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(論)変異株(種)に関する論説(2020年12月27・29日・2021年1月18日・3月12・14・16・17日・4月8・9・20日)

変異株の急拡大 医療崩壊を招かぬために(2021年4月20日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの変異株が急速に広がっている。長野県内も初の集団感染が諏訪地方で確認された。

 検出例が最も多い英国株は、感染力が従来ウイルスの約1・3倍という。ほかの種類はさらに、免疫を弱める恐れもあると指摘される。

 比較的若い世代や基礎疾患のない人でも感染し、重症化しやすい。自治体、地域が連携して警戒を強めていかねばならない。

 関西は既に変異株が主流となった。1日の感染者数が先週から千人を超え続けた大阪府は、重症者のうち50代以下の割合が3割余を占め、冬の第3波から倍近い。

 医療機関の訴えは深刻だ。重症病床が足りず、入院が長引いて新規患者を受け入れられない。心臓病など他の重い疾患の手術を延期し、コロナ感染が疑われる人の救急搬送を断らざるを得ない。高齢者に人工呼吸器が回せない…。まさに医療崩壊の危機にある。

 国立感染症研究所は、首都圏や東海で5月にも大半が変異株に置き換わるとみる。大阪のような状況が一挙に広がる恐れがある。

 病床の不足は長野県内も懸念される。北信で中等症・軽症者を受け入れる一般病床の逼迫(ひっぱく)度は、先週末時点で100%に近づいた。県は圏域をまたいで調整できるとするものの、他の圏域でいつ感染が拡大しないとも限らない。

 肝心なのは、感染者の数そのものを抑えていくことだ。

 現在の感染拡大は、3月の緊急事態宣言解除後、人の往来や大勢で飲食する機会が増えたことが要因の一つに挙げられている。

 「3密」の回避、食事や会話で飛沫(ひまつ)を防ぐ配慮、手洗いや消毒、うがいの励行など、感染予防の基本に再度立ち戻りたい。

 県民全体で意識を共有するために実態把握も急ぎたい。

 県と長野市は独自に変異株PCR検査で捕捉を試みる。市保健所は管内の変異株感染は限定的とみる一方、民間などから検体を入手できない場合も少なくない。

 国は検査の目安を陽性者の40%程度とする。変異株のまん延を踏まえれば、それでも十分とは言えない。国が主導し、研究機関も活用して拡充する必要がある。

 ワクチンについて、河野太郎行政改革担当相は9月末までに全員分が調達できる見通しを示した。だが、どの段階で、どれだけ確保するのかは曖昧なままだ。

 いつになれば接種できるのか。それまで必要な対策をどう打つのか。国が明確な根拠をもって方針と日程を示していくべきだ。



コロナ変異株 強い対策、必要な局面だ(2021年4月20日配信『中国新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの「第4波」が急激な広がりを見せる。一因とみられるのが変異株だ。

 感染者に変異株の占める割合は高まっており、関西では既に主流となっている。関東や東海地域でも来月には感染者の大半を占める恐れがある。

 世界で新型コロナ感染症による死者が300万人を超えた。感染者も1日当たり70万人を超すなど再拡大に直面しており、やはり変異株が要因と考えられている。

 感染力が強く、重症化が速いとされる。国内でもほとんどの都道府県で変異株が見つかっている。感染拡大を想定した手だてが早急に求められる。

 感染力に関係する変異は英国株、南アフリカ株、ブラジル株の3タイプで、国内では英国株が最も多く確認されている。ウイルス表面にある、人の細胞内に侵入する役割を持つ突起状のタンパク質が変異する。

 国立感染症研究所によると、英国株は従来株よりも約1・3倍感染力が強い。高齢者が多かった重症者も40代や50代が増えている。変異株の割合が高い大阪府では、50代以下が第3波の17・5%から第4波は33・5%へ高まった。発症から重症化までの日数も従来株より短い。

 このため大阪府は重症病床不足に陥った。吉村洋文知事がきょうにも緊急事態宣言の要請を決めるというのも当然だろう。

 大阪府や兵庫県では、変異株への置き換わりが既に進行している。首都圏でも5月前半には8~9割が変異株になると、感染研は試算する。

 変異株の影響で、第4波による死者数は、第3波を上回るという予測もあり、封じ込め策が不可欠だ。

 政府は対策の切り札としてワクチンを挙げてきた。菅義偉首相は訪米中、製薬大手ファイザーの首脳と電話会談し、ワクチンの追加供給で実質合意したという。9月末までに、16歳以上の国民全員分が供給される見通しが立ったと強調した。

 「合意」を評価するとしても接種の態勢をどう整え、行き渡らせるかが問題だ。

 一方で、ワクチン接種が進む国でも変異株の影響で感染状況が悪化しており、懸念される。

 米ミシガン州はファイザーのワクチン製造拠点だが、現在は一大感染地だという。ワクチンを少なくとも1回接種した州民は35%以上に上るが、州の陽性率は15%超で全米平均の約3倍だ。英国由来の変異株が原因との見方がある。

 世界保健機関(WHO)も、ワクチンだけに依拠せず、手指消毒や対人距離の確保といった基本動作の徹底を訴える。

 では国内の防止策はどうか。まん延防止等重点措置が10都府県に出ているが、飲食店の時短を中心とする従来の対策では、歯止めをかけられていない。

 緊急事態宣言などで強いられてきた自粛への「疲れ」、対策への「慣れ」が国民にはありそうだ。もはや打つ手はないとの指摘もあり、新たな対策を打ち出すのは難しいに違いない。

 とはいえ変異株は確実に拡大しつつある。第4波を封じ込めるには、私たちも一体となって取り組まねばならない。

 ワクチン接種を急ぐのはもちろん、政府は一層効果的な感染防止策や強いメッセージを、国民に発信する必要がある。 





変異ウイルス 急拡大を踏まえ体制立て直せ(2021年4月10日配信『読売新聞』-「社説」)

 感染力が強いとされる変異ウイルスが急速に広がっている。従来の対策では、感染拡大を抑え込めない恐れがある。体制の立て直しが急務だ。

 大阪府では、変異した新型コロナウイルスの割合が4月3日までの1週間で、検査対象者の7割強に上った。その多くが「英国型」と呼ばれる変異ウイルスだ。

 英国型は、感染力が従来型の最大1・7倍とされ、重症化しやすいとの報告もある。大阪府ではこれまでにない速さで感染者が増え、府によると、重症者用の病床使用率が7割を超えた。局面が変わったとみるべきである。

 政府は、緊急事態宣言に準じた措置を講じられる「まん延防止等重点措置」を5日から大阪府、兵庫県、宮城県に適用している。12日からは、東京都、京都府、沖縄県にも拡大することを決めた。

 英国型は、東京都でも3月末から急拡大の兆しが見えている。各地で英国型が主流になれば、爆発的な感染拡大が起きる危険性がある。菅首相は、都道府県境を越えた不要不急の移動を自粛するよう呼びかけている。

 政府は、変異の有無を調べる検査を陽性者の40%程度に引き上げるとしているが、多くの自治体では達成できていない。早急に検査を拡充することが必要である。

 国民に英国型の特徴をわかりやすく説明してほしい。感染者との距離や接触時間など、濃厚接触者とみなす基準は現行のままで良いのか。学校の授業や部活動での対策はどうするのか。対処方針を早急に確立することが重要だ。

 病床の確保にも全力を挙げねばならない。政府は都道府県に対し、これまでの2倍の感染者が出ることを想定した病床確保計画を4月中に策定するよう求めているが、どの程度進んでいるのか。

 政府は自治体任せにせず、進捗しんちょく状況を把握し、都道府県だけで調整がつかない場合は、近隣県を含めた広域連携を促すなど、必要な支援を打ち出すべきだ。

 前回の「第3波」では、入院先や療養先が見つからず、待機中に亡くなる人が相次いだ。今のうちに、仮設の病棟と療養施設を迅速に拡充してほしい。

 日本が確保している米ファイザー製のワクチンは、英国型にも有効だとされる。国民への接種を急ぐことが最優先の課題である。

 仙台市では、英国型とは異なるタイプの変異ウイルスが多く検出されている。このタイプはワクチンの効果が下がる可能性があるという。影響の評価を急ぎたい。



変異株の急拡大/医療崩壊を食い止めねば(2021年4月10日配信『神戸新聞』-「社説」)

 関西を中心に、新型コロナウイルスの感染が再び急拡大している。兵庫県でもきのう、初めて3日連続300人以上となる314人の感染者が新たに報告された。2週間前の約2・7倍という急増ぶりだ。大阪府や京都府、奈良県などを含め、関西全体の感染状況は、かつてない厳しい局面に入ったと言っていい。

 病床が埋まるスピードも極めて速い。兵庫県の病床使用率は74・7%、重症病床の使用率は73・3%に上昇し、全国最悪レベルが続く。これ以上の逼迫(ひっぱく)を何としても食い止め、医療崩壊を防がねばならない。

 県はきのう方針を転換し、自宅療養を認めることを明らかにした。掲げてきた自宅療養ゼロの看板を下ろさざるを得ないほど状況は悪化していると言える。病状の急変を見逃さず、家族内感染を防げるようフォローアップ体制の構築が急がれる。

 加えて、今月中をめどに病床を100床程度増やすことなども表明した。マンパワーも十分に確保する必要がある。医療機関が連携し、病状に応じて患者を振り分ける仕組みを機能させて、助かる命を救うことに全力を尽くしてもらいたい。

 関西での急拡大の背景にあるとみられるのが、英国型の変異株の拡大である。兵庫県と神戸市が独自に行っている変異ウイルスの検査では、先月28日までの1週間の検体のうち8割以上がこの英国型だった。

 国内の分析では、感染力が従来株の1・3倍強い可能性があるという結果が出ており、重症化率も高まっているとのデータもある。厄介さが数段増している変異株は、これまでの延長線上の対策では乗り切れないとの専門家の指摘も相次ぐ。

 感染者は全国でも増加傾向が続き、新規感染者数はきのう、3日連続で3千人を上回った。東京都でも500人台が続いている。

 政府は来週から、兵庫県などに適用した「まん延防止等重点措置」を東京都や京都府、沖縄県に拡大することを決めた。だが対策は従来の飲食店中心のままで、大きく変わらない。「自粛疲れ」が指摘される中、効果に疑問を抱かざるを得ない。

 1回目の緊急事態宣言時には「最低7割、極力8割削減」といった接触機会を巡る具体的な数値目標を掲げた。今回はそれを超える波に直面している。より踏み込んだ対策に切り替える時期に差し掛かっているのではないか。影響が及ぶ事業者や個人への資金支援は欠かせない。

 政府の専門家分科会の尾身茂会長は「危機的な状況に入っているという認識を国民全員が持つべき」と指摘する。危機感の共有と思い切った措置が求められる。一人一人が感染対策を徹底することも継続したい。



ウイルスは奇妙な存在である(2021年4月10日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 「ウイルスは奇妙な存在である」と、人類学者の長谷川眞理子さんが本紙夕刊の『現論』欄に書いていた。新型コロナウイルスが属するRNAウイルスの特徴を平易な表現で伝えている

▼「RNAは遺伝情報の変化を抑える仕組みを持っていないため、情報の変異のスピードが速い。変異が起こってもそれを修復しないので、どんどん新しいものが出てくる」と。掲載されたのは、新型コロナの国内感染が初めて確認されたころ。1年以上たった今、その脅威は、現実のものになりつつある

▼県内で新型コロナの変異株感染者が2日連続で確認された。疑いがあり判定を待つ感染者もいる。変異株が猛威をふるう大阪府や兵庫県の状況を見れば「来るべきものが来た」といったところか

▼これまで、英国、南アフリカ、ブラジルで報告された変異株は感染力が強い上、ワクチンが効きにくいものもあるという。最近では感染力が強くない新しい変異株も、関東を中心に報告されている

▼世界的ベストセラーとなったノンフィクション『ホット・ゾーン』(リチャード・プレストン著)は、エボラ出血熱の制圧に命を懸けた人々を描いた。エボラもまた、RNAウイルスである。全面的な制圧はまだだが、コロナ禍中の昨年6月、コンゴ(旧ザイール)政府が、2018年から続いていた同国東部での流行の終息を宣言した

▼ワクチンや治療薬の開発、地道な予防啓発活動で封じ込めに成功したという。コロナでも早く、同じような明るいニュースを聞きたい





変異株の検査 官民の連携で拡充を急げ(2021年4月8日配信『産経新聞』ー「主張」)

 新型コロナウイルスの変異株のスクリーニング(ふるい分け)検査に全力を挙げるときだ。

 蔓延(まんえん)防止等重点措置が発令中の大阪府では英国型を中心に変異株が広がっている。7日の新型コロナ新規陽性者数は過去最多の878人で、吉村洋文府知事は医療非常事態宣言を出した。

 変異株の抑え込みには、検査が重要だ。変異株かどうか分かれば、保健所は患者やクラスターをきめ細かく把握できる。医療機関も患者をより適切に扱える。

 田村憲久厚生労働相は緊急事態宣言の解除に際し、変異株のスクリーニング検査を全国的に40%へ引き上げる目標を掲げた。3月下旬には陽性者の30%程度だったが、目標を掲げて3週間たった今はどうなのか。40%を達成しても満足してはいけない。さらなる拡充をしてもらいたい。

 スクリーニング検査はPCR検査の一種で、大病院や民間検査会社などから陽性者の検体を回収して、主に都道府県の地方衛生研究所が行っている。岡山県のように全ての陽性者を対象にするところも出てきたが、大都市部では苦戦している。

 東京都では、コロナ陽性特定の95%を民間検査機関や大病院などが行っており、検体の回収態勢が整っていない。都の目標は4月上旬に25%で、国の掲げる目標にさえ遠く及ばない。東京では関西とは異なり、E484Kという新たな変異型が広がりつつあると言われるが、これへのスクリーニング検査はされていない。この監視態勢構築も課題だ。

 最初の緊急事態宣言発令から1年がたっても、検査態勢を整え切れない政府と自治体は、国民と住民の負託に応えていない。猛省すべきである。

 神戸市は陽性者の6割超の検体を回収し変異株の検査を行っている。PCR検査の能力が全国的に不足していた昨年5月、同市は市内の大手検査機器メーカーに要請してPCR検査の態勢を築き、住民の検体が散逸せずに済んだ。

 政府は数字の達成を迫るだけでなく、都道府県が民間検査機関などと効率的で合理的な連携を築けるよう支援してもらいたい。検体の集約が難しければ変異株の特定まで各検査機関で行うことも検討したらどうか。病床確保と同様に検査でも地域での官民連携を築く契機としたい。





菅内閣発足から半年 遠のく「当たり前」の政治(2021年3月17日配信『産経新聞』ー「主張」)

 菅義偉内閣が発足して半年が経過した。総務省の幹部らが高額接待を受けた問題が政権を直撃する中で迎えた節目である。

 首相の「たたき上げ」イメージが好感され、携帯電話料金値下げをはじめとする実利重視の政策にも期待が集まったのだろう。昨年9月、歴代内閣の中でも高い支持率を記録してスタートした。

 ところがその後、支持率は低迷し、早くも苦境に陥っている。

 なぜだろうか。

 首相の掲げる「当たり前の政治」とはかけ離れた政権運営が続いているからではないか。

 最大の懸案である新型コロナウイルス対策は、対応が後手に回る状態がなお続いている。

 「GoToキャンペーン」事業を主導するなど、首相は経済回復を優先してきた。この結果、感染の拡大に歯止めがかからず、今年1月、東京都などを対象に緊急事態宣言の再発令に追い込まれた。

 首相の発信力が乏しく、国民にメッセージが届いていないという課題も解消されていない。

 しかも首相は昨年12月、東京・銀座のステーキ店で自民党の二階俊博幹事長や俳優らと会食した。

 専門家による政府の分科会が「5人以上の飲食」に注意を呼びかけている最中の会食に、批判が集まったのは当然だ。


 忘れてならないのは、日本学術会議の問題だ。会員候補のうち、6人をなぜ任命しなかったのか。首相はその理由を答えていない。

 6人は安全保障法制などに異を唱えた研究者である。人事権を使って異論を排除する強引な手法を、学問の世界にも広げようとしているのではないか。

 これに対し、首相は「説明できることと、できないことがある」と開き直った。だが行政は国民に説明できないことをしてはならない。それが民主政治の基本だ。

 総務省幹部が受けた高額接待も常識外れというほかない。官僚と業界に加え、政治家を含めた「政・官・業」のもたれ合いの構図が見え始めているだけに深刻だ。

 信頼を回復するのは容易ではない。まず首相は、当たり前の政治とは何かを考え直す必要がある。そして国民が今、何に不満や不信を抱いているか、謙虚に耳を傾けるべきである。







広がる変異株 実態を捉えて政策判断を(2021年3月16日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス変異株の国内感染が広がっている。昨年12月25日に初めて報告されて以降、空港検疫や長野を含めた20を超える都道府県で300人以上の感染者が確認された。

 特に英国、南アフリカ、ブラジル由来の3種類は、従来より感染力が強いとされる。海外では、既存株に取って代わり感染が再拡大する国が相次ぐ。

 国内で確認された感染者には、渡航歴がない人や感染経路が不明な人が多数含まれている。変異株による市中感染が起きていてもおかしくない状況だ。対策は十分か。急ぎ点検する必要がある。

 政府が水際対策とともに力を入れるのは監視の強化だ。今月から全都道府県で変異株のPCR検査ができるよう体制を整えた。

 ただ、自治体に求めた検査の目安は感染者の5~10%だ。少なすぎて実態を見逃す恐れがある。

 神戸市が感染者の約65%に当たる99人の検体(2月19日~3月4日に採取)を独自に調べたところ、38人が変異株と判明。全体に占める割合が週を追うごとに増える傾向もつかんだ。

 効果的な感染防止対策につなげるには、的確な実態把握が欠かせない。大学や民間の研究機関も巻き込んで、機器の開発や体制の拡充を図り、検査目安の引き上げに努めていくべきだ。

 変異株のうち国内で最も感染者が多い英国型は、死亡するリスクが1・3~2倍高まるとの調査結果が出た。これまで少なかった10代以下にも広がっている。

 ブラジル型は再感染の恐れが指摘される。南ア型はワクチンが効きにくく、最近見つかったフィリピン型も同様という。

 ブラジルでは変異株が全土に広がり、新規感染者数が一日7万~8万人のペースで急増。医療崩壊が各地で起きている。

 日本でも感染拡大を許せば、対処が困難になるのは明らかだ。今のうちに、病床や療養施設の確保を進め、病院間の役割分担を調整しておかねばならない。

 それ以上に大切なのは、感染者をもっと減らすことだ。

 第3波の新規感染者は一日千人前後で下げ止まっている。円滑なワクチン接種を実現するためにも、一人一人が「3密」の回避や手洗い、うがいを徹底したい。

 政府は、首都圏に発令中の緊急事態宣言について期限の21日を前に解除するかどうか決める。第4波を招かぬためには、変異株の実態を捉えて政策を判断し、国民にきちんと伝えることが必要だ。





途上国とワクチン 増産と公平な分配に全力を(2021年3月14日配信『茨城新聞』-「論説」)

 日本と米国、オーストラリア、インドの4カ国は初の首脳会合をテレビ会議方式で開き、新型コロナウイルスワクチンの生産を連携して拡大することで合意した。アジア太平洋地域の発展途上国などに、10億回分を来年末までに供給することを目指す。

 中国の「ワクチン外交」に対抗する狙いがあるが、先進7カ国(G7)首脳の会議に続き、国際社会は結束してワクチンの増産と公平な分配に全力を挙げなければならない、とのメッセージを送ったと受け止めたい。

 新型コロナ制圧の切り札と期待を集めるワクチンの投与は先進国、あるいは生産拠点を持つ国に偏っている。バイデン米大統領は「5月1日までに米国の全成人を接種対象とする」と表明している。一方、多くの途上国では医療従事者の接種さえ始まっていない。自国民のためのワクチン確保に血眼となる先進国を横目に、中国やロシアは途上国へのワクチン提供を通じて存在感を強める外交を展開している。こうした状況が長引く限り、途上国では感染が続く。変異を繰り返してワクチンが効かないウイルスが出現する可能性も大きくなる。ワクチンが有効でなくなれば、世界経済の回復もまぼろしになる。危機回避の鍵は、公平な分配の実現だ。

 世界中が同じペースで全ての国の医療従事者に接種し、次いで高齢者や持病のある人々に接種するのが公平分配の理想だが、現実には自国民を優先しない国はない。

 現実と理想のギャップを埋めるため、国連機関などが進めている公平分配の国際的枠組みが「COVAX(コバックス)」だ。豊かな国が出資し、共同購入したワクチンを世界に配布する。

 この枠組みにトランプ前米政権は背を向けていたが、バイデン政権は参加に転換し、G7首脳は2月の会議で中心的役割を果たす姿勢を明確にした。日米豪印の首脳会合でも、COVAXとの緊密な協力を確認した。

 調達したワクチンの第1便がアフリカやアジアの途上国に届き始め、3月初めにアフリカのガーナとコートジボワールで初の接種が実現した。まずは5月末までに英製薬大手アストラゼネカなどが開発したワクチンを142カ国・地域に供給する計画だが、十分な量を世界に行き渡らせるまでの道は長く険しい。

 国連のグテレス事務総長はパンデミック(世界的大流行)丸1年に合わせた11日の声明で「豊かな国が買い占め、製薬会社と取引することは全ての人にワクチンを届けることを妨げる」と先進国にくぎを刺した上で「世界は結束し、ワクチン製造能力を少なくとも2倍にする必要がある。力を合わせてこそ、流行を終わらせ、経済を回復できる」と強調した。

 インドはCOVAXが配布するワクチンの主要な供給元であり、生産能力増強に期待したい。安価なジェネリック医薬品(後発薬)やワクチンの生産大国で「世界の薬局」を自負するインドは、これまで近隣諸国へのワクチン外交も試みてきたが、あくまでCOVAXを通じて貢献してほしい。

 国内でワクチン生産の見通しが立たない日本はCOVAXやインドへの資金提供に加え、ワクチンを運ぶ「コールドチェーン」(低温物流)整備などで途上国を援助する方針だ。支援を惜しまず各国と力を合わせたい。






「レベチ」(2021年3月14日配信『産経新聞』ー「産経抄」)

 東京やその近辺で育った人が、関西に来て首をひねるのが「けーへん、きーひん、こーへん」だという。「なんぼ待ってもけーへん(いくら待っても来ない)」。大阪周辺にお住まいの方なら、耳に口になじんだ表現だろう。

 ▼京都なら「きーひん」、神戸から西は「こーへん」となる。「来ない」の意味を保ちながら、現代に受け継がれているのがおもしろい。京都ゆえか「きーひん」の語感に気品が漂うのは偶然として、各地の地味(ちみ)に合わせて根を下ろし、枝葉を広げる言葉の生命力にはたくましさを覚える。

 ▼口から口へ、相伝の物語がしのばれるからこそ、言葉の変異には味わいがある。同じ相伝でも、こちらは外見が毒々しい上に、変わり身があまりにも早く、憎さしか覚えない。新型コロナウイルスの変異株が、日本で目立ってきた。

 ▼感染力が強く、致死率も高いとされる英国型などに加え、新手のフィリピン型が確認されたという。ワクチンの効き目を鈍らせる恐れもあると聞けば油断ならない。流行の主流はいずれ変異株になるとみられる。水際対策や検査体制で受け太刀になってはいけない。

 ▼ワクチンや治療薬開発の先をゆく変異速度は、過去のウイルスとは段違いだろう。そこには人類への敵意さえ感じるが、どんな変異株であれ、元をたどれば「口から口」に行き着くことに変わりはない。日々の暮らしで経路を断つことが焦眉の急である。

 ▼変異といえば、若者言葉にも思いが至る。一例を挙げると、「レベチ(レベルが違う)」。横文字と日本語の掛け合わせに略語をからめるなど、変異を生み出す発想の飛躍にこちらの理解が追い付かない。おじさん世代より上への感染力に乏しい分、ウイルスほど憎めないのが救いではある。





変異株初確認 早期把握へ検査強化を(2021年3月12日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの変異株が道内で初めて確認された。専門家は今後変異株が主流になるとみている。従来型より感染力が強いとされるため、再び感染拡大を招かないか心配だ。

 道は7日に集中対策期間を終えたばかりである。状態が悪化すれば、再び飲食店に時短要請するなどの事態になりかねない。

 このため変異株の疑い例を簡易的に調べるスクリーニング検査などを拡充し、大学や民間検査機関に実施を働きかけていく方針だ。

 だが、道内への変異株流入が予想されていたことを考えれば、道の対応は十分とは言えまい。検証が求められる。

 今後、進学や転勤などで人の移動が増える時期を迎える。変異株を含めたコロナの感染拡大を防ぐには、実態を早期に把握することが欠かせない。スクリーニングなどの検査体制の強化が必要だ。

 医療提供体制の拡充も同時に急がなければならない。

 厚生労働省によると、変異株は昨年12月に国内で初めて確認された。3月9日時点の感染者は空港検疫の74人、21都府県の271人の計345人。10日発表の道内分を含めれば計358人となる。

 英国型が大半で、南アフリカ型とブラジル型は一部のワクチン効果が弱まるとの指摘もある。道内の感染者はすべて英国型だった。

 国は自治体に対し、新規感染者の5~10%を目安に変異株のスクリーニング検査を求めている。検査で疑いがあれば、検体を国立感染症研究所に送り、ゲノム(全遺伝情報)解析で確定する。

 一部の人を抽出して検査するため取りこぼしもある。専門家は「実際の感染状況を把握するには検査数がやや少ない」と話す。国は検査のあり方を見直すことも検討すべきではないか。

 こうした中、神戸市は自前でもゲノム解析を行い、確定までの時間を大幅に短縮し、抽出する検体も6割に増やした。昨年から民間も含めた医療機関と連携し、検体を広く集める体制をつくった。

 自治体が独自に変異株の検査体制を構築した例と言える。地域事情も踏まえ、いかに体制を整えるか。自治体の力量が問われる。

 変異株の感染者は入院治療が原則で、従来型の感染者とは分けて治療することが求められる。そのため病床の逼迫(ひっぱく)が懸念される。

 道は国や市町村、医療機関との調整役として、道民が安心して医療を受けられる体制を早急に整えるべきだ。





変異ウイルス 感染拡大へ備え十分に(2021年1月18日配信『北海道新聞』-「社説」)

 英国で拡大し、強い感染力を持つとされる新型コロナウイルスの変異種が少なくとも50カ国・地域に広がっている。南アフリカやブラジル、米国などでも変異種が発見された。

 日本国内でも相次いで見つかっている。空港検疫など水際対策の強化と徹底が欠かせない。

 道内ではまだ報告されていないが、今後確認される可能性は否定できない。感染の拡大を想定して、医療体制などの備えを早急に整えるべきだ。

 ウイルスは感染して増殖を繰り返す中で遺伝情報の一部がコピーミスをして変異が起きる。その過程で感染力が低いウイルスは淘汰(とうた)され、より感染力が高い変異種が広がっているとみられている。

 英国型の感染力は最大1・7倍に強まったとされる。ただ、重症化のしやすさやワクチンの効果については不明な点も多い。

 政府は昨年末、変異種の拡大を受けて外国人の新規入国を原則停止する措置を講じたが、中国、韓国、ベトナムなど11カ国・地域からのビジネス関係者などの入国は認めていた。

 しかし、それでは水際対策が不十分だという世論に押され、ビジネス関係者の入国停止にようやく踏み切った。

 昨春の国内での感染拡大は主に欧州からの流入を水際で防げずに起きた。その反省に立てば今回の全面的な措置は当然だが、国の「後手、後手」の対応が目立つ。

 変異種の流入はウイルスの遺伝解析で検知する。流入の実態を把握するには、解析数を増やすことが重要だ。政府は大学や研究機関と緊密に連携し、拡充に対応する必要があるだろう。

 入国時に陰性でも、その後に感染が分かる場合がある。昨年12月に英国から入国した男性は、2週間の健康観察期間を守らずに会食して、相手の2人から英国の変異ウイルスが検出された。

 空港検疫をすり抜けるケースもあり、専門家は「国内にはある程度入っているとの前提で対策を進める必要がある」と強調する。

 水際対策の実効性について十分な検証をすべきである。そのうえで必要な対策を整えるべきだ。

 感染拡大の抑止には市中感染をいち早く発見することも肝要だ。

 広島県は広島市で最大80万人の住民と就業者を対象に無料のPCR検査の実施を検討している。

 感染のまん延を防ぐには、検査体制を拡充し、徹底することが求められる。





新型コロナ変異種 危機乗り切る覚悟示せ(2020年12月29日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。全国の1日当たりの新規感染者数は先週、過去最多を連日更新し4千人台に迫った。例年は帰省や初詣で人出が増す年末年始だが、ここが我慢のしどころ。感染拡大を食い止める過ごし方を心したい。

 英国で感染が拡大中の新型コロナ変異種が日本でも確認された。従来のウイルスよりも感染力が強いとされる。ただでさえ国内の医療体制は逼迫(ひっぱく)の度合いを深めている。変異種が追い打ちをかける事態だけは何としても阻止しなくてはならない。

 国内で初めて変異種の感染が確認されたのは英国から到着した5人。さらに英国に渡航歴のある男性と渡航歴のない家族の2人が感染確認され、この家族が初の国内感染者とみられる。国内で既に変異種が広がっている可能性も否定できない。

 国は28日から来年1月末まで全ての国・地域からの外国人の新規入国を一時停止した。27日現在、21カ国・地域で変異種の感染が確認されている。入国停止は変異種の国内侵入を防ぐため必要な措置だ。ただこれで水際対策が万全とは言い難い。

 入国の一時停止には例外がある。中国や韓国など11の国・地域との間で合意している2国間のビジネス関係者らの往来は引き続き認められる。経済への影響を最小限にとどめるためという。世界的に変異種が拡散中だ。各国・地域の感染状況に、なお細心の注意が求められる。

 変異種が従来以上に重症化や死亡リスクが高いという報告はない。感染力が70%強いともいわれるが、詳しいことは分かっていないという。

 マスク着用や手洗い、人混みを避けるなどの感染対策が求められる点は従来と同じだ。むやみに恐れることなく基本的な対策を徹底するしかない。

 菅義偉首相は昨日、新規入国の一時停止について「国民の命と暮らしを守り、先手先手で対応するため」と官邸で語った。しかし一時停止の発表は変異種の初の国内感染が確認された26日。英国以外の国で既に変異種の感染が確認されていた23日に、英国からの外国人の新規入国停止のみを決めている。野党から対応の遅れを批判する声が上がったのは当然のことだ。

 政府の観光支援事業「Go To トラベル」が昨日、全国的に一時停止となった。政府の後手後手対応の象徴だ。経済対策を優先した政府の姿勢がコロナ対策への国民の油断を招いた可能性もある。対策徹底の呼び掛けを繰り返すだけで抑止するのは難しい。

 政府は来年の通常国会で新型コロナ特別措置法改正案の早期提出を目指す考えという。専門家の議論を慎重に見極めることは大切だがスピードも必要だ。感染が拡大するいまこそ議論を深める時ではないか。直面する危機を国がどう乗り切ろうとしているのか、その覚悟と行動を示すことが急がれる。



コロナ変異種 機敏な検知で拡大を抑えよ(2020年12月29日配信『読売新聞』-「社説」)

 通常のウイルスよりも感染力が強いとされるため、厳重な警戒が必要である。空港での水際対策を強化し、国内での蔓延まんえんを防がねばならない。

 新型コロナウイルスの変異種が国内の感染者から相次いで見つかった。主に英国からの帰国者とその家族で、空港検疫や宿泊施設での待機中などに判明した。

 変異種は最初に英国で見つかった。増殖に伴って遺伝情報が変化し、感染力が最大1・7倍に強まったとされる。今のところ重症化しやすいとの報告はないが、国内で広がると感染者が急増し、医療体制をさらに圧迫しかねない。

 感染者の中には、航空機のパイロットも含まれていた。運航に支障が出るとして空港検疫の対象外になっていたため、そのまま帰宅し、発症したという。

 今回の事態を受け、国土交通省は航空会社に対し、国際線の乗員への定期的な検査を要請した。各社は徹底してもらいたい。

 政府は来年1月末まで、全世界からの外国人の新規入国を一時停止した。日本人や日本在住の外国人が海外に短期出張した場合に免除されていた帰国後14日間の待機も再開するという。緊急の対策として妥当な措置と言えよう。

 ただ、中国や韓国などとのビジネス関係者の往来は、引き続き認められる。これらの国についても今後、感染状況を見極め、機敏に対応することが重要だ。

 英国で変異種が見つかったのは、ウイルスの遺伝情報であるゲノムの解析を大規模に行っているからだ。日本でも一定数の感染者に実施しているが、英国に比べると圧倒的に件数は少ない。

 変異種の広がりをいち早く検知することが大事だ。国は大学や研究機関と緊密に連携し、解析数を増やすことも検討すべきだ。

 新規感染者数は首都圏を中心に増加を続けている。政府は、観光支援策「Go To トラベル」を1月11日まで全国一斉に停止した。来年の通常国会には、新型インフルエンザ対策特別措置法の改正案を提出する方針だ。

 最近は国民の「コロナ対策疲れ」も深刻化している。政府や自治体が「外出を控えてほしい」と呼びかけても、思うように人出が減らないという状況がある。

 病床が逼迫ひっぱくする医療現場では、新規感染者の受け入れが難しくなっている。変異種への対策も、3密の回避やマスク着用など基本は変わらない。難局を乗り越えるには、一人ひとりが「静かな年末年始」を過ごすことが大切だ。



コロナの変異種 年末年始守り固めたい(2020年12月29日配信『東京新聞』-「社説」)

 海外で広がる新型コロナウイルス変異種の感染者が国内でも確認された。感染拡大が止まらない中で、感染力が強いとみられる変異種の国内流行は抑えねばならない。年末年始の守りを固めたい。

 変異種に感染した最初の判明例は英国から到着した人たちで空港の検疫で見つかった。だが、その後に国内で人から人に感染していた例も明らかになった。

 既に英国以外でも変異種は見つかっている。国内でも感染が広がりつつあるとの前提に立たねばならない。

 ウイルスの遺伝子変異は感染を繰り返す中で起こる。変異種は従来種より感染力が強いとされる。子どもへの感染力も大人同様にあり若年層への警戒も必要だ。重症化のしやすさやワクチンの効果については不明な点が多い。

 日本は「第3波」の流行の渦中にある。「勝負の3週間」でも感染拡大は抑えられなかった。年末年始は医療機関の態勢も手薄になる。この状況で変異種の拡大を許せば一気に医療態勢が崩壊しかねない。油断は禁物だ。

 守りの要はまず水際対策の強化だ。政府は英国などから到着する人には複数回の検査や一定期間の待機を求めるなど対策を強化していたが、変異種の確認でさらに強め、全世界からの外国人の入国を来年1月末まで一時停止した。

 春先の国内での感染拡大は主に欧州からの流入を水際で防げず起きた。その反省に立てば今回の措置は当然だろう。

 ただ、11の国・地域とのビジネス関係者の往来は引き続き認めている。必要ならばさらなる往来規制も考えるべきだ。

 変異種はウイルスの遺伝子解析で監視している。解析件数を増やす態勢の拡充も必要だろう。

 逼迫(ひっぱく)している医療態勢も守らねばならない。政府は、新型コロナの重症者用の病床確保に1床当たり1500万円の補助を決めた。現場にはすぐにでも必要な支援だ。迅速に給付してほしい。

 不足する看護師など人材確保も待ったなしだ。自治体同士や医療機関間の連携を進めたい。

 政府の対策分科会は、国内での感染拡大の要因として会食を介しての感染を「急所」として重点的な対応を求めている。

 不要不急の外出や会食を控えるなど各個人の対策も有効だ。早い段階で店舗営業や外出の自粛などを求めた北海道では感染拡大を抑えつつある。一人一人が危機感を共有して対策に取り組みたい。



コロナ変異種/新たな局面と認識せねば(2020年12月29日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの変異種による感染者が、国内で相次いで確認され始めた。

 ウイルスの変異自体は、決して珍しいことではない。しかし英国で発見された今回の変異種は、感染力が最大で70%も増しているとされる点が問題だ。英国では感染が急拡大し、ロンドンなどは事実上のロックダウン(都市封鎖)に入った。

 日本では秋以降の「第3波」に歯止めがかからず、1日当たりの死者、感染者とも過去最多レベルが続く。ここで変異種がまん延すれば、限界状態の医療現場にさらなる負担がかかり、各地で医療崩壊の連鎖が起きかねない。


 世界の感染拡大のスピードも一段と加速しており、パンデミック(世界的大流行)は新たな局面を迎えようとしている。そうした危機感を持ち、社会全体であらゆる手を尽くして感染を抑えこむ必要がある。

 政府はきのう、全ての国・地域からの外国人の新規入国を一時停止した。当然の措置といえるが、一方で中国や韓国など11カ国・地域とのビジネス関係者らの往来を制限していない点には、疑問を抱く。

 経済へのダメージや来年夏の五輪も意識して、政府は徐々に入国制限を緩和してきた。だがここは思い切った制限が必要ではないか。感染対策と経済対策の二兎(と)を追えば、一兎も得ない結果になりかねない。

 変異種の感染者の1人は、空港検疫の対象から除外されている国際線パイロットだった。いくら水際作戦を強化しても、穴があればウイルスは必ず侵入する。入国制限の実施が遅れ第1波を招いた経緯を、政府は思い起こすべきだ。

 英国では9月には変異種が発見されており、ロンドンの陽性者の大半を占めるという。他の国々でも確認され、すでに世界全体に拡散しているとみるのが自然だろう。

 南アフリカやナイジェリアでは別の変異種が見つかっている。デンマークでは11月、家畜のミンクから人に感染した変異種も確認され、大規模なミンクの殺処分が行われた。

 懸念されるのは重症化のリスクやワクチンの有効性だが、現時点では明確な知見は得られていない。世界保健機関(WHO)が主導し、国際社会全体でデータや臨床の結果を共有し警戒を強める必要がある。

 個人の感染対策について専門家は手洗いや「3密」回避などの徹底を呼び掛けている。身を守り、感染を広げない一層の注意が求められる。

 きょうから大半の事業所は正月休みに入る。過度に恐れる必要はないが、感染リスクが高まっている点は、日常生活のあらゆる場面で意識しておきたい。





コロナ変異種 水際対策に全力を挙げよ(2020年12月27日配信『産経新聞』-「主張」)

 これまでの新型コロナウイルスよりも感染力が最大1・7倍の変異種が英国を席巻している。同国の最近の急激な患者増と変異種の確認時期には相関があるという。

 日本でもこの変異種の感染者が確認された。今月中旬から下旬にかけて英国から帰国した人などである。

 変異種のこれ以上の侵入と拡大を防がねばならない。政府は26日、全ての国・地域からの新規入国について28日から来年1月末までの間、一時停止すると発表したが妥当である。

 これに先だって日本は英国への短期出張者に認めてきた14日間の待機免除措置を24日に停止した。帰国する邦人には出国前72時間以内の検査証明を求め、入国時と入国後3日目に再検査する。

 当然の対応だ。政府は海外との往来緩和を進めてきたが、感染力の強い変異種の登場で事情は変わった。英国以外の国を経由する侵入もあり得る。出入国管理などを見直す必要がある。

 今のところ、従来の新型コロナウイルスよりも重症化したり、死亡率が上がったりするとの報告はない。だが、感染力の高いウイルスにより患者が増えれば重症者も死亡者も増える。国内で広がればすでに苦境に立つ日本の医療提供体制が持ちこたえられない。

 変異の監視はゲノム解析で行う。日本は空港検疫で見つかった陽性事例についてはゲノム解析を行っている。国内の陽性事例では1割程度で実施している。監視体制を一層強化してもらいたい。

 デンマーク、オランダ、イタリア、ベルギー、シンガポール、オーストラリアなどでも変異種が見つかった。英国よりもゲノム解析の割合の低い欧州諸国などですでに流行が始まっている可能性も捨てきれない。

 南アフリカ由来の別の変異種も見つかった。菅義偉首相は田村憲久厚生労働相に水際対策をしっかりとるよう指示していた。監視体制強化により変異種の侵入を見つけ、徹底したクラスター対策を講じる必要もある。

 政府は入国管理の不徹底で、今年3月中旬以降に欧米からの流入を許し、感染を広げてしまった苦い経験を持つ。その二の舞いは絶対に避けてほしい。ウイルスの変異はいつでも起こり得る。移動制限や日頃の感染対策の徹底が重要なことは言うまでもない。




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