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(論)障害(2020年12月22日・2021年2月28日・3月12日)

コロナと障害者 課題に取り組む機会に(2021年3月12日配信『東京新聞』-「社説」)

 コロナ禍のしわ寄せは社会的弱者に集中している。障害者も例外ではない。長く放置されてきた問題が背景となり、事態が深刻化している例が目立つ。この災いを課題に取り組む機会にしたい。

 身体、知的、精神の区分を問わず、コロナ禍は障害者たちにも厳しい日常生活を強いている。

 例えば、視覚障害者。外出先で声をかけてくれる人が減った。物に触れることを制限され、マスクも嗅覚を鈍くするため、ストレスが増すという。多くの当事者たちが働く鍼灸(しんきゅう)院やマッサージ業も客が激減し、解雇が相次いでいる。

 施設で暮らす知的障害者は家族らとの面会が制限され、孤立感を募らす人が少なくない。作業所などに通う人も、施設の一時閉鎖で生活リズムを崩す人が多い。

 地域で自立生活を営む障害者らは深刻だ。複数の介助者たちが交代で付き添うケースが多いが、一人でも感染の疑いが出れば、ローテーションが崩れてしまう。

 これらとともに、長く未解決になっている問題が事態の深刻化を招いているケースがある。

 精神科病院でのクラスター(感染者集団)の多発が一例だ。これまで30病院以上での発生が確認されている。換気が十分ではない閉鎖病棟が一因とされている。患者の対応の難しさを理由に一般病院が患者の転院を拒む例も少なくなく、死亡例も出ている。
 精神科病院から地域医療中心へ移った欧米諸国に比べて、日本は精神科の病床数が多く、入院期間も突出して長く、かねて問題視されてきた。こうしたことがクラスター多発の背景になっている。

 自立訓練などの障害福祉事業所もコロナ禍で経営難に直面している。事業者への報酬は現在、利用回数を基にした日額(実績)払いで算出されている。利用者がコロナ禍で減れば、減収となる。だが固定費は重くのしかかる。事業者団体は、かねて市場原理的な日額払い制度の廃止を訴えてきた。

 いずれも先延ばしにされてきた問題だ。コロナ禍は災禍だ。だが、こうした構造的な問題を解決する好機にもなり得る。政府は前向きな姿勢に転換すべきだ。

 緊急に対処すべき課題もある。検査の徹底やワクチン優先接種の対象に障害者を加えることだ。障害者には健常者に比べ、手洗いやマスクの装着が難しい人が少なくない。すでに病院団体や当事者団体なども要望している。政府には待ったなしの対応を求めたい。





障害児支援 制度悪用した不正を見逃すな(2021年2月28日配信『読売新聞』-「社説」)

 障害のある子供が利用する「放課後等デイサービス」で、報酬の不正請求が相次いでいる。国や自治体は監視を強化しなければならない。

 放課後デイは児童福祉法に基づき、自治体の指定を受けた施設が、小中高校や特別支援学校に通う発達障害、知的障害などの子供を放課後と休日に受け入れる制度だ。生活能力の向上が目的で、職員が工作や運動などを支援する。

 読売新聞の調査では、不正請求で行政処分を受けた施設は2012年以降、179か所、総額約17億円に上った。職員の勤務記録や子供の利用日数を改ざんし、利用料を水増ししていた。

 施設の利用料は1回1万円前後で、その9割を国や自治体が負担している。不正請求は、この支援制度を利用し、公金をだまし取る悪質な行為だと言えよう。

 処分を受けた施設が、不正請求分の返還を求められたり、指定を取り消されたりしているのは当然だ。厳しく対処すべきである。

 施設は年々増え、1万5000か所に上っている。利用者数も20万人を超えた。障害のある子供の居場所を求める声が高まり、従来の社会福祉法人などに加え、企業の参入が相次いだ。営利目的の事業者の増加も指摘されている。

 同様の不正を行っている施設は他にもあるのではないか。国や自治体は調査を徹底すべきだ。

 国は3年に1回、実地指導を行うよう自治体に求めているが、施設数の急増に追いついていない。東京都は7施設で計約3億円を不正受給した事業者に、一度も指導をしていなかったという。

 厚生労働省も自治体の行政処分や不正請求の金額を十分に把握できていなかった。自治体の処分情報を迅速に集約し、悪質な事業者への対策に生かす必要がある。

 施設のサービスの質も懸念されている。利用者にテレビを見せたり、ゲームをさせたりするだけの施設もあるという。職員による虐待のほか、施設の管理者が女児に自宅の犬小屋を清掃させていたケースなどもあった。

 多くの職員を配置して、手厚く支援している施設ほど、経営は厳しい。国はサービス内容の充実度に応じて報酬額を決める仕組みの導入も検討すべきではないか。

 悪質な施設の横行によって、優良な施設まで立ちゆかなくなることがあってはならない。

 利用者側が悪質な施設をすぐに見抜くのは難しい。国や自治体は、実態調査や行政処分の情報などを適切に開示することが重要だ。



障害者施設虐待 なぜ見抜けなかった(2020年12月22日配信『東京新聞』-「社説」)

 愛知県東浦町の障害者施設で入所者を蹴り、重傷を負わせたとして、元職員の男(45)が逮捕された。複数への虐待が見逃されていた疑いがある。障害者施設での虐待は全国的にも減る気配がない。

 入所者の男性=当時(54)=は2019年7月、男に下腹部を蹴られ、3カ月後に病死した。この施設では18、19年に計4人が内臓損傷などで病院に運ばれ、男性を含む計2人が死亡している。

 男は「言うことを聞かないのでカッとなった。イライラして蹴った」と逮捕容疑を認めているといい、ほかの入所者にも暴行した疑いが持たれている。

 厚生労働省によると、障害者虐待防止法が施行された12年以降も、虐待は右肩上がりの傾向にある。施設の職員らによる虐待は18年度、前年度から3割増の592件で、被害を受けた障害者は777人に上る。うち2人は命を落としている。

 虐待防止法は、たとえ事実が確認できなくても、虐待が疑われた場合は必ず市町村に通報するよう義務づけ、合わせて内部告発者の保護を定める。施設側による隠蔽(いんぺい)や虚偽報告、証拠隠滅が相次いだことを受け法制化されたが、閉じられた空間になりやすく、自ら声を上げられない重度の障害者も存在することから、施設での虐待が見逃されている可能性は残る。

 今年3月には神戸市の精神科病院で元看護師ら6人が患者の顔に粘着テープを貼ったり、性的な行為を強制したりした疑いで逮捕されるなど、極めて悪質で組織的な犯罪行為も報告されている。

 厚労省は防止策として、第三者を入れた虐待防止委員会の設置や職員研修、市町村の立ち入り調査などを挙げる。介護現場からは職員の労働意欲や満足度、職員同士の人間関係や仲間意識が「虐待防止の鍵」との指摘もある。

 東浦町の事件では、男性ら2人が搬送された病院側が昨年8月に町に通報。関係者によると、防止法に基づき、入所者の支給決定をした2市が施設や病院から聞き取り調査したが、2市とも「虐待はない」と結論づけた。男は今年5月に別の虐待が発覚して7月に退職していた。

 男の逮捕を受け、愛知県は今月15日、施設への立ち入り調査に踏み切った。2市の調査ではなぜ虐待と判断できなかったのか、ほかにも虐待はなかったのか、施設は適切な運営をしていたのか、徹底解明する必要がある。有効な再発防止策を見いだしてほしい。




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