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菅総理が言う「自助、共助、公助」…視覚障害にも公助は最後!?(2020年12月17日配信『読売新聞(ヨミドクター)』)

Dr.若倉の目の癒やし相談室 若倉雅登

「自助、共助、公助」

 菅新首相が国づくりの政策理念として強調したフレーズです。

 実は古くから使われていた日本語で、三つの単語の順番に重要な意味があるのではなく、多分、おのおのは文法的には同格なのでしょう。

 ですが、この順番に反応した意見があちこちで出ました。また、順番よりも、近年の日本では核家族化が進むなどにより共助の力が落ちていることを指摘する意見も聞きます。

 かつて私は拙著「三流になった日本の医療」(PHP研究所)で、日本は戦後の大事な歴史の岐路で、福祉国家としての道を歩む方針を取らなかったことを述べました、

 つまり、スカンジナビアの国々のように、比較的高い税金を国民に課すかわりに、福祉を充実させ、国民の面倒を生涯みるという福祉国家への国づくりをしようとはしなかったのです。

 菅首相が言葉の順番をどれほど意識して使用したかは測れませんが、「公助」が最後でも特別、違和感を持たなかったのは、そういう事情があるからかもしれません。自助、共助でだめなら、「必ず国が責任をもって守ってくれる国づくり」とテレビ番組で本人が説明していることから、まず最初に「公助」が出動するというイメージではないのは確かだと思われます。

何よりも先に「公助」を

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 さて、病人や障害者は、自助がほぼできなくなった限界状態といえます。だから、病院に行ったり、公的救済を求めたりするわけです。

 進行する病気や後遺症を持ちながら生きていかなければならない方は、眼科領域でも大勢おられます。具体的な病名を挙げればきりがありませんが、緑内障は進行性ですし、再発を繰り返し、後遺症を残す黄斑部(網膜の中央部)や視神経の病気はとても多くあります。

 そういう方々にとっては、その不自由さを克服し、社会生活に継続的に参加したり、復帰したりするには、さまざまな補助具やリハビリテーション(機能訓練)、心のケアが必要です。

 そこでは、何よりも先に「公助」が出動しなければなりません。

 英国では「アイ・クリニック・リエゾン・オフィサー」(ECLO)という専門職の方が眼科の外来に常駐しています。ECLOは、医師または患者本人から低視力や視覚障害のために紹介や相談があると、その不都合さや生活状況などを評価したうえで、眼科指導医による証明を得て行政に橋渡しをします。

 行政は通常5日以内に当事者に連絡し、求めがあれば視覚リハビリテーションの専門家が当事者宅を訪問し、公助としてのプログラムを進めます。

 当事者が申請しないと何も動かず、しかも、しばしば却下される事態すら起こる日本の申請主義とは異なり、行政側から進んで困っている人を見つけるという大変先進的な仕組みです。

 日本でただ一人、ECLOの資格を持つ加茂純子医師(甲府共立病院眼科)は「日本の中途失明者救済制度は複雑で、医師にも患者にもわかりにくい。行政は身体障害者手帳を発行してもその後のプログラムは何も持ち合わせていない」と、公助の入り口の簡素化と内容の充実を訴えています。

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若倉雅登(わかくら まさと)

 井上眼科病院(東京・御茶ノ水)名誉院長
 1949年、東京生まれ。80年、北里大学大学院博士課程修了。北里大学助教授を経て、2002年、井上眼科病院院長。12年4月から同病院名誉院長。NPO法人目と心の健康相談室副理事長。神経眼科、心療眼科を専門として予約診療をしているほか、講演、著作、相談室や患者会などでのボランティア活動でも活躍中。主な著書に「目の異常、そのとき」(人間と歴史社)、「健康は眼にきけ」「絶望からはじまる患者力」「医者で苦労する人、しない人」(以上、春秋社)、「心療眼科医が教える その目の不調は脳が原因」(集英社新書)など多数。明治期の女性医師を描いた「茅花つばな流しの診療所」「蓮花谷話譚れんげだにわたん」(以上、青志社)などの小説もある。




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Author:gogotamu2019
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