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殺気だつ草津町傍聴席「犬だってしねぇよ」 セクハラを背中で浴び続けた気分になった(2020年12月3日配信『AERA.com』)

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新井議員のリコールを求めるポスターがあちこちに貼られている。有効投票の過半数で新井議員は失職する。

 作家・北原みのりさんの連載「おんなの話はありがたい」。今回は、群馬県草津町で賛否が問われている女性議員に対する解職請求(リコール)について。議会を傍聴してきた感想をまとめた。

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焦点の一つとなった町長室の中は?

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 町長からの性被害を訴えた草津町議員に対するリコールの賛否を問う住民投票が12月6日に迫っている。

 衆院議員の杉田水脈氏の辞職を求める声に14万筆近く集まっても、国会議員を辞職させることはできない。一方、地方議員となると、辞職勧告や懲罰のハードルが下がるのだろうか。

 乳児を議場に入れた熊本市の緒方夕佳議員が、のどあめをなめたと出席停止処分を受けたのは2018年。宮古島への自衛隊誘致に反対し「(自衛隊がくると)婦女暴行事件が起こる」とSNSに記した石嶺香織市議(当時)が辞職勧告を受けたのは2017年(SNSについては後に謝罪のうえ撤回)。徳島県藍住町では、水道光熱費が少なすぎて居住実態がないと断定され西岡恵子さんが2度(2010年、2014年)同じ理由で議員を失職させられている(議決取り消しを求めて提訴し勝訴確定)。最近ではSNSに議会での同僚議員の様子を(質問をしなかったなど)を記した埼玉県日高市の田中まどか議員も辞職勧告を受けた。

 女性ばかり記したが、もちろん男性議員も辞職勧告などを受けている。とはいえそもそも絶対数が少ない女性議員への懲罰が目立つのと、港区議員の公然わいせつや、女性職員の机を物色して刑事事件になった富山市議などの例が直近ではあるが、のどあめをなめたとか、光熱費が少なすぎるというのとは次元が違いすぎるじゃないか。

■ 町議会の傍聴をしてきた

 そういうなか、草津町で今起きていることは、もしかしたら地方議会の「今」の問題なのかもしれない。リコールの賛否を問う住民投票まで時間がないなか、12月1日、草津町議会を傍聴するため草津に向かった。

 この日、議会で多くの時間を費やしたのは、町長からの性被害を告発した新井祥子議員の処分についてだった。町長は新井議員を名誉毀損で刑事・民事ともに訴え、5000万円を要求している。議会で新井議員はうそつきと断定され、議員等が率先してリコール運動を導いた。

12人の傍聴席は全て埋まっていた。私を含めて5人の女性が傍聴していたが(偶然だが、この問題に関心を持つ女性が東京から私を含めて4人いた)、傍聴席の約半数が女性であることは珍しいという。そのためか町長は傍聴席を意識するように「今日は新井議員の応援団が来ているから」と2度ほど言い、自らの潔白を強く語りかけるように長い発言を繰り返した。

 休憩を挟んで議場に戻ろうとしていた男性議員たちが「傍聴席のヤツラ! 今日はやりにくい」と大声で言っているのが聞こえた。「ヤツラ」と言うんだな……と驚いたが、普段から傍聴している人によると、「今日は議場がいつもより穏やか」とのことだった。いつもは新井議員への嘲笑や暴言、叱責が激しいといい、この日は傍聴席の女性が圧になっていたのは確かのようだ。

 一方、傍聴席は殺気だっていた。70代くらいの男性たちが前列に座る私たちの背後から、「こっちにだって選ぶ権利あるんだよ」「誰があんな女と」「犬だってしねぇよ」と声を浴びせたり、「(性被害が)本当なら(時間的に)町長はニワトリだ」と盛り上がったりもしていた。ニワトリの意味は、すぐ射精するとのことらしい。コケッコッコーと言っては笑っていた。セクハラを背中からずっと浴び続けた思いになる。

■ 女性が被害者、男性が加害者という“風潮”

 町長とは散会後、話す機会を頂いた。率直にリコールはやりすぎではないかと問うと、町長は「それは主観の問題」と答え、逃げられたように感じたが、いわゆる「ガハハ」な下品系ではなく、初対面の私に敬語を崩さないビジネスマン的雰囲気の人である。

 町長室に入って座って話しましょうと言われたが、町長室前の立ち話でお願いし、20分ほど話した。その後、礼を言い立ち去る時、「町長室に入ったら犯されちゃうって警戒されちゃったね」と、支援者たちがふざけているのが聞こえた。思わずカッとくるのを抑えながら、階段を駆け下りた。
 
 町長は「最近は女は被害者、男は加害者という風潮がある」と議会で話していた。私との会話の中でもそう語っていた。その風潮を新井議員が利用しているという主張だ。「私に犯されたなら証拠だしなさい」といら立つように新井議員に迫ってもいた。そういう町長に同調するように傍聴席でも「女が被害を受けたといえばそれでいいのか」と吐き捨てる男性の姿もあった。

 セクハラがセクハラと理解されない日常で、声をあげた女性を全力でたたきつぶそうとするその拳の強さを思い知る。

「女は被害者、男は加害者という風潮」は、実は男性社会が作ってきたレイプ神話だ。逆説的だが、そういう“風潮”があるからこそ、女はいくらでもうそをつき男をおとしめられるのだという“神話”が再生産されてきた。

「女性はいくらでもうそをつける」という杉田議員発言の背後には、こういう被害者意識を深める男性たちのいら立ちがあるのだろう。

 加えて今の「風潮」を言うなら、被害者の訴える声をまずは疑わずに静かに聴く、ことである。それが今の国際基準の、“被害者中心主義”というものだ。もちろん、男女問わずに。犯された証拠を出せ、出せないなら犯されていないのだという論理で追い詰めることは、そもそも性暴力に無知であることを露呈するだけでしかない。

■ 女性議員1人以下の地方議会は45%

 女性議員がゼロ、またはたった1人の議会は日本全体で45%にもなる。宮古島市の石嶺さんは26人中一人の女性議員(当時)で、藍住町の西岡さんも16人中1人(当時)、日高市の田中議員は16人中2人のうち1人。新井議員もたった1人の女性議員だ。女性がいないことが、「あたりまえ」の極端な男性社会が日本の地方に根深くあり、深く根を張り続けてきた。その弊害が、今、少しずつ可視化されてきているのかもしれない。

 1日の草津町議会が散会したのは午後3時を過ぎていた。温泉は大好きなのに、入る気分になれずそのまま東京に戻った。

 帰路ずっと「傍聴席のヤツラ」という男性の声が追いかけてきた。あからさまな物言いに驚きながらも、でも、「ヤツラ」がいることが、この国の民主主義には大切なのかもしれないとも思う。中からも、外からも、こもった空気を入れかえ優しい風を感じるために、この国の窓をあけたい。

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■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表




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Author:gogotamu2019
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