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「元夫」からの養育費を支払いが滞った 考えられる3つのケースを紹介(2020年12月2日配信『毎日新聞』)

片島 由賀 2020/12/02 20:00

コロナ禍を問わず、養育費の支払が滞っているがどうしたものかという相談があります。

他方でコロナ禍の影響での収入減少や、それ以外にも離婚後元夫が再婚して新たに子どもが生まれた、あるいは元妻が離婚後に正社員になり収入が増えた、などの事情で1度決めた養育費を変更できないかとのご相談を受けることも増えてきました。

そこで、今回は

・1度決めた養育費の支払が滞ったときの措置に対する相手(通常は元夫だと思いますので今後「元夫」を前提にします)の出方で考えられること、
・1度決めた金額で養育費を支払ってもらっているものの、状況が変わったとして養育費の変更を求められることがあるか

などについて取り上げたいと思います。

「元夫」からの養育費を支払いが滞った© マネーの達人 提供 「元夫」からの養育費を支払いが滞った
養育費の支払が滞った! 差押えされたときに元夫がとりうる手段
養育費の支払が滞った場合に元妻が取りうる方法としては、前回ご紹介した家庭裁判所に支払を促してもらう履行勧告のほかに、給与などの差押えという強力な手段があります。

勤め先が分かっていてれば、1度差押えすると、あとは期限が来ていない将来分の養育費も含めて差押えができます。

その度に差押えをしなくてすむという点で元妻にとっては大きなメリットといえます。

ただし、差し押さえ分については毎月の支払期限が来て以後の受け取りになります。

最大給与の2分の1まで差押えできるので、相手が勤め先を辞めない限り支払が確保できることになります。

なので、給与の差押えさえしておけば安心、という向きになります。

1. 差押えた場合にある、元夫の対抗手段

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実はこれに対して「差押え禁止債権範囲変更の申立て」という対抗手段を元夫が取って来る可能性があります。

これは本来養育費の支払が滞った場合の差押え範囲は最大給与債権の2分の1までできるところ、その範囲を狭めてほしい(たとえば6分の1とか10分の1など)、あるいは全部について差押えできないとしてほしいと申立てるものです。

この手続きを取られると、せっかく差押え開始になったと思ってもいったん判断が出るまで差し押さえ分の交付は禁止されます。

「差し押さえ分の交付禁止」通知が裁判所から勤め先にされ、「差押え禁止債権範囲変更の申立」の判断が出るまでに差押え分の受け取りができなくなります。

「差押え禁止債権範囲変更の申立」がされる時期にもよりますが、場合によっては数か月にわたって手続きが中断してしまうことになりかねません。

それぞれの生活状況で判断

「差押え禁止債権範囲変更の申立て」では、裁判所が申立をした元夫、申立をされた元妻それぞれの生活状況に関する資料を元に判断します。

それにあたって、具体的には元夫には家族構成や生活に必要な費用、収支や資産等に関する資料を準備して提出を求めることになります。

元夫がほかにも借り入れがあって、そちらにも返済する必要があるから差押え禁止範囲を拡張してほしい、と主張することがありえます。

支払う元夫の都合で債権者ごとの返済に優先順位を設けるべきでないと考えられていますので、このような主張をしても考慮されるのは難しいでしょう。

また元妻の側も生活状況や収入や支出、資産、支払を請求している金額などが問題になり、これらを元夫の状況と比較して範囲変更が必要かどうかなどが決められることになります。

判断にあたっては現在の一般的な生活水準と比べて、支払う側が差押えされることで著しい支障を生じない程度の生活水準を確保できるか、を基準に判断されるのが一般的です。

ですので著しい支障があるかどうかによって判断が変わり得ることになるのですが、実際にはハードルがそれなりにあり、簡単には差押え禁止債権の範囲は変更されないとみてよいでしょう。

新たな資産が発覚する場合も

逆に離婚後の生活状況が明らかになるような資料の提出が裁判所に求められるようになるので、申立をしてきた元夫が別にまとまった資産があるのが判明する、ということもありえます。

その場合には判明した財産への差押えも別途できる可能性が出て来ます。

ですから、「差押え禁止債権範囲変更の申立て」がされたとしてもあせったり悲観的にとらえるものではないといえます。

2. 養育費の支払が厳しい場合の「養育費減額請求」

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先にも挙げましたように、コロナ禍での収入減少やリストラ、離婚後元夫が再婚して子供が生まれてもともと決めていた養育費の支払が厳しくなってきたという場合がありえます。

この場合、支払が厳しくなってきた元夫から事情を説明の上、養育費の支払額を下げてほしい、と申入れをしてくることが考えられます。

いきなり話し合いがなく家庭裁判所から「養育費減額請求の調停申立書」が届くこともありえます。

その場合は、実際には元夫の経済状況の変化があるといえれば、変化に応じて養育費の額が変更することもありえます。

ですので、1度調停や判決、公正証書で養育費の金額を取り決めたから大丈夫とはいえないのが現状です。

収入減、リストラの場合は裏付けの資料が必要

もちろん、収入減少やリストラにより収入がなくなった、などの裏付け資料の提出があることが前提になります。

特にリストラによる場合は退職金が出ていたり、失業保険を受け取っていればそれも収入としてカウントされますから、その後の再就職の見込みも含めると、それほど養育費の額が変わらない場合もあるでしょう。

また、多少の収入変動の場合は、養育費の合意がされた時期によっては、令和元年12月に新しくなった養育費算定表(双方の収入額や子供の数・年齢に応じて養育費の額がおおよそ分かるようになっている表)で照らしあわせたところ、ほとんど下がらないというケースもあります。

新しくなった養育費算定表によると、収入にもよりますがお子様1人当たりの養育費が1万円~2万円の幅で高くなっているケースが多いからです。

他方、元夫が再婚して新しい家族ができた場合には、元夫の収入、再婚相手の収入も含めて考慮することになります。

養育費の金額が変わらないケースが多い

実際のところ、特に元夫側の事情を聞いて今の養育費算定表に当てはめて考えても思ったほど養育費の金額が変わらないケースの方が多いように思います。

新たに元妻が正社員になって収入が増えた、元妻も再婚して連れ子が再婚相手と養子縁組をしたという場合でなければいうほど養育費の金額は変わらない可能性があります。

養育費減額請求の調停が申立をされた場合には、合意の時に予測できなかった事情の変更といえるか、変更の程度が重大かどうか、それに関する資料の裏付けがあるかどうかによります。

3. 元夫が破産手続きをした場合

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元夫が 破産手続きをした© マネーの達人 提供 元夫が 破産手続きをした

また、場合によっては元夫が収入減少やリストラにより養育費だけでなく他の借入の返済も難しくなった、として破産手続きを取る可能性もあります。

その場合には、破産手続きの開始までに滞った養育費の支払も破産手続きの中で受けることになります。

ですので、破産手続き中は給与の差押えをして先に回収はできません。

裁判所に現在未払になっている養育費の金額を届け出て、仮に元夫に何か財産があればそれを換金の上、他の債権者と平等に配当を受けることになります。

養育費は破産手続き終了後も破産した人に請求できる権利であるため、もし配当を受けても未払部分があれば、破産手続き終了後に残額の支払を求められます。

実際、養育費を支払ってもらうのは難しい

ただ、元夫の収入状況によると思いますが、他の負債がなくなっても支払が難しい可能性もあるので実際には支払を受けるのは難しいこともあるでしょう。

破産手続きが終了後、支払義務が発生する養育費については、破産手続きの影響がないので、元夫が勤めているのに支払がなければ給与の差押えができます。

しかし収入減少などの事情があれば、先に養育費減額の調停申立をしてくる可能性もあります。

取り決めてあっても流動的

このように、養育費は長期間にわたっての支払であることから、その後の経済状況や生活状況の変動を受けやすく、1度公正証書や調停などで取り決めがしてあるといっても安心はできないといえます。

簡単には最初に決めた養育費の金額が変更になるというものではありません。

このコロナ禍での収入への影響が長期化するといったことがあれば、今後の対応も考えなければならない場合も考えられるでしょう。

それには今後の養育費に関する国の動きも注目されますが、それまでに使える公的制度についても確認をしておくなど、備えもあった方がよいでしょう。(執筆者:片島 由賀)




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