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(論)少子化対策に関する論説(2020年12月12・29・31日・2021年3月4・14日)

加速する少子化 未来揺るがす危機的状況(2021年3月14日配信『西日本新聞』-「社説」)

 子どもの出生数が加速度的に減少している。このままでは社会の活力が失われ、国の健全な発展も望めない。少子化対策の抜本的な見直しが急務だ。

 2020年の出生数が過去最少の87万2683人(前年比約2万6千人減)にとどまったことが、厚生労働省の人口動態統計(速報値)で分かった。在留外国人を除いた日本人の出生数は84万人前後と推計され、初めて90万人を割った19年の「86万ショック」(出生数約86万5千人)をさらに下回る水準だ。

 一方、20年の外国人を含む死亡数は約138万4500人(前年比約9千人減)と11年ぶりに減少した。新型コロナウイルスの対策でマスクの使用が定着し、呼吸器系の疾患が減ったことなどが要因とみられる。

 それでも人口の自然減は約51万2千人に上り、これが21年には一段と増加する見通しだ。

 20年の婚姻件数は約53万7600組(前年比約7万8千組減)と大幅に落ち込み、妊娠届出数の減少も目立つ。これに伴い21年の日本人の出生数は80万人を切る恐れが出ているのだ。

 政府の将来人口推計(17年)では、16年に100万人を割った出生数が80万人以下になるのは30年とされていた。その予測が約10年も早まるとなれば、日本の未来を揺るがす危機的な状況と捉えるべきだろう。

 この少子化の加速はコロナ禍による結婚の延期や子どもの産み控えといった理由だけに起因するわけではない。結婚適齢期の女性人口の減少、晩婚化、非正規雇用の拡大による格差の固定化など、背景にはさまざまな構造的な問題も横たわる。とりわけ、子どもを持つことを希望しながら人生設計への不安から結婚に踏み切れない若者が増えていることは見逃せない。

 菅義偉政権は従来の子育て支援に加え、不妊治療の公的保険適用を打ち出した。今後は若い世代の雇用の安定、賃金底上げなどを軸に出産や子育てを後押しする施策も推進すべきだ。

 子どもを巡っては、一人親世帯の貧困、虐待の多発、小中高校生の自殺急増といった深刻な問題も連鎖的に広がっている。その点を踏まえ、自民党の若手議員グループが諸対策を一元的に所管する「子ども家庭庁」の創設を提唱している。

 同様の構想は旧民主党政権が掲げ、実現に至らなかった経緯がある。この際、既存の取り組みを総合的に見直し、縦割り行政を是正していく意味でも、一考に値する案ではないか。

 子どもを守り育てる営みは社会全体の責務でもある。政府と同時に市民一人一人も役割を再認識し、若者を支援するさまざまな取り組みの輪を広げたい。





コロナ 少子化急加速/社会の根幹揺るがす危機だ(2021年3月4日配信『河北新報』-「社説」)

 コロナ禍が少子化を急加速させている。

 厚生労働省によると、2020年1~10月の妊娠届出件数は約72万7000件で前年同期より5・1%減少した。

 5月の減少率は17・6%と格段に大きい。青森の23・7%など10県が20%を超えた。新型コロナウイルスの感染拡大で4月に出された緊急事態宣言が影響したのだろう。

 宣言は感染の第3波に見舞われた今年1月に再発令された。1日当たりの新規感染者数は、最も多い時で最初の宣言時の10倍増だ。11月以降、妊娠届出件数はさらに減少が見込まれる。

 昨年の出生数は速報値では過去最少の約87万3000人。婚姻数は約53万8000組で減少率は1950年に次いで戦後2番目に大きい。

 コロナ禍が出産に及ぼす影響は二つある。

 一つは母子への感染の懸念だ。ウイルスが母胎に与える影響は未解明な点があり、妊婦は重症化リスクが高いとされる。里帰り出産や立ち会い出産など安心感を与えてきた方法が望めないことも不安材料だ。

 もう一つは雇用の悪化や世帯収入の減少だ。厚労省の勤労統計調査によると、最初の緊急事態宣言が出された昨年5月は、残業代など1人当たりの所定外給与は約1万4600円で前年同月より4分の1も少なかった。減少幅は3カ月連続で最大を更新した。
 宣言の発令で休業や時短営業を余儀なくされた飲食業をはじめ、経営が苦しい事業者が少なくない。解雇や雇い止めが増えており、将来への不安が子どもを持つことに二の足を踏ませている。

 感染の心配と経済の苦境。出産に対する逆風が長引き、少子化に歯止めがかからなければ、どうなるか。

 団塊世代が75歳以上の後期高齢者になり始める22年から医療費が急増する。社会保障を支える現役世代が、予想を超えて減り続ければ、医療保険制度が持ちこたえられなくなるのは必至だ。

 政府は新年度、新婚生活への補助を拡充する。家賃や敷金、礼金、引っ越し費用などの補助上限を60万円に引き上げる。適用年齢を夫婦とも34歳以下から39歳以下に緩和し、世帯年収を約540万円未満に拡大する。経済的な理由で結婚や妊娠を見送る世帯を減らすのが狙いだ。

 だが、経済活動が回復しなければ、将来設計は不安定なままだ。補助の増額は魅力的だが、効果は限られよう。

 結婚や出産に対する経済的不安を少しでも和らげるため、結婚費用に限らないトータルな支援策を整えることが求められよう。

 少子化の急加速は、医療制度のみならず、日本社会の持続可能性を揺るがす。コロナが収束すれば、落ち着くのだろうか。むしろブレーキがかからないまま、危機的状態が続くとみるべきだろう。



コロナと出生数減 「産みたい」支える施策を(2021年3月4日配信『山陽新聞』-「社説」)

 少子化が国の想定以上に加速している。2020年の出生数が速報値で約87万人となり、過去最少を更新した。

 在日外国人などを差し引いて公表する確定値では84万人程度となるとの見通しも出ている。19年に初めて90万人を割り込んでおり、減少に歯止めがかからない情勢だ。

 婚姻や妊娠届の件数も大幅に減ったことから21年の出生数はさらに落ち込む公算が大きい。21年に70万人台に突入するとの民間試算もあり、現実となれば公的推計より12年前倒しとなる。

 もともと出生数に関する政府の見通しは甘すぎると言われてきた。厳しい現実と向き合い、思い切った対策を進めることが不可欠である。

 新型コロナウイルスの感染拡大の影響も出始めている。経済的な不安や、里帰り出産の制限などが妊娠をためらう一因となったとの見方もある。これに対し各自治体は相談体制の拡充、新生児への育児応援金給付といった支援を行ってきた。

 ただ、コロナ禍の影響は長期に及ぶかもしれず、収束後に子どもを持ちたい人が増えるかどうかは不透明だ。出生数の急激な減少は一時的なものとの楽観論は捨てなければならない。むしろ積み残されていた問題への対応を迫られていると見るべきだ。

 各種調査によると、夫婦が理想とする数の子どもを持たない最大の理由は「子育てや教育にお金がかかりすぎること」。感染拡大に伴う休業要請などでは多くの非正規労働者が雇用調整のしわ寄せを受けたが、経済的な打撃が家計に及べば、これまで以上にハードルは高くなる。

 結婚についても障害となるものに資金の不安を挙げる人が目立ち、特に男性は非正規労働者の未婚率が高いことも分かっている。

 結婚や出産をする、しないは個人が自由に選択できる。とはいえ、若い世代が先行きを見通せるよう経済的な不安を払拭(ふっしょく)することは急務だ。

 政府は出産を希望する世帯への支援として不妊治療の保険適用や「男性版産休」の新設を打ち出している。一方で「待機児童ゼロ」など目標を掲げつつ達成していないものも多い。過去の少子化対策を検証し、財源配分を見直すなどして必要度の高いものから確実に実行していくことも求められる。

 コロナ禍は、画一的な働き方や東京一極集中の脆弱(ぜいじゃく)さも浮き彫りにした。これを機にテレワークなどを柔軟に活用し、若者が地方で安心して生活していけるような取り組みも進めたい。国や自治体には施策立案に際して子育て世代の意見を積極的に聞いてもらいたい。

 大切なのは、社会全体で将来世代を育むという強い決意と、そのメッセージを若い人たちに伝えることである。安定的な支援が約束されてこそ初めて、産みたいと思える社会が実現するのではないか。





詩人の八木重吉に「赤ん坊がわらふ」という短い詩がある。<赤…(2020年12月30日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 詩人の八木重吉に「赤ん坊がわらふ」という短い詩がある。<赤んぼが わらふ/あかんぼが わらふ/わたしだつて わらふ/あかんぼが わらふ>。読めば、こちらの顔もついほころんでくる

▼赤ちゃんが笑い、それを見た自分も笑顔になる。たぶん、赤ちゃんを見て笑顔になった親の顔を見れば、無関係なわれわれだって、ほほを緩めるだろう。赤ちゃんがつくった一つの笑顔がまわりに別の笑いや幸せを伝えていくようである

▼残念ながら、笑顔の「リレー」はこれから、ますます少なくなっていくようである。試算によれば、今年の出生数は85万人を割り込み、過去最低を更新し、来年はついに80万人を切るだろうという予測があるそうだ

▼第一次ベビーブームの1949年の出生数が約270万人。日本の<わらふ>がピーク時の3分の1以下になるのか

▼無論、原因は新型コロナウイルスである。ただでさえ、晩婚化の傾向があったところに感染拡大による経済的不安や将来への心配によって産み控えが起きている。里帰りさえためらわれるなど出産環境も悪くなっている

▼コロナは人の命を奪うだけでは飽き足らず、新しい生命をこの世に誕生させることまで邪魔立てするのか。コロナ禍を抑え込むしか手はあるまい。感染対策は今を生きる人のためだけではない。まだ見ぬ未来の<わらふ>のためでもある。





「出て行く時刻の来た子どもたち、用意はいいか」(2020年12月29日配信『毎日新聞』ー「余録」)…

 「出て行く時刻の来た子どもたち、用意はいいか」。扉を開けたのは砂時計と鎌を持つ老人で、背が高く長いひげがある。童話劇「青い鳥」で、これから生まれる子どもたちを送り出す「時」という老人だ

▲「未来の王国」というその大広間には、地上にもたらす禍福(かふく)さまざまなものを携えた子どもたちが誕生の時を待っている。「時」は生まれるべき子どもの数が間違いなくそろっているかをチェックし、地上行きの船に乗せるのである

▲「お前たち、遅れたらもう生まれられないぞ」。「時」にせかされた子どもらが船出すると、遠くから喜びと希望の合唱が聞こえてきた。お母さんたちの歌声である……。しかし「時」も子どもたちも戸惑うコロナ禍での異変だった

▲全国の自治体が受理した今年の1~10月の妊娠届の件数は、前年同期比5・1%減という激減ぶりをみせた。コロナ禍による将来への不安のためとみられ、民間シンクタンクからは来年の出生数は80万人を割るという推計が出ている

▲少子化で減り続ける出生数だが、初めて90万人を割ったのは昨年で、推計通りならわずか2年で今度は80万人割れとなる。「時」ならば何かの間違いかと、手元のリストを見直すだろう。少子化予測を約10年も前倒しする数字という

▲背景となる婚姻数の減少も著しく、巣ごもり生活による出会いの機会の減少は今後も続こう。子どもたちをこの世に呼び寄せるには、まずウィズコロナ時代の私たちが喜びと希望の歌を取り戻さねばならない。



コロナで少子化加速/妊産婦に早く安心を(2020年12月31日配信『山陰中央新報』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、全国の自治体が5~7月に受理した妊娠届の件数は前年同期比で11.4%、2万6331件減少した。5月の減少率が最も大きく、同17.1%減だった。

 第2次ベビーブームの1973年に209万人だった出生数は、2016年に初めて100万人を割り昨年は86万5千人まで落ちた。このままでは来年は70万人台になりかねず事態は深刻だ。政府、自治体は従来の少子化対策に加え、コロナ禍でも妊産婦が安心できる医療、孤立化を防ぐ相談の態勢整備など緊急対策を早急に講じるべきだ。

 国内では3月ごろからコロナへの感染不安が高まった。その時期に妊娠した人が届け出る5月から全国的に妊娠届が急減。最も心配なのは、コロナ禍が長引き急減が一時的現象にとどまらなくなって将来の働き手、社会保障の支え手が予想を超えて細ってしまうことだ。子どもを産み、育てることの不安を早く解消し、この流れを止めたい。

 妊娠控えの原因は第1に母子へのウイルス感染の懸念、第2は雇用悪化による家計不安だ。

 新型コロナウイルスの母胎への影響は未解明で、子どもを望む夫婦でも、感染防止に努めつつ妊娠期を過ごし、厳しい環境で新生児を迎えることに不安が強い。病院では立ち会い出産や見舞いが制限され、都市部から地方への「里帰り出産」も難しくなった。収束後への妊娠先送りを選択しても仕方ない状況だろう。

 核家族化の進行で孤独な子育てを防ぐ必要性は以前から高まっていた。今回、結婚や妊娠のオンライン相談態勢を強化した自治体もある。政府は里帰りできない人の育児支援なども含め全国的に態勢を整えてほしい。

 医療側の対応も重要だ。妊婦が感染の不安なく病院に通え、もし感染してしまっても母子ともに十分な医療ケアを受けつつ出産できる態勢があれば、妊娠に前向きになれる。コロナ専門病院に感染者を集中させ、一般病院の産婦人科などはウイルスから遠ざけることも有効な対策ではないか。

 正社員、非正規労働者いずれもコロナ禍で収入が減ったり、職を失ったりした影響で妊娠を控えた例が多いとみられる。婚姻件数も同様に経済的要因で低下傾向だ。ただコロナ収束で景気が回復するのを待っていては対策が後手に回るだろう。

 日本の少子化対策は財政支援が弱いと以前から指摘されてきた。政府は、新婚世帯の家賃や敷金・礼金、引っ越し代などを、来年度から現行の2倍に当たる60万円を上限に補助する方向だが、結婚費用に限らず妊娠から出産までの支援を充実させ、経済的理由で妊娠を見送らないで済むようにすべきだ。

 最新の厚生労働白書によると、40年までの約50年間で高齢者人口は総人口の12.1%、1489万人から35.3%、3921万人と約3倍に増え、社会保障給付費は47兆4千億円から約190兆円に跳ね上がる。一方で出生数はコロナの影響がなくても125万人から74万人に約4割減ってしまう見通しだ。

 世界に例のない超高齢社会を支える将来世代に、予期せぬ「穴」があき、人口構成が想定を超えて変化してしまえば、国家経営の礎である産業、社会保障制度いずれもが大きく揺らぐ。目の前のコロナ禍はそれほどの試練だと心してかかるべきだ。





児童手当見直し 少子化対策にならない(2020年12月12日配信『琉球新報』-「社説」)

 菅政権は、少子化対策に本腰を入れて取り組む気があるのだろうか。

 政府・与党は、中学生以下の子どものいる世帯に給付する児童手当について、高所得世帯向けの給付を一部廃止することで合意した。

 日本の子育て支援などに使われる「家族関係社会支出」は、経済協力開発機構(OECD)加盟国で低い水準にある。今回の児童手当一部廃止は、待機児童対策の財源不足を補うための見直しである。

 しかし、子育て支援予算全体を底上げするのではなく、児童手当の削減によって捻出することは、少子化対策に逆行する。

 少子化対策の充実・強化を掲げる菅義偉首相の方針とも矛盾している。親の年収にかかわらず全ての子どもに児童手当を給付すべきである。

 現行の児童手当は年齢に応じて子ども1人当たり月1万~1万5千円を支給している。会社員の夫と専業主婦、子ども2人の4人家庭の場合、夫婦の「収入の高い方」の年収が960万円以上は給付額が制限され子ども1人5千円だ。

 新たな仕組みは、夫婦どちらかが1200万円以上になれば受給を打ち切る。受給対象から外れる子どもの数は約61万人と見込まれる。政府は給付の一部廃止で捻出する約370億円を待機児童対策に充て、4年間で新たに14万人分の保育施設を整備する。

 では高所得世帯に現金支給は必要ないのか。例えば年収800万円以上の世帯(共働き・子ども2人)は、税・社会保険料の負担が重く、医療・教育サービスの受益を上回る(内閣府、2015年)。

 第2次安倍政権は高校無償化に所得制限を設けたため、一定の所得以上の世帯は制度の恩恵を受けていない。高所得層は、子どもを大学・専門学校に進学させる場合も奨学金に制限がある。低所得層やひとり親世帯だけでなく、全ての親が子育ての問題を抱えている。

 日本の「家族関係社会支出」は対GDP比で1・61。トップのフランス(3・68)の半分以下にすぎない。支出の規模を増やすことが出生率の上昇につながると専門家はみる。

 政府が8日閣議決定した新型コロナウイルス感染拡大を受けた追加経済対策の財政支出は40兆円規模である。それだけの支出が可能なら、なぜ子育て支援に回せないのか。

 日本は2015年以降、児童手当などの現金給付から、保育施設整備など現物給付へ政策をシフトさせてきた。しかし、女性1人が生涯に産む子どもの推定人数「合計特殊出生率」を見ると、19年は1・36で、前年から0・06ポイント低下した。現物給付の効果は明確に表れていない。

 少子化問題は限られた財源の中でやりくりする「パイの奪い合い」で解決しない。女性の子育て負担軽減に役立ち、若い世代の経済的な不安を取り除く政策が求められる。




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