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校則は誰のためにあるのか」ー3回シリーズ(2020年12月23・24日配信『全国新聞ネット』)

ボタンの間から下着の検査「何でここまで?」(2020年12月23日配信『全国新聞ネット』)

校則は誰のためにあるのか

 下着は白、靴下の長さは床から15センチ以上、ツーブロック禁止…。子どもの人権を尊重し、多様性を認め合うはずの学校で、髪形から下着の色まで厳格に定めた校則がまかり通り、「理不尽だ」と不満の声が上がっている。校則は社会の変化に合わせて柔軟に見直されるべきものだが、子どもの意見が反映されず、学校のお仕着せになっていることも多い。中には人権侵害だと指摘される規則も。

 そのルール、一体誰のため?

3回にわたって考えます。(共同通信=小川美沙、松本智恵)

 ▽ボタンの間から確認

  「先生たち、何でここまでするの?」。

  福岡市の中学1年の男子生徒(13)は、男性教諭数人による身だしなみ検査に戸惑った。 男子生徒によると、教諭は生徒を廊下に並ばせ、ボタンとボタンの間を開かせて下着の色を確認したという。同様の検査は入学から半年ほどの間に3回経験した。検査に先立ち、「下着は白・ベージュで華美でないもの」という新たな規則が追加されていた。意見を聞かれた覚えも、納得のいく理由の説明もなかったのに…。「生徒は何も言えない」。男子生徒はため息をついた。

 市教委によると、5月に市内の中学の校則を点検したが「明らかに人権侵害にあたるものはなかった」。下着の色を指定している学校はあるものの「華美な色では透けてしまうことや、経済的な理由から」だという。

 同市の公立中のPTA会長を務めた経験があり、校則問題に詳しい後藤富和弁護士は「下着の色の指定や検査はセクハラ。社会では許されないことがなぜ学校で起きるのか」と非難する。

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福岡県弁護士会がまとめた、福岡市立中の全69校の校則の実態調査

 福岡県弁護士会は22日、福岡市立中の全69校の校則の実態を調査した結果を発表した。下着の色を指定する学校は57校。ある学校では「違反している下着を学校で脱がせる」と定め、「人権侵害にあたる行き過ぎた指導」だと指摘されるものも。調査を担当した弁護士会の佐川民弁護士は「規制自体に合理性、必要性がないのに、違反したら教室に入れないなど、学習の機会を奪うものもあった」と話す。

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福岡県弁護士会の記者会見=12月22日

 ▽校外でも順守?

 そもそも、校則とは誰が定めるのか。根拠法令はないが、校長に制定の権限があるとされている。文部科学省の「生徒指導提要」(2010年)によると、校則は「児童生徒が健全な学校生活を営み、よりよく成長していくための行動の指針」。子どもの実情や時代の流れに沿って積極的な見直しを求めており、見直しに子どもたちも関わることで、主体性を培う機会となるとしている。

 佐賀県弁護士会は今年4月以降、県内計22の中学の校則を調べ、生徒らへのヒアリングも行った。調査によると、校則で下着の色を指定し、女性教諭が女子生徒の下着の肩ひもを出させて目視で検査していた例もあった。

 制約は校外活動にまで及び、友人宅への宿泊を禁じたり、校区外で原則制服の着用を定めたりする学校もあったという。校則の意義や成り立ちを説明しているケースはほとんどなく、改定や見直し手続きを定めたものも一切なかった。

 弁護士会は11月、県教委に提言書を提出。時代にそぐわない校則の見直しや、校則の策定、変更には子どもたちの意見を聞く仕組みを構築するよう求めた。校外の行動までルールを作り、保護者が許可していることまで一方的に律して、学校の責任を過度に重くすることも「妥当でない」などと指摘した。

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佐賀県庁で担当者(右)に提言書を手渡す県弁護士会の富永洋一会長=11月

 ▽子ども中心に

 子ども中心のルール作りを模索する動きもある。熊本市教育委員会は8~10月、小学1~3年を除く児童や生徒、保護者、教職員を対象にアンケートをし、計約5万人が回答。結果、必要のない校則として「靴下の長さ、ピンの数、髪を結ぶ高さ」「日焼け止めの禁止」などが挙がった。子どもたちが校則を作り、考える場が「ない」と答えた子どもは72・2%、教職員は68・5%に上り、そうした場が必要だと回答したのは子ども、教職員ともに8割を上回った。

 一方、子どもたちが関わる場は必要ないとした人の回答を見ると「わがままな意見が出て、収拾が付かなくなる」(中学教職員)という意見や、「(考えても)反映されることがほぼないから。採用されないと思うから」(中学生)という、諦めとも取れる声もあった。

 市教委はさらに議論を深めようと、10月下旬に市内の中高生、教職員、保護者ら計約40人が参加するオンライン公聴会を開催。6グループに分かれて約1時間半、意見を交わした。遠藤洋路教育長がコーディネーターを務めたグループでは、中3の男子生徒が「校則に不満を持っていたが、これまで意見を言えなかった」と切り出し、「中学生らしい髪形」とは何かを問いかける形になった。

 女性高校教員は「社会に出る前、面接などで通用する身だしなみとはどういうものかを考えてもらうためだと思う」と回答。一方、高2の男子生徒は「奇抜すぎるのは良くないと思うが、ツーブロックがだめなのは分からない」。保護者の一人は「『中高生らしさ』がつかめない。なぜ推奨されるのか、理屈を伴わないものがある」とこぼした。

 公聴会の結果を踏まえ、市教委は今後、子どもたちが見直しに関われる仕組み作りを進める予定だという。



教諭も困惑、制服検査「あれはセクハラ」(2020年12月24日配信『全国新聞ネット』)

校則は誰のためにあるのか

 1980年代に全国で校内暴力が問題となり、「沈静化」のために子どもたちを管理するかのように厳しい校則が取り入れられた。40年が経ち社会や子どもたちが多様化している現在も、男女別に髪形を規定し、下着の色を指定するなど旧態依然とした校則がなかなか変わっていないようだ。教諭の中には、理不尽なルールや、その運用に違和感を抱き、悩んでいる人もいる。

 校則はいったい誰のため?

3回にわたって考える2回目です。(共同通信=小川美沙)

 ▽時間がない

 九州地方の中学に勤務する女性教諭は以前、女子生徒と保護者から相談を受けた。エアコンの入った教室は夏でも肌寒く感じ、薄手のカーディガンを着たいという。当然認められると思い、生徒指導担当の教諭に申し出ると「カーディガンの着用期間は冬のみが決まり」と拒否された。

 納得いかないと感じつつも、生徒に「そんなルール、守らなくていいよ」とは言い切れない。学校の同調圧力は強く、ルールを守らないと「あの子だけずるい」「わがまま」などとレッテルを貼られることがあるからだ。女子生徒には「生徒総会で議題にしてみたらどうかな」と提案するのが精いっぱいだった。

 どう対応するのが良かったのだろう。同僚に相談したところ「生徒と議論する時間なんてないでしょ、めんどくさい。好感度、上げたいの?」と言われ、ショックだった。確かに、生徒とじっくり向き合う余裕はない。でも「厳しいルールを押し付けて、枠からはみ出したら、子どもや保護者が悪いと突き放してしまっていいのか」と、悩みは一層深くなった。

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生徒指導提要と、校則に関する記述のあるページ

 ▽従わせる威力

 九州地方の40代の女性高校教諭は、女子生徒の制服スカート内側に記名があるか検査する係に指名され、困惑したことがある。「スカートを取り違えないように」という検査の理由も、必要以上に生徒を子ども扱いしているように思えた。断り切れず、体育館に女子生徒を一列に並ばせてチェックした。「あれはセクハラ」と今も悔やむ。

 昨今、体罰を許さない風潮が強くなった代わりに、厳しい校則の運用が「生徒を従わせる威力になっている」と感じる。子どもたちは「内申書に響く」「受験に影響する」などと言われれば黙るしかなく、「考えることさえあきらめさせている」と危機感を抱く。

 その威力をまざまざと感じたことがある。10年以上前、勤務していた校則が甘めの学校で、校長が替わってから厳しい身だしなみ検査が導入されるようになった。生徒は外見上、落ち着いたように見え、保護者や地域からも「高校生らしくなった」と高評価だった。「学校から見ると、校則の運用を厳しくするといろんな問題が一挙に解決するかのように思えてしまう」。校則を緩めるのはそう簡単なことではないだろうと感じている。

 ▽トップダウン

 「子どもの荷物が重すぎる。部活の道具も含めると10キロにもなる」「骨に悪影響が出る」。福岡県の男性教諭(56)が3月まで勤務していた中学では2年前、複数の保護者からの要望を受けて協議した結果、生徒の判断で教科書などを置いて帰る「置き勉」を生徒に認めることにした。子どもにとっては望ましい結果になったと思うが、これで良かったか疑問が残った。当事者である生徒に議論させず、決定にも関わらせなかったからだ。

 学校の決まりに関する不満や疑問は生徒総会で話し合うべきだと思うが、近年は「校則は教員が決めるもの」だとして議題に上げさせない例があると聞く。「トップダウンで、子どもが意見を言う場がない。民主主義を教える場になっていないのでは」

 ▽みんな同じ

 文部科学省の「生徒指導提要」(2010年)によると、生徒指導は①児童・生徒に自己存在感を与える②共感的な人間関係を育成する③自己決定の場を与える―の3点に特に注意する必要があるとしている。

熊本大の苫野一徳准教授(教育学・哲学)によると「学校のシステムは『みんな同じ』に価値を置くため、教諭が厳しいルールに違和感を持っても異を唱えることは難しく、苦しんでいる人もいる」と話す。忙しさのあまり、ルールが何のためにあるのか、良いものなのか、子どもとともに問い直す機会も少ないという。

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熊本大・苫野一徳准教授(本人提供)

 「鉛筆は5本まで」「手を挙げる時は指先をそろえ、ひじを伸ばす」「黙って掃除する」…。苫野准教授は、学習や生活に関する決まりごとが、近年どんどん細かくなっている学校も少なくないと指摘。背景には、ベテラン教員の大量退職などによって、マンパワー不足を補うための「指導のマニュアル化」もあるとみる。テストで測れる学力を短期間で上げるためにもこうしたマニュアル化された指導が用いられているとみられ「学校の横並び主義に拍車を掛けている」と話す。

 苫野氏は「本来ならば、多様化する子ども一人一人を大事にした教育の在り方を考えるべきだが、対応できていない。社会の担い手を育てる場で上からルールを押しつけるのでは学校の本質にもとる」と厳しい目を向ける。




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