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空襲被害者援護法案が成立しないワケ 説得力に乏しい政府の言い分(2020年12月14日配信『毎日新聞』)

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東京大空襲訴訟で、敗訴を確定させた最高裁判所の前で抗議活動をする原告団。「死ぬまで闘い抜くぞ」と拳を突き上げた=東京都千代田区で2013年5月10日、栗原俊雄撮影

 戦後75年の2020年が終わろうとしている。一方で、戦争で被害に遭った人たちの苦しみや闘いは続いている。たとえば、民間人の空襲被害者たちだ。75年間、政府に救済を拒まれてきた人たちは、立法による解決を求めて活動している。国会議員の有志が法案づくりを進めているが、12月5日に閉幕した臨時国会への提出はできなかった。今回は、本連載「常夏通信」その14~その54に掲載した「74年目の東京大空襲」の番外編として、立法を巡る最新の状況を報告したい。

議員会館で響いた怒声

 臨時国会が終盤にさしかかった今年11月18日。鈴木宗男参議院議員(日本維新の会)が、衆議院第2議員会館で大声を上げた。

 「最初におわび申し上げます。もう国会、実質、12月の頭で、第1週で終わりでありますから! ここで、いいこと言っても、今の状況ではこの法案、はっきり言って、まだ国会に上程されていませんから、できない話です! 簡単に頑張りますとか、この国会でやりますとか、誰が責任取ります? 間違った希望を与えちゃいけないと思いますよ。我々、反省しないといけない。言葉に責任持たなければいけないですよ。自民党が超党派で入っていて、自民党が一生懸命旗振りやらなければやっていけないですよ。みんなここでうまいこと言ったってね、ただ、政治家でなくてお世辞家ですよ! 現実はそうなってないわけですから! 私はこの点、皆さんにおわびを申し上げたい。もうしばらく時間を貸していただきたい」

 私は思った。「マイクがあるんだから、こんなに大声で話す必要はないのに。でも言っていることはその通りだ。今の国会でも、ダメだろうな」。そして、やはりダメだった。

 鈴木議員が大声で話したのは、全国空襲被害者連絡協議会(全国空襲連)が開催した「総決起集会」だ。同会は2010年8月に結成された。第二次世界大戦下の空襲被害者たちが政府に補償を求めて活動している。裁判で敗訴が確定し、現在の目標は立法による解決だ。頼みは国会議員である。鈴木議員は、超党派の国会議員連盟である「空襲議連」のメンバーだ。第二次世界大戦下、米軍の無差別爆撃により被害を受けた人たちを援護する法律「特定戦災障害者等に対する特別給付金の支給等に関する法律案(仮称)」を議員立法で成立させようとしている。

 第二次世界大戦下、米軍による無差別爆撃でおよそ50万人の日本人が殺された。米軍はこの戦争犯罪を償う責任がある。しかし我らが日本政府は、サンフランシスコ講和条約(1952年に発効)で、戦争に関する補償請求権を放棄した。つまり、空襲被害者がアメリカに補償を求めることは事実上できなくなった。

 一方で被害は事実として残っている。空襲被害者たちは日本政府に補償を求めた。しかし政府はこれを拒否した。その一方で、元軍人・軍属やその遺族らにはさまざまな形で補償や援護を行っている。その額は累計で60兆円だ。民間人空襲被害者はゼロ円。「同じ戦争被害者なのに、どうして自分たちは補償の対象にならないのか」。民間人がそう憤るのは当然である。

立法による解決促す判決
 国の言い分は、要約すれば「軍人や軍属たちは国が雇用していた。だから援護をする。しかし民間人は違う。援護する必要はない」ということだ。東京大空襲と大阪大空襲、名古屋大空襲。いずれも被害者が国に補償を求めて裁判を闘った。しかしすべて敗訴した。それでも多くの判決が原告の被害を認定し、立法による解決を促した。

 空襲議連は2011年に結成された。戦後補償問題に力を入れていた民主党(当時)のメンバーが中心だった。その後、政権交代を経てメンバーは代わったが、目指すところは同じだ。

 一年中「8月ジャーナリズム」=戦争報道をしている常夏記者こと私は、議連ができた時からずっと取材を続けている。議連が目指すところは同じだが、成立を目指している法律の内容は大きく変わった。

成立目指し、ハードル下げる
 当初の法案は「空襲被害者等援護法」で、当時の素案の内容は、死者1人につき遺族に100万円▽15歳未満で孤児になった人に100万円▽負傷や病気になった人に、程度によって40万~100万円――をそれぞれ支給する、というものだった。試算で、対象者は最大で65万人、予算は6800億円程度を見込んでいた。

 現在の法案では、対象者は空襲や艦砲射撃などで身体もしくは心に障がいを負った人や、ケロイドを負った人で、法施行時点で生存している人に、1人当たり50万円を支給することが柱だ。つまり、親兄弟を亡くした人や孤児になった人でも障がい者でなければ対象にならない。そして死者も対象外だ。全国空襲連が活動を始めてからの10年間で、多くのメンバーが亡くなった。その人たちは対象外なのだ。

 この内容は、全国空襲連と空襲議連が相談しながら決めた。対象を絞ったのは、成立の可能性を高めるためだ。

 議連の会長だった鳩山邦夫衆院議員が2016年に死去。代わって河村建夫衆院議員が会長となった。元官房長官、自民党の重鎮だけに、関係者の期待は高まった。

「こんなに低いハードルなのに」
 河村会長の下、法案成立が進んだ。詳細が詰められていき、今年10月27日に開かれた議連総会では、新たに給付金対象者の認定方法や申請手続きなど、事務の詳細を盛り込んだ法案要綱を決めた。そして早期…




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