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コロナ第3波、財政は「医療崩壊」を救えるか(2020年12月14日配信『東洋経済オンライン』)

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12月9日、北海道旭川市の慶友会吉田病院に入る陸上自衛隊の看護官ら(写真:時事、防衛省統合幕僚監部提供)

 新型コロナウイルスの感染拡大「第3波」が止まらない。感染者数が過去最多を更新する都道府県が続出し、「医療崩壊」と表現される事態に陥る地域も出ている。

 こうした事態に、政府はお金を出し渋っているのだろうか。また、医療機関にお金が行き届いていないがゆえに、医療崩壊を引き起こしているのだろうか。

■消費税率0.5%分を投入

 今冬に備え、政府は9月から財政支援を始めていた。2020年度第2次補正予算までに、新型コロナに対応する医療機関等への支援を1.8兆円計上したほか、過去最大となる11.5兆円もの予備費を積んでいた。9月15日には予備費のうちの1.2兆円を活用して医療機関等への支援を追加した。これは今まで以上に踏み込んだ財政支援といえる。

 1.2兆円といわれて、どう思われるだろうか。一見すると、予備費総額11.5兆円のうちの1.2兆円であり、金額が小さいように見えるかもしれない。しかし、税率1%で2.5兆円の税収があがるとされる消費税の約半分、消費税率にして約0.5%分の収入額に匹敵する。それほど大きな金額である。

 1.2兆円の内訳はまず、新型コロナ患者の病床や宿泊療養施設を確保するために、追加で0.7兆円を投入した。さらに、0.2兆円を投じて、新型コロナ患者を受け入れる医療機関への診療報酬を特例的に引き上げ、医療従事者を手厚く確保した医療機関向けの病床確保料を引き上げた。

 感染症流行期への備えとして、発熱患者や新型コロナの疑いのある救急患者を受け入れる外来体制をとる医療機関向けに0.3兆円を投じた。これらは医療関係者にはおおむね好評だという。

 加えて、12月8日に閣議決定された事業規模総額73.6兆円の総合経済対策では、新型コロナの拡大防止策に5.9兆円を追加するとともに、2021年度当初予算に5兆円の予備費を計上することにした。

 コロナの第3波に直面して、お金が足りないからもっと出せという医療関係者の声はあまりない。

むしろ、最大の支障になっているのは、新型コロナに対応する医療従事者が感染急拡大地域で不足していることだ。今や、診療報酬は大幅に増額されており、新型コロナ患者を受け入れただけで赤字になるような状況ではない。そして、病床が足りないことが元凶というわけでもない。

■求められる医療従事者の確保

 第3波に直面して重症患者が急増した。今後も患者数はさらに増えることが懸念されるが、目下500人を超えた重症患者が仮に全国で1000人に達したからといって、重症患者の居場所がなくなるほど病床がないわけではない。

 重症患者に対応するには、病床だけでなく、医療従事者の確保が不可欠である。新型コロナに対応している医療従事者には感謝に堪えない。それでも、急増する患者に医療従事者の確保が追い付いていない。このたび新設された大阪コロナ重症センターで、病床を増やしたものの医療従事者を確保できなかった事態はこれを象徴している。

 財政支援が足りないから、医療従事者を確保できないのだろうか。必ずしもそうではない。前述のように、医療従事者を確保する医療機関にも財政支援を行っている。そうした財政支援は、国から医療機関に直接支払われるのではなく、国がいったん地方自治体に渡し、地方自治体から支払われる。それは、自治体が医療に関する権限を持っているからだが、これまで医療機関との関係が希薄だった自治体も多く、国から自治体にお金が渡っていても、自治体から医療機関に対する支払いが滞っているケースが散見された。

 医療機関にお金を速やかに渡すには、診療報酬が最も的確である。実際に新型コロナに対応したことに見合って、速やかに支払われる。しかし、ここにきて障害に突き当たっているのは、新型コロナ以外の疾患を抱える患者への対応だ。これが、医療従事者の確保に響いている。

 4月に緊急事態宣言が出され、新型コロナ以外の患者の受診が手控えられ、医療機関は大きな減収に直面した。宣言解除後、緩やかに受診患者数が回復し、医業収入が増えてきたところに、第3波が襲った。

受診控えがかなり起きているなら、医療従事者にも少し余裕がありそうだが、決してそうではない。コロナ後の病院経営を見据えると、新型コロナ以外の患者をないがしろにはできない。新型コロナに対応する医療従事者を増やせば、新型コロナ以外の患者に対応する医療従事者が減ってしまう。そのジレンマが医療現場にはある。

■財政支援だけではすべて解決できない

 加えて、新型コロナ対応に注力するために、新型コロナ以外の患者を一時転院させることにした病院にとっては、転院した患者がコロナ後に戻ってきてくれないと、コロナ後の病院経営に差し障る。さらに、新型コロナ患者を受け入れていない医療機関から、受け入れる医療機関に医療従事者を一時的に派遣しても、その従事者が派遣後に元の職場に戻ってきてくれる保証はない。だから、派遣に踏み切りにくい。そうなると、新型コロナに医療資源を集中しようにもしきれない面がある。

 これらは新型コロナ向け財政支援を強力に進めても解決できない問題である。患者の転院や医療従事者の新型コロナ向け派遣に手厚く財政支援しても、医療崩壊を防ぐのに役立たないかもしれない。患者がどこの医療機関を受診するかや、医療従事者がどの医療機関で勤務するかはまったくの自由だからである。

 医療向けの財政支援は金額的に十分なものだった。しかし、医療従事者の逼迫を解消する支援に注力しつつ、新規感染者をこれ以上増やさない方策をもっと講じなければならない。新型コロナに対応する医療従事者の数を増やすには限界がある。

 新規感染者の抑止と経済活動の両立を考えると、むやみに自粛要請は出せない。医療関係者が強く要請するGo Toキャンペーンの一時停止も、Go Toキャンペーンが原因であるというエビデンスはないとの話もあって、議論が錯綜している。

 他方、県をまたいだ移動が感染拡大を助長したエビデンスは出されている。ならば、飲食店の営業自粛要請よりも、県をまたいだ移動自粛の方が感染防止に効果があるだろう。Go Toキャンペーンが継続していると、都道府県知事は県境をまたいだ不要不急の移動を控えるように、とはなかなか言い出せない。

 Go Toキャンペーンにこだわらず、移動や人的接触をどのように抑制すれば感染拡大防止に効果的なのか。それと整合的なものに厳選して必要な財政支援を講じるのが、第3波を抑えることになる財政支援であろう。

土居 丈朗 :慶應義塾大学 経済学部教授




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