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(論)菅内閣に関する論説(2020年12月17・18・19・2021年1月26・2月2・10・11・3月3・4・13・・17・19・22・30日・4月5日)

五輪、強行しても中止にしても菅政権は退陣しかない(2021年5月11日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★自民党中堅幹部が言う。「もちろんコロナ禍の克服、ワクチンを国民に素早く接種させることは大切だが、ここまでくればオリンピック(五輪)の中止が政治日程にあがってくる。国民の6割、世界のメディアが中止せよと叫ぶ中、『安心・安全の大会』などと言っていることがかなりずれていることは週末、地元に帰ればわかることだ。たぶん野党の議員もそうだろうが、地元で『五輪中止すべき』と聞かない日はない。無論、国会でも会う人会う人から同じことを言われる。『五輪はやるのでしょうかねえ』との問いにも『まさかやるはずありませんよね』という雰囲気が伝わる」。

★当然、その政治日程、つまり五輪中止を宣言するのは結構だとしても、政権には厳しい評価が待っている。無論「中止は当然」という世論の中に「もっと早く判断できたのではないか」「税金の無駄遣いがあったのではないか」、少数ながら「ここまできて、やめるべきではないのではないか」など決断への評価が分かれるだろう。そのいずれも、政権の意思決定のタイミングや、決断の根拠、今までの政府の説明との整合性が問われるはずだ。

★それに加え、ワクチン接種の遅れが追い打ちをかける。ワクチンがいきわたった国々は経済活動を順次、再開させるだろう。その時、スタートダッシュにも後れを取ることがわかっているとなれば、「五輪強行、五輪中止、いずれを決断しても政権はその責任を取らざるを得ない。強行しても失敗した五輪と言われれば評価にはなるまい。つまり菅政権はどちらを決断してもその責任は退陣しかないのではないか」(野党幹部)。それに五輪がなくなれば、7月からパラリンピック終了予定の9月までが空白になる。そこで自民党総裁選挙や解散の日程は大幅に書き換えられるのではないか。もし、首相よりも先に中止を都知事・小池百合子が言い出してもその責任は同罪だ。





知恵の絞りどころ(2021年4月5日配信『琉球新報』-「金口木舌」)
2021年4月5日 05:00

 「今回の内閣は体育会系だ。『やれと言ったらやれ』という感じだ」。第2次安倍政権が発足してしばらくして、ある官僚がこぼした

▼官房長官時代の菅義偉氏の人物評。「三度の飯より人事が好き」「口数の少なさがかえって威圧感を与える」。日本学術会議の会員候補6人の任命拒否問題や記者団に対する憮然(ぶぜん)とした態度など、首相になってからもその姿勢は一貫している

▼官邸政治の内幕を描いた小説「電光石火」は2015年の発刊当時、政府関係者の間で話題に。会合のこなし方や、評価した官僚を重用する小山内和博官房長官のモデルが菅氏なのは一目瞭然

キャプチャ

▼「今度の内閣は長期安定政権だ。そこがこれまでの交渉と全く違うことを知事にも県民にもわかってもらうしかない」。普天間飛行場の辺野古移設を巡り、小山内官房長官は沖縄訪問時に秘書官に語る。強権ぶりや政敵を分断させる策士ぶりを見事に描写している

▼だが実際の政権に見られる身内には甘いという側面は小説ではほとんど触れられていない。坂井学官房副長官が菅氏に近い自民党有志でつくる「ガネーシャの会」の会合を官邸で開いていた。官邸は党内部の会合を開く場所ではない

▼追従する人たちを除き、辺野古新基地建設に反対し続ける沖縄には冷淡そのもの。負担を押し付け続ける不合理な圧力にどう向き合うか。沖縄の知恵の絞りどころだ。





不祥事続きの菅政権/国民は疲弊、砂上の支持率(2021年3月30日配信『河北新報』-「社説」)

 菅政権が誕生し、半年余りが過ぎた。この間、濃淡こそあれ菅義偉首相本人や家族が関わる幾つもの問題が浮上している。政界を揺るがす事態にもかかわらず、批判の大合唱には至っていない。その背景には国民が新型コロナウイルス対策に翻弄(ほんろう)され、疲弊している現実があることを肝に銘じなければならない。

 菅首相は21日、総裁を務める自民党の大会に出席した。締めくくりの演説では、秋田の農家の長男に生まれた出自や総務相時代にふるさと納税制度を創設した実績など、半年前の党総裁選でも耳にしたフレーズが繰り返された。

 地方出身の庶民派。世襲によらず、たたき上げの実力者で派閥のしがらみもない-といった当初のイメージを再投影したかったのだろうか。半面、印象に残る反省の弁や再生に懸ける言葉はなかった。

 自身の長男が勤める東北新社やNTTから総務省幹部が接待を受けていた問題は、間違いなく国民の多くが説明不足だと認識している。
 NTTの接待は菅首相が官房長官時代の2018年8月、携帯料金引き下げに言及して以降に頻度が増した。接待で行政がゆがめられたと思う有権者は少なくないはずだ。

 この半年を振り返ると、菅首相の対応で初めに不満が噴出したのは日本学術会議会員の任命拒否問題である。その後、コロナ禍の観光業を支援する「Go To キャンペーン」事業の強行で、国民が疑念を抱くようになる。

 忘れてならないのは、東京地裁で審理が進む19年7月の参院選広島選挙区を巡る公選法違反事件だ。元法相の衆院議員河井克行被告(58)、案里前参院議員(47)=有罪確定=夫妻の政党支部に1億5000万円が投入された。この大半は税金が元手の政党交付金にほかならない。

 当時、官房長官だった菅首相は現地入りして案里前議員を全面的に応援している。鶏卵生産大手「アキタフーズ」(広島県福山市)グループ元代表による農相対象の贈収賄事件、農林水産省幹部の接待問題もその後、発覚した。

 これだけの不祥事や醜聞が続けば、通常は政権基盤が揺らぐ。しかし、共同通信社の世論調査で急降下していた内閣支持率は2月の38・8%で底を打ち、3月20、21日の調査では42・1%に回復した。

 新型コロナ感染者数と内閣支持率は、まるで反比例しているかのようだ。有権者が優先する関心事は菅首相周辺の失態ではなく、新型コロナに侵されたなりわいであり、私生活なのだろう。

 菅首相が掲げた「国民のために働く内閣」の評価はいかようか。新年度は4月に国政の補選・再選挙、7月に東京都議選があり、衆院選は10月21日の任期満了までに行われる。有権者はコロナ禍の政治と選挙にしっかり向き合い、意思表示すべきだ。



支持率(2021年3月30日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 ドイツの首相、メルケルさんの保守与党の支持率が急落したそうだ。心を打つ言葉で国民に呼び掛け、新型コロナ対策に手腕を発揮し、高い支持率を保ってきた。ところが感染再拡大に焦ったのか、イースター(復活祭)休暇中のロックダウンを唐突に打ち出し、国民の反発を招いた

▼米ニューヨーク州のクオモ知事の評判もがた落ちだ。市民への説明ぶりが人間味あふれると共感を呼んでいたが、セクハラと感染者数の隠蔽[いんぺい]疑惑でつまずいた。政治リーダーにとってコロナは誠に手ごわく、米国では大統領選での政権交代にも影響した

▼菅義偉首相もやはり苦戦中で、コロナ対応は「後手後手」と批判されっぱなし。おまけに長男が絡んだ総務省接待疑惑に足を引っ張られている。もともと人の心を打つような演説も記者会見もない人だ

▼最近の各種世論調査では、大半の人が政府のコロナ対策を評価せず、接待疑惑の首相説明もほとんど不十分だと答えている。にもかかわらず内閣支持率は横ばいか、調査によってはやや上向いている。どうしたことだろう

▼調査から推測するに、与野党含め菅さんに代わるリーダーが見当たらない。あるいは誰が首相になっても変わらないという諦めか。どちらにしても国民にとって嘆かわしいこと

▼衆院議員の任期満了まであと200日余り。自分に有利になるよう、菅さんは解散時期を探っているはず。だが大方の人が解散の必要なしとも答えている。選挙どころじゃないよというのが、正直な気持ちに違いない。





菅政権半年 厳しさを増す国民の視線(2021年3月22日配信『山陽新聞』-「社説」)

 菅義偉政権は、昨年9月の発足から半年を経過した。新型コロナウイルス対策に翻弄される中で、期待された「仕事師」としての手腕は発揮できていない。このまま後手に回った対応が続けば、有権者の視線はさらに厳しさを増すことになりそうだ。

 秋田県のイチゴ農家の出身。苦労して大学を卒業して政治家を志した「たたき上げ」の来歴が好感された。携帯電話料金の引き下げといった庶民感覚に訴える政策も評価され、発足時は高い支持率でスタートを切った。

 誤算だったのは、コロナ対策だろう。経済回復に向けて取り入れた観光支援事業の「Go Tо キャンペーン」は、休止の時期を見誤り、感染を全国に拡大した要因だと指摘された。今年1月に首都圏や近畿圏などに絞って出した緊急事態宣言も、世論に押される形で発出に追い込まれたとの印象が強い。

 観光、運輸、飲食など厳しい状況にある業界に手を差し伸べて、経済を一日も早く回復軌道に乗せたいという思いは理解できる。私権制限につながる緊急事態宣言も、安易に発出すべきでないとの考え方もあろう。

 ただ、首相はコロナ対策にかける思いを自らの言葉で語る場面が足りない。これでは、苦境を抱えながら感染の終息を願って耐えている人たちに安心感は与えられない。

 追い打ちをかけたのが、首相の影響力が強い総務省の幹部接待問題である。放送業界に勤務する首相の長男が接待した側にいたことから、総務官僚が忖度(そんたく)したとの疑惑も持たれている。

 共同通信社の電話世論調査では、支持率は発足時の66・4%から一時は3割台に低迷した。今月も42・1%にとどまっている。後手に回ったコロナ対応だけでなく、身内に手厚いという疑いが持たれたままでは、信頼を取り戻すことは容易ではない。

 衆院議員の任期は今年10月に切れる。今後、半年あまりの間に解散、総選挙を実施しなければならないが、残された課題はあまりに重い。

 まず1年延期して迎える東京オリンピック・パラリンピックを無事に開催できるかどうかだ。コロナ禍で開催機運が盛り上がっていない中で、大会組織委員会の森喜朗前会長の女性差別発言を巡る辞任をはじめとした不祥事も続く。海外からの観戦客受け入れは断念したが、大会を通じた感染拡大のリスクは残る。

 4月には米国を訪問し、バイデン新大統領と会談する予定だ。主要国首脳としてバイデン氏の初の対面相手となる。日米の絆を確認する好機ではあろうが、米中関係が緊張する中で日本の主体性を打ち出す覚悟は見えてこない。

 難題を解決するには厳しい声にも耳を傾け、政府全体の総合力アップに力を注ぐべきだ。独断に陥ることなく、国民との対話を重視しなければ信頼回復もあり得まい。





視界不良の半年(2021年3月19日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 一体どこなのか分からなかった。先日、中国・北京の市街地などが濃い黄色にかすみ、視界が極度に悪化した。中国からモンゴルにかけて発生した黄砂の影響だ。ここ10年で最も強烈で範囲も広かったという

▲黄砂は風に乗って日本にも飛来する。近年、飛来量や頻度が増えている。中国で農地開発による砂漠化が進んでいるのが背景にあるようだ。黄砂は大気汚染やアレルギー症状を引き起こすほか、地球の気候にも影響する。問題の発生源を抑える対応が必要だ

▲こちらは視界が晴れない日々が続く。発足から半年となった菅義偉内閣である。前任者から強権的手法を受け継ぎ、独断で決める首相の姿勢が災いして、危機管理で後手に回る場面が目立つ

▲最重要課題の新型コロナウイルス対策では「Go To トラベル」事業にこだわり、感染が拡大。緊急事態宣言の再発令に追い込まれた。東京などでは新規感染者数が増加傾向にあるが、きのう宣言の全面解除を決めた。見切り発車で感染「第4波」をすぐに招かないか、不安な国民は多い

▲不祥事も相次ぐ。首相の長男が関与した総務官僚の接待問題は底なし沼のよう。日本学術会議の会員任命拒否問題も解決されていない。国民の評価は内閣支持率の低迷に表れている

▲国会でまっとうな議論や説明が見られない。民主主義の土壌が痩せ細り砂漠化すると、政治や社会の視界不良が発生する。まだ半年、もう正念場。





菅内閣発足から半年 遠のく「当たり前」の政治(2021年3月17日配信『毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉内閣が発足して半年が経過した。総務省の幹部らが高額接待を受けた問題が政権を直撃する中で迎えた節目である。

 首相の「たたき上げ」イメージが好感され、携帯電話料金値下げをはじめとする実利重視の政策にも期待が集まったのだろう。昨年9月、歴代内閣の中でも高い支持率を記録してスタートした。

 ところがその後、支持率は低迷し、早くも苦境に陥っている。

 なぜだろうか。

 首相の掲げる「当たり前の政治」とはかけ離れた政権運営が続いているからではないか。

 最大の懸案である新型コロナウイルス対策は、対応が後手に回る状態がなお続いている。

 「GoToキャンペーン」事業を主導するなど、首相は経済回復を優先してきた。この結果、感染の拡大に歯止めがかからず、今年1月、東京都などを対象に緊急事態宣言の再発令に追い込まれた。

 首相の発信力が乏しく、国民にメッセージが届いていないという課題も解消されていない。

 しかも首相は昨年12月、東京・銀座のステーキ店で自民党の二階俊博幹事長や俳優らと会食した。

 専門家による政府の分科会が「5人以上の飲食」に注意を呼びかけている最中の会食に、批判が集まったのは当然だ。

 忘れてならないのは、日本学術会議の問題だ。会員候補のうち、6人をなぜ任命しなかったのか。首相はその理由を答えていない。

 6人は安全保障法制などに異を唱えた研究者である。人事権を使って異論を排除する強引な手法を、学問の世界にも広げようとしているのではないか。

 これに対し、首相は「説明できることと、できないことがある」と開き直った。だが行政は国民に説明できないことをしてはならない。それが民主政治の基本だ。

 総務省幹部が受けた高額接待も常識外れというほかない。官僚と業界に加え、政治家を含めた「政・官・業」のもたれ合いの構図が見え始めているだけに深刻だ。

 信頼を回復するのは容易ではない。まず首相は、当たり前の政治とは何かを考え直す必要がある。そして国民が今、何に不満や不信を抱いているか、謙虚に耳を傾けるべきである。



菅内閣発足半年 独善的姿勢の問い直しを(2021年3月17日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 菅義偉内閣が16日、発足半年の節目を迎えた。当初は、安倍晋三前内閣での官房長官としての手腕が評価され、高い支持を得ていた菅氏だが、後手に回った新型コロナウイルス対策で批判を浴び、内閣支持率は低迷。さらに総務省接待問題という不祥事も続いて、国民の期待は、失望へと変わりつつある。

 得意だったはずの危機管理でつまずいた要因には、前内閣では自身が務めた参謀役が不在のまま、トップダウンで押し通す独善的な手法の失敗がある。菅内閣が国民からの信頼を取り戻すためには、菅氏自身の政治姿勢の問い直しが欠かせない。

 コロナ対策の迷走で、象徴的だったのが観光支援事業「Go To トラベル」を巡る動きだ。

 感染「第3波」が本格化しつつあった昨年11月以降、感染症対策分科会が運用見直しを求めたにもかかわらず、経済対策を重視し同事業にこだわった首相は、停止の判断を先送りした。

 結局、12月14日に同事業の全国一時停止を表明した後も感染拡大は収まらず、1月7日の首都圏などへの緊急事態宣言の再発令、そして2度の期間延長につながることになってしまった。

 振り返れば、菅氏の独善的手法の危うさが最初に露骨に表れたのが、首相就任直後に実行した日本学術会議の会員任命拒否だった。

 菅氏は拒否の理由を明らかにしていないが、拒否された6人に共通していたのは、安倍前政権の政策に批判の声を上げていたことである。菅氏は自民党総裁選などで官僚人事について、自らの政策に「反対するなら異動してもらう」との発言を重ねていたが、その姿勢を省庁以外の独立性の高い機関にまで広げようという意図が感じられた。

 そうしたこれまでの人事統制によって、首相が特に強い影響力を持つとされていた総務省で起きたのが、接待問題である。首相の長男が勤める放送事業会社「東北新社」による接待が発端となり、「既得権益の打破」を掲げていた首相の身内が絡んだ既得権益問題として、国民からの大きな不信を招いた。

 この問題においても、高額接待を受けた山田真貴子前内閣広報官を当初、厳重注意で済ませるなど、首相の対応は甘く後手に回った。結局、NTTによる接待にまで問題は広がり、首相の携帯電話料金値下げ政策の右腕とされていた谷脇康彦前総務審議官が辞職に追い込まれる結果となった。

 菅内閣の信頼回復の道は容易ではないが、不祥事については誠実に説明責任を果たしながら、具体的な政策を一つずつ着実に実行していくしかあるまい。

 やはり当面の最大の課題は国民の暮らしと安全に直結するコロナ対策である。21日に迫った緊急事態宣言の延長期限をどう判断し、どう対応するか。4月に開始予定の高齢者へのワクチン接種も合わせ、今度こそ内閣の組織としての力量を示してもらいたい。





「いずれにせよ」(2021年3月13日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 向田邦子さんのエッセー集『霊長類ヒト科動物図鑑』に収められている「なかんずく」に、小学1年生の男の子が出てくる。表題は、親戚だという彼の口癖。「特に」「とりわけ」といった意味だ

▼入学祝いに何が欲しいかを聞かれて「なかんずく万年筆かな」。朝食でも「なかんずくオムレツにしてよ」。使い方に間違っている点がなきにしもあらずだが、古めかしい言葉と、それを駆使する子どもとのギャップが、どことなくほほ笑ましい

▼こちらも口癖になっているのだろうか。菅義偉首相が国会での答弁や記者会見などでよく使う「いずれにせよ」。官房長官時代も口にしていた記憶がある

▼「どのみち」「どうなるにせよ」といった意味の言い回しは二つの事項を示した上で、問題点はこうだと導くもののはず。ところが、菅首相は「それはさておき」「ところで」などの文脈で使うことが多い。その結果、問題の本質をはぐらかすことになる

▼答弁を重ねていくうちに身に付いた表現なのか。それとも、官僚があらかじめ用意した原稿に書いてあるのか。いずれにせよ、菅首相の言葉が聞く者に響かないと言われる要因の一つかもしれない。もっとも、ご本人は「ご指摘には当たらない」と反論するだろう。これも何度も聞いた覚えがある。





組織委の新体制 男女平等どう実現するか(2021年3月4日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会が、新たに12人の女性理事を選任した。新会長の橋本聖子氏が組織改革の柱に掲げる「男女平等」の具体化だ。

 五輪マラソン金メダリストの高橋尚子氏ら元アスリートのほか、公衆衛生やスポーツ史とジェンダーの研究者、企業経営者、元官僚、弁護士らが名を連ねる。

 女性理事は19人に増え、全体の42%余になる。スポーツ庁が競技団体の運営指針に掲げる「40%以上」の目標に添った。

 陣容を整えたことは実行への第一歩にすぎない。男女平等が明確な形となって表れてこなくては、急場しのぎの数合わせとのそしりを免れない。残された時間は限られる。活発な討議をいかに深められるかが問われる。

 コロナ禍の収束が見通せず、開催自体に懐疑的な声が国内外で高まっている。ボランティアや、今月下旬に開始が迫った聖火リレーの出走辞退も相次いでいる。

 選手、観客の感染対策は可能なのか。準備期間が残り少なくなる中、明確な基準をもって安全な大会運営の道筋が示されなくては、国民は納得できないだろう。

 現職理事は1人を除いて留任する。以前から「多すぎる」と指摘されてきた理事は45人に膨らむ。女性の数を確保するため、上限を定めた定款を急きょ改定した。異例の大所帯だ。方針をどうまとめていけるのか懸念がある。

 森喜朗前会長の女性蔑視発言によって損なった大会のイメージ、国際社会や国民からの信頼を回復することが急務だ。人種や性別、障害の有無など、あらゆる違いを尊重する大会ビジョンの「多様性と調和」を、説得力をもって発信したい。

 森氏の「女性がたくさん入っている理事会は時間がかかる」「組織委の女性はわきまえている」との発言は、異論を封じ、根回しで物事を進めようとする組織の体質をあらわにした。

 トップの意向を追認するだけなら信頼は取り戻せない。多様な意見を前提に、意思決定の透明性を高めることが欠かせない。新理事たちは多くの課題に市民目線で向き合い、発言してほしい。

 橋本氏の新会長選考過程では、議論が一切公開されず、組織委の閉鎖性が浮き彫りとなった。今回の新理事も、どういう基準で選ばれたのかが不明確だ。

 大会のあり方や理念をめぐり、各理事の考えが明らかにされてよいはずだ。組織委はその機会を設定する必要がある。



予算案衆院通過(2021年3月4日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆不祥事の信頼低下認識せよ◆

 一般会計総額が約106兆6千億円と過去最大となる2021年度予算案が衆院を通過、年度内の成立が確定した。社会保障費や防衛費の増加、新型コロナウイルス対策費が歳出膨張の要因だが、衆院の審議では政府、与党の相次ぐ不祥事が焦点となり、社会保障制度の在り方や財政再建への取り組みなどの議論は深まらなかった。

 審議の過程で目立ったのは、不祥事に関する後手に回る対応と、説明不足だ。その結果として国民の信頼を失った政府、与党の責任は重い。

 政権が信頼を取り戻すために取り組まなければならない課題にはまず、国民に引き続き不自由な生活を強いる新型コロナ感染症対策が挙げられる。丁寧な周知・広報が必要なワクチン接種、万全な感染防止と市民ボランティアの支援が求められる東京五輪・パラリンピック開催なども、国民の理解と協力が欠かせないものだ。

 国民との信頼関係は政権運営の基盤だ。この基本に対する菅義偉首相の認識の甘さを露呈したのが、首相の長男が勤める会社からの接待が明らかになった山田真貴子前内閣広報官の進退問題と言える。発覚後も、首相は「女性の広報官に期待している」と続投させ、早い段階での判断に至らなかった。

 だが、内閣広報官は首相の記者会見の進行役を務めるとともに、内閣の重要政策の広報を担う内閣と国民をつなぐパイプ役だ。山田氏は結局、体調不良を理由に辞職したが、首相の続投判断は国民との信頼関係への目配りを欠いたものだった。

 山田氏の辞職後も首相はあくまでも体調不良が理由だとし、不祥事に何のけじめもつけていない。これで国民の理解が得られると考えているのだろうか。

 相次ぐ不祥事は自民、公明両党の長期政権下で生じた規律の緩み、おごりの表れと言うしかない。新型コロナの緊急事態宣言下に自民、公明両党幹部が高級クラブに出入りしていた問題では国会や党の役職辞任で済ませようとしたが、その後、離党や議員辞職に追い込まれた。

 総務、農水両省幹部が受けていた接待は明白な国家公務員倫理規程違反だ。首相には最高指導者として政権の規律を引き締める責務がある。官僚接待では行政がゆがめられた事実はないのか。国会で引き続き徹底解明に取り組むべきだ。

 国民が一番知りたいのはワクチン接種の計画だろう。これに関しても、政府の説明は不十分だ。全国知事会は緊急提言で、接種計画の全体像を明示し、正確な情報を提供するよう求めた。緩みを排除し、疲弊する地方の危機感に敏感になり、対策に反映させてほしい。



引用


菅首相の政権運営 官邸の機能不全が心配だ(2021年3月3日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの対策費などが盛り込まれ、野党は成立を遅らせる国会戦術をとっていない。だが、多くの問題が積み残され、菅義偉政権の機能不全を疑わせる事態も相次いでいる。

 新型コロナ対策では、GoToキャンペーンにこだわり、政府の対応が遅れた。

 緊急事態宣言の再発令も、年末年始の感染急拡大を受け、知事らに押されて出したものだ。

 感染の「第3波」は昨年11月に始まっていたのに、臨時国会を12月初旬に閉じた。今国会では唐突に、罰則を含む新型コロナ関連法の改正案を提出した。

 その最中に、与党議員が深夜に東京・銀座のクラブに出かけていたことが相次いで発覚し、政権の危機意識の欠如を露呈した。

 総務省幹部らが放送事業会社「東北新社」に勤める首相の長男らから接待を受けていた問題では、首相は「長男は別人格だ」と人ごとのように答弁した。一方で、自身が抜てきした山田真貴子前内閣広報官は続投させようとした。


 国民の政治不信を理解できていれば、起こりえなかった対応だ。

 首相は人事権で官僚や議員を動かす政治手法を駆使してきた。異論に耳を傾けない強権的な手法が、進言しにくい空気を生み出しているのではないか。

 深刻なのは、首相に対して率直にものを言う人物が、官邸や与党に見当たらないことだ。

 官房長官には、自身の下で官房副長官を務めた加藤勝信氏を据え、秘書官には官房長官時代の秘書官らを昇格させた。自身に異を唱えることが少ない顔ぶれで周辺を固めている。

 新型コロナ対策は正念場を迎え、ワクチン接種のスケジュールも当初の想定より遅れそうだ。東京オリンピック開催問題などの判断も早々に迫られる。

 首相は専門家の意見を尊重し、国民の不安に応えながら慎重に判断をしていく必要がある。

 野党の提案も立場を超えて柔軟に取り入れるべきだ。

 権力は抑制的に行使する必要がある。首相は国民からの信頼を力にして政策を進めるべきだ。それが政権立て直しの第一歩になる。



予算案 衆院通過(2021年3月3日配信『福井新聞』-「論説」)

信頼失墜させた責任重い
 一般会計総額で106兆6097億円と過去最大になる2021年度予算案が衆院を通過し、憲法の規定により年度内の成立が確定した。新型コロナウイルス感染症対策や社会保障費、防衛費などで歳出が膨張する一方、コロナ禍による税収の低迷で43兆円余りもの新規国債を発行して歳入を賄うのが特徴だ。

 ただ、衆院の審議では社会保障制度の在り方や財政再建への取り組みなどの議論が深まったとは言い難い。というのも、政府、与党の相次ぐ不祥事が焦点になったためだ。審議の過程で浮き彫りになったのは政府の後手に回る対応と、それに対する説明の不足だろう。国民の信頼を失墜させた責任は重いと言わざるを得ない。

 とりわけ、放送事業会社に勤める菅義偉首相の長男らによる総務省幹部の接待を巡り、総務官僚時代に接待を受けていた山田真貴子前内閣広報官の進退問題では首相自身の認識の甘さが露呈した格好だ。内閣と国民をつなぐ重要な役目を担う広報官に疑念が向けられているのに、首相は「女性の広報官に期待している」と続投させた。山田氏は結局、体調を理由に辞職したが、首相は辞職後もあくまで体調不良が理由とし、何らけじめもつけていない。

 総務省に加え、農水省幹部も接待を受けていた問題では、国家公務員倫理規程違反と認定し、早々に処分を行った。両省の検証委員会の調査結果はまだ示されていない。接待で行政がゆがめられていた可能性もある。国会で引き続き徹底解明に取り組む一方、首相は行政のトップとして規律を引き締める責務があることを忘れてはならない。

 新型コロナの緊急事態宣言下に自民、公明の両党幹部が高級クラブに出入りしていた問題も国民不信を増幅させた。国会や党の役職辞任で済ませようとしたがその後、離党や議員辞職に追い込まれた。自民党では他の議員にも波及した。相次ぐ不祥事は長期政権下で生じた規律の緩み、おごりの表れと受け取られても仕方がない。

 菅政権の今後には重要な課題が山積みになっている。特に国民が最も関心を寄せているのはワクチンの接種計画だろう。一般の国民はいつになったら接種できるのかが知りたいところだが、政府の説明は不十分極まりない。

 首都圏の1都3県の緊急事態宣言解除に関しても微妙な情勢だ。さらに変異ウイルスの感染拡大も懸念されている。首相は関西など6府県の宣言解除の際、記者会見を見送り「広報官隠し」などと揶揄(やゆ)された。首都圏については、国民の信頼回復の一歩として、宣言の解除、延長に関わらず会見に臨むべきは当然だ。



予算衆院通過 接待疑惑は残ったままだ(2021年3月3日配信『西日本新聞』-「社説」)

 どこか釈然としない。新型コロナウイルス対策の遅れが皮肉にも予算の成立を急がせ、重要な不祥事の解明は取り残された-。そんな印象が拭えない。

 2021年度政府予算案がきのう、衆院を通過した。憲法が定める衆院の優越規定により年度内の成立が確実になった。

 ここまでの国会で菅義偉政権は総務、農林水産両省の官僚らの不祥事などを巡り野党の厳しい追及を受け、終始守勢に回った。それでも国会日程上の関門は順調にくぐり抜けた格好だ。

 予算案の審議は折しもコロナの感染拡大に伴う2度目の緊急事態宣言と重なった。そのため野党側にも、コロナ禍対策が盛り込まれた予算の成立をいたずらに遅らせては世論を敵に回しかねない、との判断が底流にあった。ただ、コロナ禍を奇貨として先を急ぐ政府、与党の拙速な姿勢に危うさや疑念を感じた国民は少なくないはずだ。

 政府、与党は今国会で20年度3次補正予算を成立させた後、わずか3日間の審議でコロナ対応の特別措置法を改正し、10日後に施行した。さらに首相の長男が関与した総務省官僚の接待や吉川貴盛元農相の汚職事件に絡む農水省官僚の接待問題で、実態が不透明なまま関係者の処分を下し、幕引きを図った。

 とりわけ納得がいかないのは接待が計13人、延べ39回に及んでいた総務省の問題だ。このうち7万円超の高額接待を受けていた元同省審議官の山田真貴子内閣広報官は一昨日、体調不良を理由に突然辞任した。

 山田氏は首相の意向を受け、職務を続ける姿勢を示していたが、批判が収まらず、事実上の引責とみられている。内閣広報官は政府の政策を国民に説明する重要ポストだ。山田氏をそこに起用し、今後も続投させようとした首相の任命責任は厳しく問われてしかるべきだ。

 無論、一連の接待で行政がゆがめられていないか、今後さらに徹底した調査が欠かせない。首相が繰り返す「自分は何も知らなかった」「結果的に国民に迷惑を掛けて申し訳ない」といった弁明で済むはずもない。

 霞が関の不祥事は政府予算の在り方と直結する。予算の立案・査定・執行を担うのは官僚にほかならないからだ。不祥事の続発で直面するコロナ禍対策をはじめ、少子高齢化や地方創生など諸課題に関する審議時間が衆院では十分に確保できなかった面もある。首相はその意味でも責任を自覚すべきだ。

 まもなく発生から10年になる東日本大震災の復興の在り方も含め、国会が議論すべきテーマは多い。参院での予算審議を決して「消化試合」に終わらせてはならない。





森発言と菅政権 深刻さ理解しているか(2021年2月11日配信『東京新聞』-「社説」)

 東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言に国際的な批判が高まっている。しかし、菅義偉首相ら政府側の反応はどこかひとごとだ。発言の深刻さを理解しているのか。

 政界の先輩である首相経験者には直言しづらいということか。

 森氏に辞任を促すよう求める野党の国会質問に対し、首相は「私が進退を問題視すべきではない。組織委の中で決定してもらう」と述べるにとどめた。

 「あってはならない発言」と言いながら、進退には自分は無関係と言わんばかりの答弁である。

 首相は組織委の顧問会議議長でもあり、組織委の定款では、顧問会議は法人の運営に助言できる。

 首相は形式的とされる日本学術会議の会員人事に介入しながら、なぜ組織委には助言しないのか。

 森氏の進退に言及しないのは、女性蔑視発言の深刻さを理解していないから、と国民や世界に受け取られても仕方があるまい。
 政権内からは、森氏を擁護する発言すら聞こえてくる。

 自民党の世耕弘成参院幹事長は記者会見で森氏を「余人をもって代え難い。人脈や五輪への知見を考えたら、森氏以外に誰が開催を推進できるのか」と持ち上げた。

 代え難い人なら蔑視発言も許されるというのもおかしな理屈だ。

 同党の二階俊博幹事長に至っては森氏の発言を機に大会ボランティアに辞退の動きが出ていることについて「辞めると瞬間には言っても、協力して立派に(大会を)仕上げましょうとなるのではないか」「どうしてもお辞めになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集、追加せざるを得ない」と会見で述べた。

 一年延期とコロナ禍が重なり、ボランティア確保は難題だ。追加募集すればすぐに集まると考えているのなら、状況の深刻さを理解していないと言わざるを得ない。

 さすがに橋本聖子五輪担当相が二階氏発言を「不適切だった」と述べたが、覆水盆に返らずだ。

 森氏の謝罪後「問題が終わったと考えている」とした国際オリンピック委員会(IOC)も後に「森氏の発言は完全に不適切で、五輪の理念に反している」と批判する異例の声明を発表した。

 森氏の発言は女性蔑視のみならず、会議での自由な発言封じを当然視するなど、日本社会の在り方そのものも問われている。それを変えるのは政治の仕事なのに、政治家にその認識がないとしたら、森氏の発言以上に深刻である。





衆院予算委審議(2021年2月10日配信『佐賀新聞』-「論説」)

首相は議論から逃げるな

 衆院予算委員会は来年度予算審議の序盤を終えた。菅義偉首相は、放送事業会社勤務の長男が放送行政を所管する総務省幹部らを接待した問題で「民間人、別人格」と突っぱねるなど、中身の議論から逃げる姿勢を繰り返した。

 首相就任前の8年近い官房長官時代は「詳細は承知しない」「問題ない」で押し通し、ぶれない姿勢をアピールした。だが首相にこのスタイルは許されない。野党と四つに組む議論抜きでは、国民への説明責任を果たすことはできない。

 接待された総務省幹部4人のうちの1人は、費用を払わずに会食してタクシー代も提供され、後に返金したと述べたが、金額は答えなかった。首相は放送事業会社社長が同郷の支援者だと認めたものの、それと長男の接待を「結び付けるのはおかしい」と反発。「長男や家族にも名誉やプライバシーがある」と総務省が調査中であることを盾に事実の確認を拒んだ。

 国権の最高機関より行政の内部調査が優先される道理などないはずだ。

 首相は総務副大臣、総務相を歴任し総務省に強い影響力を持つ。長男は総務相当時の政務秘書官だ。国民が疑念を抱くのは、首相自身を含む「政官業の癒着」ではないかという点だ。首相にはその自覚はあるのか。

 首相は「改革実行には更迭も辞さない」と人事権を振りかざし官僚を従わせてきた。この「恐怖支配」ゆえに官僚は、言われなくても首相の歓心を買うよう忖度そんたくを働かせる。首相は否定しても、官僚は長男と首相の威光を「結び付け」て接待に応じたに違いない。そうさせた原因は首相の政治手法にあるではないか。

 森友・加計学園問題の悪しき前例を繰り返さないためにも、自らの責任を重く受け止め、事実解明に積極協力すべきだ。

 首相は官房長官時代を合わせ8年以上官邸に君臨する。本人がいかに身を律しても、権力者周辺が「役得」のおこぼれに預かる魅力にあらがえない例は古今東西枚挙にいとまがない。「腐敗防止」のため権力者は、親族の行動まで律する義務があると考えるべきだ。

 政治責任を回避する首相の姿勢が目立った場面は他にもある。新型コロナウイルス対策のスマートフォン向け接触確認アプリ「COCOA(ココア)」が情報通知できない障害を国が4カ月放置した問題もそうだった。

 昨年9月の基本ソフト(OS)更新で3割の利用者に「濃厚接触」の通知が届かなくなり、障害確認は年明けになった。政府は国民に利用を再三呼び掛けながら責任を持った管理を怠り、開発、メンテナンスを業者任せにしていたのが原因だ。

 首相は「大変申し訳ない」と陳謝したが、自身に責任が及ぶ閣僚処分などは否定。通知停止により救える命も救えなかった例があるかもしれない。首相や閣僚は重大性の認識が欠けていないか。官僚を指揮し政府の管理体制を固めるのは当然政治の責任のはずだ。

 議論の入り口で防御を固める姿勢は、東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長による女性蔑視発言を巡っても際立った。首相は当初「詳細は承知しない」で通したが、世論の反発が高まり「あってはならない」「(国益に)芳しくない」と徐々に森氏をかばえなくなった。国会の先には国民がいる。首相はその認識で答弁すべきだ。(共同通信・古口健二)



安倍・菅「裸の王様」助長する二階(2021年2月10日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★元首相で五輪組織委会長・森喜朗の発言を擁護する声を聞いていると、いかに安倍・菅政権で政治は詭弁(きべん)を弄(ろう)して国民をごまかし続けてきたかがわかる。「総理大臣の私が言うのですから間違いない」「私が国家です、総理大臣ですよ」「総理大臣は森羅万象を担当している」「日本を代表して、謹んでトランプ大統領を(ノーベル平和賞に)推薦する」(前首相・安倍晋三)とすり込まれた国民が、この国の進歩にどれほど妨げになったか計り知れない。首相の言うことだから絶対なのだという権力志向と裸の王様的な振る舞いが当たり前になり、森発言の温床を醸造し続けたとは言えまいか。

★首相・菅義偉の官房長官時代から今日までの発言-「その指摘は当たらない」「答弁を差し控える」「問題ない」のみならず「説明できることとできないことがある」も、政治は二重構造で、表と裏があると国会で堂々と答え、権力側の認定や裁定以外の答えはないという有無を言わさぬ政治の柔軟性や多様性を無視し続けた結果ではないだろうか。こんな政治と態度に慣らされていた国民が、森のストレートな差別的で前近代的な思考に不快感を持つのは当然としても、そう育成され、政治をつかさどる人たちの考えはこんなものという考えを定着させてきた責任は大きい。

★2人に共通するのは、答えは既に1つに決まっていて、それは絶えず政府が言うこと。それが唯一正しい答え。正解なのだ。それを実践してみたのが自民党幹事長・二階俊博だ。森発言を受けたボランティア辞退の動きは「瞬間的」とし、「落ち着いて静かになったら、その人たちの考えもまた変わる」と語った。また「どうしてもお辞めになりたいということだったら、また新たなボランティアを募集する、追加するということにならざるを得ない」と指摘した。落ち着けば解決。代わりはいくらでもいるというようにも聞こえるが、安倍・菅の政治用語にのみ込まれてはいけない。





新型コロナウイルスの流行で、マス…(2021年2月2日配信『福井新聞』-「越山若水」)

 新型コロナウイルスの流行で、マスクを着けることが当たり前になった。そのせいで相手の表情が分からない、コミュニケーションが取りにくいと感じる人が増えているらしい

▼われわれは人と話す場合、口元の動きや顔の表情を見て推察する。しかし今はマスクに覆われ、感情を表す部位は目と眉毛の二つだけ。だから言葉をうまく伝えるには、声質や抑揚、表情などの非言語情報を上手に使うことが重要。そうしないと誤解を招いてしまう

▼例えば、人の話を聞いて「もっともな話でした」と返すとき、笑いながら抑揚のある声だと問題ない。ところが同じことを抑揚もなく暗い表情で話すと、意思に反して「私は不快でした」と伝わることもある。コロナ禍の今こそ、無表情の会話は何としても避けたい

▼では、菅義偉首相の非言語コミュニケーション力はどうか―。「人は見た目が9割」の著者、竹内一郎さんは近著「あなたはなぜ誤解されるのか」(新潮新書)の紹介文で分析する。まず言語自体が、官僚の作文を平板に読むだけで個性やメッセージ性がないという

▼加えて表情がほとんどなく、人の温かみが感じられない。「そんな答弁だから言葉が伝わらない」と国会で迫られ「少々失礼じゃないか」と気色ばんだが、その顔も無表情だった。「正論は印象に勝てない」と竹内さん。やはり「見た目」も大切である。


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続落する内閣支持率/進路を示し、誠実に説明を(2021年1月26日配信『河北新報』-「社説」)

 菅内閣の支持率が続落している。新型コロナウイルスへの政府の対応に国民が不満を募らせている結果だ。今こそ、ぶれない国家観の発信と誠実な説明が求められる。

 まず、共同通信社による新内閣発足時からの世論調査の数字を整理しておきたい。

 組閣直後の2020年9月の調査は「支持する」が66・4%で、菅義偉首相が継承した安倍内閣発足時(12年12月)の62・0%をも上回った。

 10月は60・5%、11月も63・0%を維持したが、12月は12・7ポイント急落の50・3%、21年1月はさらに9・0ポイント下がり41・3%に落ち込んだ。

 政府の新型コロナ対策を、多くの国民が「評価しない」(68・3%)と判断したからにほかならない。新型コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の再発令のタイミングが「遅過ぎた」(79・2%)のも影響している。

 安倍晋三前首相の退陣後、菅首相は自民党の総裁選レースで「地方議員からのたたき上げで実力者」「ふるさと納税の導入やインバウンドの招致拡大の立役者」と高く評価された。

 国民が「仕事をする内閣」を掲げる菅首相に期待したのは、コロナ禍という「国難」を打開するリーダーシップであり、即戦力だったはずだ。その反動が、内閣を支持しない理由に表れている。内閣発足時、5・5%にすぎなかった「首相に指導力がない」は今や、41・2%に達する。

 21日の参院本会議で、菅内閣の実相をうかがわせる一幕があった。立憲民主党の水岡俊一参院会長が30分を費やした15項目の代表質問に、菅首相は10分程度の淡泊な答弁でやり過ごした。

 さすがに与党内からも問題視する声が漏れた。国会に限らず、地方議会でも質問に見合うだけの答弁をするのが礼儀であり、それが慣例となってきたのではないだろうか。

 22日の代表質問では立民の田名部匡代参院議員(青森選挙区)が「質問者だけでなく、日々の生活に不安を抱く国民に対しても誠実な答弁ではなかった。長い短いではなく、明確な答えと丁寧な説明を求める」と苦言を呈した。

 指摘はもっともである。国民の感覚は鈍くはない。内閣不支持に傾き始めた有権者は既に、現政権が内包する説明責任の欠落を肌で感じていたと捉えても不思議ではない。

 他方、野党第1党たる立民の支持率も、菅内閣下で6・4~8・4%と1桁台で推移している。過去1年をさかのぼってみても、最高は10%そこそこにとどまる。

 残念ながら立民をはじめとする野党が、政権や与党への不満の受け皿になっていないことを表している。

 これまでに経験したことのない国難だからこそ、迷走している時間はない。国民はよすがを求めている。政治がより明確な進路を示していくことは、至極当然である。





ご宴席は短めに(2020年12月19日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 江戸川柳に〈よく締めて寝ろと言い言い盗みに出〉とある。注意喚起とそれからの行動が支離滅裂。意地悪くもじってみれば、大勢は駄目と言い言い-とでもなろうか。菅首相である

◆著名人ら計8人の「忘年会」に参加したことに批判が集まる。それもそのはずで、政府はこれまで5人以上の会食は新型コロナへの感染リスクが高まるとして注意を促してきたのだから、確かに締まりのない話

◆首相は「反省」を口にしたが、世間はなかなか収まらない。それを見て、自民党では大勢での忘年会を慌ててやめる派閥も。この問題がなければ、やる気だったらしい

◆西村大臣は首相をかばうしかないのか、国会での追及に「一律に5人以上は駄目だと申し上げているわけではない」と答えた。それが苦しい弁明であることはご本人も分かっているにちがいない。苦労しますね

◆「勝負の3週間」どころか「勝負の1年」を耐えてきた多くの人たちは気分転換の忘年会さえままならない。だれだって余計ないらだちを胸に抱えたくはないが、首相の振るまいには不平をぶつけたくもなろう

◆皮肉とユーモアあふれる「現代語裏辞典」(筒井康隆著)で「忘年会」の項を引くと、たったひと言、「もう寝んかい」とあった。ご宴席は短めに。



「揚げ足をとる」とは、相手の言…(2020年12月19日配信『山陽新聞』-「滴一滴」)

 「揚げ足をとる」とは、相手の言いそこないや言葉じりにつけこんでなじったり、皮肉を言ったりすることだと広辞苑にある。やり過ぎると攻め手も批判されるが、今回は間違いなくとられた側の失態だったろう

▼菅義偉首相は先日、年末年始に「Go To トラベル」事業を全国一律で停止すると決めた。問題はその夜、経済人たちとの会合に出席した後、プロ野球ソフトバンクの王貞治球団会長、俳優の杉良太郎さんらを交えて計8人でステーキを食べながら懇談したことだ

▼首相は国民に「年末年始は静かにお過ごしいただきたい」と呼びかけたばかり。政府は、クラスター(感染者集団)は5人以上の会食などで発生していると説明し、大勢での会食自粛も求めていた

▼「国民に自粛を呼びかけておいて自分たちはステーキを食べて盛り上がっている」と野党は非難した。当然だろう。身内の自民党からも「支離滅裂だ」と批判が出た

▼会食ではマスクを外したことも分かった。感染が急拡大する新型コロナウイルス対策への本気度が疑われる事態に、首相も「真摯(しんし)に反省している」と謝るしかなかった

▼有識者や知人の声を聞くのは重要なことだろうが、今はコロナ禍に苦しむ国民に向き合う時だ。杉さんの代表曲に「すきま風」がある。気を緩めると国民との間にも吹く風である。



誤解を招く意味において?(2020年12月19日配信『中国新聞』-「天風録」)
2020/12/19 6:39

 議論好きの作家より、聞き上手な俳人と差しで杯を傾ける。そんな例えだろうか。カフカ去れ一茶は来れおでん酒(加藤楸邨=しゅうそん)。コロナの出現以来、止まり木では「密」を避けて長居せず。いや、それさえご法度、というご同輩もいよう▲ところが、8人ほどの著名人が高級ステーキ店に集い、首相も顔を出していたから驚く。しかも、GoToトラベルの一時停止を決めた14日の夜の会食である。1日置いて「国民の誤解を招く意味においては真摯(しんし)に反省している」と首相は述べたが▲え、私たち何か誤解したの―。作家や俳優たちがこう「つぶやき」を発し、事は収まらない▲そもそも「5人以上」の会食はリスクが高いと専門家は指摘してきた。だが、首相周辺は8人ほどのステーキ会食をルール違反とは認めたくない。何か証拠があって5人以上と言っているのではない、と火消しに躍起になった。そこで「国民の誤解」といった言い回しも出てくるのだろう。これを弥縫(びほう)策と呼ぶ▲内閣支持率は急落し、「桜を見る会」夕食会の疑惑を巡っては前首相の国会招致へと急転している。急流のごとき世なれどおでん酒(百合山羽公=ゆりやま・うこう)。政治家諸氏には、この句を送る。





伝わる言葉(2020年12月19日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

  隔離措置を免除されているから世界中を移動できる、魔法が使えるから安全よ。クリスマスを控え、欧州の首脳らがサンタクロースの動向を会員制交流サイトなどで発信している

▲新型コロナウイルスの影響でサンタが来ないのではと、子どもたちが心配しているからだ。世界保健機関(WHO)は「サンタは免疫ができている」としつつ、対人距離の確保や保護者の言うことを守るよう助言。子どもたちに目配りしたこんな呼び掛けなら、明るい気持ちにもなり、アドバイスもしっかり受け止めるだろう

▲一方、日本政府のコロナに関する呼び掛けは心に響いてこない。4人以下のマスク会食を訴えていながら首相自ら8人の忘年会に参加。この忘年会が問題視され、自民党の派閥の忘年会が相次いで中止になった

▲言行不一致にコロナ感染拡大の危機感がないのではと疑ってしまう。医療機関は逼迫(ひっぱく)している

▲国民は大勢での忘年会や年末年始の帰省を控えようとしている。政治と国民の感覚はずれていると言わざるを得ない。最近の報道機関の世論調査でコロナを巡る政府対応について「評価しない」が半数を超え、内閣支持率は50%を切った。むべなるかな、だろう

▲感染が急拡大しているドイツのメルケル首相は「大勢が死亡する状況は受け入れられない」と議会で熱弁し、危機感が伝わったと話題になった。政治には国民に伝わる言葉、誠実な姿勢を改めて求める。





失態続く菅首相 当たり前の政治はどこへ(2020年12月18日配信『毎日新聞』-「社説」)

 危機感も緊張感も乏しいのではないか。新型コロナウイルスの感染拡大が一向に収まらない中、菅義偉首相の失態が続いている。

 観光支援策の「GoToトラベル」を全国一斉に一時停止する決断が遅きに失しただけではない。

 自民党の二階俊博幹事長やタレントら8人程度の夜の会食に出席した点にも批判が集まっている。

 専門家による政府の分科会は「5人以上の飲食で感染リスクが高まる」と注意を促してきた。しかも「勝負の3週間」と呼びかけていた最中である。

 インターネット番組に出演した際、冗談口調で「ガースーです」と愛称で自己紹介したのにも、あぜんとした人が多いだろう。

 若者の視聴者が多い点を意識したのだろうが、今、若者も含め国民が求めているのは、リーダーの心のこもった真摯(しんし)な言葉だ。

 毎日新聞が実施した直近の世論調査では、菅内閣の支持率は40%に急落し、不支持率(49%)が初めて上回った。「GoToトラベル」を「中止すべきだ」と答えた人は67%に上った。

 「GoTo」は菅首相が官房長官時代から自ら主導してきた支援策だ。「ぶれない」姿勢をアピールしてきただけに、そのこだわりが決断を遅らせた面は否めない。直前まで否定していた事業の一時停止に踏み切ったのは、実際には支持率の急落にあわてたことが大きな要因だろう。

 こうした首相の焦りに加え、気になるのは、首相に進言する人が内閣や自民党にいないのではないかという点だ。

 夜の会食などは加藤勝信官房長官や秘書官が一言、自重を求めれば済む話だったろう。その後の人事で不利益を被るのを恐れてものを言えず、首相も耳を傾けないとすれば、今後の政策決定はますます不安になる。

 菅内閣が発足して3カ月が過ぎた。首相は「国民から見て当たり前のことをする」と再三語ってきた。ところが国会の閉会中審査には出席していない。時間をかけて記者会見を開き、国民に丁寧に説明する機会も極めて少ない。

 世論の動向がつかめず、緊張感が薄らいでいるのは、そのためでもあろう。これでは「当たり前の政治」は遠のくばかりである。



言い訳ではない。笑えないギャグでもない(2020年12月18日配信『産経新聞』-「産経抄」)

 いつごろから日本で広まった風習だろう。カメラを向けられると、人さし指と中指をたてるポーズをとる。「ピースサイン」である。

 ▼もともと「勝利」のビクトリーを意味する「Vサイン」だった。第二次世界大戦中、英国の首相チャーチルは盛んにVサインを掲げて勝利を誓った。ナチスドイツの空襲に耐えていた英国民には、どれほど大きな励みとなったことか。

 ▼もちろん国家の危機に際して、指導者にとって最も大切なのは、国民に語りかける言葉である。コロナ禍が過ぎ去った後に、あの火の玉のような演説が転換点になったと、ドイツ国民は振り返るかもしれない。メルケル首相といえば冷静沈着のイメージが強いが、今月9日、連邦議会では感情をむき出しにしていた。「今年が祖父母との最後のクリスマスになったら、われわれは重大な間違いを犯すことになるだろう」。コロナの1日当たりの死者数が過去最多となった事態を受けて、拳を振り上げて国民に協力を求めた。

 ▼では菅義偉首相は、どんなメッセージを発しているのだろう。あろうことか、政府が国民に多人数での食事を避けるよう呼びかけているなか、自民党の二階俊博幹事長ら5人以上の会食に参加していた。「他の方の距離は十分あった」。われわれが聞きたいのは言い訳ではない。「ガースーです」。インターネット番組に出演して発した笑えないギャグでもない。

 ▼かつて自民党の竹下派では「平時の羽田(孜、元首相)、乱世の小沢(一郎、現立憲民主)、大乱世の梶山(静六、元官房長官)」という言い方があった。ウイルスの感染拡大が止まらない、大乱世の日々が続く。

 ▼菅氏が政治の師と仰ぐ梶山氏は泉下で、イライラが募るばかりだろう。



大将の不覚(2020年12月18日配信『東京新聞』-「筆洗」)

 南北朝時代の武将で、後世に忠臣とたたえられることになる児島高徳(こじまたかのり)が高位の武将をいさめる一場面が『太平記』にある。いわく、戦に負けるのは、必ずしも恥ではない。だが、<引くまじきところをひかせ、懸(か)くまじきところをかけさするを、大将の不覚とは申すなり>

▼守る時でないのに守らせ、攻め時でないのに攻めさせるのは、失敗である。武将たる者は、攻守のちぐはぐを避けなければならないと

▼「勝負」と言われたコロナ流行下の三週間が過ぎた。感染者数は増え続けていて、医療機関への負荷も高まり、厳しくなっている地域も出始めた。勝負は残念ながら、敗色濃厚である

▼政府は、対策分科会が見直しを求めたにもかかわらず、この間「Go To トラベル」を続けてきた。経済をまわす効果があったにせよ、守るべき時に国民にちぐはぐなメッセージを送ることにならなかったか、疑問は残ろう。停止が決まり、今は業界から悲鳴が上がる

▼われらが大将ならぬ菅首相は、出すべき時に、国民への言葉が乏しいようだ。出てはいけない食事会にも出た。どうもちぐはぐである

▼相撲の立行司、木村庄之助が代々受け継いできた軍配には「知進知退」の語句が書かれているそうだ。進むを知り、退くを知る。やはり勝負の世界で、重要なことらしい。まだ大一番は続く。反省を生かさなければならないだろう。



「人は動かじ」(2020年12月18日配信『南日本新聞』-「南風録」)

「して見せて、言って聞かせて、させてみる」。江戸中期の米沢藩主で名君と呼ばれる上杉鷹山(ようざん)の言葉である。倹約の励行をはじめ、率先垂範して藩政改革を推し進めた。

 連合艦隊司令長官の山本五十六も鷹山と似た言葉の後ろに「ほめてやらねば、人は動かじ」と続く名言を残している。民衆や部下に苦労させるなら、自ら手本を示し、成果を一緒に喜ぶ-。リーダーの心得だろう。

 菅義偉首相は先人たちの忠言を心得ていなかったとみえる。新型コロナの感染拡大を食い止めようと「会食は4人以下」と呼び掛けていながら8人の会食に参加した。悪い手本を示したようなものだ。

 東京・銀座のステーキ店に著名人や自民党の二階俊博幹事長らと集い、マスクも着けず野球談議に花を咲かせたという。情報を広く集めることも大事だが、「Go To トラベル」の全国一時停止を表明したその夜である。

 泣く泣く忘年会を諦めたり、高齢者との接触を控えたりする国民の姿は頭をよぎらなかったのだろうか。「勝負の3週間」は目立った成果もなく過ぎ去った。国民の多くが感染防止に努めたが、新規感染者数は高止まりし、きのうは東京で800人を超えた。

 菅政権の発足から100日足らずなのに、支持率は急落している。まずは「して見せて」危機感を示さなければ、いくら号令をかけても思うように「人は動かじ」である。



[菅内閣3カ月] 問われる危機管理能力(2020年12月18日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 国の緊急時に必要なのはリーダーの説得力ある言動と発信力だ。

 新型コロナウイルス感染対策を重要課題に掲げてスタートした菅内閣の危機管理能力には大いに疑問符がつく。

 政府の対策分科会が、観光支援事業「Go To トラベル」の見直しを再三求めてきたにもかかわらず、菅義偉首相は当初、「感染拡大の証拠はない」と拒否していた。

 感染対策と経済回復を両立させる姿勢を崩さずにきたが、「第3波」の勢いが増す中、年末年始を控える直前で一転、Go Toの一時停止を決めた。「最大限の防止措置」としたが、泥縄式の対応と言わざるを得ない。

 国民に5人以上の会食の自粛を求めているさなかに、首相自らが15人前後の忘年会に参加していたことも明らかになった。「国民の誤解を招くという意味で真摯(しんし)に反省している」と述べたが、説得力はない。政府指針と矛盾する行動の説明も果たしていない。

 さらに食事中でもマスクを着用する「静かなマスク会食」の実践を呼び掛けていたが、関係者によると会食中にマスクは着けていなかったという。コロナ対応のちぐはぐさが顕著になっている。そこから、コロナ禍を「国難」と位置付ける危機感は一切伝わってこない。

 共同通信の調査によると12月の菅内閣の支持率は50・3%と前月から急落した。コロナ対策は55・5%が「評価しない」と厳しい目を向ける。

 暮らしや経済が大打撃を受ける中、首相自ら国民の不安や疑問に答えるよう説明責任を果たすべきだ。

■    ■

 菅内閣のコロナ対策を巡っては、地方自治体との意思疎通の不十分さや温度差も浮き彫りになった。

 Go To事業の運用見直しなどについて、全国知事会からは、各都道府県知事に対応を丸投げされたことへの懸念や反発もあった。不明確な運用基準や責任の所在など、国のリーダーシップを求める意見も上がった。

 Go To一時停止では、地方から「もっと早く決定してほしかった」「方針の振れ幅が大きい」など戸惑いもあり、自治体との意思疎通や情報共有に課題も残った。

 ドイツのメルケル首相は、コロナによる1日当たりの死者が過去最多となった際、議会の演説で感情をあらわにして危機感を訴えた。

 努力が不十分だったと率直に認めた上で、拳を振り上げながら感染防止と対策を呼び掛ける姿からはリーダーの覚悟と真剣さが伝わった。

■    ■

 菅内閣が発足して3カ月が過ぎた。この間、目立ったのは首相が国民の疑問に丁寧に答えないということだ。

 日本学術会議の会員任命拒否を巡っては、いまだ納得できる説明をしていない。

 元農相らが鶏卵生産大手から現金を受け取っていたとされる疑惑についても、言及を避けるなど真相解明に努める姿勢は見えない。

 これまで官邸で開いた記者会見はわずか2回だけだ。十分な説明を尽くさずして「国民のために働く内閣」とはとても言えない。



「誤解」しているのは菅首相ではないのか(2020年12月18日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★16日、官房長官・加藤勝信は首相・菅義偉の大人数での会食について「国民の誤解を招いたのではないかという指摘は真摯(しんし)に受け止めなければならない」。その後、首相も「他の方との距離は十分にあったが国民の誤解を招くという意味においては真摯に反省している」。示し合わせたような発言、いや原稿だが、誤解というのはある事実について間違った理解や解釈をすること。相手の言葉などの意味を取り違えることだ。つまり、私(首相)は間違ったことは言っていないが、国民の方が思い違いしたということになる。安倍政権でも同様の表現が使われてきたが、もうこの政治用語は国民に通用しない。

★結局この発想が「自分は特別だが国民はダメよ」と言っているようなもの。いわゆる上級国民思考ではないのか。勝負の3週間に敗北した菅政権。国民の方がずっと分かっている。そして我慢している。誤解しているのは菅政権自体ではないのか。庶民派や苦労人というイメージで国民の前に出てきた首相は、高級ホテルでの食事が日課になった。16日、大阪のマンションで母娘の餓死が報じられた。一国の首相のぜいたくな食事をとがめたいのではない。この現代の日本で餓死者が出ることに首相として何が足りないかを考えてほしい。国民の生命と財産を守ることが首相の仕事ではないか。

★ネットでは「アベノマスクからガースートラブル」「誤解ではなく二階」などの皮肉があふれている。首相が懸命に働いている姿を国民は知らない。知己のある人たちとの会食や、官界、財界などの官邸への来客をこなしていても、首相の言う「仕事をしている」ことにはならない。多くの人の幅広い声を聴くのも結構だが、医療専門家たちの提言を聞かず、国民の声を聴かなければ仕事にならないはずだ。






1994年10月8日のプロ野球セ・リーグ…(2020年12月17日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 1994年10月8日のプロ野球セ・リーグ中日対巨人戦は球史に残る一戦として語り継がれている。1試合を残して両チームが同率首位に並び、史上初の勝った方が優勝する直接対決だった

▼試合前、巨人の長嶋茂雄監督は緊張する選手たちに叫んだ。「俺たちは絶対勝つ」。その一言で一丸となったチームは快勝した。指揮官の勝負への飽くなき執念が選手たちの不安を解消し、勇気と自信を与えた

▼一国の指揮官たる菅義偉首相には、新型コロナウイルス感染拡大防止に懸ける気概を国民に伝え、理解してもらうつもりはあったのだろうか。きのうまでの「勝負の3週間」に開いた記者会見は臨時国会会期末の1回だけだった

▼しかも、インターネット番組で自らを「ガースー」と呼んだことや、度重なる夜の会食が緊張感を欠いていると批判される始末。「勝負」の掛け声もむなしく、「笛吹けども踊らず」状態が続き、新規感染者数をはじめ感染状況は悪化の一途をたどった

▼とはいえ、遅きに失したものの、「Go To トラベル」事業は年末年始に全面停止されることになった。ならば、できるだけ静かに過ごして、何としても感染拡大を抑え込むしかない。勝負の行方が決まるのは先のようだし、指揮官に頼らなくても勝つことはある。

菅内閣3カ月 議論と説明が足りない(2020年12月17日配信『東京新聞』-「社説」)

 菅内閣発足から3カ月がたった。滑り出しは順調だったが、新型コロナウイルスの感染拡大は止められず、内閣支持率は急落した。議論と説明を尽くす姿勢の欠如も政権不信に拍車をかけている。

 菅義偉首相は「国民のために働く内閣をつくりたい」と述べていた。安倍晋三前政権のように強い発信力でアピールするのではなく、眼前の懸案に地道に取り組み、実績を積み重ねたいということだったのだろう。

 しかし、菅内閣が懸案処理に力を発揮できたかという問いには、残念ながら否定的に答えざるを得ない。理由は新型コロナの感染拡大だ。

 菅氏は初の所信表明演説で、新型コロナの感染拡大と経済低迷を「国難」と位置付け「国民の命と健康を守り抜く」と強調したものの、感染拡大の現状を見る限り、対応が的確だったとは言い難い。

 政府の対策分科会は観光支援事業GoToトラベルを見直すよう再三求めてきたにもかかわらず、首相は「トラベルが感染を広げている証拠はない」と拒否。年末年始に限って全国での一斉停止をようやく決めたのは十四日だった。

 そこからうかがえるのは、自らの考えに固執し、幅広く意見を聞いて議論を重ねるとともに、国民への説明を尽くすという民主主義の政治プロセスの欠如である。

 日本学術会議推薦の会員候補のうち6人の任命を拒んだ問題も同様だ。首相の任命を形式的とし、裁量を認めない従来の法解釈の変更に当たるが、菅氏は「総合的、俯瞰(ふかん)的な活動を確保する観点から判断した」と述べるだけで、国会での詳細な説明を拒んできた。

 「桜を見る会」前日、安倍氏の後援会が主催した夕食会での会費補填(ほてん)問題や、西川公也、吉川貴盛両元農相が鶏卵大手から現金を受領した疑惑は国会議員の「政治とカネ」に関わる問題であり、自民党総裁としても真相解明に努めるべきだが、国会での説明を拒み、関係者の国会招致にも消極的だ。

 菅氏は11日にインターネット番組で「ガースーです」と自己紹介したことや、GoToトラベルの全国一斉停止を表明した14日夜に大人数で会食したことが批判されている。それら自体、適切とはいえないが、より深刻なことは、秘書官ら周囲に止める人がいなかったことだろう。

 菅氏は官房長官時代から人事権によって官僚を動かす政治手法を駆使してきた。それが菅氏に進言できない空気をまん延させているとしたら、問題はより深刻だ。



本気度見えない「ガースーです」(2020年12月17日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 本気で勝負するなら、トップが自らの言葉と行動で決意の程を示すべきだった。新型コロナの感染防止に集中的な対策を訴えた「勝負の3週間」だ

▼政府が笛を吹けど、繁華街や観光地の人出はあまり減らなかった。感染者は増え続け、医療は逼迫(ひっぱく)した。自制を求める一方でGoTo事業を続けた政策の矛盾が失敗の要因だろう

▼常識で考えても、おしゃべりを慎む旅行は楽しくなかろう。むしろ旅先では、はめを外しがち。だが、事業継続にこだわる菅義偉首相は「感染拡大の主要な原因とのエビデンス(証拠)はない」と言い張った。仮にそうだとしても、政府が旅行や外食を税金で推奨している事実が国民の心のたがを緩ませたのは否定できまい

▼では、トップの本気度は。国会答弁や記者会見は目を伏せて原稿を棒読み。専門家の意見にも耳を貸さない。けれど内閣支持率が急落すると「Go To トラベル」の全国一斉停止を即断。政権の危機というエビデンスには敏感のようだ

▼こちらは心を揺さぶられる演説。「1日590人の死は受け入れられない」。冷静なドイツのメルケル首相が感情をむき出しにし、クリスマス期の対策強化への理解を国民に求めた

▼片や、わが首相。「勝負」の期間中にネット番組で「こんにちは、ガースーです」とおどけてみせた。一斉停止を発表した夜に大人数で「忘年会」とも報じられた。国民の目にどう映ろう。



庶民の祈り(2020年12月17日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 戦前の日本には徴兵制があった。昭和の軍国主義の時代と違って、明治大正はまだ締めつけがゆるく、国民はあの手この手で徴兵のがれを企てた。大正の初め、そんな男たちが全国でいちばん多かった大阪には「徴兵よけ稲荷」まであり、参拝者が絶えなかったという

◆先年亡くなった作家おせいさん、田辺聖子さんの『乗り換えの多い旅』に教えられた。もっとも、そのお守りを肌につけているのが徴兵検査で見つかり、兵役送りとなった者も少なくなかった

◆13日の「正月事始め」あたりから近所の神社で、今年の古札を納めにくる人を見かけるようになった。初詣の混雑を避け、年内にお参りをすませる「幸先詣(さいさきもうで)」というやつだろうか。すでに鈴緒(すずお)も巻き上げられ、ふれることができないようにしてあった

◆初詣の習慣は明治時代、鉄道網の広がりとともに、沿線の神社への「お正月のレジャー」として定着していった。年明けの閑散期に乗客を増やそうともくろんだ知恵者がいたらしい。身近なところで思い思いにかしわ手を打つ、それが本来の参拝の姿かもしれない

◆兵役ならぬ疫病をのがれようと、こうして庶民が忠実に「密」を避けて一心に祈っているとき、お上は大勢でステーキの会食とか。おせいさんの著作には、こんなせりふもある。〈人生は非常識の連続や〉。神も仏もない。



各界の大御所集め著名人候補の人選(2020年12月17日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★衆院議員宿舎で生活し、公邸に引っ越さない首相・菅義偉。前首相・安倍晋三も渋谷区の自宅を好んだが、2人とも危機管理を売り物にしている歴代首相が公邸に住みたがらないことを絵解きしてくれる新聞はない。首相はおのずと外食が増え、ホテルでの朝食はもう日課になったと言っていい。4人以上での会食は避けよと国民に言いながら、連日ステーキの会食を続けるのは重要な会食か、それともストレス解消の食事か。

★14日夕方の「Go To トラベル一時停止」発表は衝撃だったが、この後首相は幹事長・二階俊博、同代理・林幹雄、ソフトバンク球団会長・王貞治、俳優・杉良太郎、タレント・みのもんた、政治評論家・森田実ら、もう数人いたらしいがステーキを楽しんだ。出席者の1人は「忘年会だ」と発言したことからも「3密会食」の批判を受けた。翌15日にも首相はフジテレビ会長・宮内正喜、同社社長・遠藤龍之介、東京五輪・パラリンピック組織委員会理事・高橋治之とこちらもステーキの会食だ。

★この批判に16日の衆院内閣委員会で経済再生相・西村康稔は「一律に5人以上は駄目だと申し上げているわけではない。そのような強制力も(政府には)ない。ただ長時間、大人数の会食はリスクが高いので、できるだけ控えていただきたい」などと、首相らをかばった。

★自民党関係者が言う。「両日の顔触れを見たらピンときたよ。プロ野球、アマスポーツ界、芸能界、テレビ業界などの大御所が集ったのは、次期衆院選の著名人目玉候補の人選が始まったんだろう。各界の候補者のリストアップだろう。幹事長と代理がいるのも説明がつく。党本部に呼んで話せないからね。これは会食しか手がなかった」。この時ばかりは、外食大好きがあだとなった。



各界の大御所集め著名人候補の人選(2020年12月17日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★衆院議員宿舎で生活し、公邸に引っ越さない首相・菅義偉。前首相・安倍晋三も渋谷区の自宅を好んだが、2人とも危機管理を売り物にしている歴代首相が公邸に住みたがらないことを絵解きしてくれる新聞はない。首相はおのずと外食が増え、ホテルでの朝食はもう日課になったと言っていい。4人以上での会食は避けよと国民に言いながら、連日ステーキの会食を続けるのは重要な会食か、それともストレス解消の食事か。

★14日夕方の「Go To トラベル一時停止」発表は衝撃だったが、この後首相は幹事長・二階俊博、同代理・林幹雄、ソフトバンク球団会長・王貞治、俳優・杉良太郎、タレント・みのもんた、政治評論家・森田実ら、もう数人いたらしいがステーキを楽しんだ。出席者の1人は「忘年会だ」と発言したことからも「3密会食」の批判を受けた。翌15日にも首相はフジテレビ会長・宮内正喜、同社社長・遠藤龍之介、東京五輪・パラリンピック組織委員会理事・高橋治之とこちらもステーキの会食だ。

★この批判に16日の衆院内閣委員会で経済再生相・西村康稔は「一律に5人以上は駄目だと申し上げているわけではない。そのような強制力も(政府には)ない。ただ長時間、大人数の会食はリスクが高いので、できるだけ控えていただきたい」などと、首相らをかばった。

★自民党関係者が言う。「両日の顔触れを見たらピンときたよ。プロ野球、アマスポーツ界、芸能界、テレビ業界などの大御所が集ったのは、次期衆院選の著名人目玉候補の人選が始まったんだろう。各界の候補者のリストアップだろう。幹事長と代理がいるのも説明がつく。党本部に呼んで話せないからね。これは会食しか手がなかった」。この時ばかりは、外食大好きがあだとなった。



「菅じゃもう無理」錯乱首相からどんどん人が離れている(2020年12月17日配信『日刊ゲンダイ』)

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国民の7割が利用もしない世紀の愚策に1兆円追加の予算措置、就任3カ月で剥がれた化けの皮

「他の方との距離は十分にあったが、誤解を招くという意味においては真摯に反省しております」

 下校途中の買い食いは禁じられているのに、ガキ大将にノコノコついていったのがバレた小学生みたいな言い訳だ。新型コロナウイルスの感染再拡大を巡り、政府が「勝負の3週間」と国民にハッパをかけた最終日の16日、ぶら下がり取材に応じた菅首相はこんな情けない釈明に追われていた。肝いりの「Go To トラベル」の全国一斉停止(28日から来年1月11日まで)を表明した14日、自民党の二階幹事長ら8人で「夜のステーキ会食」を楽しんだことが物議を醸したためだ。その前段、「先週末に3000人を超える(新規)感染者があった。高止まりの状況を真摯に受け止めている。専門家からは、飲食の場面は感染リスクが高いと指摘されている」と眉をひそめていたのだから、その言動は支離滅裂。口先だけにもほどがある。

16日の感染状況も深刻だった。東京都では過去最多の678人の新規感染が判明。全国の新規感染者は過去2番目に多い2994人を数え、最多に並ぶ53人が死亡した。さらに、17日は新たに800人を超える感染者が確認され、2日連続で過去最多を更新した。

 北は北海道、南は沖縄まで14都道府県が飲食店に対して営業時間の短縮や休業、酒類提供の制限を要請中。広島市を目的とする旅行は一斉停止を待たず、トラベル事業の追加対象外が決まった。「Go To イート」「Go To イベント」もトラベル事業と同期間は全国一斉停止。「感染拡大防止と経済社会活動を両立させる」と菅がいれ込んでいた事業が次々に頓挫に追い込まれているが、錯乱はGo Toにとどまらない。

この期に及んでも利権と思惑丸出し

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イート事業も一斉停止

 閣議決定された今年度第3次補正予算案は総額21兆8353億円。そのうち新型コロナ向けの追加経済対策に対応するのは19兆1761億円とされているが、本来の目的であるはずの新型コロナ拡大防止策に投じられるのは、たったの2割。

 医療機関向け緊急包括支援交付金の増額に1兆3011億円、ワクチン接種体制整備に5736億円、時短営業への協力金に使える地方創生臨時交付金の増額に1兆5000億円……。締めて4兆3581億円に過ぎない。菅政権の「生みの親」でもある二階が絡む国土強靱化などに3兆1414億円が充てられるほか、ポストコロナに向けた経済構造転換と称した11兆6766億円はドサクサ紛れの火事場ドロボーがアリアリだ。菅が新たに看板に加えた脱炭素化を支援する基金創設に2兆円が回され、トラベル事業とイート事業の延長にそれぞれ1兆311億円、515億円が計上されている。

毎日新聞の世論調査(12日実施)では、トラベル事業を「利用したことはない」との回答が68%に上っていた。国民の7割が利用もしていない世紀の愚策に追加で1兆円超の予算措置。コトここに至っても、「今だけカネだけ自分だけ」。菅は支持基盤の観光業界のためだけでなく、二階や利権に群がる連中に忖度しているのだ。

 政治ジャーナリストの角谷浩一氏は言う。

「新型コロナ関連の数字は悪化傾向に歯止めがかからず、各地で医療体制が逼迫し始めている。北海道旭川市や大阪市には自衛隊の看護師が派遣される危機的状況です。この異常事態を察知していないのは、官邸と自民党中枢だけなのではないか。3次補正を賄うのに国債を22兆3950億円も追加発行し、フタをあければ不要不急策ばかり。そもそも、恩恵が一部に偏る経済政策なんて政策とは言えません。ネット上では〈アベノマスクの次はガースートラベルか〉などと呆れられている。この期に及んでも利権と思惑の丸出し。それを国民に見透かされて恥ずかしくないのでしょうか」

16日は菅政権誕生から3カ月を迎えた節目でもあった。女房役の加藤官房長官は会見で「国民のために働く内閣として、国民目線で当たり前のことが当たり前にできるよう、一つ一つの課題に取り組んできた3カ月だと考えている」などと歯の浮くような模範解答を並べていたが、党内からも「やることが中途半端」「いまさらトラベル停止で内閣支持率は戻らない」などと批判ゾロゾロ。「菅じゃやっぱり無理だった」と誰もが口にし始めている。

■支持率急落でさらに遠のく定額給付

 当たり前のことが分からない、国民よりも自分優先、政策のトンチンカンに霞が関は疲弊し、どんどん人が離れている。特にひどかったのが、やはりトラベル事業の全国一時停止だ。所管の観光庁に方針が伝えられたのは、菅が表明する直前。そのため赤羽国交相が東京都を目的地とする旅行について「14日から一時停止」と誤って発表し、半日ほど過ぎた翌日明け方に変更点を発表する突貫工事だった。このドタバタをして、菅による「急転直下の政治決断」との解説もあるが、“敗戦処理”に駆り出される方はたまらない。

国交省は旅行会社や宿泊施設などの事業者向けに電話の特別相談窓口を地方出先機関に設置。書き入れ時の年末年始に人の動きが止まれば、経営のさらなる悪化は必至だからだ。雇用維持などの相談に応じるほか、政府の雇用調整助成金や融資支援といった制度も紹介するという。経産省の出先機関である経済産業局や厚労省の都道府県労働局とも連携するというが、イートやイベント事業も中止で仕事は山積みだろう。「補償」という名の血税乱費も生じる。科学的知見に目もくれず、専門家の意見に耳を傾けず、独断専行で突っ走ってきた結果がこうだ。

 高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう言う。

「菅首相が肝いり事業への固執で感染再拡大に拍車をかけた。そればかりでなく、引き時を見誤まったことで、恩恵を期待していた関連業界の書き入れ時に人の動きを止めてしまい、かえって大きな打撃を与えつつある。冬が迫るにつれ、感染が再燃する可能性が高いのは分かっていたことです。それなのに、根拠のない楽観論で感染を抑え込めるとタカをくくっていた。特別定額給付金の2次、3次支給に税金を投入した方がよほど効果を上げたのではないか。金銭面の支援だけでなく、政府に見捨てられていないという安心感にもつながったはずです。しかし、菅首相は給付金を政権浮揚の最後の切り札だと考えているのでしょう。そのカードを切るのは解散・総選挙の間際でなければ意味がない。となると、支持率が急落し、解散を打てなくなった菅首相が給付金を出し惜しむ。給与補償や事業継続の支援で社会経済活動の維持に腐心する欧州との違いは歴然です。無能な政権に場当たりを許していたら、人災は広がる一方です」

立憲民主など野党4党は3次補正予算案を巡り、新型コロナ対策に直接関係のない事業が盛り込まれているとして、首相が出席する予算委員会集中審議を求めたが、自民は案の定の難色。閉会中審査の23、24両日実施でまとまった。政権発足から100日間はお手並みを拝見するハネムーン期間は間もなく終わる。マトモな新型コロナ対応は待ったなしだ。政権のデタラメを止められなければ、野党にも厳しい目が向けられることになる。






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