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(論)内密出産制度に関する論説(2020年12月18日)

困窮母子の救済 国、市、病院の連携不可欠(2020年12月18日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 親が育てられない子どもを匿名でも預かる慈恵病院(熊本市)の「こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)」に2019年度に預けられた子どもは前年度比4人増の11人で、4年ぶりに10人を超えた。

 このうち10人は、医療関係者が立ち会わないまま自宅などで産む「孤立出産」だった。医療行為を必要とした子どもは4人、低出生体重児は2人。ゆりかごの扉の外に置かれて一時低体温状態になった子どももいた。多くが県外から新幹線や車を乗り継いで来院しており、母子ともに命を危険にさらしながら預け入れている。熊本市だけでなく、国が積極的に関与すべき時期がとうに来ていることは明らかだ。

 「匿名でなければ救えない命がある」とする慈恵病院は、母親の匿名性と子どもの出自を知る権利の両方を担保するため、昨年、独自の運用方針で「内密出産制度」を導入する考えを表明。法的課題などをクリアするために市や熊本地方法務局と意見を交わしてきたが、堂々巡りが続いている。

 内密出産制度は、妊娠出産を他人に知られたくない女性が医療機関で匿名で出産でき、子どもが一定の年齢になれば母親の情報を知ることができる制度で、ドイツなどで法制化されている。「ゆりかご」が抱える課題の解消のため、市の専門部会が国に制度化を提言した経緯もある。

 しかし、市は今年に入って「法令に抵触する可能性があるため、実施を控えてほしい」と導入に消極的な見解を示した。困窮する母子への支援についても、国に法整備を求めていく考えを示すにとどめている。これに対し、病院側は匿名で産みたいという妊婦がいれば受け入れる姿勢に変わりはないと強調。協議は平行線をたどったまま妙案を見いだせていない。

 一方、厚生労働省は、慈恵病院の内密出産について「法令に直ちに違反するものではない」とした上で、身元情報の適切な管理や子どもへの情報開示方法などについて市の行政指導の必要性を指摘している。事実上、厚労省は市に判断や対応を委ねた格好だが、子どもの出自や養育に大きく関わる重大な事案の対応を、一民間病院や一地方自治体だけに委ねるべきではない。

 全国に潜在する困窮母子や「匿名でなければ救えない命」は、複雑な事情や困難を抱えているケースが多く、その支援体制を民間病院や自治体が単独で整えようとしても限界がある。法整備も含め国を挙げて取り組むべきだ。

 「ゆりかご」に預けられた子どもは13年間で155人に上り、これからも増え続けるだろう。一方、コロナ禍で社会不安や経済的困窮が深刻化する中、親などからの虐待や育児放棄で幼い命が犠牲になる事件も相次いでいる。堂々巡りの議論や小手先だけの対応を続けている場合ではない。「ゆりかご」で得られた多くの知見を基に、病院、市、国が連携して有効な救済策を見いだしてほしい。




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