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(論)2020年回顧に関する論説(2020年12月22・27・28・29・30・31日)

「静かな年末年始」(2020年12月31日配信『東奥日報』-「天地人」)

 日常のすべてが、コロナに奪われたかのような2020年がきょうで終わる。世界的大流行は一向に収まる気配を見せず、国際政治や社会、市民生活を揺さぶり続ける。国家や社会、暮らしのありようが転換を迫られた1年だった。

 4月に発令された緊急事態宣言は、社会に深刻な影響を与えた。休業・時短営業などで経済は冷え込む一方で、自粛頼みの政策の限界が露呈した。安倍晋三氏から菅義偉氏へと政権は移ったが、備えの甘さ、政策の迷走、説明不足を巡り、信頼は損なわれたままだ。雇用不安も広がる。解雇や雇い止めで「新たな貧困層」が増え続ける。

 海外では対立、分断が加速した。テニスの全米オープンで人種差別を受けた被害者の名前が入った黒マスクを着用して全7試合を戦い、女王に返り咲いた大坂なおみ選手の奮闘が忘れられない。

 東京五輪が1年延期され、各地の祭りや催しも軒並み中止に。プロ野球、Jリーグ、大相撲なども一時無観客試合を強いられた。本紙読者が選ぶ県内10大ニュースの過半数がコロナ関連で「夏祭り相次ぎ中止」がトップ。来年こそ、と関係者は意気込んでいるはずだ。

 医療や介護の現場は年越しどころではないだろう。一番の支援は感染者を増やさないこと。寒波を警戒しつつ、「静かな年末年始」を。各国で開発・接種が進むワクチンを光明に、一陽来復を願う。



国政この1年 コロナ対策、後手に回る(2020年12月31日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 今年の国政は新型コロナウイルス感染拡大への対応に追われた。そんな中、安倍晋三前首相が持病の悪化を理由に突然退任。安倍前政権の官房長官だった菅義偉氏が首相に就任した。

 菅政権は安倍前政権同様に感染防止と経済活動の両立を目指している。だが経済優先の姿勢が目立ち、感染防止策は後手に回ったことは否めない。その反省を踏まえ、感染拡大に歯止めをかけなければならない。

 国内で初の感染者が確認されたのは1月中旬。さらにクルーズ船で集団感染が発生した。全国の小中高校などは3月から急きょ一斉休校。東京五輪・パラリンピックが来夏に延期されるなど影響は広がる一方だった。

 政府は4月に東京、大阪など7都府県に緊急事態宣言を出し、その後全都道府県に対象を拡大。都道府県は住民に外出自粛要請などを行った。

 コロナ禍は2008年のリーマン・ショック後を超える景気後退をもたらした。政府は、国民の生活支援として全国民に一律10万円を支給する特別定額給付金、中小企業などを対象とした持続化給付金などの緊急経済対策を実施。支給が遅れるなどの問題も相次いだが、一定の効果を上げたと言えるだろう。

 9月の自民党総裁選には3人が立候補。安倍前政権の継承を掲げた菅氏が圧倒的な支持を得て当選した。デジタル庁創設や携帯電話料金引き下げなどの政策を打ち出している。だが最大の課題はコロナ対策だ。

 夏場の感染「第2波」は国民の自発的な協力もあって乗り切ることができた。「第3波」では、対策を呼び掛けても東京などで人の動きが減らなかった。感染拡大は続いており、実効性のある対策が急がれる。

 焦点になったのが、菅首相が官房長官時代から旗振り役を務めた観光支援事業「Go To トラベル」。観光旅行を促す事業が、感染防止に対する国民の緩みにつながったと指摘された。政府分科会の専門家も事業の一時停止を繰り返し訴えた。

 菅首相が一時停止の決断に追い込まれたのは12月中旬。同時に年末年始を静かに過ごすよう国民に呼び掛けた。経済再生を優先した結果、後れを取ったと言わざるを得ない。

 コロナ禍の影響は観光や飲食業界で特に大きく、支援策は必要だ。だが感染拡大で医療崩壊の危険をこれ以上、高めてはならない。そんな事態になれば経済への悪影響は一層大きくなることもあり得る。感染拡大防止に軸足を置きながら雇用や生活を守る対策を講じるべきだ。

 コロナを巡る不手際もあり、内閣支持率は急落した。しかし対抗する野党の影は薄い。旧立憲民主党と旧国民民主党などが合流し、新たな立憲民主党が誕生したが、政党支持率は伸び悩んでいる。コロナや安倍前首相の「桜を見る会」を巡る問題などで政府に厳しく対峙(たいじ)し、存在感を発揮しなければならない。



【新型コロナ 感染症との闘い】求められる新たな挑戦(2020年12月31日配信『福島民報』-「論説」)

 二〇二〇(令和二)年は新型コロナウイルス感染症にほんろうされた一年となった。東京五輪・パラリンピックに象徴されるように、スポーツ、文化のイベントは延期や中止を余儀なくされた。不要不急の外出を控えるなど慎重な行動も求められ、人々の心には重苦しさがつきまとった。

 感染症は年末にかけて拡大が止まらず、全国の感染者は過去最多の更新が相次いだ。県内も福島市を中心にクラスター(感染者集団)が複数生まれ、感染者の累計は九百人を超えた。県は福島市内の飲食店に対して一月十二日までの営業時間の短縮を要請しており、経済活動の停滞は避けられない。

 新型コロナは、本紙読者が選んだ県内十大ニュースにも色濃く反映された。十位に入った磐城高の二〇二〇年甲子園高校野球交流大会出場は「春のセンバツ」が中止になったための代替大会だった。八位の全国新酒鑑評会で県産酒三十三銘柄入賞は、合わせて金賞の審査ができなかったことを伝えている。高校球児をはじめスポーツに励む選手は大会出場の機会を奪われ、八年連続の都道府県別金賞数日本一を目指した酒蔵は記録更新がお預けとなった。

 特に酒造メーカーには、観光業や飲食業の大きな打撃によって暗い影が忍び寄る。消費低迷で造った酒がタンクに残り、来年用の仕込みができない蔵元もあるという。各界の深刻な事態を打開するため、国、県、市町村はこれまで以上のきめ細かい支援策を打ち出す必要がある。

 こうした状況の中でも、さまざまな工夫で変化に対応している企業やお店はある。県内のあるランドセルメーカーは、新型コロナ前に実施していた大展示会ができなくなり、予約制の商談会に切り替えた。待ち時間がなく、丁寧な説明が受けられる新しい方式が購入者の心をつかみ、売り上げが上向いたという。個別を重視した対応は、新しい企業活動のヒントと言える。

 新型コロナの影響は東京電力福島第一原発の廃炉作業にまで及ぶ。東電は2号機で予定していた溶融核燃料(デブリ)の取り出しについて二〇二一年の開始を断念する方針を固めた。感染拡大が続く英国での試験が進まないのが理由で、政府と東電は廃炉の最終段階への移行時期の見直しにも迫られる。不測の事態に陥っても、複数の手法を備えて困難を克服する準備がない東電の姿勢は甘すぎると言わざるを得ない。

 新年は各方面で生まれた停滞を乗り越える新たな挑戦が求められる。(安斎 康史)



2020年回顧/希望ある未来へ続く道探れ(2020年12月31日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの世界的な大流行に見舞われた2020年も残り1日となった。中国・武漢で感染者が確認されてから1年。私たちの日常を一変させたウイルスの勢いは衰えず、県内の感染者数は900人を超えた。医療現場では懸命な治療が続く。感染抑止に一人一人が最善を尽くしたい。

 コロナ禍が県民生活に及ぼしてきた影響は甚大だ。緊急事態宣言で県境をまたぐ移動が制限され、事業者には休業や営業自粛が要請された。福島市で野球・ソフトボール競技が開催予定だった東京五輪・パラリンピックも、1年延期となった。外出自粛などで多くの社会・経済活動が停滞し、企業の業績や雇用に影響が出ている。

 政府の対応は後手に回ってきた感が拭えない。国や県などはスピード感を持ち、命と暮らしを守ることに全力を挙げてほしい。

 東日本大震災と東京電力福島第1原発事故からの復興は、廃炉や住民帰還、産業再生、風評などの課題が山積している。

 帰還困難区域では、双葉町や大熊町、富岡町に整備された復興拠点の一部で避難指示が解除され、JR常磐線は富岡―浪江間で運転を再開、9年ぶりに全線がつながった。浜通りの新産業創出の拠点となる福島ロボットテストフィールドが全面開所し、世界最大規模の水素製造拠点が稼働した。

 国や県は、多様化する被災地の現状を丁寧に把握し、県民が復興を実感できるよう、多くの成果を上げてもらいたい。

 福島市のJR福島駅東口に構える中合福島店が、146年の歴史に幕を下ろした。「県都の顔」として親しまれた老舗百貨店の閉店は、消費者の購買行動の変化や人口減少に直面する地方経済の厳しさを表す出来事だった。

 一方、同市出身の作曲家、古関裕而と妻金子(きんこ)をモデルとしたNHKの朝ドラ「エール」の放送は、明るい話題となった。全国に発信した古関メロディーや本県の魅力を、今後の地域振興や観光誘客につなげなければならない。

 バドミントン男子の桃田賢斗選手(富岡高卒)は1月にマレーシアで交通事故に巻き込まれたが、全日本選手権で3連覇を達成、見事に復活を遂げた。箱根駅伝でも活躍した陸上の相沢晃選手(須賀川市出身)は日本選手権男子1万メートルで日本記録を更新して初優勝、東京五輪代表に内定した。来夏の五輪での活躍が楽しみだ。

 コロナ禍で閉塞(へいそく)感が漂うなか、年越しを迎える。これまでの忍耐や努力が報われ、希望にあふれる年になることを願う。



2020年を振り返る 歴史に刻まれる1年(2020年12月31日配信『茨城新聞』-「論説」)

 新型コロナウイルスに世界が翻弄(ほんろう)された年が幕を閉じる。新たなウイルスは世界中の人々の生活を一変させ、人類の歴史に深く刻まれた。人類を襲ったウイルスは感染者を爆発的に拡大させ、多くの犠牲者を出している。経済活動も停滞し、各国とも苦境にあえいでいる。

 新型コロナの流行が拡大し始めた当初、国際的な協力態勢が築けていれば感染拡大はある程度防げたかもしれないという反省が残る。いまだウイルスを封じ込める見通しは立っておらず、人類の試練は続くことになる。ワクチン接種は英国で始まったが、わが国などはまだ先になりそうだ。

 このコロナ禍の最中、日米ではリーダーが変わった。自国第1主義を掲げたトランプ氏に代わって大統領に就任するバイデン氏と、菅義偉首相には、コロナ禍の収束に向けて国際社会が団結するよう指導力を発揮してもらいたい。

 地球全体がつながる現代社会では感染症拡大のスピードは恐ろしいほどに早い。新型コロナウイルスがこれまでの危機と異なるのは、特定地域ではなく、世界の至るところに広がったことだ。人の移動は制約され、人々の生活や社会活動の在り方さえ一変させた。

 県内外でも感染防止のために営業自粛が求められた飲食業や旅行業、宿泊業をはじめ、経済活動に大きな影響を与え、廃業や倒産が相次いでいる。失業者の増加は貧困を拡大させ、自殺者の増加など社会に暗い影を落としている。

 コロナ禍の影響は幅広い。教育界は学生や児童生徒たちが通常の授業を受ける機会を失い、混乱が続いた。夏祭りや花火大会などのイベントもことごとく中止に追い込まれ、芸術・文化分野でも公演中止が相次いだ。東京五輪・パラリンピックも延期され、スポーツ界への影響も甚大だった。

 コロナ禍は働き方も変えた。テレワークが拡大し、在宅勤務が増えたことでライフスタイルにも変化をもたらした。通勤時間がなくなり、家族らと過ごす時間が増えたが、外出自粛のストレスからか、子どもや配偶者への虐待も増加し、新たな問題も生んだ。

 一方で大都市に住む必要性が低下したことで、東京から地方に移住する人も現れている。東京一極集中を是正する契機としての期待もある。県内でも移住促進に積極的に取り組む自治体が出ており、地域おこしの上で新たな期待も膨らむ。

 感染者の増大は「自粛警察」なる言葉も生み出し、偏見や差別を増幅した負の側面は憂えるべきことだ。もはや誰もが感染する可能性がある。助け合う社会を築きたい。

 コロナ対策で明け暮れた1年だったが、朗報も届いた。高萩市出身で、日本で初めて経緯線のある全国地図を完成させた長久保赤水の関係資料と、一橋徳川家関係資料が国の重要文化財に指定された。さらに笠間市などの「焼き物文化」と、牛久市などの「ワイン文化」が日本遺産に認定されたことは本県の地域振興の上でも期待したい。

 ともあれ、コロナ禍は来年も続くことを覚悟しなければならない。収束の目途が立たない限り、苦境に陥る企業や人々が増えるであろうことは必至だ。経済の立て直しを図りながら、国や県、市町村には、人々の命と暮らしを守る施策に厚みをかけてほしい。



日本政治 この1年 異論を封じる手法の限界(2020年12月31日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に世界中が揺れた1年が終わる。

 国内では、7年8カ月に及んだ安倍晋三前政権が幕を閉じ、菅義偉政権に交代した。

 しかし、新型コロナへの対応では、前政権と同じように菅政権も後手に回っている。

 最近の報道各社の世論調査では菅内閣の支持率は、発足当初に比べて軒並み急落している。菅首相は就任3カ月余で、早くも苦しい状況を迎えている。

 菅首相の強引な政治手法も目立った。

 日本学術会議の会員候補のうち6人を首相が任命しなかった問題は、疑問が解消されないまま年を越す。

学術会議問題の核心

 安倍氏が「体調の悪化」を理由に突然、辞任を表明したのは8月末だった。

 ただし実際には、全国民への一律10万円給付の遅れなどコロナ対策が迷走し、行き詰まった末の退陣だったと言っていい。

 ところが、安倍氏の後継を選ぶ自民党総裁選は、アベノミクスの功罪をはじめ安倍政治をきちんと総括することなく、政策論争は極めて乏しいものとなった。

 大半の派閥が「勝ち馬に乗れ」とばかりに、「前政権の継承」を掲げる菅氏を早々と支持し、総裁選前から勝敗が決したことを忘れてはならない。そのツケが今、回っているのではないか。

 菅首相の目玉政策である携帯電話料金の値下げやデジタル庁の創設は、確かに実現に向けて進んでいる。2050年に温室効果ガス排出を「実質ゼロ」にする目標を掲げた点も評価したい。

 だが、そもそも菅首相が目指す社会とは何か。「自助、共助、公助、そして絆」と繰り返すだけで、具体像は今も示していない。

 看過できないのは学術会議問題だ。なぜ6人の任命を拒んだのかという疑問の核心に、首相は依然として明確に答えていない。

 6人は安倍前政権時代、安全保障法制などについて反対論や慎重論を唱えてきた学者たちだ。

 任命しないのは、やはり政権にとって不都合だからだろう。そこに安倍氏と同様、異論を排除する姿勢が如実に表れている。

 コロナ対策では、観光支援策の「GoToトラベル」を一時停止するかどうか、判断が遅れた。

 停止を求める専門家の意見に、首相は耳を傾けてきたのか。自ら主導してきた政策だから、事業の継続にこだわったのではないか。

 閣僚や官僚が首相にきちんと進言できているようには見えない。もはや組織上の深刻な問題だ。

 前政権に引き続き、国会はないがしろにされた。

 野党が再三、国会審議を求めたのに対し、首相や与党は応じなかった。これも異論封じである。

 見えてきたのは、そうした政治手法の限界ではないだろうか。特にコロナ禍で必要なのは、専門家らの意見を謙虚に聞いて政策を柔軟に修正していく姿勢である。

「政治とカネ」が直撃


 「おごりの果て」と言うべきだろう。安倍氏の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭をめぐる政治資金規正法違反事件では、安倍氏の秘書が略式起訴された。

 100回以上に上る国会での虚偽答弁も厳しく問われた。にもかかわらず、安倍氏の説明は到底、納得できるものではなかった。

 自民党の河井案里参院議員と夫の克行衆院議員による大規模買収事件も発覚した。吉川貴盛元農相が大手鶏卵業者から現金を受け取ったとされる贈収賄疑惑は東京地検の捜査が続く。

 衆院への小選挙区比例代表並立制導入を軸とした一連の政治改革は、1988年に表面化したリクルート事件が契機だった。

 自民党の感覚は再びマヒしてしまったというほかない。「桜」事件で、秘書任せだったと何度も弁明する安倍氏の姿は、あの当時の自民党幹部と何ら変わらない。

 各省の幹部人事を決める内閣人事局の設置も政治改革の一環だった。しかし、内閣が幹部人事を握った結果、官僚がものを言えなくなったと指摘されて久しい。それを権力掌握の武器にしてきたのが菅首相だ。

 「制度に絶対のものはない。運用を誤れば、逆効果さえ生ずる恐れがある」

 政治改革を推進した故・後藤田正晴元官房長官は、こう言い残している。菅首相らは、改めてこの言葉をかみしめるべきだろう。



新型コロナウイルスの…(2020年12月31日配信『毎日新聞』-「余録」)

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大に揺れた2020年。いろはカルタで振り返る。

【い】医療従事者へのエール【ろ】論よりGoTo【は】ハンコ業界の反抗【に】二階からお目付け【ほ】香港、涙の国暗法【へ】平和の礎(いしじ)、核禁条約【と】トランプにバイバイデン【ち】沈黙の巨人【り】竜宮から黒い宝石【ぬ】「ぬれ手であわ」とGAFA規制【る】ルートたどれぬクラスター【を】大阪都構想は二度死ぬ【わ】ワクチン競争曲【か】家族の前で照れワーク【よ】世に訴えたなおみマスク【た】ダウンで信頼ストップ安【れ】レバノンにゴーン【そ】総合的・好かん敵【つ】翼をくださいスペースジェット【ね】寝耳にアベの一斉休校【な】夏に響いた春の球音【ら】来年会いたいキャンパスで【む】ムダノマスクの山【う】腕すり合うもタッチの縁【ゐ】石破氏をたたいて首相の座【の】農相接触者の激白【お】大飯隠せぬ不安【く】苦悩実習生【や】夜郎自大の自粛警察【ま】町のくまさん【け】検察重宝改正案【ふ】フリップ欠かせぬ小池劇場【こ】五輪霧中【え】AI超えで最年少2冠【て】天国からアイーンを【あ】嵐、去る【さ】桜で論外の弁【き】金窮事態宣言【ゆ】夢が暗転クルーズ【め】夫婦(めおと)断罪【み】未来がかかる脱炭素【し】親しき仲にもアクリル板【ゑ】SNSの刃(やいば)【ひ】ヒット曲に魅せられて【も】もうイイデス・アショア【せ】全集中で「答弁控える」【す】巣ごもりであつ森【京】協調の世界、コロナ克服を



悪夢の1年(2020年12月31日配信『日本経済新聞』ー「春秋」』)

「コロナ」という言葉を使った記事を検索すると、2020年は本紙の朝夕刊だけで2万9千件余にのぼる。19年はわずか24件だ。本来はそれくらいしか登場しない語句で、1989年以降の30年間でも855件。その名を持つウイルスが、今年は世界に襲いかかった。

▼かつて紙面に載った「コロナ」は自動車の名であったり、もともとの意味である太陽大気の外層のことであったりした。11年前の皆既日食のときは、小欄も「硫黄島から届いた黒い太陽と輝けるコロナの図には思わず息をのんだ」などと書いている。のちに、同じ言葉がこれほどの災厄を物語るのだから未来はわからない。

▼きょうで、そんな悪夢の1年が暮れる。相変わらず未来は見えないが、新年はウイルスの誕生から足かけ3年。夜明け前がいちばん暗いと胸に言い聞かせたいものだ。危うさを秘めながらも株価は年間16%上がった。そこには数年先への期待がこもっていよう。どんな時代になるにせよ、戦いの「戦後」は必ずやってくる。

▼「コロナ」なる言葉は、なにもなかった昔の語感には戻れまい。しかし、それでも「コロナ後」という言葉にうんと伸びやかな雰囲気のただよう未来を、やはり夢見るとしよう。歴史を顧みれば戦後日本の多くの制度は、じつは戦時下にスタートしている。コロナ下で生まれるさまざまな挑戦も、歴史をつくるに違いない。



ちゅーとはんぱやなー 大晦日に考える(2020年12月31日配信『東京新聞』-「社説」) 

 今時分、山里などを歩くと、木守柿(きもりがき)を目にすることがあります。柿の木に一つ、二つ取り残された実のことです。わざわざそうする風習は、来年もたくさんなってくれよ、という祈りだとも、人間の分は取った、あとは鳥の分、という意味であるともいわれます。

 柿は秋、ですが、木守柿となると冬の季語。<染の野は枯に朱をうつ木守柿>森澄雄。冬枯れのモノトーンの中に映える、ぽつり残った柿の実の色。なかなか趣のある眺めです。

「木守柿」というやさしさ

 元来、人間には極端を避けようとする傾きがある気がします。白か黒か、ゼロか百か、というような極端な選択肢は息が詰まりますし、完璧や完全というのも、ある種、極端な状態で、少し居心地が悪い。むしろ、やり残しや破調や弱点がある方が落ち着くことさえ。木守柿に、ほのとした優しさを感じるのも、すべての実をもいでしまう極端、完全な収穫ではないからなのかもしれません。

 完璧や完全は不吉、極端さには魔が宿る、という考えは古くからあったようで、例えば日光東照宮の陽明門には逆柱(さかばしら)があります。木をわざわざ逆さまに使った柱で、あえて未完を装い、「魔除(よ)けの逆柱」と呼ばれています。京都・知恩院の御影堂の屋根にもあえて「葺(ふ)き残し」たような四枚の瓦。やはり極端の手前、未完でとどめるという考え方です。同じ伝で、精緻に、規則的に敷かれたタイルを一部だけあえていびつにするという例は確かどこか欧州の王城にもあったと記憶します。

 しかし、このごろ世界は逆に行っていないでしょうか。極端な考えや言動が幅を利かせ、不寛容で対立的で息苦しい空気をつくり出している。そんな気がします。

 宗教の「原理」主義もある種の極端なら、トランプ米大統領を熱狂的に支持する「極」右や、白人「至上」主義も無論、極端。極端は英語で言えば、extremeでしょうが、extremismは過激主義と訳されます。蓋(けだ)し、人種であれ、宗教であれ、政治信条であれ、自分と異なる者を否定し、理解しようとしない極端な価値観は、やすやすと過激な行動へとつながっていきます。

 しかし、例えば過激なイスラム勢力によるテロが起きると、イスラム教徒を丸ごと危険視するというのも極端な思いこみ。極端な不安や不愉快は憎悪に近づきます。わが国の最近の例なら、かの「自粛警察」がその類いでしょうか。

極端のスパイラル

 世界を席巻したポピュリズム政治も、それ自体、複雑微妙な問題に、あたかも魔法の解決策のように極端な策を示す手法と言えましょう。すっぱり分かりやすいところが最大の武器。“第一人者”トランプ氏の四年を振り返れば「脱退」や「破棄」や「制裁」や「締め出し」と、とにかく極端な対応のオンパレードでした。面倒でも異論を傾聴し、議論によって妥協点を見いだす姿勢には欠けていました。揚げ句、極端な敵・味方の色分けで、米社会に深刻な分断を生じさせたことも見逃せません。

 もっとも、ポピュリズム政治を勢いづけたのもまた極端さかと。多くの人々を置き去りにした極端なグローバル主義が一例。あるいは、たとえ正しいことでも、極端に厳格な“超意識高い系”の主張は、人々を引きつけるより遠ざける面がある気がします。そんな人々が、その逆を訴える、これまた極端だが、分かりやすい主張に魅入られる。そして極端さが受けると政治はさらに極端へ…。極端のスパイラルです。

 そろそろ、ならば何事もいいかげんでいいのか、と突っ込まれそうです。そういえば、お笑いコンビ・ちゃらんぽらんにも、「ちゅーとはんぱやなー」というギャグがありましたっけ。

 確かに、辞書も「物事の完成まで達しないこと」「どっちつかずで徹底しないさま」と。でも、あの逆柱や葺き残しの瓦がわざわざ「中途半端」にすることで、魔除けたり得ているのは示唆的です。「極端」な考えや姿勢が不寛容、ひいては対立や分断につながりやすい「不吉」だとすれば、それを避ける中途半端こそ「吉」。何だか「ちゅーとはんぱやなー」が、魔除けの言葉に思えてきます。

 新年早々、「ミスター極端」もホワイトハウスを去ります。これを潮に、あれこれの極端さが少し中途半端になってくれれば、世界はその分穏やかになりましょう。

「どっちつかず」で乗り切る

 さて、コロナに右往左往した今年も今日でおしまい。もう一つ寝るとお正月ですが、新年も当面は極端な制限と極端な緩和の間…どっちつかずの中途半端で我慢強く対応していくほかなさそうです。一日でも早く、トンネルの出口が見えてきますように。そう強く念じつつ、2020年の筆をおくことにします。よいお年を−。



揺らぐ「法の支配」 権利と自由が侵害される(2020年12月31日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 秋の臨時国会。菅義偉首相が何度も繰り返した答弁がある。

 「内閣法制局の了解を得た政府としての一貫した考え方である」―。日本学術会議が推薦した会員候補6人の任命を、菅首相が拒否した問題だ。

 首相の任命権は「形式的にすぎない」とされていた。今回問われたのは、首相が推薦を拒否できるのかという点だった。

 菅首相は「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」と述べた。「錦の御旗」にしたのが内閣法制局の見解だ。

 内閣を法制面で補佐する法制局。憲法や法律に基づいた見解や答弁を政府は尊重し、それが法律の安定性をもたらしてきた。

 法制局は独立性を求められながら、憲法上の規定がなく、制度上「内閣の下部組織」という矛盾を抱える。機能してきたのは、歴代内閣に「法の支配」には従うという前提があったからだろう。

 それが崩れたのが2013年の法制局長人事だった。安倍晋三政権が集団的自衛権を巡り、憲法解釈の見直しに前向きな人物を法制局長官に起用。解釈を変更した上で安保法制を成立させた。

 以来、7年。人事権に介入された法制局は独立性を維持できにくくなっているのに、その「権威」だけが政府に利用されていないか。今年は「法の支配」の揺らぎが問われ続けた1年だった。

   <法制局が後押し役>

 今回の法制局の見解は1983年の国会答弁と矛盾する。

 会員を公選制から任命制に変えた改正日本学術会議法の国会審議で、当時の中曽根康弘首相は「形式的な任命」と答弁。任命拒否が起きない保証を求めた野党に対し、政府は「内閣法制局と十分に詰めた」として法解釈上、拒否はあり得ないと説明していた。

 菅首相らは今回、「40年前の答弁の趣旨は分からない」と述べ、法制局もそれを追認した。

 法解釈を事実上、変更したのは明白なのに「当時から一貫した法解釈」と強弁する内閣。法の運用を自在に変え、押し通す背景には「法の支配」を軽視する姿勢が垣間見える。

 春の通常国会では、当時の安倍政権が黒川弘務東京高検検事長(当時)の定年を延ばすため、検察官の定年延長はできないとしてきた従来の法解釈を変更した。

 安倍氏に近いとされる黒川氏を検事総長に据えるための定年延長だった、との指摘が根強い。

 この解釈変更の過程ははっきりしない。定年延長を閣議決定した1月末以前に内閣法制局や人事院と解釈変更を調整したことになっているのに、関連文書には日付が未記入だった。

 検察は、政権の中枢にいる政治家も捜査対象にできる。その人事を巡る法律の解釈を閣議決定だけで変更できるのなら、「法の支配」が根底から崩される。

   <多数派が「正義」か>

 学術会議や検察官の問題は、専門家から法解釈の違法性を指摘する意見が相次いだ。政府に異議を申し立てない法制局は、下部組織として内閣の意向を無視できなくなっている懸念が拭えない。

 憲法学者の芦部信喜氏(23~99年)は、「法の支配」を「権力を法で拘束することによって、国民の権利・自由を擁護することを目的とする原理」と定義した。

 国会で時間をかけて法案を審議して少数派の意見を採り入れた法律を制定し、政府は法に従い統治することが民主主義の基本だ。

 第2次安倍政権の発足後、政府は選挙で得た多数を「正義」として、「法の支配」をないがしろにすることをいとわなかった。

 野党が憲法53条に基づいて要求した臨時国会の開催要求すら政府が事実上、無視することが続いている。「法の支配」が揺らぎ続けると「国民の権利・自由」が侵害されかねない。

   <「信頼」前提なのに>

 法的に政府の独走を制御できる防波堤は、裁判所の違憲審査権があるものの、問題が起きてから判決まで時間がかかる。

 横浜国立大学の君塚正臣教授は法制局を改組して内閣から独立させて、法案などを事前に審査する機関をつくることも一つの解決策になると提案する。

 専門性の高い人を集め、内閣が指名し国会が承認する。それによって時の内閣の恣意(しい)的な法解釈を防ぐ狙いだ。

 君塚教授は「独立行政機関として法的根拠を与え、中立性を担保する。事前審査における勧告までなら、司法権も行政権も侵害せず合憲だ」と説明する。

 本来は与党にも政府の行きすぎを止める役割があるはずだ。それなのに、小選挙区制の導入以降、公認権などを背景に首相の権力が強まった影響などで、内閣の追認機関になっていないか。

 現在の制度は政治家が「法の支配」を覆すことはしない、という最低限の「信頼」を前提にしたものといえる。それすら通用しなくなるのなら、「法の支配」を保てるよう制度を変える必要がある。



暮れゆく2020年 当たり前が揺らいだ中で(2020年12月31日配信『新潟日報』-「社説」)

 新型コロナウイルスが猛威を振るった2020年が暮れようとしている。感染拡大はやまず、収束の道筋は見えない。

◆変化迫られた暮らし

 新型ウイルスの感染が中国・武漢で初めて確認された19年12月、当時はまだこのウイルスがこれほど強い感染力を持って世界にはびこり、多くの命を奪うことになるとは思いも寄らなかった。

 治療薬やワクチンはなく、私たちの暮らしは変化を迫られた。感染を防ぐために人との距離を保ち、常にマスクを身に着ける。そうした行動が習慣になった。

 ウイルス禍で「当たり前」だったことが次々と揺らいだ。

 一斉休校になった学校からは、例年のような卒業式や入学式の風景が消えた。

 介護施設などでは、重症化しやすい高齢者らを感染させないように、オンラインでの面会を導入したところも多かった。

 飲食店は感染拡大のたびに時間短縮を求められた。仲間や友人と会食する機会はめっきり減った。

 長引くウイルス禍は、経済面やメンタル面でも私たちに深刻な影響を与えている。

 感染拡大による解雇や雇い止めは全国で8万人に迫り、正規労働者の解雇が目立ってきた。

 失業や生活苦から自殺する人が増え、県内では今年8~11月の自殺者が直近の5年間で最多となった。女性の自殺は全国で多い。

 追い込まれ、生きる力を失う人が増えているのは切ない。

 残念なのは、感染リスクを抱えて治療に当たっている医療従事者や感染した人に心ない中傷が向かうケースがあったことだ。

 ストレスを抱えた医療従事者の離職も目立っている。医療現場はどこも逼迫(ひっぱく)している。

 生活やウイルスへの不安から、言葉や態度がとげとげしくなってはいないだろうか。

 「僕たちは絶対に味方」「一緒に乗り越えよう」

 クラスター(感染者集団)が発生し臨時休校した柏崎市の荒浜小学校では学校再開の日、児童玄関に他校の児童が寄せたメッセージが貼り出された。

 ぬくもりは多くの人に届いたはずだ。つらい立場にある人を励ます言葉の重みをかみしめたい。

 国民にとっては安倍晋三前首相の政権運営も一つの「日常」だった。連続在職日数が8月に7年8カ月となり歴代最長を更新した。

◆最長首相唐突な退場

 しかしその直後、安倍氏は唐突に政権に幕を下ろした。

 長期にわたった「安倍1強」は官邸主導の体制を確立した。「地方創生」や「1億総活躍」といった看板政策を次々と掲げ、官僚や政治家の間には首相におもねる「忖度(そんたく)」の風潮が生まれた。

 森友、加計学園問題や「桜を見る会」など浮上する疑惑は説明責任を果たさず、はねのけた。

 国民感覚との乖離(かいり)は進み、新型ウイルスを巡る対応でそれがあらわになった。

 「アベノマスク」と揶揄(やゆ)された布マスクの全戸配布に巨額を投じ、肝心の緊急事態宣言の発令は後手に回った。自宅でくつろぐ動画をツイッターに投稿して外出自粛を呼び掛け、「国民の痛みが分かっていない」と批判された。

 こうしたことが支持率を政権最低レベルに押し下げた。

 安倍氏は拉致問題を「政権の最重要課題」と位置付け解決に意欲を見せていた。長期政権でも進展がなかったことは極めて残念だ。

 6月に横田めぐみさんの父、滋さんが亡くなり、被害者の親世代で存命なのは母早紀江さんを含め2人だけになった。

 「生きるだけでやっとだった」「二度と、あんな悲惨な世の中にしてはだめだ」

 戦後75年の今年、出征した南方や抑留されたシベリアでのつらい戦争体験を本紙に証言してくれた県人たちがいた。

◆平和の歩みをさらに

 声を詰まらせ、涙を流して打ち明ける。証言者たちはいずれも90歳を超えているが、心の傷は何年たっても癒えることはない。

 「この75年間、苦しんだ体験を伝え続けているのに一体どういうことなのか」

 カナダ在住で広島で被爆したサーロー節子さんは、日本政府に対して怒りをぶつける。

 核兵器の開発から使用まで全面的に禁じる核兵器禁止条約は批准数が50カ国・地域となり、来年1月に国際法として発効する。だが米国の「核の傘」に頼る日本は、唯一の戦争被爆国でありながら条約に参加していないからだ。

 世界を不安が覆う今、戦争体験者が背負い続けた深い苦しみを、改めて胸に刻みたい。

 体験を語り継ぎ、風化させない。そのことによって、戦後、当たり前となってきた平和な日常を守り続けていきたい。



コロナ禍の年越し(2020年12月31日配信『福井新聞』-「論説」)

命を守る行動に徹したい
 新型コロナウイルスの感染拡大に世界が翻弄(ほんろう)された1年だった。収束の見通しが立たないまま、流行後初めて迎える年末年始。ここに来て、変異種の拡散の恐れも伝えられる。県内を含め日本海側では大雪の予報もある中、我慢の年越しを実践するなど命を守るための行動に徹したい。

 今年は夏の「第2波」によりお盆の帰省を諦めた人も少なくなかった。その分いつも以上に年末年始に里帰りや旅行で家族、父母兄弟、旧友らと過ごしたいと強く望んでいよう。中には感染拡大が続く都市部へやむなく帰省する人もいるだろう。「自分がもし感染していたら」「自分も感染するかもしれない」と考え、行動や対策に万全を尽くしてもらいたい。

 福井新聞の調査報道「ふくい特報班」(通称・ふく特)には、帰省したいと願う都会暮らしの息子を、何とか説得し思いとどまらせたとの投稿があった。投稿した母親は福祉施設の職員で、さらには高齢の祖父も同居しているという。同じように苦悶(くもん)した家庭も多いのではないか。

 「第3波」の感染が急拡大している地域では、人員が手薄になる年末年始に特に医療体制が逼迫(ひっぱく)しかねない。福井県など感染を比較的抑え込んでいる地域でも一気に医療崩壊を招くような事態が懸念される。このため政府のコロナ対策分科会は「人々の交流を通じて感染が全国に拡大」しないよう「静かに過ごす年末年始」を呼び掛けている。

 東京都では1日の新規感染者数が900人を超える日があるなど歯止めがかからない。担当者が「いろんなところで広がった結果」というように今や市中感染の様相だ。分科会の尾身茂会長は「感染経路不明の6割の多くは飲食店での感染と考えられる」と指摘。市中での感染者が無自覚のまま家庭や職場にウイルスを持ち込んだとの見立てだ。

 尾身氏は「忘年会や新年会は基本的に見送って」「5人以上は控えて」「帰省は延期も含めて慎重に検討を」といった呼び掛けもしている。NTTドコモがまとめた26日午後3時時点の人出は全国の主要駅や繁華街計95地点の約7割で前週末から減少。28日からの「Go To トラベル」の一時停止もあり、人の移動は一定程度抑えられているようだ。

 だが、それでも感染拡大が続くとしたら、菅義偉首相や政治家らが多くの人と会食を重ねる慣行を変えようとしなかったことが影響したとみられても仕方がない。国民に「会食してもいいのか」と事態を軽視させてしまった責任は重い。

 民間有志が「第1波」を検証した報告書の肝は「泥縄だったけど、結果オーライだった」だろう。28日の対策本部会議で首相は「ウイルスに年末年始はない」などと「先手」を殊更印象付けたが、再び結果オーライとなるかは見通せない。



国内/強権政治が混迷を深めた(2020年12月31日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの影響を抜きには語れないこの1年だが、それとは切り離して問い直さねばならない問題もある。

 今、社会を覆っている不安は未知のウイルスによる一過性の事態なのか、この国がずっと抱えていた問題なのか。混迷から抜け出すために、その本質を見極める必要があるからだ。

 7年8カ月に及んだ歴代最長政権が安倍晋三首相の体調不良を理由とした突然の退陣で幕を閉じた。国政選挙の連勝で「1強」体制を築いた安倍氏は安全保障関連法など賛否が分かれる法律を成立させた一方、「地方創生」「女性活躍」といった看板政策は道半ばに終わった。

 継承を掲げた菅義偉首相が「あしき前例」として真っ先に手を付けたのは、コロナ禍での優先課題とは考えにくい日本学術会議会員の任命拒否だった。

 踏襲されたのは国会で積み上げてきた法解釈を曲げ、問答無用で意に沿う組織に変えようとする強権的な政治手法である。

 異論に耳を傾けず、説明責任を果たさない政治の長期化が、官邸への忖度(そんたく)をはびこらせ、国民との距離を広げた。酷評された「アベノマスク」、迷走を重ねた「Go To」事業など両政権のコロナ対応の混乱も、その延長線上にあったと言える。

 政権中枢で相次ぐ「政治とカネ」問題が不信を一層深めた。「桜を見る会」前夜祭の費用補填(ほてん)問題で安倍氏は虚偽の国会答弁を認めた。元法相夫妻の公選法違反事件、元副大臣のIR汚職事件、元農相の現金授受疑惑のいずれも十分な説明はない。

 緊急事態宣言や東京五輪・パラリンピックの延期決定などは国や自治体の判断が人の人生をも左右することを実感させた。

 導入を望む人が増えている選択的夫婦別姓制度は自民党の反対で再び後退した。国民の声や社会の変化に真摯(しんし)に向き合う議論が尽くされたかは疑問だ。

 熊本県などを襲った豪雨被害は複合災害への備えに警鐘を鳴らした。会員制交流サイト(SNS)の普及は、人を追い詰める中傷や、悩みに付け込む凶悪犯罪の温床にもなった。

 異なる価値観を認め、弱さを補い合ってこそ、手ごわい災禍を乗り越えられる。変わろうとしない政治を前に、心に刻む。



「お疲れさま」(2020年12月31日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 作家井上ひさしさんは大みそかのNHK紅白歌合戦で審査員を務めたことがある。客席で感じたさまざまなことを、「紅白のタイムマシンに乗って」というタイトルで雑誌に書いた

◆こんな場面が印象深い。番組が終わって帰ろうとし、出口で振り返ると、舞台にまだ2人の歌手がいた。美空ひばりさんと三波春夫さんだ。若いスタッフ一人一人へ「お疲れさま」と丁寧に頭を下げていたそうだ

◆歌謡界を代表する2人である。すぐに楽屋へ引き揚げてよさそうなものだが、そうしない。それぞれの仕事をこなす人がいたから番組はできた。だから支えた人への感謝を忘れない。さすがだな、と思わせる

◆今年、エッセンシャルワーカーという単語を初めて知った。暮らしに欠かせない仕事を指している。医療、介護、福祉、保育、小売り、ごみ収集、交通機関…。感染が広がっても社会が大きく崩れなかったのは、現場を担う人たちの頑張りがあったからだ

◆コロナ禍の大みそかになった。菅首相や閣僚、各自治体のトップがどんな一日を送るか、存じ上げない。胸に不安の塊を抱えながら、誠実に仕事と向き合ったみなさんへの「お疲れさま」をどうぞお忘れなく

◆小欄からも「お疲れさま」。新しい年も「よろしくお願いします」。



今年を振り返る 社会を揺るがしたコロナ(2020年12月31日配信『山陽新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスが社会を大きく揺るがした一年だった。感染の拡大は日々の暮らしをはじめ、政治や行政、経済活動を直撃し、未曽有の感染症に対する備えの甘さがさまざまな場面で露呈した。パンデミック(世界的大流行)が収束する兆しが見えない中、ウイルスと共存する「ウィズコロナ」時代を生き抜くための模索が続く。

 都市部を中心に感染者が急増したことを受け、当時の安倍晋三首相は4月7日、新型コロナ特措法に基づく緊急事態を7都府県を対象に宣言し、人との接触を7~8割減らすよう求めた。宣言はその後、全国に拡大した。

 国民は外出自粛を余儀なくされ、飲食店は休業に追い込まれるなどで経済は冷え込んだ。4~6月期の国内総生産(GDP)は戦後最悪の下落となり、政府は低迷する経済の支援策として観光や飲食分野などの「Go To キャンペーン」を展開してきた。だが感染者増が再燃し、年末年始はキャンペーンが停止されるなど十分な効果は発揮されないままだ。

 政府のコロナ対応にも批判が高まった。安倍前首相が2月下旬、全国の小中学校、高校などに一斉休校を要請したことで、教員や共働き家庭は準備が整わず、対応に追われた。特別定額給付金の支給を巡っても、行政のデジタル化の遅れなどから混乱した。

 秋から始まった感染の「第3波」はさらに猛威を振るい、国内感染者は20万人を超えた。必要な医療が提供できなくなる医療崩壊の危機に直面している地域もある。国民の命を守る実効性ある施策の展開が急がれる。

 地球温暖化に伴う異常気象は今年も列島を襲った。九州を中心とした7月豪雨では、熊本県の老人ホームの高齢者らを含め全国で80人超が犠牲となった。

 政界では、歴代最長政権となっていた安倍氏が持病の悪化を理由に退陣を表明。官房長官だった菅義偉氏が9月、第99代首相に選ばれ、新型コロナ対策など政権運営のかじ取りを任された。

 「政治とカネ」の問題が相次いだことも見過ごせない。昨年の参院選広島選挙区で地元議員らに集票を依頼し現金を配ったとして、公選法違反容疑で河井克行前法相と妻の案里参院議員が逮捕された。

 安倍晋三後援会が「桜を見る会」前夜に催した夕食会の費用補てん問題を巡っては、政治資金規正法違反で公設第1秘書が略式起訴され、安倍氏は不起訴処分となった。だが、結果として国民や立法府を欺いた責任は重大であり、これまでの説明で国民の理解が得られたとは言い難い。

 海外では、11月の米大統領選は、民主党のバイデン前副大統領が大接戦の末、トランプ大統領の再選を阻んだ。自国第一主義から国際協調路線への転換となる。日本や中国との関係を含め、世界秩序への影響を注視したい。



片仮名があふれた(2020年12月31日配信『山陰中央新報』-「明窓」)

 新型コロナウイルスに振り回された一年も残り24時間を切った。振り返ると、今年ほど新聞に片仮名があふれた年は記憶にない。ビッグスリーは「コロナ」と「マスク」に「トランプ(米大統領)」の文字。紙面で見掛けない日はないくらいだった

▼中でもコロナ関連では、専門用語や略語に加えて「3密」などの新語も登場。書き出してみると、煩悩の数とされる百八つに匹敵した。しかも半数は片仮名語。「コロナ用語辞典」が必要なほどだ

▼そこで復習をしてみる。世界保健機関(WHO)がパンデミック(世界的大流行)を宣言すると、PCR検査数やクラスター(感染者集団)対策が焦点になった。オーバーシュート(爆発的患者急増)やロックダウン(都市封鎖)で脅され、テレワークやステイホームが呼び掛けられ、オンラインやリモート○○が流行。一方で、コロナの文字にアフターやポスト、ウィズ(with)を付けて時代が論じられた

▼今ではフィジカルディスタンス(物理的距離)と呼ばれるソーシャルディスタンス(社会的距離)や、社会生活の維持に欠かせないエッセンシャル・ワーカーが話題になったのも同じ頃。日本で死者数が少ない要因は「ファクターX」と呼ばれた

▼明日からは「丑(うし)年」。トランプ氏の退場に続き、残るコロナもマスクも、そしてコロナ用語も、「モーご用済み」になる日を早く迎えたい。



コロナの一年 政治の在り方を転換する契機に(2020年12月31日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 世界で猛威を振るう新型コロナウイルスがさまざまな課題をあぶり出した一年だった。

 感染者急増を受け4月、当時の安倍晋三首相は新型コロナ特措法に基づく緊急事態を宣言。人との接触を7~8割減らすよう求めた。地方自治体は飲食店や遊興施設に休業要請し、経済活動が一気に停滞した。宣言は5月に解除されたが、夏場と11月以降に感染が再び拡大。現在は「第3波」の最中にある。

 新型コロナは暮らしに深刻な影響を与えている。多くの業種が打撃を受け、解雇や雇い止めは約8万人に上る。政府は緊急経済対策で国民1人当たり10万円を給付するなどしたが、効果は一時的だ。生活支援の取り組みを継続・拡充し、国民の命を守らなければならない。

 この間の政府の対応はともすれば後手に回った。低迷する経済のてこ入れへ、観光や飲食業界の支援事業「Go To キャンペーン」を夏以降、順次実施。感染が拡大局面に入っても政府は事業推進にこだわった。医療体制が危機に直面し、ようやくトラベル事業を全国で一時停止したが、遅きに失したと言わざるを得ない。

 年末時点で感染者は20万人、死者は3千人を超えた。重症者も増え続け、医療機関に大きな負担がかかっている。感染拡大を抑えるとともに、医療体制強化への支援が急がれる。

 感染拡大を防ぎつつ経済を回す必要性は論をまたない。大事なのは状況に応じた柔軟なかじ取りだ。それを可能にするには科学的根拠に基づいて戦略を練り、先手先手の対応に転換する必要がある。国が場当たり的な対応を重ね、現場を混乱させる悪循環はもはや許されない。

 コロナの陰に隠れがちだったが、長期政権のおごりやうみも見過ごせない。安倍首相が持病の悪化を理由に8月末、辞任を表明。7年8カ月もの間「安倍1強」を誇ったが、コロナ対応の不手際で求心力が低下し、景気低迷からの脱出に道筋を示せないままの退場となった。

 後任の菅義偉首相は安倍路線継承を掲げ、強権的な手法も受け継いだ。それが如実に現れたのが日本学術会議の会員任命拒否問題だ。政府に批判的な学者を排除した疑念が持たれたが、菅氏は具体的な拒否理由の説明を拒み、学術会議の組織見直しに論点をすり替えた。

 「政治とカネ」を巡っては、前法相夫妻が公選法違反容疑で逮捕され、元農相の現金受領疑惑が浮上。「桜を見る会」の夕食会費補塡(ほてん)問題で安倍氏の秘書が略式起訴され、安倍氏も事実と異なる国会答弁を重ねたことが判明した。政治不信は極まり民主主義が揺らいでいる。

 コロナへの対応が迷走したのは、政治から謙虚さや信頼が失われた結果でもあろう。議論を尽くし、説明責任を果たす政治に転換しなければならない。国民からの信頼回復が、コロナをはじめ日本が直面する課題の解決に向けた鍵となる。



コロナ禍の大みそか(2020年12月31日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 一説によると、福袋の由来は 江戸時代にさかのぼる。呉服店 が余った生地を袋に入れて売り 出したところ評判になったという。お得感はいかほどだったか。新春に欠かせない風物詩的商法には現代人の心もつかまれる

▲例年なら元日以降としている福袋の販売を前倒しで始める店が、あちこちで登場している。もちろん、新型コロナウイルスの感染拡大につながる混雑を避けるのが狙い。近所の大型スポーツ店にもコーナーが用意され、来店者が品定めしていた

▲きょうは大みそか。国民がウイルスとの闘いに明け暮れた2020年が間もなく終わる。当たり前とされた価値観が揺さぶられ、変革が迫られた一年だった

▲外出時はマスク必須、手洗いの励行が叫ばれ、隣の席との間がシートやアクリル板で遮られる。去年の今ごろ、そんな社会の到来は考えてもみなかった。リモート形式の働き方もずいぶん浸透。働き方改革の必要性は以前から広まっていたが、こんな形で進むとは

▲国や専門家が「静かに迎えて」と呼び掛ける年末年始でもある。第3波の拡大が止まらず、感染力が強いとされる変異ウイルスも国内で確認された。人が集まる機会がお預けになる分、一緒にいる人との過ごし方が大事になりそう

▲ 巣ごもり生活を工夫し、出かける際はゆとりを持って。三が日以外の初詣もいいかもしれない。コロナ対策を怠らず、いつもと違う年末年始を心穏やかに過ごしたい。



2020回顧 問われた「忍耐、努力、心」(2020年12月31日配信『西日本新聞』-「社説」)

 日本を代表するコメディアンだった志村けんさん。その著書「変なおじさん 完全版」(新潮文庫)は至って真面目な本である。どうすれば人を笑わせられるか-。喜劇論であり、人生論だ。好きな言葉を「忍耐、努力、心」と記している。

 2002年の初版後、2刷が出たのは、志村さんが70歳で亡くなった今年3月29日から17日後のことだ。多くの日本人に身近な著名人の新型コロナウイルス感染症による死は、その脅威を世の中に広く実感させた。

 「人間・志村けん」を、その死後に知った人もいるだろう。人の真の姿や、世の常識とは何か。コロナ禍の中で経験する「新たな日常」で、自分を見つめ直す機会が格段に増えた人も少なくないのではないか。

■変化のきっかけ逃すな

 コロナ禍は社会に多大な「忍耐」や「努力」を強いた。と同時に、多くの思わぬ副産物も生んでいる。その代表例が、感染防止のために提唱された「3密(密閉、密集、密接)」回避という生活スタイルだろう。流行語大賞にもなった。

 自宅などで勤務するテレワークは職場に出勤するという心構えさえ変えた。都市部では満員電車といった通勤の苦労から解放された人も多い。ITを活用したオンラインによる活動は教育や医療、コンサートなど芸術にも広がった。

 その過程で図らずも、日本がいかにデジタル化の後進国であるかもあぶり出された。コロナ禍に対応する給付金のオンライン申請は、制度設計のずさんさから全国で混乱した。

 9月に発足した菅義偉政権の目玉政策であるデジタル庁新設はその反省から生まれた。はんこの廃止も同時に進む。デジタル化は高齢者にも優しく、暮らしやすい社会を目指す手段という点を忘れずに努力したい。

 「密」を回避する延長線上で注目されたのが、九州など地方への移住という新たな動きだ。最近は耳にすることも減った地方分権や地方創生の呼び水となるのか、コロナ禍が収束すれば元に戻るのか。この変化のきっかけを逃す手はない。忍耐強く議論を深めたい。

 コロナ禍は私たちの「心」の暗部もえぐり出した。外出や移動の自粛要請に応じない人々への嫌がらせが相次いだ。感染者や家族、医療従事者らへの差別や偏見が今も、インターネットを通じ増長されている。

 会員制交流サイト(SNS)などの法規制を求める声も高まっており、SNS事業者が自主的な取り組みでどこまで事態を改善できるか。まさに努力の結果が求められている。

■自分に正直に生きよう

 東京五輪・パラリンピックが1年延期された。やむを得ない「忍耐」だろう。ただ多くの出場内定者が悲観せず「練習の期間が増えた」と前向きに捉え、私たちに勇気を与えてくれた。

 熊本県を襲った豪雨は感染拡大後、初の大災害となった。避難所の「密」対策は取られていたが、被災者に接した保健師が感染者だったことが判明し、さらなる課題を突き付けた。

 「努力」の輝きも多数見られた。将棋の藤井聡太七段による史上初「10代二冠」は大人に驚きを、子どもには夢も与えた。小惑星探査機「はやぶさ2」は苦難を克服し任務を達成した。

 懸念されるのは夏以降、中高生や働く女性の自殺者が増加していることだ。コロナ禍で心の不調が増えているのだろうか。

 志村けんさんが冒頭の著書で若者に呼びかける。<天才なんて、どこにもいない。1回きりしかない人生なんだから、自分の好きなように、自分に正直に生きようよ>

 私たち全員への遺言である。



一年を四字熟語で振り返ると(2020年12月31日配信『西日本新聞』-春秋」)

 新型コロナで明け暮れた2020年。「新しい日常」で暮らしや働き方が大きく変わった一年を住友生命「創作四字熟語」で振り返ってみると

▼誰もがマスクを着ける【全面口覆(全面降伏)】が当たり前に。コロナ禍の【収束渇望(就職活動)】し、妖怪アマビエに【妖姿願霊(容姿端麗)】と疫病退散を願ったが、第2、第3波と感染拡大が止まらない

▼私たちの命を守るために【医師奮診(獅子奮迅)】を続けている医療関係者の【医心献身(以心伝心)】に改めて敬意と感謝。ワクチンの開発に世界中の研究機関や製薬会社が【薬家争鳴(百家争鳴)】としのぎを削る。国内での接種開始はいつになろう

▼「ステイホーム」が推奨され、学校は一斉休校で【児宅待機(自宅待機)】。出勤を分散した【散勤交代(参勤交代)】の会社も。飲食店は席と席の間を空けて【一席二長(一石二鳥)】に

▼政界は安倍晋三前首相が憲政史上、最も長く首相に在職して【記録更晋(記録更新)】。菅義偉氏が後を受け【菅新相誕(臥薪嘗胆(がしんしょうたん))】。「Go To トラベル」で【出発振興(出発進行)】と、景気回復を狙ったが、感染拡大で全面休止へ

▼最後は明るい話題で。将棋の藤井聡太さんが史上最年少で「棋聖」「王位」の二冠を獲得して【王棋聖聡(王位継承)】。アニメ「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」が大ヒットして各種メディアに【頻出鬼滅(神出鬼没)】。よいお年を。



2020年 県内回顧(2020年12月31日配信『佐賀新聞』-「論説」)

コロナ禍、日常を繕うことから

 収束の兆しがないまま、混迷が深まる年の瀬になった。国内外で猛威を振るう新型コロナウイルス。「密」になることを避けるために佐賀県民の日常も変容を余儀なくされ、2020年は感染症対策と暮らしをどう両立させていくか手探りの一年になった。

 県内で新型コロナの感染者が初めて確認されたのは3月13日だった。12月30日までに陽性と診断されたのは延べ464人で、3人が亡くなった。県内で実施されたウイルス検査の累計は1万4991件に上り、この数の向こうにある戸惑いや不安の広がりを思う。

 影響は多方面に及んだ。学校の一斉休校、県境をまたぐ移動や飲食店の営業自粛の要請、祭りやイベントの相次ぐ中止…。振り返れば枚挙にいとまがない。現在は「第3波」ともいえる状況が拡大、政府の観光支援事業「Go To トラベル」の一斉停止と相まって宿泊施設のキャンセルが続出し、関連産業は打撃を受けている。

 厚生労働省のまとめでは、新型コロナ感染拡大に関連した解雇や雇い止めは全国で8万人に迫る。佐賀労働局の11月20日時点の県内の集計では665人に達した。影響は労働者派遣業や製造業、サービス業などさまざまな業種に及んでいる。家計や雇用の不安に直面し、困窮する人たちへのセーフティーネットを社会でどう形づくっていくか、喫緊の課題といえる。

 コロナ禍は地方のリーダーのあり方にも焦点を当てた。国に先駆けた施策で存在感を示し、県も国の基準を上回る「念のため検査」で感染拡大を抑制、さまざまな経済支援策も打ち出した。一方で、コロナ対応の臨時交付金を財源にした「誓いの鐘」を巡っては、県議会が11月定例会で設置を取りやめる修正案を可決。山口祥義知事の肝いりの事業だったが、「今やるべきことか」と交付金の使い道が問われた。国や県の支援策が「十分ではない」という声はくすぶる。助けが行き届いていない現場がないか再点検しつつ、感染した人や関係者への差別や偏見を戒める施策は強く推し進めたい。

 不安に追い打ちをかけるように異常気象は今年も続き、7月豪雨で県内は浸水被害に見舞われた。最大級の警戒が呼び掛けられた9月の台風10号では2万人を超える人たちが避難、コロナ禍の避難対応の難しさを浮き彫りにした。密を避けるため定員を減らし、当日に避難所を追加してしのいだ自治体もあった。人手や資材をどう備えるか、見直しが迫られている。

 国策課題に目を移すと、九州新幹線長崎ルート新鳥栖-武雄温泉の整備方式を巡り、県が6月から国土交通省との協議に入ったが、県は「フル規格は受け入れられない」という姿勢は崩さず、平行線をたどった。自衛隊オスプレイの佐賀空港配備計画は、駐屯地候補地の地権者を対象にした防衛省の説明会が、地権者が多く所属する漁協の意向でノリ漁期が明ける来春以降になった。自衛隊との空港共用を否定した協定の見直し協議の行方は見通せない。

 多くの課題が21年に持ち越されていく。新型コロナの影響で来夏に延期になった東京五輪・パラリンピックも開催できるのか、懸念が付きまとうが、聖火リレーのコースが発表されるなど再準備が進む。できることから手だてを講じ、日常を繕い、光明を見出していきたい。(井上武)



県内この1年 コロナ、豪雨…「三重苦」に(2020年12月31日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 熊本地震からの復興が続いた2020年の県内は、新型コロナウイルスの感染拡大に加え、7月には県南部を中心に甚大な豪雨災害が発生。まさに「三重苦」の状態に陥った。コロナ対策に追われる国に頼りきるわけにはいかず、さまざまな局面で自治体の対応力が問われた。

 県内で初めて新型コロナ感染者が確認されたのは2月21日。3月22日投開票の知事選が1カ月後に迫っていた。選挙運動は縮小を余儀なくされ、論戦は低調に。現職の蒲島郁夫氏が元熊本市長の幸山政史氏を退け、県政史上初の4選を果たした。

観光客不在の節目

 4月には、空と海の玄関口が節目を迎えたが、やはり新型コロナに水を差された。熊本空港(益城町)は国管理空港で4番目となる民営化空港に移行。国際線が運休し国内線も減便される中、寂しい“離陸”となった。八代港(八代市)にはクルーズ船の受け入れ拠点「くまモンポート八代」が完成したものの、寄港はゼロ。観光客不在のまま、半年遅れの10月に地元向けに開放された。

 コロナ特措法に基づく緊急事態宣言は、4月中旬に全国へ拡大。県は休業要請も決め、対象事象者に協力金を支給した。一部市町村も独自の支援策を講じた。小中高校は3月初めから一斉休校し、春休みは宣言が解除される5月末まで継続。小中学校のオンライン授業は市町村で実施状況が異なり、夏休みの長短となって表れた。

 感染の波はなかなか収まらず、事業所や飲食店、高齢者施設などでクラスター(感染者集団)が続発。感染者数は累計1800人を超えた。「第3波」の真っただ中で迎えた年末。県は熊本市中心部の飲食店に来年1月11日までの営業時間短縮を要請し、市町村も成人式の中止を決めるなど、ぎりぎりまで対応に追われた。

限られた支援の手

 自然の脅威は、コロナ禍も構わず襲いかかった。7月4日未明、県南部に発生した線状降水帯は局地的に1時間100ミリを超える大量の雨を降らせ、球磨川水系の氾濫や土砂災害が多発。6市町村の65人が死亡、2人が行方不明となった。住宅1490棟が全壊し、建築物や土木施設など被害総額は5330億円(11月24日時点)に上る。

 避難所では検温や消毒、「密」にならないスペース確保など、感染防止に配慮した運営が求められた。ボランティアも当初、県内在住者に限って募集したため、人手不足に。早期復旧を阻む要因となった。それでも個人や企業の息の長い支援は今も続いており、県民同士の「共助」を心強く思った人も多いのではないか。一方で、コロナ禍のような状況では国による「公助」が一層重要になることも痛感させられた。

 豪雨がもたらした最大の課題は球磨川流域の治水対策だろう。蒲島知事が12年前に川辺川ダム建設計画を「白紙撤回」して以降、代替策が遅々として進まなかったことは悔やんでも悔やみきれない。

重い宿題年越しに

 知事は駆け足で「流域の民意」を確認し、11月19日に流水型(穴あき)ダム建設を含む新たな治水方針を表明した。しかし、熊本日日新聞社が表明後に実施した意識調査では、ダム建設を望む被災住民は思いのほか少なかった。この認識の差をどう埋めるのか、知事は重い宿題を抱えての年越しとなろう。

 振り返れば災禍ばかりが思い起こされるが、8月にはJR豊肥線が全線復旧し、10月には国道57号の現道と自動車専用の北側復旧道路が開通した。益城町の復興土地区画整理事業も、地権者への宅地の引き渡しが一部で始まった。地震からの復興も着実に進んだ1年だった。



2020年を振り返る 歴史に刻まれる1年(2020年12月31日配信『南日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスに世界が翻弄(ほんろう)された年が幕を閉じる。新たなウイルスは世界中の人々の生活を一変させ、人類の歴史に深く刻まれた。人類を襲ったウイルスは感染者を爆発的に拡大させ、多くの犠牲者を出している。経済活動も停滞し、各国とも苦境にあえいでいる。

 新型コロナの流行が拡大し始めた当初、国際的な協力態勢が築けていれば感染拡大はある程度防げたかもしれないという反省が残る。いまだウイルスを封じ込める見通しは立っておらず、人類の試練は続くことになる。ワクチン接種は英国で始まったが、わが国などはまだ先になりそうだ。

 このコロナ禍の最中、日米ではリーダーが変わった。自国第1主義を掲げたトランプ氏に代わって大統領に就任するバイデン氏と、菅義偉首相には、コロナ禍の収束に向けて国際社会が団結するよう指導力を発揮してもらいたい。

 地球全体がつながる現代社会では感染症拡大のスピードは恐ろしいほどに早い。新型コロナウイルスがこれまでの危機と異なるのは、特定地域ではなく、世界の至るところに広がったことだ。人の移動は制約され、人々の生活や社会活動の在り方さえ一変させた。

 県内外でも感染防止のために営業自粛が求められた飲食業や旅行業、宿泊業をはじめ、経済活動に大きな影響を与え、廃業や倒産が相次いでいる。失業者の増加は貧困を拡大させ、自殺者の増加など社会に暗い影を落としている。

 コロナ禍の影響は幅広い。教育界は学生や児童生徒たちが通常の授業を受ける機会を失い、混乱が続いた。夏祭りや花火大会などのイベントもことごとく中止に追い込まれ、芸術・文化分野でも公演中止が相次いだ。東京五輪・パラリンピックも延期され、スポーツ界への影響も甚大だった。

 コロナ禍は働き方も変えた。テレワークが拡大し、在宅勤務が増えたことでライフスタイルにも変化をもたらした。通勤時間がなくなり、家族らと過ごす時間が増えたが、外出自粛のストレスからか、子どもや配偶者への虐待も増加し、新たな問題も生んだ。

 一方で大都市に住む必要性が低下したことで、東京から地方に移住する人も現れている。東京一極集中を是正する契機としての期待もある。県内でも移住促進に積極的に取り組む自治体が出ており、地域おこしの上で新たな期待も膨らむ。

 感染者の増大は「自粛警察」なる言葉も生み出し、偏見や差別を増幅した負の側面は憂えるべきことだ。もはや誰もが感染する可能性がある。助け合う社会を築きたい。

 コロナ対策で明け暮れた1年だったが、朗報も届いた。高萩市出身で、日本で初めて経緯線のある全国地図を完成させた長久保赤水の関係資料と、一橋徳川家関係資料が国の重要文化財に指定された。さらに笠間市などの「焼き物文化」と、牛久市などの「ワイン文化」が日本遺産に認定されたことは本県の地域振興の上でも期待したい。

 ともあれ、コロナ禍は来年も続くことを覚悟しなければならない。収束の目途が立たない限り、苦境に陥る企業や人々が増えるであろうことは必至だ。経済の立て直しを図りながら、国や県、市町村には、人々の命と暮らしを守る施策に厚みをかけてほしい。



2020年回顧 試練の1年、教訓生かせ(2020年12月31日配信『琉球新報』-「社説」)

 このような試練の年になると誰が予想しただろうか。未曽有のコロナ禍は沖縄社会を大きな混乱に陥れた。今なお県民は苦境のただ中にある。さまざまな経験から得た教訓をコロナに打ち勝つ社会づくりに生かしたい。

 県試算では新型コロナウイルスによる県経済の損失額は6482億円に上る。厚生労働省の集計で新型コロナ関連の解雇や雇い止めは1600人に迫っている。

 政府の対応は後手に回った。菅内閣の支持率急落はコロナ対応への国民の不満の表れだ。菅義偉首相が掲げる政策理念「自助」「共助」「公助」の中で「公助」が乏しいのである。窮地に追い込まれた人々を支援する施策が不可欠だ。

 島しょ県である沖縄は医師や病床の確保が県民の生命に直結する。逼迫(ひっぱく)する医療現場への支援と合わせ、コロナ禍で判明した課題を検証したい。経済面では観光依存型で良いのか再考が求められる。

 半面、ネットを活用したリモートワークの試みが広がった。文化・芸能の分野でもネットによる情報発信が始まった。コロナ禍を生きる社会づくりの芽生えだと言えよう。

 基地問題では辺野古新基地建設を強行する政府の専横が今年も目立った。防衛省は大浦湾に広がる軟弱地盤に7万本余のくいを打ち込む土地改良工事を追加する設計変更を県に申請し、次年度予算に55億円を計上した。税金の無駄遣いであり、政府は新基地建設を断念し、県内移設を伴わない普天間飛行場の全面返還にかじを切るべきだ。

 米軍絡みの事故では4月、有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOSなどを含む泡消火剤が普天間飛行場から流出し、周辺住民を不安に陥れた。地域住民の安全を脅かす事故は許されない。

 今年上旬、34年ぶりに猛威を振るった豚熱も県民生活に衝撃を与えた。殺処分された豚は10農場で1万2千頭に上る。畜産農家の打撃は大きい。豚肉食は沖縄の食文化には欠かせない。再発防止に向けた防疫体制の確立が急がれる。

 沖縄初の芥川賞受賞者で、戦後沖縄の文化・芸術活動の中軸であり続けた小説家の大城立裕さんが死去した。小説、エッセー、戯曲など多彩な作品を通じて沖縄問題の本質を追究してきた大城さんの文学的遺産を継承していきたい。

 スポーツの分野では、プロ野球西武の平良海馬投手がパ・リーグ新人王選出という快挙を成し遂げた。自転車ロードレースの新城幸也選手が東京五輪代表に決まった。既に出場が確定している空手の喜友名諒選手と合わせて五輪での活躍が期待される。

 コロナ禍の収束の道筋はまだ見えない。試練は来年も続く。県民個々に求められるのは命の支え合いであろう。それは75年前の沖縄戦の惨禍の中で得た教訓でもあった。苦境の中で、誰一人取り残さず命を守る沖縄の「共助」の精神を確認したい。



大みそかに思うこと…(2020年12月31日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 2020年が終わろうとしている。東京オリンピック開催を夏に控えた年始めには誰もこのような年になるとは想像していなかった。新型コロナウイルスの感染拡大で異例づくしの1年だった

▼4月の緊急事態宣言で私たちの暮らしは一変した。休業、時短営業、自粛で冷え込む経済に家計や雇用の不安は高まった

▼政治の透明性と説明責任を巡り、今年も国民の信頼は揺らいだ。「桜を見る会」や日本学術会議の任命拒否問題などに対する十分な説明は乏しかった。コロナ対応と合わせ、政治指導者の資質を考えさせられた

▼沖縄に目を転じると、基幹産業の観光が大打撃を受け、県経済も大きく落ち込んだ。生活に困窮する人が増え、離島医療の脆(ぜい)弱(じゃく)さも浮かび上がった。一方、困窮世帯への食料提供など支援活動が広がり、県民による助け合いが見られた。危機に直面して多くの気付きがあった1年だった

▼辺野古移設では政府が民意をくみしない姿勢を続ける。泡消火剤流出事故など米軍基地が集中する沖縄のひずみがあらためて露呈した。年明けには米国に新政権が誕生する。政府が解決に向け本腰を入れることを切に願う

▼この1年、コロナ禍で社会のありようが問われた。今年を振り返り新たな1年に思いはせる大みそか。“禍(わざわい)”を転じて福となす。来年は逆境をはねのけ前向きに生きていける年にしたい。



[コロナ猛威] 耐えた1年 来年こそは(2020年12月31日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 道行く人が皆、マスクを着け、「密」を避けるために人と人の距離を空ける。自宅などでのテレワークやオンラインでのやりとりが一気に浸透した。1年前、今の状況を誰が予想できただろうか。

 中国当局が湖北省武漢市で「ウイルス性肺炎」の発症者が出たとして、新型コロナウイルス感染症の発生を初公表してから、きょうで1年がたつ。日本国内での初確認は1月15日。今や、国内感染者の累計は23万人を超え、3千人超が命を落とした。

 県内で初めて感染が確認されたのは2月14日。那覇港に寄港したクルーズ船から下船した客を乗せたタクシー運転手だった。今思えば、クルーズ船の防疫態勢に焦点が当たった議論は、問題の全体像を捉えられずにいた。

 その後は、息つく暇もないほどの勢いで全国各地に感染が広がり、対策に追われた。

 2月末に、政府が唐突に打ち出した全国の小中高校の一斉休校。4月7日に東京など7都府県に緊急事態宣言が発令され、9日後には全国に拡大された。

 沖縄県も4月と8月に独自の緊急事態宣言を出し、飲食店や遊興施設を中心に休業要請がされた。業績悪化に伴う解雇・雇い止めも相次ぐ。生活への不安は解消されていない。患者受け入れの病床が埋まるなど、医療現場への逼迫(ひっぱく)も続いている。

 本格的な冬を迎え、感染力が強いとされる変異種が各国で確認されている。事態は目まぐるしく変化している。苦しむ人々へ手を差し伸べる機敏な対応が不可欠だ。

■    ■

 政府は、変異種の国内流行を防ぐため、全ての国・地域から外国人の新規入国を一時停止した。新型コロナ特別措置法の改正についても、来年の通常国会で1月中にも成立させたい考えだ。慣例だと、法案審議は予算成立後だが、今回は特例で前倒しして優先的に処理する方針という。

 改正法案は、各都道府県知事が行う店舗の休業や営業時間短縮の要請に関し、応じない場合の罰則の導入や、協力者への財政支援の在り方が焦点となる。

 現在の特措法は、休業や時短要請に強制力はなく、協力金の支払いなど支援の裏付けもない。今回の改正は、全国知事会などが効果的な対策に向けて要望してきた内容であり、速やかに審議入りして成立を図るべきだ。

 一方、罰則については、私権制限につながることでもあり、慎重さが必要となる。

■    ■

 コロナ禍で迎える初めての年末年始。忘年会や新年会が開けず、帰省も控え、家族や親戚、旧友らと集まり親交を温めることもままならない。1年の中でも特に、互いの絆を再確認する大事な機会が奪われ、我慢を強いられる。「静かな年末年始」に気がめいることもあろう。

 国は、早ければ2月下旬にも医療従事者へのワクチン接種が始まるとしている。その後、国民にも行き渡る。

 私たちの日常は大きく変わった。それでも、一人一人の努力が積み重なれば、再びあの日常を取り戻せると信じたい。



今年は歴史に残る失政の年(2020年12月31日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★今年の政治を振り返る時2つの失敗に収れんされるのではないか。ひとつは首相の交代。7年半余り続いた安倍政権は首相・安倍晋三の病気を理由に唐突に終わった。当時、首相周辺議員は「働きすぎで今にも倒れそうだ」と言い出し、辞任したもののしばらくすると、けろっとして周辺議員と会食し始めた。つまり1次内閣の辞任のイメージを利用して国民に心配させ、放り投げることを不問に付させようとしたのではないか。

★前首相の醜態はそれだけではない。首相は加計学園の獣医学部新設計画は17年1月20日、国家戦略特区で認可された当日に初めて知ったと国会で言い張ってきた。それと同じ要領で「桜を見る会」前夜祭の支払い方法を検察に言われて「初めて知った」と言い出し秘書のせいにした手法と同じだ。それで「説明責任を果たした」というのだから恐れ入る。

★一方、後継の首相になった菅義偉は総裁選挙で出馬表明する前から、多くの派閥が菅後継を言い出す異様な選挙になった。幹事長・二階俊博の根回しが功を奏したのだが、党内は今「こんなはずではなかった」との思いだろう。「たたき上げ」「令和おじさん」「パンケーキの菅さん」のイメージで政権運営や選挙ができるなら苦労はしない。官房長官時代「全くあたらない」「承知していない」「指摘はあたらない」「問題ないという報告を受けている」と問いに答えない手法でかわすことだけ覚え、首相になってからは「答弁を控えさせていただく」を加えた。問いに正面から向き合うことをしなくなったおかげでまともな記者会見すら開けなくなり、国民との対話のない首相となった。そしてもう1つの失敗は2人の首相のおかげで、コロナ禍の対策のほぼすべてが後手後手か失敗、税金の無駄遣いの連続だったことだ。今年は歴史に残る失政の年といえよう。



長く人びとの記憶にとどまる1年(2020年12月31日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 年越しの景色を一変させながら暮れてゆく2020年。新型コロナウイルスとともにあった今年は、長く人びとの記憶にとどまる1年となりました

▼パンデミック(世界的大流行)の勢いは、いまも収まりません。感染者は8千万人をこえ、死者は180万人に迫ろうとしています。日本も毎日のように感染者や重症者の数が最多を更新。いつ、どこで、誰もが。そんな状況のただ中にいます

▼死を意識した。孤独で精神的につらかった。仕事や日常生活に戻れるのか、不安でたまらない―。これは東京都政策企画局のホームページで紹介された体験者の声です。症状や経過、周りへの影響や医療従事者への感謝とともに訴えているのは、このウイルスの恐ろしさです

▼日々発表される数字の一つ一つにある悲しみや苦しみ。コロナ禍の貧窮や、ひっ迫する医療現場。ふりかかる苦難のなかで、なによりも支えや力になったのは、心の距離を近づけることでした

▼人類が直面するこの危機をのりこえるためには人と人、国と国の信頼と団結が欠かせない。歴史学者のユヴァル・ノア・ハラリさんが『緊急提言 パンデミック』で強調しています。ウイルスが歴史の行方を決めることはない、それを決めるのは人間であると

▼私たちはいま、歴史の転換点に立っています。命が脅かされるこのとき、変化が切に求められる政治や社会。進歩を妨げ、私利に走る政権に抗し、声を、たたかいの輪を、ひろげる新年としたい。危機の先につくる未来に向けて。

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回顧2020 コロナから命守る政策を(2020年12月30日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に翻弄(ほんろう)され、恐怖した1年だった。世界中で8千万人以上が感染し、今までに170万を超える命が奪われている。歴史に深く刻まれるのは間違いない。

 感染防止へ各国は国境を閉じ、都市封鎖も繰り返されている。

 国内では4月に新型コロナウイルス特別措置法に基づく緊急事態宣言が出され、不要不急の外出や飲食店の営業などが自粛を求められた。学校も一斉休校となった。

 人やモノの動きが途絶え、社会は一変した。東京五輪・パラリンピックも1年延期された。経済への影響は大きく、事態は深刻だ。

 来年には国内でワクチン接種が始まるだろうが、行き届くには時間がかかる。しばらくはこれまで同様、感染予防に注意しながらの生活を余儀なくされるだろう。

 孤立を避け、助け合う。そんな日常を根づかせたい。

 政府は国民の生命、財産を守り、生活を支える政策を徹底させなければならない。

■政府の姿勢が一因だ


 国内で感染者が初めて確認されたのは1月15日だった。その後、感染は数週間で全国に広がる。

 道内では2月末に全小中学校への休校要請があり、道独自の「緊急事態」も宣言された。

 全国的には安倍晋三前首相がイベントの中止や延期、小中高校に休校を要請し、緊急事態宣言で国民の多くが「巣ごもり」を受け入れた。宣言は7週間続いた。

 にもかかわらず、感染拡大は今や第3波が襲来し、医療体制は旭川などで崩壊の危機を招いた。

 要因の一つは政府のちぐはぐな政策にあろう。菅義偉首相は感染防止を求めつつ、観光などを支援する「Go To」事業を進め、国民に移動を促した。

 有識者による「新型コロナ対応・民間臨時調査会」は、「場当たり的」と指摘した。科学的知見を軽視すれば危ういということだ。

 一方で、自粛要請を強めれば個人の権利の抑圧につながる。芸術やスポーツなどの活動は豊かな生活に欠かせない。公共の利益とのバランスに注意する必要がある。

 医療従事者や感染者などへの差別的な言動が心配だ。感染リスクは誰にもあることを理解したい。

■目に余る独り善がり

 コロナ下で「政治とカネ」の問題が相次いだ。忘れてはならない。

 安倍氏の後援会が主催した「桜を見る会」前夜祭の問題のほか、河井克行前法相と妻の案里参院議員の公選法違反事件や、吉川貴盛元農水相の贈収賄疑惑などだ。

 さらに衆院調査局の調べによると、安倍氏は「桜を見る会」問題で事実と異なる国会答弁を少なくとも118回行ったという。

 菅首相は山積する問題の真相解明を進めるべきだ。しかし、その姿勢は不十分と言うしかない。

 日本学術会議の会員候補任命拒否では理由を示していない。立法府軽視も甚だしい。

 権力側の姿勢からは、政権維持には国民への説明はなおざりでいいという独り善がりが透ける。

 民主主義の根幹を揺るがしかねない。歴代最長の安倍前政権を継承した菅首相が疑惑の幕引きを許せば、政治不信は増幅しよう。

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に入った後志管内の寿都町、神恵内村の動きも自分中心ではないだろうか。

 周辺町村の意向は脇に置き、住民の意見の把握も十分ではない。「肌感覚」で強引に進める手法は民主的な手続きとは言い難い。

■強権政治が拡大する

 世界でも指導者の言動が社会に不安の種をまき散らした。

 11月の米大統領選は民主党のバイデン氏が勝利を確定したが、トランプ大統領は今も敗北宣言はしていない。

 民主政治の土台である選挙制度をないがしろにし、米国内の分断をいっそう深めた。この事態を引き起こした責任はあまりに重い。

 習近平体制が続く中国の強権姿勢には懸念が強まる。香港に対し6月には国家安全維持法を施行し民主派への締め付けを強めた。

 中国が返還時に50年変えないと約束した「一国二制度」は、すでに有名無実化されている。

 世界中では富の集中が進み、格差が拡大する。不安や不満が募り、社会の安定を揺るがす。

 スウェーデンの調査機関V―Dem独自の調査では、世界の民主主義国は昨年8カ国減り、今世紀初めて非民主主義国が上回った。

 民主主義や自由など従来の価値観が信頼を失い、強権的な政治が広がる現実を憂う。貧困層を直撃するコロナ禍がこの流れを後押しする可能性がある。世界が岐路に立っているように見える。

 人々が安心と豊かさを感じてこそ、平和は保たれる。指導者が目を向けるべきはそこしかない。



回顧2020 新型コロナに明け暮れた 克服への新たな戦いに臨め(2020年12月30日配信『産経新聞』-「主張」)

 歴史に「たら」「れば」はないのだが、それでも考えてしまう。もし、中国・武漢に端を発する新型コロナウイルスの感染拡大がなかったら。トランプ米大統領は再選を果たしたかもしれない。安倍晋三前首相が健康を害することもなかったかもしれない。

 間違いなく、東京五輪・パラリンピックは開催されたろう。そこでどんなドラマが繰り広げられたか。むなしい想像ではある。

 現実には、国内外が新型コロナに蹂躙(じゅうりん)され、対応に苦慮した1年だった。そしてそれは、今も続いている。

 ≪感染は中国が拡散した≫

 今年の「主張」を振り返ると最初に「新型コロナ」が登場したのは1月18日、「中国は正確な情報開示を」と求めたものだった。

 中国湖北省武漢市では昨年末から原因不明のウイルス性肺炎の患者が急増していたが、当初は人から人への感染を否定し、日本政府も危険性を低く見積もった反省がある。中国政府は22日、初めて会見を開き、習近平国家主席が防疫に向けた異例の声明を発表したが、当時の菅義偉官房長官は「現時点で持続的な人から人への感染は確認されていない」と述べるにとどまっていた。

 初動の時点で中国が正確な情報を開示し、世界保健機関(WHO)などが適切な対応をとっていれば、現在の世界的危機は未然に防げた可能性がある。

 「主張」は、中国よりの姿勢が目立つWHOのテドロス事務局長を「事務局長の更迭を」(2月1日)、「対中配慮を猛省せよ」(3月13日)と指弾し、感染源となりながら外務省報道官が「米軍が感染症を持ち込んだかもしれない」と発言するなど責任を転嫁し続ける中国に対しては「不毛な詭弁(きべん)をやめよ」(23日)、「調査団を受け入れよ」(5月8日)と、一貫して批判してきた。

 日本政府に対しては「強い危機感で水際対策を」(1月23日)、「国民の保護に覚悟を示せ」(31日)、「明確な発信怠るな」(2月15日)、「首相が国民に語りかけよ」(26日)と強いリーダーシップと危機感を求め、緊急事態宣言の際には「国民の底力が問われている」(4月8日)と、国民にも協力を呼びかけた。

 宣言の解除時には「次の波への備えを急げ」(5月26日)と求め、再拡大の兆候には「冬場の猛威に警戒強めよ」(11月7日)と警鐘を鳴らした。

 コロナ禍の東京五輪へは「完全な大会へ延期準備を」(3月18日)、「今夏の大会実施は不可能だ」(24日)と延期を促し、延期決定には「日本は成功に責任を負う」(26日)、「総力を挙げ来夏へ再始動を」(4月2日)と来年7月の聖火点灯を強く望んだ。

 終始、政策に疑問を呈したのは観光支援事業「Go To トラベル」に対してだった。夏の感染拡大には事業の「一時停止」を、先の再拡大時には「一部停止」を求めた。

 政府が11月25日に宣言した「勝負の3週間」も感染の収束には結びつかず、ようやく重い腰を上げて年末年始の全国一斉停止を決めたのは12月14日になってからだ。それも「28日から」という中途半端なもので、15日の「主張」は「28日まで待つ必要あるか」と政府の決定を批判した。

 ≪すべてに後手を引いた≫

 日本の感染者数、重症者数、死者数は、拡大しているとはいえ、欧米の状況とは桁が違う。その要因は分かっていないが、強制力を伴わない政府、自治体の要請を受け入れ、マスクの着用や「3密」の回避に努力してきた国民性に負うところが大きかったことは間違いないだろう。

 だが、個人の努力に依拠することには限度がある。

 補償を伴う強制力に法的根拠を持たせるには、新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正が必要だ。「主張」は「特措法の改正をためらうな」(5月2日)、「収束した後では遅すぎる」(7月21日)などと訴えてきたが、政府・与党は年末になってようやく来年の通常国会に改正案提出を目指すようかじを切った。すべてに後手を引いてきた印象が強い。

 新型コロナは難敵である。英国など欧州では変異種が猛威をふるい始めた。来年こそは先手先手で戦いを挑んで封じ込め、国際社会とも連携して東京五輪を希望の大会として成功させてほしい。



年の終わりに考える 民主主義はありますか(2020年12月30日配信『東京新聞』-「社説」)

 世界中がコロナ禍に見舞われた今年も暮れようとしています。未曽有の感染症にどう立ち向かうのか、という難問とともに、民主主義の意義や在り方が問われた一年でもありました。
    ◇    ◇
 ご存じの読者もいらっしゃると思いますが、新聞の社説を巡るお話を紹介します。今から100年以上も前、1897年のことです。ニューヨークの新聞「ザ・サン」に1通の手紙が届きました。

◆サンタはいるのですか

 「編集者さま。私は8歳です。『サンタクロースはいない』と言う友だちがいます。パパは『ザ・サンに書いてあるなら、そうだろう』と言います。お願いです。本当のことを教えてください。サンタクロースはいるのでしょうか。バージニア・オハンロンより」

 サンタの存在を巡る子どもの質問に、ザ・サンはどう答えたのでしょう。それは後ほど紹介するとして、もし私たちの新聞社に、子どもたちから「民主主義って本当にあるのですか」との質問が寄せられたら、どう返せばいいのか、頭を悩ませてしまいます。

 私たちが住む日本をはじめ、ほとんどの国家では、民主主義が機能していると当たり前のように考えて暮らしています。しかし、実態はどうでしょう。

 例えば、今年大統領選が行われた米国では現職大統領が自国民を威圧、分断し、投票結果にも難癖をつけて覆そうとしています。

 世界の民主主義国家を率いてきた米国ですら足元に広がるのは、長い年月をかけて築き上げてきた民主主義がいとも簡単に傷つけられる荒涼とした光景です。

 私たちが住む日本ではどうでしょう。年末になって安倍晋三前首相は、「桜を見る会」前日の夕食会を巡り、自らの国会答弁の修正に追い込まれました。

◆見えないけど存在する

 「後援会としての収入、支出は一切ない。報告書への記載は必要ない」「補填(ほてん)の事実も全くない」

 追及する野党議員に対し、安倍氏はこう強弁し続けました。これらがすべて虚偽だったわけです。

 衆院調査局によると「桜を見る会」の夕食会を巡り、安倍氏が首相在任中、国会審議の中で行った虚偽答弁は百十八回に上ります。

 安倍前政権当時、財務官僚による公文書偽造にまで至った学校法人「森友学園」への国有地売却問題でも、事実と異なる政府答弁は合計139回を数えました。

 国権の最高機関であり、国民の代表で構成する国会で、首相ら政府側がこんなにも虚偽答弁を繰り返していたら、そもそも民主主義や三権分立が機能しているのか、と疑いたくもなります。

 民主主義って学校では習うけれども、本当にあるのだろうか。純粋な子どもたちがそう考えても不思議はありません。まだそのように尋ねる手紙は、私たちの元には届いていませんが…。

 冒頭のザ・サンの話に戻りましょう。手紙を受け取ってまもなく社説という形で返事が載ります。

 「バージニア、あなたの友だちは間違っているね。サンタクロースはいる。愛とか思いやりとかまごころと同じように、サンタクロースはいるよ。そういうものが満ちあふれているおかげで、あなたの暮らしがとても素晴らしく、楽しいものになっているよね」

 「誰もサンタクロースを見たことはないけれど、それはサンタがいないという証明にはならない。本当のことは子どもにも大人にも見えないんだ」

 手紙の主であるバージニアは、長じてニューヨークの小学校の先生となりました。子どもたちから「サンタクロースって本当にいるの」と聞かれるたびに、この社説を読んで聞かせたそうです。

 米国の報道博物館「ニュージアム」(現在はインターネット上に移行)は、この社説を「歴史上、最も多くの書籍や映画、ほかの社説やポスター、切手に一部もしくは全部がさまざまな言語で紹介された社説」と紹介しています。記者人生で一度はこのような社説を書いてみたいものですが。

◆不断の努力で磨き、守る

 存在が怪しまれる民主主義ですが、サンタクロースのように目には見えないけれど、確かに存在しています。個人の自由と権利を尊重するその理念は、私たちの暮らしを豊かにしてきたし、これからも豊かにするはずです。

 もし「民主主義って本当にあるのですか」と尋ねる手紙が届いたら、確信を持ってこう答えたい。

 しかし、これまで多くの先人が指摘してきたように、民主主義は完璧な政治制度などではなく、ほかの制度に比べて、少しましなだけかもしれません。だからこそ、不断の努力で民主主義を磨き、守り抜かねばならないのです。

 私たちの新聞は、その役割の一端を担えているのだろうか、自問を繰り返す年の瀬です。



見掛けなくなった胃薬のCM(2020年12月30日配信『中国新聞』-「天風録」)

 テレビを眺めていて、ふと気になった。胃薬のCMを見掛けた覚えがない。例年なら今ごろは、連日連夜の忘年会で胃腸が音を上げているはず。コロナ禍第3波で、繰り出す人波が引いたせいだろうか

▲師走のうたげは、またとない時間である。つかの間とはいえ浮世のあれこれを忘れさせてくれる。心の折り目、節目を重んじるこの社会にとって、風物詩以上ともいえる時間を奪われた

▲中四国随一の歓楽街が広がる広島市中心部にはきのう、広島県のお触れが回った。酒を出す営業時間の短縮を2週間延ばしてもらいたい、と。さてさて新年会までもが、風前のともしびである

▲来年に持ち越された東京五輪とパラリンピックのともしびも気になる。そもそもコロナ感染の幕切れまで残り何幕なのか、世界中の誰も知らない。それに前首相の負の遺産といえる「モリ・カケ・桜」に元法相夫妻や元農相を巡る「政治とカネ」の疑惑など、宿題が山積みである

▲異例の15カ月予算を組んだ菅義偉首相が「切れ目なし」と胸を張っている。だが、浮上した疑惑の数々は「けじめなし」では困る。苦い胃薬を含んだような首相の面差しが、いつか晴れる日がくるのだろうか。



見掛けなくなった胃薬のCM(2020年12月30日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 テレビを眺めていて、ふと気になった。胃薬のCMを見掛けた覚えがない。例年なら今ごろは、連日連夜の忘年会で胃腸が音を上げているはず。コロナ禍第3波で、繰り出す人波が引いたせいだろうか

▲師走のうたげは、またとない時間である。つかの間とはいえ浮世のあれこれを忘れさせてくれる。心の折り目、節目を重んじるこの社会にとって、風物詩以上ともいえる時間を奪われた

▲中四国随一の歓楽街が広がる広島市中心部にはきのう、広島県のお触れが回った。酒を出す営業時間の短縮を2週間延ばしてもらいたい、と。さてさて新年会までもが、風前のともしびである

▲来年に持ち越された東京五輪とパラリンピックのともしびも気になる。そもそもコロナ感染の幕切れまで残り何幕なのか、世界中の誰も知らない。それに前首相の負の遺産といえる「モリ・カケ・桜」に元法相夫妻や元農相を巡る「政治とカネ」の疑惑など、宿題が山積みである

▲異例の15カ月予算を組んだ菅義偉首相が「切れ目なし」と胸を張っている。だが、浮上した疑惑の数々は「けじめなし」では困る。苦い胃薬を含んだような首相の面差しが、いつか晴れる日がくるのだろうか。





20年回顧・文化 継承へ知恵を結集しよう(2020年12月30日配信『琉球新報』-「社説」)

 2020年は沖縄の文化状況を考える上で、一つの転換点として記憶される年になるだろう。沖縄初の芥川賞作家、大城立裕氏=享年95=が10月に亡くなったことが、その理由の一つに挙げられる。

 大城氏の生涯は戦前の「ヤマト世」から戦後の「アメリカ世」、復帰後の「ヤマト世」と時代に翻弄(ほんろう)された沖縄の歴史と重なる。時代や人、沖縄戦や基地問題を題材に「沖縄の自画像」を描き続けた。

 日本や米国などからの沖縄への圧力に対し、小説や戯曲をはじめとする言葉の力で県民を鼓舞してきた。

 2月のシンポジウムに登壇した際には、しまくとぅば復活へ標準語としての丁寧語創造を提案した。

 大城氏は「沖縄問題は文化問題だ」と提起し、文化の力を通じて主体性獲得を追求した。県民に託された大城氏からの「宿題」は大きい。大城氏の遺志を継ぐには残された者が努力することが不可欠だ。

 沖縄戦から75年、語り部の安里要江さん=享年99、元ひめゆり学徒で証言員の津波古ヒサさん=享年93=が他界した。語り部たちは沖縄戦体験の継承と平和の創造に大きな役割を果たしてきた。その意義を再認識する年となった。

 体験者から直接、話を聞く機会が減る中、インターネットを使った新たな取り組みも始まった。沖縄国際大の学生らによるプロジェクトが慰霊の日に合わせて特別番組を動画投稿サイトで配信した。沖縄戦体験の継承に向けた新たな手法を模索する必要に迫られている。若者らの知恵と行動力に期待したい。

 音楽、芸能などの関係者には厳しい1年だった。コロナ禍で多くの公演が中止、延期となり、中でも小規模のライブハウスは経営が成り立たなくなった。

 実演の場が失われただけでなく、伝統芸能は師から弟子へと技を伝える稽古もままならない状態だった。

 一部でライブ配信などが実現したのは来年へつながる希望だ。音楽など芸術の力が人々に勇気を与えることを改めて確認する機会にもなった。

 首里城焼失から約半年たった4月、県は首里城復興方針を発表した。財政負担などの課題は残るものの、官民を挙げた取り組みが求められる。龍柱の向きを巡っては新資料も見つかるなど議論が白熱している。細部の議論も大事だが、新たな県民の象徴を作り出すには、大局的な見地からの議論も求められるだろう。

 琉球の正史「中山世鑑(ちゅうざんせいかん)」など3点が国の重要文化財に指定されたことは県民の誇りとなった。琉球史を研究する上で最上の史料との評価がある。現代語訳発行など県民が身近に感じられる工夫も必要だ。

 厳しさの中に一筋の光明もあった2020年は、文化や伝統の継承に向けた課題と向き合い、新たな手法を模索する年でもあった。県民が誇る文化を次代につなぐためにも多くの知恵を結集したい。



世界の女性リーダー(2020年12月30日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 去年の今頃、2020年がこのような年になるとは誰も想像できなかっただろう。新型コロナウイルスの影響で、世界が変わった。愛する人を失った人、仕事を失った人、生活困窮に陥ってしまった人、逆境と闘った人―。多くの人の人生を変えた

▼危機的状況においてこそ、組織のトップに立つ人のリーダーシップが問われてくる。コロナ禍の今年ほど、各国の女性リーダーの存在感が強まった年はない

▼ドイツのメルケル首相(66)、台湾の蔡英文総統(64)、ニュージーランドのアーダン首相(40)らは、高いコミュニケーション力、共感力、説得力ある言葉で新型コロナに立ち向かう姿勢を示し、国民の信頼を勝ち得た

▼日本の数少ない女性リーダーの一人、東京都の小池百合子知事は、流行語大賞にもなった「3密」を浸透させた。スローガンは伝わったものの、台紙に要点をまとめカメラに掲げて語る言葉は心に響かなかった

▼菅義偉首相が就任時に発した言葉は「自助、共助、公助、そして絆」。共感どころか突き放されたように感じた人も多かったのではないか

▼歳末助け合いのこのシーズン、紙面には困窮者への食料品の寄贈や寄付金贈呈の記事が例年以上に多く目に付く。図らずも「共助」が誰かの命をつなぐ。しかし共助では限りがある。金銭的支援と感染対策、医療支援の公助が求められている。



[2020墓碑銘]残された思い受け継ぐ(2020年12月30日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 戦後75年の今年、激動の戦中戦後を生き、それぞれの分野で大きな足跡を残した方々が、惜しまれながらこの世を去った。

 作家の大城立裕さん(享年95)は、沖縄の文化や沖縄社会が抱える矛盾をテーマにした作品を発表し続け、沖縄文学の地平を開いた。

 米軍統治下の沖縄が舞台の小説「カクテル・パーティー」(1967年)では、戦後の基地被害と戦時中の加害行為という「被害と加害の二重性」を表現し、県出身作家として初めて芥川賞を受賞した。

 琉球処分、沖縄戦、米軍統治、基地と隣り合わせの暮らし、島の風土、南米移民…。作品に取り上げた沖縄の題材は幅広い。小説のみならず戯曲や組踊、評論などでも沖縄の歴史や精神文化に根ざした作品を発表した。

 日本との関係の中で揺れ動く沖縄の姿に「沖縄問題は文化問題」と復帰前から指摘してきた。「ヤマトの政治的な壁は厚い。対抗するために今必要なのは文化的独立」と2014年の本紙インタビューに語っている。

 「平成」を振り返る昨年3月のインタビューでは「平成は、日本政府の壁を最高に意識する時代になったが、この壁は昔のようには厚くはないと思う」との見方も示していた。

 名護市辺野古への新基地建設を巡る県と日本政府の対立はいまだ続くが、新基地建設反対の沖縄の民意は底堅い。

 「沖縄とは何か」を生涯問い続けてきた大城さんの言葉からは、沖縄の可能性がうかがえる。

■    ■

 悲惨な沖縄戦を次の世代に伝えるために力を注いだ語り部らも亡くなった。

 沖縄戦で夫と2人の子どもら親族11人を失った安里要江(としえ)さん(享年99)。乳飲み子らを抱え、病身の夫や高齢の親族らと戦場を逃げ惑ったつらい経験を、県内最高齢の語り部となった後も昨年5月まで語り続けた。

 「ひめゆり学徒隊」に動員された津波古ヒサさん(享年93)は、ひめゆり平和祈念資料館の建設から携わり、開館時から長年、証言員を務めてきた。

 座間味村で起きた「集団自決(強制集団死)」を生き延びた宮城恒彦さん(享年86)。当時11歳。壕の中で爆発した手りゅう弾で、姉を失った。その地獄絵は、半世紀過ぎた後も「生々しく醜い形相を現して夢に見る」と書き記していた。

 自ら戦争体験者へ聞き取りし、1冊ずつ出版を重ねた証言集は28冊を数える。今年は一部のデジタル化事業にも携わった。

■    ■

 戦後75年。戦争体験者から直接話を聞ける機会は年々減っている。その数少ない機会も、今年はコロナ禍の影響で多くが中止を余儀なくされた。残念でならない。

 語り部活動を自身の「使命」としてとらえていた安里さん。戦争の犠牲になった友に思いを寄せ証言を続けた津波古さん。「戦争体験者は悲しみを怒りに変えないといけない」と新基地建設に怒りを示していた宮城さん。

 その思いをどう受け止め継いでいくか、私たちが問われている。





国内この1年 国民の自助に頼った政府(2020年12月29日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスとの闘いに明け暮れた1年だった。政府も国民も対策を重ねてきたが、秋以降は感染拡大の勢いが増し、全国の新規感染者数は右肩上がりのまま年を越えそうだ。

五輪の延期で一変

 国内で初の感染者が確認されたのは1月16日。2月に横浜に到着したクルーズ船「ダイヤモンド・プリンセス」では700人を超える感染者が確認された。その後は都市部を中心に各地で増加し、国民は不安と緊張を徐々に高めていった。

 安倍晋三首相(当時)は2月27日、全国の小中学校や高校、特別支援学校を3月2日から臨時休校にするよう要請する考えを表明。突然の方針に共働き家庭や教員らは対応に追われた。

 3月24日には、安倍首相と国際オリンピック委員会のバッハ会長が東京五輪・パラリンピックを1年程度延期することで合意。それまで五輪ムードに包まれていた列島の空気が“コロナ仕様”に一変した。

コロナ対策の迷走

 安倍首相は4月7日、新型コロナ特措法に基づく緊急事態を7都府県に宣言、人との接触を7~8割減らすよう求めた。対象自治体は程なく全国に拡大。地方自治体が飲食店や遊興施設などに休業を要請し経済の歯車もきしみ始め、政府対策の迷走ぶりも目立ってきた。

 首相は緊急経済対策の柱として国民1人当たり10万円の現金給付を表明。ただ、「減収世帯に限り30万円給付する」との方針を覆しての決定で混乱も生じた。国民の間には「3密」を避ける新しい生活様式が広がったが、全国約5千万世帯に布マスクを2枚ずつ配る事業には「税金の無駄遣い」との批判が噴出。政権と国民の感覚のずれを浮き彫りにした。

 さらに政府は、低迷した経済の支援策として7月に「Go To トラベル」、10月に「Go To イート」を開始した。だが感染抑止策では思うような結果を出せず、アクセルとブレーキを同時に踏む政策運営が長期間続いた。

 安倍首相が持病の悪化を理由に辞任を表明したのは8月28日。通算の在職日数は歴代最長の3188日に及んだが、「安倍1強」と称される強固な政権基盤は、おごりや緩みも生みだした。

 最たる例が、「政治とカネ」問題の続発だ。昨年の参院選広島選挙区で地元議員らに集票を依頼し現金を配ったとして逮捕・起訴された河井克行前法相と妻の案里参院議員は、その象徴と言える。

 新たに首相となった菅義偉氏は就任直後の所信表明で「国民のために働く」と約束。だが、その後顕在化したのは、前任者と変わらぬ強権的な手法と説明軽視の姿勢だった。10月には日本学術会議が推薦した新会員候補のうち6人の任命を首相が拒否したことが発覚。首相は「総合的、俯瞰[ふかん]的な活動を確保する観点から判断した」と説明したが、拒否した具体的な理由は今も明らかにしていない。

自覚の欠如に失望

 12月には、安倍晋三後援会が「桜を見る会」前夜に主催した夕食会を巡り、東京地検特捜部が安倍前首相の公設第1秘書を政治資金規正法違反の罪で略式起訴した。安倍氏本人は不起訴となったが、国会で“虚偽答弁”を重ねた政治責任に対する自覚の欠如には多くの国民が失望した。

 自覚の欠如と言えば、国民に「飲食は原則4人で」と呼び掛けながら大人数での会食をはしごしていた菅首相も同様である。

 菅首相は今月25日の記者会見で、国民に「静かな年末年始」を呼び掛けた。政府の見通しの甘さによる対策の迷走、トップの説明不足が事態の悪化を招き、国民の自助に頼るしかなくなった、との見方もうがち過ぎではあるまい。



20年回顧・基地問題 安保のひずみ露呈した(2020年12月29日配信『琉球新報』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症の流行によってさまざまな事柄が停滞・遅延する中で、国が強引に進めたのが米軍普天間飛行場の移設先とされる名護市辺野古の新基地建設だった。防衛省は4月、大浦湾の軟弱地盤の改良工事を盛り込んだ設計変更を県に申請した。

 普天間飛行場からの泡消火剤流出、在沖米軍の新型コロナ感染症クラスター(集団感染)発生など米軍基地の存在が住民の健康や安全を脅かした。日米地位協定が高い壁となって必要な調査が実施されず、情報も提供されない。安全保障のひずみが露呈した2020年であった。

 戦後75年、日米安保条約改定60年の節目となった今年、首相の座に就いた菅義偉氏の口癖を借りれば、政府は「粛々と」沖縄の基地建設を進め、「法治国家」にもとる基地被害があらわになった年でもあった。

 防衛省が設計変更を申請した大浦湾には最大で水深90メートルの海底に「マヨネーズ状」と表現される緩い地盤が広がっている。当初、防衛省は軟らかい海底にケーソンと呼ばれる巨大なコンクリートの箱を並べて護岸を造ろうとしていた。そもそも無理な計画だ。そのために最初の埋め立て申請にはなかった、砂ぐいを7万1千本も海底に打ち込んで地盤を強化する工事を追加した設計変更を認めるよう県に申請した。

 地盤が弱いことを示すデータの一部切り捨てや、照会した専門家会合に示した資料の誤りなど、沖縄防衛局の対応には申請前から問題が多数あった。防衛局は海底に打ち込む砂ぐいの本数や太さなど改良工事の詳しい内容を申請書に明示していない。あくまで建設を「粛々と」進めるための工事ありきの手続きだ。

 基地から派生する問題が私たちの安心・安全を脅かす事故も相次いだ。

 普天間飛行場から4月、有害性が指摘される有機フッ素化合物PFOSなどを含む泡消火剤約22万リットルが流出した。米軍由来の環境汚染にもかかわらず、日米地位協定が壁となって日本側の調査は限定的だった。立ち入り調査は米軍が許す限りでしかかなわず、しかも許可は発生から11日後だった。汚染物質の分析もPFOS、PFOAに限られた。

 米軍のコロナ感染症クラスターでは、日米地位協定によって米軍関係者が入国の際に日本の検疫を免除される問題も浮上した。

 昨年2月の名護市辺野古の埋め立ての賛否を問う県民投票で反対が72%を占めた。コロナ禍の中でも新基地建設現場に通じるキャンプ・シュワブゲート前では抗議行動が続き、県民の民意は変わらない。

 来年はバイデン次期米大統領が始動する。米国の民主党は、自由や人権という価値観を重視する。県は辺野古新基地建設の非合理性と県民の民意、地位協定の不平等性を次期政権に効果的に伝えてほしい。理は沖縄にある。





時事川柳でたどる1年(2020年12月28日配信『福島民報』-「あぶくま抄」)

 役所や多くの企業は28日、仕事納めを迎える。本紙に寄せられた時事川柳で1年をたどる。〈ウイルスが想定外を撒[ま]き散らし〉新型コロナの波が県内にも押し寄せた。〈感染阻止千里の道も自粛から〉始まった。

 〈学校が休みで親はてんてこまい〉。〈夏服で通い出したる新学期〉となった。新しい生活様式も浸透した。〈帰省もし飲み会もしたオンライン〉〈仕事ぶり家族に見られるテレワーク〉。政府が全家庭に配ったマスクは「アベノマスク」と揶揄[やゆ]され、安倍晋三前首相は〈国民に届かぬマスク掛け続け〉。

 NHK連続テレビ小説「エール」は感動を呼んだ。2カ月半の撮影中断を経て〈再会の朝が嬉[うれ]しいエールくる〉。〈常磐線苦(九)年を越えて全開通〉〈請戸港賑[にぎ]わい目覚め春が来る〉など復興に向けた明るさも見えた。県のオリジナル高級米「福、笑い」が先行販売され、〈新米がほほ笑みうかべ炊きあがる〉。

 長く「安倍一強」と称された政権が幕を引いた。〈出馬する前に総裁決着し〉菅義偉政権が誕生したが、〈迷走の「GoToトラベル」何処[どこ]へ行く〉。「勝負の3週間」も掛け声倒れに終わり、〈予防策全集中で当たる冬〉が訪れた。



【2020回顧(下)】命を守る努力続けよう(2020年12月28日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス一色の2020年だった。「第3波」のただ中にある年末になっている。

 振り返れば、東京五輪・パラリンピックの延期、全国に出された緊急事態宣言、小中高校の一斉休校…。

 雇用や経済が受けた打撃も計り知れない。今後も予断を許さない状況が続くことを心するしかない。

 無症状でも感染していれば、うつす可能性があるウイルス。「人との接触を減らす」が命題となった。

 当初はマスク不足で混乱も起きた。政府からの「アベノマスク」は「税金の無駄遣い」と批判された。

 「3密」「クラスター」「ソーシャルディスタンス」といった用語も瞬く間に定着。「テレワーク」や「オンライン授業」が広く行われるようになり、遅れていた日本のデジタル化が進んだ側面もある。

 「自粛警察」に代表されるような社会の殺伐とした雰囲気も生んだ。感染者や医療従事者らへの心ない言葉は今も問題になっている。

 災禍はコロナだけではなかった。

 7月には熊本県の球磨川が氾濫するなど、九州で死者計77人を出した豪雨災害が起きた。

 夏は今年も「災害レベル」の猛暑となり、熱中症の死者が相次いだ。

 人々は気候変動からも「命を守る」対策を迫られている。

 そんな中、高校生棋士の藤井聡太さんが最年少で二冠を獲得。快進撃に多くの人が元気づけられた。

 漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」は映画化もされて空前のブームに。鬼から人間の命を守る戦いが描かれ、テーマは家族愛。コロナ禍の不安と響き合った。

 一方、理不尽に多くの命が奪われた殺人事件で死刑判決が相次いだ。

 神奈川県の障害者施設で45人が殺傷された相模原事件。会員制交流サイト(SNS)を通じて若者の悩みにつけ込み、9人が殺害された同県の座間事件。

 弱い立場にある人が狙われた。こうした事件がなぜ起きたのか。再び起こさないためにどうすればいいのか。社会全体で考える必要がある。

 2020年は、差別や偏見は許さないという意思表明も目立った。

 女子テニスの大坂なおみ選手は全米オープンで、白人警官らからの暴力や銃撃で亡くなった黒人の名前入りマスクを着用。人種差別問題に抗議し、2度目の優勝も果たした。

 花を持ち、性暴力撲滅を訴える「フラワーデモ」は全国に広がり、性被害の勇気ある告発も相次いだ。

 自治体で性的少数者のカップルを認知する制度の導入が進んだ。

 これらの人権を尊重し、新しい時代を感じさせる動きを注視したい。

 2021年もコロナと向き合わねばならない日々が続く。

 作家の村上春樹さんは、対コロナを戦争に例えることは「正しくない」と指摘する。「生かし合うための知恵の闘い。敵意や憎しみはそこでは不要」と言っている。

 県内でも命を守る努力を続けよう。今こそ互いに思いやり、励まし合って、この災禍を乗り越えたい。



2020年、忘れ得ぬ方たち(2020年12月28日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 小松政夫さんの父親は厳格な博多もん。鉄拳が容赦なく飛んできた。おどけることで涙を耐えた少年期。当時口にした「いてぇな、いてぇな」は後の持ちネタに

▼同じ笑いの道に生きた内海桂子さん。芸に厳しく、ある日相方の内海好江さんを激しく叱った。その晩、好江さんは大量の睡眠薬を口に。回復するまで桂子さんは枕元で夜を明かした。2人の絆を強めた一件という

▼めぐみさんの姿が消えて以来、心の底から笑うことはなかっただろう。メディアの前では気丈に、けれど家庭の中では思いがあふれた。「風呂場から、父のしのび泣く声が漏れ聞こえてくることがあります」。横田滋さん。この方の名前を書くだけで胸が痛む

▼ぼやきの野村克也さん。井上陽水さんの楽曲に参加したギタリスト安田裕美さん。宮城まり子さんや渡哲也さんら一線で活躍した方々がこの一年、鬼籍に入った

▼「今年もまた秋がやって来て、私は一つ年ばとりました」。印象的な方言で始まる小説「長崎ぶらぶら節」の作者なかにし礼さん。昭和の名曲「北酒場」を作詞。これも縁か、作曲者の中村泰士さんと先週、2人連れ添うように旅立つ

▼「神の手」があるならコロナ禍の今こそ助けてほしい。けれど、差し伸べられたのはこの人だけかも。サッカーでは文字通りの「禁じ手」だったのに、それが伝説と化すのもスーパースターゆえ。マラドーナさん、あんたは偉い。

20年回顧・政治 沖縄の民意無視が顕著に(2020年12月28日配信『琉球新報』-「社説」)

 沖縄の将来を左右する政治決戦である県議選が6月7日に実施され、定数の48議席中、玉城デニー知事を支える与党が25議席を占めた。翁長県政下で行われた前回より2議席減ったが、与党が過半数を維持した。

 最大の争点は、米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古の新基地建設の是非だった。一日も早い普天間飛行場の危険性除去のため唯一実現性のある方策だとして、野党の自民党が「建設容認」の姿勢を打ち出したことにより、対立軸はより鮮明になった。

 新基地建設に反対する当選者は全体の6割を占めた。改めて多くの県民が「ノー」の意思を突き付けた形だ。それでも政府は工事を強行している。昨年の県民投票や衆院沖縄3区補選、参院選などに続く「反対」の民意を無視する政府の姿勢は一層顕著になった。民主主義に反する暴挙と言うほかない。辺野古新基地を巡る国と県の裁判闘争も続いている。国は新基地建設を即刻断念すべきだ。

 県議選は、新型コロナウイルス感染症対策や、21年度末で期限を迎える沖縄振興計画への対応、子どもの貧困解消策なども争点となった。発足から2年となる玉城県政の中間評価にも位置付けられ、玉城知事は一定程度の信任を得た形だ。

 ただ、与党の現職が4人落選するなど与野党構成は伯仲(はくちゅう)に近い結果となった。玉城知事はこれまで以上に難しい県政運営を強いられている。

 今年は、次期振計に向けた議論や提言が活発化した1年でもあった。県は、現振計を検証した総点検報告書をまとめ、次期振計の必要性を明示した。11月には、従来にない新たな方向性として、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の推進を、沖縄振興の目標としても位置付けることを打ち出した。

 具体的には、SDGsに関する取り組みを実施する企業への税の減免措置や財政支援などを想定し、「沖縄らしいSDGs推進特区」を国に制度提案する。

 全国平均の7割にとどまる1人当たり県民所得や全国一低い正規雇用の割合など、自立型経済にはほど遠い現状がある。次期振計に向け、沖縄の山積する課題をどう解決するか、正念場を迎えている。

 そんな中で懸念されるのが政府による沖縄社会の分断策だ。来年度の沖縄関係予算は4年連続で総額3010億円を維持したものの、県や市町村の裁量幅が広い沖縄振興一括交付金は大幅に減額された。一方で国が市町村に直接投下する沖縄振興特定事業推進費は大幅に増額した。この傾向は県と市町村との分断をはらむ。

 菅政権は予算と基地問題は「結果的にリンクしている」との認識を示している。政府が次期振計に向けた構想を基地問題と絡め、県の自主性を損ねるようなことは、あってはならない。





【2020回顧(上)】国民との対話はどこへ(2020年12月27日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に社会が混迷を深める中、突然のトップ交代となった。安倍晋三首相が9月、第1次政権に続く体調不良で辞任し、7年8カ月に及んだ長期政権が幕を下ろした。

 国政選挙での連勝を力の源泉とする1強政治は、旧民主党政権時代の「決められない政治」を一変させた。数の力による強行突破を繰り返し、特定秘密保護法、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法などを成立させた。

 強弁やはぐらかしを重ね、言論の府である国会を軽視する強引な政治手法は一方で、人事で官僚を抑え込み、官邸の顔色をうかがう忖度(そんたく)をはびこらせる。官僚による公文書の廃棄や改ざんが常態化した。

 経済政策「アベノミクス」は大規模な金融緩和で大企業や富裕層に恩恵をもたらした。しかし、景気回復の実感は乏しかった。東京一極集中の是正へ地方創生を掲げたが、目立った成果は上がっていない。自身が悲願とする憲法改正や北方領土の返還、北朝鮮による拉致問題の進展はなかった。

 新たに内閣を率いた菅義偉首相は、安倍政権の「継承と前進」を打ち出した。原動力とするべきは説明と理解という国民との対話だろうが、積極的とは言い難い。

 喫緊の課題であるコロナ対策を巡って、政権に国民の不安を和らげようとする意思が薄いように思える。国と地方自治体との風通しの悪さも浮き彫りとなった。

 観光支援事業「Go To トラベル」の一時停止を巡る判断の遅れにも疑問符がついた。専門家は感染拡大に厳しい見方をしている。経済との両立を目指すのならなおさら慎重な対応が求められる。

 また、給付金の申請混乱や、押印がテレワークの支障になるなどデジタル対応の遅れが鮮明となった。首相はデジタル庁の新設を掲げ、官民のデジタル改革を促進する。効率を高めることは大切だが、根幹と位置付けるマイナンバー制度には個人情報を把握されることに不安も伴う。予算や組織論を先走りさせるのではなく、丁寧な説明で理解を求めるのが基本だ。

 日本学術会議の会員候補の任命拒否も、首相の説明は紋切り型の言葉が並び、理由は分からないままだ。組織改編論で論点をずらしたいようだが、理由を語るのが先だろう。

 内閣支持率の急落には、こうした姿勢が関わっていることをしっかり受け止めることだ。

 国民の拒否感が強い「政治とカネ」問題が相変わらず浮上した。政治不信の解消は遠のいてしまう。

 「桜を見る会」前日の夕食会を巡っては、安倍氏は国会で事実と異なる答弁を行ってきた。政治責任は、当時の官房長官だった首相も無関係ではない。

 「ほかに適当な人がいない」という根強い世論が安倍長期政権の背景にあった。自民党内はもとより、野党はふがいなさを自覚することだ。





2020回顧・世界 感染症が対立と分断を深めた(2020年12月23日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大の危機が、各国の政治と社会を大きく動かす1年となった。

 読売新聞読者が選んだ今年の「海外10大ニュース」の2位は、「コロナの世界的な大流行」だった。

 米欧でワクチンの接種が始まるなど、明るい材料も出てきたが、猛威は衰えていない。

 「トランプ米大統領感染」が6位に入った。マスク着用などを軽視する甘さがあったとはいえ、米国のトップが入院する事態は、誰もが新型ウイルスにかかりうることを示す教訓となった。

 欧州では、ジョンソン英首相が感染し(13位)、最近はマクロン仏大統領の陽性も判明した。

 世界が一丸となって感染症と戦うべき時に、2大大国の米国と中国は対立を激化させた。

 トランプ氏は、世界保健機関(WHO)が「中国に支配されている」と批判し、米国の脱退を表明した(7位)。各国のコロナ対策を指導、調整するWHOの弱体化が懸念されている。

 世界で最初にコロナが流行した中国は、情報開示の遅れと初期対応のまずさを非難された。誤りを認めない態度が不信を招いていることを認識すべきである。

 国際約束を破り、香港の「一国二制度」を形骸化させる国家安全維持法を施行(5位)したことも独善的な姿勢の表れと言える。自由な香港の「中国化」は、各国の反発を招き、中国との経済関係を見直す動きが広がり始めた。

 中国が影響力の拡大をもくろむ南シナ海でも、米国との対立が強まり、緊張が増している。

 1位は「バイデン氏の米大統領選当選」だった。政権交代が対中政策や世界情勢にもたらす変化への関心の高さが示された。

 バイデン氏は、トランプ氏の自国第一主義から、国際協調重視の外交に転換し、米国の威信を回復できるかどうかが問われよう。

 内政では、「黒人男性への警察の暴力と抗議デモ」(3位)に象徴される社会の分断の修復が急務だ。コロナ禍で広がった格差を是正する取り組みも重要になる。

 副大統領には、黒人女性として初めてハリス上院議員が起用された(15位)。人種や性別などの多様性を尊重した新政権の人事は、白人支持層を過度に重視したトランプ政権とは対照的だ。

 アルゼンチンの伝説的なサッカー選手、マラドーナ氏の死去が9位だった。華麗で奔放なプレーが日本人の心にも強い印象を残していた証しだろう。





2020回顧・日本 社会が根底から揺らいだ1年(2020年12月22日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行が、日本社会を根底から揺さぶった。読売新聞の読者が選んだ今年の「日本10大ニュース」には、その衝撃と影響の大きさが鮮明に表れた。


 1位は「新型コロナ感染拡大、緊急事態宣言」だった。多くの国民が外出自粛要請に応え、マスクを着けて密集を避ける「新しい生活様式」を実践した。飲食店などは営業時間を短縮し、企業は時差通勤や在宅勤務を拡大した。

 「全国小中高の休校要請」(7位)は宣言前の2月下旬だった。休校は最長3か月間に及び、大学も遠隔授業を余儀なくされた。

 先の見えない不安の中で、誰もが大切な人を思い、苦境に耐える日々を送った。「志村けんさんら著名人が相次ぎ死去」(5位)の悲報に接し、事態の深刻さを実感した人も多かったことだろう。

 残念だったのは、国と自治体の連携不足から、休業要請を巡る混乱や、給付金などの支給遅れが生じたことだ。関係機関が縦割りを排して緊密に協調し、国民の命と暮らしを守ってもらいたい。

 政治の指導力が求められる局面で、突然のトップ交代劇だった。「安倍首相が辞任表明」は4位、「菅首相誕生」は3位だった。

 9月に就任した菅首相の船出は順調に見えたが、日本学術会議の新会員任命拒否に関する説明不足や、「Go To トラベル」事業の停止を巡る判断の遅れで批判を浴びた。就任時に歴代3位を記録した支持率は急落している。

 国民の信頼がなければ、この試練は越えられない。批判的な意見にも耳を傾け、危機に際して自らが前面に立つ姿勢を求めたい。

 「東京五輪・パラリンピック延期」は2位、「高校野球の春夏中止」が8位に入った。他にもプロ・アマ問わず、様々な競技大会が延期や中止に追い込まれた。

 スポーツは、人々に感動と生きる力を与えてくれる。プロ野球やJリーグが蓄積してきた感染防止の知見と対策を共有し、五輪の開催につなげてほしい。

 閉塞へいそく感が漂う中、明るい話題もあった。「アニメ映画『鬼滅の刃』の大ヒット」が6位につけた。多くの人がイベントを楽しめる日常を切望していた証しだろう。

 「将棋の藤井聡太七段が最年少タイトル」は9位だった。17歳の高校生が成し遂げた偉業が、人々に希望を与えてくれた。

 年明けからワクチンの接種が始まる予定だが、当面は危機的状況が続くだろう。全力で医療を支え、難局を乗り切りたい。




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