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池田龍雄氏死去 受け止めたい反戦の魂(2020年12月17日配信『佐賀新聞』-「論説」)

 暮れも押し迫る中、元特攻隊員の画家・池田龍雄さん=伊万里市出身、東京都練馬区=の訃報が飛び込んできた。享年92。17歳の誕生日に終戦を迎えた少年はやがて「アヴァンギャルドの旗手」と呼ばれた。次々に前衛表現を打ち立てる、反戦・反権力に貫かれた生涯だった。

 池田さんは1928年生まれ。伊万里商業学校を経て、飛行予科練習生として鹿児島海軍航空隊に入隊。特攻隊に編入され、茨城県の霞ケ浦航空隊で終戦を迎えた。

 「国はいつもひきょうだ。本人が希望したんだ、自己責任だという形を取りたがる。予科練に入った時もそうだった」。生前、都内の自宅を訪ねたが、インタビューに応じた池田さんの語り口は、前日の出来事を語っているかのように生々しかった。

 予科練入隊当時は、まだ14歳。学校で、黙想の時間に担任が言った。「学校の名誉のために予科練を志願する者は今、席を立てっ」。わずか10秒の沈黙。友人にも家族にも、誰に相談することもできない。「誰もいかないわけにはいかないよなぁ」。覚悟を決めて、いすを蹴った。

 いわば、自己犠牲の精神からやむなく選んだ特攻隊員の道だったはずが、戦後になると、社会の価値観は180度反転。元特攻隊員の経歴は、思いがけない形で立ちはだかる。「軍国主義者」のレッテルが貼られ、教師を目指して入った佐賀師範学校で、元特攻隊員の経歴が問題視される。退学を迫られ「とても割り切れなかった」と振り返った。

 その一方で「あれがなければ画家にならなかったかもしれない」とも。教師の夢を断たれた池田さんは、多摩造形芸術専門学校(現・多摩美術大学)に入学する。

 戦後まもない48年には「アヴァンギャルド」(前衛芸術)運動に身を投じる。戦後日本の新しい芸術を切り開こうとしていた岡本太郎(1911~96年)と、『復興期の精神』で知られる作家・文芸評論家の花田清輝(09~74年)らとともに「アヴァンギャルド芸術研究会」のメンバーとして活動を始める。

 その創作活動は、常に反戦・反権力の立場から行われた。代表作の「ルポルタージュ絵画」では、第五福竜丸事件や三井三池炭鉱争議など政治や社会の問題をテーマに正面から向き合い続けた。

 著書で池田さんは「敗戦によって受けた心の傷は、普段は猜疑心-手酷く裏切られたがゆえに決して消えることのないしぶとい猜疑心となって、いつも胸の奥にわだかまっているのだが、何かのはずみにそれが、冷たいニヒリズムの衣装を纏って現れたり、逆に、熱くなった尻をまくって居直ったりするのである」(『池田龍雄の発言~絵画のうしろにあるもの』)と述懐してもいる。

 池田さんに「僕らを傷つけたもの 1945年の記憶」という作品がある。空襲の焼け野原で頭を抱えて逃げ惑う群衆や、竹やりを手に爆撃機に立ち向かう人が描かれている。画面は重く暗く、やりきれない気持ちにさせられる。「記憶を風化させてはならない。わたしはそのような風化をおそれて、この絵を描いた」

 戦後75年の暮れ。池田さんが生涯をかけて託したメッセージを、私たちはしっかりと受け止めなければならない。(古賀史生)




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