倍氏虚偽答弁 修正だけでは済まない(2020年12月26日配信『東京新聞』-「社説」)

 国権の最高機関である国会で、首相が虚偽答弁を繰り返したことは民主主義の根幹を揺るがす重大な行為だ。答弁修正で済む話ではない。議員辞職を含めて責任の取り方を熟慮すべきではないか。

 「桜を見る会」の前日に、安倍晋三前首相の政治団体が主催した夕食会を巡る問題が取り沙汰されてから一年以上が経過した。
 この間、安倍氏は首相として一貫して「後援会としての収入、支出は一切ないことから、政治資金収支報告書への記載は必要ない」「事務所が(差額を)補填(ほてん)した事実も全くない」などと、野党側の追及をかわし続けた。

 衆院調査局によると、これらの「虚偽答弁」は118回に上る。恐るべき「うその積み重ね」だ。

 夕食会の収支を巡り、安倍氏の秘書が政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴されたことを受け、安倍氏は衆参両院の議院運営委員会に出席し、自らの答弁に「結果として事実に反するものがあった」として修正を申し出た。

 会計を担当する秘書が安倍氏に事実を伝えなかったためとしているが、問題が取り沙汰された後、安倍氏自身が事実の把握にどれだけ努めたのであろうか。「私が知らない中で行われていた」との説明も、にわかには信じ難い。

 虚偽の答弁をすれば偽証罪に問われる証人喚問を行い、国会として真相を解明すべきではないか。

 国会では、政府側が偽りなく誠実に答弁することが大前提だ。説明に誤りがあれば、国会は国政の調査や行政の監視という役割を果たせなくなる。国会で首相が虚偽の答弁を続けたことは、国会を愚弄(ぐろう)し、三権分立を損ない、国民を欺く重大な行為である。

 首相は「道義的責任を痛感している」とは言うものの、衆院議員の職にはとどまるという。国会で虚偽答弁を続けた重みに比べて、身の処し方が軽くはないか。答弁修正だけで幕引きは許されない。

 国会の会議録には安倍氏による答弁内容がそのまま残っている。安倍氏側から訂正の申し出があったとしても、完全に抹消したり、ほかの言葉に置き換えるのではなく、発言内容はそのまま残した上で、訂正する旨を付記する形にはできないか。

 本会議や委員会での発言が会議録から削除されることはこれまでもあった。多くが不用意な発言であり、正式な記録からは抹消したかったのだろうが、首相が国会で虚偽答弁を続けた歴史的事実まで消し去ってはならない。



安倍氏答弁訂正 これで幕引きにできない(2020年12月26日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 これでは説明を尽くしたことにならない。

 「桜を見る会」の前日に開かれた夕食会の費用補填(ほてん)問題に関する安倍晋三前首相の説明である。

 衆院と参院がきのう開いた議院運営委員会で、秘書が独断で費用補填し、自身は事実を知らなかった立場を強調。「結果として事実に反するものがあった」として、過去の国会答弁を訂正した。

 補填の目的や、政治資金収支報告書に記載しなかった理由は不明のままだ。昨年11月に問題が発覚して以降、国会で問題になっていたのに事実関係を調査せず、「契約主体は参加者一人一人」など常識では理解されにくい説明を、なぜ繰り返したのか。

 ホテルが発行した明細書や領収書の内容も公開しておらず、説明は説得力にかける。

 安倍氏は運営委後、「説明責任を果たすことができたのではないか」と述べている。今回で説明を終えるつもりなのか。

 東京地検特捜部は安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とした。ただし、刑事責任と政治責任は別だ。

 安倍氏は「後援会としての収入、支出は一切なく、収支報告書への記載は必要ない」などと釈明してきた。衆院調査局によると、事実と異なる答弁を118回したことが判明している。虚偽答弁を繰り返し、国会の審議時間を消費させた責任は極めて大きい。

 事実の解明は国会の責務だ。衆参の予算委員会で証人喚問し、改めて問いただすべきである。

 見過ごせないのは、安倍氏が問題は収支報告書に記載しなかったことで、補填を軽視する認識を示していることだ。運営委でも「検察が捜査をした結果、問題ないと判断した」と述べている。

 補填は有権者への利益供与に当たる可能性がある。過去には、選挙区でうちわを配布した松島みどり氏や、写真付きワインを贈った疑いが生じた小渕優子氏が閣僚を辞任するなど、政治責任を問われている。

 安倍氏は「政治とカネ」に対する問題意識が希薄ではないか。

 問題の本質は、功績があった人を公金で慰労する「桜を見る会」に、安倍氏ら政府や自民党の幹部が多くの支援者を招待し、私物化したことだ。夕食会の問題は全体の一部にすぎない。

 安倍氏は夕食会だけでなく、招待者リストなど全体の問題について、国会で事実を明らかにせねばならない。その上で、自身が議員を続ける資格があるのか問い直すべきである。



安倍氏不起訴 これで落着とはいかない(2020年12月26日配信『新潟日報』-「社説」)

 国権の最高機関であり、国民を代表する国会に対し、首相が虚偽の答弁を繰り返していた深刻な問題である。政局絡みの都合で扱っていいはずはない。

 議員辞職を求める声も上がっており、一件落着と考えているなら甘過ぎる。今後の国会審議で、事が起きた経緯や政治責任についてさらにただしていかなければならない。

 安倍晋三前首相後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補塡(ほてん)問題で東京地検特捜部は24日、安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とし、公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴した。

 捜査終結を受けて安倍氏は24日に記者会見を開き、政治資金収支報告書に補塡分が記載されなかった会計処理を知らなかったと釈明し、「道義的責任を痛感する」と述べた。

 現職首相としての自身の答弁内容が事実に反していたとも認め、「国民、全ての国会議員に深くおわびする」と陳謝した。

 25日には衆参両院の議院運営委員会に出席して首相在任中の答弁について訂正、説明し、改めて謝罪した。

 ただし、補塡に関しては秘書がやっていたことで自分は知らなかったと弁明したにすぎず、説明責任を十分に果たしたとはいえまい。

 どうして、こんな問題が起きたのか、その根本は見えないままだ。穴埋めの原資も依然はっきりせず、利益供与との疑惑も解消されていない。

 安倍氏は「信頼回復に努力したい」と強調した。だが、野党や国民に議員辞職を求める声もある中、本当に反省しているのか疑問を抱かざるを得ない。菅政権も同様だ。

 捜査終結を受けた安倍氏の会見、国会での弁明と続いた背景に、年内の幕引きにこだわる菅政権と安倍氏の思惑の一致があったとされるからだ。

 新型コロナウイルス対応が後手に回り、内閣支持率急落に揺れる政権側は、越年回避に執着していたという。来年1月に召集される通常国会の審議や1年以内にある衆院選にマイナスとなりかねないからだ。

 一方の安倍氏は、早期復権を果たすため早めに区切りを付けた方がいいと判断し、国会説明に応じたとみられている。

 首相が100回以上も国会で虚偽答弁し、国民が不利益を被った問題だというのに、自らの不都合を覆い隠すことを最優先したようだ。

 疑惑などで政権が不利な状況になると、選挙によって局面をリセットし、状況を変える。そんな安倍政権時代の手法を想起させる。

 夕食会費補塡問題では、官房長官として安倍氏の虚偽答弁をなぞり続けた菅義偉首相も政治責任を免れない。認識があまりに軽いのではないか。

 東京地検特捜部は25日、鶏卵生産大手からの現金受領疑惑で吉川貴盛元農相の強制捜査に乗り出した。「政治とカネ」の問題を、幕引きとするわけにはいかない。



「言い訳」ならぬ「説明」(2020年12月26日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 作家の徳冨蘆花は原稿の不出来をわびる手紙を書いている。〈別紙の原稿は、わけの分からぬたわ言ですが、これが余白の埋め草になるなら、雑録の一隅を貸してくだされば大変幸せです〉

▼原文は文語調だが、現代語にすると、おおよそこんな調子である。別紙の原稿とは、随筆のようなものだったらしい。手紙は続く。〈実は小説を書こうとしましたが、どんなに考えを絞ろうとしても、空っぽの心は空っぽなので仕方ありません〉

▼小説が書けなかったと認めているが、悪びれたところはない。言い訳くささは感じられず、むしろ堂々とした物言いに、言われた方が恐縮してしまいそうだ(中川越「すごい言い訳!」)

▼さて、この「言い訳」ならぬ「説明」はどうだったか。「桜を見る会」をめぐる国会答弁に誤りがあったと認めた安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会で与野党の質問に答えた。おわびを口にしたが、説得力を欠く釈明や開き直りともいえる言葉もあった

▼基本的には「秘書の事務処理に問題があったけれど、自分はあずかり知らぬ」といったところか。しかし問題となった夕食会の費用の補塡(ほてん)は、有権者への利益供与と取られかねない行為である。「政治とカネ」をめぐる問題が繰り返される中、なぜ補塡(ほてん)があったのか。その真相は依然やぶの中だ

▼言葉は多いが、自らきちんと説明しようという姿勢は相変わらず感じられなかった。「説明」としてはもちろん「言い訳」としても不十分だったのではないか。



安倍氏不起訴 平らでない信頼回復の道(2020年12月26日配信『北国新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前夜に開いた夕食会の会費補填問題で、安倍氏が国会答弁の誤りを陳謝し、官房長官だった菅義偉首相も謝罪した。政治資金収支報告書をめぐる答弁で前・現首相がそろって国民にわびる事態は前代未聞であり、残念極まりない。

 刑事告発を受けた安倍氏は不起訴処分となったが、事実でない国会答弁を繰り返した政治的、道義的な責任は重く、政治家として一から出直す覚悟で信頼回復に努めなければならない。その道は決して平たんではない。

 東京地検特捜部は、後援会代表の公設第1秘書を政治資金規正法違反罪(不記載)で略式起訴する一方、安倍氏を不起訴処分とした理由について、会計処理はもっぱら地元後援会が行っており、安倍氏が不記載を認識していた証拠を得られなかったと説明している。また、公選法違反(寄付行為)容疑については、嫌疑不十分でだれも起訴されなかった。

 不起訴処分を受けて公の場に出た安倍氏は、だれもが腑(ふ)に落ちる明快な弁明で説明責任を果たしたとは言い難い。ただ、首相の職務は多忙であり、後援会活動の収支を把握していなかったとしても、不自然とは思えない。安倍氏は毎回、圧倒的な得票率で当選しており、供応のような寄付を支持者に行う必要性も乏しい。

 それでも、問題が表面化した後も秘書の報告をうのみにするだけで、自ら調べようとせず、事実関係を隠し続ける結果になった甘い対応は責められよう。捜査は終結しても、安倍氏の今後の政治活動に及ぼす影響は小さくない。

 野党側は安倍氏の説明に納得せず、年明けの通常国会でも追及する構えである。野党として当然としても、もし心証だけの疑惑追及が延々と続き、肝心の政策論議がわきに置かれるようでは、国民の政治不信に輪を掛けることになりかねない。東京地検の不起訴処分に異議があれば、検察審査会に審査を申し立てるほかない。

 政治資金収支報告書の不記載や虚偽記載は後を絶たず、各議員は襟を正す機会としてほしい。



洋の東西を問わず、嘘にまつわる…(2020年12月26日配信『福井新聞』-「越山若水」)

 洋の東西を問わず、嘘(うそ)にまつわることわざは数多くある。一部には「嘘も方便」など容認型の格言もある。しかし大半は「嘘つきは泥棒の始まり」など否認型の教訓が占めている

▼明治の文豪、夏目漱石も「虞美人草」で虚言を戒めた。「嘘は河豚(ふぐ)汁である。その場限りで祟(たた)りがなければこれほど旨(うま)いものはない。しかし中毒(あたっ)たが最後苦しい血も吐かねばならぬ」。その嘘を繕おうとして「綻(ほころ)びた下から醜い正体が、それ見たことかと、現れた時こそ、身の錆(さび)は生涯洗われない」と書いた

▼それほどに「嘘をつく」という行為は、自分の信用失墜につながり、あとあと痛い目に遭う羽目になる。では安倍晋三前首相の場合はどうだろう。「桜を見る会」前日の夕食会で安倍氏側が費用を補塡(ほてん)していた問題で、在任中の国会答弁が「虚偽」と判明したからだ

▼安倍氏は事実と異なる答弁について衆参両院で謝罪したが、差額補塡などの会計処理は「私が知らない中で行われた」と関与を否定した。法律に抵触するような重大疑義だというのに、後援会の言い分をそのまま受け入れ、念押しさえしないとは軽挙妄動も甚だしい

▼今回の弁明にどれだけの人が納得しただろう。これで幕引きというのでは虫が良すぎる。夏目漱石にこと寄せすれば、まさしく「漱石枕流(ちんりゅう)」、自分の誤りを認めようとせず、言い逃れしているように見える。



安倍前首相弁明/知らなかったで済まない(2020年12月26日配信『神戸新聞』-「社説」)

 この結末に納得できる国民がどれだけいるだろうか。

 安倍晋三前首相はきのう、衆参両院の議院運営委員会で、自身の後援会が「桜を見る会」前日に開いた夕食会の費用を補填(ほてん)していた問題に関し、事実に反する国会答弁を繰り返したことを認め、訂正し謝罪した。

 東京地検特捜部は、夕食会に関する4年分の収支計約3千万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、政治資金規正法違反(不記載)の罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴とした。

 安倍氏が「補填は一切ない」などと国会で否定し続けた事務所の不正を明確に認めた形だ。一方で、安倍氏は嫌疑不十分で不起訴処分とし、捜査を終結する。

 安倍事務所などへの強制捜査もせず、十分な証拠が集まったのか。会費の補填は公選法が禁じる有権者への利益供与に当たらないのか。疑問を残したまま、年内の幕引きを優先したとしか思えない展開だ。

 安倍氏は自らの刑事処分を逃れたとはいえ、政治家として秘書の不正を見逃した監督責任は免れない。

 それ以上に重いのは、時の首相が虚偽答弁で国会を侮り、国民を欺き続けたことへの政治責任である。

 首相や閣僚は、国会で誠実に答弁する憲法上の義務を負う。必要な事実確認を怠り、秘書の報告をうのみにしたのなら議員辞職に値する。

 安倍氏は議運委で「責任を痛感している」としつつも、「私が知らない中で行われていたこと」「責任者に任せていた」と秘書や事務所に責任を押し付ける言い訳に終始した。

 ホテル発行の明細書や領収書の公表は「ホテル側の営業の秘密」などを理由に拒んだ。これでは従来の国会答弁と変わらない。

 首相として致命傷になりかねない問題で追及されているのに、なぜ事務所に徹底的な確認を求めなかったのか。安倍氏の不自然な対応の理由も解明されなかった。

 領収書がないのに収支報告書の詳細な修正が可能だった点や、補填の原資は自身の手持ち資金だったとの説明も釈然としない。表に出ないカネの出し入れが常態化していたとすれば、政治資金の流れを透明にすることで不正を防ぐ規正法を形骸化する行為にほかならない。

 そもそも、公費で各界の功労者をねぎらう「桜を見る会」に、安倍氏が自らの支援者を多数招いていたことが問題の発端だった。

 安倍氏はきのう「信頼回復のため、政治活動の資金の透明性確保を自ら徹底する」と語った。議員にとどまり責任を全うするなら、批判に向き合い、国民が抱く疑問に真摯(しんし)に答える姿勢が何よりも欠かせない。



安倍前首相不起訴 秘書の責任で済ますのか(2020年12月26日配信『山陽新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会を巡り、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)で、安倍氏の公設第1秘書を略式起訴した。

 安倍氏は嫌疑不十分で不起訴処分とされ、一連の捜査は終結した。しかし、一国の首相が国会で虚偽答弁を繰り返した事実は重い。すべて秘書の責任に押しつけたのでは「トカゲのしっぽ切り」と見られても仕方あるまい。

 夕食会は2013年から昨年まで開いた。地元の支援者らが会費1人5千円を払って参加し、会場費などの不足分を安倍氏側が補てんしたという。今回は、後援会の16~19年分の収支報告書に、会費収入と補てん分を含めた支出の計約3千万円を政治資金収支報告書に記載しなかったことが罪に問われた。

 安倍氏は略式起訴を受けて、おとといは記者会見を開き、きのうは衆参両院の議院運営委員会に出席して釈明した。不正な会計処理は自分の知らないところで行われたことを強調したうえで「道義的責任を痛感する」と謝罪した。

 国会軽視も問題になろう。衆院調査局の調べでは、これまでの質疑で「事務所は関与していない」「差額は補てんしていない」といった事実と異なる答弁は、少なくとも118回に上るという。

 安倍氏はきのうの議運委の質疑でも、秘書に確認したが、正確な回答が得られず、結果的に虚偽答弁になったとの趣旨で釈明した。明確に答えられない点もあった。非がないなら、偽証罪にも問われる証人喚問を受けるべきだったのではないか。

 問題が明らかになって以降、ホテル側への確認を秘書に指示して書類をそろえれば、すべてが判明していたはずだ。捜査が終わった段階で、言葉だけの謝罪でとりつくろうのでは、あまりに不誠実だと言わざるを得ない。

 桜を見る会は国費で運営されている。そこに後援者や知人、友人を多数招待した。それだけでも「私物化」と言えそうだが、後援会メンバーは前日に資金を補てんしてまで夕食会を開いて接待した。自らに近い人たちを厚遇する安倍氏の体質が、森友学園、加計学園を巡る疑惑にもつながったのではないか。

 政治資金規正法違反事件は過去に何件もあった。だが、処罰の対象となるのは主に会計責任者で、政治家が罪に問われるケースはほとんどない。今回も安倍氏の秘書は辞職したという。本当に襟を正すなら、政治家本人にも追及が及ぶよう、安倍氏が法改正の先頭に立つべきだ。

 捜査終結から日をおかずに、本人の釈明で強引に幕引きをはかったように見える。官房長官として虚偽答弁に加担することになった菅義偉首相にも、長引くのを避けたい意向が透ける。新旧首相の思惑を秘めた政治決着だとすれば、国民の政治不信が払拭(ふっしょく)できるはずはなかろう。



安倍前首相の弁明 責任「痛感」聞き飽きた(2020年12月26日配信『中国新聞』-「社説」)

 責任を「痛感」して陳謝しても、責任を取って辞職するという考えはないらしい。

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に都内のホテルで開いた夕食会費用を補填(ほてん)していた問題で、安倍氏はきのう衆参両院の議院運営委員会に出席した。これまでの答弁について「結果的に事実に反するものがあった」とし、訂正して陳謝した。

 首相経験者が国会で答弁の誤りについて説明するのも、修正するのも、極めて異例の事態である。安倍氏がこれまで国会を軽視してきたことの表れではないか。衆院調査局によると、事実と異なる安倍氏の答弁は衆参両院で少なくとも118回に上る。秘書のせいにして、口先で謝って済む問題ではない。

 夕食会を巡っては、東京地検特捜部が公設第1秘書を政治資金規正法違反罪で略式起訴し、簡裁が罰金100万円の命令を出した。安倍氏については具体的な関与はなかったとして不起訴処分にした。

 安倍氏はきのうの議院運営委で、政治資金収支報告書に補填分が記載されなかったことについて、あらためて関与を否定した。「私が知らない中で行われていたとはいえ、道義的責任を痛感している」と弁明した。

 「私の政治責任は極めて重い」「深く反省」「真摯(しんし)に受け止めている」などの言葉も連ねていた。だが、納得できた国民はどれほどいるだろう。

 何より巨額の支出を秘書の一存で決められるものなのだろうか。もし安倍氏が知らなかったとしても、行政機関や民間企業なら、部下が問題を起こせば上司は監督責任を問われ、処分を受けるのが当然である。

 そうした視点からきのう野党議員に追及され、「議員辞職に値すると思わないか」と進退を問われた安倍氏は、「信頼を回復するために努力を重ねる」「初心に立ち返り全力を尽くすことで職責を果たす」と、壊れたレコードのように繰り返していた。初心に立ち返る前にまずは目の前にある数々の疑惑について、誠意を持って答えるべきではないか。

 秘書がなぜ補填の事実を安倍氏に伝えなかったのか。後援会による補填費用の出どころはどこなのか―。安倍氏は記者団に「一定の説明責任を果たした」と認識を語っていたが、まだまだ疑問に答えたとはいえない。野党は追及を続けてほしい。

 夕食会の問題だけでは済まない。税金でまかなわれる公的行事の「桜を見る会」をめぐる疑惑も残っている。安倍氏が地元支援者らを数多く招いていたことが、「権力の私物化」と批判されている。公選法にも触れかねない問題だ。マルチ商法をめぐる詐欺事件で逮捕・起訴された元会長の招待や、招待者名簿の不自然な廃棄など、ほかにも数々の疑問がある。

 安倍政権下では、森友・加計学園問題でも、周囲が疑惑を打ち消すように動き、自殺や謝罪に追い込まれるケースが相次いだ。今回も秘書だけが刑事責任を負った。口先だけで「責任」を唱えることを、これ以上許してはなるまい。

 官房長官として安倍氏を擁護した菅義偉首相の責任も問われるべきだ。安倍氏の答弁訂正と陳謝で問題に幕引きできると思うのは大間違いである。



【安倍氏の弁明】知らなかったでは済まぬ(2020年12月26日配信『高知新聞』-「社説」)

 結局は「知らなかった」で済ませるつもりのようだが、どれだけの国民が納得するだろう。

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補塡(ほてん)問題で、政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏は嫌疑不十分で不起訴処分となった。これを受け安倍氏はきのう、衆参両院の議院運営委員会で説明を行った。しかし、数々の疑惑はまるで晴れなかった。

 安倍氏は政治資金収支報告書に補塡分が記載されなかった会計処理について、後援会代表の公設第1秘書から知らされていなかった▽「補塡はない」としてきた自らの国会答弁が事実に反していた―ことを認め謝罪した。

 概して前日の記者会見での発言内容の域を出ていない。政治責任の重さをどこまで感じているのか、疑問に思わざるを得ない。

 政治資金収支報告書への不記載が始まったのは2014年分から。2013年分には補塡が記載されている。なぜ2014年以降、不正な処理が繰り返されたのか。

 2014年10月には小渕優子経済産業相(当時)の関連政治団体が、支持者向け観劇会の一部費用を負担した政治資金規正法違反の疑いが浮上している。小渕氏は閣僚辞任に追い込まれた。

 桜を見る会の構図と似ていることから、補塡を隠すために報告書への記載をしなくなったのではないか。これについて安倍氏は、当時の担当者側から「『答えられない』と回答された」と述べるにとどまった。不記載の動機という核心部分の謎さえ明らかになっていない。

 安倍氏の国会での「虚偽答弁」は少なくとも118回に上る。「補塡はない」とした秘書の話が真実かどうかは、会場のホテル側から明細書を取り寄せればすぐに分かったはずだ。自らの政治生命に関わる問題にもかかわらず、それを怠った理由もいまだに分からない。

 野党議員から改めて明細書の国会提出を求められても、安倍氏は「明細書の公表は営業上の秘密に当たる」とするホテル側の説明を理由に拒否した。

 国民からの信頼を回復するため、安倍氏は「一点の疑問も生じることのないよう、私自身が責任を持って徹底していく」と述べている。その言葉に行動が伴っていない。もっと説明責任を尽くさなければ、国民の理解など到底得られない。

 不起訴により刑事責任は「不問」とされたとしても、政治責任は安倍氏が考えている以上に重い。

 補塡問題は行政府の長たる首相が、国権の最高機関である国会をだます形になっている。三権分立を基盤とする民主政治を揺るがす、重大な背信行為である。議員辞職に値すると言わざるを得ない。

 安倍氏の責任はその進退も含めて、今後とも追及し続けていかなければならない。国会の存在意義が問われている。



118回のうそ(2020年12月26日配信『高知新聞』-「小社会」)

 大正から昭和に元号が変わる際に首相だった若槻礼次郎は、旧大蔵省出身で「秀才官僚」と呼ばれた。ただ、名前をもじって「うそつき礼次郎」と攻撃された政局もあったようだ。

 政権周辺に不祥事が相次ぎ、野党は議会に内閣弾劾の上奏案を提出した。昭和の初年であり予算だけは通したかった若槻は、野党党首と会談。上奏案を引っ込めてもらう代わりに「政府においても深甚なる考慮をなすべし」と、辞職を暗示するような文書を交わした。

 ところが、すぐには辞めようとしなかったため野党が反発した―という流れだ。回顧録によると、会談の中身を閣僚に明かした若槻に、内相だった高知県出身の浜口雄幸が「あまり技巧を弄(ろう)するといかんぞ」と忠告している。

 平成から令和への改元に立ちあった安倍前首相。桜を見る会問題で刑事処分は「秘書がやったこと」で逃れたが、事実と異なる国会答弁は118回にも及んだ。いわば「118回のうそ」。ドラマか小説のタイトルにでもなりそうだが、国会の権威をおとしめ、国民を侮った形だから質が悪い。

 「責任を取る」意識も相変わらず希薄なようだ。自ら政治責任は重いと認めながら、「初心に立ち返る」と具体の行動は見えてこない。歴代最長政権は、実は歴代最も責任を取らなかった政権ではなかったかと思えてくる。

 「政治をして国民道徳の最高水準たらしむる」。浜口が掲げた理想があらためて重い。



安倍氏の釈明 幕引きにしてはならない(2020年12月26日配信『西日本新聞』-「社説」)

 こんな大金を秘書が政治家に相談も報告もせず独断で使えるのだろうか。疑惑は解消されるどころか、膨らむばかりだ。

 「責任を痛感する」と言いながら、議員辞職や自民党離党といった具体的な責任の取り方を示そうとしない姿勢にも疑問を禁じ得ない。国民の怒りや失望に鈍感すぎるのではないか。

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴処分とする一方、同法違反の罪で後援会代表を務めていた公設第1秘書を略式起訴した。

 捜査の節目を受け、安倍氏は記者会見を開いて経緯を説明するとともに、きのう衆参両院の議院運営委員会へ出席した。

 記者会見に応じ、国会へ出向いて説明責任を果たそうとする姿勢そのものは評価するが、語った中身はおよそ説得力に乏しかった。これが憲政史上最長の長期政権を担った首相経験者の説明か-と耳を疑うほどだ。

 衆院議運委で安倍氏は首相在任中の国会答弁について「結果として事実に反するものがあった。改めて事実関係を説明し、答弁を正したい」と述べた。

 略式起訴された秘書は、後援会の4年分の政治資金収支報告書に夕食会の収入約1157万円と支出約1865万円の計約3022万円を記載していなかったとされる。「後援会として収入、支出はなく、収支報告書に記載する必要はない」「(会費との差額を補填した事実は)全くない」としてきた安倍氏の国会答弁は全て「虚偽」だったことになる。

 なぜ、こんな不正会計と虚偽答弁がまかり通ったのか。安倍氏は「会計処理は私の知らない中で行われた」と繰り返した。要は秘書の責任で、自分は関与していなかったという弁明である。「もっと問い詰めればよかった」「じくじたる思いはある」といった反省の弁も空疎に響いた。こんな説明で国民が納得すると思ったら大間違いだ。

 「国民の政治への信頼を失墜させ、私の責任は重いと自覚している」とも述べたが、野党議員から「議員辞職すべきだ」と迫られると、「今回の反省に立ち、初心に帰って信頼回復に努めたい」などとかわす。これでは本当に責任を自覚しているのか疑いたくなる。

 自民党は今回の記者会見と議運委をもって幕引きを図る意向とされる。とんでもない話だ。安倍氏の国会招致は今後も必要である。捜査が終結した以上、疑惑の解明と政治責任の追及は国会の使命だ。「憲政史の汚点」を放置してはならない。



誠心誠意、うそをつく(2020年12月26日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 「誠心誠意、うそをつく」。戦前、戦後の政界で活躍した三木武吉が言ったとされる。保守合同を成し遂げ自民党結成の立役者となった三木は、その政治手腕から「希代の策士」と呼ばれた

▼敵も味方も欺いたが、私欲ではなく理想の実現のための「うそ」だという矜持(きょうじ)の表れが冒頭の言葉だろう。国民に対しては率直に心中を語ることが多かったという

▼三木が残した自民党の総裁を務め、憲政史上、最も長く首相に在職した政治家の「うそ」に誠心や誠意はあるか。私欲ではないか。安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に開いた夕食会の費用補填(ほてん)問題で安倍氏が釈明した

▼簡単に言えば、知らないうちに秘書がやった▽秘書は自分にうそをついた▽結果として事実と違う国会答弁になった▽自分は不起訴でおとがめなし▽道義的責任は感じるのでおわびします-という内容

▼本当に知らなかったとは信じ難いが、きちんと確かめず「補填はない」と言い張っていたとしたら、政治家失格だろう。国会で「うそ」を繰り返した事実は、口先の謝罪で済まされるはずもない。だが、離党も議員辞職もせず、「初心に立ち返り、全力を尽くすことで職責を果たす」そうだ

▼略式起訴された秘書が引責辞職したと聞けば、安倍前首相夫人が絡む公文書を廃棄、改ざんした官僚が処分された森友学園問題と重なる。責任逃れに関しては希代の策士かもしれない。



安倍前首相弁明(2020年12月26日配信『佐賀新聞』-「論説」)

自浄能力が失われた

 安倍晋三前首相が衆参両院の議院運営委員会に出席し、自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補塡(ほてん)問題を巡り、国会で事実と異なる答弁を重ねたとして謝罪した。

 自民党と安倍氏はこれで疑惑の幕引きを図ろうとしているが、行政府の長が立法府で「虚偽答弁」を繰り返した責任の重大さを軽んじているのではないか。安倍氏以外でも「政治とカネ」問題が続出しており、自民党は自浄能力を喪失していると言わざるを得ない。

 東京地検特捜部の調べによると、安倍氏側の補塡額は2016年から19年までだけでも約708万円に上る。だが、安倍氏は首相当時、政治資金収支報告書への記載が必要な収入や支出は「一切ない」と一貫して否定。野党が「答弁が事実でなければ責任を取るか」とただすと、「全ての発言が責任を伴う」と言い切っていた。

 虚偽であることが判明した場合、首相在任中なら首相を、退いていても衆院議員を辞職する覚悟を示唆したと受け止めるのが普通だろう。

 補塡問題では、政治資金規正法違反罪で公設第1秘書のみが略式起訴され、安倍氏は不起訴になった。議運委や前日の記者会見で「国民と全ての国会議員におわび申し上げたい」と頭を下げたが、秘書の隠蔽(いんぺい)で「(不記載は)私が知らない中で行われた」と言い添えた。「議員辞職に値する」との指摘には「身を一層引き締めながら研さんを重ねていく。初心に帰り努力していきたい」と否定した。

 これでは何ら責任を取ったことにはならないのではないか。衆院調査局によると、補塡問題で安倍氏は少なくとも118回、事実とは違う答弁をしていたことが判明した。それだけ野党の追及を受けていたわけで、いくらでも修訂正する機会はあったはずだ。秘書が補塡を隠した動機は何か、原資が安倍氏の個人資金であるのに、安倍氏は気づかなかったのかなど疑問点も残っている。

 議運委での発言は、補塡と収支報告書への不記載を認めた以外、夕食会会場になったホテル発行の明細書や領収書提示の可否を含め、従来の答弁のほぼ枠内だった。この期に及んで国会審議に真摯(しんし)に向き合わないのであれば、議員の資格があるか疑わしい。

 立憲民主党の辻元清美氏が「民間企業の社長が公の場で100回以上、うその説明をして、社員にだまされたと言い訳して許されると思うか」と指摘したのは、国民感情に合っているのではないか。

 自民党が抱える「政治とカネ」問題はほかにもある。吉川貴盛元農相に鶏卵業者から現金受領疑惑が発覚。「体調不良」を理由に衆院議員を辞職したが、東京地検特捜部が収賄容疑での立件に向け、関係先を家宅捜索した。参院広島選挙区の選挙買収事件では離党したものの、河井克行衆院議員(元法相)と妻の案里参院議員が公判中だ。

 自民党内にも事態を深刻にとらえる議員もいる。だが、安倍氏が議運委に出席したのは衆院選を控えた来年まで、「党の顔」である首相経験者を直撃した問題を引きずりたくないとの思惑がある。官房長官当時、安倍氏の答弁を追認した菅義偉首相も陳謝したが、「政治とカネ」問題への取り組み姿勢を見極め、衆院選でしっかり審判したい。(共同通信・鈴木博之)



安倍前首相 重い責任語る言葉の軽さ(2020年12月26日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填[ほてん]問題で、東京地検特捜部は、政治資金規正法違反罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴する一方で、安倍氏は嫌疑不十分で不起訴処分とした。

 これを受け、安倍氏は、首相当時に「補塡はない」などとしていた国会答弁は事実と異なっていたと認め、24日の記者会見と25日の衆参両院の議院運営委員会で「事実を知らなかった」と弁明した上で、「国民、国会議員に深くおわびする」と陳謝した。

 しかし「政治的、道義的責任は極めて重い」と語る一方、経緯の説明は不十分で責任をどう取るかの具体的言及もなかった。安倍氏の言葉は、国民の不信を解くには軽すぎると言わざるを得ない。

 安倍氏の秘書に対し、東京簡裁は罰金100万円の略式命令を出し、秘書側は即日納付した。安倍氏の不起訴と合わせ、刑事司法のこの問題に対する追及は一段落したことになるが、多くの国民にとってこれで「幕引き」では納得し難い状況であり、改めて安倍氏の説明責任が問われている。

 安倍氏は記者会見と議院運営委員会で、「秘書に確認し、その言葉を信じて補塡の事実はないという認識で答弁したが、結果的に事実と違った」と繰り返し、「もっと秘書を問い詰めればよかった」などと反省の弁を述べた。

 しかし、首相在任当時、国会では野党が度々、ホテル側への調査結果などを示して安倍氏の答弁の矛盾を指摘していた。それを「私の言葉が信用できないのか」と、ホテルの書類確認などをかたくなに拒んでいたのは安倍氏自身ではないか。安倍氏の手持ち資金からという補填費用の出どころなども含め、「捜査後に初めて事実を知ることになった」との経緯の説明は、不自然な点が多い。

 「早くに収支報告を修正しておけば問題はなかった」との認識も納得し難い。たとえ収支報告書に記載してあっても、夕食会費用の補塡は、選挙区民への利益供与を禁止した公職選挙法に抵触する可能性がある。その認識があったからこそ記載しなかったのでは、との疑いも残る。

 そもそも、「桜を見る会」自体が、安倍氏の後援会関係者らの招待が膨らみ続け「税金を使った利益供与ではないか」との指摘を受けたのが、一連の問題追及の発端だった。反社会的勢力の招待や招待者名簿の廃棄など、解明されていない疑惑は数多い。

 安倍氏は、責任の取り方を問われ、議員辞職や離党を否定する一方で、「深い反省の上に立って信頼回復へのあらゆる努力を重ねていきたい」と述べた。ならば、秘書も含めて野党側が要求する証人喚問に自ら応じ、明細書などホテル側の書類も提出すべきだ。

 委員会出席後、安倍氏は記者団に「説明責任を果たすことができたのではないか」と述べたという。本気でそう認識しているのなら、自身のウソが招いた政治不信の重さへの自覚がなさすぎる。



ため息しか出ない(2020年12月26日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 アフォリズムとは、物事の本質を簡潔に鋭く言い表した語句。金言、箴言[しんげん]ともいう。うろ覚えだが、いいアフォリズムの書ける作家は読者から愛されずにはおかない、と井上ひさしさんがどこかで書いていた

▼その通りだなと思う。昨年、本紙で連載された夏目漱石の小説『虞美人草[ぐびじんそう]』に、こんなくだりを見つけたからだ。<嘘[うそ]は河豚汁[ふぐじる]である。その場限りで祟が[たたり]なければこれほど旨[うま]いものはない。しかし中毒[あたっ]たが最後苦しい血も吐かねばならぬ>

▼この人にとって、河豚汁の味はどうだったのだろう。安倍晋三前首相である。「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡[ほてん]問題で告発されたものの不起訴となり、きのう国会で「後援会としての収支は一切ない」などの“虚偽答弁”を訂正した

▼あくまでも本人は「知らなかった」そうで、その通りならば河豚汁を食べてはいないことになる。当然ながら中毒[あた]りもせず、すべては秘書が独断でやったこと、という既視感あふれる筋書きである。ただ、どれほどの人がそれを信じたのか

▼安倍氏は以前、「私が言うことが真実」と断言していた。それが違ったのだから、いまさら誰も信用などするまい。年末に慌ただしく記者会見し、国会で説明したのも、年が明ければ国民もメディアも忘れてしまうと高をくくったからでは

▼それにしても、と思う。世間を見渡せば、大臣室で現金を受け取った疑いの元農相や、賭けマージャンの東京高検元検事長…。最低限のモラルも溶け落ちたかのようで、ため息しか出ない。



安倍前首相不起訴(2020年12月26日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆くすぶる疑惑解明に努めよ◆

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に都内のホテルで開いた夕食会を巡り、東京地検特捜部は収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反の罪で、後援会代表の公設第1秘書を略式起訴した。安倍氏本人については指示や了承といった具体的な関与がなかったとして不起訴処分にした。

 夕食会は2013~19年に毎年1回、地元支援者らを集め開かれた。会費は1人5千円。ホテル側への支払いで不足分を安倍氏側が補塡(ほてん)したが、会費や補塡分の収支を記載しなかった。だが、国会で補塡疑惑を追及された安倍氏は全面否定。会費はそのままホテル側に渡し、後援会などの収支は一切ないとしてきた。

 特捜部による事情聴取などで秘書らは補塡を認め、独断で収支報告書に記載せず、安倍氏には事実と異なる説明をしたと述べた。安倍氏本人も聴取に「知らなかった」とし、秘書らの一存という釈明を覆すだけの証拠はなかったとみられる。

 事実とは正反対の答弁を重ねた安倍氏が国会で説明し謝罪するのは当然だが、それで終わりではない。税金で賄われる公的行事の私物化や「首相推薦枠」によるマルチ商法の元会長招待、招待者名簿の不自然な廃棄と、数々の疑惑が今なおくすぶる。解明が求められるのは言うまでもない。

 安倍氏は公設第1秘書が略式起訴された政治資金規正法違反や、有権者への寄付などを禁じる公選法違反の疑いで告発された。収支報告書不記載の責任を一義的に負うのは政治団体の会計責任者とされる。夕食会を主催した後援会の代表でもない安倍氏が刑事責任を問われるとすれば、具体的に指示したり、了承したりした場合に限られ、立件のハードルは高い。

 起訴内容が16~19年分の不記載計3千万円余りにとどまり、安倍氏の刑事責任を問うまでに至らなかったのにはやむを得ない面もある。とはいえ、巨額の支出を秘書の一存で決められるのかという疑問は残る。さらに知らなかったとしても、何度も確認・修正する機会はあった。

 野党は安倍氏の地元支援者らが大勢招かれているとし「私物化」と追及。安倍氏は「個人情報のため回答を控える」と答弁したが、その後、19年の夕食会に地元支援者約800人が参加し、その大半が桜を見る会に出席したとした。

 森友、加計問題も含め、追及をかわし続け、真相解明に動こうとはしない政権の姿勢は安倍氏、菅義偉首相とトップが代わっても、変わらない。政治不信が深刻なまでに深まっている現実と正面から向き合うべきだ。



安倍前首相不起訴 政治的責任は免れない(2020年12月26日配信『琉球新報』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前夜祭として主催した夕食会への費用補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)、公職選挙法違反(寄付行為の禁止)などで告発された安倍氏を不起訴処分とした。

 安倍氏は刑事罰に問われなかったが、これで政治的責任を免れたわけではない。国会で虚偽答弁したことをはじめ、民主主義の根幹を揺るがした事実は消えない。「道義的責任」を感じているなら議員辞職するのが筋だ。

 費用補填問題で検察は2016~19年の政治資金報告書に4年分の収支3022万円を記載しなかったとして、安倍氏の公設第一秘書を24日に略式起訴した。秘書は25日に東京簡裁の略式命令を受け、罰金100万円を納付した。

 一連の疑惑に対する捜査はこれで形の上では終結したことになる。だが不起訴を受けた安倍氏の記者会見や国会での質疑応答で、疑問はさらに膨らんだ。

 補填した額は、検察の認定で16~19年で708万円に上る。補填費用の原資を問われた安倍氏は、私的な支出に充てるため手持ち資金として事務所に預けた自身の預金が使われたと説明している。

 公選法は公職にある者が選挙区内の有権者に対し、いかなる名義をもってしても寄付してはならないと規定する。補填は公選法違反ではないか。立件するには寄付を受ける側に利益を得た認識が必要というが、夕食会に参加したのは、ほぼ安倍氏の支持者であり、会費は都内の高級ホテルとしては破格の5千円だった。支持者を接待するという目的は明らかだ。

 同時に安倍氏の個人資金が有権者の飲食に充てられたのならば、秘書は雇い主である安倍氏に報告をせず、無断で流用したのか。そのことに安倍氏は気付かなかったのか。金額も含め国民の感覚からあまりにもかけ離れている。

 25日に開かれた衆参両院の議院運営委員会に出席した安倍氏は、繰り返し「秘書の虚偽報告」であったことを強調した。「説明責任を果たす」という言葉とはほど遠い態度だった。

 しかし、これまでの国会での質疑では、野党からホテルの明細書など真相解明に必要な資料を要求されていた。安倍氏が自ら明細書を取り寄せるなど行動を起こせば、秘書の報告のせいにできなかったはずだ。結果的に118回もの事実と異なる答弁をする必要はなかった。

 言論の府である国会で、最高権力者である首相が虚偽を述べたのではまともな議論が成り立つはずがない。安倍政権下では、森友学園問題でも事実と異なる政府答弁が139回あった。

 民主主義の基本である事実に基づいた議論を放棄したのが安倍前政権だといえる。その事実を重く受け止めるのなら、安倍氏は速やかに出処進退を明らかにすべきだ。



世論とのズレ広がるばかり(2020年12月26日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

」★「あの時の繰り返しだ」。自民党ベテラン議員は言う。92年、元自民党副総裁・金丸信への東京佐川急便事件に関連する5億円の闇献金事件で東京地検特捜部は金丸の事情聴取をせずに略式起訴に。この対応に世論は激しく反発。霞が関の検察合同庁舎にペンキが掛けられる事件も発生し、特捜部は翌93年、金丸を脱税容疑で逮捕した。「あの時、検察は世論が離れていく怖さを知った。ところが時代が変わり検察官も公務員などと思うようになった。つまり法務省の行政官たち、赤レンガ派が現場を凌駕(りょうが)しているのだろう。現場はやりにくくなっているのではないか。または腰抜けになったかだ」。

★地検は前首相を嫌疑不十分で不起訴とし、公設第1秘書が、政治資金収支報告書不記載により略式起訴され、100万円の罰金に処された。秘書は辞職した。国民は2日間にわたる前首相の説明に納得などしていない。それは地検も同様だろう。切り崩す壁が厚かったのか。だが、国民の批判は怖い。25日、アリバイ作りのように鶏卵汚職事件で元農相・吉川貴盛の地元事務所や議員会館の家宅捜索に入った。

★また24日、賭博容疑で告発された黒川弘務・元東京高検検事長に対する東京地検の不起訴処分(起訴猶予)について、東京第6検察審査会は「起訴相当」と議決したと公表した。世論の批判をかわし、バランスを取ろうと検察も捨て身の動きだ。25日、立憲民主党副代表・辻元清美は前首相に「国民のなかには議員辞職に値するのではないかという声があること、承知していますか」と問うと、前首相は「承知をしております」と答えた。最終的には次期衆院選挙不出馬になるのではないか。そこまでがギリギリのせめぎあいだったろうか。同日、官房長官・加藤勝信は会見で、国会答弁における「虚偽」の定義に関し「何をもって虚偽答弁というかは、必ずしも固定した定義が国会の中であるとは承知していない」と妙な援護射撃を行った。世論とのずれはますます広がるばかりだ。



安倍氏「桜」弁明(2020年12月26日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

どこまで無反省・不誠実なのか

 「桜を見る会」前夜祭をめぐり、国会で虚偽答弁を繰り返した安倍晋三前首相への質疑が衆参の議院運営委員会で行われました。安倍氏は、事実に反する答弁があったと認め「おわび」を口にする一方、安倍後援会が費用補填(ほてん)をしていたことを知らなかったなどと言い訳に終始しました。苦し紛れの開き直りという他ありません。秘書の独断で、多額の費用を補填していたというのは常識では考えられません。自己保身のために秘書に責任転嫁する姿勢は、うその答弁を続けた時と全く変わりません。無反省で不誠実な安倍氏に国会議員としての資格はありません。

疑惑はますます深まった

 秘書に任せてきた。補填は自分が知らない中で行われていた。秘書から説明があったのは最近だった―安倍氏の議運委での弁明は、自分の責任をひたすら免れようとする言葉が並びました。少なくとも118回も国会でうその答弁をしてきたことについては「結果として事実に反するものがあった」と人ごとのような表現で済ませました。首相という行政府の長が昨年11月から国会を欺き、国会での真相究明を妨害し、審議の土台を崩してきたことへの根本的な反省はみじんも感じられません。

 そもそも安倍氏にはすすんで事実を明らかにする姿勢がありません。なぜ前夜祭の出入金が政治資金収支報告書に不記載になったのか。2013年には安倍氏の資金管理団体の報告書に前夜祭にあたる記載があったのに、14年の報告書から記載はなくなりました。

 日本共産党の宮本徹衆院議員が理由を説明するよう事前通告し質問したのに、安倍氏は当時の担当者から聞けなかったとごまかしました。14年に発覚した小渕優子経済産業相の後援会観劇ツアー補填をめぐる報告書未記載事件を受けて、安倍氏側が補填を隠蔽(いんぺい)した疑いが濃厚です。前夜祭に参加した地元有権者への利益供与を隠すためではないか。安倍氏には真相を語る大きな責任があります。

 ホテル発行の前夜祭明細書の存在はやっと認めたものの、ホテル側が「営業上の秘密」と言っていると述べ、公開に後ろ向きです。安倍氏が記載を修正した政治資金収支報告書をめぐって領収書自体を隠している疑いもあります。安倍氏は、政治資金の透明性につとめると何度も口にしましたが、まるで説得力はありません。

 改めて問われるのは、補填の原資です。16年から19年まで4回の前夜祭分だけで補填額は約700万円にのぼります。しかし政治資金の報告書では、安倍氏側のどこから出されたのか不明のままです。日本共産党の田村智子参院議員は、税金を使った首相主催の「桜を見る会」と、前夜祭とセットで地元有権者に「おもてなし」を行ったのではないかとただしました。国政私物化の核心の解明から首相は逃れることはできません。

うそ許さない証人喚問を

 安倍氏の議運委での説明は、つじつまの合わないことが数多くあります。国民はとても納得できません。新たに浮上した疑惑もあります。うそを言えば罪になる証人喚問を衆参予算委員会で開催することが不可欠です。安倍氏の言い逃れを許してはなりません。官房長官として安倍氏のうそ答弁をおうむ返しし、真相解明を妨害した菅義偉首相の責任は重大です。





安倍氏不起訴 喚問に応じるのが筋だ(2020年12月25日配信『北海道新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)などの容疑で告発された安倍氏を嫌疑不十分で不起訴とした。

 一方、後援会代表の公設第1秘書を同法違反(同)の罪で略式起訴した。

 安倍氏は昨年11月に問題が発覚して以降、国会で費用の穴埋めを重ねて否定してきた。

 行政府のトップが国会で事実と異なる答弁を繰り返し、国権の最高機関である立法府の存在意義をおとしめた責任は極めて重い。

 検察の処分は軽すぎると受け止めた国民は多いだろう。

 安倍氏はきょう衆参両院の議院運営委員会に出席するが、通り一遍の説明では到底済まされない。

 偽証した場合に罰則が科せられる証人喚問で野党の質問に答え、真相を明らかにするのが筋だ。

 起訴状によると、秘書は後援会の2016~19年分の収支報告書に夕食会費用の補填に絡む収入と支出の計約3022万円を記載しなかった。

 特捜部は不起訴の理由について、安倍氏が不記載を認識していた証拠がないと説明する。

 元特捜部検事の郷原信郎氏は、法令違反に問われる対象が報告書への記載義務のある会計責任者らに限定されない虚偽記入罪を適用すべきだと指摘している。

 こうした点も含めて、本当に捜査を尽くしたか疑問が残る。秘書についても裁判が行われない略式起訴ではなく、裁判で真実に迫る審理をすべきではなかったか。

 夕食会を巡る国会審議で、安倍氏が「明細書はない」などと事実と異なるとみられる答弁を少なくとも118回していたことが、衆院調査局の調べで分かっている。

 安倍氏はきのう国会内で記者会見し「私が知らない中で行われたとはいえ、道義的責任を痛感する」と語った。

 事の重大性に鑑みれば、資金の収支について自ら徹底調査するのが当然ではなかったか。

 会見で述べた「首相の職務に専念していたため、夕食会の運営に関与していない」という言い訳は通用しない。

 桜を見る会に関しては、安倍氏の支持者のために私物化したと批判され、巨額の消費者被害を生んだジャパンライフの元会長が首相の推薦枠で招待された経緯もいまだに明らかになっていない。

 安倍氏は、こうした疑惑も含めて真実を語らなければならない。



上に立つ人の言葉(2020年12月25日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 上に立つ人の言葉は物事を左右する。一国を治める者ともなればなおさらだ。それを昔の中国ではこう言った。「言語は君子の枢機なり」。君子にとって言語は極めて重要なものだという意味だ

▼そのことを教えてくれる話がある。皇帝が離宮を訪れた時のことだ。庭園の池と庭石がひどく気に入った。残念ながら、暗くなってもホタル1匹見えない。そこで告げた。「明かり代わりに少々捕ってきて宮中に放て」

▼その結果、数千人によるホタル狩りとなり、車500台分が送り届けられた。皇帝は「少々捕って」と言った。それを役人はこう解釈したのだろう。「こうこうと照らすほど大量に捕らねば」。小事も頂点に立つ者が言えば大事になるという教訓だ

▼皇帝ほどでなくても、この国の首相の言葉も重いはずだ。だが安倍晋三前首相は在職時、「桜を見る会」前日の夕食会費補填(ほてん)などを巡り、事実と異なる疑いのある国会答弁を118回もしていた。その本人は不起訴となった

▼「事務所側が補填した事実は全くない」と国会で大見えを切っていたが結果的にうそだった。118回中、事務所側の関与否定70回、会場のホテルの明細書関係は20回。これでは安倍氏の発言自体疑わしくなる

▼昨日の会見では補填は「私が知らない中で行われた」と責任を秘書に帰すかのように語った。「私の政治責任は極めて重い」と答弁を正す考えも示した。ただし一連の経緯を振り返れば、この人の言葉を信じるのは難しい。



安倍氏の道義的責任は重い(2020年12月25日配信『日本経済新聞』ー「社説」)
 
 安倍晋三前首相が25日、衆参両院の議院運営委員会で、自身の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭をめぐる質疑に臨んだ。

 参加費の補塡や政治資金収支報告書の不記載は「知らなかった」と釈明したが、現職の首相として事実に反する国会答弁を繰り返した道義的な責任は重い。今後も真相究明と国民への説明の努力を続けていく必要がある。

 安倍氏はこれまでの国会での説明について「当時の私の認識の限りにおいて答弁したが、結果として事実と違った。国民、与野党すべての国会議員におわびしたい」と陳謝した。

 野党は十分な調査をせず虚偽答弁を繰り返した責任は議員辞職に値すると追及した。前夜祭に関する事務所の帳簿やホテルからの明細書や領収書の提出を求めた。安倍氏の証人喚問も主張した。

 東京地検特捜部は24日に安倍氏の公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)罪で略式起訴し、東京簡裁が罰金100万円の略式命令を出した。25日の質疑は捜査終結を踏まえ、安倍氏が衆参両院にこれまでの答弁の修正を申し出る形で行われた。

 前夜祭は2013~19年に政治団体「安倍晋三後援会」が東京都内で主催し、安倍氏の支持者らが1人5千円の会費で参加した。

 起訴状によると、公設第1秘書は16~19年の後援会の報告書に計約3000万円の収支を記載せず、会費とホテルへの支払いの差額分を安倍氏側が負担した。補塡した資金の出どころや前夜祭の実際の収支について、国会も事実を把握する必要がある。

 東京地検特捜部は吉川貴盛元農相が鶏卵生産大手トップから現金を受領したとされる疑惑の捜査で関係先を一斉に家宅捜索した。河井克行元法相夫妻の参院選での買収事件の裁判も続いている。

 歴代最長となった安倍政権の下で、「政治とカネ」をめぐる事件や疑惑が次々に浮上した。自民党は国民の政治不信を招いている現状を真摯に反省すべきだ。



安倍前首相不起訴 なお残る疑惑の解明を(2020年12月25日配信『茨城・佐賀城新聞』-「論説」)


 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に都内のホテルで開いた夕食会を巡り、東京地検特捜部は収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反の罪で、後援会代表を務める安倍氏の公設第1秘書を略式起訴した。安倍氏本人は指示や了承といった具体的な関与がなかったとして不起訴処分にした。

 夕食会は2013〜19年に毎年1回、地元支援者らを集め開かれた。会費は1人5千円。ホテル側への支払いで不足分を安倍氏側が補填したが、会費や補填分の収支を記載しなかった。だが国会で補填疑惑を追及された安倍氏は全面否定。会費はそのままホテル側に渡し、後援会などの収支は一切ないとしてきた。

 特捜部による事情聴取などで秘書らは補填を認め、独断で収支報告書に記載せず、安倍氏には事実と異なる説明をしたと述べた。安倍氏本人も聴取に「知らなかった」とし、秘書らの一存という釈明を覆すだけの証拠はなかったとみられる。

 事実とは正反対の答弁を重ねた安倍氏が国会で説明し、謝罪するのは当然だが、それで終わりではない。税金で賄われる公的行事の私物化や「首相推薦枠」によるマルチ商法の元会長招待、招待者名簿の不自然な廃棄と、桜を見る会を巡っては数々の疑惑が今なおくすぶる。解明が求められるのは言うまでもない。

 安倍氏は公設第1秘書が略式起訴された政治資金規正法違反や、有権者への寄付などを禁じる公選法違反の疑いで告発された。収支報告書不記載の責任を一義的に負うのは政治団体の会計責任者とされる。夕食会を主催した後援会の代表でもない安倍氏が刑事責任を問われるとすれば、具体的に指示したり、了承したりした場合に限られ、立件のハードルは高い。

 また夕食会に出た地元支援者らは聴取に「5千円でも高いと思った」とし、寄付を受けたとの認識が薄かったという。衆院選の時期と離れていたこともあり、安倍氏側にも買収の意図はなかったと判断したもようだ。

 起訴内容が16〜19年分の不記載計3千万円余りにとどまり、安倍氏の刑事責任を問うまでに至らなかったのは、やむを得ない面もあった。とはいえ、巨額の支出を秘書の一存で決められるのかという疑問は残る。知らなかったとしても、国会で虚偽答弁を繰り返し、何度も確認・修正する機会はあったのに押し通した責任は重い。

 しかも桜を見る会を巡っては疑惑が山積みになっている。野党は安倍氏の地元支援者らが大勢招かれているとし「私物化」と追及。安倍氏は「個人情報のため回答を控える」と答弁したが、その後、19年の夕食会に地元支援者約800人が参加し、その大半が桜を見る会に出席したとした。

 高額な磁気ネックレスなどの預託商法を巡る詐欺事件で逮捕・起訴された創業者の元会長が「首相推薦枠」で招待されたとの疑惑ついて十分な説明はなく、野党議員が資料請求した19年分の招待者名簿が直後に廃棄された経緯もうやむやにされたままになっている。

 森友、加計問題も含め、追及をかわし続け、真相解明に動こうとはしない政権の姿勢は安倍氏、菅義偉首相とトップが代わっても、変わらない。政治不信が深刻なまでに深まっている現実と正面から向き合うべきだ(共同通信・堤秀司)。



「桜」で安倍氏不起訴 秘書の責任では済まない(2020年12月25日配信『毎日新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」前夜祭の費用補塡(ほてん)問題で、東京地検特捜部が安倍晋三前首相を容疑不十分で不起訴とした。

 主催した後援会の代表を務める公設第1秘書は、政治資金収支報告書への約3000万円の不記載で略式起訴された。秘書だけが刑事責任を負うことになったが、それでは済まされない。

 政治資金規正法では、収支報告書への不記載で罪に問われるのは会計責任者や補助した人だ。政治家は、指示や了承といった共謀関係がなければ処罰されない。

 特捜部は、安倍氏の共謀を裏付ける証拠を見つけられなかった。安倍氏は記者会見でも「知らない中で行われていた」と述べた。

 とはいえ、首相経験者が在任中の「政治とカネ」の疑惑で検察の事情聴取を受けたことは、極めて異例であり、深刻な事態だ。

 不起訴になったからといって疑念は消えない。安倍氏は「会場のホテルと契約したのは参加者で、後援会の収入、支出は一切ない」と強調してきたが、あまりに荒唐無稽(むけい)な説明だった。

 国会で追及されていたのに、ホテルからの明細書や領収書を確認しなかったのも理解しがたい。

 前夜祭について安倍氏は「補塡はない」などと繰り返してきた。こうした「虚偽答弁」は、5カ月で少なくとも118回に上る。

 安倍氏は公職選挙法違反容疑でも告発されていた。費用補塡は有権者への寄付行為であるほか、桜を見る会に支援者を参加させたことは買収に当たるというものだ。

 特捜部は、これらも不起訴とした。参加者に利益を得たとの認識がなかったことなどが理由だ。

 だが、桜を見る会は、首相が各界の功労者を慰労するために、国費で開催されてきた。そこに多くの支援者を招待していたことは、「私物化」に他ならないだろう。前夜祭もその一環である。

 東京簡裁が秘書に罰金100万円の略式命令を出したため裁判は開かれない。検察審査会による強制起訴がない限り、公開の法廷で真相を解明する道は閉ざされる。

 安倍氏はきょう、衆参の議院運営委員会で説明するという。しかし、これまでの経緯を考えれば、うそをつけば罪に問われる証人喚問に応じるべきだ。



父親がリンゴと聖書と1ドル札を息子の部屋に置いた…(2020年12月25日配信『毎日新聞』-「余録」)

 父親がリンゴと聖書と1ドル札を息子の部屋に置いた。リンゴをとれば農業を継がせ、聖書なら牧師、札なら商人にするつもりだった。しばらくして部屋をのぞくと息子は聖書に腰掛けてリンゴを食べていた

▲「おい、ドル札はどうした」。父親が聞くと息子は「オレ、知らないよ」。結局、息子は政治家になった。――アメリカンジョークだが、政治家にはうそと金がつきものということだろう。「オレ、知らないよ」がキーワードである

▲こちらも政治資金規正法違反はすべてが秘書の独断専行で、当人は知らなかったとの弁明が通ったらしい。東京地検は「桜を見る会」前夜祭をめぐり同法や公職選挙法違反の容疑で告発されていた安倍晋三(あべ・しんぞう)前首相を不起訴処分とした

▲刑事責任追及での「秘書の壁」はやはり厚かったが、安倍氏が国会で繰り返した“虚偽答弁”の責任も重大だ。秘書を雇う安倍氏は真実を知りうるし、知らねばならぬ立場だった。「知らなかった」だけでは国民への弁明にならない

▲「桜」前夜祭の費用につき「事務所の関与はない」「差額の補塡(ほてん)はない」など、事実と異なる答弁は118回に及んだ。不起訴処分を受け、安倍氏はきょう国会で答弁の訂正を行う。誰もが納得いく説明と責任の取り方が必要である

▲「政治家がうそをついている時って、どうやって分かるの?」「連中が口を開いた時だ」――これもジョークだが、今は笑えない。証人喚問を求める野党がいうように、今度は真実だという保証がほしくなる。



安倍氏不起訴 不誠実な答弁の責任は重い(2020年12月25日配信『読売新聞』-「社説」)

 政治資金の透明化を目指した法律が、日本のリーダーの足元で踏みにじられていた。安倍前首相は猛省し、説明責任を尽くさねばならない。

 安倍氏の後援会が開いた「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が、公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)で略式起訴した。東京簡裁は罰金100万円の略式命令を出した。

 東京都内で2013年から昨年まで開いた前夜祭には、地元支援者らが1人5000円の会費を支払って参加した。開催費の不足分は安倍氏側が補填ほてんしたという。

 秘書は後援会の代表を務め、会計処理を実質的に担当していた。今回、16~19年分の後援会の政治資金収支報告書に、会費徴収分と700万円を超える補填額の収支計3000万円を記載しなかったという罪に問われた。

 安倍氏側は、前夜祭にかかった費用の記載方法について、総務省に問い合わせていた。記載の必要があることを認識しながら、なぜ書かなかったのか。

 秘書は、記載しないことが「慣例だった」と供述しているという。政治資金の公開原則をないがしろにする処理が、恒常的に行われていたことになる。

 安倍氏は、嫌疑不十分で不起訴になった。特捜部の任意の事情聴取に対し、「首相退陣後に事実を把握した」と述べた。秘書も独断で行ったと話しているというが、安倍氏の責任は免れない。

 安倍氏は国会で、前夜祭について「後援会としての収入、支出は一切ない」などと何度も答弁していた。菅首相も、官房長官として答弁を追認してきた。

 秘書やホテル側に十分確認をせず、国権の最高機関である国会で事実に反する説明を繰り返したことは、看過できない。虚偽の答弁と批判されても仕方あるまい。

 安倍氏は記者会見で「道義的責任を痛感している。初心に立ち返り、職責を果たす」と述べた。政治の信頼を失墜させた事実を、安倍氏は重く受け止めるべきだ。

 略式起訴のため、公判は開かれない。与野党は、衆参両院の議院運営委員会で安倍氏から聴取することで一致した。

 安倍氏は記者会見で、補填分は手持ち資金から支払われた、と語った。国会でも事実関係や経緯を真摯しんしに説明する必要がある。

 自民党では、先の参院選での買収事件や元農相2人の現金授受疑惑など、政治とカネの問題が相次いでいる。自ら襟を正さない限り、信頼回復はおぼつかない。



安倍氏秘書を起訴 政治家として責任は重い(2020年12月25日配信『産経新聞』-「主張」)

 「桜を見る会」前日の夕食会費用を後援会が補填(ほてん)した問題で、東京地検特捜部は24日、安倍晋三前首相の公設第1秘書を政治資金規正法違反罪で略式起訴した。

 安倍氏は嫌疑不十分で不起訴処分となった。理由は「収支報告書の作成に関与し、不記載を認識していたという証拠はない」というものだった。

 安倍氏は特捜部の任意の事情聴取に「知らなかった」と不記載への関与を否定していた。秘書も安倍氏に「払っていない」と虚偽の報告をしていたと供述したとされる。これを突き崩すだけの証拠はない、ということである。

 政治家が「秘書が」で逃げ切る構図は、過去に何度も目にしてきた。長く首相を務めた安倍氏もその列に加わったことになる。

 安倍氏は同日の記者会見で「私が知らない中で行われたとはいえ、道義的責任を痛感する」「深く反省するとともに、国民におわび申し上げる」などと述べた。

 「知らなかった」としても事務所、後援会の統治不全は深刻であり、責任の重さは変わらない。

 安倍氏は首相在任時、国会での追及に、何度も事実関係を否定していた。これらは全て虚偽答弁となり、安倍氏は会見で「深くおわび」することになった。

 規正法は昭和23年、政治資金の透明性を担保するために制定された。その後、田中角栄元首相の金脈問題やリクルート事件、日歯連闇献金事件などの不祥事が起きるごとに改正が繰り返されたが、ザル法と揶揄(やゆ)されてきた。

 法律上の不起訴は、政治家としての潔白まで証明しない。

 もともと同法で直接罪に問えるのは会計責任者らで、政治家が刑事責任を問われるのは会計責任者との共謀が認定されるか選任と監督の両方を怠った場合に限られ、極めてハードルが高い。だが、国会から規正法の抜本改正を求める声は聞こえてこない。

 安倍氏は議員辞職や自民党離党を否定し、「信頼を回復するために、あらゆる努力を行っていく」と語った。今後の政治活動に期待するためには、安倍氏が今回の問題への謝罪の実を身をもって示せるかにかかっている。

 25日には衆参両院の議院運営委員会で答弁を訂正するが、まずはそこでの質疑で自身と事務所の不実を潔く認めて謝罪し、全ての経緯を詳(つまび)らかにすべきである。



安倍氏不起訴 捜査は尽くされたのか(2020年12月25日配信『東京新聞』-「社説」)

 秘書は略式起訴だが、安倍晋三前首相は不起訴−。「桜を見る会」夕食会をめぐる東京地検の結論だ。家宅捜索などはせず、罰金で幕引きの構図である。これでは捜査は尽くされたのか疑問だ。

 政治資金の報告書に書くべき収支を書かなかった−それが政治資金規正法の不記載にあたる。検察はそう判断し、秘書の略式起訴を決めた。秘書は違法性の認識は持っていたようだ。

 安倍氏の事情聴取もしたが、「関与していない」と述べたとされる。だが、言い分を聞くだけならば上申書と同じでもある。家宅捜索など考えられる捜査を尽くした上での判断なら理解する。それを行わず、なぜ安倍氏の弁明をうのみにできるのだろうか。

 考えてもみてほしい。「桜を見る会」前日の夕食会は後援会が2013年から毎年、地元の支援者らを招き開かれていた。1人5000円の会費で足りないから、安倍氏側が16〜19年の4年間に限っても計約700万円を補填(ほてん)していた。つまり表面化すれば違法性が問われる事態を、安倍氏を守るべき秘書が続けていたというシナリオが信じられるだろうか。

 不記載額が約3000万円で「少ない」との判断があったと伝えられるが、これが検察の正義なのか。国民は到底、納得できまい。安倍氏が真に迫って「補填はしていない」「明細書もない」と国会答弁を重ねていたが、これが虚偽だったとは、自分の事務所や秘書を統制すらできないことを意味するからだ。にわかに信じ難い。

 確かにまだ検察審査会による異なる判断もありうる。だが検審とて証拠がなくては、検察の不起訴判断を覆すことは困難だ。その意味でも今回の「一件落着」には疑問を持つ。

 今回、簡裁は略式命令で秘書に罰金刑を科した。正式な裁判は開かれず、補填に至った経緯や原資などについて法廷で明らかにされることはなくなった。公判審理を選ばなかった簡裁の判断は極めて残念だ。

 安倍氏の国会での説明についても単なる弁明に終わらせてはなるまい。明白な虚偽を国民は聞かされてきたのである。今回のようなケースこそ、偽証罪に問われうる証人喚問の形で、それを実現させねばならない。

 「桜を見る会」の問題の本質は、支援者らを特別に招く権力の私物化にある。法にも触れかねない問題だ。国会軽視の姿勢といい、その罪はより重いと考える。



安倍前首相不起訴(2020年12月25日配信『福井新聞』-「論説」)

重い政治責任、説明尽くせ

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に都内のホテルで開いた夕食会の費用を補塡(ほてん)したとされる問題で、東京地検特捜部は政治資金収支報告書に記載しなかったとして政治資金規正法違反の罪で、後援会代表を務める安倍氏の公設第1秘書を略式起訴した。安倍氏本人に関しては指示や了承といった具体的な関与はなかったとして不起訴処分にした。

 安倍氏は24日の記者会見で「知らなかった」などと釈明したが、巨額の支出を秘書の一存で決められるのか。たとえ知らなかったとしてもホテル側の対応を巡って、国会で野党から何度も見積書や明細書を確認するよう求められながら「ホテル側は『営業秘密』のため開示できないと述べている」などと不自然極まりない答弁に終始していた。事務所の説明を疑問視し確認や修正する機会はあったはずだ。会見で「政治責任は重い」と述べ陳謝したものの「初心に帰って」と言うのみでは国民に響かない。

 衆院調査局の調べでは、事実と異なるとされる安倍氏の答弁は少なくとも118回に上る。行政府のトップが立法府である国会をだますことを許してしまえば、三権分立は瓦解(がかい)する。重大さ、深刻さを考えれば、議員辞職に値するとの声が上がってもやむを得ない。官房長官として、安倍氏の説明をうのみにしてきた菅義偉首相も、人ごとでは済まされない。

 税金で賄われる行事に地元後援会の関係者を大勢招き、前夜祭では自らの政治資金で接待した揚げ句、国会でうそを繰り返す―。憲政史上最長を誇った「1強」宰相の実像がこれでは国民は負のレガシー(政治的遺産)しか記憶にとどめないのではないか。

 事実とは真逆の答弁を重ねた安倍氏が記者会見に続き、国会で説明を尽くし謝罪するのは当然だが、桜を見る会を巡っては、公的行事の「私物化」以外にも疑惑が残されたままになっている。預託商法の詐欺事件で逮捕・起訴された創業者の元会長が「首相推薦枠」で招待され、その招待状により被害の拡大を招いたとの疑惑もしかり。野党議員が資料請求した2019年分の招待者名簿が直後に廃棄された経緯もうやむやのままになっている。

 首相当時の答弁が信頼できないとなれば、森友、加計学園問題についての一連の説明についてもあらためて疑念が膨らんでくる。財務省の決裁文書改ざんに発展し、自殺者まで出した森友問題などは、再調査も必要だろう。

 政治不信が深刻なまでに深まっている。「一人一人の政治家が自ら襟を正す」と語っていたのは自身であり、身の処し方をいま一度自らが判断すべきだろう。



「桜を見る会」不起訴 安倍氏の政治的責任は免れない(2020年12月25日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が、「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補塡(ほてん)問題で、東京地検特捜部は安倍氏を不起訴処分とした。全国の弁護士らから政治資金規正法違反(不記載)容疑などで告発されていた。

 任意の事情聴取に対し、本人は「知らなかった」と不記載の関与を否定。特捜部は政治資金収支報告書の作成に関与し、不記載を認識していた証拠はないと不起訴の理由を説明した。

 しかし、刑事責任に問われなくても、安倍氏の政治的責任は極めて重い。事務所のずさんな会計処理だけでなく、首相としての国会答弁で、虚偽を重ねたことは憲政史に汚点を残した。国民の政治不信を増幅させた責めは負わねばならない。説明を尽くした上で、自身の出処進退を判断すべきである。

 夕食会を巡るホテル側への支払総額は5年間で計約2300万円に上り、参加者1人5千円の会費だけで賄えない分は安倍氏側が穴埋めしていた。900万円余りを補塡したが、収支報告書にその事実を記載していなかった。

 特捜部は不記載を主導した公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。起訴状による不記載額は3千万円を超え、悪質と言わざるを得ない。略式起訴を受け、東京簡裁は書面審理で略式命令を出したが、時の首相に絡む疑惑は国民の重大な関心事であり、穴埋め資金もどう準備したのかなど疑問点は残る。公開の法廷の場で真相に迫るべきではなかったか。

 一方、「(補塡は)知らなかった」とする安倍氏の説明は理解に苦しむ。夕食会の費用を穴埋めしていなかったかどうか、収支報告書に正しい記載をしていたのかどうか、秘書やホテル側への確認を怠らなければ、容易に分かったはずだ。「1人5千円の夕食会費は相場よりかなり安い」として、野党から繰り返し問いただされていたにもかかわらず、事務所の報告をうのみにしていたのであれば看過できない管理能力の欠如である。

 補塡問題を巡る国会質疑に関し、安倍氏が事実と異なる答弁を繰り返していたことは断じて許されない。衆院調査局の調べで少なくとも118回に上ることが判明した。虚偽答弁の多さは説明責任に不誠実な政治姿勢を明確に表す。森友・加計学園問題でも消極的な態度でやり過ごしてきたが、国会軽視、国民への背信はここに極まった感がある。

 安倍氏はきのう会見を開き、一連について謝罪したが、いまだ説明は説得力を欠いている。きょうの国会招致の場で真相をつまびらかにすべきだ。

 国会側は追及の力量が問われる。野党は偽証罪に問える証人喚問を要求したが自民党が拒否し、公開ながらも偽証罪は問われない形で実施される。自民党は安倍氏をかばうのでなく、国民の負託に応える役割を果たすべきだ。疑惑解明が不十分なまま幕引きしてはならない。



[安倍前首相不起訴]真相解明にはほど遠い(2020年12月25日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 相変わらず言葉は丁寧で、説明にもよどみがなかった。反省の姿勢も示した。だが、具体的で説得力のある説明は、一つもなかった。

 釈明会見から浮かび上がってきたのは「果たして真実を語っているのだろうか」という拭いがたい疑問である。

 「桜を見る会」の前日に行われた夕食会費用を巡り、東京地検特捜部は、政治資金収支報告書に収支を記載しなかったとして、安倍晋三前首相の公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。

 安倍氏本人については、指示や了承などの具体的関与がなかったとして不起訴処分にした。

 決定を受けて急きょ記者会見した安倍氏は、後援会が夕食会費用の一部を負担していた事実を公式に認めた。

 「私が知らない中で行われていたこととはいえ、道義的責任を痛感している」

 謝罪はしたものの、責任の取り方には触れなかった。あぜんとしたのは「初心に立ち返り、研さんを重ね、責任を果たしていきたい」と、臆面もなく語ったことだ。

 安倍氏は国会で何度も、「補填(ほてん)は一切ない」と否定し続けた。「総理大臣として答弁するということについては、すべての発言が責任を伴う」とも語っていた。

 衆院調査局の調べによると、事実と異なる答弁は少なくとも118回に上る。

 仮に安倍氏が語ったことが事実だとしても、国会の場で繰り返し「虚偽答弁」を重ねた事実は重く、議員辞職に値する重大な失態だ。

■    ■

 夕食会の収支が政治資金収支報告書に記載されていない事実が発覚したのは、昨年10月のことである。それ以来、国会では繰り返し、この問題が取り上げられた。

 へたをすれば一大スキャンダルに発展しかねない事案に対して、公設第1秘書が、安倍氏に虚偽の報告を続けるということが果たしてありうるのだろうか。

 収支報告書への不記載や虚偽記載を巡っては、これまでは指摘を受けた後、その事実を認め、事後的に修正するケースが多かった。

 だが、今回の事例は、略式起訴で済ますには、あまりにもことが重大だ。

 「補填していない」ことを前提とした隠蔽(いんぺい)工作が毎年、繰り返され、問題発覚後に提出された2019年分にも記載していなかった。

 公設第1秘書は、補填金をどのように工面したのか。安倍氏は「手持ち資金で」と説明したが、真相解明にはほど遠い。

■    ■

 「桜を見る会」については、公的行事の私物化や招待者名簿の不自然な廃棄、「首相推薦枠」によるマルチ商法元会長の招待など、数々の疑惑が今なおくすぶっている。

 安倍氏はきょう、衆参両院の議院運営委員会で経緯などを説明するが、「虚偽答弁」が問題になっている以上、偽証罪が問われる予算委員会で証人喚問すべきである。

 「政治とカネ」を巡る問題が相次いで発覚し、国民の政治不信は募るばかりだ。与野党にはウミを出し切る覚悟を求めたい。



野党議員たちにも自民党はわびろわびろ(2020年12月25日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★前首相・安倍晋三は「桜を見る会」をめぐるカネの問題で25日にも国会招致され、説明を行うという。2月3日の衆院予算委員会。立憲民主党・辻元清美に「自分でお花見して飲み食いさせたら、公職選挙法違反になるでしょう。でも内閣府を介在させたら、ならないと言ってる。同じ行為をやってもクロをシロにしてる。そういうようなやり方が安倍総理の本質だと思った」とただすと首相は(腕時計を見て)「終わった」。

★同4日の同委員会では、同党の黒岩宇洋が「前夜祭での欠席等のリスクは誰が負うのか? 規約に書いてある」。安倍「ニューオータニの規約にそんなものはない。根拠がない。それはうそである」。黒岩「ここに規約ありますよ」。当時から、丁寧に真摯(しんし)に疑惑に答えているそぶりはない。秘書にだまされていただけでなく、安倍自身の考えや説明が垣間見える。そのほかにも「私がうそを言うわけないじゃないですか。人格攻撃だ」「言う以上、証拠を見せてもらわないと。わきまえて欲しい」「私が話しているのが真実。信じていただけないならば、この予算委員会が成立しない」。「それは失礼だと思いますよ」「うそをついてしまったことを認めた方がいい」「ホテル側からの夕食会の明細書は受け取っておらず、確認もしていない」「ホテル側から安倍事務所に明細書の提示はなかった」「領収書はホテル担当者が金額を手書き、あて名は空欄であった」。前出の辻元に2月17日の予算委員会で「事実でなければ責任を取る覚悟でそこに座っているか」と問われ安倍は「総理大臣として答弁している。総理大臣として答弁していることはすべての発言が責任を伴う」。

★ほかにも本会議場でも安倍は抗弁し続けた。そこには誤解もへちまもない。安倍の強い意志で強弁しているにすぎず、自民党の安倍擁護派は野党の質問をことごとく口汚くののしった。議会と国民にうそをつき、質問者をばかにし、それを自民党議員は擁護し、野党批判に変えた。野党議員たちにも自民党はわびろわびろわびろ。



安倍前首相不起訴(2020年12月25日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

「知らなかった」は通用しない

 「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)事件で、東京地検特捜部が安倍晋三前首相の後援会の代表である公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴しました。安倍氏本人は不起訴としましたが、「補填していない」という安倍氏のウソを検察として明確に認定したものです。不起訴後の記者会見で安倍氏は、ごく最近まで補填を知らなかったと主張しました。信じがたい話です。前夜祭の費用補填は公職選挙法や政治資金規正法に違反する重大問題であり、秘書の責任では済まされません。安倍氏は、「桜を見る会」疑惑の全てを隠さず語るべきです。

ウソ言い続けた事実明白

 前夜祭は、首相主催の「桜を見る会」の前日に、「安倍晋三後援会」が都内の高級ホテルで開いてきたものです。参加者が払う1人5000円の費用はあまりに安く、安倍氏側が差額をまとめて支払った疑いがあるとして法律家らが法律違反を告発していました。

 公設秘書についての起訴状などによれば、政治資金収支報告書の原本が保管されている2016年から19年の4年間、後援会の報告書には前夜祭の約3000万円の収支が記載されていませんでした。会費収入との差額約700万円は後援会が負担していました。

 後援会の代表で実質的な会計責任者だった公設秘書は、政治資金規正法の不記載罪に問われました。後援会による費用補填は、公職選挙法で禁じられた寄付行為にあたる違法性が濃厚ですが、東京地検特捜部はその立件をしませんでした。安倍氏を不起訴にしたのは、不記載への関与を認める証拠を得られなかったとしています。

 公設秘書が安倍氏の了解もなく巨額の費用を補填したとは考えられません。昨年11月、「桜を見る会」をめぐり日本共産党の田村智子参院議員が国会で質問した際、安倍氏は聞かれてもいないのに、補填を取り繕うかのような答弁をしています。安倍氏が早くから承知していた可能性は十分あります。さらに補填した資金の出所はどこか。「手持ち資金」という安倍氏の話は不可解です。

 何より重大なのは、安倍氏が1年近くにわたり、一貫して「事務所は関与していない」と、国会で虚偽の答弁を繰り返してきたことです。「国権の最高機関」である国会に対し、首相がウソを言い続けてきたことは大問題です。ウソをただすのは、与野党にかかわりなく国会全体の責任です。

 「桜を見る会」という公的行事に、自らの後援会員らを大量に招待し、税金を使って飲ませ食わせしたこと自体、買収行為であり公職選挙法違反です。国政私物化疑惑をあいまいにできません。

菅政権の姿勢が問われる

 秘書の略式起訴と自らの不起訴を受けた記者会見で、安倍氏は秘書からの説明が事実と違った、自身は承知していなかったと言い張りました。あくまで秘書に責任を押し付けるのは、とんでもない開き直りです。安倍氏の一連の言動は国会議員の辞職に値します。

 25日の衆参議院運営委員会で安倍氏は説明します。これは解明の第一歩です。菅義偉首相と自民党は、安倍氏の証人喚問を受け入れるべきです。官房長官として安倍氏の虚偽答弁と歩調を合わせ、疑惑隠しに手を貸してきた菅首相自身と与党の責任が問われます。



何のために国会議員を志したのか(2020年12月25日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 われわれは、何のために国会議員を志したのか。それは、この国を良くしたい、国民のために力を尽くしたいとの思いから。7年前、壇上からすべての議員に熱く呼びかける姿がありました

▼政権交代後、初の本格的な国会にのぞんだ安倍首相です。みなそれぞれが初心を思い出し、建設的な論議をしていこうと結んだ施政方針演説。いま、その訴えがわが身にきびしく降りかかっています

▼明細書はもらっていない、補填(ほてん)した事実もまったくない。事務所や後援会の収入、支出は一切ない―。自身の後援会が開いた桜を見る会前夜祭をめぐる疑惑で、国会での答弁がことごとく虚偽だったことがわかりました

▼いくつもの証拠を突きつけられながら、居直ってきた安倍氏。こうも言い切っていました。総理大臣として答弁していることはすべての発言が責任を伴う。私の説明が軽いわけがないじゃないですか

▼公金を使って後援会員らをもてなしていた「桜」、くり返し事務所が費用を補填していた前夜祭。法違反を重ねながら、それを全部秘書のせいにして済ますのか。森友や加計問題でもしかり。国会の議論をおとしめ、政治への信頼を損ねてきた罪はあまりにも重い。首相はもとより、政権全体の責任です

▼こんなことをあいまいにしては国が堕落していくだけです。現金供与、大量買収、汚職……。ふきだす不正や疑惑の数々。渦中にいた菅首相をはじめ、うそにまみれた面々は今も。改めて突きつけたい。何のために国会議員になったのか。





安倍前首相の国会招致/公開の場 証人喚問が当然だ(2020年12月24日配信『河北新報』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前夜に開いた夕食会の費用補填(ほてん)問題を巡り、安倍氏が年内にも国会に招致される見通しだ。

 東京地検特捜部による安倍氏の任意聴取が21日に行われた。安倍氏は18日、捜査終結後、国会での説明に応じる意向を示していた。

 与党側は原則非公開の議院運営委員会理事会での説明を検討している。前首相や政権へのダメージを恐れ、保身を優先する姿勢は批判を招き、政治不信を深めるだろう。

 安倍氏が補填を否定する答弁を行ったのは国会の場だ。当時と同様、公開の場で説明するのが筋ではないか。

 安倍氏は2019年11月~今年3月、衆参両院本会議や予算委員会で「安倍事務所が補填した事実は全くない」などと事実と異なる答弁を118回していたことが衆院調査局の調べで明らかになった。

 夕食会は13~19年の毎年1回、安倍氏の支援者らが1人5000円の会費で参加。安倍氏側が実際の経費との差額を補填した疑いがある。

 会計を担当した公設第1秘書は差額として支出した約900万円を政治資金収支報告書に記載しなかったとされる。容疑を認めているという。

 安倍氏は任意聴取に補填の事実を知らなかったと説明しており、刑事責任は問われない公算が大きい。しかし、虚偽の答弁を繰り返した政治的、道義的責任は残る。

 安倍氏の国会招致に関し、野党側は「国民に見える形にしないと意味がない」と与党側をけん制し、うそを言えば偽証罪に問われる証人喚問を要求している。一問一答形式で質疑する予算委出席を求めているのは、次期衆院選を意識し、世論に存在感をアピールしたい狙いがあろう。

 菅義偉首相は夕食会を巡る官房長官時代の答弁について、11月の参院予算委で「事実が違った場合は私にも責任がある」と述べており、あいまいな状態を放置すれば、責任論を引きずる恐れがある。

 安倍氏が自らけじめをつけることで、菅首相が責任を問われる心配はなくなるとの見方もあるが、国民の反応次第で菅政権にマイナスにも働くもろ刃の剣となるのは間違いない。与野党の思惑も絡む丁々発止の質疑を国民注視の場で行わない理由はない。

 そもそも1人5000円の会費が安すぎると疑問に思わなかったのか。差額負担はないとする秘書の虚偽説明に何の疑いも抱かなかったのか-。補填を認めてから1カ月近くがたつが、安倍氏は具体的な説明をしていない。首相経験者として、公開の場で堂々と質疑に応じるべきだ。

 特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で公設第1秘書を略式起訴する方針だ。安倍氏は刑事責任を免れたとしても「秘書に任せていた」と浅はかな言い訳を重ね、政治的責任を逃れようとすることは決して許されまい。



ばかたれーっ!!(2020年12月24日配信『中国新聞』-「天風録」)

 本紙にきのう載ったポスター写真には、目を丸くした読者も多かろう。<ばかたれーっ!!>と大きな文字。罵声は今や、パワハラと見なされかねない。暴言の絶滅危惧種に出くわした気分もする

▲首都圏の駅に張り出したポスターで今回、毒づいた相手は人間ではない。新型コロナウイルスだ。広島県観光連盟が都会に住む県人の里心を誘うはずが、GoTo一時停止で差し替えた。元の文案は<帰っておいで>

▲今なら永田町や霞が関の住人に向かって、もっと大文字で<ばかたれーっ!!>をぶつけてやりたい―。そんな声も聞こえてきそうである

▲不届き者が引きも切らぬ国会はおろか、東京地検も矢面に立つ。安倍晋三前首相の「政治とカネ」疑惑で申し訳に本人から聴取し、「知らなかった」で無罪放免という。約10年前の大阪府警の名作ポスター<ごめんですんだら警察いらんわ!!
>に倣い、言いたくもなる。<知らんで済ますなら検察要らんわ!!>

▲息をするように前首相が繰り返した、うそも同然の国会答弁は118回に上るらしい。疑惑が取り沙汰されるたび、陳謝する言葉に「国民」を持ち出していた。内心では、「ばかたれ」と笑っていたのだろうか。

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前日の話(2020年12月24日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 日本初のサンタクロースの登場は1874年、東京・築地の外国人居留地にあった女学校でのクリスマス祭とされる。かみしもに刀を差した殿様姿。試行錯誤だったか、主催したキリスト者はかつて奉行所の与力だった

▲アメリカ長老教会ゆかりのその祝会を聞きつけ、米国公使館から4人がやって来た。ミカンできれいに飾った十字架は、カトリックのやり方だと注意され撤収の羽目に。やるせない前日の話である

▲こちらの前日はどうだったか。「桜を見る会」である。安倍晋三前首相の後援会が前日に主催した夕食会で、安倍氏側が費用900万円余りを補塡(ほてん)していたとされる。安倍氏は東京地検特捜部の事情聴取に「知らなかった」と主張、不起訴処分の公算が大きい

▲たとえ知らなかったとしても、政治的責任は免れない。国会で補塡を否定する「虚偽答弁」を少なくとも118回繰り返している。国会軽視も甚だしい。安すぎる会費や、ホテルとの契約主体は個人といった常識的に不自然なことも強弁していた

▲国会の公の場で説明を尽くさねばならない。桜を見る会では、後援会関係者多数を招く「私物化」や「首相枠」でのマルチ商法の元会長の招待、招待者名簿の廃棄を巡る不信感も払拭(ふっしょく)されないまま。トップとしてのありようを示してほしい

▲きょうはクリスマス前日。ままならない日々の中、子どもたちにサンタが、皆さんに穏やかな時間が訪れますように。



「桜」疑惑で聴取 安倍氏は国会で真実語れ(2020年12月24日配信『西日本新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部が安倍氏を任意で事情聴取した。安倍氏は関与を否定したとされる。これを受け特捜部は、後援会代表の公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴し、安倍氏については不起訴処分とする方向で最終調整に入ったという。

 安倍氏本人の刑事責任は問われない見通しが強まったが、首相を退いたばかりの政治家が「政治とカネ」の問題で捜査当局の調べを受けるのは異例だ。公設第1秘書が罪に問われれば、安倍氏も政治責任は免れまい。

 何より重大なのは、略式起訴の内容が事実とすれば、夕食会の会費では賄えない費用の差額を補填していたのではないか-という疑惑を全面否定してきた安倍氏の度重なる国会答弁が完全に覆ってしまうことだ。

 関係者によると、昨年までの5年間でホテル側へ支払った総額計約2300万円に対し、参加者の会費との差額が900万円余あった。安倍氏が代表の資金管理団体が差額を穴埋めしていたのに政治資金収支報告書に記載しなかった、とされる。

 安倍氏は首相在任中、この疑惑をただされるたびに「後援会としての収入、支出は一切ないので、政治資金収支報告書への記載は必要ない」「事務所が補填したという事実は全くない」と繰り返し力説してきた。

 衆院調査局によれば、昨年11月から今年3月の夕食会費補填問題を巡る衆参両院の国会質疑で、このような安倍氏事務所の関与や補填の有無などに関する質問に対する当時の安倍首相の答弁を精査した結果、事実と異なるとみられる答弁が少なくとも118回あったという。

 驚くべき数字である。時の首相が国会で虚偽の答弁を繰り返していたとすれば、国会審議はもとより議会制民主主義の根幹を揺るがす。国会だけでなく、主権者である国民も欺かれたことになる。

 特捜部の事情聴取の中で安倍氏は補填について「知らなかった」と説明したというが、それで済む問題ではないことは明らかだ。安倍氏は捜査が終結したら国会へ出向き説明する意向を示している。自らの国会答弁について誤りを正すのであれば、国会での開かれた質疑を通じて国民に真実を語るべきだ。

 野党はうその証言をしたら偽証罪に問われる予算委員会での証人喚問を求めている。当然の要求だ。理解に苦しむのは、自民党が非公開で議事録も残らない議院運営委員会の理事会を説明の場に想定していることだ。形だけの釈明を聞いて幕引きにしようとするのは許されない。



「政治とカネ」問題 真摯に向き合っているか(2020年12月24日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 自民党議員らが絡む「政治とカネ」の問題が相次ぎ浮上して、菅義偉政権に打撃を与えている。

 22日には、政治資金規正法違反疑惑での安倍晋三前首相への東京地検特捜部の事情聴取が判明するとともに、鶏卵生産大手「アキタフーズ」グループ元代表からの現金受領疑惑が持ち上がっていた吉川貴盛元農相が議員辞職した。この問題を巡っては、同様の疑いが掛けられていた西川公也元農相が8日に内閣官房参与を辞職したばかりだ。

 いずれも安倍前政権下での不祥事であるが、安倍政権の継承を掲げている菅政権、そして自民党は、政治不信を深刻化させている一連の事態に、当事者の自覚を持って真摯[しんし]に向き合っているのか。事実解明に消極的な姿勢を見ると、疑念を抱かざるを得ない。

 吉川氏は農相時代の2018年10月~19年9月に3回、元代表から大臣室などで計500万円を受け取った疑いが持たれている。また、西川氏も内閣官房参与を務めていた18年以降に、現金数百万円を受け取ったとみられている。

 鶏卵業界は近年、家畜を快適な環境で飼育する「アニマルウェルフェア」の国際基準の緩和や、卵価が下落した際に生産者の損失を補塡[ほてん]する事業の拡充を求め、政治家や農林水産省に積極的に働き掛けていた。元代表による現金提供も、その活動の一環であったとみられる。

 両氏とも政策決定に影響力を持つ立場であり、贈収賄事件に発展する可能性がある。東京地検特捜部の徹底した捜査を望みたいが、気になるのは、当事者が説明責任を全く果たしていないことだ。

 野党は、衆参両院の農林水産委員会での閉会中審査でこの問題を追及した。しかし、両氏ともに出席しなかった委員会では、野上浩太郎農相ら政府側が「捜査活動に関わる」などとして、事実関係の説明を避け続けた。

 統合型リゾート施設(IR)事業に絡む衆院議員秋元司被告の収賄・証人買収事件や、元法相河井克行被告と妻の参院議員案里被告の選挙買収事件、そして安倍前首相の疑惑を含め、最近の「政治とカネ」を巡る問題は、いずれも国民への説明責任は果たされないまま。検察の捜査に任せるだけで、国会での事実解明など、政府、自民党による自浄努力は、ほとんど行われてこなかった。

 1強体制の下、国会の監視機能を軽視し続けてきた安倍長期政権のツケも、菅政権は背負っていると言えるだろう。

 菅政権は、既得権益の打破を改革の柱に掲げている。その一環だとして日本学術会議の年間約10億円の予算をやり玉に挙げ組織見直しを提言したが、ならば多額の国会議員歳費などとともに、年間約176億円(19年)もの政党交付金を得ながら、カネを巡る問題が尽きることのない自民党はどうなのか。その利権体質に自らメスを入れる姿勢がなければ、政権に向けられる国民の視線は、さらに厳しさを増すことになろう。



安倍前首相を聴取(2020年12月24日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆「虚偽答弁」真摯に謝罪を◆

 公金を支出した行事に地元後援会の大勢を招いて自らの政治資金で接待、国会で事実と異なる答弁を繰り返す。これが「1強」と呼ばれ憲政史上最長の在職記録を打ち立てた宰相の実像だったのか。「桜を見る会」前日に主催した後援会の夕食会費用を補塡(ほてん)したとされる問題で、安倍晋三前首相が東京地検特捜部の任意の事情聴取を受けた。

 既に公設第1秘書は参加費との差額分5年間で900万円余りを穴埋めしたことを認めているが、安倍氏自身はこうした会計処理を聞いていなかったと主張したとみられる。

 たとえ知らなかったとしても政治的に前首相の”罪”は二つの点で極めて重い。まず「政治とカネ」への認識の甘さだ。

 今回のケースは、目玉閣僚として起用されながら辞任に追い込まれた小渕優子経済産業相(当時)の政治資金問題と似ている。小渕氏の関連政治団体が開いた支持者向けの観劇会を巡り、政治資金収支報告書の収支が合わない疑惑が発覚。不明朗な会計処理が政治資金規正法違反(虚偽記入・不記載)に問われ、元秘書が有罪判決を受けた。前首相の事務所はこの事件の教訓を学んでいなかったことになり、指導・監督する立場の安倍氏の責任は免れない。

 さらに大きな問題は、国会で連日追及を受けながら、事務所の説明そのままに「補塡はなかった」と一貫して否定してきたことだ。行政監視の役割を担う国会の場で、虚偽の説明をする形となったのは国民への背信にほかならない。

 衆院調査局の調べでは、事実と異なるとみられる安倍氏の答弁は少なくとも118回に上るという。行政府が立法府をだますことを許せば三権分立は瓦(が)解(かい)する。その深刻さ、重大さを踏まえれば、決して看過できるものではない。官房長官として、安倍氏の説明をうのみにしてきた菅義偉首相も人ごとと片付けるわけには到底いかない。

 首相当時の答弁の信ぴょう性が一つ揺らげば、森友、加計両学園問題についての一連の説明も疑念が膨らむ。安倍前政権下の森友問題に関する国会答弁のうち、事実と異なるものが139回との調査結果も判明している。財務省の決裁文書改ざんに発展した森友問題などの再調査も必要だ。

 前首相がとるべき行動は、国民に見える場で速やかに顚末(てんまつ)を説明し、虚偽答弁を真摯(しんし)に謝罪することだ。それが、ないがしろにしてきた言論の府に対するせめてもの償いだ。その上で、最長首相にふさわしい出処進退を判断してもらいたい。「一人一人の政治家が自ら襟を正す」と語っていたのは、ほかならぬ安倍氏自身である。



安倍前首相の疑惑は国会で説明すべき(2020年12月24日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★今、自民党は政治とカネの問題を何件抱えていると思っているのか。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業の汚職を巡り、衆院議員・秋元司被告が収賄などの罪で起訴されているほか、元法相・河井克行夫妻による選挙違反事件、最近の鶏卵汚職事件では元農相・吉川貴盛には東京地検特捜部の任意聴取があったと報じられた。加えて前首相・安倍晋三が首相時代に何年にもわたって首相主催の「桜を見る会」について地元後援会を多く招待して私物化し、その前夜祭で格安の遊興・宴会を開いていたことが発覚。安倍も特捜部の任意聴取を受けた。

★このいくつかの恥ずべき事件は、名前の出た政治家以外にも自民党を軸に複数、事件から逃れた議員や元議員、地方議員の名前がたくさん出てくる。結局自民党全体が政治とカネまみれになっている実態が明らかになった。ところが、メディアの社会部や弁護士たちは犯罪性が問えないようなことばかりを吹聴し、事件を小さく見せようとしているのではないかと思えるほど、検察に気を使い、忖度(そんたく)原稿というよりちょうちん原稿を国民に読ませてきた。

★法で裁けなければとがめられないのか。国会議員としての倫理や秩序に照らせば、前首相のスキャンダルは妻の関与しているものか、秘書の一存でやったことばかり。それを真に受けて国会でウソをつき続けたことは国会をばかにし、国民をなめていることにほかならない。しかし自民党国対委員長・森山裕は、国会で前首相が証人喚問を受けることを「なじまない」と述べ、応じようとしない。前首相が衆院予算委員会で118回の虚偽答弁をし続けたことの謝罪は予算委員会の場ですべきだし、またうそをつくかもしれないから偽証が問われる証人喚問で、は理にかなっている。過去には幾人もの首相や元首相が喚問を受けてきた。応じないなら衆院議長・大島理森が裁定を出すべきだ。



安倍前首相聴取(2020年12月24日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

証人喚問で真相の徹底解明を

 「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)をめぐる疑惑で、安倍晋三前首相が東京地検特捜部の事情聴取を受けました。費用補填をした事実を政治資金収支報告書に記載しなかった疑いです。首相経験者本人が検察当局から聴取されるのは極めて異例です。安倍氏はこれまで国会で、前夜祭の費用補填について繰り返し全面否定してきました。時の首相が「国権の最高機関」である国会の場で、事実と正反対の虚偽答弁を続けてきたことは重大です。衆参予算委員会で安倍氏の証人喚問を行い、真相を徹底的に解明することが急務です。

問われる虚偽答弁の責任

 前夜祭は、首相主催の「桜を見る会」前日に「安倍晋三後援会」が都内の高級ホテルで開催してきました。安倍氏の地元・山口県の支援者らが「桜を見る会」と一体の行事として大量に招かれました。1人5000円とされる会費は安すぎるため、実際の飲食代との差額を安倍氏側が負担した疑いが国会などで追及されてきました。有権者への寄付を禁じた公職選挙法違反や、政治資金収支報告書の虚偽記載という政治資金規正法に反する重大問題です。

 安倍氏は、会費はホテル側が設定したもので補填は一切ないと主張し、参加者が直接ホテルに会費を払っているので、政治資金収支報告書に書く必要はないなどと言い張りました。野党議員が質問で不自然な点を指摘すると、「ここで話しているのがまさに真実」と語気を強めて反論する場面もありました。しかし、東京地検の捜査などで、安倍氏側が2015年~19年の5回だけで約900万円も補填していたことが明らかになりました。安倍氏がないとしていたホテルの明細書もあることも判明しています。安倍氏の説明は明らかにうそだったのです。

 安倍氏が国会で前夜祭をめぐって「事務所は関与していない」などとうその答弁をしたのは、少なくとも118回にのぼっています(衆院調査局の調べ)。

 後援会の代表を務める公設第1秘書らは、補填を安倍氏に伝えていなかったなどと検察の事情聴取に述べているとされます。あまりに不可解です。昨年秋以来、国会であれだけ厳しく追及されているのに、安倍氏は秘書の話に何の疑いも持たず、ただ受け入れただけというのでしょうか。国民は納得できません。自民党が主張する非公開の議院運営委員会理事会ではなく、公開の予算委員会などで安倍氏に真実を語らせるしかありません。うそをつけば偽証罪に問われる証人喚問こそ必要です。官房長官として、安倍氏の虚偽答弁をそのまま繰り返し、疑惑隠しに加担してきた菅義偉首相の責任も問われます。

疑惑にフタは許されない

 公的行事「桜を見る会」に多くの支援者を招き飲ませ食わせしたこと自体、税金を使った買収であり、公選法に違反する重大な国政私物化です。疑惑全体の徹底解明が急がれます。

 安倍氏の事情聴取が判明したのに続き、鶏卵生産会社前代表から500万円の現金提供された吉川貴盛元農水相(22日に議員辞職)に対して、東京地検特捜部が事情聴取していたことも明らかになりました。菅首相に近い吉川元農水相の証人喚問も不可欠です。続発する「政治とカネ」疑惑にフタをすることは許されません。





乱れた花宴(2020年12月23日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 花見には田の神迎えと年占いの意味があった。春の農耕の始まりにあたっての物忌みとはらえの行事で、近畿以西では桃の節句を花見と呼ぶ地もあったそうだ

▼サは田の神のことでクラは神座の意があることから、神が宿る対象の名がサクラであり、その代表的植物をその名で呼ぶようになった(「花の民俗学」講談社学術文庫)

▼兼好法師は徒然草で「花は盛りに 月は隈(くま)なきをのみ見るものかは」と花見の狂乱ぶりを批評した。民俗学者の桜井満さんは、花見は秋の実りの祈願であり、予祝儀礼としての「歌垣」だったと分析する

▼こちらの花見は乱れが過ぎたようだ。安倍晋三前首相の後援会が桜を見る会の前夜に開いていた夕食会のことである。東京地検特捜部が安倍氏を任意聴取したときのう報じられた。前首相側が費用の一部を穴埋めしていたことの認識を聞いたもようだ

▼「補填(ほてん)はしていない」という安倍氏の国会答弁は事実上虚偽だった疑いがある。特捜部は近く公設秘書を略式起訴する見通しだが、秘書の独断で行ったという説明に首肯する人がどれほどいるだろうか。政治家としての道義的責任や秘書の監督責任を問う声は、与党内にもある。国会の証人喚問に応じ、説明を尽くすべきだろう

▼「憂き世になにか 久しかるべき」(伊勢物語)。饗宴(きょうえん)は古来より花見の姿だ。とはいえ、お金の扱いには十分気をつけねばなるまい。



安倍前首相聴取 「桜」真相、国会で説明を(2020年12月23日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 安倍晋三前首相主催「桜を見る会」前夜に開かれた夕食会の費用を安倍氏側が補填(ほてん)していた問題で、東京地検特捜部は安倍氏本人を任意で事情聴取した。補填の事実を認識していたかどうか確認したとみられる。特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で、公設第1秘書を近く略式起訴する方針だ。

 安倍氏が聴取に応じたのは当然だ。さらに国会の公開の場で、自らの関与の有無について答えるべきだ。国民が納得できる形で真相を明らかにしなければならない。

 夕食会は第1秘書が代表を務める後援会の主催。毎年1回、東京都内の二つの高級ホテルで開かれていた。2015~19年の5年間の費用は参加者1人5千円の会費だけでは足りず、安倍氏の資金管理団体が計900万円余を補填したとされる。

 だが、夕食会の収支は後援会や資金管理団体の政治資金収支報告書に記載がない。第1秘書は不記載の事実を認めている。

 一方、安倍氏は任意聴取に対し、不記載への関与を否定したとみられる。不起訴処分となる公算が大きい。

 だが、秘書の略式起訴で一連の問題の幕引きとしてはならない。安倍氏は秘書が法に反する行為をしないよう指導・監督する立場にあった。それを怠った責任は極めて重い。

 それだけではない。安倍氏は首相在任中、国会で繰り返し補填の事実はないと答弁した。衆院調査局によると、その回数は少なくとも118回に上る。

 安倍氏側の説明によると、第1秘書は昨年末、安倍氏に事実関係を問われた際、補填の事実を隠したという。そうだとしても、安倍氏が結果的に「虚偽答弁」を重ねたことは間違いない。刑事責任とは別に、前首相としての政治責任は免れない。

 安倍氏は、特捜部の捜査が終結すれば国会招致に応じる意向を示し「誠実に対応していきたい」と述べている。国民の信頼を裏切る答弁を続けた以上、真実を国民の前で細大漏らさず丁寧に説明しなければならない。

 野党は一問一答形式の質疑が可能な予算委員会での説明を要求しているが、与党は難色を示している。疑問が残らないよう徹底審議が必要であり、予算委への招致を求めたい。

 安倍前政権時代に農相を務めた自民党の吉川貴盛氏が衆院議員を辞職した。広島県の鶏卵生産大手グループの元代表から現金を受け取った疑惑で事実上、責任を取った形。やはり元農相の西川公也氏も現金を受け取ったとされる。この問題も特捜部は捜査を進めているもようだ。

 夕食会の費用補填、現金受領のどちらも安倍前政権での「政治とカネ」の問題だ。当時の官房長官として安倍氏の答弁を追認、擁護した菅義偉首相の責任を問う声も上がっている。政府、与党も政治不信の払拭(ふっしょく)に努め、安倍、吉川氏の国会招致や喚問を実現するべきだ。



「李下に冠を正さず」(2020年12月23日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 人から疑われるような行為を戒める言葉に「李下(りか)に冠を正さず」がある。李(すもも)の木の下で曲がった冠を直そうと手を上げると、李を盗むのかと疑われかねないから避ける―という意味だ

▼元々は「瓜田(かでん)に履(くつ)を納(い)れず」と対になった言葉だ。こちらは瓜(うり)畑でかがめば疑いを受けるので靴が脱げてもはき直さないという意味。いずれも人の上に立つ者に厳しい倫理観を求めている

▼安倍晋三前首相は「桜を見る会」前夜の夕食会費用の補填(ほてん)問題で東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けた。秘書から聞いていなかったというのでは無責任だ。「補填はなかった」と国会で繰り返した安倍氏の答弁がいまとなっては何ともむなしい

▼「結果的」という言葉が付いたところで、「うその答弁」には変わりない。あれほどまで繰り返し、堂々と述べた自身の言葉は取り返せないだろう

▼安倍氏は冒頭紹介した「李下に―」を、加計学園の獣医学部新設を巡る疑惑の答弁に引用している。その上で「疑念はもっとも」と認めつつ、疑惑にすぎないと胸を張ったような態度だから、その強心臓ぶりに驚かされる。安倍氏はこの警句からあまりにかけ離れた感覚の持ち主のように見える

▼トップの緩みが政権全体に及び、政治とカネを巡る疑惑が相次いだのではないか。口癖のように語っている「誠意」をいまこそ国会で見せてもらいたい。安倍氏を擁護する数々の発言について菅義偉首相に責任ある説明が求められるのは言うまでもない。



安倍前首相聴取 議員辞職にも値する(2020年12月23日配信『東京新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」をめぐる疑惑で安倍晋三前首相が検察の事情聴取を受けた。国会で否定したが、証拠が出た以上、言い逃れはできない。国民に丁寧な説明が要るし、もはや議員辞職にも値しよう。

 今年2月の国会でのやりとりを思い出してほしい。野党議員が「桜を見る会」前日に東京都内のホテルで開かれた夕食会の疑惑を追及していた。会費は1人5千円とされていたが、その金額でまかなえるはずがない、安倍氏側が補填(ほてん)していたのではないか、そう野党議員は質問した。

 「補填はしていない」「明細書もない」と安倍氏は繰り返した。さらにその議員に向かって言い放ったのは「証拠を挙げていただきたい。ありえない」との言葉だ。

 告発を受けた東京地検が安倍氏の秘書らから事情聴取をし、約900万円にものぼる補填の疑いが高まった。「ない」と言い張ってきた明細書も東京地検は入手している。これは動かぬ証拠である。

 もっとも秘書らは補填について「安倍氏には伝えていなかった」と述べているようだ。知らないなら共謀関係には問えない−つまり安倍氏自身は不起訴の公算が大きい。だが、仮にそうだとしても、これだけ世間を怒らせ、国会を紛糾させた大問題である。

 安倍氏自身が真実を知る方法はいくらでもあったろう。そもそも真実を知る努力はしたのか。それを怠り、事実と異なる答弁を国会で繰り返したなら、その罪は重いと言わざるを得ない。これだけでも議員辞職に値しよう。

 秘書らが夕食会の収支を政治資金収支報告書に記載しなかったとして、政治資金規正法違反に問われれば、なおさら議員辞職は当然のことと考える。不記載は重い罪であるうえ、秘書らは事情聴取に「報告書に記載すべきだと分かっていた」と説明しているようである。より悪質である。

 夕食会の問題だけに矮小(わいしょう)化してもいけない。「桜を見る会」には安倍氏の地元支援者らを数多く招き、「権力の私物化だ」と国民から厳しく批判された問題である。むろん公職選挙法にも触れかねない。その責任も極めて重いはずだ。

 安倍氏には開かれた国会の場で国民への真摯(しんし)な説明が必要である。かつ、それは偽証罪に問われうる証人喚問の形でなければ、誰が単なる弁明を信ずるであろうか。あくまで「秘書のせい」などと答えるならば、この問題を到底、終わらせるわけにはいかない。



天国の門の近くに大きな部屋があった。歴代の政治家の写真がず…(2020年12月23日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 天国の門の近くに大きな部屋があった。歴代の政治家の写真がずらりと並んでいる。写真の下には時計が一つずつ置いてある。聞けば、ウソ表示器。ウソをつくたびに針が少しずつ進んでいくという

▼正直者とうたわれた米国初代大統領のワシントンの時計は12時を向いたまま。リンカーンのは5秒ほど進んでいる。ある政治家の写真の前にはなぜか時計がない。「その時計は地獄の鬼が借りていった。扇風機の代わりにするらしい」

▼米国のジョークだそうだ。「ある政治家」の名にはその時の大統領や首相を当てはめれば良いだろう。この伝でいけば、地獄の鬼はもう一つ、高性能の扇風機を手に入れたか。「桜を見る会」の前日に主催した夕食会の費用を安倍前首相側が補填(ほてん)していたとされる問題。この問題をめぐり、安倍前首相が国会で百118回の虚偽答弁をしたと指摘される

▼「事務所はかかわっていない」。意図的なウソとは決めつけられぬが、国のリーダーが国民に向かって118回、事実とは異なる説明をした。それはウソにはならぬ

▼東京地検特捜部の事情聴取を受けた。聴取にも、自分は事務所の担当者からウソの説明を聞かされていたという立場らしい。安倍氏本人の起訴は困難と伝えられる

▼師走の寒空を見上げる。凍えるような扇風機の音が聞こえたようだが、空耳か。天国のあの時計だけが知っている。



安倍前首相聴取 自浄力を欠いたままでは(2020年12月23日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜の夕食会の疑惑を巡り、東京地検特捜部が安倍氏本人を事情聴取した。

 鶏卵生産大手の元代表から現金を受け取った疑いが強い吉川貴盛元農相はきのう、何の説明もしないまま衆院議員を辞職している。

 相次ぐ不祥事が政権への信頼を揺るがしている。自民党は打撃を最小限に抑え、早期の幕引きを図りたい思惑を隠そうとしない。党内の規律を引き締め、問題の根を断つ姿勢は見えない。

 安倍氏側は2013~19年、支援者を招き、都内のホテルで夕食会を開いてきた。参加者の会費だけでは足りず、安倍氏が代表の資金管理団体が計900万円余を補填(ほてん)したとみられている。

 後援会は夕食会の収支を記載してこなかった。特捜部は近く、後援会代表の公設秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴する。安倍氏は聴取で不記載への関与を否定したという。共犯に問うのは難しいもようだ。

 それでも、安倍氏が首相として「補填は一切ない」と虚偽答弁を重ねた事実は消えない。何より、解明につながるホテルの明細書を入手し、国会に提示するのを拒み続けたのがいぶかしい。

 安倍氏の国会招致について自民からは、原則非公開の議院運営委員会理事会で説明を聞く案が出ている。前首相が検察の聴取を受ける異例の事態をどう受け止めるのか。予算委員会など公開の場で証人喚問を行うのが当然だ。

 安倍政権で農相に就いた吉川氏は、在任中に500万円を受領したとされる。辞職理由は体調不良で、公表した談話には疑惑に関する説明が一切ない。

 吉川氏は党総裁選で当選同期の菅義偉首相を支え、党幹事長の二階俊博氏の派閥で事務総長を務めてきた。早々の議員辞職に、火消しを急ぐ政権の焦りも透ける。

 この疑惑では、同様に現金を受け取ったとされる西川公也元農相が先日、内閣官房参与を辞任している。鶏卵生産大手の元代表は、他の自民の農林関係議員にも現金を渡したと認めている。

 刑事処分とは別に、関わった議員に経緯をただし、倫理上の責任を問い、相応の処分で臨むのが政党の役割であるはずだ。

 菅政権の支持率の著しい落ち込みは、後手に回る新型コロナ対策ばかりが原因ではないだろう。政権を担う資質が、自浄力が自民党にあるのか。自覚がなければ、政治不信は高まるばかりだ。




安倍前首相聴取 国会で厳しくたださねば(2020年12月23日配信『新潟日報』-「社説」)

 安倍晋三前首相が国会招致に応じる意向を示しただけで与党側は「誠実」と評価した。国民に予防線を張っているかのようで、強い違和感を覚える。

 「政治とカネ」を巡って当時の首相が虚偽説明し、国民にうそをつき続けていた問題だ。国民に見える形で厳しくたださなければならない。

 前首相後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部が安倍氏を任意で事情聴取した。

 特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴する方向で検討しており、安倍氏に費用負担についての認識を確認したとみられている。

 安倍氏自身は不記載への関与を否定したもようで、不起訴処分となる公算が大きい。

 しかし不起訴となったとしても政治責任は残る。安倍氏は費用補填問題に関し、国会答弁や記者対応で事実と異なる説明をしていたからだ。

 高級ホテルでの1人5千円の夕食会費は安すぎるとの指摘には「大多数がホテルの宿泊者という事情を踏まえ、ホテル側が設定した価格」と述べた。

 「安倍事務所や後援会としての収入、支出は一切ない」「事務所側が補填した事実は全くない」などと否定し続け、政治資金収支報告書への記載は必要ないとしていた。

 特捜部の捜査で、安倍氏の一連の説明が虚偽だったことが明らかになった形だ。

 安倍氏側は事務所が本人に事実と異なる説明をしていたとするが、なぜそれをうのみにしたのか。安倍氏の立場なら資料を出させ、確認することは容易だったはずだ。

 立憲民主党の要請を受けた衆院調査局の調べでは、夕食会補填問題を巡る国会質疑で事実と異なるとみられる安倍氏の答弁は少なくとも118回あった。

 首相としてあまりに無責任、あきれるばかりの国会軽視、国民軽視というほかない。

 安倍氏は捜査終結後、国会招致の要請に応じる意向を示している。なぜ、こんなことが起きたのか。自らの責任をどう認識しているのか。きちんと説明してもらう必要がある。

 そのためにも緊張感を持って審議できる形式を求めたい。野党側は一問一答形式でやりとりできる予算委員会での証人喚問を求めており、理解できる。

 首をかしげるのは自民党の森山裕国対委員長が野党の要求に難色を示したことだ。一方で、招致要請に応じるとした安倍氏の対応を「非常に誠実」と評価したが、問題は説明責任がきちんと果たされるかだろう。

 アリバイ証明のような招致で幕引きを考えているなら、国民を愚弄(ぐろう)しているに等しい。

 鶏卵生産大手による現金提供疑惑が発覚した吉川貴盛元農相は、体調不良を理由に衆院議員を辞職した。疑惑の責任を取ったとみられるが、吉川氏は何も語っていない。

 こちらも説明責任を決してうやむやにしてはならない。



安倍前首相を聴取 議員辞職に値する(2020年12月23日配信『茨城新聞』-「論説」)

 公金を支出した行事に地元後援会の大勢を招き、自らの政治資金で接待、国会でうそを繰り返す。これが「1強」と呼ばれ、憲政史上最長の在職記録を打ち立てた宰相の実像だったのか。

「桜を見る会」前日に主催した後援会の夕食会費用を補填したとされる問題で、安倍晋三前首相が東京地検特捜部の任意の事情聴取を受けた。既に公設第1秘書は参加費との差額分5年間で900万円余りを穴埋めしたことを認めているが、安倍氏自身はこうした会計処理を聞いていなかったと主張したとみられる。

 たとえ知らなかったとしても、政治的に前首相の“罪”は二つの点で極めて重い。まず「政治とカネ」への認識の甘さだ。

 今回のケースは、目玉閣僚として起用されながら辞任に追い込まれた小渕優子経済産業相の政治資金問題と似ている。小渕氏の関連政治団体が開いた支持者向けの観劇会を巡り、政治資金収支報告書の収支が合わない疑惑が発覚。不明朗な会計処理が政治資金規正法違反(虚偽記入・不記載)に問われ、元秘書が有罪判決を受けた。前首相の事務所はこの事件の教訓を学んでいなかったことになり、指導・監督する立場の安倍氏の責任は免れない。

 さらに大きな問題は、国会で連日追及を受けながら、事務所の説明そのままに「補填はなかった」と一貫して否定してきたことだ。行政監視の役割を担う国会の場で、虚偽の説明をする形となったのは、国権の最高機関を愚弄(ぐろう)する、国民への背信にほかならない。

 衆院調査局の調べでは、事実と異なるとみられる安倍氏の答弁は少なくとも118回に上るという。行政府が立法府をだますことを許してしまえば、三権分立は瓦解(がかい)する。その深刻さ、重大さを踏まえれば、議員辞職に値するのではないか。官房長官として、安倍氏の説明をうのみにしてきた菅義偉首相も、人ごとと片付けるわけには到底いくまい。

 振り返ると、修正する機会はあった。会場のホテル側が、野党の問い合わせに対し、見積書や明細書を主催者に発行しないケースはない、などと文書回答した今年2月の場面だ。

 国会で、その“証拠”を突き付けられても、安倍氏は事務所がホテル側に確認した結果として「(ホテル側は)あくまで一般論で答えた。個別の案件は営業の秘密に関わるため、回答には含まれていない」と突っぱねた。社会常識に照らせば、事務所の説明を疑い、問い詰めるべきだった。

 首相当時の答弁の信ぴょう性が一つ揺らげば、森友、加計両学園問題についての一連の説明も、疑念が膨らむ。安倍前政権下の森友問題に関する国会答弁のうち、事実と異なるものが139回との調査結果も判明している。財務省の決裁文書改ざんに発展した森友問題などの再調査も必要だ。

 前首相がとるべき行動は、検察の捜査にかかわらず、速やかに国会の国民に見える場で、顚末(てんまつ)を詳細に説明し、虚偽答弁を真摯(しんし)に謝罪することだ。それが、首相在任時にないがしろにしてきた言論の府に対するせめてもの償いだろう。

 その上で、最長首相にふさわしい出処進退を判断してもらいたい。「一人一人の政治家が自ら襟を正す」と語っていたのは、ほかならぬ安倍氏自身である。



安倍前首相聴取/公開の場で国民に説明を(2020年12月23日配信『神戸新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に開いた夕食会の費用を補填(ほてん)したとされる問題で、東京地検特捜部が安倍氏本人を任意で事情聴取していたことが分かった。

 特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)の罪で後援会代表の公設第1秘書を略式起訴する方針だ。安倍氏は関与を否定しているとみられ、不起訴となる公算が大きい。

 首相経験者が、在任中の「政治とカネ」の疑惑で捜査当局の聴取を受けるという重大な事態である。たとえ不起訴となっても、国会で事実と異なる答弁を繰り返した安倍氏の政治責任は免れない。

 安倍氏は捜査終結後、国会招致に応じる意向という。与党内には非公開の議院運営委員会理事会への出席で収めようとする動きがあるが、予算委員会など公開の場で国民に説明するべきだ。

 夕食会は、安倍氏が首相に返り咲いた後の2013~19年、東京都内のホテルで毎年開かれた。ホテル側への支払いは1人5千円の会費では賄いきれず、19年まで5年間で計900万円余りを安倍氏の資金管理団体「晋和会」が穴埋めしたとされる。収支報告書には記載がなく、政治資金規正法違反の疑いがある。

 一方、安倍氏らへの告発状を提出した弁護士らは、有権者への寄付を禁じる公選法違反などの疑いも指摘している。特捜部の徹底捜査による全容解明が不可欠だ。

 問題が発覚した昨年秋以降、安倍氏は国会などで「事務所からの補填は一切ない」と主張し続けた。だが「ホテル側との契約主体は参加者個人」などとする釈明はどう見ても説得力に欠ける。

 衆院調査局が調べたところ、事実と異なる可能性がある安倍氏の答弁は100回を超えていた。官房長官として虚偽答弁を追認してきた菅義偉首相の責任も当然問われる。

 安倍氏側は「秘書が本人に虚偽の説明をしていた」と擁護している。だが安倍氏が「ない」としたホテル発行の明細書は残っていた。潔白を主張するなら、明細書の再発行を求めて自ら公表すればいい話だ。

 それをしなかったのはなぜか。不正をいつ知ったのか。国民の疑問に誠実に向き合おうとせず、国会を混乱させた責任は重い。

 安倍政権時代の「政治とカネ」にまつわる疑惑は後を絶たない。カジノ誘致に絡む秋元司衆院議員の収賄事件、河井克行元法相夫妻の公選法違反事件に続き、鶏卵生産業者からの現金授受が疑われている吉川貴盛元農相がきのう議員辞職した。

 政府としても事実解明に努める必要がある。菅首相は前政権の「負の遺産」を断ち切らねばならない。



安倍前首相事情聴取 責任、秘書に押し付けか(2020年12月23日配信『中国新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相がおととい、東京地検特捜部に任意の事情聴取を受けた。自身の後援会が「桜を見る会」前日に主催した夕食会の費用補填(ほてん)問題である。

 行政府の長の時に起きたカネ絡みの疑惑だ。政治への重ね重ねの信頼失墜は避けられない。事態を重く受け止めるべきだ。

 夕食会の収支は、後援会の収支報告書には記載されていなかったため、安倍氏の公設第1秘書が政治資金規正法違反の罪で略式起訴される見込みという。公判に持ち込んで、真実に迫るのが筋ではないか。

 安倍氏本人は関与を否定しており、刑事責任を問うのは難しいとみられている。仮に安倍氏の刑事責任が問われなくても、政治責任は免れられまい。

 というのも、この問題を巡る国会質疑で、事実と異なるとみられる首相時代の答弁は少なくとも118回はあったからだ。しかも説明には不自然さが際立つ。名のあるホテルが会場なのに会費が安すぎる上、参加者個人がホテルと契約していた形式などである。ホテルに確認さえすれば補填に気付いたはずだ。

 にもかかわらず、十分調べないまま「事務所側が補填した事実は全くない」などと答えている。不誠実極まる。国権の最高機関である国会の軽視であり、国民への裏切りでもある。

 秘書の話を妄信していた、と弁解するのかもしれない。しかし責任を秘書に押し付け、「自分は知らなかった」で、幕引きを図ることは許されない。

 補填したという900万円余りを収支報告書に記載もせず、秘書が一人で動かせるのか。そのカネはどこから、どうやって調達したのか。なぜ虚偽の答弁を重ねたのか。安倍氏は謝罪した上で、国民の前で数々の疑問に答えなければならない。納得できる説明ができないなら、議員を即刻辞めるべきである。

 「1強」のおごりか、長期政権の緩みのせいか。不誠実な答弁は安倍政権では顕著に見られた。森友学園への国有地売却を巡る国会質疑では、麻生太郎財務相をはじめ、事実と異なる政府答弁が139回あった。今回さらに、安倍氏本人の答弁の信頼度が地に落ちた意味は重い。

 「桜」や「森友」だけではなく、政治とカネの問題が後を絶たない。カジノを含む統合型リゾート施設(IR)事業を巡る汚職や、昨年夏の参院選広島選挙区を巡る大規模買収に加え、今月は、2人の農林水産相経験者が、鶏卵生産大手グループの元代表から現金を受け取っていた疑惑が発覚した。

 きのう衆院に議員辞職願を出した吉川貴盛元農相と、内閣官房参与を辞めた西川公也氏である。吉川氏の体調への配慮はあろうが、国民への説明責任を果たすことが求められる。

 安倍氏は、特捜部の捜査が終われば、国会の招致要請に応じる意向を示している。偽証罪に問える証人喚問で、真実を語ってもらわなければならない。野党の力量も問われる。

 ところが自民党は証人喚問には否定的だ。かばうつもりか、非公開にする思惑もある。党総裁であり、安倍政権を官房長官として支えた菅義偉首相の責任が問われよう。金権政治にメスを入れ、うみを出し切れるか。内閣支持率が急落する中、就任から間もなく100日、菅政権の浮沈もかかっている。



安倍前首相を聴取/国民への背信行為だ(2020年12月23日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 公金を支出した行事に地元後援会の大勢を招き、自らの政治資金で接待、国会でうそを繰り返す。これが「1強」と呼ばれ、憲政史上最長の在職記録を打ち立てた宰相の実像だったのか。

 「桜を見る会」前日に主催した後援会の夕食会費用を補填(ほてん)したとされる問題で、安倍晋三前首相が東京地検特捜部の任意の事情聴取を受けた。既に公設第1秘書は参加費との差額分5年間で900万円余りを穴埋めしたことを認めているが、安倍氏自身はこうした会計処理を聞いていなかったと主張したとみられる。

 たとえ知らなかったとしても、政治的に前首相の”罪”は二つの点で極めて重い。まず「政治とカネ」への認識の甘さだ。

 今回のケースは、目玉閣僚として起用されながら辞任に追い込まれた小渕優子経済産業相の政治資金問題と似ている。小渕氏の関連政治団体が開いた支持者向けの観劇会を巡り、政治資金収支報告書の収支が合わない疑惑が発覚。不明朗な会計処理が政治資金規正法違反(虚偽記入・不記載)に問われ、元秘書が有罪判決を受けた。前首相の事務所はこの事件の教訓を学んでいなかったことになり、指導・監督する立場の安倍氏の責任は免れない。

 さらに大きな問題は、国会で連日追及を受けながら、事務所の説明そのままに「補填はなかった」と一貫して否定してきたことだ。行政監視の役割を担う国会の場で、虚偽の説明をする形となったのは、国権の最高機関を愚弄(ぐろう)する、国民への背信にほかならない。

 衆院調査局の調べでは、事実と異なるとみられる安倍氏の答弁は少なくとも118回に上るという。行政府が立法府をだますことを許してしまえば、三権分立は瓦解(がかい)する。その重大さを踏まえれば、議員辞職に値するのではないか。官房長官として安倍氏の説明をうのみにしてきた菅義偉首相も、人ごとと片付けるわけには到底いくまい。

 振り返ると、修正する機会はあった。会場のホテル側が、野党の問い合わせに対し、見積書や明細書を主催者に発行しないケースはない、などと文書回答した今年2月の場面だ。

 国会で、その”証拠”を突き付けられても、安倍氏は事務所がホテル側に確認した結果として「(ホテル側は)あくまで一般論で答えた。個別の案件は営業の秘密に関わるため、回答には含まれていない」と突っぱねた。社会常識に照らせば、事務所の説明を疑い、問い詰めるべきだった。

 首相当時の答弁の信ぴょう性が一つ揺らげば、森友、加計両学園問題についての一連の説明も、疑念が膨らむ。安倍前政権下の森友問題に関する国会答弁のうち、事実と異なるものが139回との調査結果も判明している。財務省の決裁文書改ざんに発展した森友問題などの再調査も必要だ。

 前首相がとるべき行動は、検察の捜査にかかわらず、速やかに国会の国民に見える場で、顛末(てんまつ)を詳細に説明し、虚偽答弁を真摯(しんし)に謝罪することだ。それが、首相在任時にないがしろにしてきた言論の府に対するせめてもの償いだろう。その上で、最長首相にふさわしい出処進退を判断してもらいたい。「一人一人の政治家が自ら襟を正す」と語っていたのは、ほかならぬ安倍氏自身である。



[安倍前首相聴取] 政治責任を取るべきだ(2020年12月23日配信『高知新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会の費用を補填(ほてん)したとされる問題で、安倍氏が東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けた。

 既に後援会代表の公設第1秘書は参加者から集めた会費との差額分を5年間で900万円余り穴埋めしたことを認めているが、安倍氏自身はこうした会計処理を聞いていなかったと主張したとみられる。

 3カ月余り前まで首相だった人物が「政治とカネ」を巡って、捜査当局から聴取を受ける異例の事態である。

 国会で連日追及を受けながら、安倍氏は「補填はなかった」と一貫して否定してきた。安倍氏側は、事務所が本人に事実と異なる説明をしていたと釈明したが、行政監視の役割を担う国会の場で、首相が虚偽となる説明を繰り返す形になった責任は極めて重い。

 安倍氏は速やかに国会の国民に見える場で経緯を説明し、「虚偽」答弁を誠実に謝罪する必要がある。その上で自身の出処進退を判断すべきである。

■罪深い「虚偽」答弁

 昨年11月、共産党議員が国会で安倍氏らが桜を見る会に自身の後援会関係者を多数招待しているのではないかと追及したのがきっかけで問題が発覚した。

 安倍氏は国会や記者団の質問に、夕食会の費用は参加者の自己負担で自身の事務所の収支は一切ないと説明。ホテル側から領収書や明細書の発行はなかったと発言した。

 疑惑解明が進まないまま安倍氏が首相を辞任した後、特捜部が安倍氏の秘書や支援者を任意で事情聴取。公設第1秘書は不記載を認め、ホテル側が作成した領収書も明らかになった。

 立憲民主党の要請で衆院調査局が調べたところ、夕食会費の補填を巡る衆参両院本会議や予算委員会で、事実と異なるとみられる安倍氏の答弁は少なくとも118回あった。

 たとえ知らなかったとしても結果的に行政府の長が立法府をだましたことになる。国権の最高機関を愚弄(ぐろう)する行為で、国民に対する背信と言えよう。

 振り返れば、安倍氏が軌道修正する機会はあった。

 今年2月、野党議員が会場となったホテル側に問い合わせ「見積書や明細書を主催者に発行しないケースはない」などと回答した文書を突き付けた際、安倍氏は自身の事務所が確認した結果として「(ホテル側は)あくまで一般論で答えた。個別の案件は営業の秘密に関わるため、回答には含まれていない」と突っぱねた。

 社会常識に照らせば、こうした事務所の説明を疑い、安倍氏自身が問い詰めるべきだった。秘書の言葉をうのみにし、否定し続けたのは指導・監督する立場として責任は免れない。

 安倍前政権下の森友学園問題に関する国会答弁のうち、事実と異なるものが139回に上るとの調査結果もある。これでは首相当時の安倍氏の答弁の信ぴょう性が揺らぐ。財務省の決裁文書改ざんを招いた森友問題の再調査も求められる。

 問題なのは、こうした疑惑追及に時間を割かれ国会審議の停滞を招いたことだ。新型コロナウイルスの感染拡大など、国民の暮らしや経済に重要課題が山積する中で議論が十分に尽くされたか気になる。

■続く「政治とカネ」

 政治とカネを巡っては、政治家の認識の甘さが招く問題が繰り返されてきた。

 2014年、第2次安倍改造内閣の目玉閣僚として経済産業相に起用された小渕優子氏の関連の政治団体が開いた支持者向けの観劇会を巡り、政治資金収支報告書の収支が合わない疑惑が発覚。小渕氏は辞任に追い込まれた。不明朗な会計処理が政治資金規正法違反(虚偽記入・不記載)に問われ、元秘書が有罪判決を受けた。

 今回の夕食会費補填問題とよく似たケースだが、安倍氏の事務所は教訓を学んでいなかったことになる。政治とカネの問題が起こるたびに「一人一人の政治家が自ら襟を正すべきだ」と語っていた安倍氏である。責任を自覚しなければならない。

 安倍前政権を官房長官として支えた菅義偉首相も人ごとと片付けるわけには行かない。疑惑に関する国会答弁で安倍氏を擁護していたからだ。

 自民党は安倍氏を国会に招致する方向で調整に入った。疑惑解明に積極的な姿勢を見せなければ世論の反発を招き、菅首相の政権運営に影響しかねないと判断したからに違いない。

 ただ、野党が求める証人喚問に否定的だ。議院運営委員会の理事会などで説明する方法を模索するが、公開の場でなければ世論の納得は得られまい。

 「1強」と呼ばれ、憲政史上最長の在職記録を打ち立てた安倍氏である。最長首相にふさわしい身の処し方を示してもらいたい。



安倍氏事情聴取 秘書の責任では済まない(2020年12月23日配信『熊本日日新聞』-「社説」)
12月23日 09:12

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会の費用補塡[ほてん]問題で、東京地検特捜部が安倍氏本人から任意で事情聴取した。

 特捜部は安倍氏の公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)の罪で略式起訴する方針を固めている。安倍氏自身は不記載への関与を否定したとみられ、不起訴になる公算が大きいようだ。しかし、「秘書の責任」だけで一件落着と済ませられる問題ではない。安倍氏は捜査結果にかかわらず、詳細を国民に説明し、自身が責任をどう取るかを示すべきだ。

 夕食会は2013年から昨年まで、後援会が「桜を見る会」に合わせて東京都内のホテルで開催。安倍氏の地元支援者らが1人5000円の会費を払い、飲食が提供された。

 関係者によると、公訴時効にかからない過去5年間のホテルへの支払い総額は約2300万円。参加者の会費で足りない約900万円を安倍氏の資金管理団体が負担したとされる。秘書はこれらを政治資金収支報告書に記載していなかった。特捜部の任意の聴取に不記載を認めたという。

 略式起訴の手続きでは、簡易裁判所が正式裁判を開くこともあるが、通常は公開の法廷を開かずに書面審理だけで略式命令を出す。このままでは事案の詳細を国民が知る機会は限られるが、それで終わってよいはずはない。

 この問題では、秘書だけでなく安倍氏も刑事告発の対象とされている。本人は不記載に関わっていないのか。安倍氏が関与を否定しても、秘書を指導・監督する立場として責任は免れまい。

 さらに安倍氏は、首相当時に国会で費用補塡疑惑を追及され、「後援会としての収入、支出は一切なく、収支報告書への記載は必要ない。補塡したという事実は全くない」と述べていた。

 安倍氏が事前に費用補塡を知らなかったとしても、ホテル側の書類などで確認・修正する機会はいくらでもあったはずだ。にもかかわらず、虚偽答弁を繰り返していた責任は重い。国会を軽視する安倍氏の姿勢が、改めてあらわになったと言えよう。ことの経緯はまだ何一つ国民に説明されておらず、到底納得できる状況にない。

 野党は国会の予算委員会での証人喚問を求めている。かつてその場で「私が話しているのが真実。信じていただけないならば、そもそもこの委員会が成立しない」とまで言い切った安倍氏である。その答弁が間違っていたのなら、自ら進んで喚問に応じ、誤りを正すべきではないか。

 首相時の安倍氏の国会答弁の信ぴょう性が揺らげば、森友、加計問題などについての説明にも疑念が膨らむ。菅義偉首相も当時、官房長官として安倍氏の答弁を追認し続けていた。このままでは政治家の言葉そのものへの不信が極まる一方である。菅政権、そして与党・自民党にも、問題の真相を明らかにする責任があることを強く自覚すべきだ。



<三十六計逃げるにしかず>(2020年12月23日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

<三十六計逃げるにしかず>という。この言葉はもともと<三十六策、走[にぐ]るをこれ上計とす>だったらしい。三十六策とはたくさんの戦略戦術、上計は最も上手な戦い方のこと

▼中国・南北朝時代の将軍の戦いぶりを評した言葉だという。勝てる見込みもないのに当たって砕けたのでは元も子もない。さっさと撤退して戦力を温存すれば、チャンスはまた巡ってくる。多くの策の中でそれが最も賢明である、と(守屋洋著『中国古典一日一言』PHP文庫)

▼さて、こちらは国会招致に応じる意向らしく「逃げる」つもりはないのだろうが、内心では「そのうち再々登板のチャンスも」と思っていたかも。安倍晋三前首相である。「桜を見る会」前日の夕食会の費用補塡[ほてん]問題で、東京地検特捜部から事情聴取を受けていたことが分かった

▼安倍氏は政治資金収支報告書不記載への関与を否定したとみられ、公設第1秘書は略式起訴、安倍氏は不起訴処分となりそう。だが、なぜ秘書の説明をうのみにしたのか。なぜ自ら事実関係を確認しなかったのか。多くの謎が残ったままだ

▼一方、こちらは真剣に「逃げるにしかず」と思ったのでは。安倍氏が自らの内閣で農相に起用した吉川貴盛氏である。在任中、鶏卵業者から現金を受け取った疑いが持たれており、突然衆院議員を辞めた。本人は体調不良のため、とするが

▼いずれの問題も、背景には、長期政権の緩みやおごりがある気がする。年末の大掃除のように、政治の世界もすっきりさせたいものである。



[安倍前首相聴取] 政治責任を取るべきだ(2020年12月23日配信『南日本新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会の費用を補填(ほてん)したとされる問題で、安倍氏が東京地検特捜部から任意の事情聴取を受けた。

 既に後援会代表の公設第1秘書は参加者から集めた会費との差額分を5年間で900万円余り穴埋めしたことを認めているが、安倍氏自身はこうした会計処理を聞いていなかったと主張したとみられる。

 3カ月余り前まで首相だった人物が「政治とカネ」を巡って、捜査当局から聴取を受ける異例の事態である。

 国会で連日追及を受けながら、安倍氏は「補填はなかった」と一貫して否定してきた。安倍氏側は、事務所が本人に事実と異なる説明をしていたと釈明したが、行政監視の役割を担う国会の場で、首相が虚偽となる説明を繰り返す形になった責任は極めて重い。

 安倍氏は速やかに国会の国民に見える場で経緯を説明し、「虚偽」答弁を誠実に謝罪する必要がある。その上で自身の出処進退を判断すべきである。

■罪深い「虚偽」答弁
 昨年11月、共産党議員が国会で安倍氏らが桜を見る会に自身の後援会関係者を多数招待しているのではないかと追及したのがきっかけで問題が発覚した。

 安倍氏は国会や記者団の質問に、夕食会の費用は参加者の自己負担で自身の事務所の収支は一切ないと説明。ホテル側から領収書や明細書の発行はなかったと発言した。

 疑惑解明が進まないまま安倍氏が首相を辞任した後、特捜部が安倍氏の秘書や支援者を任意で事情聴取。公設第1秘書は不記載を認め、ホテル側が作成した領収書も明らかになった。

 立憲民主党の要請で衆院調査局が調べたところ、夕食会費の補填を巡る衆参両院本会議や予算委員会で、事実と異なるとみられる安倍氏の答弁は少なくとも118回あった。

 たとえ知らなかったとしても結果的に行政府の長が立法府をだましたことになる。国権の最高機関を愚弄(ぐろう)する行為で、国民に対する背信と言えよう。
 振り返れば、安倍氏が軌道修正する機会はあった。

 今年2月、野党議員が会場となったホテル側に問い合わせ「見積書や明細書を主催者に発行しないケースはない」などと回答した文書を突き付けた際、安倍氏は自身の事務所が確認した結果として「(ホテル側は)あくまで一般論で答えた。個別の案件は営業の秘密に関わるため、回答には含まれていない」と突っぱねた。

 社会常識に照らせば、こうした事務所の説明を疑い、安倍氏自身が問い詰めるべきだった。秘書の言葉をうのみにし、否定し続けたのは指導・監督する立場として責任は免れない。

 安倍前政権下の森友学園問題に関する国会答弁のうち、事実と異なるものが139回に上るとの調査結果もある。これでは首相当時の安倍氏の答弁の信ぴょう性が揺らぐ。財務省の決裁文書改ざんを招いた森友問題の再調査も求められる。

 問題なのは、こうした疑惑追及に時間を割かれ国会審議の停滞を招いたことだ。新型コロナウイルスの感染拡大など、国民の暮らしや経済に重要課題が山積する中で議論が十分に尽くされたか気になる。

■続く「政治とカネ」
 政治とカネを巡っては、政治家の認識の甘さが招く問題が繰り返されてきた。

 2014年、第2次安倍改造内閣の目玉閣僚として経済産業相に起用された小渕優子氏の関連の政治団体が開いた支持者向けの観劇会を巡り、政治資金収支報告書の収支が合わない疑惑が発覚。小渕氏は辞任に追い込まれた。不明朗な会計処理が政治資金規正法違反(虚偽記入・不記載)に問われ、元秘書が有罪判決を受けた。

 今回の夕食会費補填問題とよく似たケースだが、安倍氏の事務所は教訓を学んでいなかったことになる。政治とカネの問題が起こるたびに「一人一人の政治家が自ら襟を正すべきだ」と語っていた安倍氏である。責任を自覚しなければならない。

 安倍前政権を官房長官として支えた菅義偉首相も人ごとと片付けるわけには行かない。疑惑に関する国会答弁で安倍氏を擁護していたからだ。
 自民党は安倍氏を国会に招致する方向で調整に入った。疑惑解明に積極的な姿勢を見せなければ世論の反発を招き、菅首相の政権運営に影響しかねないと判断したからに違いない。

 ただ、野党が求める証人喚問に否定的だ。議院運営委員会の理事会などで説明する方法を模索するが、公開の場でなければ世論の納得は得られまい。

 「1強」と呼ばれ、憲政史上最長の在職記録を打ち立てた安倍氏である。最長首相にふさわしい身の処し方を示してもらいたい。



[安倍前首相を聴取]証人喚問で真相究明を(2020年12月23日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 首相経験者が「政治とカネ」を巡り、検察の事情聴取を受けるという重大な事態である。当然、証人喚問に応じ、国民に丁寧に説明しなければならない。

 「桜を見る会」前日の夕食会費用の補填(ほてん)問題で、東京地検特捜部が安倍晋三前首相を任意で事情聴取していたことが分かった。

 夕食会を巡っては、2019年までの5年間にわたり、ホテル側への支払いと参加者の会費との差額900万円余りを、安倍氏側が穴埋めしたとされている。しかし夕食会を主催した後援会の政治資金収支報告書に記載はなかった。

 特捜部は、政治資金規正法違反(不記載)の罪で、後援会代表の公設第1秘書を略式起訴する方針を固めており、安倍氏に費用負担の認識を確認したとみられる。安倍氏は、不記載への関与を否定したもようだ。

 秘書が自らの判断で補填し、その事実を安倍氏に知らせていなかったというのは、にわかには信じがたい。

 あれだけ国会で追及されたのだから秘書に念を押すほか、ホテル側に確認する方法もあったはずだ。だが安倍氏側はそれを拒否した。そもそも補填費用は、誰がどこから工面したのか。

 政治とカネの問題で「あれは秘書が」と責任逃れをする政治家の姿をたびたび見せられてきたが、「秘書がやったこと」では到底通らない。

 たとえ知らなかったとしても指導・監督を怠った責任は免れず、時の首相が「虚偽答弁」を繰り返してきた責任は限りなく重い。

■    ■

 夕食会の問題は昨年秋に発覚し、安倍氏は国会などで「事務所からの補填はなかった」と重ねて答弁してきた。

 衆院調査局の調べで、事実と異なるとみられる答弁が少なくとも118回あったことが明らかになっている。

 安倍氏の事務所の関与や、補填の有無などを尋ねた質問への答弁を精査した結果、昨年11月から今年3月まで、衆参両院本会議と予算委員会でこれだけの「虚偽答弁」が見つかったのだ。

 政治家には説明責任がある。長期にわたり「虚偽答弁」を続けたのだから、偽証罪に問える証人喚問が必要だ。国民に見える公開の場で説明する必要がある。

 野党側が求める証人喚問に対し、自民党の森山裕国対委員長は「全くなじまない」と答えている。いったい何がなじまないのか、自民党側にもその説明が求められる。

■    ■

 安倍氏が首相在任中に、官邸に近いとされる元東京高検検事長を脱法的な手法で検事総長へ起用しようとした人事介入を思い出す。「桜を見る会」疑惑が背景にあるといわれていた。結果的に実現しなかったが、検察に何らかの影響力を及ぼそうとしていたのだろうか。

 安倍氏に関し、特捜部は不起訴処分にする方向で上級庁と調整に入った、と伝えられる。

 宰相の政治資金に関わる問題であり、国民は検察の動きを注視している。徹底的に捜査を尽くしてもらいたい。





「桜」の捜査終結で幕引きは許されず(2020年12月22日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が東京都内で開いた「桜を見る会」の前夜祭をめぐり、東京地検特捜部が安倍氏本人から任意で事情聴取した。近く安倍氏を不起訴とし、前夜祭を主催した政治団体の代表を務める公設第1秘書を政治資金規正法違反(不記載)罪で略式起訴する見通しとなった。

 安倍氏の不正への直接の関与はなかったとしても、首相として事実に反する説明を繰り返した責任は免れない。捜査の終結による幕引きは許されず、安倍氏は国会の場で経緯と把握している事実を早期にきちんと説明すべきだ。

 前夜祭は2013~19年、政治団体「安倍晋三後援会」が都内のホテルで毎年開いてきた。地元・山口の支持者らが1人5千円の会費で参加。安倍氏側の15~19年の費用負担は約900万円にのぼったとみられる。

 法曹関係者らが収支報告書の不記載と公職選挙法違反(寄付行為)の疑いで告発状を提出していた。刑事事件をめぐり首相経験者が検察の聴取を受けた事実は重い。

 野党は「参加費が周辺ホテルより格安で、費用補塡があったのでは」と追及。安倍氏は事務所の関与や明細書の存在を再三否定し「ホテル側に私の事務所が確認したことを答弁している。信用できないというなら、予算委員会は成立しない」などと述べてきた。

 自身の後援会に向けられた疑惑を丁寧に調査し、公の場で国民に真実を明らかにする努力が足りなかったと言わざるを得ない。前政権で明らかになった森友、加計両学園をめぐる疑惑でも、安倍氏の当初の説明と関係者の認識が食い違うケースがいくつもみられた。

 安倍氏は特捜部の捜査結果が出た後に、国会で説明する意向を示している。早期に実現すべきであり、形だけの質疑で事態沈静化を図るような姿勢は許されない。

 自民党では吉川貴盛元農相が健康上の理由で衆院議員を22日付で辞職した。吉川氏をめぐっては、広島県内の鶏卵生産大手グループの元代表から農相在任中に現金を受け取った疑いが浮上している。

 政治は国民の信頼の上に成り立っている。疑惑を持たれた政治家は自らの行動や事実関係を国民に明らかにする責任がある。

与野党の立場や政治上の駆け引きよりも、真相の究明と国民への説明が大事だという基本を全ての国会議員に改めて深く自覚してもらいたい。





「帳面消し」(2020年12月21日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 歳末の江戸の長屋は、掛け金(ツケ)清算の攻防の舞台だ。昨年は死んだふりで何とかしのいだ八五郎が、今度は得意の口車で取り立てを免れる。落語の『掛け取り漫才』である

▼帳簿の記載を棒線で消せば債務も消える。「帳消し」の語源を思い浮かばせる噺だ[はなし]が、ツケを払うことなくごまかした八五郎だから、熊本弁で言うところの、表面だけ取り繕った「帳面消し」だろう

▼歳末の永田町の焦点となりそうなこちらの攻防はどうか。安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前夜の夕食会の費用補填[ほてん]疑惑で、年内にも安倍氏を国会招致する方向で自民党が調整に入った

▼ご本人も応じる意向を示したが、まずはどこに舞台を設けるかが注目される。野党が一問一答形式でやりとりできる衆参両院の予算委員会での審議を要求しているのに対し、自民党側は、非公開の議会運営委員会理事会も選択肢として検討しているという

▼そもそもが一連の問題を追及した野党議員を、安倍氏が「ウソつき」と気色ばみ非難していたのが予算委員会だ。その答弁がウソではないかという、笑えない漫才のような疑いが持ち上がった以上、同氏が信条とする丁寧な説明は、同じ場所で同じ相手にしてみせるのが筋ではないか

▼「桜を見る会」を巡っては夕食会の費用補塡にとどまらず、反社会勢力の参加や招待者名簿の廃棄など清算すべき疑惑は数多い。甘い取り立ての「帳面消し」で「帳消し」とすれば、政治不信のツケは、たまる一方での年越しとなる。





安倍氏招致へ 証人喚問実施が当然だ(2020年12月19日配信『北海道新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相主催の「桜を見る会」の前夜に開かれた夕食会の費用補填(ほてん)疑惑を巡り、安倍氏が年内にも国会に招致される方向となった。安倍氏はきのう、招致要請に応じる意向を示した。

 与党は議院運営委員会理事会での説明を想定しているというが、野党は証人喚問を求めている。

 安倍氏は国会で費用の穴埋めを一貫して否定してきた。時の首相が虚偽の答弁を重ねた疑いが生じている。

 それが事実なら、国権の最高機関をないがしろにする重大な背信行為にほかならない。

 通常は非公開の議運委理事会ではなく、偽証した場合に罰則が科せられる証人喚問で説明するのが当然である。

 東京地検特捜部は政治資金規正法違反(不記載)の罪で、安倍氏の後援会代表の公設第1秘書を略式起訴する方向で検討している。

 安倍氏の国会招致は秘書が起訴された後になる見通しだ。

 疑惑については秘書が安倍氏に事実と異なる説明をしていたとされ、安倍氏がそれを知って黙認していたかが最大の焦点となる。

 昨年11月に問題が発覚してから既に1年以上がたつ。この間、国会で野党から度々追及され、ホテル側との金のやりとりや領収書の有無を自ら確認する機会はいくらでもあったはずだ。

 仮に知らなかったとしても、秘書の監督責任は免れない。リクルート事件など過去の政治とカネの問題で繰り返された「秘書に任せていた」との言い訳は通じない。

 菅義偉内閣の支持率が急落し、与党は来年行われる衆院選への影響を考慮して安倍氏招致で幕引きを図るつもりなのかもしれない。

 しかし、特捜部の捜査入りが明らかになったのは先の臨時国会の会期中である。もっと早く国会招致に応じるべきだった。

 安倍政権で官房長官だった菅首相も、安倍氏の説明を追認する答弁を重ねてきた。

 首相は臨時国会で「事実が違った場合は当然、私にも責任がある」と述べた。

 それを果たすには、政府が野党からの資料請求の直後に招待者名簿を廃棄した不自然な経緯も含めて、桜を見る会にまつわる数々の疑惑の検証が欠かせない。

 名簿データが残っていないかなどを再調査し、国会で説明する必要がある。

 安倍政権から続く国会軽視の態度を改め、路線継承の悪弊を断ち切るべきだ。





「安倍一族」の忠誠心とは(2020年12月7日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 森鴎外の小説「阿部一族」の舞台は肥後熊本藩。藩主が亡くなったとき、恩顧の家臣たちが忠誠を競って追い腹(切腹)をしたことから物語は始まる

▼殉死は18人に上ったが、側近の阿部弥一右衛門はできなかった。生前の藩主から「生きて新藩主に奉公せよ」と命じられたためだ。けれど周囲で「恩知らず」「臆病者」と非難が高まる。弥一右衛門は憤然として腹を切った

▼名誉を守るための死は、逆に君命に背く大罪と見られる。新藩主は討伐命令を出し、阿部の一族は屋敷に立てこもって抗戦。壮絶な最期へ向かっていく

▼現代には「安倍一族」と呼びたくなる人々が国政にいるようである。「桜を見る会」前夜の会費支出を巡り、安倍晋三前首相の答弁が虚偽だった疑いが強まっている。それなのに真相究明の動きは鈍い。会期延長要請を振り切り臨時国会は閉会。問題を避けたいのが政府、自民党の本音だろう

▼前首相側は「秘書が誤った報告をした」と釈明しているそうだ。仮に部下の間違った報告が原因であっても、社長がうその説明を数々重ねたなら責任は免れまい。社会一般の常識に照らして国民は納得するだろうか

▼世論の動向に、さすがに分が悪いと感じたのだろう。これまで「できる限りの説明をされてきた」と擁護してきた党内からも、前首相への厳しい意見が出始めたという。1強を誇った一族の中で、忠誠心も揺らぎ始めているか。



真実の解明へ安倍前首相の誠意とは何か?(2020年12月7日配信『日刊スポーツ』‐「政界地獄耳」)

★「桜を見る会」前夜祭の支払いを巡る疑惑に前首相・安倍晋三は相変わらず自分の発言に責任を持たない。4日、安倍は東京地検特捜部から事情聴取を要請された場合の対応を記者団に問われ「真実を解明することが大切だから誠意をもって対応する。捜査の対応が決まった段階では、お話しできることはお話ししたい」と述べた。国会内で答えた。また野党の国会招致要求には「今、捜査が続いている段階では申し上げることはない」と答えた。

★約1年にわたって国会では東京地検特捜部が興味を持っていることと同様の質問を野党各党がし続けた。なぜ山口県の地元後援会が首相主催の桜を見る会に優先的に招かれ、前日にはたった5000円の会費だけで高級ホテルで前夜祭が行われたのか。その補填(ほてん)部分の原資はどこから来ているのか。野党が質問し続けてきたことに対して「安倍事務所」からの回答とやらを“信じ続け”疑問も持たずに国会で答弁し続けてきたことは、既に「真実を解明することが大切だから誠意をもって対応」してこなかったあかしだ。

★ホテルの対応に対しても極めて適当な答弁を繰り返し、真実を野党に語ったホテルマンを追い込んだことはなかったのか。共同通信の世論調査で「桜を見る会」の疑惑に政府は「再調査すべき」が57・4%、前首相の説明は「納得できない」が77・4%、前首相の国会招致は「必要だ」との回答は60・5%に上った。いくつかの新たな事実関係が年末年始にも報じられれば、この数字は来年もっと大きくなるかもしれない。同時に御用メディアや司法関係者は前首相の犯罪性は小さいと事件の矮小(わいしょう)化に努めるが、捜査当局は野党や国民が考える不審な部分について何らかの証拠を持っているかもしれない。いずれも自分の都合のいいことしか発信してこなかったツケではないか。これが7年半続いた安倍政権の総括となるのか。





安倍氏に聴取要請 逃げ切りは許されない(2020年12月5日配信『琉球新報』-「社説」)

 政治資金規正法違反、公職選挙法違反、そして背任。「桜を見る会」を巡り安倍晋三前首相の疑惑が渦巻いている。

 東京地検特捜部は「桜を見る会」前夜の夕食会費補填(ほてん)について、政治資金規正法違反(不記載)容疑で公設第1秘書を立件する方針を固めた。安倍氏の任意聴取も要請した。

 報道にあるように、特捜部が秘書を略式起訴の罰金刑で済まそうとしているのであれば、国民は納得しない。もし夕食会費の一部を事務所側が負担していれば、公職選挙法違反(寄付行為)の疑いが出てくる。

 首相を務めた人物が政治を「私物化」し、逃げ切ることは許されない。特捜部に真相の徹底究明を求めたい。

 夕食会は公設第1秘書が代表の「安倍晋三後援会」が主催し、2019年までの5年間でホテル側への支払総額は約2300万円に上る。参加者の会費だけで賄えない分は、安倍氏側が毎年100万円以上、多い年で約250万円を負担していた。しかし、政治資金収支報告書に収支を記載しなかった。

 特捜部は実質的に会計処理を担当していた公設第1秘書については、刑事責任を問えると判断しているとみられる。ただ安倍氏本人を立件するには、議員が秘書らに不記載を指示したとする明確な証拠が必要だという。

 忘れてならないのは安倍氏の国会答弁である。国会で「補填はなかった」と重ねて答弁した。報告書への記載について「収支がとんとんであれば(政治資金収支報告書に)載せる必要はない」と述べた。だが収支がイコールでも記載が必要である。これは虚偽答弁である。

 安倍氏は国会で説明する責任がある。前政権で官房長官だった菅義偉首相も、国会で安倍氏と同じ答弁を繰り返した。結果として菅氏にも倫理上の責任が問われよう。

 安倍氏は桜を見る会に、招待範囲に含まれない後援会関係者を招待し「私物化」した。後援会関係者を多数招いた結果、予算を大幅に超える支出をして国に損害を与えた疑いもある。

 専門家によると、背任罪(刑法第247条)に該当する可能性があるという。今年1月、東京地検に刑事告発されたが受理されなかった。

 政治とカネの問題で思い起こされるのは、金丸信・元自民党副総裁の5億円ヤミ献金事件である。1992年、東京地検は金丸氏を政治資金規正法違反で略式起訴し、東京簡裁は金丸氏に罰金20万円の略式命令を出した。5億円を受け取りながら、公判は行われず罰金20万円で決着したことに批判が沸騰した。

 今回、略式起訴となれば、国民の政治不信はますます深まることになろう。検察審査会が強制起訴する可能性も残されている。司法と国会で、真相を明らかにできなければ、政治の信頼は取り戻せないだろう。





前夜祭の「虚偽答弁」 安倍氏はなぜ説明しない(2020年12月4日配信『毎日新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」前夜祭の費用を安倍晋三前首相側が補塡(ほてん)していた問題で、東京地検特捜部が安倍氏に事情聴取を要請した。

 前夜祭は、安倍氏の後援会が主催した。事務所の負担は、昨年までの5年間で800万円以上という。政治資金収支報告書に前夜祭についての記載はなく、政治資金規正法違反の疑いがある。捜査に誠実に対応するのは当然だ。

 特捜部の捜査が発覚して以降、安倍氏は国民に対して、きちんとした説明をしていない。取材に応じた際も、「もう国会で答弁している」と述べるにとどまった。

 しかし、その答弁が虚偽だったことが明らかになっている。

 国会ではこれまで、前夜祭について「(会場の)ホテル側から明細書は受け取っていない」「補塡は全くない」と述べてきた。

 さらに「後援会としての収入、支出は一切ないことから、収支報告書への記載は必要ない」と強調していた。事務所は仲介しただけであり、ホテルと契約したのは参加者だと、無理のある理屈も持ち出していた。

 一国の首相が、事実に反する答弁を繰り返してきた責任は重大だ。衆院調査局によると、「虚偽答弁」は計33回に上る。

 真相を明らかにし、虚偽答弁に至った経緯も説明しなければならない。そうしない限り、政治への信頼回復は見込めない。

 安倍氏は、閣僚らの不祥事が発覚する度に「国会議員は疑惑について、しっかりと説明していく責任を負っている」と述べていた。自ら実践すべきだ。

 菅義偉首相は今国会で「具体的な事実関係について知る立場にない」と答えた。安倍氏に説明させるよう求められても、「国会が決めることだ」と応じなかった。

 自民党の二階俊博幹事長も「ご本人が適当に判断されるだろうから、それを待ちたい」と語った。ともに、人ごとのような反応だ。

 野田聖子幹事長代行が「自らの言葉で説明責任を果たしていくべきだ」と語るなど、自民党の中からも安倍氏に対応を促す声は上がっている。

 にもかかわらず、与党は国会を閉じようとしている。虚偽答弁をそのままにしておくことは、立法府の役割を放棄するに等しい。



「夕食会」立件へ 安倍氏も責任を免れぬ(2020年12月4日配信『北国新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会をめぐる会費補填(ほてん)問題が、刑事事件として立件される見通しとなった。東京地検特捜部は、会費補填に関し政治資金規正法違反(不記載)の疑いがあるとして、安倍氏の公設第1秘書を訴追する方針を固めたという。

 第1秘書は任意の事情聴取で、夕食会の会費で賄えなかった費用を補填したことを認めている。安倍氏自身が関与していたのかどうかを含め、事実関係を事細かく明らかにしてもらいたい。

 安倍氏の法的責任の有無は今後の特捜部の捜査を待たなければならないが、いずれにしても政治家としての政治責任、道義的責任は免れない。安倍氏自身、事情聴取の対象となっており、公の場での説明はまだ難しいとしても、長期政権下で政治不信を招いた疑惑であり、国民に対する説明責任を果たして、けじめをつけなければなるまい。

 問題の夕食会は、公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」が主催し、東京都内の二つのホテルで開かれた。ホテル側への支払総額は、2019年までの5年間で2千万円以上に上る。参加者1人5千円の会費では賄えず、安倍氏側が毎年100万円以上負担していたとされる。

 ホテル側は、安倍氏が代表である資金管理団体「晋和会」宛てに領収書を発行していたが、5年間の夕食会の経費については、後援会や晋和会の政治資金収支報告書に記載されておらず、政治資金規正法違反とみられている。

 夕食会の費用の不足分を補うことは、有権者に対する寄付行為とみなすこともできるため、規正法違反だけでなく、公選法違反容疑での告発状も出されている。特捜部も晋和会の会計責任者らを追及しているとみられる。

 安倍氏はこれまでの国会答弁で「補填はない」と繰り返してきたが、第1秘書が認めたことで、答弁の誤りを責められる結果となった。秘書や会計責任者が事実を伝えていなかったのが理由だとしても、監督の至らなさと不明をわびるほかなかろう。



安倍氏に事情聴取要請(2020年12月4日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 安倍晋三前首相とトランプ米大統領による外交はいわゆる「ゴルフ外交」。2016年の初会談時に前首相が大統領にゴルフクラブを贈呈し、翌17年の大統領の訪日時には松山英樹プロを交えてプレーした。

 共通の趣味で親密な関係を築いた両氏。さて、その後を継ぐ菅義偉首相と、バイデン次期大統領である。2人に共通のものがあるならば、それは趣味ではなく前政権から引き継いだ多くの「負の遺産」だろう。それに悩まされる者同士の共感はあるのではないか。

 トランプ氏の「負の遺産」が、きわめて不十分な感染拡大対策によって深刻化したコロナ禍や、国内の分断、米国第一主義により生じた国際社会とのあつれきなどであれば、安倍氏のそれは「モリカケ、桜」問題だろう。その「桜を見る会」で、きのう新たな動きがあった。

 この催しの前日にあった夕食会の経費の一部を安倍氏側が補塡(ほてん)したとされる問題。東京地検特捜部が、安倍氏本人に任意の事情聴取を要請したという。安倍氏は、記者団に「聞いていない」と話している。検察は補塡を認めている公設第1秘書を政治資金規正法違反の疑いで立件する方針も固めた。

 菅首相にとって、政権発足後のごたごたは学術会議問題を除き、前政権下で起きたものばかり。頭が痛いことだろうが「知らない」では済まされぬ。疑惑解消に取り組むべきなのだが、政府、与党は、臨時国会を会期末となるあす、延長せずに閉じるという。





桜から鶏卵へ カネにまみれる政権(2020年12月3日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★自民党国対関係者が言う。「どうなることかと思った国会も今週で閉会する。これで1月20日ごろまで国会は閉じたまま。第3次補正予算は大規模になるものの野党も大きな反対はない。当初はどうなることかと思った学術会議問題も来年になれば誰も覚えていない。コロナ禍と五輪問題は結局越年だから継続するが、国会では首相・菅義偉の答弁能力が問われたものの、何とか乗り切った。後半『桜を見る会』前夜祭のことで前首相・安倍晋三のスキャンダルが飛び込んできたが首相はうまくかわした。東京地検特捜部も年内で捜査を終えて、安倍には及ばないだろう。まずまずだったのではないか」と振り返った。

★1日、「桜を見る会」前夜祭について告発している弁護士グループが東京地検を訪れ「前首相に対するそんたくから捜査の手を緩め、不処分や略式起訴のような軽い処分を選択するようなことがあれば、検察に対する信頼が地に落ちるであろうことは確実だ」という要望書を提出した。これを受けて政界関係者が言う。「年内終結どころか、どうやら少なくとも800万円以上を安倍サイドが負担したことが明らかになっているが、そんな額ではないようで、捜査が進むにつれ数千万と金額が膨れ上がっているようだ。このままでは議員会館の安倍事務所や、前首相への事情聴取もあるのではないか」。

★強制捜査などということにでもなれば安倍政治の継続と踏襲を売り物にしていた菅政権への余波は避けられないだろう。今となっては国会を閉じない方がよかったかもしれない。それとも政権は安倍に対して毅然(きぜん)と対応して、長期政権を目指すのか。ところが河井案里選挙違反事件に余波があるようで、広島の鶏卵生産大手の「アキタフーズ」が東京地検特捜部の捜査の対象となっている。元農水相・吉川貴盛は党の役職を辞任した。菅内閣は政治とカネにまみれ始める。



[臨時国会会期末]「桜」幕引き許されない(2020年12月2日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 首相在任中の疑惑であり説明責任を果たすのが筋だ。今国会は5日に会期末を迎えるが、このままうやむやにしようとしているのであれば許されない。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、費用の一部を穴埋めしていたと安倍氏側が認めた。会場のホテルが発行した領収書を破棄した疑いがあることも分かった。

 昨年秋に浮上した前夜祭を巡る疑惑は深まるばかりだ。

 安倍氏は在任中、国会で「補(ほ)填(てん)はなかった」と繰り返し答弁し、参加者の会費でまかなったと述べてきた。補填していたのなら、その主張が崩れたことになる。野党が「虚偽答弁だ」と批判するのはもっともだ。

 安倍氏は本当に知らなかったのか。事務所側の報告に疑問を持たなかったのか。自らの責任についてどう考えているのか。安倍氏の口から聞きたいことはたくさんある。

 補填分は毎年100万円以上、多い年で約250万円、5年分で計900万円余りに上るとされるが、どこから捻出したのかも知りたい。

 一国の首相の自身の問題に関わる発言が、虚偽ではないかとの疑念を持たれている。本来なら自ら記者会見を開いて説明すべきだ。国会や国民への謝罪も求められよう。もし補填を知らなかったとしても道義的な責任がある。

 安倍氏は森友や加計問題でも、疑惑を否定したものの納得できる説明をしていない。首相在任中からの国会軽視が甚だしい。

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 菅義偉首相の姿勢も理解に苦しむ。

 菅首相は官房長官時代、「安倍氏が答弁した通りだ」と追認しており、責任は免れない。だが、11月30日の参院本会議では「必要なら安倍氏に確認し、誠実に答弁してきた」と自らの責任を否定した。

 安倍氏の証人喚問を自民党総裁として決断するよう迫られても否定的な見解を示した。官房長官として支えた経緯から安倍氏をかばっているのか。

 前夜祭が初めて開かれた2013年、安倍氏側は政治資金収支報告書への前夜祭費用の記載について総務省に問い合わせていたという。同省は政治団体に支出があれば記載が必要だと回答しており、安倍氏側は違法性を認識していたと東京地検特捜部はみている。

 菅首相には疑惑について丁寧に説明するよう安倍氏に求めてもらいたい。証人喚問など国会招致にも応じるよう促すべきだ。

■    ■

 1985年に議決された国会の政治倫理綱領は「疑惑を持たれた場合は自ら疑惑を解明し、責任を明らかにするよう努めなければならない」とある。与党内からも説明を求める声が相次いでいる。

 特捜部は政治資金規正法違反(不記載)容疑の適用を軸に捜査を進めているが、だからといって説明を拒む理由にはならない。

 国会議員としての資質が問われる事案である。説明責任が果たせないのなら安倍氏は責任を取って議員の職を辞するべきだ。





「桜」夕食会問題 国会で真実明らかにして(2020年11月30日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に毎年開いていた夕食会を巡り、安倍氏側が費用の一部を補塡[ほてん]していたことが分かった。補塡額は昨年までの5年間で計900万円を超えるという。政治資金収支報告書には記載がなく、東京地検特捜部は政治資金規正法などに違反している疑いがあるとみて調べている。

 安倍氏は首相在任中、夕食会は参加者の会費で賄われており「補塡した事実は全くない」と一貫して主張してきた。野党が「前首相は虚偽答弁を繰り返してきた」と非難するのは当然だろう。

 安倍氏側がホテル発行の領収書を廃棄していた疑いも浮上している。違法性の認識を裏付ける証拠とも言えるが、安倍氏は領収書の存在自体を否定していた。どちらが真実なのか、安倍氏自身が証人喚問など国会招致に応じて明らかにしてほしい。

 政治的、道義的責任

 安倍氏の公設第1秘書と資金管理団体の会計責任者が主導して費用の負担割合を決めていたとの指摘もあるが、一連の問題が浮上したのは1年も前のことだ。公設秘書らが事実を隠していたとしても、事務所内の調査が十分だったとは言い難く、安倍氏の政治的、道義的責任は明白だ。

 従来の主張を翻した安倍氏側に対しては、身内である与党からも批判が出始めている。補塡した費用はどこから捻出したのか。安倍氏はどの程度関与したのか。自ら進んで説明するべきだ。

 菅義偉首相の人ごとのような国会対応にも落胆を禁じ得ない。首相は衆参両院の予算委員会集中審議で、安倍内閣の官房長官として安倍氏の説明を追認する答弁をしていたことについて「事実と違った場合は当然、私にも責任がある」と述べた。だが、安倍氏側には事実関係の確認すらせず、野党が要求する証人喚問や参考人招致に関しても「国会が決めること」などと消極姿勢に終始した。

 飛び火恐れる首相

 「桜を見る会」には安倍氏の後援会関係者が多く招かれ、「税金の私物化」との批判があった。野党は、内閣府が招待者名簿を廃棄した問題についても再調査を求めたが、首相は「既に必要な調査をしており、国会でも説明してきた」と拒んだ。

 現政権への飛び火を恐れているのだろう。しかしこれでは、閣僚が不祥事で辞任するたびに「任命責任は首相の自分にある」と言いながら何ら責任を取らなかった安倍氏と少しも変わらない。捜査の進展次第では、これまでの説明に対する首相自身の責任も問われることになろう。

 来月5日が会期末の臨時国会は最終盤を迎える。首相も出席してきょう開かれる参院本会議が攻防のヤマ場となるとみられる。さらに野党は、閉会中審査の開催を要求し、年明けの通常国会でも追及を続ける構えだ。

 新型コロナ対策をはじめとする重要課題に腰を据えて向き合うためにも、首相は安倍氏に対し、国会招致や関係文書の提出に応じるよう促す必要がある。

 隠蔽し、言い繕う

 安倍前政権では、「森友学園」への国有地売却を巡る国会質疑で、事実と異なる政府答弁が計139回あったことも明らかになった。それでも政府は、自殺した元近畿財務局職員が公文書改ざんの過程を記したとされるファイルの存否さえ明らかにせず、再調査も拒み続けている。

 世論から批判を浴びそうな事案は隠蔽[いんぺい]し、発覚してもどうにかして言い繕う。国会を軽視して説明責任を尽くそうとしない悪弊が、前政権からそのまま引き継がれていることが残念でならない。「国民から信頼される政府」を目指すのであれば、そうした姿勢をまず改めるべきではないか。





議会130年(2020年11月29日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 現在の東京・日比谷公園近くの仮議事堂に、馬車や人力車が次々と吸い込まれた。1890年(明治23年)11月25日、記念すべき第1回帝国議会の召集日である。29日に開院式が行われた。きょう国会で議会開設130年の式典が開催される

▼天皇大権を定めた大日本帝国憲法の下で議会の権限は弱かったが、初の予算審議は緊迫感に満ちていた。軍備拡張の予算案を提出した山県有朋内閣に対し、衆院で多数を握る自由党、立憲改進党は地租軽減と政費節減を掲げた

▼行政の経費を見直して減税せよとの要求だ。藩閥政府と、自由民権運動の流れをくみ「民党」と呼ばれた勢力の全面対決となり、一時は山県の「解散の覚悟」が伝えられる

▼すったもんだの末、政府は自由党の一部を切り崩し減額予算の可決にこぎ着ける。議会対策の厳しさを痛感した山県は閉会後に首相を辞任した

▼時移り、今臨時国会で現首相は「お答えを差し控える」と繰り返し、まともな論戦にならない。前首相に至っては、地元有権者が参加した夕食会の経費を補填(ほてん)したのではないかとの重大な疑惑について、国会でウソをつき続けていた可能性がある

▼なのに与党は2人をかばい、国会は今週末で幕が引かれるようだ。国権の最高機関の名が泣こう。帝国議会には最後、軍部の支配で政党政治が息絶えた暗い歴史がある。今再び、議会制民主主義が危機にひんしている。




こちらの桜はどうなっているのだろう(2020年11月29日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 季節外れの桜の開花がニュースになることがある。今年は9月に入ってから、県内各地で桜が咲いた。菅義偉首相の就任と相前後して菅氏の古里・湯沢市でも花が開き、近隣住民の間で話題になった

▼専門家によると、8、9月の猛暑が原因ではないかという。地球温暖化の影響ということか。こちらの桜はどうなっているのだろう。首相主催の「桜を見る会」の前日に安倍晋三前首相の後援会が高級ホテルで開いた夕食会だ

▼1人5千円の会費は安過ぎるとして、野党は安倍氏側が不足分を補ったのではないかと追及。安倍氏は繰り返し否定してきた。それが一転、昨年までの5年間、補填(ほてん)していたことが判明した

▼総額は900万円超とみられ、政治資金収支報告書には記載がなかった。公選法や政治資金規正法に違反する疑いがある。東京地検特捜部が捜査を進め、安倍氏側は協力しているという。だからといって安倍氏が国民に向かって説明しなくていいことにはならない

▼秘書が補填の事実を報告していなかったというが、事実と異なる国会答弁を続けた責任は重い。官房長官だった菅氏は安倍氏の答弁を追認。今国会では自身の答弁が事実と違えば「私にも責任がある」と明言した。安倍氏には国会で真実を明らかにする責任がある

▼安倍前政権では公選法違反疑惑などで閣僚辞任が相次いだ。安倍氏は「任命責任を痛感する」と発言するばかりだった。自身の問題にはどう対処するか、国民が注目している。



桜見る会の疑惑 第三者まじえ再調査せよ(2020年11月29日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 夕食会をはじめとした首相主催の「桜を見る会」を巡る疑念がさらに深まってきた。

 会の前夜に安倍晋三前首相の事務所が開催した夕食会は、費用の不足分を安倍氏側が負担していた実態が明らかになっている。

 夕食会の収支は政治資金収支報告書に記載されておらず、政治資金規正法違反の疑いが濃厚だ。公職選挙法が禁止する寄付行為の疑念も残る。

 安倍氏は国会答弁などで不自然な反論を繰り返し、補填(ほてん)や不記載を否定してきた。それらの多くは虚偽だった可能性が大きい。

 夕食会は安倍氏個人の問題だ。ただし、桜を見る会の問題の本質は別にある。政権や自民党などによる公金の私物化である。

 会は本来、各分野で功績があった人を公費で招き、慰労することが目的だ。それなのに安倍氏らが地元支援者や親交のある人を数多く招待していた。

 推薦枠は菅義偉官房長官(当時)ら政権幹部や自民党にもあり、その合計数は各省庁が推薦した功労者の6千人より多くなっていた。前首相や自民党が支持を固めるため、会を政治的に利用していたのは明らかだ。

 預託商法を展開し、詐欺容疑で逮捕された「ジャパンライフ」元会長も首相枠で招待され、招待状を勧誘に使っていた疑いがある。

 会の実態を解明するには、招待者名簿が欠かせない。

 政府はこれまで、名簿は破棄されたと主張してきた。その説明は極めて不自然である。

 内閣府が名簿をシュレッダーにかけたのは昨年5月9日で、共産党議員が資料として提出を要求した1時間後だ。菅氏は4月22日にシュレッダーを予約していたのに、他部署と重なり結果的に5月9日になったと説明している。電子データも同時に処分していた。

 要求があったから、隠蔽(いんぺい)のため破棄した疑念が拭えない。

 菅氏は国会などで招待者について追及されても、名簿が残っていないことを理由に「詳細は不明」とはぐらかし、疑惑の解明をしてこなかった。首相で臨んだ今国会でも再調査の要求を拒否した。

 夕食会だけでなく、桜を見る会に関係した政府答弁は信用できるのか。菅首相は実態を解明するため、再調査をするべきである。

 政府はこれまで、何度も公文書の破棄や隠蔽、改ざんを繰り返してきた。国民が納得するには、内部調査では不十分である。第三者をまじえた客観的な調査組織を設立することが求められる。





夕食会の費用補てん 安倍氏はきちんと説明を(2020年11月28日配信『山陽新聞』-「社説」)

 一国の首相が国会で誤った答弁を繰り返してきたとすれば、その責任は極めて重い。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡って、会場のホテルへの支払いが、参加者から集めた会費だけでは足りず、安倍氏側が補てんしていたとされる問題である。

 差額の補てんは有権者への金品提供を禁じた公選法違反に当たりかねない。支出が政治資金収支報告書に記載されていなければ、政治資金規正法にも違反する。これまで安倍氏は国会などで、全ての費用は参加者の自己負担だったと説明してきた。食い違いは明らかだ。

 夕食会は2013~19年に東京都内の二つのホテルで開かれた。1人5千円の会費制で飲食が提供されるなどし、19年には安倍氏の地元・山口の支援者ら約800人が参加していた。補てんした額は毎年100万円以上に上り、最大約250万円だった。昨年までの5年間で計900万円を上回るという。

 ホテル側からは、こうした内訳が確認できる領収書が発行されていたが、既に廃棄された疑いも出ている。

 補てんした事実は安倍氏周辺も認めているという。では、安倍氏はなぜ虚偽の説明を続けてきたのか。関係者によると、昨年、問題が発覚して安倍氏が事務所に確認した際、秘書が「会費以外の支出はない」と事実と異なる説明をしたという。そうした一連の経緯は今週になって安倍氏に伝わったとされる。

 仮にそれが事実で安倍氏が知らなかったとしても、あまりにも対応が甘すぎないか。法に触れかねない行為であり、野党などから厳しい目が注がれていたにもかかわらず、なぜもっとしっかりと秘書に確認しなかったのか。責任は免れまい。

 結果的には国会で虚偽の答弁が繰り返されていたことになり、政治への信頼を揺るがしている。安倍氏は自身の言葉できちんと国民に説明すべきである。

 野党は、当時官房長官だった菅義偉首相への追及も強めている。今週行われた衆参両院の予算委員会集中審議では菅氏の対応も問われたが、安倍氏に事実を確認することや、国会での説明を本人に促すことについては、捜査が行われていることを理由に応じない考えを示した。

 「桜を見る会」に関する再調査も拒否し、改めて事実を確認しようという姿勢は見られなかった。捜査中であることを口実にして、首相が逃げの一手に終始していては国民の疑念は晴れまい。自民党の対応も問われている。

 東京地検特捜部は今後、安倍氏本人を任意で事情聴取することも検討しているようだ。公選法違反も政治資金規正法違反も、安倍氏本人を立件することは容易ではないとの見方は強いが、厳正に捜査を進め、事実関係を明らかにすることが求められる。



忖度と平仄(2020年11月28日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 「破天荒」は「型破り」という意味ではなく「過去に人ができなかったことをやる」。「ぶぜん」は「腹を立てる」ではなく「落胆してぼんやりする」。本紙でも過去に紹介した、誤って使われがちな言葉。

 しかし、実際には間違った方の使い方がなじんでしまっているようで、正しい日本語が使われている書物やテレビ番組でも誤用が多く見られる。そうした背景もあってか、今年の初めに刊行された国語辞典で「ぶぜん」を引いたら「むっとする」も加わっていた。

 先日の菅義偉首相の国会答弁で、初めて「平仄(ひょうそく)を合わせる」なる言葉を知った。「桜を見る会」前夜の食事会に関する質問。その経費について、官房長官時代の答弁が事実と違っていたことを指摘され「(安倍前総理と)平仄を合わせて答弁していた」と。

 かつての森友問題の際の「忖度(そんたく)」もそうだが、安倍氏の疑惑追及の中では、日常では使われなくなった言葉がよく脚光を浴びるようである。本来「忖度」は「人の心中を推し量る」ことで「平仄を合わせる」は「つじつまを合わせる」ことだ。それ以上の意味でもなければそれ以下の意味でもない。

 だが、こうした形で光が当たると「忖度」は「権力におもねってよくないこともする」、「平仄を合わせる」は「つじつま合わせ」というよりも「口裏合わせ」といった誤った意味でとらえられ、それが定着してしまいそうだ。言葉自体には罪はないのだが。



安倍前首相は極めて悪質なうそつき(2020年11月28日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★「桜を見る会」の前夜祭をめぐる費用の問題で前首相・安倍晋三のうそ、虚偽答弁は少なくとも33回あると衆院調査局が24日明らかにした。17年2月17日、安倍は衆院予算委員会で森友学園の国有地払い下げに関する文書の改ざん問題で「私や妻がですね、えーこの、認可、あるいはこの国有地払い下げにですね、もちろん事務所も含めて一切、関わっていないということは明確にさせていただきたいと思います。もし関わっていたんであればですね、これはもう、私は総理大臣をやめるということでありますから、それははっきり申し上げたいと、このように思います」。

★これに対し、既に改ざんが発覚した森友学園とのやりとりを示した文書からは、(当該学園長)籠池の発言として「安倍昭恵首相夫人から『いい土地ですから、前に進めて下さい』とのお言葉をいただいた」との記述が削除されていた。24日、衆院財務金融委員会で立憲民主党・川内博史の質問に衆院調査局は森友学園への国有地売却をめぐる財務省の公文書改ざん問題で、安倍政権が17~18年に行った国会答弁のうち、事実と異なる答弁が計139回あると認めた。

★いずれも安倍の発言につじつまが合うように閣僚や官僚が答弁に虚偽を加えながら、事実と異なる説明を国会と国民にし続け、税金の使い道や政策遂行でうそをつき続けたということになる。これだけでも安倍は政治家としても首相経験者としても極めて悪質なうそつきであるし、それを承知で自民党と政府は一丸となってそのうそを支え、守って国民を欺いてきたことになる。つまり、政府全体がうそをつき続ける理由は、安倍のうそを事実かのようにすり替えた詐欺のようなものだ。それも当時の官邸に強要されたというより、出世欲や保身のためのうそという極めて情けない動機でしかない。





安倍氏“虚偽”答弁 国会審議への冒涜だ(2020年11月27日配信「東奥日報」-「時論」/『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 一国の首相が自身に関わる問題について国会で“虚偽”答弁をしながら、謝罪どころか釈明もしないとすれば、国会を冒涜(ぼうとく)していると言わざるを得ない。立法府の権威は地に落ち、行政府への信任は崩れてしまう。

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」前日に開いた夕食会を巡り、安倍氏側が費用の一部を補填(ほてん)していたことが判明した。

 国会で政治資金規正法違反の疑いなどが指摘されてきたが、安倍氏は首相在任中、夕食会参加者の会費でまかない、「補填した事実は全くない」と一貫して主張してきた。野党が「前首相は虚偽答弁を繰り返してきた」と非難するのも当然だ。安倍氏は自ら進んで証人喚問など国会招致に応じ、真相を明らかにする必要がある。それが三権の長の経験者として、国民の負託をつなぎとめる道だ。

 国会審議が「愚弄(ぐろう)された」(枝野幸男立憲民主党代表)事態にもかかわらず、菅義偉首相の対応には疑問を感じざるを得ない。「事実と違った場合は当然、私にも責任がある」。衆参両院の予算委員会で行われた集中審議で、首相は安倍内閣の官房長官として安倍氏の説明を追認する答弁をしていたことについてそう述べた。

 しかし、安倍氏側に事実確認はしておらず、野党が要求する証人喚問や参考人招致については「国会が決めることだ」と建前論を展開し、及び腰だった。「桜を見る会」には安倍氏の後援会関係者が多く招かれ、「私物化」批判があった。疑惑の端緒になったが、予算委で実態を再調査するよう求められた首相は「既に必要な調査をしており、国会でも説明してきた」と事実上拒否した。

 菅首相の言う「責任」とは何なのか。このままでは閣僚が不祥事で辞任するたびに「任命責任は首相の自分にある」と言いながら、何ら責任を取らなかった安倍氏と同じではないか。

 夕食会場になったホテル発行の領収書を安倍氏側が廃棄していた疑いも浮上した。補填の有無を裏付ける証拠物とも言えるが、安倍氏は存在を否定していた。補填額は昨年までの5年間で計900万円を超えるという。

 一連の問題が浮上したのは1年前だ。東京地検特捜部に任意聴取されるまで公設秘書らが安倍氏に補填の事実を隠していたとしても、この間、国会で追及を受け続けてきた。虚偽答弁の指摘には反論があるかもしれないが、秘書らへの調査がおざなりだった証左で、政治的、道義的責任は免れない。菅首相の最低限の責任は、安倍氏に対し、国会招致と関係文書の提出に応じるよう促すことだ。

 安倍前政権では、「森友学園」への国有地売却を巡る政府答弁のうち、事実と異なる答弁が計139回もあったことが明らかになった。ほとんどが佐川宣寿財務省理財局長(当時)だが、麻生太郎財務相の答弁も含まれていた。森友問題では、自殺した元近畿財務局職員が公文書改ざんの過程を記したとされるファイルの存否さえ明らかにせず、再調査も拒んでいる。

 世論の批判を浴びそうな事案は隠蔽(いんぺい)し、発覚しても説明責任を果たすどころか、何とか言い繕おうとする。日本学術会議の会員任命拒否問題にも通底する、その姿勢を改めなければ、政治不信が増幅するばかりだ。



「返り花」(2020年11月27日配信『日本経済新聞』-「春秋」)

 ちょうどこの季節の風物詩に「返り花」がある。冬に入るころのほんのり暖かい日差しのなかで、にわかに咲き出してしまう春の花のことだ。「帰り花」とも書き、「忘れ花」「狂い花」など呼び方もさまざまらしい。蕪村は「かへり花暁の月にちりつくす」と詠んだ。

▼いま永田町では、不意にサクラが咲き出して大騒ぎである。いろいろ問題が浮上し、今春は中止になった首相主催の「桜を見る会」。疑惑のひとつは、安倍晋三前首相の後援会が毎年開いていた前夜祭の費用を後援会側が補填したのでは……という話だった。この件で検察当局が動き、安倍氏周辺も補填を認めたとされる。

▼捜査をしっかり進めてもらいたいが、これが事実なら法的責任とは別に、世間から大いなる咎(とが)を受けねばなるまい。「事務所職員が参加費を集め、全額をホテル側に手渡した」などと主張してきた前首相の主張は偽りだったことになるのだ。振り返ればほぼ1年前から、安倍氏は国会で何度も「補填はない」と唱えていた。

▼かりに、秘書がやったことで本人は知らなかった――としても責任はつきまとう。ここはきちんと経緯を説明してもらいたいものだ。「返り花」は気象用語で「不時現象」。なんらかの原因で、花芽に休眠ホルモンが届かなくなるのだという。この疑惑も、なぜか唐突に眠りから覚めた。花の開き方に目を凝らすとしよう。



【「桜」夕食会解明】首相の姿勢が問われる(2020年11月27日配信『高知新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡る安倍氏の国会答弁は虚偽だったのではないか。そう思わせる矛盾が相次いで明らかになっている。

 安倍氏自身がまず説明責任を果たす必要がある。当時は正確な情報を知らされていなかったというのなら、なおさらだ。

 菅義偉首相は当時の官房長官であり、関連する答弁も行ってきた。国会審議がないがしろにされたという疑念に今後どう向き合うのか、首相の姿勢が問われる。

 疑惑は、夕食会の費用は参加者の会費で賄えず、安倍氏側が負担したのではないかという内容だ。

 これに対し安倍氏は、後援会の収入・支出は一切なく、政治資金収支報告書に記載する必要はないとの認識を示していた。
 ところが、こうした答弁が崩れてきた。

 安倍氏周辺がホテル側への支払いの一部を補塡(ほてん)したと、東京地検特捜部の任意の事情聴取に対し認めていることが分かった。補塡は5年間で約900万円を超し、多い年で250万円となった可能性がある。

 またホテル側が発行した明細書はないとしてきたが存在し、領収書は廃棄した疑いが出てきた。

 明確に否定してきた答弁がこんな調子では、議論は成り立たない。国会軽視も甚だしい状況だ。

 関係者は、夕食会の問題が発覚後の昨年末、安倍氏が事務所に確認した際、秘書が政治資金収支報告書に記載していなかったため、事実と異なる説明をしたとする。これは秘書の落ち度であり、安倍氏は知らなかったということになる。

 本当かもしれない。ただ、お金の問題はホテル側の明細書を入手すれば証明できることで、それをしなかったのは何か後ろめたいことがあったからではないか。新たな事態となって、ダメージを秘書までで食い止めようとしているのではないかとの疑念も出てくる。それだけに、なおさら安倍氏の説明が欠かせない。

 首相は官房長官時代の答弁について、「事実が違った場合は当然、私にも責任がある」と述べている。しかし、事実関係を確認する意思は示さない。捜査中を理由にして、野党の攻勢から逃げる姿勢ばかりが目立っている。

 桜を見る会を巡っても、安倍氏の推薦枠に基づく招待者名簿が廃棄されるなど、「私物化」の真相解明は滞った。今回の事態進展を受けた再調査の要求に対しても拒否の姿勢を見せる。これでは政権への信頼に関わってくる。

 安倍政権下では、学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡る国会質疑の政府答弁のうち、事実と異なる答弁が計139回あったと、衆院調査局が明らかにした。多くは当時の財務省理財局長の答弁だった。政権の姿勢が官僚の忖度(そんたく)を呼び起こす。国会を軽視する姿勢の広がりにがくぜんとする。これを放置することは許されない。





予算委首相答弁 まともに答えていない(2020年11月26日配信『北海道新聞』-「社説」)

 衆参両院の予算委員会はきのう、集中審議を行った。

 野党が最も追及に力を入れたのは、安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」の前日に開催した夕食会の費用を巡る疑惑である。

 安倍氏は会費の差額の補填(ほてん)を否定してきたが、東京地検特捜部の任意の事情聴取に同氏周辺が補填を認めたことが新たに判明した。

 安倍政権の官房長官だった菅義偉首相も、安倍氏の説明を追認する国会答弁を重ねた責任がある。

 ところが、首相は特捜部が捜査していることを理由に、まともな受け答えを避けた。

 前首相と現首相の答弁が虚偽だった疑いが生じており、これを許せば国会審議そのものが成り立たない。国会は真相究明に尽くさなければならず、首相は真摯(しんし)に対応すべきだ。

 首相は、夕食会の費用に関する自身の答弁について「事実が違った場合は当然、私にも責任がある」と述べた。その一方で、安倍氏への事実関係の確認は「捜査に関わる」として拒否した。

 これでは本当に責任を感じているか疑わしい。

 野党は偽証した場合に罰則が科せられる証人喚問で、安倍氏が国会で説明するよう要求した。立法府の存在意義に関わる問題であり、与党も応じるのが筋だ。

 新型コロナウイルス対策で、野党は政府の観光支援事業「Go To トラベル」の停止を含めた抜本的な見直しを求めた。

 これに対し、首相は「事業は感染拡大と直結しない」として、地域経済を支える極めて有力な政策だと反論した。

 事業への首相のこだわりばかりが強調され、事業を進めながら感染拡大を防止する戦略は一向に見えてこなかった。

 札幌、大阪両市を目的地とする旅行の新規予約を一時停止する唐突な運用見直しだけで、感染拡大地域の医療崩壊を防げるか疑問が残る。これでは政権のコロナ対策は無策と言われても仕方がない。

 首相は、日本学術会議の任命拒否問題について「個別の人事は答えを控える」などと、これまでと同じ答弁を繰り返した。

 そもそも任命拒否は法律に反する。撤回するべきだ。

 就任後初の本格的な論戦の場である今国会で、首相にただすべき政権の懸案事項はあまたある。

 この日の衆参それぞれ3時間の審議ではいかにも短く、さらに首相出席の予算委を開き、徹底審議を続ける必要がある。



「桜を見る会」夕食会/安倍氏は答弁の矛盾釈明を(2020年11月26日配信『河北新報』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が東京都内のホテルに支援者らを集めて主催した「桜を見る会」前日の夕食会で、集めた会費と実際の支払額との差額を安倍氏側が補填(ほてん)していた疑いが強まった。安倍氏の関係者が認めた。補填額は計約900万円を超える可能性がある。

 有権者に会費を上回る飲食を提供したなどとして政治資金規正法違反や公選法違反(寄付行為)の疑いで告発状が出され、東京地検特捜部が任意で安倍氏の公設第1秘書らを事情聴取した。ぜひ立件し疑惑を解明してもらいたい。

 安倍氏は首相時代、国会で繰り返し補填を否定してきた。時の首相の事務所が金の問題で疑惑を持たれるのも問題だが、看過できないのは虚偽答弁をしたとみられることだ。安倍氏は国会で自ら釈明するべきだ。

 夕食会は安倍氏が首相に復帰した後の2013年に始まった。会費は1人5000円で、19年は安倍氏の地元・山口県の支援者ら約800人が参加している。

 会場はいずれも高級ホテル。野党が「会費が安すぎる。安倍事務所が差額を補填したのではないか」と追及した。後援会の政治資金収支報告書には記載が全くなかった。

 安倍氏は会費について「何回も使っていると、いちげんの方とで当然(扱いが)違う」と言い張った。収支報告書には「会場入り口で事務所職員が集金して、その場でホテルの領収書を渡し、会費はホテル側に渡した」ため記載義務はない、などと説得力に欠ける答弁に終始した。

 全ては飲食費の領収書や明細書を提出すれば明らかになったことだったが、安倍氏は「ホテルから発行されていない」として拒んだ。

 特捜部はホテル作成の領収書を入手しているとされ、補填は安倍氏の資金管理団体から支出された可能性が高い。とすれば、安倍氏の答弁は根底から覆されることになる。

 関係者によると、安倍氏は夕食会の問題発覚後の19年末、事務所に確認したが、秘書が「会費以外の支出はない」と回答。収支報告書に記載していなかったため、事実と異なる説明をしたという。

 高級ホテルで1人5000円のパーティーができないことぐらいは常識で考えても分かる。野党はホテルのホームページに「立食パーティーは1万1000円から」とあると指摘している。それでも秘書の説明を信じたのなら、おめでたいと言うほかない。うそをつかれたとしても安倍氏の責任は免れない。

 安倍氏は「(捜査に)全面的に協力している。今の段階で話をすることは差し控える」と述べたが、国会での発言は国会で弁明するのが筋だ。

 政治資金を巡る疑惑が浮上するたびに「秘書が、秘書が…」と政治家が秘書に責任を押し付ける、あしき前例を繰り返すのは許されない。



桜を見る会 安倍氏、説明責任果たせ(2020年11月26日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 安倍晋三前首相主催「桜を見る会」の前日に安倍氏の後援会が開いた夕食会の費用の不足分を、安倍氏側が補填(ほてん)していたことが明らかになった。東京地検特捜部は安倍氏の公設第1秘書を任意聴取するなどして立件の可否を検討している。

 安倍氏はこれまで補填の事実を否定してきた。事実と異なる答弁を国会で繰り返した責任は極めて重大であり、自ら説明責任を果たさなければならない。

 夕食会費用の補填は、有権者への金品提供を禁じる公選法違反(寄付行為)に当たる恐れがある。夕食会の収支は政治資金収支報告書に記載されておらず、政治資金規正法違反の可能性もある。

 安倍氏が首相在任中に主催したのは2013~19年の桜を見る会。19年には地元・山口の支援者ら約800人が参加した。このため安倍氏が多数の支援者を招き、公的行事を「私物化」していたのではないかと、国会などで批判が高まった。

 夕食会は15~19年の5年間に都内の二つの高級ホテルが会場となった。参加者の会費は1人5千円。野党は「安過ぎる」などとして、安倍氏側による補填の可能性を指摘していた。

 安倍氏周辺によると、5年間のホテルへの支払い総額は2千万円を超え、毎回約100万~250万円が不足した。安倍氏の資金管理団体「晋和会」が計900万円超を補填したとみられる。

 夕食会の問題発覚後の19年末、安倍氏が事務所に確認した際に秘書は「会費以外の支出はない」と回答した。この秘書は政治資金収支報告書に記載していなかったため、事実と異なる説明をしたという。

 関係者の言葉通りなら、安倍氏は補填の事実を知らずに発言していたことになるが、にわかには信じ難い。安倍氏は国会で、ホテル側から見積書や領収書などの発行はなかったと答弁していた。しかし、実際には安倍氏側がホテルの領収書を廃棄した疑いも浮上している。これまでの説明は説得力に欠けると言わざるを得ない。

 桜を見る会に安倍氏の支援者が多数招かれた問題は、内閣府が招待者名簿を廃棄したため全容解明には至っていない。森友、加計問題でも安倍氏は説明責任を果たすことを避けてきた。今回は国会答弁の内容が事実と異なることが明らかになった以上、うやむやにすることなく説明を尽くす必要がある。

 菅義偉首相は前政権の官房長官として安倍氏に対する疑惑の否定に努めた。首相就任後は、来年以降の桜を見る会を中止すると表明する一方、桜を見る会の再調査には消極的な姿勢を示してきた。菅氏の責任も問われることになるだろう。

 菅氏は安倍氏の国会招致を事実上拒否した。検察の捜査を待つまでもなく、国会で安倍氏が説明する場を設けるよう、首相自ら取り組むべきだ。



「桜」前夜祭の費用補塡 安倍氏の責任は免れない(2020年11月26日配信『毎日新聞』ー「社説」)

 「桜を見る会」の前夜祭について、安倍晋三前首相側が費用を補塡(ほてん)していたことが、明らかになった。安倍氏周辺が認めた。

 昨秋に問題が発覚して以降、安倍氏は国会で、参加者の会費だけで費用を賄い、事務所の負担はないとの答弁を繰り返してきた。それが虚偽だったことが判明した。

 一方で、安倍氏周辺は、本人は補塡を知らなかったと強調している。費用について問われた秘書が「会費以外の支出はない」と回答していたと説明している。

 しかし、疑問は解消されない。

 安倍氏は会場の高級ホテルから費用の明細書を受け取っていないとの主張を続けてきたが、捜査で明細書の存在が明るみに出た。

 事務所の負担分について、ホテルは安倍氏の資金管理団体宛てに領収書を発行したという。それを安倍氏側が廃棄した疑いもある。

 補塡の意図や原資も分かっていない。国会で大きく取り上げられたのに、安倍氏は秘書に通り一遍の確認で済ませたのか。安倍氏周辺の説明は、うのみにできない。

 一連の対応には、政治資金規正法違反や公職選挙法違反の疑いが生じている。

 取材によると、前夜祭の費用補塡は2013年の開始当初から行われていたが、政治資金収支報告書に記載していなかった。

 秘書はつじつまを合わせるために、安倍氏に補塡の事実を報告しなかったという。秘書に違法性の認識があったことは明らかだ。

 安倍氏の関与を含め、東京地検特捜部は捜査で全容を明らかにする必要がある。

 野党は衆参の予算委員会に安倍氏の参考人招致を要求したが、与党は拒否した。予算委で当時の官房長官として認識を問われた菅義偉首相は「前総理に確認し答弁してきた」と述べるにとどまった。

 虚偽答弁は、立法府を愚弄(ぐろう)するものだ。国会は安倍氏に説明を求め、真相を解明すべきだ。

 大勢の支持者を集めた行事で、法に抵触する疑いのある行為が長らく続いていた。安倍氏は、それを放置していたことになる。

 仮に補塡を知らなかったとしても、政治への信頼を損ねた責任は免れない。政治家として「秘書の責任」では済まされず、国会で自ら説明しなければならない。



予算委集中審議 感染対策の明確な指針が要る(2020年11月26日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスに関する与野党の論戦は、かみ合わなかった。危機をどう乗り越えるのか。政府は国民に明確な指針を発信すべきだ。

 衆参両院の予算委員会で、集中審議が行われた。感染症対策について、野党は、政府の観光支援策「Go To トラベル」に焦点を当てた。

 立憲民主党の枝野代表は「人の移動が活発になれば、感染が広がる」と述べ、中止を求めた。

 菅首相は「感染拡大の主要な原因であるとのエビデンス(根拠)は存在していない。経済を支える有力な事業だ」と反論した。

 政府の支援策により、疲弊した観光産業を下支えする意義は大きい。その効果で事業を継続できている企業も多いだろう。

 だが、感染が急拡大する局面になっても、政府が旅行を奨励し続けることは、果たして妥当なのか。感染拡大地域を目的地とする旅行を制限する一方で、その地域からの出発は補助し続けることにも、違和感が拭えない。

 感染者が増えた理由について、田村厚生労働相は「十分に感染防止策が講じられていない中で、人の移動が増えた」と答弁した。

 政府は、社会に緩みが生じないよう、マスクの着用や「3密」の回避といった基本的対策の徹底を改めて促さねばならない。

 国内の重症者数は最多の水準にあり、都市部の病床使用率も上昇している。PCR検査や医療提供体制の拡充が急務だ。

 日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を拒否した問題について、首相は「バランスの取れた活動を確保するため、適切に判断した」と述べるにとどめた。

 首相による任命は「形式的」とした過去の政府答弁との整合性は、放置されたままだ。首相は、任命拒否の理由や経緯を丁寧に説明することが不可欠である。

 安倍前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡っては、参加者が支払った会費と、実際の経費の差額を、安倍氏側が補填ほてんしていたことが判明した。政治資金規正法違反の疑いなどが指摘されている。

 安倍氏は昨年、国会で「後援会としての収入、支出は一切ない」と述べていた。補填が事実なら、答弁と矛盾する。立憲民主党や共産党は、事実関係を明らかにするよう要求した。

 行政のトップにいた者として、安倍氏には高い倫理観が求められる。誠実に対応し、適切に説明責任を果たしてもらいたい。




桜を見る会 安倍氏はしっかり説明を(2020年11月26日配信『産経新聞』-「主張」)

 政治家には説明責任がある。まして首相在任時の国会答弁が事実ではなかった可能性がある。

 捜査とは別に、自ら進んで経緯をつまびらかにすべきだろう。新型コロナウイルスの感染対策をはじめ、喫緊の課題は山積している。

 ずるずるとこの問題を長引かせることこそ最悪である。安倍晋三前首相には、迅速で明確な説明を求めたい。

 安倍氏の後援会が「桜を見る会」の前日に主催した夕食会で、会場となったホテル側への支払いの一部を安倍氏側が補填(ほてん)し、政治資金収支報告書に記載していなかったことが分かった。

 有権者への寄付を禁じる公職選挙法(寄付行為)や政治資金規正法に違反しないか、東京地検特捜部が調べている。特捜部の聴取に、安倍氏周辺はすでに、不足分の補填を認めているとされる。

 安倍氏はこれまで、国会での追及に何度も補填の事実を否定してきた。安倍氏周辺によれば、補填と報告書不記載を知る秘書が安倍氏に「払っていない」と虚偽の報告をしていたのだという。

 それが事実なら、安倍氏本人を刑事責任に問うことは極めて難しい。ただし、政治家としての責任は別である。

 安倍氏は「事務所としては(捜査に)全面的に協力している」と話している。同氏の国会招致を求められた菅義偉首相は「安倍氏は捜査に全面的に協力すると述べている。国会のことは国会で決めることだ」と事実上、拒否した。

 だが疑惑の構図は単純である。特捜部の捜査を待たずとも、事務所の内部調査で十分に事足りる。調査の不十分がこの事態を招いたとの反省があるなら、正確で詳細な内部調査結果を自ら公にし、謝るべきは謝ればいい。

 「桜を見る会」をめぐっては、詐欺罪で起訴された「ジャパンライフ」の山口隆祥被告が、同会の招待状を勧誘セミナーの宣伝に利用していたことが分かっている。いわば、多くの被害者が多額を失った詐欺事件の小道具に使われたことになる。山口被告を同会に招待した経緯についても、併せて明らかにすべきである。

 政治とカネをめぐるさまざまな事件で、「秘書が」「秘書が」と繰り返す政治家の情けない姿をみてきた。安倍氏には前首相として、そうした過去の醜態とは一線を画す潔い姿をみせてほしい。



「桜」巡る疑惑 安倍氏は国会で真実を(2020年11月26日配信『東京新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」前日の夕食会を巡る安倍晋三前首相の国会答弁は虚偽だった可能性が出てきた。森友問題でも事実と異なる政府答弁が139回もあった。安倍氏は進んで国会で真実を語るべきだ。

 激しい憤りを禁じ得ない。国会はいつから「虚偽答弁」がこれほどまかり通るような場に堕落したのか。三権分立や議会制民主主義を脅かす重大事である。にもかかわらず、政府や与党の危機感があまりにも乏しい。

 安倍氏の後援会が主催した夕食会を巡り、安倍氏側が2019年までの5年間、費用の不足分として総額約800万円を補填(ほてん)していた疑いがあることが分かった。安倍氏周辺は東京地検特捜部の任意の事情聴取に補填を認めているという。
 また、特捜部はホテル側から、安倍氏側の費用補填をうかがわせる領収書を入手したという。

 この問題を巡り、安倍氏は在任中、国会で「安倍事務所が補填した事実は全くない」と断言し、費用は個々の参加者とホテルの直接契約により支払われ「後援会としての収入、支出は一切ない」とも主張していた。

 補填が事実なら、政治資金規正法(不記載)や公職選挙法(寄付行為の禁止)違反に当たるばかりか、安倍氏は国会で虚偽の答弁を繰り返したことになる。

 夕食会に限らず「桜を見る会」を巡っては、会の招待者を安倍氏が「政治家枠」を使って増やし、自身の支持拡大に利用した「私物化」疑惑や、巨額詐欺事件で逮捕されたジャパンライフ元会長が招待された経緯、招待者名簿の短期間での廃棄など、多くの問題が解明されていない。

 一連の問題は政府や政治に対する信頼を著しく損ねる。国会は放置せず、行政監視機能や国政調査権を駆使して事実関係を徹底解明すべきだ。安倍氏には国会で説明責任を果たすよう求めるべきであり、虚偽答弁をすれば罰せられる証人として喚問してはどうか。

 学校法人「森友学園」への国有地売却を巡る問題では、安倍前政権下の17〜18年に国会で行われた政府答弁のうち、事実と異なる答弁が計139回に上ることも明らかになった。

 政府が虚偽答弁を繰り返せば、国会は正しい法案審議ができず、行政監視機能や国政調査権を適切に行使できない。唯一の立法府であり、国権の最高機関である国会の存在意義を脅かす重大事態であるとの問題意識を、与党を含む全国会議員が持つべきである。



前首相の答弁 政府は事実を確認せよ(2020年11月26日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 政府は前首相の虚偽答弁を見過ごすのか。

 桜を見る会前夜の夕食会を巡る安倍晋三前首相の過去の答弁である。きのうの衆院と参院の予算委員会で、菅義偉首相は捜査中であることを理由に、政府として真偽を確認しない姿勢を示した。

 安倍氏の答弁は事実と異なっていた可能性が濃厚である。憲法は国会を「国権の最高機関」と定め、内閣は国会に対し責任を負う。首相が国会で虚偽の答弁をすれば、国会審議は成り立たない。

 官房長官として安倍内閣を支えた菅首相も、安倍氏の説明に沿った答弁を何度もしてきた。虚偽答弁は菅首相も同様だ。きのうの予算委で菅首相は「安倍氏に確認していた」と述べた。客観的な事実確認を怠った責任は免れない。

 夕食会を巡り、安倍氏は不自然な答弁を繰り返してきた。ホテルとの契約は参加者で後援会に収支は発生していない、ホテルから明細書や領収書などは発行されていない、5千円の会費はホテルが設定し事務所は不足分を補填(ほてん)していない―などである。

 東京地検特捜部の調べや関係者の証言などで、事務所側が5年間で計900万円超を補填し、明細書や領収書も発行されていたことが分かっている。公選法や政治資金規正法に違反する疑いがある。

 夕食会の疑惑が広がったのは昨年11月だ。以降、安倍氏は何度も国会で同じ答弁を繰り返してきた。安倍氏の答弁が事実かどうかはホテル側に問い合わせれば、すぐに分かることだ。菅首相は官房長官として事実を確認するのが責任だったはずだ。国会と国民に対する背信行為である。

 きのうの予算委で立憲民主党の福山哲郎幹事長は菅首相に対し、行政府の長として虚偽答弁に対する認識を問いただした。

 菅首相は「事実が違った場合は私にも責任がある」と述べている。それならば、捜査の状況に関係なく、答弁の真偽を安倍氏やホテルに確認して、国会に報告するのが政府の責任ではないか。

 野党は安倍氏の国会招致を要求したのに与党側は拒否した。政府にないがしろにされたのは、与党も同じである。政府の虚偽答弁を容認することは、国会の存立基盤にかかわることを与党も認識しなければならない。

 学校法人「森友学園」への国有地売却問題を巡る安倍政権下の国会質疑でも、事実と異なる答弁が計139回あったことが分かっている。これ以上の国会軽視は看過できない。



「桜」夕食会 国民へのうそ許されない(2020年11月26日配信『新潟日報』-「社説」)

 事実なら、これまでの国会答弁や記者への説明と大きく矛盾し、国民にうそをついていたことになる。決して許されない。

 捜査による真相の徹底究明と同時に、安倍晋三前首相や菅義偉首相が国会などできちんと説明責任を果たすよう求める。

 安倍前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、会場への支払いが参加者の会費だけで賄えず、昨年までの5年間で900万円以上とみられる差額分を安倍氏側が補塡(ほてん)していたことが分かった。

 この問題では5月以降、学者や弁護士が安倍氏や公設第1秘書らに対する告発状を提出。差額を提供した公選法違反(寄付行為)や政治資金規正法違反の疑いを指摘していた。

 東京地検特捜部が既に捜査を進め、公設第1秘書らの任意の事情聴取にも乗り出している。安倍氏周辺は聴取に対し補塡を認めているという。

 会場のホテル側が作成した明細書などがあり、安倍氏側が費用の一部を補塡した内容が示されていることも判明している。

 桜を見る会の問題は昨年11月に国会質問で取り上げられた。会は第2次安倍政権下で支出額や参加者が膨らみ、前首相の後援会からの出席者が多く、「公金の私物化」と批判された。

 連動する形で、都内の高級ホテルで開かれた前夜の夕食会についても問題視された。野党は1人5千円の会費について「安すぎる」と追及していた。

 あきれるのは安倍氏や政府側の説明が軒並み覆ったことだ。

 安倍氏は当時、夕食会費用の穴埋めに関して「安倍事務所や後援会としての収入、支出は一切ない」と否定し、それを根拠として「政治資金収支報告書への記載は必要ないと認識している」と語っていた。

 3月には国会で「事務所側が補塡した事実は全くない」と言い切っている。

 安倍氏は夕食会問題が発覚した後の昨年末に秘書に確認したが、その際の回答は「会費以外の支出はない」だったという。

 秘書は収支報告書に記載していなかったため事実と異なる説明をしたとされるが、事の重大さを思えば理解しがたい。安倍氏が裏付けを取らず、うのみにしたことも引っ掛かる。

 国会答弁など国民に首相の認識を伝える場での発言が虚偽だったなら深刻だ。国民軽視、国会軽視というほかない。「秘書のせい」を盾に幕引きできると考えているなら甘すぎる。

 菅首相は問題発覚当時、官房長官だった。

 安倍氏の説明に沿った答えが目立ち、2月には、ホテルから明細書の発行は受けていないとした安倍氏の答弁が事実と異なるとの野党の指摘に「(安倍)首相が答弁したことが正しい」と強調していた。

 25日の衆参両院予算委員会集中審議では菅首相も野党の追及を受けたが、当然だろう。

 過去の答弁は信頼に足るものではなかった。それが明らかになった以上、安倍氏を招致し改めて徹底的に審議すべきだ。



うそをつく権力者(2020年11月26日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 仏教の世界では〈生きとし生けるものを真の教えに導くために用いる仮の手段〉を意味したという。「方便」という言葉である。〈目的を果たすために用いる便宜的な手段〉を指すこともある

▼「うそも方便」という。そんな意図があったのかどうか。前首相の安倍晋三さんの周囲では、事実と異なる説明が横行していた。森友学園に国有地が格安で払い下げられた問題を巡り、政府が国会で139回にわたって事実と異なる答弁をしていたことが分かった

▼学園との応接録があったにもかかわらず、存在しないと言っていた。土地の賃貸を検討していた際、学園側に貸付料の概算を提示していたのに、示していないと説明していた。答弁したのは麻生太郎財務相や佐川宣寿財務省理財局長らの面々である

▼「桜を見る会」問題では安倍さん自身が事実と異なる説明をしていた疑いが浮上した。前日の夕食会に参加した支援者の会費について「事務所側が費用を補塡(ほてん)した事実はない」と説明していたが、実際は900万円超を穴埋めしていた可能性がある

▼事務所の担当者は支出を政治資金収支報告書に記載していなかったため、安倍さんに事実を伝えなかったという。これが本当なら、安倍さんの周囲の人々にとって事実とはそれほどに軽いものなのか

▼うそをつく権力者は、国民との約束をたやすく破るかもしれない。事実を軽視する風潮も現政権に受け継がれているとしたら、背筋が寒くなる。うそを〈便宜的な手段〉にしてはならない。



「桜を見る会」疑惑 安倍氏は国会で説明せよ(2020年11月26日配信『琉球新報』-「社説」)

 一国の首相が国民の税金を私物化して、国会で虚偽答弁を繰り返したのか。

 安倍晋三前首相側が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、会場だったホテル側が作成した明細書などがあり、安倍氏側が費用の一部を補填(ほてん)した内容が示されていることが明らかになった。

 安倍氏は国会などで「事務所や後援会の収入、支出は一切ない」と述べ、収支報告書の記載も不要と説明していた。

 菅義偉首相は25日の衆院予算委員会で安倍氏の国会招致を事実上拒否した。都合の悪い事実にふたをすることは許されない。安倍氏は国会で説明責任を果たす義務がある。

 夕食会は「安倍晋三後援会」が主催し、2013~19年に東京都内の二つのホテルで開かれた。会費は1人5千円で、19年は地元・山口の支援者ら約800人が参加した。

 19年までの5年間で支払総額は2千万円を超えたが、参加者の会費だけでは足りず、差額分の計約800万円を安倍氏側が負担したという。

 安倍氏周辺は東京地検特捜部の任意の事情聴取に、差額分を補填したことを認めている。不足分は安倍氏の資金管理団体「晋和会」から支出された疑いがある。

 しかし、晋和会の政治資金収支報告書に夕食会に関する記述はない。晋和会が補填したのなら政治資金収支報告書への不記載となり、政治資金規正法に違反する。さらに有権者への寄付を禁じる公職選挙法に抵触する恐れがある。

 安倍氏はこれまで、夕食会を含めた全費用は参加者の自己負担で、安倍事務所や後援会としての収入、支出はなかったと強調した。会費についても会場入り口で安倍事務所職員が集金しホテル側に届け、参加者にはホテル名義の領収書をその場で渡したと説明している。ホテルからの明細書発行を否定していた。

 今回ホテルから安倍氏側が補填したことを示す明細書が示されたことで、安倍氏が国会でうそをついたことなる。

 第2次安倍内閣で桜を見る会の招待者を首相や与党政治家が推薦する「政治枠」が増加した。安倍氏の地元後援会員が多数招かれ、参加者が約1万8千人にまで膨れ上がった。「私人」であると閣議決定した首相夫人が推薦した人物もいた。公費(税金)と政治の私物化である。預託商法で大勢の被害者を出したジャパンライフの元会長が首相推薦枠で招待された疑惑も浮上したが、未解明だ。

 政府は実態解明の鍵となる招待者名簿を廃棄したと説明した。公文書は国民の知的財産であり政府の所有物ではない。意図的に廃棄したのなら民主主義の根幹をないがしろにする行為だ。

 安倍氏だけでなく当時官房長官だった菅首相が実態を知らなかったとは考えにくい。安倍氏を証人喚問して国会で真相を明らかにすべきだ。同時に、特捜部は全容解明に全力を尽くしてもらいたい。



口と愚痴、意志と意地(2020年11月26日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 どこで聞いたか、何で目にしたか。こんな言い回しがある。「口も濁れば愚痴になる。意志も濁れば意地になる」。口と愚痴、意志と意地。濁点があるかないかで、こんなにも違う

◆後援会主催の「桜を見る会」夕食会の問題が再燃し、安倍晋三前首相の政治姿勢に濁点がつくかどうかの瀬戸際である。多弁がやがて愚痴になり、「問題はない」と言い切ってきた意地も心で膨らんでいるだろう

◆でも誰が見てもおかしい。高級ホテルでの飲食代が1人5千円。これでまかなえないと思うのが普通だが、後援会は補填(ほてん)していないと安倍さんは言い張った。ではホテルの明細書をと求めても「ない」と言う

◆告発を受けた東京地検特捜部の事情聴取で、ようやく疑惑の輪郭が見えてきた。安倍さんの側も一部補填を認めたようだ。ただし秘書の判断で。とかく政界の不祥事は「秘書が…」になりがちなのだが、またかとうんざりする。ここは特捜の意地を見たい

◆昨日の紙面に、いい言葉があった。トランプ米大統領が敗北を認めず、政権移行への協力もしない。その姿勢にいら立って共和党の長老議員が言った。「国民は公職者の最後の振る舞いを記憶にとどめる」と

◆最後かどうかはともかく、安倍さんの振る舞いも記憶にとどめよう。



疑惑再燃(2020年11月26日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 あるインタビューで元首相の福田康夫氏が「宰相の矜持(きょうじ)」について自説を述べている。「持てる権力をどこまで抑制的に行使するか、その度合いではないかと私は考えています」(「大宰相第7巻」講談社文庫)

▲首相が権力をフルに使えば、政策でも人事でも多くのことを決められると福田氏。首相時には「民主主義の原点」として公文書を管理する法整備に力を入れた。文書で残る透明性には権力者を控えめにさせる効果がある。本人も現職時はあれこれ批判を浴びたが、政治は謙虚でなければと自戒していたのだろう

▲安倍晋三前首相への疑惑が再燃した。後援会が主催した夕食会を巡り、参加者の会費でまかなえなかった分を補塡(ほてん)していた疑いが強まった。東京地検が捜査中という

▲事実ならば支援者を安く飲み食いさせるため、身銭を切ったということか。現在、国会議員夫妻が票を買ったとして公判中だが、やっていることの本質が変わらない気がする。似顔絵入りのうちわや高級果物を配ったとされる過去の議員より悪質に思える

▲忘れてならないのは疑惑発覚後、安倍前政権は従来の法解釈を強引に変更し、検察トップに都合のいい人物を据えようとしたことだ。捜査を予期した上での登用と映ることを恐れぬ、権力の乱用ぶりだった

▲そんな安倍氏に自分は知らなかったとは言ってほしくない。真相を語ってもらわねば。このままでは最長宰相の内実が色あせる。



通じない言葉(2020年11月26日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)
5:15

 言葉の通じない相手と気持ちをかよわせるのはむずかしい

◆むかし英国で日本人がレストランに立ち寄った。鮭にキュウリをあしらった料理がおいしそうなので、「サーモン(鮭)、キューカンバー(キュウリ)」と頼んでみたが一向に通じない。ほかの客の発音に聞き耳を立てると、どうも「サルモ、キューカ」に聞こえる。早速「猿も休暇を」と日本語で注文すると、すぐに料理が運ばれてきた

◆似たような話は幕末にもあった。黒船の来航後、日本にやってきた外国人との商談には「浜千鳥」という言葉が欠かせなかった。「これ、いくら?」という英語「ハウマッチ・ダラーズ?」を「浜千鳥」と覚え、値段の話だと見当をつけたという

◆先人たちの涙ぐましい努力に比べ、近ごろは日本人同士でも意思疎通は容易でない。「桜を見る会」の前夜、高級ホテルで支持者を招いた会食が「これ、いくら?」と国会で問われても、「ホテル側が会費を設定し、参加者の自己負担で支払われている」。差額を900万円以上も肩代わりした疑いが捜査で浮上すると、「もう国会で答弁させていただいている」…

◆在任中、あれほど頑張って小さな布マスクをつけておいでだった前首相は、久々にお見受けするとマスクが大きい。ひと言もしゃべりません、という意思だけは、しっかり伝わってくる。



桜を見る会前夜祭(2020年11月26日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆安倍氏は国会で直接説明を◆

 安倍晋三前首相の後援会が都内のホテルに支援者らを集め開催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が任意で安倍氏の公設第1秘書らを事情聴取した。ホテルへの支払総額と支援者らの会費との差額分を補塡(ほてん)したなどとして、公選法違反(寄付行為)や政治資金規正法違反の疑いで安倍氏らに対する告発状が出されている。

 安倍氏側が補塡した差額分は、昨年までの5年間で900万円を超える可能性があることが関係者への取材で判明した。さらに、収支を政治資金収支報告書に記載しなかった疑惑が指摘されている。

 問題発覚後の昨年末、安倍氏は参院本会議で「後援会としての収入、支出は一切ないことから、政治資金収支報告書への記載は必要ない」とし、野党から主張の裏付けとなるホテルの明細書を提示するよう求められても「明細書の発行は受けていない」とかわし続けた。

 だが、明細書は存在し、安倍氏側による一部補塡を示す内容とされる。特捜部は立件の可否を判断するに当たり、安倍氏への聴取も検討しているもようだ。補塡が事実なら、安倍氏はうそを重ねてきたことになる。

 安倍氏は政治とカネの問題が起きるたび「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」としてきた。言葉通り、ホテルから明細書を取り寄せるなど資料を整え説明を尽くすことが求められる。もはや何も語らず、やりすごせるような状況ではない。

 安倍氏の公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」は安倍政権発足以降、2013年から19年にかけて都内のホテルに地元・山口の支援者らを呼び、桜を見る会の前日に夕食会を開催。19年は約800人が参加し、会費は1人5千円。ところが会場となったホテルのパーティープランは1人1万1千円からで、会費だけでは賄えない。差額を安倍氏側が補塡したのであれば、公選法が禁じる有権者への寄付行為に当たる。

 さらに後援会の収支報告書に収支の記載が一切ない点については、会場入り口で安倍事務所職員が支援者らから集金し、ホテルの領収書をその場で手渡し、集めた会費をホテル側に渡したと説明。収支報告書への記載義務はないと主張した。

 桜を見る会を巡っては、安倍氏の後援会関係者が多く招かれ「私物化」しているとの批判が高まった。しかし、内閣府が早々に19年分招待者名簿を廃棄し、解明に至っていない。安倍氏は森友、加計問題でも、まともに説明責任を果たしてこなかった。今回も疑惑をうやむやにするようなら、国民の理解は得られない。国会で安倍氏に直接説明を求め徹底解明すべきだ。



桜を見る会(2020年11月26日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 なんとも奇っ怪な答弁だった。1月の衆院予算委員会。安倍首相(当時)の地元事務所が「桜を見る会」に支援者らを多数招待したことをただされたときの首相の発言「募集でなく募っているという認識」。

 募っていても募集していないとは―。禅問答のようだといえば、禅僧の方々に失礼か。思えば安倍氏の首相在任中は、このように質問に真摯(しんし)に向き合おうとしない態度がよく見られた。それで森友、加計学園問題などに、今も多くの国民が納得していないままだ。

 すべてうやむやかと思われたが、事態は再び動く。「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、会場となったホテル側への支払いが参加者から集めた会費だけでは賄えず、安倍氏側が差額を補塡(ほてん)したことが明らかになった。差額は昨年までの5年間で900万円を超えるという。

 「後援会の支出は一切ない」という、これまで安倍氏が繰り返してきた答弁とは食い違うため野党は安倍氏の国会招致を要求。菅義偉首相は事実上拒否したが、しばらくはこの問題で紛糾しそうだ。ただでさえ刻一刻と変わる新型コロナウイルスへの対応など、議論すべき課題は山積しているのに。

 当の安倍氏。おととい、報道陣から説明責任を問われると「国会で答弁させていただいてるんですが」と気色ばんだが、その答弁が事実とは異なっていた。結果「答弁はしても、答えてはいないのでは」と、指摘もこれまた奇っ怪な日本語になってしまい…。



「桜を見る会」疑惑 安倍氏は国会で説明せよ(2020年11月26日配信『琉球新報』-「社説」)

 一国の首相が国民の税金を私物化して、国会で虚偽答弁を繰り返したのか。

 安倍晋三前首相側が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、会場だったホテル側が作成した明細書などがあり、安倍氏側が費用の一部を補填(ほてん)した内容が示されていることが明らかになった。

 安倍氏は国会などで「事務所や後援会の収入、支出は一切ない」と述べ、収支報告書の記載も不要と説明していた。

 菅義偉首相は25日の衆院予算委員会で安倍氏の国会招致を事実上拒否した。都合の悪い事実にふたをすることは許されない。安倍氏は国会で説明責任を果たす義務がある。

 夕食会は「安倍晋三後援会」が主催し、2013~19年に東京都内の二つのホテルで開かれた。会費は1人5千円で、19年は地元・山口の支援者ら約800人が参加した。

 19年までの5年間で支払総額は2千万円を超えたが、参加者の会費だけでは足りず、差額分の計約800万円を安倍氏側が負担したという。

 安倍氏周辺は東京地検特捜部の任意の事情聴取に、差額分を補填したことを認めている。不足分は安倍氏の資金管理団体「晋和会」から支出された疑いがある。

 しかし、晋和会の政治資金収支報告書に夕食会に関する記述はない。晋和会が補填したのなら政治資金収支報告書への不記載となり、政治資金規正法に違反する。さらに有権者への寄付を禁じる公職選挙法に抵触する恐れがある。

 安倍氏はこれまで、夕食会を含めた全費用は参加者の自己負担で、安倍事務所や後援会としての収入、支出はなかったと強調した。会費についても会場入り口で安倍事務所職員が集金しホテル側に届け、参加者にはホテル名義の領収書をその場で渡したと説明している。ホテルからの明細書発行を否定していた。

 今回ホテルから安倍氏側が補填したことを示す明細書が示されたことで、安倍氏が国会でうそをついたことなる。

 第2次安倍内閣で桜を見る会の招待者を首相や与党政治家が推薦する「政治枠」が増加した。安倍氏の地元後援会員が多数招かれ、参加者が約1万8千人にまで膨れ上がった。「私人」であると閣議決定した首相夫人が推薦した人物もいた。公費(税金)と政治の私物化である。預託商法で大勢の被害者を出したジャパンライフの元会長が首相推薦枠で招待された疑惑も浮上したが、未解明だ。

 政府は実態解明の鍵となる招待者名簿を廃棄したと説明した。公文書は国民の知的財産であり政府の所有物ではない。意図的に廃棄したのなら民主主義の根幹をないがしろにする行為だ。

 安倍氏だけでなく当時官房長官だった菅首相が実態を知らなかったとは考えにくい。安倍氏を証人喚問して国会で真相を明らかにすべきだ。同時に、特捜部は全容解明に全力を尽くしてもらいたい。



菅首相の国会答弁(2020年11月26日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

無責任ぶりが際立つばかりだ

 菅義偉首相が出席し、衆参両院で予算委員会の集中審議が行われました。新型コロナウイルス感染拡大に対する政府の無策や、「桜を見る会」前夜祭をめぐる安倍晋三前首相側の費用補てん問題を中心に、野党は首相をただしました。首相はコロナ感染を広げた「Go To」事業の誤りをあくまで認めず、「桜」前夜祭での安倍氏の国会の虚偽答弁についても見解を示すことさえ拒みました。あまりに無責任です。国政の焦点課題でまともに議論しようとしない姿勢は大問題です。政権を担う資格そのものが問われます。

前首相のウソ放置なのか

 都内の高級ホテルを会場に開かれてきた「桜」前夜祭の費用の一定額を補てんしていたと安倍氏の周辺が認めたことは、補てんを否定していた安倍氏の国会答弁を根底から覆すものです。補てんしていた額は2015~19年で800万円以上とも、916万円とも報じられています。ホテルが発行した明細書や領収書の存在も明らかになりました。「明細書はない」などと強弁してきた安倍氏のウソはいよいよ動かせません。

 現職の首相が1年にわたって国会を欺き続けたことは、国会審議の前提を崩すものであり、民主主義を根幹から揺るがす重大事態です。集中審議では、日本共産党の宮本徹衆院議員と田村智子参院議員をはじめ、立憲民主党などの議員が、「桜」疑惑を取り上げました。ところが菅首相は、安倍事務所のことであり「私の立場では答えられない」とか、検察の捜査中を口実に「答弁を差し控える」と言うばかりです。安倍氏が虚偽答弁をしていた可能性についても答えません。菅氏が官房長官として、安倍氏の主張に沿った国会答弁をしていたことの責任を問われると、「(安倍氏に)確認していた」と居直りました。

 事実をきちんと確認をせず、安倍氏のウソ答弁をおうむ返しにして、真相を隠ぺいする片棒を担いできたことについて菅首相は責任や痛みを感じないのか。首相の開き直りは、通用しません。

 菅首相は自らの過去の答弁を反省し、「桜」疑惑の全容解明に動くべきです。安倍氏周辺が補てんを認めたことは、いままでと異なる新たな局面です。捜査当局任せにするのでなく、明細書などの資料提出をはじめ国会で徹底解明することが急務です。安倍氏の招致では、ウソを言えば偽証罪に問われる証人喚問として行うことが不可欠です。

 菅首相はコロナ感染対策でも反省がありません。「Go To トラベル」が感染を広げるきっかけになったと専門家の指摘が続いているのに、「Go To」事業に固執し、一部見直ししかしません。「第3波」到来で、重症患者が急増し、「医療崩壊」が現実のものになっています。雇用も暮らしも深刻で「このままでは年を越せない」と国民の悲鳴が上がっています。従来型の対策から一歩も出ない姿勢を改めるべきです。

国民の苦境を直視せよ

 2020年度第2次補正予算の予備費約10兆円のうち使われていない7兆円以上の使途を、菅政権は臨時国会中に明らかにすべきです。PCR検査の戦略的な抜本拡充、医療機関への強力な財政支援、事業と雇用、暮らしを守り抜くための具体的な対策を一刻も早く示すことが政府の責任です。





桜を見る会 安倍氏自ら真相を語れ(2020年11月25日配信『北海道新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、会場だったホテルが作成した記録に、安倍氏側が費用の一部を補填(ほてん)した内容が記されていることが判明した。

 補填額は昨年までの5年間で計約800万円に上る可能性があるという。

 東京地検特捜部は既に安倍氏の公設第1秘書らを任意で事情聴取している。

 費用の穴埋めを一貫して否定してきた安倍氏の国会答弁が虚偽だった疑いが改めて浮上した。安倍氏は国会で真相を説明すべきだ。

 桜を見る会は安倍氏の後援会関係者が数多く参加し、私物化したと指摘された。当時官房長官だった菅義偉首相も国会で安倍氏の説明を追認する答弁を続けてきた。無関係では済まされない。

 政府が野党からの資料請求の直後に招待者名簿を廃棄した不自然な経緯も含め、国会としても疑惑の徹底解明が必要である。

 特捜部は有権者への金品提供を禁じる公選法や、政治団体の収支の記載を義務づける政治資金規正法に抵触しないか調べている。

 安倍政権は官邸に近い法務官僚を検事総長にしようとしたとの疑念も持たれた。検察は疑惑がある限り捜査を尽くすのが当然だ。

 安倍氏は国会で、格安といわれた1人5千円の会費について「参加者の大多数が宿泊者という事情などを勘案し、ホテル側が設定した」と説明し、明細書の提示もなかったと主張した。

 しかし、実際は会費だけではホテルへの支払いが賄えず、安倍氏側が穴埋めしていた疑いがある。今回、その内訳を確認できる領収書をホテル側が作成していたことが分かった。

 「ホテル側との契約主体は支援者である参加者だ。事務所の収支や支出は一切ない」と述べ、収支報告書への記載は必要ないとしてきた安倍氏の説明とも矛盾する。

 野党は安倍氏の国会招致を求めている。首相時代の虚偽答弁が疑われる重大な事態であり、本人が説明する責務がある。捜査を理由に拒むことは許されない。

 菅首相は来年以降の桜を見る会の中止を表明した。中止しても疑惑が消えるわけではない。招待者の人選や名簿データの有無などの徹底した検証が求められる。

 森友・加計学園の問題でも安倍氏の国会答弁の信ぴょう性に疑問がくすぶる。政権中枢にいた菅首相の責任は重い。真相究明なしに国民の信頼は得られない。



桜を見る会前夜祭(2020年11月25日配信『東奥日報』-「時論」/『茨城新聞・山陰中央新報・佐賀新聞』-「論説」)

自らの言葉通り説明を

 安倍晋三前首相の後援会が都内のホテルに支援者らを集め開催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が任意で安倍氏の公設第1秘書らを事情聴取した。ホテルへの支払総額と支援者らの会費との差額分を補塡(ほてん)したなどとして、公選法違反(寄付行為)や政治資金規正法違反の疑いで安倍氏らに対する告発状が出されている。

 このホテルで1人当たりの飲食代は少なくとも1万1千円とされる。しかし参加者が支払った会費は5千円。足りない分を安倍氏側が穴埋めし、収支を政治資金収支報告書に記載しなかった疑惑が指摘され、安倍氏は国会で「事務所から費用の補塡はない」などとする説明を繰り返してきた。

 野党から主張の裏付けとなるホテルの明細書を提示するよう求められても「明細書の発行は受けていない」と、かわし続けた。だが明細書は存在し、安倍氏側による一部補塡を示す内容とされる。特捜部は立件の可否を判断するに当たり、安倍氏への聴取も検討しているもようだ。補塡が事実なら、安倍氏はうそを重ねてきたことになる。

 安倍氏は政治とカネの問題が起きるたび「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」としてきた。その言葉通り、疑惑を巡りホテルから明細書を取り寄せるなど資料を整えた上で、説明を尽くすことが求められる。もはや何も語らず、やりすごせるような状況ではない。

 安倍氏の公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」は安倍政権が発足して以降、2013年から19年にかけて都内のホテルに地元・山口の支援者らを呼び、桜を見る会の前日に夕食会を開催。15年からの5年間は二つのホテルが会場となり、19年は支援者ら約800人が参加した。会費は1人5千円だった。

 ところが会場となったホテルのパーティープランは1人1万1千円からで、会費だけでは賄えない。ホテルへの支払総額は15年からの5年間で2千万円を超え、集めた会費との差額は計約800万円に上る可能性があり、これを安倍氏側が補塡したのであれば、公選法が禁じる有権者への寄付行為に当たる。安倍氏は補塡を全面否定した。

 さらに後援会の収支報告書に収支の記載が一切ない点については、会場入り口で安倍事務所職員が支援者らから集金し、ホテルの領収書をその場で手渡し、集めた会費をホテル側に渡したと説明。収支報告書への記載義務はないと主張した。

 これに対し野党はホテル側の領収書や明細書の提出を要求した。しかし安倍氏は拒んだ。また桜を見る会を巡っては、安倍氏の後援会関係者が多く招かれ「私物化」しているとの批判も広がりを見せたが、内閣府が早々に19年分招待者名簿を廃棄していたため、いまだ解明に至っていない。

 安倍氏は森友、加計問題でも、さしたる根拠も示さず、ひたすら疑惑を否定し、まともに説明責任を果たしてこなかった。森友問題で元財務省近畿財務局職員の妻が「夫は決裁文書改ざんを強制され、自殺に追い込まれた」と、国と当時の財務省幹部に賠償を求め提訴したが、菅義偉首相も調査に動こうとしない。

 ここで、また桜を見る会前夜祭の疑惑をうやむやにするようなら、国民の理解は得られない。検察の捜査を待たず、国会で安倍氏に直接説明を求め徹底解明すべきだ。(共同通信・堤秀司)



分かりやすく説明してもらいたい(2020年11月25日配信『東奥日報』-「天地人」)

小欄で1週間前、パリで活躍する三沢市出身のパティシエについて書いた。その際、手元の辞書で「パティシエ」を引いたところ、20年以上前の辞書だったせいか載っていなかった。職場に備え付けの数年前の辞書には収録。辞書は古いと役に立たないこともあるということだ。

 9年ぶりに全面改訂された「新明解国語辞典」(三省堂)を買った。同辞典は1972年誕生。今回改訂では「ほぼほぼ」などの新語を含め1500語を追加、総収録項目数は7万9千に。

 新規項目には「クラスター(感染者集団)」や「ロックダウン(都市封鎖)」など、新型コロナに関する言葉が複数あった。最近のニュースに登場する「煽(あお)り運転」なども目を引く。

 言葉は生き物と言われ、辞書の内容も時代を反映する。安倍政権の頃、流行語にもなった「忖度(そんたく)」。近年、特に立場が上の人の意向を推測し、盲目的にそれに沿うように行動することの意-などとする説明が具体的で理解しやすい。「政治家の意向を忖度し、情報を隠蔽(いんぺい)する」との例文も加わった。

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡る疑惑が再び注目を集めている。安倍氏は「費用の補填(ほてん)はない」と説明してきたが、それと食い違うような領収書があったというのは、どうしたことか。辞書の語釈のように、分かりやすく説明してもらいたい。



安倍氏の「桜」前夜祭 国会答弁との矛盾説明を(2020年11月25日配信『毎日新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が「桜を見る会」に合わせて主催した前夜祭について、安倍氏側が費用を補塡(ほてん)していた疑いがあるとして、東京地検特捜部が捜査している。

 前夜祭は東京都内の高級ホテルで、参加者から1人5000円の会費を集めて開かれてきた。

 だが、会費の総額を上回る費用が、ホテルに支払われていた疑いが捜査で浮上した。その差額は昨年までの5年間で、計約800万円に上るという。

 収支は後援会の政治資金収支報告書に記載されていない。後援会が差額を補塡していたのならば、収支報告書への不記載となり、政治資金規正法に違反する。

 後援会の負担で会費以上のサービスが提供されていれば、有権者への寄付を禁じた公職選挙法に抵触する可能性もある。法学者たちが安倍氏らを刑事告発していた。

 安倍氏は国会で「ホテル側が会費を設定し、参加者の自己負担で支払われている」と述べ、補塡を否定していた。差額を支払っていたとすれば、答弁と矛盾する。

 収支報告書に記載しなかった理由については「受付で事務所職員が会費を集め、ホテル側に手渡した。後援会としての収入、支出は一切ない」と強調した。ホテルと契約したのは、参加者個人だと語っていた。

 ホテル側から明細書は受け取っていないと主張し、再発行を求めることもかたくなに拒んだ。

 こうした説明に対しても、疑念が生じている。

 特捜部は、後援会の代表を務める公設第1秘書らから任意で事情聴取している。今後、安倍氏の聴取も検討するという。捜査を尽くして全容を解明してもらいたい。

 安倍政権下では、小渕優子衆院議員が後援会主催の観劇会を巡る不明朗な会計問題で、経済産業相を辞任している。

 特捜部の捜査が報道された後、安倍氏は「事務所として捜査に協力していくが、途中経過なので今の段階で話をするのは差し控えたい」と話すにとどまっている。

 しかし、首相として行った国会答弁は重い。それとの矛盾が生じた以上、国会で改めて説明すべきだ。やましいことはないというのならば、政治倫理審査会の開催を求める方法もある。



「桜」疑惑で聴取 検察の独立を示すとき(2020年11月25日配信『東京新聞』-「社説」)

 「桜を見る会」をめぐる疑惑で、安倍晋三前首相の秘書らが事情聴取された。前日の夕食会の費用負担では前首相の国会答弁と矛盾する新疑惑も浮かんだ。権力に対峙(たいじ)する検察力を発揮してほしい。

 事態は深刻だ。安倍前首相の後援会が2013年から19年にかけ、「桜を見る会」の前日に、東京都内の高級ホテルで前夜祭を開催した。地元支援者が集まり、会費は1人5000円だった。だが、「安すぎる。安倍氏側が費用を補填(ほてん)したのではないか」との疑惑が国会で追及された。

 前首相の答弁はこうだ。「安倍事務所の職員が会場入り口で会費を受け取り、その場でホテル側に現金を渡した」「収入、支出は一切なく、政治資金収支報告書への記載は必要ない」「安倍事務所が補填した事実は全くない」と。

 市民団体などが政治資金規正法違反や公職選挙法違反の罪で告発したのを受け、東京地検が公設第一秘書や会計責任者らへの任意での事情聴取を進めてきた。その結果、安倍事務所側が数年間で約800万円の補填をしていた疑いが新たに判明した。

 夕食会にかかった費用は集めた会費だけでは到底、足りなかったのだ。前首相の答弁とは明らかに食い違う。政治団体の収支の記載を義務づけた規正法にも、選挙区内での寄付を禁じた公選法にも反する可能性がある。

 前首相が補填の事実を知っていれば、虚偽の国会答弁をしていたことにもなる。仮に知らなかったとしても、野党が「ホテル側などに確認を」などと求めていたのだから、前首相側はいくらでも事態を把握できたはずである。どちらであっても議会や国民への背信行為には違いなかろう。

 もはや言い逃れはできない。誠心誠意の気持ちで国民に説明すべきであるし、東京地検には粛々と調べを尽くすことを求める。何より東京地検には過去にロッキード事件やリクルート事件など政界腐敗に切り込んだ歴史がある。

 それゆえなのか、安倍氏は首相時代に検察幹部の人事に介入しようとした。いわゆる黒川検事長問題である。

 検察官の定年を定めた検察庁法があるのに、国家公務員の定年延長規定を用いるという解釈変更を強行したが、世論の猛反発もあって挫折した。

 検察が独立していないと政治権力へのチェックはできない。「桜」の疑惑解明は、検察の独立と良心を示す機会でもある。



江戸当時の民衆歌謡、端唄の「猫じゃ猫じゃ」の流行は文政とい…(2020年11月25日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 江戸当時の民衆歌謡、端唄の「猫じゃ猫じゃ」の流行は文政というから約200年前である。歌詞が面白い。<猫じゃ猫じゃとおっしゃいますが 猫が下駄履(げたは)いて絞りの浴衣でくるものか>

▼恋仲の相手と密会でもしていたか。それを誰かに見とがめられ、つい「猫じゃ猫じゃ」と無理な弁解をしたが、もちろん、猫は下駄を履かないし、浴衣も着ない。事情はバレている

▼「支払っていない、支払っていない」とおっしゃいますが、通らぬ弁解だったのか。安倍前首相側主催の「桜を見る会」の前夜祭の会費問題である

▼都内の高級ホテルでの飲食付きのパーティー。安倍氏側は会費について、すべて参加者の自己負担と説明していたが、安倍氏側が一部を補填(ほてん)していた可能性を示すホテル側の明細書が出てきたと報じられている

▼明細書によれば、ホテルへの支払額が会費の総額を上回っているという。合わぬ勘定は数百万円。事実なら、有権者への政治家の寄付行為であり、公選法に触れる

▼安倍氏の公設第一秘書らが東京地検特捜部から任意で事情聴取されたと聞く。捜査を待つが、首相当時、国会で「補填したという事実は全くない」と答弁していた。時の首相が国民に平然と、「猫じゃ猫じゃ」を歌ったのだとしたら、こちらも怒声と泣き声で合いの手を入れる。<おっちょこちょいのちょい、おっちょこちょいのちょい>



安倍氏前夜祭 国民をいつまで欺くのか(2020年11月25日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 国会で虚偽答弁を重ねていたのか。

 安倍晋三後援会が主催した「桜を見る会前夜祭」を巡る問題だ。会場となったホテルの明細書に、安倍氏側が費用を補填(ほてん)した内容が示されていることが分かった。

 従来の安倍氏の説明と合致しない。有権者への寄付を禁じた公職選挙法、収支報告の義務がある政治資金規正法に抵触する疑いが極めて濃くなっている。

 桜を見る会は、国の予算を使い各界で功績や功労のあった人を慰労する首相主催の花見行事。安倍氏は地元の支援者を多数招いたとされ、「私物化している」との強い批判を浴びた。

 その支援者が集まる前夜祭は2013~19年、都内のホテルで開かれてきた。最低1人1万1千円の飲食代が5千円に抑えられており、野党は安倍氏側による補填の疑いを繰り返し追及した。

 当時首相だった安倍氏は「参加者の大多数が宿泊者という事情も勘案し、ホテル側が設定した価格だ」と説明していた。野党が明細書の提示を求めても、ホテルの営業秘密を盾に拒み続けた。

 収支については、その場で会費を集めてホテルに支払い、参加者に領収書を渡したとし、「事務所は仲介しただけで収支は生じていない」と強弁している。

 一連の疑惑を全国の弁護士や学者らが告発し、東京地検特捜部が捜査している。実際は会費だけでは足りず、安倍氏側が差額分として計800万円を穴埋めした疑いが浮上している。

 政府は桜を見る会の招待者名簿を早々に廃棄し、「私物化」の実態も不明瞭なままだ。

 国会で野党から、ホテル側とのやりとりを文書で提出するよう求められた際、安倍氏は「私が話しているのが真実。信じていただけないなら、予算委員会は成立しない」とまで言い切っていた。

 明細書で補填が判明しただけでも十分だろう。安倍氏には、答弁と整合しない理由を国民に説明する責任がある。「捜査に協力し真摯(しんし)に対応している」との談話では申し開きにならない。

 国会質疑では公判中や捜査中を理由に、閣僚や官僚が「答えは差し控える」と答弁逃れをする場面が目につく。衆参両院の国政調査の主題は政治家としての道義的責任の追及にあり、裁判や捜査との並立に支障はない。早急に安倍氏を参考人として呼ぶべきだ。

 当時官房長官だった菅義偉首相も無関係ではあり得ない。進んで決着を図ってもらいたい。



桜を見る会 前夜祭問題(2020年11月25日配信『福井新聞』-「論説」)

安倍氏は説明責任果たせ

 安倍晋三前首相の後援会が都内の著名ホテルで支援者らを招いて開催した「桜を見る会」前夜祭の夕食会を巡り、東京地検特捜部が任意で安倍氏の公設第1秘書らを事情聴取していたことが判明した。

 前夜祭に関しては弁護士や学者らが、ホテルへの支払総額と、参加した支援者らの会費との差額分を後援会側が補塡(ほてん)したなどとして公選法違反(寄付行為)や政治資金規正法違反の疑いで安倍氏らに対する告発状を出している。

 差額分の補塡を巡り、安倍氏は国会で「事務所から費用の補塡はない」などと繰り返し説明してきた。野党から裏付けとなるホテルの明細書など示すよう求められても「明細書の発行は受けていない」とかわし続けてきた経緯がある。

 だが今回、明細書が存在し、安倍氏側による一部補塡を示す内容と判明。特捜部は立件の可否を慎重に調べており、安倍氏への聴取も検討しているという。補塡が事実なら、安倍氏は国会で虚偽の答弁を重ねてきたことになる。この疑惑をうやむやにしては国民の理解は得られない。

 前夜祭を巡っては、安倍氏の後援会が政権発足以降、2013年から19年にかけて都内ホテルに地元山口県の支援者らを招き、桜を見る会の前日に開催してきた。19年は約800人が参加し、会費は1人5千円だったとされる。

 ところが、ホテルのパーティープランは1人1万1千円からで、ホテルへの支払総額は15年からの5年間で2千万円を上回り、会費総額との差額は計約800万円に上る可能性があるとされる。補塡したのであれば明らかに公選法が禁じる有権者への寄付行為に当たるだろう。

 加えて、後援会の収支報告書に収支の記載が全くないことに関しては、安倍事務所の職員が会場入り口で会費を集金し、ホテルの領収書をその場で手渡し、会費はホテル側に渡したと説明。収支報告書への記載義務はないと主張してきた。

 そもそも、桜を見る会を巡っては、安倍氏の後援会関係者が多く招かれ、野党から「私物化」批判が上がっていた。ただ、内閣府が19年分の招待者名簿を早々に廃棄したため、真相解明には至っていない。森友、加計学園問題でも、ひたすら否定するだけで、いまだに疑念はくすぶっている。

 安倍氏は、政治家のカネを巡る問題が起きるごとに「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」と述べてきた。前夜祭の明細書があるならば、安倍氏は自らそれを提示するなどして説明責任を果たすべきではないか。国会も特捜部の捜査を待つことなく、安倍氏に直接説明を求め、徹底解明しなければならない。



「桜」夕食会/安倍氏は自ら真実を語れ(2020年11月25日配信『神戸新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会による「桜を見る会」前日の夕食会で、安倍氏側が参加者の飲食代など約800万円を補填した疑いが浮上した。

 有権者への金品提供を禁じる公選法や、政治資金規正法に抵触しないかを調べるため、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書や地元支援者を任意で事情聴取したことも判明した。安倍氏は「捜査に全面協力している」と記者団に述べた。

 一連の問題発覚から約1年たつ。安倍氏は首相在職中、国会で「事務所の収入や支出は一切なく、政治資金報告書に記載する必要はない」と答弁し、疑惑を完全否定してきた。

 だが、会場となったホテル側が作成した明細書があることが分かった。安倍氏側が費用の一部を負担したことが確認できる内容だ。検察は徹底捜査すべきである。

 現職の首相が、疑惑をごまかすために虚偽の説明を繰り返してきたとすれば事態は深刻といえる。首相を退いたからといって責任を免れることはできない。安倍氏は国会や記者会見で自ら真実を語るべきだ。

 疑惑は、昨年11月、共産党議員が桜を見る会の「私物化」を追及する中で浮上し、学者や弁護士らが安倍氏らを告発していた。

 夕食会は第2次安倍政権発足後の2013年から19年まで東京都内のホテルで開かれ、支援者らが1人5千円の会費で参加した。うち15年からの支払総額は2千万円を超え、会費で不足する分を安倍氏側が穴埋めした疑いが持たれている。

 鍵は明細書の存在である。野党がホテル側に問い合わせ「例外なく発行している」との回答を得たのに対し、安倍氏は「あくまで一般論」と反論し、ホテル側から提示はなかったとして提出を拒んできた。

 やましい点がないなら、ホテル側に再発行を求め、明細書を開示すれば済んだ話である。それをせず曖昧な説明を繰り返してきたのはなぜか。安倍氏自身の対応が疑惑を深める要因となったのは間違いない。

 桜を見る会本体の実態解明も中ぶらりんのままだ。時の首相がさまざまな分野の功労者をねぎらう公的行事だが、安倍首相時代から支援者らが多数招かれるようになった。詐欺容疑の逮捕者が「首相枠」で招待されていた疑いもある。

 野党議員から資料請求があった日に招待者名簿が廃棄されるなど、ずさんな公文書管理も表面化した。

 当時官房長官だった菅義偉首相は、会そのものを中止することで幕を引く構えだ。「臭いものにふた」では、腐敗は断ち切れない。前首相の「政治とカネ」の問題に白黒をつけられるか。菅首相の姿勢が問われていることも忘れてはならない。



「桜を見る会」前夜祭 捜査尽くし疑惑立件を(2020年11月25日配信『中国新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭で、会場となったホテルが作成した明細書や領収書が存在していた。費用の一部を安倍氏側が補填(ほてん)したことが記されているという。

 補填額は5年間で800万円に上る可能性がある。記載が事実であれば、有権者への金品提供を禁じる公選法に違反する。政治団体の収支の記載を義務付ける政治資金規正法違反の疑いも強まったと言えよう。

 何より、安倍氏の国会答弁が虚偽だった可能性が出てきた。これまでは補填を真っ向から否定していた。ホテルの記載とは明らかに矛盾している。包み隠さず真実を明らかにしなければならない。

 東京地検特捜部が既に捜査に着手している。「安倍晋三後援会」代表である公設第1秘書や選挙区のある山口県内の支援者らを任意で事情聴取している。

 疑惑を裏付ける文書の存在が明らかになったのに、不問に付すことは許されまい。特捜部は捜査を尽くして全容を解明し、立件を目指すべきである。

 検察の姿勢も問われている。なぜ、首相退任後のタイミングで事情聴取に踏み切ったのか。官邸に近いとされた黒川弘務・元東京高検検事長がもし、検察トップの検事総長に就いていたら捜査はどうなっていたか。誰にも忖度(そんたく)していないか―。自らに向けられた国民の厳しい視線を忘れてはならない。

 前夜祭を巡っては全国の弁護士らが5月、前夜祭で有権者に飲食代を提供したなどとして公選法と政治資金規正法に違反した疑いで、安倍氏らに対する告発状を東京地検に出していた。

 前夜祭は2013年から19年までは、「桜を見る会」前日に都内のホテルで開かれ、支援者らが1人5千円の会費で参加していた。ホテルのホームページなどによると、飲食代は1人当たり最低1万1千円はするという。差額の数千円を誰かが負担しない限り、つじつまが合わないのではないか。

 安倍氏のこれまでの説明では5千円の会費はホテル側が設定し、明細書はホテル側から示されなかったという。「ホテルに提出を求めたらどうか」との野党からの指摘には、営業の秘密に関わるので応じないとも説明していた。

 事務所の関与についても、形式的なもので収入や支出は「一切ない」と否定し続けてきた。

 こうした説明は全て、うそだったのだろうか。

 安倍氏はきのう、捜査に全面的に協力していくとした上で「それ以上のことは今は差し控えたい」と述べた。

 「安倍氏には説明責任がある」。連立を組む公明党の山口那津男代表も、厳しい姿勢を示している。

 安倍氏が自ら招いた政治とカネの疑惑である。今までの説明は正しかったのか。口をつぐんでいたのでは、国民は納得するまい。政治家として、誠実に対応しなければならない。

 そもそも「桜を見る会」自体、選挙区の後援会関係者を多数招くなど、「私物化」しているとの批判があった。しかし昨年の招待者名簿が早々に廃棄され、実態の解明は止まったままだ。それも含めて、安倍氏は国会できちんと説明すべきである。与党の責任も重い。



「桜を見る会」夕食会 安倍氏は自ら真相を語るべきだ(2020年11月25日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡る問題で新たな展開があった。昨年までの5年間で会場となったホテル側への支払総額のうち、参加者から集めた会費との差額分として、安倍氏側が計約800万円を補塡(ほてん)した疑いがあることが関係者への取材で分かった。集めた会費だけでは支払いがまかなえず、ホテル側は会費と補塡分の内訳が確認できる領収書を作成していたという。

 昨秋に問題が発覚して以降、当時首相だった安倍氏は国会答弁などで、「事務所から費用の補塡はない」と一貫して疑いを否定してきた。これまでの説明と矛盾が生じることになる。

 東京地検特捜部は後援会の代表を務める公設第1秘書らから既に聴取し、領収書を分析するなど詳しい経緯を調べている。領収書の内容が事実であれば、政治資金規正法や有権者に金品の提供を禁じる公選法に違反するだけでなく、一国のトップが国民にうそをつき通したことになり、政治への信頼が根底から揺らぐ。検察は慎重に捜査を尽くすとともに、安倍氏は真相を語るべきだ。

 夕食会は2度目の安倍政権が発足して以降、2013~19年に東京都内のホテルで毎年開かれており、地元・山口の支援者らが1人5千円の会費で参加していた。19年の参加者は約800人に上る。

 ホテルのプランは1人、1万1千円からなのに、なぜ会費が5千円で済んだのかが当初からの疑問点だった。「安すぎる」として野党側が「事務所が穴埋めしたのではないか」と追及したが、安倍氏は全て参加者の自己負担で、安倍氏側の収入、支出は「一切ない」と強調。収支報告書への記載は不要だと説明してきた。

 だが、主張の裏付けとなる明細書などは「ホテル側から発行を受けていない」と繰り返し、他に証拠となる資料を示すこともなく、説得力を欠いた。実態解明につながる招待者名簿も共産党議員から資料請求があった月に内閣府が廃棄するなど、不自然な対応も明らかになった。

 説明責任を十分果たしてこなかったことが、くすぶり続けた問題を再燃させた形だ。これ以上、やり過ごす態度は通用しないと安倍氏は悟らなければならない。自身の説明に偽りがないのであれば、裏付ける資料を用意し、堂々と国民の前で潔白を証明すべきである。

 当時官房長官だった菅偉義首相の責任も免れない。官房長官としては招待者名簿の廃棄を理由に正面から問題に答えず、首相に就任して初の会見では来年以降の桜を見る会について中止を表明。早々に幕引きを図ろうとした。身内の自民党も野党が要求する安倍氏の国会招致に後ろ向きだ。そんな甘い姿勢では国民の信は取り戻せない。捜査とは別に、首相には実態解明へのリーダーシップを発揮するよう求める。



【「桜」夕食会補塡】安倍前首相は説明せよ(2020年11月25日配信『高知新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の説明責任が改めて問われている。

 「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、開催場所のホテル側が作成した明細書の存在が判明した。安倍氏側が費用の一部を補塡(ほてん)した内容が示され、その額は昨年までの5年間で計約800万円に上る可能性がある。

 ホテル側への支払総額は、参加者が払った会費で賄えたのか。その差額は安倍氏側が負担したのではないか。こうした疑念に安倍氏は穴埋めを否定する発言を続けてきた。しかし説明との矛盾で、その信頼性が大きく揺らぐ事態となった。

 各界の功労者が集まる桜を見る会は公費を使って開かれる。安倍氏はその会に、自身の後援会関係者を招き、「私物化」が指摘された。

 前日には夕食会が後援会の主催で開かれた。高級ホテルで飲食が提供されたにもかかわらず、会費は1人5千円に抑えられていた。それについて安倍氏は、大多数が宿泊するのでホテル側が総合的に勘案して決めたとの認識を示した。

 また、後援会の政治資金収支報告書に記載がないことには、ホテル側との契約主体は参加者で、事務所側は集金したお金をホテル側に渡す役割だったと説明してきた。

 解明の鍵を握っていたのはホテル側の明細書だ。それを開示すれば疑惑は簡単に終止符が打たれたはずだが、存在を否定したり、ホテル側が公開を希望していないなどとかわしてきた。

 その明細書に、安倍氏側が費用の一部を補塡した内容が示されたとなれば、「事務所から費用の補塡は一切ない」とするこれまでの説明が虚偽だったことになる。これは一体どういうことか。

 この問題では、政治資金規正法違反や公選法違反(寄付行為)の疑いで安倍氏らに対する告発状が出されている。東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書や地元・山口の支援者らを任意で聴取した。提出資料の分析などを進め立件の可否を判断する。厳正な捜査を望みたい。

 桜を見る会は、安倍政権下で参加者や予算が膨らんだ。選挙や後援会活動に利用したのではないかと疑念が持たれたが、真相解明につながるはずの招待者名簿は廃棄され、あやふやになった。また、森友、加計学園を巡る疑惑でも政策決定の経過は不透明なままだ。

 説明責任を口にしながら、その場をやり過ごそうとするような曖昧な発言を繰り返す。そうした姿勢が疑念を増幅させた。それがまた政治不信を高めてきた。

 衆参両院で25日に開かれる予算委員会集中審議への安倍氏の招致要求を自民党は事実上拒否した。国民に説明する機会と真剣に受け止め、安倍氏自らがまず語るべきだ。

 菅義偉首相は当時、官房長官だった。政権運営の緩みや官僚の忖度(そんたく)が指摘された安倍長期政権を支えた当事者である。現政権の姿勢にも関わることであり、厳然とした対応が求められる。



軽視の果て(2020年11月25日配信『高知新聞』-「小社会」)

 昭和の名人と称される落語家、三遊亭圓生(えんしょう)は噺(はなし)のまくらにも味わいがある。たとえば「弥次郎」の前置きには、大変なうそつきで評判の男が死ぬ間際に遺言を残す場面がある。

 自分が死んだら寝台の下を掘ってほしい。かめを埋めてある。「中にある金で後のことは」と男は目をつぶった。皆、最後の心がけはいいと穴を掘ったが、かめの中に金はない。代わりに紙が1枚。「これがうそのつきじまい」と書いてあった(自著「噺のまくら」)。

 こちらも、やはりという感想だろうか。事実ならば、最後まで国会を軽視したことになる。安倍前首相の後援会が開いた「桜を見る会」前日の夕食会をめぐり、ホテルが作った明細書の存在が判明した。安倍氏が国会で虚偽説明を繰り返していた疑いが出ている。

 明細書は問題の核心だったが、安倍氏の釈明は「ホテル側が『営業の秘密』を理由に提供に応じない」。そんなはずはあるまい。一国の首相に発行を求められて出さないホテルがあるのか、と思った向きも少なくないのでは。

 前政権では、官僚による公文書の廃棄や改ざんも常態化した。南国市のコピーライター、池田あけみさんの本紙寄稿が言い得て妙だ。「いつもそこにうそは見えているのに、真実が黒塗りにされ、シュレッダーにかけられ、消されていく」。

 安倍氏は国会で真実を語るべきだろう。落語のように「桜」が国会軽視の総仕上げでもあるまい。



「桜」夕食会捜査 安倍氏は説明責任果たせ(2020年11月25日配信『西日本新聞』-「社説」)

 疑惑を持たれた政治家は当然、国民への説明責任を果たすべきだ-。これは、不祥事が起こるたびに安倍晋三前首相が国会で繰り返した答弁である。「一般論」と断った上での決まり文句だったが、前首相は今こそ有言実行すべきではないか。

 首相主催の「桜を見る会」の夕食会を巡る問題で、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書や地元・山口の支援者らを任意で事情聴取するなど、捜査を進めていることが分かった。

 夕食会で安倍氏側が有権者に飲食代を提供したなどとして、公選法違反や政治資金規正法違反の疑いで、市民団体などが告発状を提出していた。

 特捜部は会場のホテル側が作成した領収書や安倍氏側の提出資料も分析している。関係者によれば、ホテル側への支払いが参加者の会費だけでは足りず、安倍氏側が補填(ほてん)した差額分は過去5年間で計約800万円に上る可能性があるという。

 もし、安倍氏側の差額分負担が証拠で裏付けられる事実であれば、刑事責任も問われかねない問題である。事務所や後援会の関与を一貫して全面否定してきた国会答弁が虚偽だったことにもなる。深刻な事態だ。

 この夕食会は、2013年から19年まで「桜を見る会」の前日に東京都内のホテルで開催された。主催は公設第1秘書が代表を務める「安倍晋三後援会」である。19年の場合、参加者は約800人で支援者らが1人5千円の会費で参加していた。

 「桜を見る会」は費用を税金で賄う公的行事なのに、安倍前首相時代は地元支援者らが数多く招かれ、「首相の公私混同」が厳しく批判された。

 夕食会についても「会費が安過ぎる。不足分を安倍氏側が穴埋めしていたのではないか」と国会で野党が追及していた。

 これに対し、首相当時の安倍氏は「ホテル側が設定した価格であり、事務所の収入や支出は一切ない」と補填疑惑を否定するとともに「事務所に確認したが、ホテル側から明細書の提示はなかった」と答弁していた。

 特捜部は法と証拠に基づき厳正に捜査を尽くしてほしいが、ここで問いたいのは安倍氏の政治的、道義的な責任である。

 安倍氏はきのう「事務所として(捜査に)全面的に協力している。それ以上は今の段階では答えられない」と記者団に語っている。ただ過去の国会答弁と食い違う疑義が生じたのであれば、自ら進んで国民に説明を尽くすのが筋ではないか。

 安倍路線を継承するという菅義偉首相も傍観している場合ではない。自民党総裁として安倍氏に説明を促す立場であることを改めて認識してもらいたい。



「桜見る会」夕食会 安倍氏自ら国民に説明を(2020年11月25日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が、地元支援者らを都内のホテルに集めて主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、費用の一部を補塡[ほてん]したことを示すホテル側作成の領収書が存在することが分かった。補塡額は、昨年までの5年間で計約800万円に上るという。

 事実であれば、有権者への金品提供を禁じる公選法や、政治団体の収支の記載を義務付ける政治資金規正法に抵触する可能性がある。安倍氏はこれまで疑惑を真っ向から否定しており、虚偽答弁の疑いも浮上する。

 東京地検特捜部は、夕食会を主催した「安倍晋三後援会」の代表を務める、安倍氏の公設第1秘書らから任意で事情聴取している。当の安倍氏は「事務所としては全面的に協力している。それ以上は、今の段階では答えられない」としているが、もはや、やり過ごせるような状況ではあるまい。

 野党は、25日の衆参両院の予算委員会集中審議に安倍氏を招致するよう与党側に求め、関係する領収書などの提出も要請した。自民は拒否しているが、安倍氏は自ら求めに応じ、今度こそ自分の言葉で国民に説明を尽くすべきだ。

 夕食会は、政権奪還後の2013~19年に毎年開かれ、飲食が提供されるなどした。会費は1人5千円で、19年は地元・山口の支援者ら約800人が参加した。

 安倍氏は国会で「ホテル側との契約主体は支援者である参加者で、事務所の収入や支出は一切ない」などと説明。野党は追及しきれぬままとなっていたが、今年5月以降、全国の学者や弁護士が、安倍氏や公設第1秘書らに対する告発状を提出していた。

 そもそも「桜を見る会」の問題は昨年11月、共産党議員が、同会に安倍氏の支援者が多く含まれ「私物化」していると指摘したことで表面化した。しかし内閣府が早々に招待者名簿を廃棄するなどしていたため、同会自体の各種疑惑もいまだ解明に至っていない。

 さらには森友、加計問題も、説明責任が果たされないままとなっている。ここでまた夕食会の疑惑がうやむやに終わるようでは、国民の政治不信は募るばかりだろう。特捜部の徹底捜査に期待すると同時に、国会にも自浄作用を求めたい。



うそをついたのでは(2020年11月25日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 言葉の合間に「あー、うー」と挟む癖を揶揄[やゆ]された故大平正芳首相。しかし議事録を起こして「あー」とかを除けば筋の通った内容で、ライバルにも信頼されたという。国民に向け丁寧に言葉を選んでいたのだろう

▼片や、言葉を連ねはするが、粗雑に論点をずらし、結局は何も説明せず-と思い起こすのは安倍晋三前首相である。「間違いなく」「一切」などの強い口調が印象に残る。政治や国民感情の複雑さについてどれほどの理解があったのか

▼その安倍氏が首相当時、支援者らを招きホテルで開いた「桜を見る会」の夕食会にからみうそをついたのでは、という疑惑である。飲食代の相場は1人1万1千円。参加者負担は5千円。差額を安倍事務所が負担したのなら公職選挙法などに違反する、として告発されている

▼安倍氏は「5千円はホテルが設定した価格」「事務所の収入や支出は一切ない」と否定。領収書を求められても「ホテルから提示がなかった」と一蹴してきたが、事務所が5年間で800万円を補塡[ほてん]したことを示すホテルの領収書が出てきたという

▼言葉は政治家の命。それは時に経済を動かし、外交問題にも発展する。国益に照らせば言えないこともあろう。しかしうそは許されない。ましてやそれが、自分や支援者を守るためとなれば何をか言わんや

▼公選法違反も重大だが、より深刻なのは「首相のうそ」が政治への信頼を大きく損ねかねないことだ。「総理大臣はうそは言わない」では済むまい。納得ゆく説明を求めたい。



[「桜」夕食会] 安倍氏は真相の説明を(2020年11月25日配信『南日本新聞』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、参加者から集めた会費との差額分として、安倍氏側が5年間で計約800万円を補填(ほてん)していた疑いが浮上した。

 安倍氏は国会答弁などで補填の事実を真っ向から否定してきた。実態解明には背を向け続け、疑念を残したまま首相を退いた。

 東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書らから任意で事情聴取するなど新たな局面を迎えた。政治とカネの問題が起きるたびに「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」としてきた安倍氏である。その言葉通り、真相について自ら説明を尽くすべきである。
 夕食会は2度目の安倍政権発足以降、2013~19年まで毎年東京都内のホテルであり飲食が提供された。会費は1人5000円で、19年には地元・山口県の支援者ら約800人が参加した。

 問題の核心はホテル側への支払総額と参加者の会費に差額は生じなかったのか。生じた場合、その差額分を安倍氏側が支払ったのかどうかである。

 もし支払っていたのだとしたら、有権者への金品提供を禁じる公選法や、政治団体の収支の記載を義務付ける政治資金規正法に抵触する可能性が出てくる。

 だが、安倍氏はこれまで会費5000円は安すぎるとの指摘に「参加者の大多数が宿泊者という事情などを勘案し、ホテル側が設定した価格だ」として、差額は生じず安倍事務所からの費用補填を否定してきた。

 さらに、収支報告書への記載に関しても「ホテル側との契約主体は支援者である参加者。事務所の収入や支出は一切ない」と説明、領収書や明細書の提出も拒んできた。

 今回明らかになったのはホテル側が作成した領収書で、安倍氏の答弁が虚偽だった可能性を示している。15年から5年間、二つのホテルで開かれた夕食会は総額2000万円を超え、参加者の会費だけでは賄えず、不足分は安倍氏側が穴埋めした内容が書かれているという。安倍氏は自身の答弁との矛盾を明確に説明しなければならない。

 桜を見る会を巡っては安倍氏の後援会関係者が多く含まれ、野党から「私物化」との批判を浴びた。さらに、疑惑解明につながる招待者名簿は廃棄され、公文書管理の問題も表面化した。

 立憲民主党は安倍氏の国会招致を求めていく考えだ。問題をうやむやにしたままでは、安倍政権で官房長官だった菅義偉首相の政権運営にも支障が生じかねない。真相の解明に向けた与党の対応も問われる。

 特捜部はホテル側が作成した領収書や、安倍氏側が提出した資料を分析するなどして立件の可否を判断する。前首相の疑惑にどこまで迫れるのか。徹底した捜査を求めたい。



[「桜を見る会」疑惑]説明責任から逃げるな(2020年11月25日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 安倍晋三前首相の後援会が主催した「桜を見る会」の前夜祭を巡り、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書らを任意で事情聴取した。

 前夜祭の会場となったホテルが作成した領収書の存在が明らかになり、安倍氏側が参加費を補填(ほてん)していた可能性があることが分かった。

 もし事実なら、公選法、政治資金規正法に抵触する可能性があり、特捜部が慎重に調べている。

 問題となった前夜祭は2013~19年、東京都内のホテルで開かれた。

 安倍氏の地元・山口の支援者らが多数参加。会費は1人5千円だったが、1人1万1千円はかかるプランを利用しており、差額を安倍氏側が穴埋めした疑いが持たれた。

 疑いが事実なら、公選法が禁じる有権者への寄付行為などに当たる。

 安倍氏は野党の追及に国会で「後援会の収入、支出は一切ない」「(ホテルの)明細書の発行は受けていない」などと、一貫して疑惑を否定してきた。

 今回、ホテルの領収書などから、安倍氏側が支払った差額が、多い年で約250万円、19年までの5年間で800万円を超える可能性があることが分かった。

 国会答弁はうそだったのか。

 仮に国会答弁が虚偽ならば、国会議員としての進退にかかわる問題だ。当時官房長官だった菅義偉首相も全く関係ないとはいえない。

 安倍氏は逃げずに、国民の疑問に正面から答えるべきだ。

■    ■

 検察が捜査に動いたのは、弁護士らによる刑事告発があったからだ。

 「座して見ているわけにはいかない」

 全国約660人の弁護士や学者らが、公選法違反と政治資金規正法違反の疑いで、安倍氏と後援会幹部の計3人を告発し、法的責任を追及するアクションを起こした。

 安倍氏は首相在任中、検察トップの人事に介入を図ったことでも問題になった。

 従来の法解釈を変えて、前東京高検検事長を検事総長に据えようとした。

 異例の検事総長人事は、前東京高検検事長の不祥事による辞職で頓挫したが、安倍氏が、告発をかわす狙いで、官邸に近いとされる人物を登用しようとしたと批判された。

 国民は真実の徹底究明を望んでいる。検察には、厳正に捜査に当たってほしい。

■    ■

 「桜を見る会」ばかりではない。

 安倍氏は7年8カ月の在任中、公文書の改ざんや隠蔽(いんぺい)が相次いだ森友、加計学園問題も、説明責任を果たさず、うやむやにしてきた。

 「政治とカネ」の問題が起きるたびに、「一人一人の政治家が襟を正すべきだ」と言ってきた安倍氏。いまこそ、筋を通し、有言実行するべきだ。

 首相を辞めても、説明責任はなくならない。

 野党は25日の衆参両院の予算委員会集中審議に安倍氏の招致を求めている。出席して説明責任を果たすべきだ。



不起訴なら特捜に無駄な役所認定を(2020年11月1日配信『日刊スポーツ』)ー「政界地獄耳」)

★唐突ともいえる東京地検特捜部の「桜を見る会」前夜祭のカネの動きについて前首相・安倍晋三事務所関係者ら20人余りが事情聴取を受けていることが分かった。23日の読売新聞のスクープだ。しかし、この日の1面トップは「Go To札幌除外へ」で、「安倍前首相秘書ら聴取」は肩だ。普通のセンスなら1面トップを飾る記事がなぜ肩になったか。そして、その2つの記事の真ん中には「首相の厚遇 二階派の春」と題した記事。首相・菅義偉、党幹事長・二階俊博、そして安倍の扱いから複雑な政治の機微が見え隠れする。読売の後にはNHKが昼ニュースでそれ以上の材料を出してきた。いずれも親安倍メディアと揶揄(やゆ)されてきた媒体だ。

★政界ではさまざまな分析がある。ある自民党ベテラン議員は「なにしろ桜を見る会は森友・加計学園事件とは違って安倍事務所本体の疑惑だから。ほかの政治家に累が及ばない安倍案件だ。最近、元気になって露出を増やしている前首相に政権がけん制したのではないか。ポスト菅は安倍というムードを断ち切りたい」と分析する。一方、「秘書のミスとして収支報告書の修正、最悪でも秘書が起訴されるだけ。告発に対しての検察のポーズで捜査の体裁を取っただけ」と楽観論を解説する議員もいた。

★しかし、国会であれだけ問題になり、安倍自身が事務所からの説明として会見でも国会の答弁でも前夜祭での「安倍事務所からの支払いはない」と言い続けたものの、報道では安倍側から少なくとも800万円以上を負担したことがホテル側作成の領収書に記載されていれば、既に安倍の答弁が虚偽だったことがはっきりした。また「桜を見る会」には政府の催しでありながら怪しげな招待客たちが相次ぎ、マルチ商法の広告塔のようなありさまだったことは既に明らかになっている。これを不起訴にしたり大したことはないとするならば行革相は東京地検特捜部を無駄な役所に認定すべきだ。



「桜」前夜祭疑惑(2020年11月25日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

安倍前首相は国民に真相語れ

 政府主催の「桜を見る会」に安倍晋三首相(当時)が地元・山口県の後援会員らを大量に招待し、その前日に都内の高級ホテルで開いていた「前夜祭」に関して、東京地検特捜部が安倍氏の公設第1秘書らから事情聴取したことが明らかになりました。ホテル側に支払われた総額が参加者から徴収した会費総額を上回り、安倍氏側が過去数年間で数百万円もの差額を補てんした可能性があるといわれています。これまでの安倍氏の説明と全く食い違います。国会で真相を語るべきです。

数年間で数百万円補てん

 前夜祭は、「桜を見る会」と一体で、2013年から19年にかけて、「安倍晋三後援会」の主催で都内の高級ホテルで開かれました。安倍氏側は、前夜祭の費用はホテル側が参加者1人5000円と設定したもので、安倍事務所はホテルと参加者の契約を仲介しただけだなどと国会で主張し続けました。

 1人最低1万1000円程度と推定される飲食代の差額を後援会側が負担していたとみられ、そうだとすれば公職選挙法違反にあたります。後援会が政治資金収支報告書に記載していなかったのも政治資金規正法違反です。5月に弁護士らがこれらの問題を東京地検に告発していました。

 後援会の責任者でもある安倍氏の公設秘書らを事情聴取した特捜部は、ホテル側が発行していた明細書や領収書の存在も把握しているとされます。安倍氏は、明細書などについて、「ホテル側からの発行はなかった」とも言い張ってきました。特捜部の事情聴取で、安倍氏が国会で虚偽の説明をしていた疑いはいよいよ濃厚です。

 もともと安倍氏らは、政府主催の「桜を見る会」に多くの支持者などを招待し、税金を使って飲ませ食わせしており、公職選挙法違反の買収にあたる疑いが強いものです。安倍政権の間に、招待者は急増し、費用も膨らみ続けてきました。

 「しんぶん赤旗」日曜版の昨年10月のスクープと日本共産党の田村智子参院議員の同11月の国会質問で表面化したこの問題は、その後、招待者名簿などの公文書が廃棄されていたことや、招待者の中にはマルチ商法で多くの被害者を出した会長が「首相枠」で招かれていたことが明らかになり、国会やマスメディアでも再三追及されてきました。

 安倍氏は一貫して、招待者名簿は廃棄したことなどを理由に、解明に背を向けてきました。有権者に対する買収は、票をカネで買う許されないもので、河井克行元法相夫妻の大規模買収事件とも共通です。首相を辞めたからといって、説明責任を果たさず、逃げ回ることは許されません。

与党は国会招致に応じよ

 安倍政権で官房長官だった菅義偉首相も、「桜を見る会」問題での真相解明に応じてきませんでした。菅首相は就任後、「桜を見る会」の中止を表明しましたが、疑惑については終わったものという姿勢です。「中止」で疑惑に幕引きしようというのは言語道断です。

 菅首相は、安倍氏に説明責任を果たさせるべきです。安倍前政権下で相次いだ「森友」「加計」などの疑惑も解明が尽くされていません。疑惑は絶対にあいまいにはできません。与党は安倍氏の国会招致に応じるべきです。





5千円?パーティー(2020年11月24日配信『中国新聞』ー「天風録」)

 いつの間にか「えべっさん」が終わり、気付けば、ドリミネーションの明かりがともる。広島市中心部の夜は今年も明るく輝くものの、いまひとつ気分が乗らない人も多いに違いない

▲コロナ禍のせいだが、別の理由もありそう。ブラックフライデーにサイバーマンデーと続く月末に向け、商店街もネットも手ぐすね引く。そんな冬のバーゲン時季なのに、朝晩の冷え込みが弱い。厚手のコートにはまだ、物欲の灯がともらないのだ

▲むしろ、こちらの値段が気になる。都内のホテルを会場に開かれた、おととしの「桜を見る会」前夜祭。参加者は5千円の会費を払い、主催した安倍晋三前首相の後援会は何ら追加負担はしていないと主張する

▲いや、少なくとも1人の飲み食いに1万1千円かかるはずだ―。弁護士らの告発を受け、東京地検特捜部が前首相の秘書らから事情を聴いたという。差額の6千円ほどを後援会が提供した疑いがあるという告発状の指摘が事実なら、有権者への寄付行為として公選法に違反しよう

▲英語のバーゲンには、掘り出し物のほか、契約や取引といった意味もある。ここはせめて、ホテルと後援会との値決め経過が明るみに出ないものか。 

安倍前首相側 800万円以上負担”示す内容 ホテル側領収書に➡ここをクリック




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