FC2ブログ

記事一覧

(論)建設アスベスト(石綿)賠償に関する論説(2020年12月18・19・20・22・23・26・29・31・2021年1月13・2月2・12日)

「石綿」で建材会社敗訴 救済の仕組み作り直ちに(2021年2月12配信『毎日新聞』-「社説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、病気になった元作業員らが起こした裁判で、建材メーカーへの賠償命令が確定した。

 計約3億円の賠償を命じていた大阪高裁判決について、最高裁が国とメーカー8社の上告を退ける決定を出した。

 国による賠償は昨年12月、同種裁判の最高裁決定でも認められている。責任が確定した以上、国とメーカーは速やかに被害者の救済に乗り出すべきだ。

 全国で起こされた裁判では、これまでに出た15件の1、2審判決のうち、14件で国の責任が認定された。一方で、メーカーへの賠償命令は8件にとどまっている。

 どのメーカーの建材に含まれる石綿で被害を受けたか、特定するのが困難なためだ。

 建設作業員は数多くの現場で働いている。石綿の被害は「静かな時限爆弾」と呼ばれ、吸い込んでから数十年たって中皮腫や肺がんなどを発症することがある。

 大阪高裁判決は、メーカーが石綿の危険性や防護対策を建材に表示すべきだったにもかかわらず、怠っていたと認定した。

 その上で、一定の市場シェアを持つメーカーの建材ならば、原告が働いた現場でも使われていた可能性が高いと指摘して、賠償を命じていた。

 こうした考え方を支持した最高裁の決定は、積極的に被害者の救済を図ろうとしたものだろう。

 石綿の危険性は早くから指摘されていたが、安価で耐火性に優れるため、建設需要が高まる中、メーカーは建材として広く流通させてきた。国も長らく規制せずに放置し、被害を拡大させた。

 提訴した元作業員は全国で900人を超えるが、既に600人以上が死亡した。近年も毎年500人前後の建設関係者が、石綿による健康被害を認められている。

 原告側は国とメーカーが基金をつくり、被害者に補償する制度を提案している。メーカーに対しては、石綿の使用量に応じて資金を拠出するよう求めている。

 田村憲久厚生労働相は、解決に向けた協議の場を設ける意向を示したが、いまだに具体的な動きは見えない。メーカーも参加して、救済の仕組み作りを急がなければならない。





石綿被害の補償 国と企業はただちに動け(2021年2月2日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害について、国と建材メーカーが責任を免れないことが明確になった。幅広く被害を補償する仕組みを一日も早く設けなくてはならない。

 肺がんや中皮腫を発症した元建設作業員らが損害賠償を求めた裁判で、最高裁が国とメーカーの上告を退ける決定を出した。昨年12月に別の訴訟で国の賠償責任を確定させる決定を出したのに続き、今回はメーカーの責任も広く認めた高裁の判断が確定した。

 大工、左官らの作業員はいくつもの現場で働く上、職種によって扱う建材も異なる。どの製品が原因かを特定するのは困難だが、二審の大阪高裁判決は、一定の市場占有率があったメーカーは賠償責任を負うと認定した。

 また、雇用された労働者だけでなく、個人で仕事を請け負う「一人親方」を含めて国の賠償責任を認めている。理不尽な線引きをせず、現場の実態を踏まえて被害救済に間口を開いた司法判断が確定した意義は大きい。

 石綿は安価で耐火性や断熱性、防音に優れ、天井や壁の建材として高度経済成長期から盛んに使われた。発がん性が早くから指摘されながら規制は遅れ、使用が原則禁止されたのは2006年だ。

 石綿を扱っていた工場での被害は、最高裁が14年の判決で国の責任を認め、政府は賠償を進めてきた。一方、建設現場の被害は別の問題として取り残された。

 肺がんや中皮腫を発症するまでに数十年を経ることが多く、労災の認定を受けるのは容易でない。別に救済制度が設けられはしたものの、国の責任が前提ではなく、給付額の水準は低い。

 発症すると、多くは数年で死亡する。全国9地裁で千人以上が裁判を起こしているが、提訴後に亡くなった人が少なくない。対策を怠って被害を拡大させた上、補償を求める訴えに背を向け続けてきた国とメーカーの姿勢は厳しく問われなければならない。

 裁判に加わった人のほかにも被害者は多い。発症する人は今後も増える。原告や支援団体は、国と関連企業が出資して補償基金を設けることを提案してきた。政府は正面から受けとめ、ただちに補償制度の実現に動くべきだ。

 加えて見落とせないのは、石綿の建材を使った建物の解体がこれから増えることだ。飛散防止を怠ったずさんな工事は既に各地で相次いでいる。新たな被害を防ぐ規制や対策を徹底することも政府の重要な責務である。





建設石綿訴訟 国は速やかに救済を図れ(2021年1月13日配信『山陽新聞』-「社説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、中皮腫などの健康被害を受けた元労働者らが国などに損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁は先月、国の上告を退けた。規制を怠った国の責任を認め、国に賠償を命じた二審東京高裁判決が確定した。

 全国9地裁に千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」で国への賠償命令が確定したのは初めてだ。今回の原告である元労働者らが提訴してから12年半で、新たに100人以上が亡くなっている。国は最高裁の決定を重く受け止め、被害者を救済する制度の拡充に早急に取り組まなければならない。

 石綿は安価で断熱、耐火性に優れ、建築材料に広く使われた。だが、粉じんを吸い込むと中皮腫や肺がんの原因になると判明し、規制が進んだ。潜伏期間は数十年に及ぶ場合もあり、発症すれば多くは数年で死亡するため「静かな時限爆弾」と呼ばれる。

 石綿による健康被害者の救済策としては、労災認定のほか、2006年施行の石綿健康被害救済法に基づく給付金などがある。だが、救済範囲の不十分さや給付水準の低さが指摘されている。

 今回確定した18年3月の二審東京高裁判決は、医学的知見の集積を踏まえて「国は遅くとも1975年10月には、防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだった」と判断。規制権限の行使を怠った国の賠償責任を認めた。

 さらに、企業に雇われた労働者だけでなく「一人親方」と呼ばれる個人事業主も救済対象に加えていることにも注目したい。一人親方について国側は、労働安全衛生法で保護される「労働者」には当たらないと主張した。だが、判決は「建設現場で重要な地位を占め、保護の対象になる」と判断した。

 石綿関連疾患で労災認定を受けた人は、建設現場や石綿工場などの労働者を合わせ2019年度までに1万7千人を超え、患者は毎年500人規模で増え続けている。建設業の割合は増加傾向にあり、19年度は6割近くを占める。最高裁が今回、国の賠償責任が及ぶ時期や対象者について幅広く救済する方向を示した意義は大きい。

 石綿工場労働者の救済を巡っては、最高裁は14年の泉南アスベスト訴訟で、国の賠償責任を初めて認めた。これを受け厚生労働省は、工場労働者側が提訴し一定の条件を満たせば、和解に応じて賠償金を払う方針を示した。だが、裁判の負担が大きいことなどから提訴は進まず、救済は滞っているのが実情だ。

 建設石綿訴訟の原告側は、健康被害者が裁判を起こさなくても迅速に救済が受けられる基金制度の創設を提案している。原告らの「命があるうちに解決を」との訴えに国は真摯(しんし)に向き合うべきだ。被害実態に応じて確実に救済するための取り組みが急がれる。





建設石綿訴訟 被害者救済の制度拡充を急げ(2020年12月31日配信『読売新聞』-「社説」)

 アスベスト(石綿)の危険性を認識しながら対策を怠り、被害を拡大させた国の責任は重い。被害者を救済する制度を早急に拡充すべきだ。

 建設現場で石綿を吸い込み、中皮腫や肺がんになった元労働者らが、国と建材メーカーに損害賠償を求めた集団訴訟で、最高裁が国の上告を退けた。国に賠償を命じた東京高裁の判断が確定した。

 東京高裁は、国が遅くとも1975年には防じんマスクの着用などを義務づけるべきだったのに、規制を怠ったと認定した。個人で仕事を請け負う「一人親方」も、救済の対象に含めた。

 同種の訴訟は、全国で22件起きている。これまでの1、2審判決は、国の賠償責任が及ぶ時期や、一人親方の被害を救済対象に含めるかどうかが異なっていた。今回、被害者を幅広く救済する方向性が示されたことになる。

 安価で耐火性に優れる石綿は、70~90年代に大量に輸入された。これを建材メーカーが内外装や屋根の材料に使用した。建設現場で働く労働者は、石綿繊維を含む粉じんを吸い込んだとみられる。

 早くから健康への悪影響が指摘されていたが、国が石綿の使用を全面禁止したのは2006年で、欧米に大きく後れをとった。国民の健康と安全を軽視したと批判されても仕方があるまい。

 石綿による疾患は潜伏期間が長く、「静かな時限爆弾」と呼ばれる。吸い込んでから20~50年後に発症することもあり、被害者は今後さらに増える可能性がある。

 現在、被害者の救済制度は、労災認定のほか、06年に制定された石綿健康被害救済法に基づく給付金がある。だが、国や建材メーカーの賠償責任に基づく補償ではないため、給付水準は低い。

 原告側は、国と建材メーカーが基金をつくって被害者に補償することを提案している。原告団と面会した田村厚生労働相は「協議の場を設ける」と述べたという。

 建材メーカーの責任については、最高裁が21年春にも統一判断を示すとみられる。

 石綿が原因の労災認定は毎年約1000人に及ぶ。半数が建設労働者だ。裁判の負担は大きく、訴訟外で迅速に救済する仕組みを設けることが望ましいだろう。

 石綿が使われた建物は老朽化が進んでおり、解体のピークは30年頃になる見通しだ。

 解体現場で働く作業員が石綿を吸い込むことのないよう、国は改めて危険性を周知し、飛散防止策を徹底させる必要がある。





「石綿」最高裁決定(2020年12月29日配信『しんぶん赤旗』ー「社説」)

一刻も早く被害者を救済せよ

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、健康被害を起こした首都圏の元建設労働者と遺族らが国と建材メーカーに対し損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は国の上告を受理しない決定(14日付)を出しました。これで、国の責任を認め、約330人に計約22億8000万円の支払いを命じた判決が確定しました。建設アスベスト訴訟は全国各地でたたかわれていますが、最高裁が国の責任を認めたのは初めてです。

確定した国の賠償責任

 首都圏の建設アスベスト訴訟は2008年に東京地裁に起こされました。一審判決(12年)は、国が通達した石綿石材の警告表示は実効性を欠いており、国が規制権限を行使しなければ石綿粉じんへの暴露は避けられなかったと指摘し、国の責任を認めました。

 18年の東京高裁の二審判決は、一審で1981年以降としていた国の責任の期間を75年以降に広げました。また企業に雇われた労働者だけでなく、いわゆる「一人親方」への賠償も認めました。この判決が確定したことは極めて重要です。全ての被害者の救済とアスベスト対策の礎にもなる決定です。

 建材メーカーの責任については、一、二審とも認めませんでした。最高裁は、建材メーカーについての弁論を来年2月25日に行うと指定しました。原告・弁護団は、二審判決が見直される可能性が高いと指摘しています。

 建設アスベスト訴訟は全国各地で相次いで起こされ、原告は1100人以上です。国は地裁・高裁レベルでは14件連続で敗訴しています。国・建材メーカー双方の責任を認めた判決も少なくありません。司法判断の流れが、被害の救済を求めていることは明白です。原告の7割以上は裁判の途中で死去しています。解決を長引かせ、原告に苦渋の日々を押し付けている国と建材メーカーの責任は極めて重大です。これ以上、原告に裁判という過酷な負担を強いることは許されません。

 原告・弁護団は早期解決に向け、▽全ての被害者に対する真摯(しんし)な謝罪▽最高裁決定で責任が確定した被害者への賠償▽継続中の訴訟の早期の和解解決▽「建設アスベスト被害補償基金制度」の創設▽建設現場での石綿粉じん暴露防止対策の強化▽石綿関連疾病医療体制の整備・治療法の研究開発を国に要求しています。

 被害補償の基金制度について、原告・弁護団は、国の下に機構を設置し、国と建材メーカーが全負担額の2分の1ずつ拠出するなどの案を提起しています。給付対象には、労働者とともに、一人親方、中小企業主として工事に参加した人も含むとしています。

補償基金制度の創設急げ

 原告は「多くの被災者が救済されることなく亡くなっている。裁判しなくても救済される基金制度の創設は切実な願い」と訴えていいます。国敗訴の最高裁決定を受け、田村憲久厚生労働相は、「責任を感じ、深くおわびする」と述べました。田村氏は原告とも面会した際、補償に向けた協議の場をつくる意向を示しました。

 アスベストによる労災認定を受けた人は年間1000人以上にのぼります。国と建材メーカーは早期全面解決の立場に立ち、被害者の完全救済、アスベスト被害根絶へ真剣に取り組むべきです。





建設石綿訴訟 速やかに被害者救済を(2020年12月26日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 建設現場でのアスベスト(石綿)による健康被害の集団訴訟で、国の責任を認める司法判断が確定した。国が規制を怠ったのは違法として、二審東京高裁判決(2018年)は損害賠償の支払いを命令。それに対する国の上告を最高裁が退けた。

 東北の仙台市を含め全国9地域で計千人以上が起こした一連の「建設アスベスト訴訟」で、国の責任が確定するのは初めてであり、他の訴訟にも影響を与えそうだ。08年の提訴から12年半がたち、多くの原告が亡くなり、高齢化も進む。国は確定を重く受け止め、速やかに救済に取り組まなければならない。

 極細で繊維状の石綿は安価で断熱性や耐火性に優れ、建築材料に広く使われた。だが粉じんを吸い込むと肺がんや中皮腫の原因になると判明した。潜伏期間が数十年に及ぶ場合があり、発症すると多くは数年で死亡することから「静かな時限爆弾」とも呼ばれる。

 確定した二審判決は、1970年代初めには作業員が石綿関連疾患にかかる危険性を国が予見できたと指摘。遅くとも75年には、防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだったとし、原告327人に約23億円を支払うよう命じた。国の不作為を厳しく断じた内容で、国は猛省すべきだ。

 画期的なのは雇われた労働者だけでなく、「一人親方」と呼ばれる個人事業主も救済対象に加えたこと。健康を守る労働安全衛生法の対象に一人親方は含まれない、と国側は主張した。しかし判決は「建設現場で重要な地位を占めている」と実態を考慮。一人親方を理由に救済対象から外れる理不尽さが取り消された点を評価したい。

 今回の事案は建設現場で働く人の被害だが、2014年には最高裁が石綿製造・加工工場での被害について国の責任を認めている。大阪の工場の元労働者らが起こした「泉南アスベスト訴訟」判決だ。これを踏まえて国は、一定の条件を満たせば訴訟での和解に応じて賠償金を支払う方針を示した。

 石綿関連疾患で労災認定を受けた人は19年度までに1万7千人を超え、うち建設業は6割近くを占める。だが建設現場での被害について国は、作業環境が石綿工場とは異なるなどとして争ってきた。最高裁の判断は被害実態に即し幅広い救済が必要と示しており、意義は大きい。

 建設アスベスト訴訟の弁護団が求めるのは、訴訟を起こさなくても迅速な救済を受けられる基金制度の創設だ。弁護団によると訴訟を起こしている人は全被害者の1割に満たず、毎年500~600人規模で患者が増加。一刻の猶予も許されない。

 健康被害を受けた人にとって裁判を起こすことは大きな負担となる。「命があるうちに解決を」という原告側の切実な願いを受け止め、国は他の建設アスベスト訴訟の結果を待たず、直ちに救済へかじを切るべきだ。





「石綿」で国敗訴 救済拡充と再発防止策を(2020年12月23日配信『西日本新聞』-「社説」)

 アスベスト(石綿)を吸引したことなどによる肺がんや中皮腫は、発症までに数十年の長い潜伏期間がある。関係する職場で長年働いた人々の不安は察するに余りある。

 建設現場で石綿による健康被害を受けた元労働者や遺族らが国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は国の上告を受理しない決定をした。必要な規制を怠った国の責任を認め、原告327人に計約22億8千万円を支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。

 福岡など全国9地裁に千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」で、初めて国への賠償命令が確定したことになる。

 一連の訴訟では、高裁段階での国の敗訴が福岡を含めて続いてきた。今回、最終決着がついたと言える。

 最高裁の決定を受け、田村憲久厚生労働相は記者会見で「責任を感じ、深くおわびを申し上げたい」と述べた。遅きに失したとの批判は免れまい。

 厚労相は一方で、原告たちが求める補償制度の創設など今後の対応については「高裁判決を踏まえ、適切に対応したい」と述べるにとどめている。

 国は確定判決を受け、責任を持って従来より踏み込んだ被害者救済と再発防止策を早急に打ち出さねばならない。

 石綿は耐火性に優れており、建材に広く使われ、1960年代以降に大量輸入された。国は66年、住宅建設5カ年計画を策定して持ち家の取得を促し、住宅の建設ラッシュが続いた。

 今回確定した判決は医学的知見から、国は73年までには労働者が石綿関連疾患にかかる危険性を予見できたと認定した。その上で、遅くとも75年10月には防じんマスク着用を雇用主に義務付けるといった対策を講じるべきだったと断じた。

 にもかかわらず国が石綿の使用や製造、輸入を禁止したのは2006年のことだ。欧米各国は1980年代には大きく消費量を減らしていた。日本の後れは当初から明らかだった。

 中皮腫を患う人の大半が石綿を吸ったことが原因とされ、年間の死者数は1500人を超える。今後、潜伏期間を過ぎて発症する患者はさらに増えるとみられる。現行の救済制度で支給する医療費や療養手当にとどまらない十分な補償が必要だ。

 さらに目を背けられない問題は、石綿を使った民間建築物の解体作業が10年程度先にピークを迎えることだ。全国で少なくとも300万棟近くあると推計されている。作業は周辺住民にも影響を及ぼす可能性がある。国や自治体は実態調査を進め、住民への周知と飛散防止策の強化を急ぎたい。





建設石綿で国敗訴確定 放置してきた責任は重い(2020年12月22日配信『毎日新聞』-「社説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、病気になった元作業員らが起こした裁判で、国の賠償責任が初めて確定した。

 327人に約23億円を支払うよう命じた東京高裁判決について、最高裁が国の上告を退けた。

 同種の裁判は2008年以降、全国で起こされている。原告側の元作業員は全体で900人を超えるが、提訴までに約400人が死亡し、裁判中に230人余が亡くなっている。国は、この事態を重く受け止めなければならない。

 東京高裁判決は、国が遅くとも1975年の時点で、防じんマスクの着用や、警告表示を義務づけるべきだったにもかかわらず、規制を怠ったと認定している。

 個人事業主の「一人親方」への賠償も命じている。下請けや孫請けも多く、安全管理が徹底されにくい現場の実情を考慮した。

 国は1、2審で敗訴を重ねながらも、争い続けてきた。これに対し最高裁は、国に責任があると認め、被害者を幅広く救済する考え方を示したと言える。

 石綿は安価で耐火性に優れ、高度経済成長期から建材として広く使われた。当時から、粉じんを吸い込むと中皮腫や肺がんなどになる危険性が指摘されていた。

 しかし、国が使用を原則禁止したのは06年になってのことで、欧米から大きく遅れた。健康対策より、経済的メリットを優先したと言われても仕方がない。

 石綿は「静かな時限爆弾」と呼ばれ、吸い込んでから数十年後に発症するケースもある。毎年1000人前後が健康被害を認められており、半数が建設関係者だ。

 建設現場の被害者は今後も増えて、2万人にも上ると予想されている。裁判を起こした人は、一部に過ぎない。

 原告側は、大気汚染公害を参考に、国と建材メーカーが資金を出し合って基金を設け、被害者に補償する制度を提案している。

 メーカーについては、1、2審で責任を認める判決が出ており、最高裁で近く最終的な判断が示される。救済方法の議論に参加する必要がある。

 被害救済は待ったなしだ。国は残る裁判の結果を待たず、直ちに救済の仕組みづくりに乗り出さなければならない。



建設石綿訴訟 国は被害者の救済を急ぐべきだ(2020年12月22日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 アスベスト(石綿)を建設現場で吸って健康被害を受けた東京などの元労働者らが、国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は国の上告を受理しない決定をした。

 規制を怠った国の責任を認めて、原告に22億円余りを支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。全国9地裁に千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」で国への賠償命令が確定するのは初めてだ。

 一連の訴訟は2008年に開始。1件の判決を除き一、二審を通じて国が14連敗し、賠償を命じる流れは定着していた。提訴から12年半、原告は高齢化し亡くなった人も多い。国は解決を長引かせたことを猛省し、原告ら石綿被害者を早期に救済しなければならない。

 天然鉱物の石綿は安価で耐熱性や耐火性に優れ、建築材料に広く使われたが、粉じんを吸い込むと肺がんや中皮腫の原因になる。石綿関連疾患で労災認定を受けた人は19年度までに1万7千人を超える。発症するまでの潜伏期間が長く、弁護団によると毎年500~600人規模で患者が増えている。裁判を起こしたのは氷山の一角にすぎないという。

 石綿工場で働いた人の被害救済を巡っては、最高裁が国の責任を認めた14年の「泉南アスベスト訴訟」判決がある。判決を踏まえて厚生労働省は工場労働者側が提訴し、一定の条件を満たせば和解に応じて賠償金を支払う方針を示した。

 一方、建設現場での石綿被害に関しては、国は作業環境などが異なるとして「別問題だ」と争い続けてきた。今回の最高裁決定は、被害実態に即した幅広い救済への転換を国に促したと言える。被害者は高齢化しており、裁判をせずに迅速な救済を受けられるよう補償基金制度の創設を急ぐべきだ。

 一連の訴訟は、国がいつから規制権限を適切に行使すべきだったか、「一人親方」と呼ばれる個人事業主を救済対象とするか、石綿を含む建材を流通させたメーカーが賠償義務を負うかが争点となっている。

 18年3月の二審東京高裁判決は「遅くとも1975年10月には防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだった」とし、規制権限を行使しなかった国の対応を違法とした。一人親方について国は労働安全衛生法で保護される「労働者」に当たらないと主張したが、判決は「建設現場で重要な地位を占めている社会的事実を考慮すれば、保護の対象になる」と判断した。

 一方、判決はメーカー側への請求は退けた。最高裁はこの判断に対し、双方の意見を聴く弁論を開くことを決めた。判断を見直し、救済範囲が広がる可能性がある。最高裁では計5訴訟が審理中だが、国はこれ以上無用な争いを続けてはならない。「命があるうちに解決を」と訴える被害者に誠実に対応するのが責務だ。





建設石綿、賠償確定 被害者救済待ったなし(2020年12月20日配信『中国新聞』-「社説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み、健康被害を受けた元労働者や遺族たち約350人が国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、ようやく決着がついた。

 最高裁第1小法廷は、国側の上告を受理しない決定をした。規制を怠った国の対応を違法とし、原告に22億円余りを支払うよう命じた二審の東京高裁判決が、これで確定した。全国9地裁で争われている同様の訴訟で、国の賠償責任が確定するのは初めてのことである。

 提訴から12年半。この間、すでに200人近い原告が亡くなったという。国はこの事実を重く受け止め、一刻も早く被害者を救済する責任がある。

 最高裁は、国とメーカーの責任範囲などを巡って高裁段階で判断が分かれている5件の訴訟についても今後、統一見解を示す見通しだという。

 今回確定した東京高裁判決は国に対し、1970年代初めには石綿による健康被害を予見できたとする。企業に雇われた労働者ではないために労働安全衛生法などの保護が及ばなかった個人事業主も、救済対象に含めている。係争中の訴訟にも影響を及ぼすだろう。

 最高裁は2014年、石綿製造が盛んだった大阪・泉南地区の元工場労働者による訴訟で、対策を怠った国の責任を認めた。国は原告以外の被害者に提訴を促し、要件を満たせば和解の形で賠償してきた。

 しかし提訴は進まず、救済は滞っている。高齢の被害者に訴訟の労力や金銭の負担を求めること自体、無理がある。国の本気度が疑われよう。

 さらに国は、工場内の被害は賠償に応じても、屋外で働いた労働者は「別問題」だとしてきた。各地の地裁で国に賠償を命じる判決が相次いだ後も、かたくなに争い続けている。そこにも風穴を開けた、今回の最高裁の決定は重い。

 石綿関連疾患で労災認定された人は1万7千人いる。うち建設業の割合は増加傾向で、19年度は6割近くを占めたという。

 安価で耐火性や断熱性に優れる石綿は、高度成長期を中心に建材や断熱材として幅広く使われてきた。建材を切断する際、髪の毛の約5千分の1という極細繊維を吸い込んでしまうと、中皮腫や肺がんの原因になる。

 潜伏期間は数十年と長く、「静かな時限爆弾」とも呼ばれるのはそのためだ。弁護団によれば、患者の数は毎年500~600人規模で増え、高齢の原告が多い。しかも、裁判で公となる被害は氷山の一角である。「命あるうちに」との原告の訴えに、国は誠実に耳を傾け、被害者全てに救いの手を差し伸べなければならない。

 こうした一連の流れは、被爆者援護を巡る訴訟と似た経過をたどっている。国が責任を認めないまま、小手先の対応を続けるため、訴訟が次々と繰り返され、延々と時間が費やされる…。その結果、命あるうちに救済されるべき被害者の多くが亡くなっている。まるで「時間稼ぎ」のような対応は、人の道に外れているのではないか。

 高度成長期に建てられたビルや家屋の多くは、解体時期を迎えている。石綿被害は決して過去の問題ではない。解体作業などに関わる全員を対象にした、継続的な健康調査も望まれる。





建設アスベスト訴訟 速やかに救済の拡充を(2020年12月19日配信『茨城新聞』-「論説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けたとして、東京や千葉、埼玉の元労働者や遺族らが国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は国の上告を受理しない決定をした。規制を怠った国の対応を違法とし、原告に22億円余りを支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。

 全国9地裁に千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」で、国の賠償責任が確定するのは初めて。企業に雇われた労働者ではないため、労働安全衛生法などの保護が及ばない「一人親方」についても、高裁判決は救済対象に含めており、他の訴訟や補償の議論に影響を及ぼすとみられる。

 また高裁判決がメーカー側への請求を退けた判断を巡り、第1小法廷は来年2月下旬に双方から意見を聴く弁論を開くと決めた。この判断を見直す可能性がある。今回決定があった訴訟の原告が提訴してから12年半がたち、ようやく救済の道筋が見えてきたといえそうだ。しかし法廷に持ち込まれた石綿被害は「氷山の一角」にすぎない。

 弁護団によると、毎年500〜600人規模で患者は増え続け、高齢化も進む。原告たちの「命あるうちの救済」の訴えに真摯(しんし)に向き合い、国は建材メーカーや建設会社に呼び掛け、速やかに補償基金制度の創設など被害実態に即した救済の拡充に取り組むべきだ。

 石綿は安価で耐火性や断熱性に優れ、高度経済成長期を中心に建材や断熱材など幅広い用途に使われた。建設現場などで建材を切断したり、壁や天井に吹き付けたりするうち、その極細繊維を吸い込むと、肺がんなどになる。潜伏期間は数十年と長く、一連の訴訟の原告には高齢者が多い。

 石綿製造が盛んだった大阪・泉南地区の元工場労働者が起こした「泉南アスベスト訴訟」で2014年、最高裁が石綿対策を怠った国の責任を指摘。厚生労働省は提訴していない被害者らに国賠訴訟を促し和解による賠償金支払いで救済に動いた。だが工場内ではなく屋外の現場で働いた元労働者による訴訟は「別問題」と争い続けた。

 12年から各地の地裁で判決が言い渡され、最初の横浜地裁判決は国とメーカーへの請求をいずれも退け、原告全面敗訴となったが、その後は国に賠償を命じる判決が相次いだ。メーカーの責任については16年の京都地裁判決が初めて認定。東京、大阪両高裁などの判決でも認められている。

 国とメーカーに賠償を命じる流れが定着する中、18年3月に大阪高裁が和解を勧告したが、国は拒否した。現在、最高裁は計5件の訴訟を審理中。高裁段階で判断が分かれた国とメーカーの責任範囲や、違法と認められる期間などについて統一見解を示す見通しだ。

 確定した18年3月東京高裁判決は、国は1970年代初めには石綿関連疾患の危険性を予見できたとし「遅くとも75年10月には防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだった」と指摘した。

 今回の決定で、大勢はほぼ決したと言っていい。弁護団によると、石綿関連疾患で労災認定を受けた人は2019年度までに1万7千人を超えた。ただ労災認定などによる給付は不十分との声は根強い。対象から外される人もあり、新たな救済制度づくりが急務だ。



建設石綿訴訟/国は被害者の救済を急げ(2020年12月19日配信『神戸新聞』-「社説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い、中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けた元労働者や遺族らが、国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁は国側の上告を受理しない決定をした。規制を怠った国の責任を認め、原告への賠償を命じた東京高裁判決が確定した。

 兵庫県内の原告を含む千人以上が全国9地裁に起こした「建設アスベスト訴訟」で、国への賠償命令が確定するのは初めてだ。同種訴訟に影響を与えるとみられる。

 最高裁では五つの訴訟が審理中で、高裁で判断が分かれた国と企業の責任範囲などについて統一見解が出される見通しだ。

 国はこれ以上、原告と争うことをやめ、今回の結果を重く受け止めて被害者の救済を急ぐべきだ。

 二審判決は、国は1972~73年には作業員が石綿関連疾患にかかる危険性を予見できたと指摘し、遅くとも75年には、防じんマスク着用を雇用主に義務付けるべきだったとしていた。国の責任の重大さを、最高裁も認めたことになる。

 今回の最高裁決定が画期的なのは、「一人親方」と呼ばれる個人事業主についても国の責任を認定した点だ。二審判決で救済対象となっていたが、国側は、労働安全衛生法で保護される労働者には当たらないと主張していた。原告側の「建設現場で重要な地位を占めている社会的事実を考慮すれば、保護の対象になる」との訴えが通じた。

 加えて、メーカー側への請求を退けた二審の判断に対しては、双方の意見を聴く弁論を来年2月に開くと決めた。これにより、救済範囲が広がる可能性が出てきた。

 今回、賠償が認められた原告は327人だが、石綿関連の疾患で労災認定を受けた人は2019年度までに1万7千人を超え、建設業は同年度で全体の6割近くを占める。

 弁護団によると、毎年500~600人ほどの新たな患者が出ている。救済を待たず亡くなるケースも少なくない。原告が被害者のごく一部分であることを考えれば、国は幅広い救済に向けた基金創設などに、速やかに取り組む必要がある。

 建築などに使われた石綿による被害は、潜伏期間が十数年から50年と長い。2005年に尼崎市のクボタ旧神崎工場周辺で健康被害が発覚し、翌年に石綿健康被害救済法が施行された。同工場の被害者は約600人に上り、今も増え続ける。

 阪神・淡路大震災の被災地では、発生から25年を過ぎて解体現場などから飛散した石綿による被害も懸念されている。さらに広い範囲での健康調査の実施や救済策の拡充が求められる。





建設石綿 賠償責任確定/国は早期救済に乗り出せ(2020年12月18日配信『河北新報』-「社説」)

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込んだ元労働者の健康被害を、国が賠償すべきかどうかに一つの決着がついた。

 元労働者や遺族ら約350人が国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷が国の上告を受理しないことを決め、原告に計約22億8000万円を支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。

 建設石綿の健康被害を巡る訴訟は仙台地裁など各地で起こされ、必要な規制を怠った国の責任を認める判決が相次いでいたが、賠償命令が確定するのは初めてだ。

 東京高裁判決は企業に雇われた労働者だけでなく「一人親方」と呼ばれる個人事業主も対象に加えるなど、一連の判決の中で国の責任を広く認定している。判断は今後の裁判で踏襲されるとみられる。

 国は個人事業主が労働安全衛生法上の労働者ではなく、賠償責任はないと主張してきた。最高裁は身分にかかわらず、働き方の実態や健康被害の重さに配慮し救済すべきだと判断したのだろう。

 高裁判決は国が遅くとも1975年以降に防じんマスク着用を義務付けるべきだったと指摘。違法状態は石綿を含む製品の製造・販売が原則禁止となった2004年まで続いたと結論づけている。

 東京高裁判決が因果関係が立証されていないとして認めなかったメーカー側の責任でも、最高裁は双方の意見を聴く弁論を2月に開くことを決めた。二審判決を見直す際に必要な手続きで、救済範囲がさらに広がる可能性がある。

 国は18年に東京高裁判決が出た後、「時々の知見に応じ適切に措置を講じた」として上告した。建設アスベスト訴訟で、原告全面敗訴だった12年横浜地裁判決を除き、国は一、二審を通じて14連敗している。司法の流れが定着しつつある中、解決を長引かせたことは極めて残念だ。

 最初の提訴から12年半がたち、亡くなる被害者も多い。国は重く受け止め、救済に乗り出さなければならない。

 アスベストは潜伏期間が数十年に及ぶ発がん物質だ。関連する疾患で労災認定された人は19年度までに1万7000人を超える。建設業は6割近くを占める。裁判を起こしたのは一部にすぎない。

 東北で初とみられる訴えが仙台地裁に起こされたのは、今年8月になってからだ。宮城、岩手両県などの計10人が計2億6950万円の損害賠償を求めた。首都圏や関西に比べ、被害者への支援体制や情報が不足していたことが原因の一つだろう。

 裁判を起こすことは、体をむしばまれた被害者にとって大きな負担になる。裁判をせずに迅速な救済を受けられる補償基金制度の創設を願っている。国は今度こそ司法判断を漫然と待つことなく、早急に取り組むべきだ。



建設アスベスト訴訟(2020年12月18日配信『佐賀新聞』-「論説」)

速やかに救済の拡充を

 建設現場でアスベスト(石綿)を吸い込み中皮腫や肺がんなどの健康被害を受けたとして、東京や千葉、埼玉の元労働者や遺族らが国と建材メーカーに損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷は国の上告を受理しない決定をした。規制を怠った国の対応を違法とし、原告に22億円余りを支払うよう命じた二審東京高裁判決が確定した。

 全国9地裁に千人以上が起こした「建設アスベスト訴訟」で、国の賠償責任が確定するのは初めて。企業に雇われた労働者ではないため、労働安全衛生法などの保護が及ばない「一人親方」についても、高裁判決は救済対象に含めており、他の訴訟や補償の議論に影響を及ぼすとみられる。

 また高裁判決がメーカー側への請求を退けた判断を巡り、第1小法廷は来年2月下旬に双方から意見を聴く弁論を開くと決めた。この判断を見直す可能性がある。今回決定があった訴訟の原告が提訴してから12年半がたち、ようやく救済の道筋が見えてきたといえそうだ。しかし法廷に持ち込まれた石綿被害は「氷山の一角」にすぎない。

 弁護団によると、毎年500~600人規模で患者は増え続け、高齢化も進む。原告たちの「命あるうちの救済」の訴えに真摯(しんし)に向き合い、国は建材メーカーや建設会社に呼び掛け、速やかに補償基金制度の創設など被害実態に即した救済の拡充に取り組むべきだ。

 石綿は安価で耐火性や断熱性に優れ、高度経済成長期を中心に建材や断熱材など幅広い用途に使われた。建設現場などで建材を切断したり、壁や天井に吹き付けたりするうち、その極細繊維を吸い込むと、肺がんなどになる。潜伏期間は数十年と長く、一連の訴訟の原告には高齢者が多い。

 石綿製造が盛んだった大阪・泉南地区の元工場労働者が起こした「泉南アスベスト訴訟」で2014年、最高裁が石綿対策を怠った国の責任を指摘。厚生労働省は提訴していない被害者らに国賠訴訟を促し、和解による賠償金支払いで救済に動いた。だが工場内ではなく屋外の現場で働いた元労働者による訴訟は「別問題」と争い続けた。

 12年から各地の地裁で判決が言い渡され、最初の横浜地裁判決は国とメーカーへの請求をいずれも退け、原告全面敗訴となったが、その後は国に賠償を命じる判決が相次いだ。メーカーの責任については16年の京都地裁判決が初めて認定。東京、大阪両高裁などの判決でも認められている。

 国とメーカーに賠償を命じる流れが定着する中、18年3月に大阪高裁が和解を勧告したが、国は拒否した。現在、最高裁は計5件の訴訟を審理中。高裁段階で判断が分かれた国とメーカーの責任範囲や、違法と認められる期間などについて統一見解を示す見通しだ。

 確定した18年3月東京高裁判決は、国は1970年代初めには石綿関連疾患の危険性を予見できたとし「遅くとも75年10月には防じんマスク着用を雇用主に義務付け、現場に警告表示をするべきだった」と指摘した。

 今回の決定で、大勢はほぼ決したと言っていい。弁護団によると、石綿関連疾患で労災認定を受けた人は2019年度までに1万7千人を超えた。ただ労災認定などによる給付は不十分との声は根強い。対象から外される人もあり、新たな救済制度づくりが急務だ。(共同通信・堤秀司)





スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ