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「いきなり現場、務まるのか」 教員志望の学生に不安 新型コロナで教育実習中止相次ぐ(2020年11月29日配信『毎日新聞』)

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西南学院中で理科の授業をする実習生。「コロナ禍の中で受け入れてもらい感謝の気持ちでいっぱい」=福岡市早良区で2020年10月13日、矢頭智剛撮影

 教員志望の学生が小、中、高校などで受ける教育実習が中止になるケースが増えている。本来は教員免許の取得に必須だが、今年は新型コロナウイルス対策に追われて受け入れ態勢が整わない学校が多いためだ。文部科学省は8月、今年度に限り大学の座学の授業で代替できる特例措置を設けたが、新任でクラス担任を受け持つことも多く、学生らは現場経験がないまま教職に就くことに不安を抱く。【谷由美子、山崎あずさ】

休校で授業の遅れ取り戻そうとする学校は受け入れにためらい

 「こういう状況で仕方ないのかもしれないけれど」。福岡県の私立大の女子学生(22)は10月に県内の中学校で教育実習に臨む予定だったが、9月に中学校から受け入れ中止を伝えられた。「子供の未来を預かる仕事。いきなり現場に出て務まるのか」と心配する。

 鹿児島県の大学の男子学生(22)も10月に母校の高校での実習が予定されていたが、8月末に中止になった。「大変だと思うが、準備して楽しみにしていたのでショックだった」。その後、別の受け入れ先が見つかったが一時は眠れないほどのストレスに襲われた。

 教育実習は指導計画を立てて面倒を見る学校側にも負担がかかる上、今年は実習生の感染対策もしなければならない。春の受け入れを秋に延期した西南学院中(福岡市)は例年、実習生の部屋を一つにまとめているが、今年は密にならないよう複数の部屋を用意。検温や消毒を徹底し細心の注意を払った。

 それに加えコロナで臨時休業が長引き、授業の遅れを取り戻そうと懸命な今年は受け入れをためらう学校が多い。受け入れは義務ではなく学校に協力してもらっている側面が強いため大学の方も強く求めることはできず、九州の大学の担当者は学校側から「大学の授業は今もオンラインなのに、実習は受け入れろと言うのか」と言われて返す言葉がなかったという。

「教員養成をしっかりしなければ教育界がだめになる

 福岡大(福岡市)では実習先10校が受け入れを中止。期間短縮を求められた学生もおり、大学の系列校などに頼んで何とか実習先を確保した。福岡教育大(福岡県宗像市)も6人の受け入れが中止になったため、中学校にボランティアの学習指導員として派遣するなど代替措置を取った。佐賀大(佐賀市)は文科省が特例を通知した8月以降、複数の学校から期間の大幅短縮を求められた。

 今年の受け入れ中止を決めた熊本県立高の教頭は「感染リスクを払拭(ふっしょく)できず生徒や保護者の理解を得られるか分からなかった。文科省の通知を踏まえて特例措置をお願いした」と話す。

 文科省の2016年度調査では小学校で95・9%、中学校で57・6%の新任教員がクラス担任を任されていた。学生らが教育実習を経ず教職に就くことに専門家からは批判の声が上がる。熊本大の山城千秋教授(教育学)は「教員は子供と一緒に過ごしてそれぞれの個性を理解する。そうした現場のことは実習でしか分からない。実習生がないがしろにされていないか」と危惧する。

 教育評論家の尾木直樹・法政大名誉教授(臨床教育学)は「コロナで教育現場は大変だと思うが、教員養成をしっかりしなければ教育界がだめになる。感染対策をしながら年間を通じて少人数ずつ受け入れるなど、教育実習のあり方を見直すべきだ」と警鐘を鳴らす。

約4割の大学に受け入れ中止求められた学生


 全国私立大学教職課程協会(加盟426大学、会長=小原芳明・玉川大学長)が9~10月、加盟大学を対象にアンケート調査したところ、受け入れ中止を求められた学生がいる大学は回答した大学の約4割の141大学に上った。多くの学生が教育実習を受けられなくなっている実態が浮かび上がった。

 アンケートには356大学が回答。複数回答可で、受け入れ中止の他、受け入れ期間の1週間短縮を求められた学生がいる大学は259大学、2週間短縮を求められた学生がいる大学は87大学あった。学校側から伝えられた期間短縮の理由では266大学が「感染拡大」、81大学が「実習生が感染者の多い地域の大学に在籍している」を挙げた。

 教育実習が中止・期間短縮になった場合の代替措置は206大学が「大学での実習指導」、86大学が「方針を検討中」とした。また、実習受け入れを認められた場合も122大学の学生が学校から「一定期間のアルバイト、サークル活動停止」を求められていた。

 調査結果について協会専務理事の田子(たご)健(たけし)・東京薬科大教授(教育学)は「実習の中止や期間短縮を求められた学生が予想以上に多い。教員養成は今までになく厳しい状況だ」と危機感を募らせる。

教育実習

 教員免許を受ける学生は必ず受けておかなければならず、大学が学校側に実習生受け入れを依頼する。一般的に幼稚園・小学校の教員志望者が4週間、中学が3週間、高校が2週間ほどかけて学級指導や教科指導のノウハウを学ぶ。どこで実習を受けるかは、学生自身が出身校などに申請して内諾を得るケースや、大学が系列校・協力校を学生に割り当てるケースがある。




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Author:gogotamu2019
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