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NHKは日本学術会議の問題は既に終わったと考えているのか(2020年12月23日配信『日刊ゲンダイ』)

立岩陽一郎ジャーナリスト
ジャーナリスト。1967年生まれ。91年、一橋大学卒業後、NHK入局。テヘラン特派員、社会部記者、国際放送局デスクなどを経て、2016年12月に退職。現在は調査報道を専門とする認定NPO運営「INFACT」編集長。フジテレビ「とくダネ!」、毎日放送「ちちんぷいぷい」出演中。

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後付けの理由を次々に修正されてこの厚さに(提供写真)

 NHKの12月の世論調査を見て驚いた。それは、内閣支持率が14ポイント下がって42%となり、支持しないが17ポイント上がって36%だったという内容ではない。調査によっては不支持が支持を上回っているものもある。

 私が驚いたのは、この調査項目の中に日本学術会議に関する総理の対応が含まれていなかったからだ。「桜を見る会」の安倍前総理の説明納得度は入れているのに、だ。NHKはこの問題は既に終わったと考えているのだろうか? もっとも、これはNHKだけではないのかもしれない。メディア全般にこの問題を取り上げる機運が薄まっている印象がある。

 しかしながら一部の記者は引き続きこの問題を取材し精力的に報じている。こうした中、共産党の田村智子参議院議員の要求に対して内閣府がある文書を開示した。「日本学術会議法第17条による推薦に基づく会員の任命を内閣総理大臣が行わないことの可否について」と書かれた文書など。17条とは、会員を「内閣総理大臣に推薦する」とした条文だ。つまり菅総理が推薦された6人を任命しなかったことを正当化するための文書だ。その文書を知り合いの新聞記者に見せてもらって驚いた。A4判の書面は1000枚超。積み上げると10センチを超える高さだ(写真)。なぜこれだけあるかというと、正当化するための文面が次々に修正されているからだ。

■後付けの理由を必死でひねり出す「優秀な官僚」

 例えば、18年10月19日の書面では、「内閣総理大臣は、日本学術会議からの推薦を十分に尊重する必要があるのであって、実質的な任命権は日本学術会議にあり」となっていて、「内閣総理大臣の任命権は形式的なものになることが期待されているといえる」と続いている。それが、同年10月25日には「内閣総理大臣の任命権が全く形式的なものであると解することは適当ではない」となり、「内閣総理大臣は日本学術会議から推薦された候補者を任命しないことができると解することが適当である」と変更されている。更に、そのために任命数を上回る候補者の推薦を求める点も盛り込まれていく。内閣府の官僚が上からの指示を受けて何度も文面を修正する状況が開示された文書から読み取れる。

 こうした文書には既視感がある。無理やり検察庁法を改正して検察幹部の人事に政府が介入しようとした時の、政府の文書だ。そこから見えるのは、後付けの理由を必死でひねり出す「優秀な官僚」の姿だ。

 菅総理はこの問題は押し切れると見ているようだ。それは日本学術会議が知識人のための組織で、知識人を叩くことは庶民から喝采を受けるという計算から来るのかもしれない。仮にNHKが世論調査の項目から外したのが、それを踏まえてだとしたら極めて残念だ。

 しかし私たちは忘れてはいけない。独裁国家が最初に民衆の支持を得るために叩くのは知識人だ。私たちは今、そうした道へ向かっている。我々市民も、メディアもそれを強く認識しないといけない。2020年最後のコラムで残念ながらこう書かねばならない。この政権は危ない。





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