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(論)GoToに関する論説(2020年12月15・16・17・22・29日・2021年1月26日)

GoTo事業費 補正組み替えが必要だ(2021年1月27日配信『東京新聞』ー「社説」)

 衆院予算委員会で第3次補正予算の審議が始まった。GoTo事業の延長が焦点だがコロナ禍で事業再開のめどが立たない中、追加計上は必要なのか。組み替えて緊急を要する政策に充てるべきだ。

 政府の2020年度第3次補正予算には、GoToトラベルに1兆311億円、イートに515億円が追加分として盛り込まれている。

 問題は予算案をめぐる硬直的な姿勢だ。コロナ対策を目的とした3次補正の編成作業は昨年秋から年末にかけて行われた。爆発的な感染拡大はその後に起きている。

 そもそもGoTo事業は感染収束を前提としていた。感染状況が悪化すれば、それに合わせて事業のあり方を修正するのは当然だ。だが政府は現行のまま続ける構えで、その姿勢は理解しがたい。

 コロナ対策をめぐる議論のスピードも極めて遅い。本来なら年末か年明けすぐに国会を開き、優先的に審議すべきだった。
 多くの国民が苦境にあえぐ中、緊張感に欠けていると批判せざるを得ない。

 3次補正には災害対応を念頭に置いた国土強靱(きょうじん)化策や脱炭素社会に向けた対策なども盛り込まれている。重要なテーマだが、コロナ対策とは直接関係がない。

 立憲民主党など一部野党は共同で、3次補正の内容を医療支援や失業手当の引き上げなど生活支援や雇用対策に絞るよう組み替えを求めている。この要求は現在の感染状況を考慮すれば合理的であり賛同したい。

 景気について日銀は先週の金融政策決定会合で「持ち直している」との判断を改めて示した。だがコロナ関連倒産や解雇は毎月増え続けている。

 若者の就職内定率も昨年と比べ大きく落ち込んでいる。持ち直しているのは一部の業種や大企業だけというのが国民の実感ではないだろうか。

 菅義偉政権は発足以来、コロナ対策について判断のタイミングを外し続けている。GoTo事業の一時停止や緊急事態宣言の再発令はその典型例だ。

 ピントがずれている原因は、国民の声に自ら耳を傾け暮らしの現状を見極める姿勢が欠けているからだろう。

 GoTo事業再開が見通せないのは誰の目にも明らかだ。補正を直ちに組み替えて、暮らしの防衛に向け貴重な予算を再配分すべきである。





GoTo事業費 補正組み替えが必要だ(2021年1月26日配信『東京新聞』-「社説」)

 衆院予算委員会で第3次補正予算の審議が始まった。GoTo事業の延長が焦点だがコロナ禍で事業再開のめどが立たない中、追加計上は必要なのか。組み替えて緊急を要する政策に充てるべきだ。

 政府の2020度第3次補正予算には、GoToトラベルに1兆311億円、イートに515億円が追加分として盛り込まれている。

 問題は予算案をめぐる硬直的な姿勢だ。コロナ対策を目的とした3次補正の編成作業は昨年秋から年末にかけて行われた。爆発的な感染拡大はその後に起きている。

 そもそもGoTo事業は感染収束を前提としていた。感染状況が悪化すれば、それに合わせて事業のあり方を修正するのは当然だ。だが政府は現行のまま続ける構えで、その姿勢は理解しがたい。

 コロナ対策をめぐる議論のスピードも極めて遅い。本来なら年末か年明けすぐに国会を開き、優先的に審議すべきだった。
 多くの国民が苦境にあえぐ中、緊張感に欠けていると批判せざるを得ない。

 3次補正には災害対応を念頭に置いた国土強靱(きょうじん)化策や脱炭素社会に向けた対策なども盛り込まれている。重要なテーマだが、コロナ対策とは直接関係がない。

 立憲民主党など一部野党は共同で、3次補正の内容を医療支援や失業手当の引き上げなど生活支援や雇用対策に絞るよう組み替えを求めている。この要求は現在の感染状況を考慮すれば合理的であり賛同したい。

 景気について日銀は先週の金融政策決定会合で「持ち直している」との判断を改めて示した。だがコロナ関連倒産や解雇は毎月増え続けている。

 若者の就職内定率も昨年と比べ大きく落ち込んでいる。持ち直しているのは一部の業種や大企業だけというのが国民の実感ではないだろうか。

 菅義偉政権は発足以来、コロナ対策について判断のタイミングを外し続けている。GoTo事業の一時停止や緊急事態宣言の再発令はその典型例だ。

 ピントがずれている原因は、国民の声に自ら耳を傾け暮らしの現状を見極める姿勢が欠けているからだろう。
 GoTo事業再開が見通せないのは誰の目にも明らかだ。補正を直ちに組み替えて、暮らしの防衛に向け貴重な予算を再配分すべきである。





新型コロナ・GoTo全国停止/抑止に成果上げる15日間に(2020年12月29日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」がきのうから、全国で一時停止された。来年1月11日まで、人の往来を抑制し、感染拡大に歯止めをかける。

 一時停止による経済損失は3千億円を超えるとの試算もあるが、一人一人が不要不急の外出を控え、感染防止策を徹底することが肝要だ。新規感染者の抑え込みに成果を上げる15日間にしたい。

 県旅館ホテル生活衛生同業組合によると、加盟する旅館・ホテルの延べ宿泊者数は、緊急事態宣言が発令された5月に前年同月の20%まで落ち込んだ。しかし「Go To」や県の宿泊割引の効果もあり、11月は84%まで戻っていた。

 回復基調にあった中での一時停止は大きな痛手だ。同組合によると、年末年始は客単価が高く、県外からの宿泊者が多い。年間で最大の書き入れ時だけに1月以降の資金繰りへの影響が懸念される。

 政府は解約を受けた旅行会社、宿泊施設などの事業者に旅行代金の50%相当分を補償する。当初は補償対象に含まれていなかったパックツアーに組み込まれた交通機関、飲食店も対象に加えられた。食材を卸す業者やクリーニング業者などには、宿泊施設側が補償などを講じるよう求めている。

 しかし、政府から補償時期や手続き方法について具体的な内容はまだ示されていない。政府は、補償金が業者の手元に行き渡るための態勢を早急に整えるべきだ。

 年末年始は医療・検査機関の態勢が手薄になる。感染者が急増している地域では、既に病床が逼迫(ひっぱく)しており、医療従事者の休みの確保も困難な状況になっている。

 政府は11月下旬から「勝負の3週間」と位置付け、集中的な感染防止対策を呼び掛けたが、効果は上がらなかった。今回の一時停止中は、医療現場の負担を少しでも軽減させるため、慎重に行動することが大切だ。

 政府は、停止期間が明ける12日以降の対応について、年明け以降に判断する方針だ。急に再開が決まっても、予約を受けたり、食材などを仕入れたりするには一定の時間が必要で、すぐ対応できない事態も想定される。政府はできる限り早期に方針を示し、影響を最小限にとどめてほしい。

 「Go To」キャンペーンのうち、県はきのうから、飲食業界支援の「イート」についてプレミアム付き食事券と、県が発行している食事券の販売を停止した。

 忘年会や新年会などの自粛が相次ぎ、飲食業界も苦境に立つ。宿泊施設と同様に、救済策について早急な検討が必要だ。



山田耕筰忌(2020年12月29日配信『熊本日新聞』-「くろしお」)

 志村けんさんが存命だったなら、どんな展開になっていたのだろう。先月終了した、NHK連続テレビ小説「エール」の話だ。志村さんは、主人公の古山裕一があこがれる作曲家・小山田耕三を演じていた。

 ドラマでは、古山の才能に嫉妬し、冷たい態度を取る役だった。この小山田のモデルとされているのが、童謡「赤とんぼ」などで知られる山田耕筰だ。ドラマの最終話。古山に小山田からわびの手紙が届く。”悪役”で終わらず泉下の山田も安堵(あんど)しているだろう。

 山田が死去したのは1965年のきょう。妻の真梨子さんによると、山田は音楽以外にも多方面で活躍した。演劇に舞踊。発明で特許を取ったこともあるという。文章を書くのも好きだったようで、多くの音楽時評や随想を残している。意外なところでは「占い」がある。

 大正時代末期に「生れ月の神秘」なる本を出版。当時、この手の本は珍しく大いに売れたらしい。復刻版を読むと男女、大人、子ども別に具体的な助言が並ぶ。ちなみに12月生まれの項を見ると「この月に生まれた人は自己の思慮に導かれて進むのがよく、他人の助言を求めてはいけない」とある。

 確かに平時においてはそれでいいかもしれないが、今の状況下でそれはいかがなものか。周りの意見、特に専門家の意見はよく聞いた上でGo Toの今後などは熟慮を重ねて―って、何の話かって? 失礼、12月生まれの現首相の顔が浮かんできまして…。





GoTo再開 全国一律ではない対応を(2020年12月22日配信『北国新聞』-「社説」)

 全国知事会が新型コロナウイルス対策本部会合で、政府の観光支援事業「GoToトラベル」について、感染が落ち着いている地域から順次再開するなどの柔軟な対応を求めたのは、経済効果の大きさを肌で感じているからだろう。

 会合では、28日から来年1月11日までの全国一斉停止を唐突に決めた国に対する批判が相次いだ。谷本正憲知事も、全国一律での一時停止に一定の理解を示しながらも「地域の感染状況を考慮することなく一方的に決まった。石川県には一度も相談がなかった」と苦言を呈した。感染拡大がそれほどでもない地域の首長は、谷本知事と同じような思いではないか。

 GoToの停止がホテルや旅館などの宿泊施設だけでなく、交通や物産など幅広い分野の事業者に影響が出ている事例も報告され、中小零細事業者の経営悪化を懸念する声が聞かれた。

 一部の野党やメディアから「各種のGoTo事業は感染収束後に実施するはずだったのに、第2波の感染拡大が始まった7月に前倒しで始まった。経済回復のアクセルを強く踏み過ぎた」などと批判する声がある。だが、これにより救われた観光、飲食関連の事業者や従業員も多かったはずだ。

 コロナ禍は、当分の間続くと思わねばならない。特に地方は観光業や飲食業の比重が高く、職種によってはリモートでも仕事ができる都会とは違う。収束するのを待っていたら、地域経済は、立ち行かなくなってしまうだろう。

 知事会では、感染者や重症者が急増している都道府県の知事から、医療体制の逼迫(ひっぱく)を懸念する意見もあった。地域によって優先すべき課題に違いが出るのは当然であり、重症者の病床使用率が高い地域などは、コロナ対策を優先すべきだろう。

 西村康稔経済再生相は21日の臨時閣議後会見で、GoToトラベルの再開について、地域の状況や知事の意向をくみながら、年明け後のしかるべき時期に判断したいと述べた。その言葉通り、政府には感染が落ち着いている地域から順次再開していく柔軟な対応を求めたい。





新型コロナ・GoTo停止/混乱避け感染抑止に注力を(2020年12月17日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、医療体制は緊迫の度が増している。人の移動を促す観光支援事業の一時停止は当然の判断だ。政府には利用者や事業者などの混乱を回避し、感染抑止に全力を挙げてもらいたい。

 政府は「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全国一斉に停止することを決めた。感染拡大が極めて深刻な東京都、名古屋市などを目的地とした利用は先行して停止する。

 政府は先月25日から「勝負の3週間」と位置付けたが、新規感染者数は連日2千人を超え、重症者や死者が増えている。県内もクラスター(感染者集団)の発生が相次いでいる。日本医師会や政府の新型コロナ感染症対策分科会は、事業の見直しを再三迫っていた。

 全国一斉の停止を決めたとはいえ、政府の対応が後手に回っている感は否めない。年末年始は医療機関の診療や検査態勢の縮小などが見込まれるため、早期停止を求める医療従事者なども多い。

 今後さらに感染拡大の勢いが増し、医療提供体制が危機的な状況と判断すれば、政府は直ちに停止に踏み切るべきだ。

 菅義偉首相は停止期間について「年末年始は集中的に対策を講じられる時期だ」と説明したが、帰省や旅行を予定していた人は多い。県内の旅館、ホテルの予約客の大半が「Go To」を利用しており、関係者からは「最悪のタイミングだ」との声が聞かれる。

 政府は、予約のキャンセルを受けた事業者への補償を年末年始に限り、従来の35%から50%に引き上げることを決めた。

 観光産業は裾野が広く、運輸交通、食材や飲料を提供する農家や事業者、クリーニング業、土産物の販売店など、地域経済に及ぼす影響は小さくない。

 年末年始に向けた食材の仕入れなどを済ませている宿泊施設もある。一時停止とはいえ、キャンセルに伴う経営悪化により、資金繰りや雇用への影響も懸念される。国や県は事業や雇用が維持できるよう、事業者からの相談や要請に応じ、持続化給付金や雇用調整助成金の活用など、きめ細かな支援策を講じてもらいたい。

 全国一斉に事業を停止しても、一人一人が3密の回避や消毒、換気などの対策を徹底し、不要不急の移動などを控えなければ、早期の沈静化は期待できない。

 停止期間中に感染者の増加が食い止められなければ、停止期間の延長などの措置も必要になるだろう。政府には状況に応じた柔軟な対応を求めたい。



1994年10月8日のプロ野球セ・リーグ…(2020年12月17日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 1994年10月8日のプロ野球セ・リーグ中日対巨人戦は球史に残る一戦として語り継がれている。1試合を残して両チームが同率首位に並び、史上初の勝った方が優勝する直接対決だった

▼試合前、巨人の長嶋茂雄監督は緊張する選手たちに叫んだ。「俺たちは絶対勝つ」。その一言で一丸となったチームは快勝した。指揮官の勝負への飽くなき執念が選手たちの不安を解消し、勇気と自信を与えた

▼一国の指揮官たる菅義偉首相には、新型コロナウイルス感染拡大防止に懸ける気概を国民に伝え、理解してもらうつもりはあったのだろうか。きのうまでの「勝負の3週間」に開いた記者会見は臨時国会会期末の1回だけだった

▼しかも、インターネット番組で自らを「ガースー」と呼んだことや、度重なる夜の会食が緊張感を欠いていると批判される始末。「勝負」の掛け声もむなしく、「笛吹けども踊らず」状態が続き、新規感染者数をはじめ感染状況は悪化の一途をたどった

▼とはいえ、遅きに失したものの、「Go To トラベル」事業は年末年始に全面停止されることになった。ならば、できるだけ静かに過ごして、何としても感染拡大を抑え込むしかない。勝負の行方が決まるのは先のようだし、指揮官に頼らなくても勝つことはある。



コロナの年の「帰省暮」(2020年12月17日配信『中国新聞』-「天風録」)

 生活のリズムを大きく乱された1年が暮れようとしている。入学式や秋祭りなど風物詩ともいえる行事がコロナ禍によって中止になった。途絶えた伝統もある。と思ったら、見直されて復活するものがある。「暮れのごあいさつ」もその一つ

▲GoToトラベルの一時停止が決まり、帰省を控える人は一層増えそうだ。自粛ムードの一方で、お歳暮商戦が例年より熱を帯びたという。家族や友人と会えない分、心尽くしの品を贈って、息災や感謝を伝えようと

▲帰省とお歳暮をかけ合わせた「帰省暮」「帰歳暮」の造語が現れた。子どもや孫の顔を見るのを心待ちにしていた親の方でも少し慰めになるだろうか。ときめきて紐解く歳暮子より来し(村井昌子)

▲子どもの担任の先生や会社の上司に、暮れのごあいさつ―。そんな習慣も今は昔に違いない。不景気が続く上、接待や癒着には厳しい目が向けられる。贈答文化の衰退は時代の流れだろうが、帰省暮ならば歓迎したい

▲歳末商戦ではおせちの注文も好調と聞く。帰省できない分、自宅でちょっと豪華に新年を迎えようというのだろう。高級食材や料亭の味も人気らしい。懐かしい顔とつつく故郷の味には及ぶまいが。



悔しさも悔いも(2020年12月17日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 寒そうに肩をすくめていた。気温1桁の寒さと重圧が本来の力を封じたようだ。女子ゴルフの全米女子オープン選手権の最終ラウンドで首位から出た渋野日向子選手はスコアを落とし、メジャー2勝目はならなかった

▲自分のスイングができずに飛距離が落ち、アイアンの精度も欠いていた。昨夏の全英覇者も今年は不調に苦しんだ。だが今大会は初日から快進撃を見せ、実力の高さを証明してみせた。彼女らしい笑顔も多く出ていただけに、寒さに対応できなかった最終日は惜しい

▲こちらは寒い冬への対応の重要さは事前に分かっていたのに不手際が目立つ。政府の新型コロナウイルス対策である。観光支援事業「Go To トラベル」を全国で一時停止することがようやく発表された

▲感染「第3波」が脅威となってから専門家はトラベル事業の一時停止を再三提言してきたが、政府の対応は遅れた。県内の女性が指摘していた。「もっと早くやめていれば、年末年始には再開でき経済への影響が小さかったかも」

▲首相の言動には首をかしげることも多い。事業停止を決めた夜に5人以上で会食し、批判を受けている。タイミングと人数を考えなかったのだろうか

▲渋野選手は「悔しい思いもあるが悔いはない」と話し、雪辱を誓った。首相には、悔しさも悔いもあると思われる政策が続く。しっかり雪辱を果たしてもらわねばならない。国民の生命がかかっている。



本気度見えない「ガースーです」(2020年12月17日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 本気で勝負するなら、トップが自らの言葉と行動で決意の程を示すべきだった。新型コロナの感染防止に集中的な対策を訴えた「勝負の3週間」だ

▼政府が笛を吹けど、繁華街や観光地の人出はあまり減らなかった。感染者は増え続け、医療は逼迫(ひっぱく)した。自制を求める一方でGoTo事業を続けた政策の矛盾が失敗の要因だろう

▼常識で考えても、おしゃべりを慎む旅行は楽しくなかろう。むしろ旅先では、はめを外しがち。だが、事業継続にこだわる菅義偉首相は「感染拡大の主要な原因とのエビデンス(証拠)はない」と言い張った。仮にそうだとしても、政府が旅行や外食を税金で推奨している事実が国民の心のたがを緩ませたのは否定できまい

▼では、トップの本気度は。国会答弁や記者会見は目を伏せて原稿を棒読み。専門家の意見にも耳を貸さない。けれど内閣支持率が急落すると「Go To トラベル」の全国一斉停止を即断。政権の危機というエビデンスには敏感のようだ

▼こちらは心を揺さぶられる演説。「1日590人の死は受け入れられない」。冷静なドイツのメルケル首相が感情をむき出しにし、クリスマス期の対策強化への理解を国民に求めた

▼片や、わが首相。「勝負」の期間中にネット番組で「こんにちは、ガースーです」とおどけてみせた。一斉停止を発表した夜に大人数で「忘年会」とも報じられた。国民の目にどう映ろう。



各界の大御所集め著名人候補の人選(2020年12月17日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★衆院議員宿舎で生活し、公邸に引っ越さない首相・菅義偉。前首相・安倍晋三も渋谷区の自宅を好んだが、2人とも危機管理を売り物にしている歴代首相が公邸に住みたがらないことを絵解きしてくれる新聞はない。首相はおのずと外食が増え、ホテルでの朝食はもう日課になったと言っていい。4人以上での会食は避けよと国民に言いながら、連日ステーキの会食を続けるのは重要な会食か、それともストレス解消の食事か。

★14日夕方の「Go To トラベル一時停止」発表は衝撃だったが、この後首相は幹事長・二階俊博、同代理・林幹雄、ソフトバンク球団会長・王貞治、俳優・杉良太郎、タレント・みのもんた、政治評論家・森田実ら、もう数人いたらしいがステーキを楽しんだ。出席者の1人は「忘年会だ」と発言したことからも「3密会食」の批判を受けた。翌15日にも首相はフジテレビ会長・宮内正喜、同社社長・遠藤龍之介、東京五輪・パラリンピック組織委員会理事・高橋治之とこちらもステーキの会食だ。

★この批判に16日の衆院内閣委員会で経済再生相・西村康稔は「一律に5人以上は駄目だと申し上げているわけではない。そのような強制力も(政府には)ない。ただ長時間、大人数の会食はリスクが高いので、できるだけ控えていただきたい」などと、首相らをかばった。

★自民党関係者が言う。「両日の顔触れを見たらピンときたよ。プロ野球、アマスポーツ界、芸能界、テレビ業界などの大御所が集ったのは、次期衆院選の著名人目玉候補の人選が始まったんだろう。各界の候補者のリストアップだろう。幹事長と代理がいるのも説明がつく。党本部に呼んで話せないからね。これは会食しか手がなかった」。この時ばかりは、外食大好きがあだとなった。





GoTo一斉停止/首相の危機管理 不安尽きぬ(2020年12月16日配信『河北新報』-「社説」)

 ブレーキを踏むタイミングが遅すぎないか。これで年末年始は落ち着けるのか。不安が尽きない決断だ。

 政府は観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全国一斉に停止すると決めた。これに先立ち、新たに東京都と名古屋市を目的地とする旅行を割引対象から除外した。

 人の移動を減らして新型コロナウイルスの感染拡大を抑え、医療現場の負担を軽減するのが目的という。菅義偉首相は「皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるように最大限の対策を講じる」と述べた。

 「最大限」と言うのであれば、停止を年末まで猶予することはない。年末年始に向けて状況を好転させたい考えなら、もっと早く停止に踏み切るべきだ。

 決断の時期も遅い。政府は11月25日、「勝負の3週間」と宣言し、感染防止の強化を呼び掛けた。しかし、第3波は収まらず、今月12日、新規感染者は3000人を超え、過去最多を更新した。全国の主要駅や繁華街は、人出が減るどころか増えている所もあった。

 「勝負」の掛け声は上滑りした。勝負を口にした以上、先手を打って大胆な対策を講じるべきではなかったか。

 菅首相は先週、インターネットの動画配信サイトで「移動では感染しないという提言を頂いている」と語った。今回の判断と明らかに矛盾する。国民にきちんと説明すべきだ。

 東京都と名古屋市を出発する旅行は27日まで利用を控えるよう新たに求めた。到着分は利用を停止し、出発は自粛。この判断はちぐはぐだ。利用者と旅行業者が混乱するのは目に見えている。

 追い込まれた末の判断だったのだろう。各社の世論調査で内閣支持率が急落している。共同通信社が今月上旬に実施した調査では、支持率は50・3%と前回の11月から13ポイント近く下がった。

 経済を優先し、感染防止策を小出しにしている首相の危機管理に対する批判の表れだ。方針の急転換からは、政権の土台が揺らぎかねないとの焦りが読み取れる。

 トラベル事業は菅首相が官房長官の時に主導し、7月から始めた。感染防止と経済再建の両立を重視する首相の肝いり政策だ。延べ5260万人が宿泊で利用したとされ、地域経済の下支えに有効なのは確かだ。

 しかし、新規感染者と重症者の増加に歯止めがかからない以上、感染抑止のマイナス要因を放置することはできまい。医療供給体制が逼迫(ひっぱく)し始めている。北海道旭川市と大阪府は自衛隊に要請し、看護官らの派遣を受けている。

 年末年始は診療態勢が縮小する。感染を抑え込むための行動を優先しないと、医療が手薄な時期が危うくなる。危機意識を一段と高めたい。



「決断が遅すぎた」(2020年12月16日配信『東奥日報』-「天地人」)

 掛け声倒れと言わざるを得ない。新型コロナの感染拡大を抑えようと、政府が先月25日に打ち出した「勝負の3週間」のことだ。対策が新規感染者減少につながらず、医療体制は逼迫(ひっぱく)。窮地に陥った菅義偉首相は14日、自身が旗振り役だった観光支援事業「Go To トラベル」の全国一時停止を余儀なくされた。

 トラベル事業の運用などを巡っては、政府のコロナ対策分科会が繰り返し厳しい内容の提言を発表。今月11日にも、感染拡大が継続する地域では事業を一時停止するよう、改めて提言していた。

 これに対する政府の対応といえば、小出しの感染抑止策など。分科会の提言があった11日のインターネット番組で菅首相は、トラベル事業の一時停止を否定し「まだそこは考えていない」と明言した。

 番組の中での自己紹介も話題に上った。「ガースーです。よろしくお願い申し上げます」。ネット上で飛び交う「すが」をもじった愛称に自ら言及した。親しみを持たせ笑いを誘うつもりだったかもしれないが、苦笑した人もいたのでは。

 「感染状況を踏まえると適切」「帰省客を当て込んでいたのに」。トラベル事業の一時停止には、県内の関連事業者にさまざまな受け止め方がある。共通するのは「決断が遅すぎた」。「国民のために働く」と宣言した菅首相。われわれの命と暮らしを守る真剣勝負ができるか。



GoTo一時停止 判断、あまりに遅過ぎる(2020年12月16日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 菅義偉首相が政府の観光支援事業「Go To トラベル」を全国で一時停止すると表明した。政府の新型コロナウイルス対策分科会の再三の提言などを受け、やっと重い腰を上げた。

 全国の状況を見ると、あまりに遅過ぎる判断だ。1日当たりの新規感染者は12日に3千人を超え、重症者が最多を更新。逼迫(ひっぱく)する医療現場からは「心身の疲弊は限界」と悲鳴が上がる。

 にもかかわらず、菅首相は人の移動を促すトラベル事業に固執。基本的な感染防止策の徹底を個人に求めたり、一部地域を対象から除外したりするなど小出しで場当たり的な対応を重ねてきた。そこに世論調査での内閣支持率急落が直撃。今回の決定を余儀なくされたようだ。

 トラベル事業の一時停止自体は評価できるが、疑問もある。なぜ今月28日からなのかがよく分からない。停止前日まで利用しても問題はないとのメッセージと取られかねず、この間に感染拡大の恐れはないのか。来年1月11日までという期間で十分なのかといった疑問もある。

 事業が感染拡大の主要因とする「証拠はない」が菅首相の持論だ。だが東大などの調査ではトラベル利用者ほど感染リスクが高いとの結果が出た。厚生労働省専門家組織は都道府県を越える移動歴のある20~50代の感染者がうつす例が多いと指摘。日本病院会は飲食を含むキャンペーンの中止を求めていた。

 事業と感染拡大の因果関係を示す決定的な証拠は現段階ではない。とはいえ、拡大の一因となっている疑いがあれば一定程度、強い対応を取るのが本来の対策の在り方ではないのか。

 疑わしい要因を確実につぶしていくような防止策を講じない限り、感染拡大を抑え込むのは難しいだろう。経済活動が重要なのは言うまでもない。しかし死者、重症者ともに増え続け、通常医療にしわ寄せが及んでいる現在の局面では「命」を優先するのは当然のことだ。

 コロナ患者受け入れ医療機関に医師、看護師を派遣した際、派遣元が受け取る補助金を倍増させることも政府は決めた。だが、これも場当たり的な対応でしかない。逼迫する医療現場を救うには、自治体や病院などが連携して医療従事者を派遣できる全国的な仕組みを整える必要がある。その仕組みをつくることこそ政治の仕事だ。

 観光業者への支援も必要となる。キャンセルに伴う補償の拡充を国土交通相は表明したが、果たして十分なのか。菅首相が打ち出した大型の追加経済対策に投入する予算を、事業者支援を含むコロナ対策全般に振り向けることも検討すべきだ。

 トラベル事業の再開と停止を判断できる一定の数値基準をつくることも欠かせない。対応が場当たり的になるのは明確な基準がないからだ。国民に公開された基準の下、自治体に丸投げすることなく、政府が責任を持って判断することが必要だ。



風を待つ(2020年12月16日配信『福島民友新聞』-「編集日記」)
 
 「風がないときは、ひたすら我慢しながらいい風を待つ。じっと耐え忍んでいると、大自然は思わぬプレゼントをくれる」。ヨットで単独無寄港の世界一周を3度達成した、海洋冒険家の白石康次郎さんは、自著「精神筋力」(生産性出版)で洋上生活を振り返る

 ▼セーラーにとって苦しいなぎの時間だが、波風のない穏やかな自然がもたらしたのは見渡す限りの星だった。夜になると、空に輝く満天の星が鏡のような大海原に映り、自らの存在が宇宙の一部と感じたらしい

 ▼やはり、我慢の時か。政府の観光支援事業「Go To トラベル」の全国一斉の一時停止が決まった。地域経済への効果が見えてきた段階での停止だ。人や経済を少しずつ動かしてきた風は、いったんやむことになるかもしれない

 ▼苦境に立つ旅行業界にとっては年末年始が書き入れ時だ。県内のスキー場はようやく雪が積もり、本格的な営業を控えた中での突然の決定だった。関係者には星も光も見えない厳しさといえる

 ▼嵐など海がひどく荒れたとき、白石さんの対処法は「自分の判断を信じ、できるだけのことをして身をまかせるだけ」という。とにかく安全な航海ができるまで、いまはじっと待つしかない。



GoTo停止 遅きに失した決断だ(2020年12月16日配信『東京新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が「Go To トラベル」を全国で一時停止すると表明した。一部地域の制限から突然の方針転換だが、新型コロナ感染再拡大は先月から鮮明であり、決断は遅きに失している。

 菅首相は14日「皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるように最大限の対策を講じる」と一時停止の理由を述べた。
 政府の対策分科会は再三トラベルを見直すよう求めてきた。だが政府は一貫して「トラベルが感染を広げている証拠はない」との立場だった。

 菅首相は方針転換後もトラベルと感染拡大の因果関係について説明をしていない。国民の命に関わる政策の変更理由について首相が語らないではすまされない。

 首相がトラベル続行にこだわる中、各世論調査で内閣支持率が軒並み大きく落ちた。首相の転換が支持率急落に後押しされたことは間違いないだろう。

 遅い決断に業を煮やした国民が、トラベルを早急に一時停止するよう促した形でもあり、国民の意思をもっと早く受け入れるべきだった。

 規制が始まっているイートを含むGoTo事業全体の今後についても指摘したい。キャンセルの手続きなどで消費者も事業者もすでに混乱している。国はキャンセル料を負担したり事業者への補償を行うが、この結果、巨額予算が追加支出されることにもなる。

 菅首相は、自らの決断の遅れが国民の暮らしに大きな迷惑をかけた上、多額の財源を失わせる事実を強く認識すべきだ。

 コロナ禍は未解明の部分が多く、各国政府は手探りの対応を続けざるを得ない。ただその中で菅政権の対応は後手後手の度が過ぎるのではないか。

 トラベルにしても分科会や自治体の要望を真摯(しんし)に聞く姿勢があればより早く決断できたはずだ。

 政府はトラベルの停止作業を可能な限りスムーズに行う一方、最も適切な再開時期を探らねばならない。そのためにも信頼関係を失いつつある自治体との関係も早急に再構築すべきだ。

 トラベル事業に原則として異論はない。ただこの政策はあくまで消費刺激策であり、最も困窮している人々を救う手だてとしては効果が薄い。

 この事業で必要とされるのは政策の主体者である国の的確な対応なはずだ。菅首相には状況に応じた柔軟で機敏な決断を強く求めたい。



GoTo停止 危機感伝わらぬ「及び腰」(2020年12月16日配信『新潟日報』-「社説」)

 世論の批判に抗しきれず、追い込まれた末の見直しだ。及び腰で対策を小出しにし、後手を踏んでばかりでは、「危機感の共有」を求められても国民は不安を募らせるだけだろう。

 危惧するのは、政府の対応への不信感が膨らむことだ。国民の協力を得、実効性のある対策を打つため、政府が適時適切に判断していくことが不可欠だ。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」を巡り、菅義偉首相が14日、一部地域の利用制限という従来の姿勢から大きくかじを切り、全国で一時停止すると表明した。

 トラベル事業は今月28日から来月11日まで、目的地、出発地を問わず、割引を適用しない。従来の札幌市、大阪市に加え、東京都、名古屋市を目的地とした利用を先行して停止する。

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない中、専門家らは再三、事業の見直しを迫った。

 だが、首相は経済に配慮した小出しの対策を打つだけで、政府が呼び掛けた「勝負の3週間」も感染者、重症者ともに増加に歯止めがかかっていない。

 12日には新規感染者が3千人を超え、過去最多を更新。内閣支持率低下も目立ち始めた。

 共同通信が12月上旬に実施した世論調査では支持率は50・3%で、前回11月から12・7ポイント急落。毎日新聞の直近の調査では17ポイント下落の40%となり、不支持率が49%と上回った。

 こうした状況に衝撃を受けた首相が急きょ方針転換を決めたのが真相のようだ。

 首相は方針転換に至った理由や、停止期間を28日からとした根拠などについて明確に説明していないが、こんな場当たりでは安心できない。

 ほかにも気掛かりがある。

 政府の新型ウイルス対策分科会がトラベル事業の一時停止などを提言した11日、首相はインターネット番組に出演。一時停止を否定し、「GoTo事業が悪いことになっている」と不満をにじませていた。

 これまで首相はトラベル事業が「感染拡大につながるエビデンス(証拠)はない」との姿勢を変えず、全国停止を表明した14日の記者の質問に対しても同様の考えを示した。

 こうした姿勢で感染防止に向けた的確な判断ができるのか。経済対策は重要だが、求められるのは感染拡大の封じ込めだと肝に銘じてもらいたい。

 トラベル事業停止も来月11日までで十分かは分からない。そうしたことも踏まえ、めりはりの効いた対応が必要だ。

 観光関連業者にとっては年末年始の書き入れ時を前にした急な方針転換だ。地方からは「大きなダメージになる」といった声が上がる。

 キャンセルを受けた事業者への補償を従来の35%から50%に引き上げる方針が示されたが、混乱を招かないよう目配りを徹底してほしい。

 首相には支持率低下を恐れる内向きの姿勢ではなく、国民の不安にきちんと向き合うよう求めたい。



補佐役(2020年12月16日配信『新潟日報』-「日報抄」)

 長岡藩に山本老迂斎(ろううさい。石高は1300石)という家老がいた。藩校・崇徳館を創設するなど名君の誉れ高かった9代藩主・牧野忠精(ただきよ)まで6代の殿様に仕えた。その間、実に50年。牧野家を支え、藩政の実務を取り仕切った

▼凶作の年は率先して自らの財産を投げ出し、藩の蔵も開いて窮民に救いの手を差し伸べた。地位の高い家の生まれながら偉ぶることはなく、その人間性は多くの人の敬意を集めたようだ

▼集団を動かし、ことを成すには、リーダーを支えるナンバー2の役割もまた大きい。亡君の仇(あだ)討ちを果たした赤穂四十七士の中には、吉田忠左衛門という侍がいた。還暦を少し過ぎており、頭領の大石内蔵助の補佐役を務めた

▼落ち着いた物腰は周囲に頼られた。討ち入りに向けては、血気にはやる一部の浪士を抑え、時をうかがった。当日は裏門隊の副将として、大将で内蔵助の子息である大石主税(ちから)を支えた

▼補佐役がトップになることもある。安倍政権で官房長官だった菅義偉首相もその1人だ。7年8カ月にわたって番頭役を務め上げた。時に黒子となり、時には矢面に立ち、官僚の掌握や危機管理などで豪腕ぶりを発揮した

▼内閣の頭領になり、16日で3カ月になる。最大の課題である新型ウイルス対策では苦戦続きだ。「Go To トラベル」の見直しには当初否定的だったが、結局一時停止に追い込まれた。世論調査の推移を見ると、発足直後の期待はしぼんでいるようだ。補佐役出身の実務家トップは、打開策を持ち合わせているだろうか。



GoTo停止 地方経済への影響が心配だ(2020年12月16日配信『北国新聞』-「社説」)

 「GoToトラベル」が28日から全国一斉に一時停止されることになった。本格的な冬の到来とともに、全国的な感染拡大が止まらず、拡散を恐れる地方からも中止を求める声が上がっていた。一時停止が感染抑止にどれほど効果があるのかは不明ながら、国民に危機感を持ってもらうという意味はあるだろう。

 日銀金沢支店が14日発表した12月の「北陸短観」をみると、宿泊・飲食サービスの景況感は大幅に改善した。GoTo事業が来年1月末まで継続できれば、ホテルや飲食店などの直接経済効果は全国で約2・1兆円、関連を含めた波及経済効果は約4兆円に上るとの試算もあっただけに、GoToの恩恵を受けてきた北陸をはじめ、地方経済の落ち込みが心配だ。特に小規模事業者が踏ん張り切れるか不安がよぎる。

 菅義偉首相は、年末年始に自治体からの時短要請に応じた飲食店に支払う協力金について、支援額の単価を最大1カ月当たり120万円に倍増すると表明した。予約をキャンセルされた事業者には、旅行代金の50%を補償するという。さまざまな手を尽くし、救済策を講じて欲しい。

 石川、富山両県の感染状況は、比較的落ち着いており、GoToトラベルの停止は残念というほかない。3密対策を徹底し、来年1月11日以降に再開できるよう感染抑止に努めていきたい。

 政府の新型コロナ感染症対策分科会は再三、GoToトラベルの停止を政府に求め、共同通信の世論調査でも停止を求める声が半数近くあった。分科会が「感染拡大の主要な要因であるとのエビデンス(根拠)は現在のところ存在しない」と言っていたにもかからず、感染拡大の責任を背負わされてしまった。四面楚歌の中で、菅首相も方針転換を余儀なくされたのだろう。

 観光業はすそ野が広く、地域経済の主要な柱になっている。ホテル、旅館、バス、タクシー、食材提供業者、土産店などに従事する人は全国で約900万人、飲食店従事者は390万人を数える。コロナ禍で最も打撃を受けた人々への有効な支援策が必要だ。GoTo事業の再開が待たれる。



GoToトラベル停止(2020年12月16日配信『福井新聞』-「論説」)

対策遅れの影響に懸念も

 菅義偉首相は、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況を受け、観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全国一斉に停止すると表明した。コロナ対策分科会の再三にわたる提言のほか、内閣支持率の急落に見られる世論や自治体などからの声も無視できなくなり、ようやく重い腰を上げた格好だ。

 政府は今月半ばまでを「勝負の3週間」としながら、感染防止策は小出しでむしろ経済活動にこだわってきた。感染者は1日当たり3千人を超えるまでに拡大。重症者も連日のように最多を更新し600人に近づく。先週末の人出は全国主要駅や繁華街の全95地点の約7割の地点で前週より増えるなど危機感が浸透していないことは明らかだ。

 GoToトラベルを主導してきた首相は「感染拡大の主因との証拠はない」と言い続け、全国一斉の一時停止を表明した後も「そこについては変わりません」と明言。確かに「最大5兆円の経済効果、46万人の就業誘発効果があった」(加藤勝信官房長官)だろうが、一方で、外出自粛に対する国民の気の緩みを招いたとの指摘は免れない。

 首相は「年末年始は集中的に対策を講じられる時期だ。静かに過ごし、コロナ感染を何としても食い止めることに協力してもらいたい」と呼び掛けた。ただ、勝負の3週間と表した時点で強力な対策を講じていれば、観光関連業のかき入れ時を失するような事態にはならなかったはずであり、首相の呼び掛けは強弁のようにも映る。

 さらに、28日からの一斉停止に「すぐにも止めるべきだ」といった声が上がっている。札幌、大阪の2市に加え、東京都や名古屋市に対する利用停止や自粛を求めてはいるものの、コロナ用病床の直近の使用率がステージ3(感染急増)の目安の一つである「25%以上」は22都道府県に上る。とりわけ医療体制が脆弱(ぜいじゃく)な地方では一気に逼迫(ひっぱく)、崩壊に陥りかねず、早急な対応が欠かせないはずだ。

 首相が導入したGoToトラベルに自らブレーキをかければ、政治責任を問われかねないためか、「各首長と調整している」などと自治体に責任を転嫁するような言動も目立った。強力な対策が遅れた分、効果は限定的で今後に悪影響を及ぼすとの懸念も専らだ。

 感染が再拡大するドイツではメルケル首相が部分的ロックダウン(都市封鎖)を「十分ではなかった」と非を認め、人々の振るまいに対して「多数の死者という代償になっているならば受け入れがたい」などと感情をあらわに危機感を訴えたという。菅首相はリーダーシップの在り方を自らに問い直すべきだろう。



武士道では主君に真心から仕える忠義…(2020年12月16日配信『福井新聞』-「越山若水」)
 
 武士道では主君に真心から仕える「忠義」を重んじた。ただやみくもに服従するものではなかった。あくまで自身の義を果たすのが目的で、良心に従って行動することを旨とした

▼だから上に立つ者の気まぐれや妄念のために、自らを犠牲にする者は低く評価された。「『佞臣(ねいしん)』すなわち節操のない諂(へつら)いでご機嫌を取ろうとする卑劣な家臣として、または『寵臣(ちょうしん)』すなわち奴隷的追従によって主君の愛を盗もうとする家臣として軽蔑された」

▼こう指摘するのは、明治中期に世界的なベストセラー「武士道」を著した新渡戸稲造である。主人の判断が正しくないと思えば「それはなりません」と諫言(かんげん)。時と場合によっては主人を押し込め、意に反する行動を選択する。すべては忠義の名における決断だという

▼では、新型コロナウイルスをめぐる政府対応はどうだろう。感染拡大の高止まりを受け、専門家や医療関係者は観光支援策「Go To トラベル」の一時停止を求めた。ところが菅義偉首相は「拡大につながるエビデンス(証拠)がない」と経済復興にこだわった

▼それが一転、トラベル事業を年末年始に全国一律で停止するという。支持率低落が方針転換の要因とみられる。「諫言耳に逆らう」と言うものの、首相を取り巻く大臣や与党が追随、黙認した責任は大きい。政治主導の危うさがまた浮き彫りになった。



GoTo停止/判断があまりに遅すぎた(2020年12月16日配信『神戸新聞』-「社説」)

 政府が観光支援事業「Go To トラベル」について全国での一時停止を決めた。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない状況を踏まえ、大阪市など一部地域の利用制限から方針転換した。

 菅義偉首相は先週末まで、経済への悪影響を理由に全国的な停止には否定的だった。週が明けるや方針を転換させた形だが、その判断はあまりに遅すぎる。

 専門家の分科会は再三にわたって感染急増地域でのトラベル事業停止を求めてきたが、対策は小手先にとどまった。政府は「勝負の3週間」を掲げたものの、国民の行動変容に結びつく明確な政策を打ち出さず、都市部の人出は緊急事態宣言のときほど減っていない。状況は悪化の一途をたどっている。

 人の移動を極力制限するのが感染症対策の要であり、税金で旅行や宿泊を促すタイミングでないことは自明だ。専門家の提言を顧みず、ここまで事態を深刻化させた首相の責任は大きい。自らの判断の失敗を認めた上で経済重視をいったん封印し、感染抑制に向けた行動変容の必要性を自ら国民に説くべきである。

 首相の方針転換の背景には、内閣支持率の低下が指摘されている。

 共同通信が12月上旬に実施した調査では前回から12・7ポイントも急落し、他の調査では不支持が支持を逆転したものもある。最大の要因は、政府の感染対策の不十分さだ。

 首相は「トラベル事業は感染拡大の原因でない」という主張を現在も撤回しておらず、今回の決定との整合性がない。一時停止を始めるのが今月28日と2週間近く先なのも理解に苦しむ。停止はするが経済損失はできるだけ少なくしたいといった及び腰では、感染防止に向けた強力なリーダーシップを振るうことは到底不可能だろう。

 違和感を覚えるのは、トラベル事業を続けないと経済的に追い込まれ自殺者が増えるという主張が与党内にあることだ。

 自殺者数が昨年を上回り始めたのはGo Toトラベル事業が始まった7月以降だ。東京除外が解除された10月は前年比で約4割増えた。データを見る限り、自殺者数を抑制したとは言い難い。それよりも、生活苦や病苦などを抱え孤立する人々に手を差し伸べる政策にこそ、力を尽くすべきではなかったか。

 留意すべきは、トラベル事業停止はあくまで対策の一つにすぎない点だ。政府は都道府県知事と連携した上で、地域限定の休業要請などさらに強力な施策も視野に入れる必要がある。安心して要請に応じるための支援体制をセットで打ち出すのはその大前提になる。



GoTo一時停止 後手の対応脱し感染防げ(2020年12月16日配信『山陽新聞』-「社説」)

 妥当な判断だが、遅きに失した感は否めない。政府は新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、28日から来年1月11日までの間、観光支援事業「Go To トラベル」を全国一斉に停止することを決めた。

 専門家による政府のコロナ対策分科会から、感染拡大が続く地域における対策強化の提言を受けたものである。

 それによると一時停止している札幌、大阪両市に加え、18日からは感染者数が最多の東京都や名古屋市を目的地とする旅行を27日まで対象から外す。出発地とする旅行については、利用を控えるように求めるとしている。

 引き続き28日から全国一斉の一時停止に入り、目的地、出発地を問わず割引を適用しない。1月12日以降については、推移を見ながら判断するという。混乱をきたさぬ円滑な実施が望まれる。

 菅義偉首相は「これ以上の感染拡大を防ぎ、みなさんが落ち着いた年明けを迎えられるよう最大限の対策を講じる」と述べた。ならば、できる限り早く全面一時停止にすべきで、なぜ28日まで引っ張るのか聞きたい。

 政府は11月下旬から「勝負の3週間」と銘打ち、国民に協力を呼びかけた。だが、全般的に人出は減らず、危機意識が浸透したとは言い難い。全国の新規感染者は増え続け、1日で3千人を超える日もあり、重症者も多くを占めている。医療機関は逼迫(ひっぱく)し、自衛隊の看護官派遣も行われる異例の事態だ。

 分科会は、政府に対して感染拡大地域でのトラベル事業の一時停止を再三提言してきた。しかし、自ら旗を振った政策の上、経済を回すことに躍起の菅氏からは、納得いく対応は示されなかった。

 それが、一変して提言を上回る決断となった。背景には分科会の強い警告に加えてトラベル事業に否定的な声が多く、各種世論調査でも菅内閣の支持率が大幅に落ち込んだことなどが挙げられる。

 人の移動や接触で感染が広がる可能性は高い。とりわけトラベル事業は、税金を使ってそういう状況に仕向ける形になる。これまで何度も停止する機会はあったが、政策を小出しにしてきちんとした対応を取ってこなかったことが一層深刻化させた。状況の改善なくして経済回復はなかろう。菅政権の責任は重い。

 とりあえず、全面停止したことを事態打開の再出発点にしたい。まずは医療崩壊の回避が欠かせない。コロナ対応での医療従事者の献身的な働きには頭が下がるばかりだ。意欲を失わないためにも物心両面での十分な支援が欠かせない。

 今が感染拡大か否かの重要な分岐点である。政府は、今後の方針を具体的かつ明確に示すとともに、専門家や自治体、医療機関などと連携を強めて事に当たってほしい。国民も一人一人が危機感を持って自己防衛に徹したい。



GoToトラベル中断へ 政権揺るがす不手際だ(2020年12月16日配信『中国新聞』-「社説」)

 国の観光支援事業「Go To トラベル」が28日から来年1月11日まで、全国一斉に中断されることになった。旅行、宿泊など関連業界にとっては大きな打撃だが、新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めが掛からない現状が立ちはだかる。

 重症者の治療には多くの医療従事者が必要だ。地域によっては自衛隊の応援を求めなければならないほど看護師が不足している上、年末年始で医療体制が縮小すれば、他の疾病も含めて救える命も救えなくなる。

 むしろ、おとといの菅義偉首相の決断は遅きに失したのではないか。28日からの実施も、前倒しする判断を求めたい。

 首相は数日前までは「いつの間にかGoToが悪いことになっている」とかたくなな姿勢だったが、複数の世論調査がはじき出した内閣支持率の低下に危機感を覚えたのだろうか。コロナ対策の不手際が、政権を揺るがしているともいえよう。

 政権が11月25日に「勝負の3週間」を宣言した後も、感染が拡大する都市部の人出は減ることがなく、12月12日には新規感染者が3千人を突破した。「勝負の3週間」が口先だけで、気の緩みを引き締める方向に働かなかったというほかない。

 仮にGoToキャンペーン自体は景気浮揚に一定の効果があるとしても、運用を誤っては逆効果ではないのか。専門家や医師から一時停止を検討するよう、再三提言があっても「まだそこは考えていない」と首相はかわしてきた。どのような状況で一時停止し、どのような状況で再開するのか。この機に明確な基準を示すべきだろう。

 GoToキャンペーンが市民感情に影を落としていることも気になる。おととい本紙編集局が無料通信アプリLINE(ライン)を通じて意見を募ると、2時間ほどで約350件寄せられ、一時停止の決定の遅れを批判する声が大半を占めた。

 この中で介護福祉士の男性は「やっと停止かという思い。命がないと経済も回らない」と漏らし、介護職の女性は「私たちがしんどい思いをしているのに税金で旅するなんて、と不満がたまっていた」と明かす。直接給付と異なり、旅行代金、飲食代金などの割引を税金で穴埋めする事業は不公平感を募らせることも忘れてはなるまい。

 一方で旅行、宿泊など関連業界にとっては書き入れ時に売り上げのダウンを招くばかりか、キャンセルの対応にも追われることになる。赤羽一嘉国土交通相はキャンセルを受けた事業者への補償を従来の35%から50%に引き上げると表明した。

 関連業界にとって一時停止は青天のへきれきであり、政権は抜かりなく手を打ってほしい。ただ本紙のLINEには「キャンセル料を国が持つことを当たり前にしてほしくない」という意見も寄せられた。不手際を税金で穴埋めすることへの批判も政権は受け止めるべきだ。

 飲食支援事業「Go To イート」を巡っては、来年の食事券の追加販売や現行の食事券の利用期限延長などが打ち出された。特定の時期に購入や利用が集中したり、事業終了後に反動減が起きたりする事態を避けなければなるまい。コロナの終息が見通せない以上、個人消費の過度な「先食い」を避ける地道な支援策が求められる。 



GoTo一時停止 判断遅れ明らか政府の責任重大(2020年12月16日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 世論の声に押され、ようやく決断した。政府の観光支援事業「Go To トラベル」が今月28日から来年1月11日まで、全国で一時停止される。菅義偉首相が表明した。

 国内で新型コロナウイルスの新規感染者が過去最多の3千人を超えるなど感染拡大に歯止めがかからない。医療現場の逼迫(ひっぱく)への懸念は日に日に強まっている。政府による観光支援をいったん止めるのは当然だ。

 しかし、コロナ対策分科会の提言や自治体の声などを受けて追い込まれた形であり、判断の遅れは明らかだ。対策が後手に回ってしまった政府の責任は重い。政府は今後、感染防止に全力を尽くす姿勢を前面に打ち出し、医療体制の立て直しを急がなければならない。

 全国一時停止に先立ち、従来の札幌市、大阪市に加え、東京都を目的地とした利用を停止する。名古屋市を目的地とした利用も停止し、東京と名古屋を出発する分については利用を控えるよう求めた。

 トラベル事業を巡り、政府はこれまで小出しの対策に終始してきた。11月下旬以降、感染拡大が深刻な札幌、大阪両市を目的地とする旅行を外したり、高齢者らに東京発着旅行の割引利用自粛を呼び掛けたりした。経済に軸足を置く政府が限定的な見直しで、やり過ごそうとしたと言わざるを得ない。

 GoTo事業の「生みの親」ともいえる存在の首相が事業継続に固執してきたように映る。分科会がトラベル事業や飲食店の需要喚起策「Go To イート」の一時停止の必要性を訴えた12月11日も、首相は「いつの間にかGoTo事業が悪いことになっている」とした上で経済下支えの重要性を強調していた。一部地域の利用制限から全国的な運用見直しとなった突然の方針転換には当惑する国民も少なくない。今回の決断について、首相には丁寧な国民への説明を求めたい。

 度重なるトラベル事業の運用見直しで、旅行業界は混乱している。事業者は予約のキャンセルに対応するとともに繁忙期の客を失うこととなり、国による手厚い補償が欠かせない。営業時間の短縮要請に応じた飲食店に対しても協力金などで十分な支援をすることも肝要だ。

 感染者の治療に当たる各地の医療現場は疲弊し、限界が近づいている。北海道医師会は「医療緊急事態宣言」を発表、「これ以上負担が増えれば、(道民の)健康・生命を守れない」と訴えた。政府は医師や看護師を派遣した際、派遣元の医療機関が受け取る補助金の額を倍増させる。現場のニーズに合った対策を迅速に実行するべきだ。

 医療崩壊を防ぐには感染拡大の抑制が不可欠となる。首相は「皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるように最大限の対策を講じる」と述べた。国のトップとして国民の信頼を裏切らないよう感染防止に万全を期してもらいたい。



【GOTO停止】反省すべき対応の遅れ(2020年12月16日配信『高知新聞』-「社説」)

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」は年末年始、全国で一時停止することになった。これに先立ち、従来の札幌市、大阪市に加えて東京都と名古屋市を目的地とした利用を停止する。

 新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからない。経済再生の期待を背負う事業ではあるが、「第3波」の抑止に力を入れなければならない現状であり、事業にブレーキをかけるのは当然だ。

 経済の失速を回避したい菅義偉首相は、一部地域の利用を制限する小出しの対策にとどめてきた。GoToトラベル事業は来年6月末まで延長することになっている。力を入れた事業が、批判に押されるように全国的な運用見直しへと方針転換を迫られた。これは重く受け止める必要がある。

 政府は11月下旬、「今後3週間が勝負」と対策強化を呼び掛けた。各地で集中的な対策が行われたものの、新規感染者数の減少にはつながっていない。

 この間、専門家の見方は厳しかった。政府の新型コロナ感染症対策分科会は、拡大が継続する地域内では外出自粛やトラベル事業の一時停止を求める提言をまとめた。これに対し政府は、事業が感染を広げたとの見方を否定する立場だ。

 人の移動そのものが感染につながるわけではないにしても、一方には感染への不安を募らせる人々の思いがある。それを経済の側面から抑え込もうとしても事業への風当たりを強くするだけだ。

 一時停止に伴いキャンセルを受けた事業者への国の補償も多額となる。手厚い支援はもちろん必要だが、対応の遅れがこうした事態を招いたことへの反省が求められる。

 首相はトラベル事業の効果について、「地方経済の下支えに大きな役割を果たした」と述べている。

 確かに、高知県内の12月企業短期経済観測調査(短観)は、業況判断指数(DI)が前回9月から好転した。特に宿泊・飲食サービスは50ポイントの大幅な改善で、依然マイナス30と水面下の水準ながら、その効果はうかがえる。

 しかし一方で、県内でも感染が止まらない。1日当たりの感染者数が2桁になる日が続き、人口比では全国高水準にある。県は対応レベルを「特別警戒」に引き上げた。

 また、県は飲食店などに夜間の営業時間を短縮するよう、春に続く2度目の要請を行った。年末の稼ぎ時だけに、協力金が支給されるとはいえ多大な影響が想定される。きめ細やかな対応を求めたい。

 医療はコロナ対応への負担で、通常医療との両立が厳しくなってきている。医療現場からの声を無視すべきではない。年末年始の医療体制に負荷をかけないためには、これからの管理や対策も重要となる。

 トラベル事業はより早く止めるべきだとする専門家もいる。首相のメッセージが届かないことは政治への信頼に関わっている。



GoTo停止(2020年12月16日配信『高知新聞』-「小社会」)

 誰が言い始めたのか、英語にこんな名句があるという。〈飲んで食べて楽しもう。どうせ明日はダイエット〉。ただし、これは次のことわざが基になっている。〈飲んで食べて楽しもう。どうせ明日は死ぬ身だもの〉。

 〈明日は死ぬ身〉の原文は〈for tomorrow we die(フォートゥモローウィーダイ)〉。最後の「die」に「t」を加えてダイエットにした秀逸なパロディー。英語教育研究家、晴山陽一さんの著書「すごい言葉」から引かせてもらった。

 政府が「GoToトラベル」を28日から来年1月11日まで全国で停止する。「停止ぎりぎりまで楽しもう」などと、捨て鉢な気分にはむろんなれない。年末年始に向けてコロナ禍「第3波」を抑えたいのならすぐにも停止し、落ち着くまで再開しないやり方もあろう。

 専門家は以前から、一時停止や感染拡大地域の対象除外を求めていた。ところが除外は大阪市と札幌市にとどめるなど政府の対策は小出し、かつ後手に回った。経済優先のあまり、感染防止とのバランスが取れていなかったのではないか。そう疑われても仕方ない。

 名句をもう一つ。政治とは〈悲惨なことと不快なことのどちらを選ぶかという苦肉の選択である〉。「不確実性の時代」で知られる米の経済学者、ガルブレイスさんの言葉。

 「感染爆発」「医療崩壊」…。そんな「悲惨」は選べない。GoTo停止など「不快なこと」を今は我慢するとき。



GOTO停止 医療崩壊阻止が最優先だ(2020年12月16日配信『西日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染が急拡大し、重症者や死者の増加が止まらない。医療現場も逼迫(ひっぱく)している。国民の健康、命を守るためには当然の判断だ。むしろ遅すぎたと言えよう。

 政府は観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全都道府県で一時停止する。菅義偉首相がようやく決断した。

 札幌、大阪両市に加え、新規感染者数が高止まりしている東京都と名古屋市が目的地である旅行は先行除外する。出発地とする旅行も自粛を求めている。

 感染者が比較的少ない九州の観光地などには戸惑いや不満もあろう。菅首相はトラベル事業が感染拡大の主要な原因である証拠はないとしている。

 ただ人の移動が感染リスクを高めることは専門家も指摘している。公費で旅行や飲食を促進する「GoTo」事業を続ける一方で国民に広く感染対策を求めるのは分かりにくい。

 観光業界の苦境は確かに看過できないが、トラベル事業の恩恵は一部の観光地や高級ホテルなどに限られているとの分析もある。ここで感染者減に転じなければ、経済への影響はさらに甚大となり、何よりも失われる命が増えかねない。

 それでも政策の急ブレーキには違いない。関係業界には混乱も広がっており、その収拾に政府はまず注力すべきだろう。

 政府は先月下旬に「勝負の3週間」と銘打ち、国民に対策強化を求めた。その後も感染拡大は続き、政府の対策分科会は再三「GoTo」事業見直しを求めた。尾身茂会長が国会で「GoToは不要不急」と語り政府の決断を迫る一幕もあった。

 こうした専門家や医療現場の強い危機感に政府が適切に反応したとは言い難い。各種世論調査で政府のコロナ対策に強い批判が示され、経済重視の菅政権もさすがに重い腰を上げざるを得なくなったのが実情だろう。

 政府が今、最優先すべきは、医療崩壊を防ぐことだ。感染拡大した地域の医療現場から「もう限界」という悲鳴が広がり、疲弊した看護師の離職も始まっている。新型コロナ以外の外来診療や手術の停止に追い込まれる地域もある。感染拡大地の医療は緊急事態に至っていると考えるべきだ。

 政府は感染患者を受け入れる病院などへの補助金を倍増するという。医療従事者の待遇改善や元看護師の復帰支援の拡充も欠かせない。課題は山積みだ。

 今回の事業停止は泥縄で決まった。仮に1月11日以降の状況改善が見込めるとなったら、政府はどういう目安で再開するのか。事前の開かれた検討作業こそ、信頼回復の第一歩だ。



「GoTo」停止 今は感染防止を最優先に(2020年12月16日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が、観光支援事業「Go To トラベル」の年末年始の全国一時停止を表明した。新型コロナウイルスの感染拡大に歯止めがかからず、専門家の度重なる警告や世論の批判の高まりを受け、方針転換に追い込まれた形だ。

 感染拡大地域では医療体制が既に逼迫[ひっぱく]し、一般医療との両立が困難になり始めている地域もある。停止は遅きに失したと言わざるを得ず、事業継続にこだわった政府の責任は重い。

 トラベル事業を巡っては、政府は「感染拡大の主要な原因であるエビデンス(証拠)は存在しない」という立場を主張。札幌・大阪両市を除外するなど、小出しの対策を続けてきた。しかし、12日には全国の新規感染者が1日当たりで初めて3千人を突破するなど、「勝負の3週間」と位置付けた期間も効果は出ていない。

 事態を悪化させた背景にあるのは、専門家や医療現場の訴えを軽視し経済優先に固執した菅政権の姿勢だ。トラベル事業は菅首相が就任時に掲げた「感染防止と経済再生の両輪」の象徴で、「地方経済の下支えに大きな役割を果たした」と強調してきた。確かに旅行業界には追い風にはなったものの、感染収束前のまだブレーキが必要な時期にアクセルを踏み込む矛盾があった。爆発的な感染拡大を避けるためには、経済との両立はいったん脇に置いて、今は感染防止を最優先させることが重要だ。

 感染状況の改善がなければ、継続中の「Go To イート」も見直しを迫られることになろう。経済対策は消費刺激策から切り替え、現金給付などの直接的支援を強化すべきではないか。

 県内も、リスクレベルが最上位のレベル5(厳戒警報)となった。県と熊本市が10月に基準を統一して以降、最上位になるのは初めてだ。

 新規感染者数も増えているが、特に注意が必要なのが病床稼働率の高さである。県全体でも30・8%と高水準で、熊本市内に限っては危険水域の76・0%に達している。寒さが厳しくなる今後は、高齢者の緊急患者が多くなる季節だ。一般医療との両立が厳しくなる前に、さらなる対策強化を急ぎたい。



「こんにちは。ガースーです」(2020年12月16日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 「こんにちは。ガースーです」。先週末、菅義偉首相がインターネット番組に出演していた。ネット上で飛び交う「すが」をもじった呼称。棒読み会見への批判を気にしての愛嬌[あいきょう]だろうが、この時期に、とあきれた

▼果たしてコロナに関し年末年始の「Go To トラベル」停止を聞かれ「まだ考えていない」。その日、政府分科会は感染拡大地域での一時停止を提言、都内の感染者は連日600人前後で推移していた。ネットには「だめだ、こりゃ」の声も

▼それが一転。28日から1月11日まで、全国でトラベルを停止するという。「勝負の3週間」だったはずが逆に感染は急拡大し、県内も厳戒警報である。経済に配慮した小手先の対策では無理、と悟ったのだろうか

▼いや。「トラベルと感染拡大は無関係」と繰り返してきた首相は、その認識が変わったのかを聞かれて「変わらない」。確かに移動=感染ではないが、ならば旅行推奨=新たな接触=感染増加は国民の自助不足とでも

▼旅行業界にとってこれからが書き入れ時。帰省を計画していた人も多かろう。キャンセル料補償の上乗せなどが表明されているが、泥縄対応に混乱は避けられまい。「我慢の年末年始」の先にはどんな暮らしが-

▼人が考えることは、いかなる時でも平易明瞭な言葉で表せる、と言ったドイツの哲学者がいた。難解、不明、曖昧な言葉は、言うべきことを持っていないことを隠していると。「そうなんです、ガースー」。首相のメッセージが響いてこないのである。



GoToトラベル停止(2020年12月16日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆国と自治体の連携が必要だ◆

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相は観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全国一斉に停止すると表明した。コロナ対策分科会からの対策強化の提言を受け、世論や自治体の声にも押されてようやく踏み切った。

 経済活動と感染防止の両立にこだわる政府は11月下旬からを「勝負の3週間」と呼びながら、常に状況を後追いし対策が後手に回ってきた。対策強化は評価したいが、判断の遅れで成果が限定的になることも懸念される。

 厚生労働省の専門家組織が「ステージ3(感染急増)」相当とみる北海道、東京、大阪で、クラスター(感染者集団)多発により新規感染者の高止まりが続く。コロナ用病床の使用率がステージ3の目安の一つである「25%以上」は22都道府県と、前の週から4県増えた。中でも重症者治療には多くの医療従事者が必要だ。既に看護師不足の上、年末年始で医療態勢が縮小すれば他の疾病を含め救える命も救えない恐れが強まる。

 分科会は、ステージ3の中でも感染拡大が継続する地域では外出自粛やGoToトラベルの一時停止を提言。尾身茂会長は「国と自治体で一体感がない。知事はリーダーシップを発揮して先手を打ち、国は後押しを」とまで述べた。何とか感染を減少に転じさせたいとの使命感の発露だろう。

 だが菅首相は「いつの間にかGoTo事業が悪いことになっている。暮らしが壊れたら、地域そのものも壊れる」と事業継続の必要性を強調。年末年始を含む期間のGoToトラベル一時停止も否定していたが、世論の不満が強まり転換せざるを得なくなった。

 一方で、国と自治体の足並みの乱れ、判断の押し付け合いが今回も起きた。GoToトラベルでは、政府が東京都を目的地とする旅行について今月25日までの一時停止を提案。都側は飲食店などの時短営業の延長期間に合わせて来年1月11日までと、より長い期間を要請した。東京発の旅行の自粛要請も政府は23区限定、都は都内全域を主張して調整に手間取った。

 小池百合子都知事は「政府で対応してほしい」と重ねて主張。首相は自身が導入したGoToトラベルに自らの主導でブレーキをかければ、政治責任を問われかねないと予防線を張り、自治体などに責任転嫁するような言動が見受けられた。

 政策決定のたびに国と自治体とのにらみ合いが続けば対策の遅れにつながる。迅速な対応で感染拡大を食い止めるためにも、リーダーシップの在り方をしっかりと問い直すべきだ。 



GO TO停止でも(2020年12月16日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 先の日曜日、宮崎市の観光地・青島のにぎわいを見に行った。神社に続く参道の人出はまずまずだ。満席の飲食店もある。道行く人々がマスクをしているのを除けば、いつもの行楽風景とさほど変わらない。

 例年この日は青島太平洋マラソンでランナーと応援する人々でにぎわうが、今年は中止。ところが、ゼッケンを着けたランナーが次々とトロピカルロードを走ってくるので驚いた。長距離を走りたい人々の要望に応えたのだろう、フルマラソンを走る催しだった。

 JR日南線青島駅で列車を待つ間、神奈川県から1人で来た男性と話した。数年前、妻に先立たれ、喪失感を癒やすべく仕事の合間に旅行に出掛けているとのこと。「今回宮崎で47都道府県すべてを訪問できた」という。本県が最後か…。しかも駆け足とはちょっと残念だ。

 神奈川県を含む5府県が往来自粛を呼び掛ける地域に追加されたのは翌日だが、男性としてはあまり人と接触しないように気を使っていたようだ。列車内は満席。宮崎空港に向かうため田吉駅で降りた男性はずっと手を振り見送ってくれた。宮崎駅に着いたらアミュプラザの店に長い行列があった。

 コロナの猛威に緊張感は解けない。だが以前に比べ、人々は気を付けるポイントは押さえて楽しみを見つけている印象だ。28日からGo To トラベルが全国で一時停止する。忍従の年末年始になるが、上手に地域経済を回しながらストレスをはき出したい。



GoTo全国一斉停止 事業者支援へ直接給付を(2020年12月16日配信『琉球新報』-「社説」)

 菅義偉首相は28日から来年1月11日まで、観光支援事業「GoToトラベル」を全国一斉に停止すると表明した。経済を優先して事業の停止をかたくなに拒んできた菅首相だが、専門家の警告や世論の反発に押され、ようやく方針転換を決めた格好だ。

 医療現場の逼迫(ひっぱく)を防ぐため、もっと早く事業を止めるべきだった。あまりに遅すぎる。観光事業者は年末年始の予約を受け入れており、政府の突然の方針転換により損失を被る。泥縄式の対応で感染蔓延(まんえん)と混乱を招いている首相の責任は重大だ。

 医療崩壊を食い止めるためにも、影響を受ける事業者への営業補償が急務だ。感染対策に優先して取り組む環境を整えることになる。一時停止したGoTo事業の予算を観光事業者への直接給付に振り向ければ、補償の財源はすぐに手当てできるはずだ。

 菅首相は15日に「年末年始にかけて、これ以上の感染を食い止めることに全力を挙げたい」と語った。しかし、「GoToトラベルが感染を広げたというエビデンス(証拠)はない」と繰り返し、新型コロナウイルス対策に緩みを生じさせてきたのが首相自身ではなかったか。

 政府は11月25日に「勝負の3週間」と宣言したが、繁華街の人出が大きく減らないなど、感染を抑え切れていない。12日には国内の1日当たりの新規感染者が過去最多の3千人超を記録した。

 沖縄でも14日時点の新型コロナ患者の病床占有率が84.9%に上る。さらにコロナ以外の一般病床の利用率は90%以上に達し、通常医療が危機に直面している。例年、冬場は心筋梗塞や脳卒中などの発症が増える時期であり、コロナ患者受け入れのため一般病床数が減っているためだ。

 玉城デニー知事は17日から28日まで、那覇、浦添、沖縄の3市の飲食店と接待を伴う遊興施設を対象に営業時間の短縮を要請することを14日に発表した。医療崩壊を防ぐため、接触する機会を減らすことは必要な措置だろう。

 リスクの高い高齢者を感染から守り、過酷な現場で働く医療従事者らの負担を少なくするためにも、県民一人一人が感染を広げない対策に努めることを心掛けたい。

 年末年始の需要を頼りにしていた観光事業者らの悲痛な叫びにも、手を差し伸べなければならない。徹底した感染対策を図る上でも、GoTo停止と営業補償は完全セットでなければならない。キャンセルになった予約分を政府が補塡(ほてん)するのはもちろん、さらなる経営支援が必要だ。

 政府は一連のGoToキャンペーンの予算に1兆6794億円を計上した。GoToトラベルへの3119億円の追加支出も決めている。今回の停止を機に予算の運用を見直し、旅行代金の補助による観光促進ではなく、観光事業者への直接の支給で経済を支えることだ。





GoTo停止へ 対応遅れの責任は重い(2020年12月15日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府はきのう、新型コロナウイルスの感染急拡大を受け、観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全国一斉に停止することを決めた。

 感染は過去最悪の水準が続き、山形県や高知県など医療体制の脆弱(ぜいじゃく)な地方にも広がっている。

 この間、政府の対策分科会が感染拡大地域でのGoTo事業の一時停止を再三提言してきた。それなのに、政府は地域や年齢などを限定して一時停止と利用自粛を小刻みに打ち出すだけだった。

 対応の遅れが感染拡大につながったことは明らかだ。その責任は極めて重い。

 政府は崩壊寸前の医療現場の立て直しに向けた支援策を迅速に講じなければならない。

 今月27日までは、感染拡大が顕著な東京都と名古屋市を目的地とするGoTo事業を停止し、出発の旅行は利用自粛を求める。

 同様の措置を取っている札幌、大阪両市はきょうまでの期限を延長する。

 これまでと変わらぬ小出しの対策では国民に危機感は伝わらず、感染拡大を抑えられない。

 政府の泥縄式の対応に対する批判は強く、最近の報道各社の世論調査で菅義偉内閣の支持率は急落した。

 年末年始の全面停止は、こうした批判を払拭(ふっしょく)する狙いもあるのだろう。早期の収束を願う民意に鈍感だったと言わざるを得ない。

 首相は医療現場の支援策として、コロナ対応で派遣される医師、看護師に支給する手当の倍増なども表明した。

 医療提供体制の拡充は政権として最優先で取り組むべき課題だったはずだ。

 首相は経済再生に軸足を置くあまり、危機的な医療現場や国民の不安が見えていなかったのではないか。

 首相はGoTo事業を利用した人の感染者が少ないと主張する。ところが、東大などの研究チームは「利用者の感染リスクは2倍」との調査結果を発表している。

 今後は専門家の科学的な知見を踏まえた意見を真摯(しんし)に受け止め、遅まきながら臨機応変の判断が求められる。

 危機対応は最初に大きく構え、状況に応じて段階的に縮小していくのが鉄則である。

 首相は10月の所信表明演説で「爆発的な感染は絶対に防ぎ、国民の命と健康を守り抜く」と宣言した。その言葉を行動で示さなければならない。



GoToトラベル停止(2020年12月15日配信『東奥日報』ー「時論」/『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

状況の後追いではないか

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、菅義偉首相は観光支援事業「Go To トラベル」を28日から来年1月11日まで全国一斉に停止すると表明した。コロナ対策分科会からの対策強化の提言を受け、世論や自治体の声にも押されてようやく踏み切った形だ。

 経済活動と感染防止の両立にこだわる政府は11月下旬からを「勝負の3週間」と呼びながら、常に状況を後追いし対策が後手に回ってきた。対策強化は評価したいが、判断の遅れで成果が限定的になることも懸念される。自治体との連携を強め、年末年始へ少しでも安心を取り戻してほしい。

 国内のコロナ感染者は1日当たり3千人超を記録。重症者も日々最多を更新し600人に近づく。直近の週末も全国主要駅や繁華街の全95地点のうち約7割、64地点が前の週より人出が増えるなど、危機感が浸透していないことが響いている。

 特に、厚生労働省の専門家組織が「ステージ3(感染急増)」相当と見る北海道、東京、大阪で病院などのクラスター(感染者集団)多発により新規感染者の高止まりが続く。コロナ用病床の直近の使用率がステージ3の目安の一つである「25%以上」は22都道府県と前の週から4県増えた。

 中でも重症者治療には多くの医療従事者が必要だ。既に看護師不足の上、年末年始で医療態勢が縮小すれば他の疾病を含め救える命も救えない恐れが強まる。そうした危機感で分科会が「医療や介護の従事者は限界の状態になっている」(尾身茂会長)と、医療現場へのサポートを政府に強く求めたのも当然だろう。

 分科会は、ステージ3の中でも感染拡大が継続する地域では外出自粛やGoToトラベルの一時停止を提言。尾身会長は「国と自治体で一体感がない。知事はリーダーシップを発揮して先手を打ち、国は後押しを」とまで述べた。何とか感染を減少に転じさせたいとの専門家の使命感の発露だと重く受け止めたい。 

 だが菅首相は「いつの間にかGoTo事業が悪いことになっている。暮らしが壊れたら、地域そのものも壊れる」と事業継続の必要性を強調。年末年始を含む期間のGoToトラベル一時停止も「まだ考えていない」と否定していたが、なおも続く感染拡大で世論の不満が強まり「最大限の対策」を取らざるを得なくなったと言える。

 一方で、国と自治体の足並みの乱れ、判断の押し付け合いが今回も起きた。GoToトラベルでは、政府が東京都を目的地とする旅行について今月25日までの一時停止を提案。都側は飲食店などの時短営業の延長期間に合わせて来年1月11日までと、より長い期間を要請した。東京発の旅行の自粛要請も政府は23区限定、都は都内全域を主張して調整に手間取った。

 首相は「分科会から見直しをしっかりやるよう提言を頂いた。各首長と調整している」とも述べていた。自身が導入したGoToトラベルに自らの主導でブレーキをかければ、政治責任を問われかねないと予防線を張り、自治体などに責任転嫁するような言動だった。

 小池百合子都知事は「政府で対応してほしい」と重ねて主張した。政策決定のたびにこのような「にらみ合い」が続けば、コロナ対策の遅れが重なる。首相は、リーダーシップの在り方をもう一度自らに問い直すべきだ。(共同通信・古口健二)



GoToの一時停止 後手に回った責任は重い(2020年12月15日配信『毎日新聞』-「社説」)

 政府は観光支援策「GoToトラベル」について、28日から来年1月11日まで一斉に停止すると決めた。それに先立ち、新たに東京都と名古屋市に向かう旅行を対象外とし、出発分も自粛を求める。

 人の移動を減らして新型コロナウイルスの感染拡大を抑制し、医療現場の負担を軽減するという。

 「勝負の3週間」と銘打った感染防止策は効果が見られず、全国の新規感染者数が過去最多を更新し続けている。追い込まれた末の、あまりにも遅い対応だ。

 年末年始に向けて状況を好転させたいのであれば、すぐにでも停止した上で、感染が収束するまで再開を見送るのが筋だろう。

 専門家による分科会はかねて、感染急増地域を発着する旅行については、トラベルの対象外にするよう求めてきた。

 しかし政府は、大阪市と札幌市を対象から外しただけで、東京については高齢者や持病がある人への自粛要請にとどめていた。

 経済を優先し、感染対策を小出しにすることで事態を悪化させてきたのではないか。専門家が科学的な分析をもとに提言し、それを政治が政策に反映させて感染を封じる仕組みが機能していない。

 菅義偉首相は先週、インターネットの動画配信サイトで「移動では感染しないという提言を頂いている」と述べていた。

 今回の判断と矛盾する発言だ。突然方針を変えた理由について、納得のいく説明もない。

 そもそも、首相肝いりの政策だからといって、根拠を欠いた判断がまかり通るようでは困る。

 コロナ対策を受け持つ西村康稔経済再生担当相は、国民に「危機感を共有してほしい」と呼びかけた。しかし、感染拡大下でGoToキャンペーンのような景気刺激策を進めていたのは政府だ。

 自らアクセルを踏んでおきながら、感染拡大の責任を国民に転嫁するような物言いだ。国民の健康を守る責任をどこまで自覚しているのか、疑念は尽きない。

 毎日新聞の世論調査では、トラベルを「中止すべきだ」との回答が67%に上った。内閣支持率は急落している。

 専門家の提言を正面から受け止めず、後手に回って感染を拡大させた政府の責任は重い。



子どもが「王様は裸」とばらしてしまう…(2020年12月15日配信『毎日新聞』-「余録」)

 子どもが「王様は裸」とばらしてしまうアンデルセンの「皇帝の新しい服(裸の王様)」だが、さて結末はどうだったか。大人たちもやっぱり裸だと叫び出すと、王様にもみんなの言う通りのように思えてくる

▲だが考えついたのは、「今さらパレードをやめるわけにはいかない」だった。王様はなおさらもったいぶって歩き、侍従たちはありもしない裳裾(もすそ)をささげて進んでいった――王様とその側近たちだけはフィクションを演じ続けたのだ

▲「今さらやめられない」。最近もどこからかそんな声が聞こえたような気がする。というのも、コロナ感染拡大が止まらず医療崩壊の危機が迫る中、GoToトラベルへの菅義偉(すが・よしひで)首相の異様なまでの固執が人々を不安にさせたからだ

▲小紙の世論調査によれば、内閣支持率が40%にまで落ち、49%に跳ね上がった不支持率と逆転した菅政権である。とくにそのコロナ対策への不満は大きく、GoToの中止を求める向きは67%にのぼったから問題の所在は明白だろう

▲思えば人の移動と感染の関係を否定し、「GoToが悪者になった」と嘆いていた菅首相だ。感染症の専門家はもちろん、医療現場の苦境を心配する国民も、この期(ご)に及んで危機感の衣をまとわぬ「裸の王様」にあぜんとさせられた

▲さすがにきのう、年末年始のGoTo全国一斉停止を表明した首相だが、感染抑止のためならば、なぜ直ちに踏み切らないのか。自分が裸と分かった後にも、なおもったいぶるのは人のさがなのだろうか。



GoTo停止 感染抑止優先で安心を与えよ(2020年12月15日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大を踏まえ、観光支援策の一時停止を決断したのは当然だ。政府は混乱を広げぬように努めるとともに、感染抑止に万全を期さねばならない。

 菅首相が「Go To トラベル」事業の見直しを表明した。28日から来年1月11日まで、全国一斉に事業を停止するという。

 今月27日までは、東京都と名古屋市を目的地とする旅行を補助の対象から除外し、出発については、2地域ともに自粛を求めた。札幌、大阪の両市への旅行に関しては、停止期間の延長を決めた。

 新型コロナの新規感染者数は、過去最多の水準にある。重症者や死者の増加にも歯止めがかかっていない。政府の新型コロナ感染症対策分科会は再三、事業の停止を政府に求めてきた。

 こうした状況を考慮しての停止判断だろう。首相は感染防止を優先させるという強い姿勢を示し、国民に安心感を与えることが重要である。それが、中長期的には経済の回復につながるはずだ。

 年末年始に帰省や旅行を予定している人は多い。だが、感染拡大を抑えるためには、人の移動や接触の機会を減らす必要がある。

 今後、予約のキャンセルが相次ぐ事態も想定される。政府は事業者と連携し、円滑に手続きができるように注意を払ってほしい。

 分科会は、忘年会や新年会を少人数で行うよう呼びかけた。初詣は混雑する時期を避けることや、帰省への慎重な対応を求めた。

 国が専門家や自治体と認識を共有し、国民に丁寧に説明して理解を得ることが大切だ。

 感染拡大地域の医療提供体制は、深刻さを増している。

 政府は自治体の要請に基づき、北海道旭川市と大阪府に自衛隊の看護官を派遣した。ただ、看護官は通常、全国各地の自衛隊病院でコロナ患者などの治療にあたっている。活用には限界があろう。

 厚生労働省は、高齢の患者に入院を求める措置を改め、病床が逼迫ひっぱくしている地域では、医師の判断で自宅療養を認めることにした。容体の急変を見逃さぬよう、適切に目配りする態勢を整えたい。

 医療従事者が抱えている負担は大きい。手厚い支援が急務だ。

 多くの都道府県が、飲食店などに営業時間の短縮を呼びかけ、事業者に協力金を支給している。

 首相は、1か月あたりの上限を120万円に増額する支援策を発表した。これ以上の感染拡大を防ぐには、行政と民間が一層協力することが不可欠である。



GoTo停止でも続く医療逼迫の不安(2020年12月15日配信『日本経済新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症対策本部で「Go To トラベル」の一時中止などを表明した菅首相(14日、首相官邸)
政府は28日から2週間、「Go To トラベル」キャンペーンを全国で停止する。新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない現状では当然だ。医療が逼迫し始めた地域もある。自治体や学会と連携し、医師や看護師の確保に全力をあげるべきだ。

 Go To トラベルをめぐっては、対策分科会が一時停止を含む見直しを繰り返し求めていた。経済への悪影響を心配するあまり、政府の対応はちぐはぐで後手に回った感がある。

 国内にはすでに多数の患者がいる。キャンペーンの中断や飲食店の営業時間短縮で新規感染者が減っても、しばらく重症者は増え続ける。医療機関の負担が重い状態はすぐには解消しない。

 春に感染が拡大した際にも医療の逼迫が問題となった。その教訓が生かされていない。新型コロナ患者を受け入れる病床数は目標に近づいたが、肝心の医師や看護師が足りない。

 特に高齢患者は寝たきりになるなど、入院期間が長引きやすい。看護師らが付きっきりで介護に追われる場合もある。

 通常と異なり長時間、防護服を着て院内感染対策を徹底しなければならない。精神的にも肉体的にもきつい労働を強いられ、離職者も出ている。政府が処遇改善を打ち出したのは評価できる。

 もっとも、政府はこれまでも派遣支援や慰労金支給、設備の購入支援など多くの対策を実施してきた。十分な効果をあげていないとしたらなぜか。検証が必要だ。

 治療の最前線に立つ感染症科は従来、がんや脳神経系などの先端医療部門に比べ軽視されがちで、大学病院でも設置していないところが多い。専門の医師や看護師の地域的な偏りも大きい。

 政府は自治体や学会と連携し、全国レベルで医師や看護師の最適な配置を検討する仕組みを築くべきだ。医療機関だけでなく高齢者施設などにも医師らを迅速に派遣できるのが望ましい。

 北海道のように、地域の中核病院でクラスターが発生すると、治療を急ぐべき他の病気の診療にも支障が出る。受け皿となる病院を確保しておくことも重要だ。

 年末年始はただでさえ医療が手薄になる。国、自治体、国民一人ひとりが危機回避に全力をあげなければならない。菅義偉首相は対策強化の必要性を丁寧に説明し、協力を呼びかけるべきだ。



GoTo全国停止 28日まで待つ必要あるか(2020年12月15日配信『産経新聞』-「主張」)

 印象は遅きに失し、中途半端である。これで感染拡大と戦えるのか、不安である。

 政府が新型コロナウイルスの感染対策で、観光支援事業「Go To トラベル」について、28日から1月11日までの年末年始は全国一律に一時停止すると決めた。

 27日までは札幌、大阪両市の停止を延長するとともに、東京都、名古屋市を目的地とする旅行も対象から除外する。

 菅義偉首相は「皆さんが落ち着いた年明けを迎えることができるように、最大限の対策を講じる」と述べた。それならなぜ全国停止を28日まで待つのか。

 西村康稔経済再生担当相は11月25日、感染拡大が進むコロナ対策について「勝負の3週間」と位置付けた。翌26日には菅首相も「この3週間が極めて重要な時期だ」と述べていた。「勝負」と銘打つなら、この時点で大きな施策を講じるべきだった。

 その間、今月12日には国内での新型コロナの新規感染者が過去最多の3千人超を記録し、北海道旭川市や大阪府の一部などで医療提供体制が逼迫(ひっぱく)して自衛隊から看護官らの派遣を受けた。NTTドコモがまとめた12日の全国の主要駅や繁華街の人出は全95地点のうち64地点で前週の土曜を上回った。政府の「勝負」の掛け声は、国民に響かなかった。

 11日、菅首相はインターネット番組に出演し、「いつのまにかGo Toが悪いことになってしまった」「移動では感染はしないという提言もかつていただいていた」と述べた。それなら従来の渡航制限や外出自粛要請はむだだったことになる。

 トラベル事業とは、国による移動の推奨である。それ自体が悪いのではない。不要不急の外出自粛要請とは明らかに正反対を向き、政府の姿勢を分かりにくくしている。だから批判の対象となっていたことに理解が足りない。

 トラベル事業が地方経済の下支えに有効であることは結果が示した。この成功体験に自信を持ち、感染が収束傾向に転じるのを待って堂々と再開すればいい。

 新型コロナ感染症対策分科会の尾身茂会長は政府に「現状の認識をしっかりして、合理的な決断を迅速にしてほしい」と注文をつけていた。認識の欠如、決断の遅滞を前提とした提言だ。さらなる対策強化を求めたい。



忙しい暮れに気はひけるが、「密」の字を使ったクイズをひとつ…(2020年12月15日配信『東京新聞』-「筆洗」)

キャプチャ

 忙しい暮れに気はひけるが、「密」の字を使ったクイズをひとつ。「舎密」とは何か

▼コロナ禍の今、その字を見れば、建物に人が密集する様子を想像してしまうのだが、これで「化学」の意味である。江戸後期の蘭学者、宇田川榕菴(ようあん)がオランダ語で化学を意味する、「シエミストリ」の音を当て「舎密」と書いた

▼その「密」がやはり、「今年の漢字」に選ばれた。密集、密接、密閉の「3密」にならないように−。コロナ対策で回避すべき「密」の字が頭から離れなかった1年である

▼なるほど、覚えやすく、よくできた文句だった。もっとも、この手のスローガンや流行語のようなものは時間の経過とともに急速に力を失うところもある。この「3密」も以前に比べ、少々効き目が薄れていないか

▼感染拡大を食い止める「勝負の3週間」の最中だが、週末の各地の人出はと見れば、減っていない。むしろ、増えている場所もある。外出機会が増える師走とはいえ、「3密」の合言葉の陰りを感じてしまう

▼緩みは国が観光支援の「Go To トラベル」を続けてきたのも一因か。「舎密」のおかげで、ワクチン開発が進み、海外では投与も既に始まっているとはいえ、決して、油断召されるな。「3密回避」、マスク着用、消毒などのコロナ対策の実践を別の「3密」によってお願いしたい。緻密に、精密に、厳密にである。



GoTo一時停止 遅きに失した政治決断(2020年12月15日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に政府が手をこまぬいて対策が遅れ、追い込まれた結果である。

 菅義偉首相が、観光支援事業「GoToトラベル」を全国一斉に一時停止することを表明した。期間は28日から来年1月11日に限定する。

 感染対策を検討する政府の分科会は先週末、人の動きが活発化する年末年始に感染が拡大する懸念があるとし、移動の自粛を国民に呼び掛けた。一時停止はそれを受けた形ではある。

 菅首相は「最大限の対策を講じる」と述べている。

 ただし、この状況を招いたのは政府がこれまで、効果的な対策を打ち出せなかったからだ。

 感染の増加を受けて、政府は11月25日に「今後3週間が勝負」(西村康稔経済再生担当相)と位置付けた。それなのに国と自治体の対策は中途半端だった。

 トラベル事業では、感染が拡大している大阪市と札幌市を目的地とする旅行を除外したものの、出発分は自粛要請にとどめた。東京発着は高齢者や基礎疾患のある人に利用自粛を呼び掛けただけだ。

 感染拡大は止まらず、新型コロナの新規感染者は12日に過去最多の3千人超を記録した。重症者数も過去最多となり、医療現場が逼迫(ひっぱく)。コロナ以外の患者の治療にも支障が出かねない状況だ。

 この間、医療関係者などからはトラベル事業の一時停止を求める声が相次いだ。政府はそれでも「感染拡大の主要な原因であるとのエビデンス(証拠)は存在しない」などとして、トラベル事業の継続に意欲を示していた。

 感染拡大に対する社会不安が高まり、経済を優先する菅内閣の支持率は各種調査で軒並み低下していた。突然の方針転換は世論のこれ以上の反発を懸念した末の政治決断なのだろう。遅きに失したといわざるを得ない。

 27日までは従来の対策と大きく変わらないのも問題だ。

 新たに東京都と名古屋市を目的地とする旅行をトラベル事業の対象から外すものの、出発地とする旅行は自粛を呼び掛けるだけだ。この間に地方に感染がさらに拡大する可能性が捨てきれない。

 拡大地域は早急に出発分も対象から除外するべきではないか。

 トラベル事業はコロナ禍の影響で停滞していた地方の観光産業を下支えしてきた。突然の政策変更で混乱も起きるだろう。政府は従来の主張を変えた理由や、キャンセル料の対応方針などを十分に説明しなければならない。




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