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(論)コロナと追加経済対策に関する論説(2020年12月8・9・10・11・13・18日)

3次補正予算案/いま必要なのは即効策だ(2020年12月18日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が続く中、政府は2020年度第3次補正予算案を閣議決定した。

 全国各地で感染者数が過去最多を更新している。医療従事者は疲弊し感染経路を追う保健所の機能は限界に達している。必要な人が速やかにPCR検査を受けられる枠組みが整う前に医療が危機にひんしている。

 ところが、追加経済対策の経費として19・1兆円余りを盛り込んだ今回の補正予算案には、なぜ、いまこれが、と首をかしげたくなる施策が目立つ。

 いま必要なのは医療崩壊を食い止めて国民の命を守り、暮らしを維持するための即効策である。

 政府は年明けの通常国会に予算案を提出する方針だが、医療機関は年末年始も休みなしの稼働が求められる。予算成立を待たずとも、まだ使い切れていない本年度予算の予備費で医療従事者の手当てや器材の確保を速やかに進めるべきだ。

 補正予算案では医療機関への支援や自治体への臨時交付金など感染拡大防止策に4・3兆円を計上した。

 一方、残る約15兆円は経済構造転換や国土強靱(きょうじん)化に充てられる。感染拡大防止策の3倍以上の巨費となっている点には強い違和感を覚える。

 このうち約1兆円は、観光支援策「Go Toトラベル」の延長に計上した。感染が収束すれば景気刺激策として期待できるが、医療体制の逼迫(ひっぱく)が現実味を帯びる中では必要性が疑われる。

 菅政権が政策の柱に掲げるデジタル改革やグリーン社会の実現にも3兆円近くを投じる。いずれも中長期的な施策であり、緊急措置が目的の補正予算にはそぐわない。

 民間の技術開発支援などに充てる基金やファンドも設けるが、具体的な対象は明確になっておらず、効果は不透明だ。

 補正予算は編成期間が短く、当初予算に比べて査定が甘くなりがちだ。特に衆院選を控え、中身以上に規模を膨らませることで政権の「やってる感」をアピールする手法が繰り返されている感が否めない。

 3度にわたる補正で本年度の一般会計総額は175兆円を突破する。新規国債発行額も112兆円に達する。コロナ禍で景気が大きく落ち込む非常時に、財政出動で経済活動を下支えするのはやむを得ない。

 だが政策効果を見極めた適切な予算配分は、非常時こそ重要になる。ばらまきでは国民の不安は決して解消されない。そのことを政府は認識するべきだ。

 編成作業が大詰めを迎えた21年度当初予算案ともども、中身が実効性を伴っているか、国会で十分な審議を重ねる必要がある。





追加経済対策 効果的な施策へ不断の見直しを(2020年12月13日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政府は、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた事業規模約73兆6千億円の追加経済対策を決定した。2020年度の第1次、第2次補正予算で、それぞれ117兆円を超えた規模に続く大型の財政出動となる。

 対策では、21年度中に「コロナ前の経済水準に回帰させ、民需主導の成長軌道に戻す」との目標を掲げる。新型コロナの影響長期化を見据え、経済に軸足を置いた対策だが、前提である感染拡大防止策が十分かどうか不安が拭えない。

 「第3波」に見舞われている現状を踏まえれば、今後も感染や経済の状況は変化することが考えられる。将来への設備投資などに集中し、足元の対応がおろそかになっては本末転倒だ。医療従事者や生活困窮者らに、これ以上しわ寄せがいかないよう、効果的な施策へ不断に見直しを続けなければならない。

 対策のうち、国が低金利で貸し出す財政投融資などを含めた財政支出は計約40兆円に上る。国の予算は約30兆6千億円で、20年度第3次補正予算案と21年度当初予算案に計上し「15カ月予算」として一体編成する。

 感染拡大防止策では、国が費用負担するワクチンの接種体制整備や、医療機関向けの「緊急包括支援交付金」の増額などを盛り込んだ。しかし、事業規模は約6兆円と、財政支出の2割にも満たない。「第3波」では感染者数が増え続け、医療崩壊の危機が迫っている。看護師の不足といった課題に対応するため、さらなる支援の拡充を検討する必要があろう。

 暮らしや雇用に関しては、困窮者への家賃補助を最長12カ月に延長するほか、休業手当の一部を国が補塡(ほてん)する雇用調整助成金の特例措置を現行水準のまま来年2月まで延長することを決めた。

 ただ今回は、こうした当面の支援だけでなく、コロナ後の対策に重点を置いている。中小企業の業態転換に対する補助をはじめ、脱炭素化や大学の研究開発に巨額の基金を設けた。取り組みが効果を生むには時間を要そう。企業への人材やノウハウ提供といった環境整備のほか、基金に関しては、運用状況の公表やチェックが欠かせまい。

 観光支援事業「Go To トラベル」も、来年6月末をめどに延長する。だが、相次ぐ見直しで混乱する事業をこのまま続けることが妥当か。国民への説明は足りていない。

 政府が使途を決められる予備費も膨らむ。21年度当初予算案では、5兆円を用意することになった。先行きが不透明な中、不測の事態に備えざるを得ない状況だが、予備費はあくまでも例外規定。使用する場合は事前に国会で説明し、了承を得なければならない。

 また、20年度の新規国債発行額は初めて100兆円を突破する見通しとなっている。政府には機動的な対応が求められる一方で、財政規律への目配りも忘れてはならない。





追加経済対策 精査し無駄の削減図れ(2020年12月11日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 政府は新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策を閣議決定した。国の予算案に盛り込まれるのは約30兆6千億円、民間投資なども加えた事業規模は約73兆6千億円に上る。

 菅義偉首相の看板政策である脱炭素社会実現とデジタル化推進、さらには国土強靱(きょうじん)化などの予算規模が膨らんだ。このほか観光支援事業「Go To トラベル」延長にかかる費用も含まれるが、コロナ対策との関連性が薄い事業が並んでいるとの印象は否めない。

 感染拡大防止と経済を両立させると言いながら、経済を優先する姿勢が明らかだ。それは来年秋までに行われる総選挙を視野に入れてのことのようにも見える。国民の意識と隔たりがないか気掛かりだ。

 感染拡大が日々深刻化している。医療体制の逼迫(ひっぱく)により自衛隊から看護官の派遣を受ける自治体もある。そうした危機的状況にもかかわらず、緊急性が乏しい内容を含む経済政策が打ち出されることは理解に苦しむ。

 そもそもトラベル事業は安倍晋三前首相が3月に策定を指示した緊急経済対策に「感染拡大抑制後の景気刺激策」として登場した。緊急事態宣言を目前にしたタイミングで、言いようのない違和感があった。

 感染拡大を抑制するためには「人の移動」を止めることが必要だ。にもかかわらず政府はトラベル事業になかなかブレーキをかけようとしない。ここにも経済優先の姿勢が見える。延長を考える以前に事業中断の基準を明確化すべきではないか。

 ワクチン接種を進める費用や医療機関向け支援交付金増額など、対策の核心となる感染拡大防止策の事業規模は約6兆円。医療崩壊という最悪の事態を防ぐため、体制強化にもっと力を注いでもらいたい。

 ひとり親世帯への給付金再支給、困窮者への家賃補助延長などを行うのは当然だ。まだ支援の手が十分行き届いていない家庭があるかもしれない。目配りを忘れてはならない。

 コロナ後をにらんで菅首相が力を入れるグリーン、デジタル分野は成長戦略として今後ますます重要になるだろう。ただこうした構想はむしろコロナと切り離して、国の未来像とともに語り、構築していくのが筋ではないか。

 将来をにらむ経済対策であるならば、増加の一途をたどる国債発行額に表れる財政悪化から目をそらすことはできない。財政健全化をもっと強く意識した経済政策にする必要がある。

 コロナ対策費がかさむ中で、国土強靱化約5兆9千億円、脱炭素社会実現に向けた基金約2兆円など事業規模は巨額だ。コロナ対策を優先するのは当然として、関連が薄い事業につぎ込む予算にはおのずと限度がある。予算化に当たっては事業の透明性を保ち、国会で効果や予算額について精査して無駄の削減に努めることが求められる。



コロナ経済対策(2020年12月11日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)
2020年12月11日

◆急ぎ必要な分に限るべきだ◆

 政府は新型コロナウイルス感染拡大を受けた新たな経済対策を閣議決定した。事業規模は73兆6千億円で、国が低利で貸し出す財政投融資(財投)を含め財政支出は40兆円に上る。

 医療現場や観光・飲食業の事業者への支援、雇用の維持などには十分な対策費を確保する必要がある。だが主な財源を2020年度第3次補正予算案で手当てするのなら、事業は21年度の当初予算が執行可能になるまでの急ぎ必要な分に限定するべきだろう。

 対策には、50年の脱炭素化に向けた研究開発を支援する2兆円の基金や、省エネ性能が高い住宅を新築した場合に家電などと交換できるグリーン住宅ポイント制度などが含まれているがこれらは本来、21年度予算案で対処すべき案件ではないのか。

 5カ年計画に基づく国土強靱(きょうじん)化の事業や、企業や省庁の枠を超えてシステムの標準化や互換性を高める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」関連事業などもそうだが、対策に盛り込まれたことには違和感を拭えない。

 政策が不要と言うのではない。「コロナ後を見据えた経済構造の変換」に向けては、菅義偉首相が強調するようにグリーンやデジタルなどの分野が新たな成長の突破口になるのは間違いない。だが、コロナ感染拡大防止を最大の目的とした対策の中に、これほどの大規模な事業を加えることに合理性はあるのか。必要であれば精査を経て21年度当初予算に盛り込むのが筋ではないか。これでは衆院解散・総選挙を意識した規模拡大との批判は免れられない。

 政府は本年度、新型コロナ対策として既に2度の補正予算を編成。予算規模25・7兆円の1次補正では、1人一律10万円の給付金や観光・飲食喚起事業「Go To キャンペーン」の予算を確保。31・9兆円の2次では雇用調整助成金の拡充や家賃支援の資金を手当てした。

 3次補正は21年度予算が成立・執行可能となる来春までの財政支出の隙間を埋め、21年度につなぐ一体編成の「15カ月予算」として運用するという。しかし、補正予算案は当初予算案と比べると査定が甘く、往々にして、本予算の「抜け穴」として使われてきた。今回、補正予算案に多くの事業を盛り込んだのも、そうした背景があるのではないか。

 地方自治体のコロナ対策に充てる臨時交付金も1兆5千億円拡充する。47都道府県で6千億円超の不足額が生じており必要性は理解できる。だが、ランドセルの配布や公用車購入など関連が疑わしい使途も目につく。適正使用へのガイドラインを設けるべきだ。





追加経済対策 優先順位を間違えている(2020年12月10日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府が追加経済対策を閣議決定した。国の予算は約30兆円、事業規模は約73兆円に上っている。当初に見込まれた額から大幅に膨張した。

 「第3波」とみられる感染が収まらない。いま優先するべきは感染拡大防止策だ。それなのに投じられるのは6兆円だ。予算の2割にも満たない。

 医療機関向けの支援交付金や、休業要請に応じた飲食店への協力金に使える交付金は増額するものの、感染対策として十分といえるのか疑問が残る。

 雇用対策や生活支援も心もとない。企業が休業手当の一部を補填(ほてん)する雇用調整助成金の特例は来年2月末までで、3月以降は縮小する。減収した人に最大20万円を貸し付ける緊急小口資金の特例措置も来年3月末までだ。

 一方で観光支援事業の「GoToトラベル」などは来年6月末までをめどに延長する。人の移動が伴い感染拡大の一因との指摘も根強い。専門家からも運用見直しを求める声がある中で適切な判断なのか。経済対策からは政府が感染拡大防止に取り組むメッセージが伝わってこない。

 菅義偉首相は「来年度中にコロナ前の経済水準に回帰させる」との目標を掲げる。経済を優先させるあまり、迅速性が求められる足元の感染防止がおろそかになるのは本末転倒だ。優先順位を間違えていないか。

 規模が膨らんだのは、菅首相が掲げる脱炭素化に2兆円の基金、大学の研究開発の基金に4兆5千億円を支出し早期に10兆円規模にするなど、構造転換と銘打った政策に巨額を投じるためだ。国土強靱(きょうじん)化も約6兆円を計上する。

 長期的な脱炭素化などへの取り組みは、国内経済の構造転換に必要ではある。ただし、基金は具体的な補助対象が固まっていないのに規模だけが決まっており、無駄遣いも懸念される。

 経済対策は今回が本年度で3回目になる。本年度の新規国債発行額は100兆円を超え、財政は極度に悪化する見通しだ。

 その中でも政府は事業規模の拡大を優先した。国土強靱化では当初は5年で12兆円程度の見通しだったのに、使途が曖昧なまま15兆円に増額されている。

 次期衆院選をにらみ、公共事業の予算増額を求める与党の要求が優先された形である。財政状況やコロナ禍を直視せず、選挙を意識した経済対策は将来に重い付けを回すことになる。



政府の追加経済対策(2020年12月10日配信『福井新聞』-「論説」)

だれのための規模拡大か

 政府が閣議決定した新たな経済対策は、国の予算が約30兆6千億円、民間投資を含めた事業規模は約73兆6千億円と巨額になる。

 ただ、新型コロナウイルス感染拡大防止を最大の目的とした対策のはずが、菅義偉首相肝いりのグリーン(脱炭素社会の実現)やデジタルといった分野が盛り込まれるなど合理性の観点からは違和感が拭えない。急務のコロナ対策との抱き合わせで国会を通過させやすいという思惑からだろう。真に必要なら2021年度当初予算に計上し、精査を経るのが筋だ。衆院解散・総選挙を意識した規模拡大との批判は免れない。

 新型コロナの急拡大で景気は再び下降傾向にあり、政府には路頭に迷いかねない人や世帯を早急に救済する責務がある。ひとり親世帯を支援する臨時特別給付金は年内にも再支給することが決まった。さらに、困窮する人の家賃を公費で補助する住居確保給付金の支給期間を3カ月延長し、休業などで減収した人に最大20万円を特例で貸し付ける緊急小口資金の申請期限も来年3月末まで延長する。まずはこれら支援策の周知徹底を図りたい。

 雇用対策の面では、企業が支払う休業手当の一部を補塡(ほてん)する雇用調整助成金も延長される。ただ、来年2月までの措置で3月以降は段階的に縮小していくとの方針だ。第3波の収束が見通せない中、さらなる延長も視野に入れるべきだろう。対照的なのが観光支援事業「Go To トラベル」の来年6月末までの延長であり、感染リスクを高めるとの国民の不安をよそに首相や与党は前のめりだ。感染状況に応じた弾力的な運用が欠かせない。

 政府が「コロナ後を見据えた経済構造の変換」に向けて目玉としたのが脱炭素化や、大学研究の基盤強化のための大型基金創設だ。これらの基金は支出期間が複数年にまたがるのに加えて、無駄遣いを防ぐ監視の目が行き届きにくい面が否めないという。グリーンやデジタルが新たな成長の突破口として期待されるのは理解できるが、国民の目に今、どうしても必要とは映っていないはずだ。

 懸念されるのは、財源とする20年度の国債発行額が当初予算と1、2次補正の計約90兆円に加え、3次補正で100兆円を突破するのが確実なことだ。例年の当初予算に匹敵する額になる。確かに100年に一度の国難であり、出し惜しみは避けたいが、一方で政府、与党から一向に気に掛ける声が上がってこないという。それどころか、国土強靱(きょうじん)化予算が積み増しされるなど防災・減災対策が選挙対策にすり替わったかのような感もある。規模拡大ありきでは、将来へのつけ回しは膨れ上がる一方だ。



【追加経済対策】規模ばかりでは困る(2020年12月10日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染拡大を受けた政府の追加経済対策は、国の予算が約30兆6千億円に上る。民間投資を増やす効果を含めた事業規模は約73兆6千億円と大型となった。

 当面の施策に加えてコロナ収束後もにらみ、事業規模は大きく膨らんだ。必要なことはちゅうちょなく行わなければならない。しかし、傷ついた経済の浮揚に前のめりになるばかりで中身が伴わなければ、効果を期待できないだけでなく、将来の負担を増やしてしまう。

 感染拡大の防止は喫緊の課題だ。医療機関向けの病床確保の後押し策や、営業を短縮した飲食店への協力金に活用できる交付金などを盛っている。医療体制の拡充や事業者支援は滞りなく実施したい。

 同時に景気悪化という現実に向き合い、経済活動との両立にも取り組む必要がある。

 観光支援事業「Go To トラベル」は、制度を段階的に見直しながら来年6月末まで延長する。感染者が急増する現状に、人の移動が感染リスクを高めるとの批判が根強くある中、事業の在り方は詳細に検討されなければならない。

 また、菅義偉首相が掲げる脱炭素化や大学の研究開発に巨額の基金を設ける。過去2回の対策が生活や企業活動の支援に重点を置いたのとは違いをみせる。

 確かに、収束が見通せなくてもコロナ後を見据えた成長戦略を描くことは不可欠だ。しかし、中長期的な課題であり、緊急性は乏しいものにこの段階でどれほどの重きを置くかは十分な検証が求められる。

 2050年までに温室効果ガスを実質排出ゼロとする目標に向けた2兆円の環境基金は、洋上風力などの技術開発を支援する。民間企業の研究や設備投資につなげる意向のようだが、補助対象は明確ではない。

 基金やファンドは、長期的な政策課題に対して機動的な財政支出を可能にする。一方で、外部の監視が届きにくいため使途が分かりにくくなり、無駄遣いにつながりやすいと危惧される。今回、成長戦略を推進する受け皿として基金を多用しているだけに注視する必要がある。

 防災・減災の国土強靱(きょうじん)化の新たな費用も膨らんでいる。

 次期衆院選を意識する与党が強靱化予算の増額を主張した。当初は5年で12兆円程度とする方向で調整された事業規模は15兆円になった。防災対策の必要性は言うまでもない。だが、検証もないままで事業を進めては効果が疑問視される。

 追加経済対策は、感染拡大が深刻化するにつれて、具体的な中身より規模を膨ませることを優先する結果となったようだ。2020年7~9月期の需要不足が年換算で34兆円と算出された分を補正予算で穴埋めするような要求が出された。

 2020年度の新規国債発行額は100兆円を超え、財政は極度に悪化する。歳出抑制や財政再建を迫られるのは避けられない。そこへの目配りも怠ってはならない。



追加経済対策 規模ありきで中身に疑問(2020年12月10日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は追加の経済対策を閣議決定した。事業規模は73兆円を上回る。これを裏付ける国の予算は約30兆円で、本年度第3次補正予算案と来年度当初予算案に計上する方針だ。

 勢いが衰えない感染拡大の抑止に全力を挙げることに異論はない。感染者の受け入れに追われる医療機関を支えるのはもちろん、コロナ禍で日々の暮らしや事業が脅かされている人や企業への手当ても欠かせない。事態が収束するまでは手厚い支援の継続が求められる。

 ただ、今回の追加対策全体を見渡しても、こうした緊急性の高い施策は一部にすぎない。

 事態収束後を見据えて経済構造の転換を促す取り組みや、防災・減災を目的とした国土強靱(きょうじん)化の施策で、事業規模が積み増される結果となっている。

 菅義偉首相が追加経済対策の策定を指示して以降、与党を中心にまずは規模ありきで議論が進んだと言わざるを得ない。いつ、どう使うかはっきりしない基金が多用されているのも気掛かりだ。不要不急の事業が紛れ込んでいないか、国会で厳しく点検しなければならない。

 追加対策は直面する懸案よりコロナ禍後に軸足が置かれ、その中身にも疑問がある。一例が雇用のセーフティーネットだ。感染拡大が続く中、休職者を支える雇用調整助成金の特例措置を来年3月以降に段階的に縮減するという。

 雇用の悪化は景気そのものより遅れて顕在化する。心配なのは「これから」である。実際、希望退職を募集する企業が増えてきた。支援の縮小を打ち出すのは早計ではないだろうか。

 一方で、足元の感染拡大の一因ともされる需要喚起策「Go To キャンペーン」は来年6月末までの延長を決めた。菅首相が主導した政策だからかもしれないが、経済のアクセルとブレーキの踏み方に矛盾はないか。慎重に検討すべきだ。

 国のコロナ対策は4月と6月に補正予算が成立し、その事業規模は約234兆円に達する。今回の追加対策を加えれば国内総生産(GDP)の5割を超す過去に例のない規模になる。欧米諸国と比べ、規模の大きさばかりが抜きんでている。

 日本は景気の戻りが鈍い。政府は、7~9月期のGDPで年換算34兆円あった需給ギャップを念頭に対策の規模を決めたという。GDPを3・6%程度底上げすると試算している。

 一連の対策の財源はほとんど借金である。本年度の新規国債発行額は初めて100兆円を超える見込みとなった。異常な「借金漬け財政」に、私たち国民も慣れてしまってはならない。



追加経済対策 規模優先の印象拭えない(2020年12月10日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大によって悪化した景気を回復させるため、政府は事業規模73兆6千億円の追加経済対策を策定した。国が低利で貸し出す財政投融資を含む財政支出は40兆円に上る。政府は裏付けとなる2020年度第3次補正予算案と21年度当初予算案を「15カ月予算」として一体編成する方針だ。

 医療現場の支援や雇用維持などに必要な施策が講じられることは歓迎したい。ただ、これで3回目となる今回の対策には、脱炭素化やデジタル支援など中長期的な政策まで盛り込まれており、中身より規模を優先させた印象が拭えない。

 中長期的な政策では、50年の脱炭素化に向けて研究開発を支援する2兆円の基金や、省エネ性能が高い住宅を新築した場合に家電などと交換できるポイント制度などが事業化される。国土強靱化[きょうじんか]事業や、企業・省庁の枠を超えてシステムの標準化や互換性を高める事業なども盛り込まれた。

 菅義偉首相が強調するように、新型コロナが沈静化した後はグリーンやデジタルなどの分野が新たな成長の突破口になるのは間違いないだろう。だが、感染拡大防止を最大の目的とする今回の経済対策に、これほどの事業を詰め込む必要があるだろうか。

 財政支出の3分の2は20年度第3次補正予算で賄われる。補正予算は当初予算よりも査定が甘くなりがちで、本予算の「抜け穴」として使われることも多かった。精査を避けるために、多くの事業を補正に振り分けたのだとすれば、衆院解散・総選挙を意識した規模拡大との批判を受けても仕方あるまい。緊急性の低い事業は当初予算で対処すべきだ。

 また、観光支援事業「Go To トラベル」は、来年1月末としていた期限を来年6月末まで延長する方針となった。消費の下支えに一定の効果をもたらす事業ではあるが、感染の「第3波」への危機感が強まっているこの時期の延長決定には疑問も残る。

 共同通信社が今月5、6両日に実施した全国電話世論調査によると、「Go To トラベル」を巡る政府対応に関する回答で最も多かったのは「全国一律に一時停止するべきだ」の48・1%だった。年末年始の帰省や旅行に関する問いでも、「予定していない」の83・6%が「予定している」の7・2%を大きく上回った。

 政府は、この事業と感染拡大を結び付ける証拠はないとする専門家の意見を事業継続の根拠としている。しかし、東大などの研究チームからは、事業を利用した人の方が、利用しなかった人よりも新型コロナ感染を疑わせる症状を多く経験した、との調査結果も示された。事業継続の是非が改めて問われよう。

 世論調査では、菅内閣の支持率が前回11月から12・7ポイント減の50・3%に急落した。政府は、国民が経済活動よりも感染防止を求めていることを正面から受け止め、施策に反映させるべきだ。



政府追加経済対策(2020年12月10日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

国民の願いと逆さまの中身だ

 菅義偉内閣が新型コロナウイルス感染の急拡大を受けて追加経済対策を決定しました。医療提供体制が各地で危機的状態に陥っている中、医療機関の減収を補てんする措置はなく、PCR検査拡充に必要な全額国庫負担の枠組みもありません。中小業者が「このままでは年を越せない」と声を上げているにもかかわらず、持続化給付金、家賃支援給付金は打ち切りです。その一方で感染防止を妨げる「Go To トラベル」は来年6月まで延長します。やることが逆さまです。

感染拡大対策の拡充なし

 事業規模は73・6兆円です。財政支出40兆円のうち感染防止策は5・9兆円と2割に満たない金額です。現に起きている感染第3波に対応した政策の拡充がまったくありません。医療機関が求めているのは、受診控えや手術、検査の延期による著しい収入減少への補てんを含めた支援です。追加対策はこの要求に背を向けています。

 地方自治体がPCR検査を大規模に広げようとしても国が費用の半分しか負担しないことが障害になっています。しかし全額国庫負担の仕組みは設けませんでした。感染対策のはなはだしい軽視です。感染を抑え込まないことには経済成長もありません。

 財政支出のうち「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」が18・4兆円と半分近くを占めます。「コロナ後」ではなく、営業継続の瀬戸際にある中小企業や個人事業主を支援すべきです。中小企業対策は新事業の展開や業態転換への補助金創設をはじめ「生産性の向上」「事業再構築」が中心です。持続化給付金の再支給を拒み、倒産、休廃業を防ぐ支援策は皆無です。「淘汰(とうた)を目的とするものではない」とわざわざ言い訳するところに狙いが感じられます。

 休業手当の一部を助成する雇用調整助成金の特例措置は来年3月以降、段階的に縮減します。雇用情勢は今後も悪化が懸念されています。休業している人たちを失業者にして放り出すことになりかねません。

 「ポストコロナ」の冒頭に置いたのが「デジタル改革」です。次世代通信規格「5G」以後の技術開発促進をはじめ大企業への支援策がずらりと並んでいます。マイナンバーカードの普及も「一気呵成(かせい)に進める」としています。マイナンバーカードと健康保険証の一体化も明記しました。個人情報保護の点でリスクが指摘され、医療機関の負担になることが懸念されています。コロナ対策とおよそ無関係な政策です。今、急いで盛り込むものではありません。

危機に乗じ財界要求推進

 住民の個人情報を集積、管理する「スーパーシティ構想」や不要不急の大型公共事業も推進します。財界の要求で進めてきた政策をコロナ危機に乗じて実現させようとするのはやめるべきです。

 追加対策は10兆円の予備費を上積みします。第2次補正予算の予備費が7兆円も残っているのに政府は使い道を示しません。この上、巨額の予備費を膨らませることは財政民主主義に反しています。

 国費30・6兆円は2020年度第3次補正予算案、21年度予算案に計上されます。医療と検査の抜本的拡充、暮らしと営業への根本的転換が必要です。





追加経済対策 いま必要な施策優先だ(2020年12月9日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府はきのう、コロナ禍を受けた追加経済対策を閣議決定した。

 医療機関や自治体向けの交付金増額や雇用調整助成金の特例措置延長に加え、脱炭素化への研究開発を支援する2兆円の基金創設やデジタル関連経費も盛り込んだ。

 感染抑止と収束後の経済成長の両方を狙い、事業規模は73兆6千億円に上る。うち60兆円弱は将来を見据えた政策や防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化に充てられる。

 成長への手を打つことは大切だが、コロナを理由に関連性や緊急性が乏しい事業も詰め込み、規模を膨らませた印象は拭えない。

 足元では感染拡大が続き、医療は崩壊寸前だ。働く場を失って日々の生活に困る人が増え、倒産や廃業に追い込まれる企業も多い。ひとり親家庭の苦境や自殺者増加にも歯止めがかからない。

 事業規模を積み上げても、いま逼迫(ひっぱく)している医療現場を支え、苦しんでいるところに必要な支援が届かなければ意味がない。

 菅義偉首相は感染拡大への危機感が薄く、肝心なところで対応が後手に回っているのではないか。

 特に医療体制強化は、眼前の感染増を受けた応急処置の域を出ない。対策を小出しにしては追加策を迫られてきた過去と重なる。

 さらなる感染拡大も想定し、医療従事者の待遇を含め安心できる環境を整えることこそが必要だ。コロナ対応予備費の残りも使い、一刻も早く対処すべきである。

 経済対策を巡っては与党から内容より規模を競う発言が相次いだ。国土強靱化は5年間で15兆円を積み増す。災害への備えは重要だが、それだけの額が必要なのか。

 規模優先では中身の精査が甘くなり、ばらまきが懸念される。来秋までに行われる衆院選へアピールを狙ったとみられても仕方ない。

 今は財政支出が膨らんでも国民の命と暮らしを守る局面だ。だからといって効果の薄い事業が追加され借金だけが残るのでは困る。本当に必要で役に立つ施策かどうかを吟味することが欠かせない。

 首相肝いりの脱炭素化を含め、基金をつくって複数年にわたる事業の財源を確保する方式が多いのも気がかりだ。創設後の使途や効果にも目を光らせねばならない。

 「Go To」事業延長も不安が残る。感染拡大時に適切に対応できる制度への見直しが急務だ。

 政府は対策の裏付けとなる本年度第3次補正予算案と来年度予算案を近く決める。3次補正は急を要す事業に絞り、他は来年度予算でしっかり議論する必要がある。





コロナ経済対策(2020年12月9日配信『東奥日報』-「時論」/・『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

違和感ぬぐえず

 政府は新型コロナウイルス感染拡大を受けた新たな経済対策を閣議決定した。事業規模は73兆6千億円で、国が低利で貸し出す財政投融資(財投)を含め財政支出は40兆円に上る。

 医療現場や観光・飲食業の事業者への支援、雇用の維持などには十分な対策費を確保する必要がある。だが主な財源を2020年度第3次補正予算案で手当てするのなら、事業は21年度の当初予算が執行可能になるまでの急ぎ必要な分に限定するべきだろう。

 今回の対策には、50年の脱炭素化に向けた研究開発を支援する2兆円の基金や、省エネ性能が高い住宅を新築した場合に家電などと交換できるポイント制度などが含まれているがこれらは本来、21年度予算案で対処すべき案件ではないのか。

 5カ年計画に基づく国土強靱(きょうじん)化の事業や、企業や省庁の枠を超えてシステムの標準化や互換性を高める「デジタルトランスフォーメーション(DX)」関連事業などもそうだが、対策に盛り込まれたことには違和感を拭えない。

 政策が不要と言うのではない。「コロナ後を見据えた経済構造の変換」に向けては、菅義偉首相が強調するようにグリーンやデジタルなどの分野が新たな成長の突破口になるのは間違いない。だが、コロナ感染拡大防止を最大の目的とした対策の中に、これほどの大規模な事業を加えることに合理性はあるのか。必要であれば精査を経て21年度当初予算に盛り込むのが筋ではないか。これでは衆院解散・総選挙を意識した規模拡大との批判は免れられない。

 政府は本年度、新型コロナ対策として既に2度の補正予算を編成。予算規模25・7兆円の1次補正では、1人一律10万円の給付金や観光・飲食喚起事業「Go To キャンペーン」の予算を確保。同じく31・9兆円の2次では、雇用調整助成金の拡充や家賃支援の資金を手当てした。

 3次補正は21年度予算が成立・執行可能となる来春までの財政支出の隙間を埋め、21年度につなぐ一体編成の「15カ月予算」として運用するという。しかし、補正予算案は当初予算案と比べると査定が甘く、往々にして、本予算の「抜け穴」として使われてきた。今回、補正予算案に多くの事業を盛り込んだのも、そうした背景があるのではないか。

 今回の焦点だった雇用維持策では、企業が支払った休業手当の一部を国が補う雇用調整助成金について、12月末が期限だった助成拡充を来年2月末まで延長。航空会社などが活用する「在籍出向」では新たな助成金制度も設ける。来年1月末が期限だった観光支援事業「Go To トラベル」は来年6月末まで延長する方針を盛り込んだ。

 菅首相や与党が経済活動の維持を重視したためだが、11月には感染再拡大で札幌、大阪2市への旅行が除外に追い込まれた。感染抑止とのバランスが肝心であり、制度の運用に医療専門家の意見を反映しやすくする仕組みも検討課題だ。

 地方自治体のコロナ対策に充てる臨時交付金も1兆5千億円拡充する。47都道府県で6千億円超の不足額が生じており必要性は理解できる。だが、ランドセルの配布や公用車購入など関連が疑わしい使途も目につく。適正使用へのガイドラインを設けるべきだ。(共同通信・高橋潤)



コロナと追加経済対策 規模で不安は解消されぬ(2020年12月9日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス禍で悪化した景気の回復を目指して、政府は追加の経済対策を決めた。第3次補正予算案などの財政支出が40兆円、民間の投資も含めた全体では70兆円超の大型対策である。

 旅行を支援するGoToトラベルを来年6月末まで長期間延長するなど、菅義偉首相肝いりの景気対策を前面に押し出した。政府は「来年度にはコロナ前の経済水準に回復させる」と強調している。

 だがエコノミストの間では、3~4年かかるとの見方が多い。景気回復を急ぎすぎると、感染対策がおろそかになりかねない。

 感染拡大が深刻化する中、最優先すべきは、逼迫(ひっぱく)する医療体制の拡充を急ぐことだ。にもかかわらず、医療機関への支援など感染対策に充てるのは財政支出のわずか2割にも満たない。

 いくら対策全体の規模を大きくしても、感染が広がってしまえば国民の不安は高まる。消費が冷え込んで景気はさらに悪くなる。

 巨額の国土強靱(きょうじん)化費用も盛り込まれた。防災対策の公共事業に今後5年で計15兆円をつぎ込む。今年度までの事業費を上回る。

 だが、積算の根拠は示していない。衆院選をにらんだ与党の歳出拡大要求に応じたものだろう。規模を膨らませる材料に使ったとみられても仕方がない。

 地球温暖化対策を支援する基金の創設に2兆円、官民のデジタル化推進にも1兆円を投じる。重要な政策だが、事業の精査はこれからだ。規模ありきでは、関係の薄い事業が紛れ込む恐れがある。

 一方、生活支援は不十分だ。

 感染拡大による消費停滞で飲食店などの失業が増える心配がある。だが、雇用を維持する企業への助成金上乗せは来年3月以降、縮小する方針だ。GoToトラベル事業の優遇とは対照的だ。

 中小企業への支援も事業転換が条件となる。飲食店がオンライン注文を受け宅配を行うことなどが想定されているが、転換は簡単ではない。人材やノウハウの乏しい中小が取り残される懸念がある。

 3次補正の財源は国債に頼ることになる。過去2回の補正で計60兆円近く発行しており、借金漬けはさらに深刻になる。いたずらに規模を押し上げると、将来へのつけ回しが増えるばかりだ。



追加経済対策 効果的支出で感染拡大抑えよ(2020年12月9日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行を克服するため、効果的に予算を投じることが重要である。医療体制の強化や困窮者の支援に最善を尽くすべきだ。

 政府が追加経済対策を決めた。金融機関の融資や地方の支出などを含め、事業規模は73・6兆円に達した。政府は今年4月と5月に、それぞれ110兆円を超す経済対策をまとめているが、大規模な財政出動を継続することになる。

 40兆円の財政支出のうち国費は約31兆円で、多くは2020年度第3次補正予算案に計上し、残り約10兆円を21年度予算案に回して「15か月予算」とする方針だ。

 追加対策は、感染拡大の防止を大きな柱に掲げている。

 コロナ患者に積極的に対応する医療機関の多くは、一般の患者が減って経営が悪化し、看護師らの離職が相次いでいるという。

 医療崩壊を防ぐには、専用病棟を持つ「重点医療機関」に支給する交付金の執行を急がねばならない。ワクチン接種の準備や、治療薬の開発も強く後押ししたい。

 感染の抑止を図りながら、経済活動の停滞を防いでいくための施策が必要となる。

 自治体のコロナ対策を後押しする「地方創生臨時交付金」については、1・5兆円を追加する。営業時間の短縮要請に応じた飲食店への協力金などに使えるもので、自治体の求めに配慮した。

 ただ、この交付金をランドセル配布や公用車の購入など、コロナ対策とは考えにくい支出にあてる例も相次いだ。適正に活用されているか、国の点検が不可欠だ。

 企業が社員に払う休業手当の一部を補助する「雇用調整助成金」は、上限額を増やした特例措置の期限を、12月末から来年の2月末まで延長するという。

 ひとり親世帯などが対象の臨時特別給付金を、年内に再支給することも盛り込んだ。経済的に困窮する人の救済は当然である。

 追加対策では、来年1月末が期限の観光支援策「Go To トラベル」について、6月末までの延長を基本とし、平日への分散化を図るとしている。

 感染拡大の中で、人の往来を活発化させる需要喚起策には慎重さが要る。柔軟に中断や再開ができる仕組みを検討してほしい。

 中長期的な成長に向けては、環境技術の開発に取り組む企業を支援する2兆円の基金や、大学の研究基盤を強化する基金を設ける。官民のデジタル化促進に1兆円超を計上するという。成長分野への重点投資に努めてもらいたい。



追加経済対策 実効性高めコロナ克服を(2020年12月9日配信『産経新聞』-「主張」)

 政府が、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた新たな経済対策を閣議決定した。事業規模は73兆円を上回り、令和2年度第3次補正予算案と3年度当初予算案に、合わせて30兆円以上を計上する巨額対策である。

 菅義偉首相は、この対策で「成長の突破口を切り開く」と語った。

 新型コロナの「第3波」で景気が二番底に陥らないよう手立てを講じるべきはもちろんだ。コロナ後を見据えて経済構造の転換を図ることにも意義がある。

 ただ、経済活動を刺激しすぎるあまり感染が増勢を強め、かえって経済再生が遅れるのでは元も子もない。対策実施に当たっては感染拡大防止と経済活動の両立に細心の注意を払う必要がある。

 財政投融資などを含む財政支出は40兆円規模になる。日本経済の需要不足は7~9月期時点で34兆円程度と推定されることを考えれば、今回の財政支出はかなりの規模に膨らんだといえる。実効性が問われるのは当然である。

 対策の中身は、コロナ対策、経済構造の転換、国土強靱(きょうじん)化の3本柱だ。特に切迫感を持つべきなのがコロナ関連である。医療崩壊を避けるため病床確保などに万全を期さなくてはならない。経済活動を大きく制限する事態も想定すべきだ。中小・零細企業の経営が行き詰まって雇用不安が高まらないよう安全網強化が急務である。

 そのためにも、医療機関向けの支援や雇用調整助成金の特例措置延長、自治体向けの臨時交付金などを効果的に使いたい。支援を必要とするところに十分な資金を行き渡らせることが肝要である。

 観光支援事業「Go To トラベル」は延長されるが、状況に応じて経済活性化策を中断し、感染拡大防止に専念する柔軟な政策運営を徹底してもらいたい。

 対策には、脱炭素化を後押しする2兆円基金やデジタル関連経費など、菅政権の看板政策も盛り込まれた。これらを日本経済の生産性向上や成長分野の育成に確実につなげなくてはならない。

 注意したいのは、政権の看板に名を借りて不要不急の事業が紛れ込むことだ。この点は国土強靱化についても同様である。対策を具体化する際には政策効果を厳しく吟味してもらいたい。巨額予算を確保できたといっても、省益優先のばらまきが許されるわけがないことを忘れてはならない。



追加経済対策 財源への目配り足りぬ(2020年12月9日配信『東京新聞』-「社説」)

 政府が事業規模約73兆円の追加経済対策を閣議決定した。新型コロナ感染拡大を受けた措置とはいえ支出額が大きく内容にも疑問が残る。財源には限りがあることを忘れるべきではない。

 対策には第3次補正予算と来年度予算の一部から約30兆円を捻出する。これに財投債と呼ばれる国債などでまかなう財政投融資から約10兆円を積み増し、計40兆円を財政支出する形となる。

 約73兆円に上る全体の規模は民間の投資分なども加えた額だ。とはいえ2020年度予算の社会保障費(約35兆円)の2倍を超えており1回の経済対策としては相当大きな規模だ。

 不安になるのは政府与党内に財源論がほとんど出てこない点だ。規模の増額を求める声ばかり目立つ。補正予算財源の大半は国債増発でまかなう。20年度はすでに二度の補正で約90兆円を増発しており、100兆円超えは確実だ。

 国債の多くは日銀が銀行経由で引き受けている。元々、80兆円と上限が決められていたが今年4月に枠を外してしまった。こうした金融環境が野放図な国債増発につながっているのなら警鐘を鳴らさざるを得ない。

 確かに長期金利が急騰(国債の価値暴落)し、通貨が信頼を失って資金が国外に流出するという事態には至っていない。だが国債の増発が国の財政赤字を一層膨張させ、借金を次世代につけ回ししていることは確かだ。財政悪化は将来的な増税を引き起こすだけでなく、金融市場での投機の温床にもなりかねない。

 対策には、マイナンバーカード普及を目指すデジタル化推進策や災害を念頭に置いた国土強靱(きょうじん)化への予算も多く盛り込まれている。デジタル化や防災が重要なことは理解はできる。

 しかし今、国民が望んでいるのはコロナ禍への直接的な対策のはずだ。医療分野への支出には異論はないだろう。非正規労働者を中心とした雇用対策、危機に直面している中小零細企業支援などもまだまだ不十分だ。

 対策は、各省庁が与党内の要望を多く取り入れながら、可能な限り規模を膨らました印象が極めて強い。予備費をさらに五兆円も積み増す方針も、国会の議決が必要ない予算であり、安易な増額には疑問を呈さざるを得ない。

 今後の編成作業や国会での議論を通じて無駄をそぎ落とし、政策効果のより高いコロナ禍対策を目指すべきである。 



新たな経済対策 知恵問われるコロナ交付金(2020年12月9日配信『北国新聞』-「社説」)

 政府が新たな経済対策として、2020年度第3次補正予算案と21年度当初予算案に計約30兆6千億円を計上する。新型コロナウイルス感染症の拡大防止を掲げ、医療体制の整備や、家庭と企業の不安に対処する「守り」を固める一方で、コロナ後を見据えた「攻め」の姿勢もうかがえる。

 心強いのは、自治体がウイルス対策に使える「地方創生臨時交付金」の増額である。全国知事会など地方6団体は不足を見越して1兆2千億円の上積みを求めていたが、菅義偉首相は会見で、1兆5千億円を提示した。

 地方創生臨時交付金は、自治体によるコロナ対策の「軍資金」となり、自由度が高く、使い勝手がいい。コロナ対応の取り組みであれば、営業時間を短縮する店舗への協力金などにも使える。第2次補正予算では石川県に約129億円、県内市町に総額で約133億円、富山県は約127億円、県内市町村に総額で約113億円の交付が決定している。

 1・5兆円の増額分については、地域の実情に応じ、コロナ後を見据えた取り組みにどう使うのか、自治体の知恵が問われよう。

 コロナ対策では、医療提供体制の整備に充てる「緊急包括支援交付金」の上積みも決まった。冬本番に向けて感染動向を注視しながら、必要な病床の確保に使いたい。抗原検査キットの増産支援やワクチン接種費用の国費負担も大きな安心材料になるだろう。

 落ち込んだ景気の下支え策として、観光支援策「Go To トラベル」や飲食店支援策「Go To イート」が来年6月末まで、雇用調整助成金の特例措置は来年2月末までの延長が決まった。地方経済への影響が大きい事業だけに、延長はありがたい。

 今回の追加経済対策は、「感染拡大防止」と「経済構造の転換」、「国土強靱(きょうじん)化」の3本柱で構成されている。東京-大阪間を日本海側でつなぎ、複軸型の国土構造を実現する北陸新幹線は、国土強靭化の趣旨に沿う。

 沿線の自治体は今、金沢-敦賀間の開業が1年半遅れ、建設費が2880億円膨らむ苦境に直面している。政府として何らかの救済策を講じてほしい。



追加経済対策 規模ありきでは危うい(2020年12月9日配信『中国新聞』-「社説」)

 政府はきのう、新型コロナウイルスの感染拡大を受けた追加経済対策を閣議決定した。

 対策の事業規模は民間投資を含めて73兆6千億円ほどに上るという。2020年度の第3次補正予算案と21年度の当初予算案を一体で編成する「15カ月予算」として、計30兆6千億円の歳出を計上する。

 新型コロナの感染が再び拡大しており、「第3波」への警戒感が高まっている。国民の命や暮らしを守る対策に万全を期すことは当然である。

 ただ与党からは次期衆院選を意識したのか、予算規模の拡大を求める圧力が強まり、金額の積み増しを優先したように映る。規模ありきでは、財政規律が働きにくく、予算の無駄遣いにつながりかねない。

 感染や国民生活の状況に即した必要かつ有効な施策を打ち出していくためにも、中身の厳しい精査が求められる。

 経済対策は、コロナ感染拡大防止に加え、コロナ後を見据えた経済構造の転換と、防災・減災のための国土強靱(きょうじん)化を3本柱に掲げる。

 コロナ対策では、とりわけ医療と介護現場の崩壊を防ぐことが重要だ。低所得の子育て世帯など生活困窮層への支援も継続する必要がある。

 医療機関向けの「緊急包括支援交付金」を増額し、病床の確保を支援する。低所得のひとり親などに対し、5万円の給付金を年内に再支給するほか、雇用調整助成金の特例も現行水準のまま来年2月まで延ばす。

 こうした当面の対策に使うのは事業規模ベースで6兆円ほどだ。一方で、コロナ後の経済構造の転換などには51兆7千億円も充てる。

 デジタル化や脱炭素社会に向けたグリーン戦略を名目に、複数年度にわたる大型の基金を創設することなどを盛り込む。いずれも菅義偉首相が看板に掲げる重要政策であるが、緊急性が高いとは言い難い。

 もちろん将来の成長に向けた布石も大切だが、今わざわざ補正予算を組んでまで取り組むべき政策だろうか。その必要性と優先度は厳しく問われなければならない。デジタル化や環境に名を借りたばらまきにならないよう、使途の監視と効果の検証が欠かせない。

 国土強靱化につなげる防災・減災事業には21年度からの5年間で15兆円が積まれることになった。公共工事の経済効果は限定的とされ、コロナ禍との関係性も薄い。運用に目を光らせ、経済対策にかこつけた便乗事業は排除しなければならない。

 コロナ対策では巨額な財政支出が続いている。1次補正で26兆円弱、2次補正で32兆円弱の歳出を追加してきた。新規国債の発行額は100兆円を超え、空前の規模に達する見通しだ。

 一方で税収の見通しはコロナ禍の影響で数兆円規模の下振れが想定される。厳しい財政運営は必至で、不要不急の事業は避けなければならない。

 コロナ禍の影響で仕事を失った人は先月で7万人を超えた。希望退職の募集に踏み切る企業も目立つようになった。自助努力で乗り切るには限界があり、今こそ公助が求められる。

 政策の中身を吟味し、事業の厳選は欠かせない。コロナ禍に苦しむ人々や企業に真に必要な支援に重点配分すべきだ。 





経済対策の規模が膨らみすぎてないか(2020年12月8日配信『日本経済新聞』-「社説」)

政府が事業規模73兆円超の追加経済対策を策定した。コロナの封じ込めや景気回復の後押しといった当面の施策だけでなく、経済構造の転換や防災・減災などの中長期的な施策も盛り込んだ。

 コロナ危機に対応する医療体制強化の支出は欠かせない
財政出動の必要性に異論はないが、規模が膨らみすぎていないだろうか。これまでに実施してきた経済対策の使途や効果を十分に検証しないまま、支出の積み増しに走った印象が拭えない。

コロナの感染防止と正常な経済活動の両立は喫緊の課題だ。病床の確保などに充てる都道府県向けの交付金や、ワクチンの接種費用は欠かせない支出である。

日々の生活に困る世帯や資金繰りに窮する企業も、しっかりと支えなければならない。期限を延ばした各種の優遇融資などを、滞りなく迅速に実行してほしい。

とはいえ今回の経済対策が、様々な問題をはらむのは確かだ。観光需要や外食需要を喚起する「Go To キャンペーン」を延長するのであれば、慎重で柔軟な運用を望みたい。感染の状況を見極めながら、対象地域を限定するといった対応も必要になろう。

4月と5月に策定した経済対策の事業規模は合計230兆円にのぼるが、無駄やばらまきを排除できたとは言い難い。その使い残しが目立つにもかかわらず、さらに73兆円超を追加する必要があったのかという疑問も残る。

最たる例は「国土強靱(きょうじん)化」と銘打った防災・減災事業だろう。政府・与党はこれを機に、2021~25年度に約15兆円を投じる新計画を推進したいという。頻発する自然災害への対応は重要だが、本当に必要な事業を選別したようにはみえない。

使途を事前に定めない予備費は、20年度と21年度の合計で10兆円程度を確保する。コロナ危機への迅速な対応を大義名分にして、不要不急の国費が国会での十分な審議を経ずに使われていくのではたまらない。

菅義偉首相の肝煎りの政策も聖域ではない。脱炭素社会の実現に向けた研究・開発を支援する2兆円の基金や、官民のデジタル化を促す1兆円の関連経費がどんぶり勘定になるのでは困る。専門家の知見も得ながら、支援先や事業の妥当性を的確に判断すべきだ。

コロナ禍のさなかでも財政の規律や節度は保つ必要がある。競うべきは「賢い支出」であって、経済対策の規模ではない。









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