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(論)コロナと経済に関する論説(2020年12月30日)

コロナ禍の経済 二極化とどう向き合うか(2020年12月30日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 厳しい年末を迎えている。寒空の下、仕事や住まいを失ったままの人も少なくない。

 困窮者支援に取り組む団体でつくる「新型コロナ災害緊急アクション」は年明け、東京の教会で「大人食堂」を開く。温かい食事を用意し、相談に応じる。

 NPOや市民有志が支援に乗り出す動きが、各地で見られる。

 2008年のリーマン・ショックを思い出す人も多いだろう。失業者であふれ、日比谷公園では年越し派遣村が開かれた。

   <影響が集中したのは>

 コロナ禍の今年の経済。政府と日銀には、企業への資金繰り支援が機能し、いまのところ何とか持ちこたえたとの見方もある。

 11月の失業率は2・9%。リーマン後の09年7月は5・5%だった。東京商工リサーチのまとめによると、今年の企業倒産の件数は前年を下回る見通しだ。

 そんな全体数字で内実は見えにくい。この危機は金融のゆがみが経済全体を揺るがしたリーマンとも違う。人の動きが止まり、職場それぞれに直接の影響が及んだ。影響が集中した現場の実情を、見過ごしてはならない。

 飲食、宿泊など対人サービスを中心に打撃が広がった。休廃業に追い込まれた店は数知れない。倒産と違って数を把握しにくい。

 これらは女性の働き手が多いという特徴もある。多くが派遣やパートなどの非正規雇用だ。雇用者数の変化を形態別に見ると失業が非正規に集中したのが分かる。

 辛うじて失業を免れても、勤務シフトが減れば収入に響く。「ステイホーム」の掛け声の下、アパートにこもり、節約して耐える。浮かぶのはそんな姿だ。影響は深く、着実に進んでいる。

 長く減少傾向が続いていた自殺者数が増加に転じた。特に女性の増加が顕著な傾向が続く。

 バイト収入が減り、学費の支払いに悩む大学生が目立つ。働く場を失い事件に巻き込まれるベトナム人技能実習生が増えている。

   <株高の恩恵はどこへ>

 目を転じると、社会には違った光景が広がる。

 「Go To キャンペーン」が始まると旅行消費は回復し、政府は経済効果を強調した。テレワークの普及を機に高級不動産物件の人気が上昇し、都心の高層マンションの高値が続く。

 影響は不均等に広がり、波は弱いところに強く押し寄せた。政府は追われるように給付金や助成金の拡充に動いた。困窮者支援アクションが表現するように「災害」に近いのかもしれない。

 だとすれば、最も問われるべきは被災者に支援が届いたかどうかだろう。繰り返し確認していくことを忘れてはならない。

 この1年の株価の動きは、影響の不均等を象徴していた。

 日経平均株価は3月に最安値を付けた後、上昇に転じ、11月にはバブル経済崩壊後の最高値を更新している。米ニューヨーク株式市場も11月、ダウ平均が史上初の3万ドルの大台を突破した。

 地域の企業や暮らしの実感と懸け離れた株高を支えたのは、各国の金融政策で膨れ上がった「緩和マネー」だった。経済を刺激しようと大量に供給したお金が、IT関連を中心に株に集中した。

 政府は景気対策で財政出動を積み重ね、財源を賄うため国債を大量に発行し、日銀がこれを購入する。「政府と中央銀行が何とかしてくれる」。今や世界中の株式市場にそんな空気が漂う。

 資金が流れ込んだ代表格は「GAFA」と称される米国の巨大IT4社だ。コロナ禍をきっかけに加速したデジタル化が、一層の成長をもたらしている。

 株高には本来、消費を促し経済を好転させる効果が期待される。今はどうか。恩恵は富裕層に限られ、増えたお金は、さらに増やすための投資に回るだけだ。

   <世界規模の競争に>


 秋に発足した菅義偉政権が打ち出したのは、デジタル化の加速と環境分野の投資促進である。

 不可避となった世界の流れを意識した結果だろう。自然エネルギーへの注力などに異論はない。もっと早く始めるべきだった。

 でもそれで将来、どんな経済、社会の構造を目指すのか。膨れ上がる財政赤字や金融のひずみの行方を含め、何も見えてこない。

 菅首相のブレーンの一人、小西美術工芸社のデービッド・アトキンソン社長は著書で、これからの経済成長の鍵は中小企業の再編と統合にあると説く。

 大きい企業の方が生産性や賃金が高い。技術力で立ち向かう町工場を描いた小説「下町ロケット」に見られるような発想は古く、規模拡大こそ重要だ、と。

 弱い立場の労働者の背後にいる企業もまた、世界規模で加速する競争へ組み込まれていく。

 生産性を軸にした経済の再編と成長に懸ける視点に、こぼれ落ちる人や地域がどれほど見えているのだろう。まずは、コロナ禍であらためて浮かんだ二極化の現実を捉え直すべきではないか。




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Author:gogotamu2019
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