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(論)大飯原発 設置許可取り消す判決に関する論説(2020年12月5・6・7・8・10日)

大飯原発の判決 検証を迫られる審査手法(2020年12月10日配信『山陽新聞』-「社説」)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の耐震性に関する原子力規制委員会の審査を巡り、規制基準に適合するとして原発設置を許可したのは違法として、大阪地裁が許可を取り消す判断を示した。

 今の規制基準は、東京電力福島第1原発の事故を踏まえて策定された。それに基づく許可を取り消す司法判断は初めてである。政府が「世界一厳しい」とアピールしてきた基準に基づく審査手法に対して、正面から疑問を投げ掛けた格好となった。

 訴訟では、福井など11府県の住民らが国に許可取り消しを求めていた。争点となったのが、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の値や、これを基に設置を許可した規制委の判断の妥当性だった。

 判決は、まず関電が、地質調査などに基づいて設定した震源断層面積を経験式に当てはめて出した地震規模の値をそのまま使い、実際の地震規模が平均値より大きくなる可能性を検討しなかったとした。その上で、規制委も上乗せの必要性を何ら検討することなく許可を出したとした。

 そもそも、規制委が作った「審査ガイド」には、平均値をはじき出すのに使った元データの「ばらつき」を考慮すべきだと定められている。判決は、それを行わなかった規制委の審査には「看過しがたい過誤、欠落がある」として厳しく断罪した。

 規制委が、自らが定めたルールに沿っていなかったとすれば審査の信頼性は根底から揺らいでしまう。結果的に、起こり得る地震を過小評価していたとみなされても仕方があるまい。大飯原発の地元にとどまらず、原発が立地する地域には不安も広がろう。

 判決を不服として国が控訴すれば、すぐに設置許可取り消しの効力が生じるわけではない。これまでも、原発の設置許可や差し止めを巡る訴訟などで住民の主張を認める判断は何度か示されてきたが、上級審などで覆り、そのまま確定したケースはない。

 今回の訴訟についても先は見通せないが、上級審の判断を待つまでもなく、審査手法の在り方を検証する契機とすべきだろう。

 原発の安全審査の根底に据えるべきは、東日本大震災の教訓である。地震と津波に原発事故が重なる未曽有の複合災害をもたらした背景に、災害想定の甘さがあったことが明らかになっている。「想定外」はもう通用しない。

 原発はひとたび事故を起こせば極めて甚大な影響をもたらす。その安全について議論するに当たって、慎重の上にも慎重を期すべきなのは言うまでもない。

 福島の事故を踏まえ、原発に依存しないエネルギー政策へとかじを切ることが望まれるが、現実に原発を稼働させていく以上は安全性を高めるための不断の努力が欠かせない。国と電力会社は判決を重く受け止めてもらいたい。





大飯原発判決 審査への理解を欠いている(2020年12月8日配信『読売新聞』-「社説」)

 原子力発電所の安全性そのものではなく、審査手順が適切かどうかだけに着目して違法だと判断した判決と言えよう。

 福井県にある関西電力大飯原発3、4号機について、大阪地裁が、国の設置許可を取り消す判決を言い渡した。東京電力福島第一原発事故後に策定された新規制基準に基づく許可を取り消した初めての司法判断である。

 主な争点は、地震の最大の揺れを想定して関電が算定した「基準地震動」の妥当性だ。原発の耐震設計の前提になる数値で、国の原子力規制委員会は、審査で新規制基準に適合していると認めた。

 判決は、この判断について「看過し難い過誤、欠落があり、不合理だ」と結論づけた。規制委が内規の「審査ガイド」に沿って審査をしていないという批判だ。

 基準地震動は、過去に起きた地震の規模の平均値などから策定する。ガイドには「地震規模のばらつきも考慮する必要がある」と記載されており、判決は「平均値を上回る地震の可能性も検討しなければならない」と指摘した。

 規制委は他の原発も同様の審査方法で許可しており、判決が確定すれば影響は極めて大きい。

 基準地震動の策定では、地震の規模だけでなく、断層の長さや面積など、様々な要素を加味して、十分に安全を確保できる数値を設定するのが一般的だ。

 大飯3、4号機の審査では、関電が当初策定した数値を規制委が大幅に引き上げさせた。東日本大震災など、過去の大地震の教訓を踏まえた対応だ。実質的には、平均値を上回る想定で審査が行われているとみていいだろう。

 リスクを過度に評価すれば、あらゆることは立ちゆかなくなる。判決は結論ありきで、審査の実務を軽視した印象が拭えない。

 九州電力玄海原発を巡る仮処分の裁判で、昨年7月の福岡高裁決定は「ばらつきの考慮は留意事項にすぎない」と指摘し、考慮が必要だとした住民側の主張を「独自の見解だ」と退けている。

 ガイドの記述が解釈の違いを生むというのなら、規制委が表現を修正すればよいのではないか。

 福島原発事故後、原発の運転を認めない司法判断は6件あった。審理中の1件を除き、全て上級審などで結論が覆っている。大飯3、4号機を巡っても、運転差し止めを命じる1審判決を取り消した2審判決が確定している。

 国は控訴した場合、科学に基づいた審査の実情や妥当性について立証を尽くさねばならない。



原発許可違法 安全の根幹問うた判決だ(2020年12月8日配信『新潟日報』-「社説」)

 原発の耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の算出根拠が、厳しく批判された。国の安全性審査の根幹に疑問が突き付けられたに等しい。

 原子力規制委員会や電力会社は判決を重く受け止め、自らの足元をきちんと見つめ直さなければならない。これまでの審査の再検証が不可欠だ。

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、新規制基準に適合するとした規制委の判断は誤りだとして、住民らが国に対し、原発の設置許可取り消しを求めた訴訟の判決が大阪地裁であった。

 判決は、許可を違法だとして取り消した。東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された新規制基準下での原発設置許可を取り消す、初めての司法判断である。

 主な争点となったのは、関電が算出した基準地震動の値や、これを基に設置を許可した規制委の判断の妥当性だった。

 判決は規制委の判断について「地震規模の想定で必要な検討をせず、看過しがたい過誤、欠落がある」と指弾した。

 問題とされたのは、基準地震動の設定で重要な要素となる地震規模の算出方法だ。

 地震規模は、過去の地震データを基にした平均値より大きい方向に懸け離れるなど「ばらつき」が生じる可能性があり、規制委が定めた審査ガイドもばらつきについて考慮する必要性を示している。

 しかし関電はばらつきの考慮や数値の上乗せをせず、規制委も上乗せの必要性があるかを検討せず、許可を出した。

 判決はこう指摘し、「審査すべき点を審査していないので違法」と結論付けた。

 決められたルールに従わず、数値の上乗せの検討や考慮がなされていないなら、地震規模を過小評価しているのではないかと見られても仕方ない。

 原発が想定を超える揺れに襲われた場合にはどうなるのか。そんな不安を覚える人も少なくあるまい。

 新基準では、福島第1原発事故を教訓に地震や津波への評価が厳格化された。政府は新基準について「世界一厳しい」と強調してきた。

 それだけに、判決が与えた衝撃も大きい。

 見過ごせないのは、原発施設を襲う可能性がある地震の大きさを算出する際、判決が問題視したのと同様の手法が多くの原発で用いられていることだ。

 国は2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロにする目標を掲げ、原発を活用していく方針を示している。

 だが安全性に重大な疑義が呈されたことにより、原発再稼働の根拠が大きく揺らいだことになる。安易な「再稼働ありき」は許されない。

 地震動の評価方法については係争中の東電柏崎刈羽原発運転差し止め訴訟でも原告側が指摘し、争点となっている。

 今回の判決が柏崎刈羽原発再稼働を巡る問題に与える影響も注視しなければならない。



大飯原発判決 規制委は審査姿勢見直せ(2020年12月8日配信『西日本新聞』-「社説」)

 「世界一厳しい」という基準で安全性を確認してきたはずの原子力規制委員会の審査に、重大な疑義が生じた。

 福井県にある関西電力大飯原発3、4号機の設置を許可した規制委の判断は違法として、許可を取り消す判決を大阪地裁が出した。東京電力福島第1原発事故後に策定された新規制基準に基づく原発設置許可を取り消す司法判断は初めてである。

 大飯3、4号機は現在定期検査中で、国が控訴すれば判決の効力は生じない。それでも、規制委の審議や判断の過程に「看過しがたい過誤、欠落がある」とまで踏み込んで指弾した判決の意味は大きい。

 国は福島原発事故のような過酷事故を繰り返さないとの原点に戻り、この際、全ての原発の安全性を再検証すべきだろう。

 裁判の焦点は、耐震設計の目安となる地震の揺れ(基準地震動)が妥当かどうか、だった。電力会社は、原発の周辺にある断層の長さや幅を仮定し、過去の経験式を用いて想定される最大の揺れを算出する。この値が大きくなればより厳しい安全対策が求められ、場合によっては原発立地にふさわしいかが問われることにもなる。

 大飯3、4号機について規制委は、関電が提出した値の妥当性や安全対策を審査し、基準に適合していると判断した。しかし、経験式から導かれる最大の揺れは過去の地震データに基づく平均値である。実際の地震規模には「ばらつき」があり、平均値より大きな地震が発生する可能性は否定できない。

 大阪地裁判決は、新規制基準や規制委が定めた「審査ガイド」でこうした不確かさに関して考慮するよう定めているのに、実際の審査では何ら検討していなかった、と認定した。

 判決通りなら、関電と規制委は想定される地震動を過小評価したことになる。原発の安全性が担保されたとは言い難い。

 規制委の審査は全国の原発設置許可を巡り同様の手続きで行われている。問題があれば大飯原発には限らないだろう。

 判決は各地で係争中の原発裁判に影響するのではないか。来年3月に判決が予定されている九州電力玄海原発3、4号機(佐賀県玄海町)の運転差し止め訴訟でも、想定される揺れの妥当性が争点の一つだ。

 原発立地で想定すべき揺れについては専門家でも議論が分かれる。規制委の委員長代理を務めた島崎邦彦・東京大名誉教授は、熊本地震を踏まえ、現在の経験式による判断には地震動を過小評価する危険性があるとして、再考を求めたが、規制委は拒んでいる。こうした点も再検討を求めたい。





大飯許可違法 誰がための規制委か(2020年12月7日配信『東京新聞』-「社説」)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の安全性に問題があるとして、大阪地裁は国の原子力規制委員会が関電に与えた原発の設置許可を取り消した。国の原子力政策を根元から揺るがす判決だ。

 「原子力規制委員会の判断に看過しがたい過誤、欠落がある」−。大阪地裁は、強い言葉で規制委を指弾した。

 原発の稼働に際し、想定すべき最大の揺れの強さを示す「基準地震動」の算定方法が、最大の争点だった。

 規制委は、関電が算出したデータに基づいて、福島第一原発の事故後に厳格化された新規制基準に「適合」すると判定し、2017年5月に設置許可を出していた。

 しかし、大阪地裁は「関電が算定に用いた数式は、過去に発生した地震の平均値にすぎない。国の審査ガイドにも、ばらつき(平均値からかけ離れた強さ)が出る恐れを考慮するとある」と指摘。「ばらつきによる上乗せの必要性を検討せずに、許可を与えたのは違法である」と断じた。

 大飯原発3、4号機に関しては、元規制委員長代理の島崎邦彦・東京大名誉教授(地震学)も「関電の計算式では、基準地震動が過小評価される恐れがある」と、別の訴訟の法廷などでも証言に立ち、訴えてきた。

 原子力規制委員会は福島第一原発の惨事を踏まえ、「想定外」による事故を二度と繰り返してはならないと、設立された機関のはずだ。過小評価の指摘を見過ごすということは、「想定外」を許容するということにはならないか。

 もしそうなら、規制委の存在自体の基盤が揺らぐ。

 関電が用いた計算式は、国内のほぼすべての原発で、基本データとして重要視されているという。

 福島の事故後に各地で相次いだ運転差し止めの司法判断でも、想定される地震の揺れや火山リスク、避難方法などに関する想定の甘さが指摘されてきた。電力側のデータによって立つ現状も含め、すべての原発で、審査過程の再検証が必要だろう。

 「どこまで巨費をつぎ込めば安定稼働できるのか」

 関電幹部も悲鳴を上げているというが、再生可能エネルギーが世界の主力電源になりつつある今、安全対策に無限とも思える投資をし続けてまで原発の維持を図ることにこそ、どだい無理があるのだろう。今回の司法判断は、国の原発政策そのものにも、疑問を投げかけているようだ。



大飯原発訴訟 緩んだ規制を厳しく批判(2020年12月7日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 原子力規制委員会が関西電力大飯原発3、4号機の設置変更を許可したのは違法―。

 大阪地裁が、この許可を取り消す判決を出した。はっきりと規制委の審査手法を否定した。

 東京電力福島第1原発の事故を教訓に定めた「新規制基準」を軽く見た規制委と関電を、裁判長は厳しく批判している。

 大飯3、4号機は2017年5月、規制委の審査を通過し、翌年再稼働した。現在は両機とも定期検査のため停止している。3号機は配管に傷が見つかり、運転再開のめどが立たない。

 裁判では、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の算出方法が争点になった。

 原告の住民側は、過去の地震データの数値には平均値から大きく外れた「ばらつき」があるのに、関電は算出過程で考慮しなかったと指摘。「地震の規模が過小評価された」と訴え、規制委の許可取り消しを求めていた。

 関電は、地質調査などに基づく計算式を用いて地震規模の平均値を算出、「ばらつき」は考慮していない。規制委は、審査で専門家が促した再計算も採用せず、関電の基準地震動を認めた。

 福島の事故後、規制委が定めた審査ガイドに「『ばらつき』も考慮される必要がある」と明記されている。自ら無視したのだから、裁判長が「規制委の判断過程には看過しがたい過誤、欠落がある」と断じたのも当然だろう。

 他の原発についても、規制委は同じ手法で審査している。今回の判決が確定すれば、再計算や追加工事といった影響が各地に及ぶ事態も想定される。

 関電は控訴する構えで、規制委は8日にも対応を協議する。審査のあり方を急ぎ改めるべきだ。

 これまでも原発の運転差し止めや設置許可無効を認めた司法判断はあった。が、上級審で覆り、確定した例はない。

 それでも勝訴、敗訴にかかわらず、一連の訴訟は地震、津波、火山への備えや、住民避難計画の不備を明るみに出してきた。政府の言う「世界一厳しい規制基準」とは裏腹に、原発には変わらず危うさが付きまとう。

 電力大手は再稼働に向け、多額の安全対策費を投じている。その回収という目先の利益にとらわれることなく、自然エネルギーを軸に、安全で持続性のある電源計画へと発想を転じてほしい。

 温暖化対策が急務とはいえ、安全面でもコスト面でも、原発はもう主力電源にはなり得ない。



大飯原発違法判決 全ての原発審査を見直せ(2020年12月7日配信『琉球新報』-「社説」)

 日本の原子力行政が根底から否定された。関西電力大飯原発(福井県)3、4号機の耐震性を巡る訴訟で、4日の大阪地裁判決は原発設置許可を違法として取り消した。

 判決は原子力規制委員会の判断に対し「地震規模の想定で必要な検討をせず、看過しがたい過誤、欠落がある」と厳しく指摘した。

 規制委の審査が不十分であることが司法によって示されたのだ。大飯だけでなく、再稼働を目指す東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)や東北電力女川原発(宮城県女川町、石巻市)など、審査に合格した施設でも規制委の審査が十分だったのか疑問符が付く。

 東京電力福島第1原発の事故からもうすぐ10年になる。原発の安全が保証されたのか疑問に思う国民は多い。国は全ての原発に対する審査を見直し、太陽光や風力などクリーンエネルギーの活用を真剣に検討すべきだ。

 大飯原発訴訟で争点になったのは、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準値振動)の値や、これを基にした規制委の判断が妥当かどうかだった。

 福島第1原発事故を受け、規制委は自らの審査ガイドで「(過去の地震を参考にした)経験式は平均値としての地震規模を算出するもので、平均値から外れた『ばらつき』も考慮する必要がある」と明示している。

 地震が起きた後で「想定外だった」という言い訳を許さない姿勢を示したものだ。

 しかし大飯原発の審査で、関電は経験式に基づく地震規模の値をそのまま使用し、実際の地震規模が平均値より大きくなる可能性を考慮に入れなかった。規制委も上乗せする必要性を検討せず、関電の言い分をそのまま通した。

 東日本大震災を受けた2012年の防災白書は「災害を完璧に予想することはできなくても、災害への対応に想定外はあってはならない。災害対策の検討に当たっては、楽観的な想定ではなく、悲観的な想定を行う必要がある」と教訓を残している。

 今回の判決は国が「世界一厳しい」とした審査基準そのものを否定はしていない。審査手続きの過程で、安全を担保すべき規制委が自ら定めたルールを逸脱したことが批判された。判決が示すように過去の教訓を生かせないようでは国民の信頼が得られるはずもない。

 一方で国と関電の控訴や上級審で覆される可能性があり、判決がすぐ効力を発揮するわけではない。しかし規制委の審査の在り方が否定された以上、国や電力各社は原発再稼働へ慎重になるべきだ。

 温室効果ガスの「2050年ゼロ」を宣言する菅政権は原発の積極的活用を掲げるが、現状で国民の理解は得られまい。再稼働に「お墨付き」を与えてきた規制委の審査が否定された今こそ、政権の総力をもって「脱原発」への道筋を考えるべき時だ。



 「工事にお金をかけずに審査を通したい(2020年12月7日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 「工事にお金をかけずに審査を通したい、最終的に会社の経費を減らしたいのが彼らの使命、安全性なんてどこにもない」。原子力規制委員会の委員長代理を務めた島崎邦彦東大名誉教授が、電力会社の姿勢を本紙に語っています

▼その地震学の権威が2016年以来、「大飯原発の基準地震動は過小評価だ」と規制委に再考を求め、自ら法廷にも立って訴え続けてきました

▼「基準地震動」とは想定される地震の最大の揺れのこと。耐震設計など原発の安全性の根幹にかかわります。規制委は指摘に耳を貸さず、関電の計算結果を妥当とし、大飯原発3、4号機の再稼働に道を開きました

▼4日の大阪地裁判決が、地震の算定について「看過しがたい過誤、欠落がある」と規制委の判断を覆したのは、皮肉です。審査基準にもあるのに、耐震性の判断の際に必要とされる地震規模の「上乗せ」計算を、関電も規制委も怠ったと

▼地震、津波、火山噴火などの災害にどこまで耐えられるのか。原発がある限り「想定外」では済まされない、自然災害への対応が求められて当然です。判決が同じ算定方式で認可された全国の原発に影響する可能性もあります

▼「将来の子や孫、トンボやカエルのために、原発をなくし自然を残したい」。8年半もの裁判で示された原告・住民らの思いに、国や電力会社はどうこたえるか。「新基準に適合しているから」との空手形をかざして再稼働に突き進むことなど許されません。「原発は安全か」が厳しく問われ続けます。





大飯原発許可取り消し 規制委は審査の在り方再検証を(2020年12月6日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 福井県にある関西電力大飯原発3、4号機の耐震性を巡り、新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は誤りだとして、福井県などの住民が原発設置許可の取り消しを国に求めた訴訟の判決で、大阪地裁は許可を違法として取り消した。

 判決は「審査すべき点を審査していない」と規制委の姿勢を厳しく批判した。新規制基準は政府が「世界一厳しい」と自負し、再稼働のよりどころとしてきた。その基準に基づく安全性審査の手法を否定し、設置許可を取り消した初の司法判断である。規制委は判決を重く受け止め、審査の在り方を徹底的に検証し直さなければならない。

 主な争点となったのは、関電が算出した基準地震動(耐震設計の目安となる揺れ)の値や、これを基に設置を許可した規制委の判断が妥当かどうかだ。

 原告側は、算出過程で基となる過去の地震データの数値には平均値から大きく外れたものなど「ばらつき」があるのに考慮されていないと主張。そのため地震の規模や基準地震動が過小評価されているとしていた。一方、国側は、地震を引き起こす断層の面積など別の指標を考慮していれば、ばらつきを考慮する必要はないとする専門家の知見に基づき審査したと説明。原告側の主張に科学的合理性は認められないと反論していた。

 判決は、規制委が定めた審査ガイドもばらつきの考慮の必要性を示していると指摘。だが関電はその考慮や数値の上乗せをしなかったとし、規制委も上乗せの必要性について何ら検討せず許可を与え、審査に「看過しがたい過誤、欠落があり、違法だ」と断じた。再稼働に「お墨付き」を与える規制委の手続きに疑義を突き付けており、国や電力会社には審査への向き合い方を再考するよう求めたい。

 大飯3、4号機は現在、定期検査で停止している。訴訟に関わる関電は判決を受け「極めて遺憾で、承服できない」とし、国と協議の上で控訴を検討するとしている。控訴すれば判決の効力は直ちに生じない。しかし関電は運転の再開を急いではならない。判決で審査に疑問が呈されており、まず規制委が大飯3、4号機の審査の過程を検証し、安全性について丁寧に説明する責任がある。

 今回否定された審査の手法は原発施設に影響する可能性がある地震の大きさを算出する際、多くの原発で使われている。各地の原発訴訟にも大きな影響を及ぼす。司法判断で運転を止められる原発の訴訟リスクが改めて浮き彫りになったといえる。

 これまで各原発の安全性を判断して運転差し止めを命じた司法判断はあったが、今回は規制委の審査を問題視した点で重大な意味を持つ。他の原発の審査でも同様の不備があった可能性がある。国は、原発の安全性について厳格な審査、判断ができると明示しなければ、原発に不安を抱える国民の信頼は戻らないと認識するべきだ。



【原発許可違法】原子力規制の根幹揺らぐ(2020年12月6日配信『高知新聞』-「社説」)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、福井県などの住民らが起こした訴訟で大阪地裁は、新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は誤りだとして、原発の設置許可を取り消した。

 判決は、規制委が「審査すべき点を審査しておらず違法」と断じている。政府が「世界一厳しい」と自負し、原発再稼働のよりどころとなる審査の在り方が否定されたことは極めて重大だ。

 他の多くの原発も大飯原発と同様の手法で耐震評価が行われている。規制委の審査を経て再稼働した原発の耐震性は本当に大丈夫なのか。再評価が求められるのは必至だ。

 争点は、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の値や、これを基に設置を許可した規制委の判断が妥当かどうか。

 住民側は基準地震動について、過去の地震データを基にした平均値より大きくなる「ばらつき」が生じる可能性があるのに、それが考慮されず過小評価されていると訴えた。

 大阪地裁はこれを認めた。関電はばらつきの考慮や数値の上乗せをしなかった上、規制委も上乗せの必要性を何ら検討することなく許可を出した、と結論付けた。

 「ばらつきの考慮」を巡っては、そもそも規制委が定めた審査ガイドでその必要性が示されている。規制委が自ら作ったルールをないがしろにした形だ。判決で「看過しがたい過誤、欠落がある」と批判されても仕方ない。

 国側は「断層の面積など別の指標を考慮していれば審査は適切」と反論した。だからといって、規制委が重視した手順を踏まなくてよい理由になるだろうか。後付けの理由のようで説得力に乏しい。

 電力会社と規制委はいま一度、「自然現象の不確かさ」に謙虚に向き合い、審査の在り方を根本的にチェックする必要がある。
 国が控訴すれば判決の効力は直ちに生じない。しかし住民側勝訴が確定した場合、より厳格な耐震基準で評価し直し、改めて許可を得るまで稼働できない可能性がある。

 大飯3、4号機は現在、定期検査で停止中だ。稼働中の関電の原発は11月上旬からゼロとなっている。原発に頼り切った経営体質では、「訴訟リスク」による不確定要素が強まる一方である。判決はそのことを改めて突きつけてもいる。

 新規制基準に基づき規制委が適合性を審査し、再稼働に「お墨付き」を与える―。その手続き自体に疑念が向けられた以上、再稼働へのハードルはますます高くなろう。

 「2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロ」にするため、菅義偉首相は原発の活用を掲げる。とはいえ、国のエネルギー基本計画にある「30年度の原発発電比率20~22%」も現状では達成が難しい。

 今回判決は脱原発を望む世論の追い風となろう。それに向き合い、原子力政策を見直すよう求める。



大飯原発判決 安全性の根幹が問われる(2020年12月6日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)に対する原子力規制委員会の設置許可を巡る訴訟の判決で、大阪地裁は許可を違法として取り消した。

 東京電力福島第1原発事故を踏まえ策定された新規制基準下での設置許可を取り消す初の司法判断である。「規制委の判断は地震規模の想定で必要な検討をせず、看過しがたい過誤、欠落がある」とした判決は、新規制基準の運用の在り方のみならず、地震大国の日本における原発の安全性の根幹を問うものだろう。

 主な争点は、関電が算出した耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の値や、これに基づく規制委の判断が妥当かどうかだった。

 判決は、基準地震動の設定で重要な要素となる地震規模について、過去の地震データを基にした平均値より実際は大きい方向に懸け離れるなどの「ばらつき」が生じる可能性があり、規制委が定めた審査ガイドもそれを考慮する必要性を示していると指摘。

 にもかかわらず、関電はばらつきの考慮や数値の上乗せをせずに基準地震動を算出。規制委も上乗せの必要性の要否を検討することなく許可を出したとして、「審査すべき点を審査していないので違法」と位置付けた。

 判決が地震規模の設定で「ばらつき」を重視したのは、福島第1原発事故で電力会社などが災害規模を「想定外」としていたことの教訓を踏まえたものだろう。新規制基準自体がその反省を基に策定された経緯を考えれば、自らつくったルールを厳格に運用して規制委が審査するよう求めたのは当然の判断ではないか。

 規制委はこの判決を重く受け止め、大飯原発3、4号機だけでなく、同様の方式で基準地震動を算出していた全原発の審査を検証してもらいたい。

 それがなければ、規制委が「世界一厳しい」とする新規制基準に基づく審査と、それを根拠とした原発再稼働への、国民の不信感が広がることになろう。原発を主力エネルギーと位置付け再稼働に前のめりな政府の政策自体が、災害続きの日本における事故の危険性の高さと安全確保の難しさを考えれば妥当なのかどうか。改めて根本的な論議が必要だ。



[大飯原発判決] 許可取り消しは重大だ(2020年12月6日配信『南日本新聞』-「社説」)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、住民らが国に原発設置許可の取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁は原子力規制委員会の判断は誤りだとして許可を取り消した。

 東京電力福島第1原発事故の教訓を踏まえ原発の新規制基準が策定されて以降、運転差し止めを命じた司法判断はあったが、許可自体を取り消す判決は初めてだ。

 判決は規制委の審査に「看過し難い過誤、欠落がある」と厳しく指摘し、規制の在り方に強い疑問符を付けている。規制委は判決を重く受け止め、安全性の審査を検証すべきである。

 主な争点となったのは、原発を襲う可能性がある地震の揺れを示す「基準地震動」について、関電が算出した数値や、これを基に設置許可を出した規制委の判断が妥当かどうかだった。

 数値算出の基になる過去の地震データには平均値から外れた「ばらつき」があり、規制委の「審査ガイド」には「『ばらつき』も考慮される必要がある」と記載されている。

 判決は、関電が「ばらつき」を考慮せず、数値の上乗せもしなかったと指摘。上乗せの要否を検討せずに許可を出した規制委の判断は違法と結論づけた。

 福島第1原発事故への反省から、安全審査を独立して担う組織として設置された規制委である。自ら定めたガイドに厳密に従うことなく、起こり得る地震規模を過小評価したとすれば、甘いと批判されても仕方あるまい。

 新規制基準の下で審査に合格した原発は九州電力川内原発1、2号機など16基に上る。多くが今回否定されたのと同様の計算手法を用いている。

 国が控訴すれば判決の効力は直ちに生じない。だが、住民側勝訴が確定した場合、より厳格な基準で再評価し、改めて許可を得るまで稼働できなくなる可能性がある。そうなれば、全ての原発が無関係ではいられない。

 安倍前政権は事故後で原発に厳しい世論をよそに、再稼働を推進した。「世界で最も厳しい」とする新規制基準を世論を納得させる切り札とし、規制委がお墨付きを与えてきたと言える。

 ただ、原発の設置許可や差し止めを巡る訴訟や仮処分で運転を禁じる判断も複数でている。上級審などで覆され確定した例はないが、司法が警告を発した事実は重い。原発につきまとう「訴訟リスク」も認識する必要がある。

 菅義偉首相は、2050年までに温室効果ガス排出量を実質ゼロとする政策目標を掲げた。再生可能エネルギーの導入を軸にするという一方で、原発利用は「原子力を含むあらゆる選択肢を追求する」とあいまいだ。

 福島の原発事故からもうすぐ10年。首相は世論と真摯(しんし)に向き合い、エネルギーの将来像を明確にすべきである。



大飯許可取り消し(2020年12月6日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

再稼働推進への根本的疑義だ

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)について、大阪地裁は、原子力規制委員会の判断に誤りがあったとして設置許可を取り消す判決を出しました。規制委が、耐震性について、自ら定めた審査基準を踏まえた検討をしていないことを違法としました。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後、原発の設置許可を否定した司法判断は初めてです。各地の原発再稼働にお墨付きを与えてきた規制委の審査に根本から疑義を突き付けるものです。規制委は今回の判決を真剣に受け止め、審査をやりなおすべきです。

看過しがたい過誤・欠落

 この裁判は、福井県など11府県の住民約130人が大飯3、4号機をめぐり国の設置変更の許可取り消しを求めて提訴したものです。大きな争点は▽関電が設定した「基準地震動」が適切な値であるか▽国の規制機関である規制委が基準地震動を認めるにあたり、適切な審査をしたのか―でした。基準地震動は、原発で想定される地震の最大の揺れを示す値です。

 住民側は、関電の設定した基準地震動は過小で、想定を超える大きな地震が起きることが考慮されておらず、それを適正と評価して3、4号機の設置変更を許可した国の違法性を主張していました。

 地震の規模は、震源断層の長さなどから算出されます。そこで使われる計算式は、過去の事例から導かれたもので、算出されるのは平均的な地震規模です。実際に起きる地震の規模は、この平均値からずれる「ばらつき」があります。規制委も、福島第1原発事故の後に審査基準を見直すなかで、「ばらつき」を考慮する必要があることを「審査ガイド」に明記していました。

 ところが、関電は、「ばらつき」を考慮せず基準地震動を定め、規制委もそれを認めました。判決は、「審査ガイド」に定められた「ばらつき」の考慮がされていないことを指摘し、規制委の「調査審議及び判断の過程には、看過しがたい過誤、欠落がある」と結論付けました。自ら定めたルールすら守らず、設置変更を認可した規制委の姿勢は、極めて重大です。

 規制委は、他の原発の耐震性の審査でも同様のやり方で「合格」させています。地震の影響を過小評価した判断に基づき、運転を続けることは許されません。現在定期検査で停止中の大飯3、4号機は動かしてはなりません。

 規制委は、今回の判決を踏まえて、再稼働容認路線をやめるとともに、全ての原発の地震規模の見直しをすべきです。

 地震と火山のリスクと向き合い、原発運転を認めないとした司法判断は11年以降6回目です。いずれも福島第1原発が未曽有の被害をもたらした実態を踏まえたものです。地震多発国で原発を動かす危険はますます明白です。

規制委の「安全」根拠なし

 安倍晋三前政権は、規制委の安全審査は「世界一厳しい」などとして再稼働を推し進めました。菅義偉政権も今月決定した成長戦略実行計画で「原子力規制委員会によって安全性が確認されたものの再稼働」をすすめるとしています。福島原発事故への反省はどこへいったのか。規制委の審査が安全性を保証しないと示した司法判断を直視し、再稼働の推進と決別し、原発ゼロへかじを切る時です。





大飯原発判決 揺らぐ規制委への信頼(2020年12月5日配信『北海道新聞』-「社説」)

 形式上審査に合格さえすれば、原発再稼働の安全性は保証されるという、国の原子力政策を根本から揺るがす判決だ。

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県)の耐震性を巡り、住民らが原発設置許可の取り消しを求めた訴訟の判決で、大阪地裁はきのう、原子力規制委員会の判断は違法として許可を取り消した。

 東京電力福島第1原発事故を踏まえ、原発再稼働の新規制基準が定められて以降、運転差し止めを命じた判決はあるが、許可自体を取り消す司法判断は初めてだ。

 規制委の審査に合格した原発は全国で16基に及ぶ。これらの安全性にも疑義が生じかねず、各地で行政訴訟が相次ぐ可能性もある。

 国は判決を真摯(しんし)に受け止め、規制委はより厳格に判断する仕組みを再構築すべきだ。

 大飯3、4号機の耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)について、関電は最大856ガルと設定し、規制委は2017年5月、これを適正と判断した。

 これに対し、住民側は地震規模や基準地震動が過小評価され、耐震設計は不十分と訴えていた。

 大阪地裁はこの主張を認め「規制委の判断は地震規模の想定で必要な検討をせず、看過しがたい過誤、欠落がある」と指摘した。

 判決によると、規制委が定める審査ガイドラインは過去の地震規模の「ばらつきも考慮する必要がある」としている。にもかかわらず再稼働判断は、これらを「何ら検討せず」示されたという。

 自らの内規も守れないようでは、規制委への信頼は失墜する。他の原発審査でも同様の例がないか、再検証が必要だろう。

 規制委は発足時「国内外の多様な意見に耳を傾け、孤立と独善を戒める」との理念を掲げた。

 だが、ここ数年の間に、東日本大震災で被災した東北電力女川2号機(宮城県)や、東電の柏崎刈羽6、7号機(新潟県)の再稼働を認めた。稼働40年と老朽化した原発の運転も20年間延長した。

 いずれも地域住民などから安全性や事故時の避難態勢に疑問の声が出されていた。多様な意見に耳を傾けていたとは言い難い。

 安倍晋三前首相は「世界で最も厳しい水準」と繰り返し強調した。菅義偉政権もこれを踏襲する。こうした政権の後押しが、規制委審査を絶対視する新たな「安全神話」を生んではいまいか。

 福島第1事故から来年で10年がたつ。「想定外」を再び言い訳にすることは許されない。



大飯原発許可取り消し 指弾された規制委の姿勢(2020年12月5日配信『毎日新聞』-「社説」)

 福井県の関西電力大飯原発3、4号機について、設置許可を取り消す判決を大阪地裁が出した。東京電力福島第1原発事故以降、国の設置許可が取り消されたのは初めてだ。

 耐震設計の目安になる「基準地震動」の妥当性が焦点だった。原発で想定される最大の揺れだ。過去の地震データの平均値に基づいて算定されている。

 原子力規制委員会が定めた審査ガイドは平均値だけでなく、データの「ばらつき」も考慮するよう求めている。

 しかし、関西電力は、3、4号機について、平均値を超える可能性を算定に反映させる「上乗せ」をしていなかった。平均値では過小評価になると原告側は主張していた。

 判決は、規制委が上乗せの必要性について検討していなかったことを「看過しがたい過誤や欠落」と指弾した。2017年5月に出した設置許可は不合理であり違法であると結論付けた。

 福島原発事故を経験し、規制委は原発の再稼働を認めるための新規制基準を策定した。当時の田中俊一委員長は「世界最高レベルの厳しさ」と自負した。

 だが大阪地裁は、規制委が自ら作ったルールを守っていないと厳しく批判した。

 大飯3、4号機は現在、定期検査中で稼働していない。国側は控訴するとみられ、直ちに判決が確定するわけではない。

 しかし、国内の原発の大半は大飯原発と同様の方式で基準地震動が算定されている。判決が確定すれば、規制委は審査のやり直しを求められるのは必至だ。

 規制委は、福島原発事故の教訓から原発の安全性や信頼を回復する責任を負ってきた。今回の判決は、安全審査にあたっての取り組みが不十分であることを明らかにした。規制委は重く受け止めるべきだ。

 福島事故後、原発の運転を差し止める司法判断が相次いでいる。ただ、運転停止が確定したケースはない。

 規制委は教訓を忘れず、安全性の向上を絶えず追求しなければならない。そうしなければ、原発に対する国民の信頼を取り戻すことはできない。



原発許可取り消し 実態無視の異様な判決だ(2020年12月5日配信『産経新聞』-「主張」)

 大阪地裁が4日、関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の原子炉設置変更許可を取り消した。

 原子力規制委員会の安全審査に過誤があるとして、福井県などの住民が国に対して求めた請求を認めたものだ。

 原子炉の設置許可は、原発存立の根本に関わる事項である。

 国が控訴して当然の前代未聞の判決である。

 判決のポイントは、平成23年の東京電力福島第1原発の過酷事故を踏まえて設置された原子力規制委員会が両機に対して行った耐震性の審査のプロセスに不合理な点があるとしている点だ。

 「規制委の調査審議および判断の過程には、看過しがたい過誤、欠落があるものというべきである」と断じている。

 具体的には、原発の敷地における地震の揺れを推定する計算式の用い方に対してのクレームだ。

 計算式から求められる解は、地震動の平均値であって、それを上回る揺れのばらつきの評価などが必要であるのに、それが欠落した規制委の検討は「審査すべき点を審査していないので違法である」と強い調子で論難している。

 だが、裁判長は原発の安全対策の基礎となる基準地震動の算定に当たって規制委が関電をはじめとする電力会社に求める厳しい要請を軽視していないか。

 規制委は電力会社が提示する断層の長さなどについて、より大きい地震動が推定されるように拡大設定を指示するのが常である。

 揺れのばらつき幅を包含する、さらなる安全重視の姿勢に立った慎重な審査がなされているとみるべきだろう。この現実から目をそらせた判決は問題だ。

 最高裁は平成4年、伊方原発訴訟の上級審判決で安全基準の適合性について「科学的、専門技術的知見に基づく意見を尊重して行う行政側の合理的判断に委ねると解するのが相当である」との見解を示している。

 今回の大阪地裁判決は、原発の安全性そのものではなく、規制委という行政側の判断の瑕疵(かし)の有無に焦点を絞ったものだが、最高裁の考えの恣意(しい)的な否定と言わざるを得ない。

 近年の原発訴訟からは「司法リスク」という言葉が生まれている。原発の活用に当たって国が明確な姿勢を示すことが必要だ。



大飯設置許可取り消し(2020年12月5日配信『福井新聞』-「論説」)

規制委は重く受け止めよ

 関西電力大飯原発3、4号機の耐震性を巡り、福井県などの住民らが起こした訴訟の判決で大阪地裁は、新規制基準に適合するとした原子力規制委員会の判断を「看過し難い過誤、欠落がある」とまで断じ、設置許可を取り消した。

 これまでの原発を巡る司法判決では、個々の安全性を判断して運転差し止めなどを命じたケースはあったが、今回は新規制基準に基づく原発の安全審査の手法を否定した初の判決であり異なる重大な意味を持つ。同様の手法で基準地震動を算出してきた多くの原発の信頼性についても影響が及ぶことは避けられない。規制委は判決を重く受け止めなければならない。

 2013年7月に施行された新規制基準は、11年の東京電力福島第1原発事故以前、炉心溶融などの重大事故への対策は電力会社の自主的な取り組みに任されていたことの反省を踏まえたものだ。同様の事故を二度と起こさないとの使命を負って策定、施行された。以降は自然災害やテロへの対策も必須とし、独立性を高めた規制委が審査を担っている。

 今回の判決は、規制委が適合性を審査し、再稼働に「お墨付き」を与える手続きに疑念を突き付けた格好だ。控訴すれば判決の効力は直ちに生じないとはいうものの、住民側の勝訴が確定した場合、より厳格な耐震基準で再評価し、改めて許可を得るまで稼働できない可能性がある。電力関係者が「判決が確定すれば、全ての原発が無関係ではなくなる」と危惧するのも当然だろう。

 福島事故後の県内原発に関する訴訟や仮処分では、大飯原発3、4号機を巡る14年の福井地裁が初めて運転差し止めを命じ、関電高浜原発3、4号機についても15年に福井地裁、16年に大津地裁が差し止めの仮処分を決定している。ただ、いずれもその後の上級審などで覆され、確定した例はない。

 今回、規制委と司法の判断が逆転したことで、再び翻弄(ほんろう)される事態となった。規制委の判断に不備があるのならば、安全最優先の観点から、国は判決の趣旨に沿ってそれぞれの原発で本当に安全と言えるのかを再検討し、経過や結論について住民に丁寧に説明していく責務があろう。

 そもそも国が原発をどう活用しようとしているのかが見えてこない。菅義偉首相は50年までに温室効果ガスの排出量を実質ゼロとする政策目標を掲げ、太陽光など再生可能エネルギーの導入拡大を軸とする一方、原発については「原子力を含むあらゆる選択肢」と言及するのみにとどまっている。そうした曖昧な姿勢に終始することなく、将来像を明確に示すべきだ。



大飯原発判決/耐震性を根本から見直せ(2020年12月5日配信『神戸新聞』-「社説」)

 関西電力大飯原発3、4号機(福井県おおい町)の耐震性を巡り、安全審査基準に適合するとした原子力規制委員会の判断は誤りだとして、住民らが国に対し、原発設置許可の取り消しを求めた訴訟で、大阪地裁は許可を取り消す判決を出した。

 東京電力福島第1原発事故を踏まえて策定された新規制基準の下で、設置許可を取り消す判決が出たのは初めてだ。地震による原発事故の懸念に目を向けた画期的な判断といえる。

 関電側は控訴の意向を示している。大飯3、4号機は定期検査で停止中だが、住民側の勝訴が確定すればより厳しい基準で評価し、再び許可を得るまでは稼働できない可能性がある。

 国内の原発の多くは、大飯原発と同様の手法で耐震設計をしているという。再稼働した他の原発も耐震性が十分かどうか、一から見直すべきだ。

 裁判の大きな争点になったのは、耐震設計の目安となる揺れ(基準地震動)の評価を基に設置を許可した規制委の判断が妥当かどうか、だった。

 原告側は、基準地震動の算出で、過去の地震データの数値に平均値から外れたものなどがある点が考慮されておらず、地震の規模や基準地震動が過小評価されていると主張した。

 それに対し国側は、数値のばらつきを考慮する必要はないと反論したが、判決は基準地震動を算出する地震規模の想定で必要な検討をせず「看過しがたい過誤、欠落がある」と厳しく指摘した。耐震設計の根本が揺らいだといえる。

 大飯3、4号機については2014年、福井地裁が運転差し止めの判決を出して「地震対策に構造的な欠陥がある」と指摘していた。だが17年に規制委は新規制基準に基づく審査で合格を出し、再稼働させた。規制委の安全への姿勢も、改めて問われなければならない。

 福井地裁判決後、当時官房長官だった菅義偉首相は「規制委が世界で最も厳しい安全基準で審査し、その結果を待って(再稼働させる)ということだ」と述べ、意に介さなかった。

 今度こそ司法の判断を重く受け止めてもらいたい。住民を危険にさらす恐れが指摘される原発の再稼働は中止すべきだ。







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