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(論)貧困(2020年12月28日・2021年1月15・17・21・26日・3月14・17・18・31日・4月7・18・19・28日・5月4日)

生理の貧困対策 女性の尊厳を守る支援だ(2021年5月4日配信『新潟日報』-「社説」)

 女性の尊厳に深く関わる問題と言っていいだろう。生理は女性の問題だとして見過ごすのではなく、社会的な課題と捉えて公に支援する体制をしっかり整えたい。

 新型コロナウイルス禍による経済的な困窮から、ナプキンなどの生理用品を買えない「生理の貧困」を訴える声が女性の間で広がっている。

 民間団体が高校生以上の学生を対象にオンラインで実施したアンケートでは、ウイルス禍での品薄を含め、25%が生理用品の購入に苦労したと回答した。

 過去1年間に金銭的な理由で入手に苦労した人は20%で、節約のために交換頻度を減らしたという人は37%に上った。

 生理痛や生理不順に対処するための鎮痛剤や低用量ピルを買う費用負担が重いとの意見も目立った。

 金銭的な事情から不快な思いや体調不良を我慢している女性が多いことに驚く。体だけでなく心の健康を害することにもつながりかねない。

 深刻なのは、こうした実態を背景に、生理期間中に学校を休むなど、生活に支障があったと答えた人が半数近くに上っていることだ。

 女性に生理があるのは自然なことなのに、ケアが不十分なために教育を受ける機会などが損なわれていたことになる。

 育児放棄など親に頼れない環境で、生理用品が欲しいと親に言えない子もいるという。ウイルス禍によってこれらの問題が顕在化してきた。いずれも、女性の尊厳や権利を守る上であってはならない。

 心強いのは解決に向けた動きが各地で始まってきたことだ。

 新潟市は市議会女性議員の会の要望を受け、希望する女性に防災備蓄用の生理用品の配布を実施。兵庫県明石市は小中学校などでの無料配布を始めた。

 政府は感染禍の中で孤独や困窮状態にある女性を支援するため、内閣府の「地域女性活躍推進交付金」を拡充し、使途に生理用品の無料配布を加えることを決めた。

 自治体が備蓄する生理用品や衛生用品を民間団体に委託して配ったり、公共施設に無料で置いたりできるようにする。

 孤独問題を担う坂本哲志1億総活躍担当相は記者会見で、生理の貧困について「従来の男社会の中では政治や行政が十分に理解できず、支援が行き届かなかった問題だ」と述べた。

 日本は生理をタブー視する風潮が強く、実態があまり知られてこなかったのは確かだ。

 妊娠、出産と同様に、女性が社会で活躍する上で切り離すことができない課題だと男性の側が認識する必要がある。

 女性が抱える貧困問題は生理に関するものだけではない。

 ウイルス禍で女性が多い非正規雇用を中心に解雇や雇い止めが広がり、経済的に困窮するシングルマザーが目立つ。望まない妊娠も増加している。

 困窮の背景にある状況を丁寧にくみ取り、必要な生活支援策につなげたい。





コロナ下の格差拡大 支え合う社会描き直そう(2021年5月2日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス禍は日本の深刻な経済格差をあらわにした。弱い立場の人ほど打撃は大きく、3度目の緊急事態宣言で格差がさらに広がることが心配される。

 感染「第4波」が押し寄せた4月上旬、生活困窮者を支援するNPOが東京・新宿の都庁前で開いた相談会に300人近くが長い列を作った。相談会を始めた1年前の倍以上だ。失業が長引き、蓄えが尽きかけた人が目立った。

 並んでいた50代男性は下請けの建設会社で非正規雇用で働いていた。コロナで工事が止まり、昨年夏に会社が倒産して職を失った。

 30代まで大企業のサラリーマンだった。交通事故で体を壊し退職したが、「稼ぐのは自分の責任」との思いは変わらず、コロナ下でも生活保護は受けなかった。

効率優先のひずみ露呈 だが仕事は見つからなかった。1人暮らしで職がないと、社会とのつながりは薄れる一方だった。預金を取り崩す生活は限界を迎え初めて相談会を訪れた。「コロナ禍になって、自分だけで頑張る難しさがよく分かった」と語った。

 「雇用の調整弁」とされる非正規労働者は解雇などで前年比100万人近くも減っている。失業で社会から孤立すると、不安を1人で抱え込みやすくなる。昨年の自殺者数は11年ぶりに増えた。

 非正規労働者が働く人全体の約4割も占めるようになったのは、安倍前政権下だった。国内総生産(GDP)を戦後最大の600兆円へと大幅に増やす目標を打ち出し、成長と効率優先のアベノミクスを推進した。そのひずみがコロナ禍で露呈した。

 だが菅義偉首相も、目指す社会像にまず「自助」を掲げ、アベノミクスと同じ新自由主義の政策を進めようとしている。

 看板政策とアピールするデジタル化も経済の効率化が主な狙いだ。首相は「経済を再び成長軌道に戻す」と繰り返すが、コロナ前の姿に戻すだけなら、国民の不安をなくす処方箋とは言えない。

 「近代経済学の父」と呼ばれるアダム・スミスは企業の自由な活動が富を生み出すと唱え、新自由主義のルーツとも言われている。だが一方で、人間は相手に共感できる存在であり、共感を通じたつながりこそ、経済活動の基盤になると主張していた。

 人間のつながりは国民の幸福感を左右する。国連による世界幸福度ランキングは、コロナの影響が注目された今年もフィンランドが4年連続で首位だった。充実した社会保障など助け合う仕組みがしっかりしているからだ。

 日本は56位と低迷している。いくらGDPを増やしても、それだけで国民の幸福度は高まらない。

 コロナ禍は、日本社会のもう一つの課題にも大きな影響を及ぼした。人口減少の加速である。

 政府はコロナ前、生まれる子どもの数が少ないままなら、2053年に人口が1億人を割ると予測していた。

 コロナ禍による家計の悪化などで昨年生まれた子どもの数は過去最低となった。1億人割れは49年に早まる可能性があるとの民間試算も出ている。

欠かせない富の再分配

 アベノミクスは「1億人維持」との目標を掲げ、菅政権も引き継いだ。国の規模が大きいほど経済成長も高まるというのは右肩上がりの時代の発想だ。少子化対策は重要だが、現実離れしたスローガンに固執して高成長を追い求めると、国民にしわ寄せが及ぶ。

 持続可能な社会のあり方を研究してきた広井良典京都大教授は「日本は人口が減って低成長になる成熟社会を迎えている。国民が富を分かち合って支え合う社会を目指す必要がある」と提言する。

 コロナ禍で分かったのは、人間のつながりの大切さだ。国民が支え合う仕組みに作り直すことが、人口減少時代にふさわしい社会の構築につながるのではないか。

 成長優先の政策を転換し、国の将来像を描き直す必要がある。国民が安心して暮らせるよう、格差の是正に本格的に取り組まなければならない。

 所得の再分配を進めることが欠かせない。株高で潤った富裕層や高収益の大企業への課税を強化し、非正規で働く人などへの支援を拡充することが求められる。最低賃金の引き上げも急務だ。

 経済的に苦しい人々の暮らしが良くなると消費の裾野も広がる。日本経済全体の足腰が強まり、健全な発展の土台となるはずだ。





ノマドランド(2021年4月28日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 米映画界最大の祭典アカデミー賞で「ノマドランド」が作品賞など3冠に輝いた。中国出身の女性監督による話題作は世界各地で高く評価されており、映画史に名を刻んだ

▲企業城下町が閉鎖され、夫も家も失った60代の女性が主人公。現代のノマド(遊牧民)として、キャンピングカーをわが家に米国内の短期職場を渡り歩く。実際のノマドが多数出演し、作品にリアリティーを与えている

▲車上生活をするノマドには高齢者が多く、肉体労働は過酷で経済的にも苦しい。一方、雄大な自然の中で助け合い、モノや常識に縛られない精神的な自由を誇りとしている。その素朴で力強い生きざまが心にしみた

▲ノマドは独立精神が根付く車社会米国の産物とも言える。ただ、社会的集団となった背景も見逃せない。ラストベルト(さびた工業地帯)に象徴される製造業の衰退、リーマン・ショックなどで家を失う人が増えている事実。こうした経済格差の犠牲者でもある

▲日本も人ごとではない。貧困や家庭の事情などで、キャンピングカーではなく、窮屈な車内での生活を余儀なくされている人が各地にいる。新型コロナウイルス禍で雇用情勢が悪化しており、車上生活者は増える恐れもある

▲社会をむしばむ深刻な格差をどう是正するのか。ノマドの問題は、私たちの問題でもある。決して甘い内容ではないこの映画が広く支持されたことに、一つの希望が見える気もする。





コロナ下の学生 困窮への支援多角的に(2021年4月19日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナ禍の長期化に伴って大学生らの経済的な困窮が深まっている。

 保護者の失業やアルバイト先の減少などで学生の収入は著しく落ち込んだ。学費が工面できず中退したり、在籍できても食費にすら事欠いたりする人がいる。

 国は昨年度、低所得世帯向けの修学支援制度を新設した。それでも支援の網から漏れた学生は多かった。対象の拡大も必要だろう。

 大学や市民団体が食料や日用品を提供するなど、社会的な支援の輪は広がりつつある。しかし、まだ十分とは言えない。

 学生がこの難局をしのぎ、学業を安心して続けられるよう、多角的に手を差し伸べたい。

 学生を取り巻く状況は厳しい。

 道内で実家を離れて暮らす学生の昨年のバイト代は、前年比2割減の月平均2万6千円強だった。

 首都圏の私立大に昨年度入学した下宿生への仕送りも月8万2千円強と、ピーク時の1994年から3割強も減った。生活費は1日当たり約600円にすぎない。

 文部科学省によると、昨年4~12月に全国の大学や短大を中退した学生は2万9千人弱だった。理由は経済的困窮が19%と最多だ。

 国は昨年、困窮する学生に最大20万円の現金を給付する緊急支援を講じた。だが急場をしのげても効果は一時的なものだった。

 コロナ禍の収束がいまだに見通せない以上、状況に応じた再度の支給や、中間層への拡大も選択肢に入れる必要があろう。返済する必要がない給付型奨学金も拡充すべきではないか。

 各大学は独自の給付金を設けたり、授業料の延納を認めたりと、さまざまな支援を講じてきた。

 学内で食料品を配った室蘭工業大などの例や、学生に学内業務を委ねバイト代を支給している東北大の実践は参考になろう。

 気がかりなのはコロナ感染の「第4波」である。

 感染拡大が続く関西では、授業を対面からオンライン主体に戻す大学が出始めている。課外活動の制限も伴う。同様の動きは全国の大学に広がる可能性がある。

 学生がキャンパスに通えず孤立を深め、学業への意欲を失う例は多い。授業料返還を求める声が上がるのも無理はない。各大学は精神的ケアにも力を入れてほしい。

 学生が学業の断念に追い込まれれば、本来発揮したはずの力がそがれ社会的損失につながる。そうした「コロナ世代」を生まぬよう対策を尽くさなければならない。





コロナ困窮支援は的を絞って効率的に(2021年4月18日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 政府がまん延防止等重点措置を適用する県の拡大を決めた。経済活動が動意づく見通しはいまだに立ちにくい。雇用や収入が悪化した人の状況が回復するのにも時間がかかる公算が大だ。

 真に助けを必要とする人を的確かつ効果的に支援する必要性が一段と高まった。たとえば、所得税などの税額控除と給付金を組み合わせる「給付つき税額控除」を含めて政府・与党は効率的な支援策に踏み出してほしい。

 2020年度に安倍・菅両政権は累次にわたる補正予算を編成してコロナ困窮者に現金給付した。だが対象者の選定や給付のスピードには合格点をつけられない。

 典型は国内居住者を対象とした10万円の特別定額給付金だ。閣議決定は昨年4月だが、総務省の制度設計や市区町村の事務が滞り、給付を終えるのに半年かかった。

 本来、コロナ困窮者に絞って給付すべきだったが、対象選定などにかける手間を惜しんで一律給付にした。にもかかわらず事務作業に1458億円を費やした。一連の過程を総括する必要があろう。

 マイナンバーが宝の持ち腐れになっているのが最大の問題だ。同時に、低所得者への給付金が制度として十分に整っていない実情が浮き彫りになったままである。

 米国や欧州の一部の国はロックダウン(都市封鎖)に合わせて困窮者に素早く現金給付した。もともと根づいていた給付つき税額控除などが危機時に威力をみせた。低所得者への所得税減税などを基本に、その恩恵が及ばない非課税者には現金給付する手法である。

 日本はかつて民主党政権が俎上(そじょう)に載せたが、消費税増税時の負担軽減策に位置づけるなど議論が矮小(わいしょう)化された。結局、普遍的な格差緩和策としての導入はならなかった。

 首相は自助・共助・公助の機能分担を旨とする。自助を原則としつつ、コロナ禍など不可抗力で困窮した人には給付つき税額控除のような仕組みを発揮できるようするのが理にかなっていよう。

 これによって最後の安全網である公助を、真に必要な人に適用しやすくなる。資産調査など受給に厳格な要件を課す生活保護に陥る前に対象者を助けられるからだ。

 政府・与党はマイナンバーを生かした行政デジタル化を一刻も早く実現させるとともに、共助の機能を拡充する制度改革にぜひ取り組んでほしい。





ひとに優しい平等な世(2021年4月10日配信『しんぶん赤旗』-「潮流」)

 「なによりも第一に私は人間です!」。連続テレビ小説「おちょやん」の主人公が叫んでいました。戦争がもたらした理不尽さにあらがうように

▼「これからは(社会というものを)一生懸命わかろうと思います。社会と私とどちらが正しいのか、決めなくてはなりませんから―」。暗唱したセリフは役者をめざす原点となったイプセン「人形の家」の一節。夫から良き妻、良き母を求められた女性がひとりの人間としてめざめていく戯曲です

▼敗戦の焼け野原のなか、同じように声を上げる姿がありました。初めて認められた女性の参政権。1946年4月10日、戦後初の衆院選で約1380万人の女性が最初の1票を投じ、39人の女性国会議員が誕生。それは政治に新風を吹き込みました

▼それから75年。いま、コロナ禍のもとで“生理の貧困”が大きな問題になっています。学生の5人に1人が経済的な理由で生理用品に苦労している実態。体への負担にくわえ、精神的な苦痛も受けています

▼ことは女性の問題ではなく、人間の尊厳にかかわる人権の問題。社会全体が向きあうべきなのに、これまで男性の視点でつくられた法や政治のなかで生きていくための必需品が見過ごされてきました

▼世界ではおかしいと立ち上がった女性たちが行政を動かすことに。日本でも若い世代の訴えが自治体の支援をひろげ始めています。先駆者は呼びかけます。人間としての貧困をただすため、声を上げつづけよう。ひとに優しい平等な世をつくるために。





困窮者支援を官民で重層的に(2021年4月7日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が長期化している。政府は3月に困窮している人が生活を立て直せるよう新たな支援策を決めた。スピード感をもった対応が必要であり、官民をあげて効果のある重層的な体制を築きたい。

 新型コロナウイルスの感染が再拡大する中、暮らしを守るきめ細かな対策が求められる支援策の柱の一つである低所得世帯の子どもへの給付金(5万円)は、ひとり親だけでなくふたり親も対象とする。コロナ禍で収入が減った世帯への貸し出しは、申請期限を6月末まで延ばし、返済免除の要件を明示した。全国民一律ではなく、困窮者に焦点を絞った取り組みは評価できる。

 大事なのは金銭面だけの支援に終わらせないことだ。困窮の背後に、仕事や家族の問題など複数の課題があることも多い。自治体が総合的に相談にのる仕組みはあるが、体制やネットワークを強化してより早い支援につなげたい。NPOへの補助の拡充を通じ、官民の連携強化も重要だ。

 就労支援の役割は大きい。雇用保険の未加入者など失業手当をもらえない人が、生活費を受給しながら職業訓練を受けられる求職者支援制度がある。政府はこの収入要件を月収8万円以下から12万円以下に緩和した。制度の利用を促す妥当な措置といえる。
 
 同時に、職業訓練の内容も不断の見直しが求められる。国・自治体と企業の労使が連携して人材が必要になる分野を見極め、訓練内容を随時刷新してはどうか。

 国の組織であるハローワークの改革も欠かせない。人材サービス会社などに比べて求人の開拓が手薄だ。民間の良い点を取り入れ、求職者一人ひとりの要望にきめ細かく対応する体制を整えたい。

 北海道は自治体として独自のサイトを開設し、コロナ禍で休業を強いられた人と短期の働き手がほしい企業の橋渡しをしている。こうした取り組みが他の自治体に広がることを期待したい。

 きめ細かい支援は生活保護の前に家計を立て直したり、保護から脱却したりするのを後押しする。多面的な取り組みが必要だ。





「接待防止庁」の方が先だろう(2021年4月5日配信『日刊スポーツ』)ー「政界地獄耳」)

★首相・菅義偉が衆院選対策として打ち出した「子ども庁」設置が国民の期待というよりは別の方向に進み始めている。そもそもデジタル庁の次は子ども庁と縦割りの弊害打破が新しい役所を作ることならば苦労しない。ネットでは「その前に自分の長男の人格はどこにとか、子ども内閣の子ども閣僚の問題点を洗い出せとか、公務員接待防止庁、自民党夜の会食禁止庁を先に作れ」と揶揄(やゆ)される。子ども庁の考え方は決して悪いものではない。立憲民主党の議員が言う。「民主党政権時に子ども家庭庁の設置が議論されたが、自民党からは批判の嵐だった」。

★2日、自民党参院幹事長・世耕弘成は「子供の貧困や児童虐待などの問題が起こっている。その問題は複数の省庁にまたがる案件がほとんどで、組織を作って子供政策を一元化し、大切な子供たちを健全に育成し、子供を産みやすい、育てやすい環境を整えることは極めて重要だ」と言い出した。まさに省庁をまたがる政策など、霞が関には掃いて捨てるほどある。何をいまさらという思いが政界には蔓延(まんえん)している。以前の発言があだとなる場合に「ブーメラン」と自らの発言が首を絞めるといわれるが、最近の自民党はそれを恥ずかしいという呵責(かしゃく)さえ持ち合わせていないようだ。

★自民党は今週にも党総裁直轄の子ども庁創設本部を立ち上げるという。本部長に党幹事長・二階俊博が就任するという。この選挙対策的戦略を逆手に取ったのだろう。立憲民主党代表・枝野幸男は「今の国会で議論すれば国会中に設立することも可能だ。本気ならば与野党協議をして欲しい」と選挙の目玉に据えようとする自民党を強くけん制した。ただ注意すべきは菅内閣の目玉政策、電話料金値下げやテレビ局の許認可など省益が変わる時や法律が変わる時に、業界と官僚、政治家の接待が頻繁になることもお忘れなく。やはり接待防止庁や会食禁止庁の方が先に必要か。





困窮者対策 支援強化で生活不安和らげよ(2021年3月31日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行が長引き、子育て世帯の家計に深刻な影響が出ている。生活不安を和らげる施策が必要だ。

 政府は、2020年度予算の予備費から約2200億円を活用し、子供がいる低所得世帯に対して緊急支援策を講じることを決めた。ひとり親の家庭だけでなく、ふたり親世帯も新たに対象に加えるという。

 非正規労働などの不安定な仕事で家計を支える世帯では、コロナ感染拡大の影響で離職を余儀なくされたり、働く時間が短くなったりし、収入が減る例が目立つ。

 春は、進級などで子育てにかかる出費がかさむ時期でもある。幅広く支援を講じてほしい。

 政府は20年度、困窮するひとり親の子育て世帯に対して、2回にわたって、第1子は5万円、第2子以降は3万円の特別給付金を支給した。両親がいる世帯は低所得でも対象にはならず、支援が手薄だと指摘されていた。

 今回は、第2子以降の給付額も5万円に引き上げるという。

 病気などで共働きが難しい家庭や、2人で稼いでいても家計が苦しいという世帯は多かろう。対象の拡大は適切である。

 支給を想定しているのは、児童扶養手当の受給者などひとり親の104万世帯と、住民税非課税のふたり親の130万世帯だ。

 すでに支給実績があるひとり親世帯と異なり、ふたり親世帯に対する支援は、自治体の手続きなどに時間がかかる可能性がある。政府は自治体と連携し、円滑な給付に努めなければならない。

 コロナの収束は見通せず、雇用情勢は予断を許さない。生活が困窮しないように、重層的に支えていくことが大切である。

 政府は、コロナ対策で拡充した生活費貸付制度について、申請期限を3月末から6月末に延長することを決めた。休業者らを対象に20万円を貸し付ける緊急小口資金と、失業者らに月20万円を貸す総合支援資金である。

 当面の生活を安定させるとともに、技能を向上させ、就職機会を確保することが不可欠だ。

 政府は、デジタル関連の職業訓練を拡充し、受講できる人を現在の2500人から倍増させるという。成長分野への就労をさらに促進すべきである。

 インターネットの通信環境がなく、支援に関する情報を知る手段が限られる人は少なくない。自治体やNPOなどと協力し、利用の仕方をわかりやすく伝えることに知恵を絞ってもらいたい。





「生理の貧困」 切実な声に向き合わねば(2021年3月25日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 コロナ禍は、不安定な非正規雇用の働き手が多い女性をとりわけ苦境に追い込んだ。それに伴って深刻化したのが「生理の貧困」だ。

 困窮して生理用品を買うお金がないという切実な声が広がっている。オンライン署名サイトで「生理用品を軽減税率対象にしてください!」と訴えるキャンペーンには、これまでにおよそ5万人が賛同の署名を寄せた。

 アルバイトの収入が減り、生活が苦しさを増した学生も少なくない。大学生らによる団体「#みんなの生理」の調査からは、若い世代の厳しい状況が浮かぶ。

 過去1年間に、金銭的な理由で生理用品の入手に苦労したことがあると答えた女性は2割に上った。交換する頻度を減らした人は37%。生理用品ではないものを使った人も27%いた。

 毎月の生理用品代を千円として計算すると、10代初めから50歳までの累計で50万円近くになる。署名を呼びかけるサイトは、平均年収が男性の7割ほどの女性にとってただでさえ重荷である上、ひとり親の女性や学生らには耐えがたい負担だと訴えている。

 生理用品は贅沢(ぜいたく)品ではない。生理がある女性にとって欠かせないものだ。生理の貧困は、女性の尊厳を損なう。出費を切りつめようと同じものを使い続けたり、トイレットペーパーなどで代用したりするのは衛生的でなく、健康を害することにもつながる。負担を軽減する手だてが欠かせない。

 英国のスコットランドでは、生理用品を無償で提供する法律が昨年11月に成立し、学校や公共施設で入手できることになった。英政府は今年から生理用品の購入を非課税にしている。カナダやオーストラリアも課税を廃止し、ドイツは税率を大幅に引き下げた。

 国内でも、自治体による支援の動きが出てきている。東京では豊島区が今月、防災用に備蓄していた生理用品を無償で配布し、足立区が続いた。ほかにも、兵庫県明石市が来月から学校や公共施設で配布を始めるという。

 政府もここに来て腰を上げた。困窮する女性の支援策として交付金を拡充し、生理用品の無料配布を使途に加えている。月千円の負担が重くのしかかっている窮状を踏まえれば、それだけにとどまらず、消費税率の軽減や非課税にすることを検討すべきだ。

 生理に関することを女性は口にしにくい面がある。困っていることに丁寧に目を配り、住民の暮らしをどう支えるか。自治体が担う役割が何より重要になる。





困窮者支援 一時的でなく 踏み込んだ対策を(2021年3月18日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政府は、新型コロナウイルス禍で打撃を受けた生活困窮者や非正規労働者らの緊急支援策をまとめた。子育て世帯への現金給付拡充など、既存の政策の見直しが中心となる。

 コロナ禍で経済が悪化し、失業や収入減で家計が苦しい世帯が増えている。3~4月は新学期への準備で出費がかさむ時期でもあり、給付金などは足元の生活の助けにはなるだろう。ただ、コロナ禍はさらなる長期化が避けられず、こうした一時的な支援だけでは限界がある。国民の暮らしの安心に向けて、政府は一段と踏み込んだ対策を打ち出すべきだ。

 困窮する子育て世帯への給付金はこれまで2回、ひとり親に限って給付してきた。今回は両親がそろっている低所得世帯にも拡大し、子ども1人当たり一律5万円を配る。ひとり親世帯支援としては、就労するか職業訓練に取り組む場合、住宅の借り上げ資金を無利子で貸し付ける制度を新設する。

 子育て家庭を支援する団体には「文房具もそろえられない」といった切実な声が寄せられている。現金給付を求める署名は5万人を超えた。野党は低所得の子育て世帯への給付法案を今国会に提出。世論に押され与党も追随したため、給付に慎重だった菅義偉首相も方針を変えざるを得なかったのだろう。

 コロナ禍の影響は、ひとり親に限らず子育て世帯に広く及んでおり、給付の対象拡大はもっともだ。政府は子どもが貧困に陥らないよう丁寧に目配りし、切れ目なく支援しなければならない。親の収入が安定するまで給付を継続するといった措置が求められよう。

 子育て世帯にとどまらず、解雇や雇い止めされた非正規労働者らの生活苦は深刻だ。2020年の非正規労働者数は前年比75万人減で、比較可能な14年以降初めて減少に転じた。今年に入って、再度の緊急事態宣言で経済が冷え込んでいる。年度末の3月には有期雇用の契約更新が集中しており、失業者が急増する恐れがある。

 緊急支援策では、生活再建を図る人に特例で貸し付ける「総合支援資金」について、住民税非課税世帯は返済を免除することを盛り込んだ。職業訓練の受講者の大幅増も目指す。

 こうした当面の生活支援は欠かせない。同時に、非正規労働者らが雇用の調整弁とされ、休業手当もまともに払われない実態を直視し、不安定な雇用制度を抜本的に見直す必要がある。有期契約の要件を限定し、期間の定めがない雇用を原則とする「入り口規制」などの議論を進めるべきだ。

 非正規労働者の中でも、失業や休業に直面しているのは女性が多い。苦境を反映し、女性の自殺者が増加している。コロナ禍で孤独や孤立問題は深刻化しており、生活面に加え精神面の支援が急務だ。しわ寄せを受けている弱者に寄り添う取り組みを広げて命を守りたい。





困窮家庭支援 小出しでは先が見えない(2021年3月17日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉政権が重い腰を上げた。

 コロナ禍で困窮するひとり親世帯や所得の低い子育て世帯に、子ども1人当たり5万円を給付する。

 就労訓練中を条件に、ひとり親世帯に無利子で家賃を貸す制度も創設する。生活資金の貸付制度の拡充などと合わせ、予備費から5千億円を充てる。

 食料品を買えない、光熱水費が払えない―。子育て家庭から悲鳴が上がっている。現金給付は必須であるものの、単発では「ひと安心」とはいくまい。

 政府はこれまでに2回、児童扶養手当を受給するひとり親世帯に第1子は5万円、第2子以降は1人当たり3万円を加算して支給した。今回初めて、両親がそろう住民税非課税世帯も対象に加え、1人につき5万円とした。

 ひとり親世帯の貧困率は5割近くに上る。生活費を払えず、預貯金が底をついたとする割合は両親がいる家庭の方が高い、との民間団体の調査結果もある。

 支援に取り組む団体は対象を広げての再給付を求め、NPO法人「キッズドア」は5万2千筆の署名を集めた。立憲民主党をはじめ野党は給付法案を国会に提出。自民、公明両与党も今月、首相に給付を提言していた。

 今秋までに実施される衆院選も計算に入れたのだろう。追加給付に慎重な考えを示していた首相は姿勢を転じた。

 困窮する家庭では非正規で働く親が多く、収入が激減した状況が続く。雇用が安定するまでの間は毎月給付する、踏み込んだ措置が必要ではないか。

 本年度補正予算、新年度予算に盛った経済対策費を今からでも組み替え、国民の生活の下支えを優先してもらいたい。

 窮迫しているのは、子育て世帯に限らない。シフトが大幅に削られたのに休業手当をもらえない非正規労働者は大勢いる。昨年増えた自殺者には、未婚で非正規の女性も少なくないという。セーフティーネットからこぼれ落ちる層が出ないよう、政治は徹底して目を配らなくてはならない。

 長野県内でも、月収10万円に満たないひとり親世帯が急増している。進学や進級で物入りの時期を迎える。県や市町村は制服代や教科書代、給食費を減免する上乗せの施策を講じてはどうか。

 災害に相当する事態として、地方債(借金)の活用を国に認めさせ、財源を捻出してでも、地域住民の暮らしを守り、コロナ禍からの回復に備えたい。





困窮する親子 支援の拡充が欠かせない(2021年3月14日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 低所得で生活が厳しいひとり親の世帯が、コロナ禍に伴う休業や失業で、県内でも苦境を深めている実態を浮き彫りにする調査結果だ。半数近くが月収10万円に満たないことが県のアンケートで分かった。

 ひとり親世帯への臨時特別給付金の支給を受けた家庭を調べた。コロナの影響が出る前後で、月収10万円未満の世帯は23%から48%に増えている。非正規雇用の世帯に限ると6割に達した。

 多くの親子が満足に食事をとることさえ難しい困窮の中にある。命の危機にもつながりかねない。暮らしを支える確かな手だてを早急に講じなくてはならない。

 回答した世帯主の9割余が女性だ。非正規雇用が多い母子世帯がとりわけ厳しい状況に追い込まれていることが見て取れる。

 年度が替わるこの時期は、子どもの進学などで出費がかさみ、生活がより苦しくなる心配がある。非正規で働く人の多くが契約を更新する時期にもあたり、雇い止めの急増も懸念されている。瀬戸際に追いつめられる世帯はこの先、さらに増える恐れが大きい。

 政府は臨時特別給付金をこれまでに2回支給したが、長引くコロナ禍をしのぐには到底足りない額だ。菅義偉首相は新たな支援策を近く公表する方針を示している。現金給付による支えとともに、困窮の根本にある雇用の問題に踏み込んだ対策が必要になる。

 もう一つ、見落とせないのは、コロナ禍によって困窮に直面しているのはひとり親世帯に限らないことだ。両親がいても、働く場を失ったり、収入が大幅に減ったりして、一気に困窮にひんした家庭が少なくない。

 非正規の働き手は労働者全体の4割近くを占め、両親がともに非正規雇用の世帯も多い。共稼ぎで維持してきた生計が成り立たなくなり、家賃や電気代が払えないといった声も広がっている。

 政府は新たな支援策で、低所得のふたり親世帯にも給付金の支給を検討するという。野党は、子どもの貧困対策として、ふたり親世帯を含めた給付金支給法案を国会に共同で提出している。子育て世帯の実情に目を向けた支援の拡充が欠かせない。

 県や市町村も国任せであってはならない。より住民に近い立場で、確実に届く支援をすべきだ。住民の暮らしを守ることは自治体の責務である。子ども食堂など民間の活動を下支えすることも重要になる。具体的に何ができるかを県会や各議会で議論したい。





コロナと生活困窮者 孤立させぬ支援と情報を(2021年1月26日配信『毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大で解雇や雇い止めに遭う人が見込みを含めて8万人を超えた。東京や大阪など11都府県に緊急事態宣言が発令され、状況はさらに厳しくなることが懸念される。

 全国に設置されている窓口には、離職で困窮した人から家賃費用の給付などについて新規相談が急増している。2020年度の上半期だけで40万件に達し、前年度同期の3倍以上に上る。

 自治体は生活困窮者への支援を強化する必要がある。困窮の状態によっては生活保護制度を活用すべきだ。

 ただ、周囲の偏見から申請をためらう人も少なくない。

 厚生労働省の16年の推計では、生活保護の対象となる低所得世帯のうち、利用世帯は4割程度しかないという。

 田村憲久厚労相は記者会見で「生活保護は国民が受けられる権利だ。迷わず申請をしてほしい」と呼びかけた。

 実際に孤立死も起きている。大阪市内のマンションで昨年12月、60代の母親と40代の娘が餓死した状態で見つかった。所持金はわずかで、生活保護は受給していなかったとみられている。

 生活保護の申請を巡っては、自治体の後ろ向きな姿勢が問題になってきた。厚労省は申請する権利を侵害しないように通知した。支援を必要とする人が取り残されないような対応が欠かせない。

 当事者に情報を迅速に届けることも重要だ。

 千葉市では無料通信アプリ「LINE」を使い、一人親家庭の医療費助成などの支援措置や行政サービスについて個別にメッセージを送る取り組みを月内に始める。

 本人の同意を得て所得情報を活用し、受給できる手当などを積極的に伝えるのが特徴だ。情報を集める余裕がない人の受給漏れを防ぐことにつながる。他の自治体も参考にしてほしい。

 社会的に弱い立場の人ほど、コロナ禍のしわ寄せを受ける。市民団体には非正規で働く人や外国人労働者からの相談が目立つ。

 コロナ下では人が集まりにくく、支援活動が制限されるため、生活困窮者の姿が見えづらくなっている。孤立させない支援と情報の提供が求められている。





【コロナ困窮】生活破綻防ぐ追加支援を(2021年1月21日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大で雇用情勢が悪化し、県内でも「コロナ困窮」が深刻になっている。

 国が昨年始めた無利子の特例貸し付けで、限度額まで借り切った県内の世帯が12月末までに2700件超に上ることが分かった。

 飲食、タクシー・代行、建築など幅広い業種の人々が申請している。コロナ禍が長引いて収入が元に戻らず、全て借り切った後も困窮が続いているケースが少なくない。

 多くの生活破綻が起きる恐れがある。国は困窮者の家計を下支えする追加支援を急がねばならない。

 国の特例貸し付けは、最大20万円を1回借りられる「緊急小口資金」と、2人以上世帯で月最大20万円を3カ月(1回延長して最長半年まで)借りられる「総合支援資金」の2種類がある。

 県内で貸し付けを受けた世帯は12月末時点で約1万4千件(総額約50億円)に上る。

 全国でもリーマン・ショック後をはるかに上回る規模で利用され、全て借り切るケースが増えている。

 早い人は今春から返済が始まる予定だったが、政府は2022年3月末まで猶予することを決めた。

 家賃が払えず、住まいを失いかねない人への住居確保給付金も、最長9カ月としていた支給期間を3カ月延長する。

 こうした実態に即した対応を続けるべきだ。雇用改善が見込めない中、今は急場をしのぐ対策を打ち、収束後の生活の立て直しにつなげる必要がある。

 全国でコロナ関連の解雇や雇い止めは8万人を突破した。政府による緊急事態宣言の再発令で、首都圏などでさらに増えると見込まれる。

 昨春の宣言期間中には、営業短縮を求められた飲食店などで働く非正規労働者が休業手当を得られず困窮するケースが相次いだ。

 シフト制で働く人に対して不支給が目立った。企業が「シフトを減らすことは休業指示ではない」などと主張して拒むことが後を絶たない。

 休業手当は雇用と生活を守る命綱だ。不払いは許されない。

 政府は、企業が従業員に支払った休業手当を国が補塡(ほてん)する雇用調整助成金を使いやすくし、最大で賃金の全額を補助する特例を設けた。

 田村憲久厚生労働相は、同助成金は「シフト制の非正規も対象」と明言した。今後は支払いを促すだけでなく、不払いを続ける企業に対して厳しく対応を迫るべきだ。

 コロナ困窮が進めば、最後のセーフティーネットと言われる生活保護の利用も考える必要がある。

 抵抗感を持つ人も多いだろうが、人間らしい最低限の生活を送ることは、憲法が保障した国民の権利である。利用を検討し、自治体に相談することをためらわないでほしい。

 県内で生活が破綻して路頭に迷う人が続出し、社会不安が高まることを防がねばならない。県や市町村は困窮に苦しむ人の相談窓口を強化し、継続的に支援する態勢を整えるべきだ。



コロナ禍(2021年1月21日配信『佐賀新聞』-「論説」)

生活困窮対応の拡充を

 新型コロナウイルスの感染拡大が止まらない。11都府県で緊急事態宣言が発令され、独自の宣言を出す地域も相次いでいる。佐賀県は今日から、飲食店などに営業時間短縮を要請する。行動自粛呼び掛けや営業時間短縮などの影響で雇用情勢がさらに悪化し、経済的に困る人が増えることも懸念される。生活困窮を防ぎ、支える取り組みの充実が求められる。

 厚生労働省が1月にまとめた新型コロナ関連の雇用に関する調査では、雇用調整の可能性がある事業所は12万カ所を超え、解雇や雇い止め人数は見込みも含めて8万人に達した。半年前と比べると、事業所数は3・4倍、解雇・雇い止めの人数は4倍に増えた。佐賀県の数値は180事業所、688人で、解雇や雇い止めは半年前の2・6倍だ。ただ、この数字は各地の労働局やハローワークからの報告を基に積み上げたもので、実態はさらに厳しいとみられる。

 経済的な困窮など生活に困っている人の相談も増えている。自治体の「自立相談支援機関」には、全国に緊急事態宣言が出された昨年4月から9月にかけて、前年同期の3倍に当たる39万件余りの相談があった。相談では就労や家計、教育への影響などを聞き取り、利用できる公的制度を紹介したり、支援計画を立てたりしている。

 佐賀県内の生活自立支援センターが昨年4~11月に受けた相談は1万5641件。前年の同じ期間の2・3倍に上る。「コロナで売り上げが減って苦しい」「バイトやパートの出勤日が少なくなり収入が減った」「従来の収入を得られる仕事が見つからない」などの相談が多いという。自営業者や飲食業や観光業で働いている人などが目立つという。

 こうした減収世帯への対応として、国は低所得世帯の生活再建を目的に貸し付ける「総合支援資金」の融資対象を、コロナ禍が原因で減収した人にも広げている。2人以上の世帯なら月最大20万円を原則3カ月分まで無利子で借りることができる制度などがある。こうした融資制度の昨年3~12月の利用状況は全国で51万5千件、総額3853億円、佐賀県は5124件、17億1541万円に上っている。

 収入減で住居を失う恐れがある人に一定期間、家賃相当額を支給する「住居確保給付金」の利用も増えている。コロナ禍で支給条件が緩和されたこともあって、佐賀県内の昨年4~12月の支給件数は、前年の同期間より174件多い196件。支給総額は2343万円に上っている。

 さまざまな数字を並べたが、いずれも経済的に困っている人が増えている実態を表している。感染拡大が止まらなければ、状況はさらに悪化するだろう。アルバイトのシフトが減って生活の維持や学費の工面に不安を抱えている学生など、多様な実態を把握し、状況に応じた対応が必要になる。

 新型コロナをめぐる政府の対応には「後手後手」という批判もある。雇用や暮らしを守る対策として、雇用調整助成金を活用して雇用を維持するよう企業に呼び掛け、生活支援費の融資や住居確保給付金の支給も当面延長しているが、生活困窮者を長期的に支える新たな制度や仕組みづくりを考える必要はないか。先を見越した対応が欠かせない。(小野靖久)





[コロナ下の貧困] 困窮者支援さらに厚く(2021年1月17日配信『南日本新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大が長期に及んでいる影響で多くの人が仕事を失い、ごく普通の生活を支えきれなくなっている。

 自治体などへの生活苦の相談が急増し、政府が特例で拡大した生活資金の貸し付けで急場をしのぐ人も少なくない。首都圏1都3県に続いて福岡など7府県も対象となった緊急事態宣言で経済活動が停滞し、雇用情勢はさらに悪化する可能性がある。

 支援の現場には、女性を中心に貧困が広がっているという危機感が強い。政府は生活困窮者の実態に即した支援を続け、さらに拡充していかなければならない。

 厚生労働省が把握しているだけで、コロナによる解雇・雇い止めは8日時点で見込みを含め、観光・飲食関連など8万836人に上る。半分近くを非正規雇用で働く人が占める。都道府県別では2万人に迫る東京都が最も多く、大阪府、愛知県と続く。鹿児島県は877人だった。

 非正規労働者の苦境はほかの指標でも明らかだ。総務省の昨年11月の労働力調査によると、前年同月比62万人減の2124万人と、9カ月連続で減っている。

 昨年4月に緊急事態宣言が初めて発令されてから減少が目立ち始めた。7月には比較できる2014年以降で最大となる前年同月比131万人減となり、その6割以上を女性が占めた。鹿児島県内でも仕事を失った女性たちから「先を考えると不安でたまらない」といった声が上がっている。

 自治体がセーフティーネットとして設けている自立相談支援機関に昨年4~9月に寄せられた新規相談は39万件を超え、前年同期の3倍に当たる。10月以降も例年を大きく上回るペースで推移しており、厳しい状況が続いていることをうかがわせる。

 政府はコロナ禍で減収となった人に、生活費を無利子で貸し付ける生活福祉資金制度の利用を促している。

 このうち生活支援費は2人以上の世帯が月最大20万円を原則3カ月まで借りられる。融資決定件数は昨年3~12月で51万5000件に上る。特例で対象を広げたため単純比較はできないが、過去最多だったリーマン・ショック後の10年度の12倍以上に膨らんでいる。

 政府は一度で最大20万円借りられる緊急小口資金とともに、利用者の返済を来年3月末まで猶予すると決めた。さらに生活支援費の融資、家賃を公費で補助する住居確保給付金の支給も当面延長する。こうした支援策は切れ目なく続ける必要がある。

 命を守るために生活保護という選択肢も忘れずにいたい。厚労省は「申請は国民の権利。ためらわずに相談を」と呼び掛けている。必要な時は自治体の福祉事務所に連絡してほしい。





コロナ下の貧困 困窮者支援の拡充急げ(2021年1月15日配信『茨城新聞』・山陰中央新報-「論説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大に終わりが見えない中、多くの人が仕事を失い、ごく普通の生活を支えきれなくなっている。年末年始に、各地で支援団体が「大人食堂」を開設し無料で食事を提供したり、職探しなどの相談に乗ったりした。労働組合は解雇・雇い止めや賃金カットの無料相談会を実施。労働訴訟の支援にも動きだしている。

 厚生労働省によると、今月6日の時点でコロナ関連の解雇・雇い止めは見込みも含め、8万人を超えた。派遣やパートなど非正規で働く人が半数近くを占める。翌7日に東京と神奈川、埼玉、千葉の1都3県に緊急事態宣言が発令され、13日には関西や東海を含め11都府県に拡大。雇用情勢はさらに悪化しそうだ。

 ただ、厚労省の数字は各地の労働局やハローワークからの報告を基に積み上げたもので「氷山の一角」にすぎない。生活に困っている人の相談を受けている自治体の「自立相談支援機関」には全国に緊急事態宣言が出された昨年4月から9月にかけて、前年同期の3倍に当たる計39万件余りの新規相談が寄せられた。

 民間も含め支援の現場は2008年のリーマン・ショック後とは異なり、働き盛りの男性だけではなく、若年層や女性など幅広い層に「貧困」が広がっていることに危機感を強め、「自助、共助は限界にきている」との声も上がる。

 県内でも派遣切りなどで職を失い、「あす食べるものがない」というほど困窮している人がいる。多くが支援制度の存在すら知らない「情報弱者」で、支援の手から漏れてしまうケースも少なくない。生活困窮者に絞り、支援制度の周知徹底と、手続きのサポートなど制度を利用しやすい環境をつくる必要がある。

 自立相談支援機関は「生活保護に至る手前の新たなセーフティーネット」の一環として、15年度から福祉事務所のある都道府県や市町村が設置している。就労や家計、子どもの学習への影響など、さまざまな相談を聞き取り、生活困窮から脱するため利用できる公的な制度を紹介したり、支援計画を立てたりする。

 一方、低所得世帯の生活再建を目的に貸し付ける「総合支援資金」のうち、コロナ禍の影響で減収になった人にも特例措置で対象を広げた生活支援費の融資決定件数は昨年3〜12月に51万5千件、総額3853億円に上った。生活支援費は2人以上の世帯なら月最大20万円を原則3カ月分まで無利子で借りられる。これまで過去最多はリーマン・ショック後の10年度。今回は対象を拡大しているため単純比較はできないものの、融資件数で見ると、12倍以上に膨らんでいる。

 昨年4月の緊急事態宣言発令の当初、外出自粛の影響はまず宿泊業やバス、タクシーなどの旅客運送業を直撃。夏以降には製造業や飲食業にも及び、非正規が切り捨てられ、7月に前年同月比で131万人減という、かつてない減り方を見せた。その6割以上は女性だった。休業補償をもらえないとの相談も支援団体などに相次いでいる。政府は雇用調整助成金を活用して雇用を維持するよう企業に呼び掛け、生活支援費の融資や住居確保給付金の支給も当面延長するが、それに加え、より長期的に切れ目なく生活困窮者を支える仕組みが求められよう。





コロナ禍と貧困(2021年1月15日配信『福井新聞』-「論説」)

者支援の拡充が急務

 新型コロナウイルスの感染拡大が生活困窮者を増やし続けている。多くの人が仕事を失い、働き盛りの男性だけでなく、若年層や女性など幅広い層に「貧困」が広がっている。ごく普通の生活を支えきれなくなり、支援の現場からは「自助、共助は限界にきている」との声も上がる。生活困窮者支援の継続と拡充を急ぐ必要がある。

 厚生労働省によると、今月6日の時点でコロナ関連の解雇・雇い止めは見込みも含め、8万人を超えた。派遣やパートなど非正規で働く人が半数近くを占める。首都圏や関西、東海など11都府県に緊急事態宣言が発令され、雇用情勢はさらに悪化しそうだ。

 生活困窮者の相談を受けている自治体の「自立相談支援機関」には、緊急事態宣言が出された昨年4月から9月にかけて、前年同期の3倍に当たる計39万件余りの新規相談が寄せられた。

 自立相談支援機関は「生活保護に至る手前の新たなセーフティーネット」の一環として、2015年度から福祉事務所のある都道府県や市町村が設置している。就労や家計、子どもの学習への影響など、さまざまな相談を聞き取り、生活困窮から脱するため利用できる公的な制度を紹介したり、支援計画を立てたりする。

 毎月の相談件数は例年、1万5千~2万8千件程度だったが、昨年4月に9万5214件に急増。8月と9月はいずれも5万件を超え、その後も月5万件前後で推移しているとみられる。

 一方、低所得世帯の生活再建を目的に貸し付ける「総合支援資金」のうち、コロナ禍の影響で減収になった人にも特例措置で対象を広げた生活支援費の融資決定件数は昨年3~12月に51万5千件、総額3853億円に上った。生活支援費は2人以上の世帯なら月最大20万円を原則3カ月分まで無利子で借りられる。

 これまで過去最多はリーマン・ショック後の10年度。今回は対象を拡大しているとはいえ、融資件数は12倍以上に膨らんでいる。その後も申請は後を絶たない。

 昨年4月の緊急事態宣言発令の当初、外出自粛の影響はまず宿泊業やバス、タクシーなどの旅客運送業を直撃。夏以降には製造業や飲食業にも及び、非正規が切り捨てられた。非正規には女性が多く、休業補償をもらえないとの相談も支援団体などに相次いでいる。低所得層ほど仕事が減り、打撃は大きい。住む場所を失い、食事もままならない危機が広がる。

 政府は雇用調整助成金を活用して雇用を維持するよう企業に呼び掛け、生活支援費の融資や住居確保給付金の支給も当面延長するが、加えて、より長期的に切れ目なく生活困窮者を支える仕組みが求められよう。





[コロナ困窮者支援]年末年始も窓閉ざすな(2020年12月28日配信『沖縄タイムス』-「社説」)

 かつてない厳しい年の瀬だ。

 新型コロナウイルスの影響で生活困窮者が増えている。 自治体が、生活に困っている人を対象に開設する相談窓口「自立相談支援機関」の県内相談件数が2020年度上半期、1万853件となり、前年同期の5倍に増えた。

 全国は3倍で、県内の伸び幅は際立っている。

 外出自粛で全国でも飲食、観光業への影響が大きいが、観光立県・沖縄への影響は著しい。

 役所も店も閉まる年末年始は、行き場を失い、物理的、心理的に追い込まれる人が増えることが危ぐされる。

 厚生労働省は、困窮者への支援が細る恐れがあるとして各自治体に、正月休みの12月29日~来年1月3日の閉庁期間も臨時窓口を開設するなど対策を取るよう要請した。

 東京都は住まいのない人のため、ビジネスホテル千室分の予算を確保したという。一時宿泊施設などへ案内する自治体もある。

 県内には自立相談支援機関の相談窓口が県(北中南部、久米島など5カ所)と11市の計16カ所ある。

 そのうち、石垣市が正月休みの全期間、名護市が1月1~2日を除いた期間、臨時的に相談窓口を開くことを決めている。

 差し迫った事態だ。ほかの自治体も臨時窓口を開所するなど、対応を取るべきだ。

 地域の人々が困っているこんなときこそ、力を尽くしてほしい。

■    ■

 減収となった人に無利子で最大20万円を貸す「緊急小口資金」、月20万円を原則3カ月分貸す「総合支援資金」の特例措置は、今月末だった申請期限が来年3月末まで延長される。

 家賃を補助する「住居確保給付金」も、支給期間が最長9カ月から1年に延びる。

 行政も手をこまねいているわけではないが、こうした支援制度の情報にたどり着けない人も少なくない。

 県内の困窮家庭に食料を届ける「女性を元気にする会」では支援した家庭の9割が、当面の生活費を無利子で借りられる緊急小口資金を利用していなかった。制度そのものを知らない人が多かった。情報を得られていない人は日々の生活に追われ、地域とのつながりが弱い傾向がある。

 行政情報はとかく分かりづらく、ハードルが高い。「自立相談支援機関」の存在もどれだけの人が知っているだろうか。誰もがアクセスしやすい発信も大事だ。

■    ■

 新型コロナウイルスは世界各地で変異種が見つかり、ますます収束の見通しが立たなくなっている。

 経済への影響はさらに長期化する可能性が高い。

 2008年のリーマンショックでは、労働組合や市民団体が立ち上がり、年末年始に「年越し派遣村」を開いて、仕事や住居を失った人を支援した。

 民間の支援も大切だが、やはり核となるのは行政だ。身近な自治体にいつでも相談できる「駆け込み寺」があることは心強い。正月も、支援の窓を閉ざさないでほしい。




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